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(平15.3.10裁決、裁決事例集No.65 472頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、人造研削材製造業を営む審査請求人(以下「請求人」という。)に対する法人税法第69条《外国税額の控除》の規定の適用について、〔1〕控除をされるべき外国法人税の額が、控除を受けるべき金額として確定申告書の所定の欄に記載された金額までに限られるか否か、〔2〕控除をされるべきこととなる外国法人税の額の一部を確定申告書に記載しなかったことにやむを得ない事情があるか否かを争点とする事案である。

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(2)審査請求に至る経緯

イ 請求人は、平成12年1月1日から平成12年12月31日までの事業年度(以下「平成12年12月期」という。)の法人税について、別紙の「確定申告」欄のとおり記載した確定申告書(以下「本件確定申告書」という。)を法定申告期限内にH税務署長に提出した。
ロ その後、請求人は、平成14年4月1日に、別紙の「更正の請求」欄のとおりとすべき旨の更正の請求(以下「本件更正の請求」という。)をした。
ハ 原処分庁は、これに対し、平成14年5月31日付で、更正をすべき理由がない旨の通知処分(以下「原処分」という。)をした。
ニ 請求人は、原処分を不服として、平成14年7月31日に審査請求をした。

(3)関係法令

イ 法人税法(平成13年法律第6号による改正前のものをいい、以下「法」という。)第69条等
(イ)法第69条第1項は、内国法人が各事業年度において外国法人税を納付(以下「直接納付」という。)することとなる場合には、各事業年度の所得に対する法人税の額のうち、当該事業年度の所得でその源泉が国外にあるものに対応するものとして政令で定めるところにより計算した金額を限度として、その外国法人税の額(所得に対する負担が高率な部分として政令で定める金額を除く。以下「控除対象外国法人税の額」という。)を当該事業年度の所得に対する法人税の額から控除する旨規定している(以下、当該規定による控除を「外国税額控除」という。)。
(ロ)法第69条第4項は、内国法人が外国子会社から受ける配当等の額がある場合には、その外国子会社の所得に対して課される外国法人税の額のうちその配当等の額に対応するものとして政令で定めるところにより計算した金額は、その内国法人が納付する控除対象外国法人税の額とみなして、法第69条第1項の規定を適用する旨規定している(以下、当該内国法人の納付とみなされるものを「間接納付」という。)。
 そして、法人税法施行令(以下「施行令」という。)第147条《外国子会社の配当等に係る外国法人税額の計算等》第1項は、法第69条第4項に規定する政令で定めるところにより計算した金額とは、外国子会社の配当等の額に係る事業年度の外国法人税の額に、当該事業年度の所得の金額から当該外国法人税の額を控除した残額のうちに当該配当等の額の占める割合を乗じて計算した金額(以下「配当等の額に係る外国法人税の額」という。)である旨規定し、施行令第147条第2項第1号ロは、外国子会社の配当等の額が当該配当等の額の計算の基礎となった事業年度(以下「配当事業年度」という。)の所得の金額を超える場合には、同条第1項の配当等の額に係る事業年度は、当該配当事業年度以前の各事業年度の所得の金額を、最も新しい事業年度の所得の金額から順次当該配当等の額に充てるものとした場合におけるその充てられることとなる当該所得の金額の属する事業年度とする旨規定している(以下、同条第2項第1号ロの規定が適用される場合の同条第1項の金額の計算を「さかのぼり計算」という。)。
(ハ)法第69条第6項は、内国法人に係る外国子会社が外国孫会社から受ける配当等の額がある場合には、その外国孫会社の所得に対して課される外国法人税の額のうちその配当等の額に対応するものとして政令で定めるところにより計算した金額は、その外国子会社の所得に対して課される外国法人税の額とみなして、同条第4項の規定を適用する旨規定している。
 そして、施行令第150条の3《外国孫会社の要件及び外国孫会社の配当等に係る外国法人税額の計算等》第3項は、法第69条第6項に規定する政令で定めるところにより計算した金額とは、外国孫会社から受ける配当等の額に係る事業年度の外国法人税の額に、当該外国孫会社の当該事業年度の所得の金額から当該外国法人税の額を控除した残額のうちに当該配当等の額の占める割合を乗じて計算した金額である旨規定し、施行令第150条の3第4項は、同条第3項の規定を適用する場合においては、外国子会社を外国孫会社と読み替えて施行令第147条第2項の規定を準用する旨規定している。
(ニ)法第69条第10項は、確定申告書に同条第1項の規定による控除を受けるべき金額及びその計算に関する明細の記載があり、かつ、控除対象外国法人税の額を課されたことを証する書類その他大蔵省令で定める書類の添付がされている場合に限り、同条第1項の規定を適用し、この場合において、同条第1項の規定による控除をされるべき金額は、当該金額として記載された金額を限度とする旨規定している。
 そして、法人税法施行規則(以下「法規則」という。)第29条の2《外国税額控除を受けるための書類》第3号は、当該「大蔵省令で定める書類」とは、法第69条第6項の規定の適用を受ける場合には、その外国法人に対して外国の法令により課された税で同項の規定の適用に係るものが外国法人税に該当することの説明及び外国子会社の所得に対して課される外国法人税の額とみなされる金額の計算に関する明細などを記載した書類である旨規定し、法規則第29条の2第8号は、当該書類は、具体的には、外国孫会社の配当等に係る事業年度の貸借対照表、損益計算書及び利益処分に関する計算書などである旨規定している。
(ホ)法第69条第12項は、同条第1項の規定による控除をされるべきこととなる金額又は控除対象外国法人税の額の全部又は一部について同条第10項に規定する記載又は書類の添付がない確定申告書の提出があった場合においても、その記載又は書類の添付がなかったことについてやむを得ない事情があると認めるときは、税務署長は、その記載又は書類の添付がなかった金額につき同条第1項の規定を適用することができる旨規定している。
ロ 法28条《法人税額から控除する外国子会社の外国税額の益金算入》
 同条は、内国法人が各事業年度において法第69条第4項に規定する外国子会社の所得に対して課される外国法人税の額につき同項の規定の適用を受ける場合には、同項に規定する政令で定めるところにより計算した金額は、その内国法人の政令で定める事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入する旨規定している。
ハ 国税通則法(以下「通則法」という。)第23条《更正の請求》
 通則法第23条第1項は、納税申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったことにより、当該申告書の提出により納付すべき税額が過大であるときには、当該申告書に係る国税の法定申告期限から1年以内に限り、税務署長に対し、その申告に係る課税標準等又は税額等につき更正をすべき旨の請求をすることができる旨規定している。

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(4)基礎事実

 以下の事実は、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所が調査したところによっても、その事実が認められる。
イ 請求人は、オーストラリア連邦(以下「豪州」という。)に所在するF(以下「本件子会社」という。)の発行済株式の全部を所有している。
 また、本件子会社は、豪州に所在するG(以下「本件孫会社」という。)の発行済株式の33.3%を所有している。
ロ 請求人は、平成11年12月22日に、本件子会社から、1,400,000豪州ドルの配当金(以下「本件子会社配当金」という。)を受領した。
 また、本件子会社は、平成11年12月22日に、本件孫会社から、総額5,100,000豪州ドルの配当金のうち、その出資割合に応じた1,700,000豪州ドルの配当金(以下「本件孫会社配当金」という。)を受領した。
ハ 本件確定申告書には、要旨次のとおり記載されている。
(イ)本件確定申告書の別表1(一)の記載
 法人税の額から控除を受けるべき外国法人税の額として、「外国税額」欄に、28,100,936円の記載がある。
 なお、上記の金額は、後記(ハ)のAの外国法人税の額245,648.72豪州ドルに基づいて請求人が納付したとみなされる本件子会社配当金の額に対応する外国法人税の額12,856,097円(202,298.94豪州ドル)と、直接納付した外国法人税の額15,244,839円との合計額である。
(ロ)本件確定申告書の別表六(五)「間接納付した控除対象外国法人税額等の計算に関する明細書」の記載
 本件子会社の平成11年5月1日から平成11年12月31日までの事業年度(以下「本件子会社の平成11年12月期」という。)の法人税の額として、「外国子会社の外国法人税額」欄に、0豪州ドルの記載がある。
(ハ)本件確定申告書の別表六(五の二)「外国孫会社に係る外国法人税額に関する明細書」の記載
A 本件孫会社の外国法人税の額のうち本件子会社の所得に対して課されたものとみなされる外国法人税(以下「みなし本件子会社外国法人税」という。)の額として、245,648.72豪州ドルの記載がある。
B 本件孫会社の配当事業年度である平成11年1月1日から平成11年12月31日までの事業年度(以下「本件孫会社の平成11年12月期」という。)の所得に対して外国法人税が課された日は、平成12年5月5日である。
 なお、同日は、本件孫会社が平成11年12月期の法人税確定申告書を提出した日である。
C 本件孫会社の平成11年12月期の所得金額のうち本件子会社への配当の支払に充てられた金額として、667,954.33豪州ドルの記載があり、本件孫会社配当金の金額として、これを超える1,700,000豪州ドルの記載がある。
D さかのぼり計算に関する記載はない。
(ニ)本件確定申告書の別表四「所得の金額の計算に関する明細書」の記載
 当該事業年度の所得に加算されている「税額控除の対象とした外国法人税の額等」欄には、28,100,936円の記載がある。
ニ 本件確定申告書には、次の書面が添付されているが、さかのぼり計算を証するに当たって必要である本件孫会社の平成10年1月1日から平成10年12月31日までの事業年度(以下「本件孫会社の平成10年12月期」という。)の財務諸表及び法人税確定申告書の写しの添付はない。
(イ)「Financial Statements at 31 December 1999」と題する本件子会社の平成11年12月期の財務諸表
(ロ)本件子会社配当金の額並びにその決定日及び支払日がいずれも平成11年12月22日であると記載した「DIVIDEND STATEMENT」と題する書面
(ハ)「Financial Statements Year Ended December 31 1999」と題する本件孫会社の平成11年12月期の財務諸表
(ニ)「2000 income tax return」と題する本件孫会社の平成11年12月期の法人税確定申告書の写し

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2 主張

(1)請求人の主張

 次の理由により、本件更正の請求は認められるべきであるから、原処分の全部の取消しを求める。
イ 控除をされるべき外国法人税の額
(イ)法第69条第10項は、「法第69条第1項の規定による控除をされるべき金額は、当該金額として確定申告書に記載された金額を限度とする。」旨規定しているが、これは、確定申告書に外国税額控除の適用を受ける旨の記載がある場合には、確定申告書に具体的に記載した金額にかかわらず、外国税額控除の適用を受けるものとして正当に計算された場合の金額を、同条第1項が規定する「控除をされるべき金額の限度」とする趣旨であると解すべきである。
 すなわち、控除をされるべき外国法人税の額の算出に当たり、本件確定申告書の別表の記載に一部欠落した部分があるとしても、他の別表及び添付された書類の内容から、当該控除をされるべき金額の記載が正当でないと合理的に推定できる場合には、正当に計算された場合の金額をもって、法第69条第1項に規定する控除をされるべき金額の限度とすることになると解される。
(ロ)本件において、請求人は、本件確定申告書に、みなし本件子会社外国法人税の額について、外国税額控除の適用を受ける旨の記載をしている。また、請求人は、当該金額を本来さかのぼり計算をして算出すべきであるところ、誤ってさかのぼり計算をせずに算出した結果、本件確定申告書に記載した外国法人税の額は、正当に計算された場合の金額よりも少なくなっているが、さかのぼり計算をせずに算出した金額の記載が正当でないことは、上記1の(4)のハの(ハ)Cのとおり、本件確定申告書の記載において、本件孫会社配当金の額1,700,000豪州ドルが本件子会社への配当の支払に充てられた所得の金額667,954.33豪州ドルを超えていることから明らかである。
 したがって、正当に計算された場合の外国法人税の額をもって、法第69条第1項に規定する控除をされるべき金額の限度とすることになる。
(ハ)そうすると、本件においては、上記(ロ)のとおり、法第69条第10項の要件を満たしている上、計算に上記(ロ)の誤りがあったことにより、控除をされる外国法人税の額が過少、ひいては納付すべき法人税の額が過大となっているから、通則法第23条第1項第1号により、本件更正の請求は認められるべきである。
(ニ)また、国際的な二重課税の排除という外国税額控除の制度の本来の趣旨からも、本件更正の請求は認められるべきである。
ロ やむを得ない事情の有無
 請求人が、控除をされるべきこととなる外国法人税の額の一部を確定申告書に記載しなかった理由は、次のとおりであり、これらの理由は、法第69条第12項が規定する「やむを得ない事情」に該当するから、この点からも、原処分庁は、法第69条第1項の規定を適用し、本件更正の請求を認めるべきである。
(イ)本件子会社配当金の受領及び本件孫会社配当金は、いずれも平成12年12月期に初めて生じたものであり、請求人にとっては、法第69条第4項及び第6項の規定を初めて適用することになった。
(ロ)請求人は、日本人スタッフのいない本件子会社及び本件孫会社とのやり取りを英文の電子メールで行っており、意思疎通に時間を要したため、本件子会社の平成11年12月期の決算書並びに本件孫会社の平成11年12月期の決算書及び法人税確定申告書の写しを、法定申告期限直前の平成13年3月中旬まで入手できなかった。
(ハ)請求人は、上記(ロ)の書類の入手後に短期間で複雑な計算をする必要があったため、外国税額控除に関する記載の内容を十分に検証できなかった。

(2)原処分庁の主張

 原処分は、次の理由により適法であるから、本件審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 控除をされるべき外国法人税の額
 法第69条第10項は、上記1の(3)のイの(ニ)のとおり規定しているところ、本件確定申告書には、上記1の(4)のハ及びニのとおり、控除を受けるべき外国法人税の額及びその計算に関する明細の記載並びに控除対象外国法人税の額を課されたことを証する書類が添付されているが、上記1の(4)のハの(ハ)のDのとおり、さかのぼり計算に関する記載がなく、また、上記1の(4)のニのとおり、さかのぼり計算に必要な本件孫会社の平成10年12月期の財務諸表及び法人税確定申告書の写しの添付がない。
 したがって、本件確定申告書への記載等及び外国法人税を課されたことを証する書類の添付のないものについてまで、請求人の法人税の額から控除をされるべき外国法人税の額として認めることはできない。
ロ やむを得ない事情の有無
 法第69条第12項に規定するやむを得ない事情とは、本人の責めに帰すべきでない理由をいうのであって、税法知識の未習熟あるいは意思疎通に時間が掛かるなどの請求人が主張する理由は、やむを得ない事情には該当しない。
ハ 通則法第23条第1項第1号
 控除される外国法人税の額は、本件確定申告書に記載された上記イのとおりの金額であり、その計算に誤りはないことから、通則法第23条第1項第1号に規定する「申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていないこと又は当該計算に誤りがあったこと」に該当する事実はない。
 よって、本件更正の請求には、更正をすべき理由がない。

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3 判断

(1)控除をされるべき外国法人税の額

 請求人は、本件更正の請求が認められるべき理由として、法第69条第1項の控除をされるべき外国法人税の額の限度を、確定申告書に記載された額のいかんにかかわらず、正当に計算された場合の金額とすべきである旨主張するので、以下検討する。
イ 法第69条が規定する外国税額控除の制度は、同一の所得に対する国際的二重課税を回避することを目的として、内国法人が納付する又は納付するとみなされる外国法人税額を有する場合に、一定の限度を設けた上で、日本において納付すべき法人税の額から当該外国法人税の額を控除するというものである。
 そして、法第69条第10項は、上記1の(3)のイの(ニ)のとおり、外国税額控除の制度を適用するための要件として、〔1〕確定申告書に、法人税の額から控除を受けるべき金額及びその計算に関する明細の記載があり、かつ、〔2〕その控除対象外国法人税の額を課されたことを証する書類等が添付されていることを必要とし、また、同条第1項の規定による控除をされるべき金額は、当該金額として記載された金額を限度とする旨定めている。
 この規定は、〔1〕確定申告書に当該控除を受けるべき金額の計算に関する明細及びその計算から導かれた控除を受けるべき金額の記載があり、かつ、〔2〕控除を受けるべき外国法人税の額として記載された金額が控除対象外国法人税として課されたことを当該確定申告書に添付した書類が証する限りにおいて、当該確定申告書に記載された控除を受けるべき金額を限度とし、納付すべき法人税の額から控除をされるものであると解される。
 これに対して、請求人は、法第69条第10項の規定は、確定申告書に外国税額控除の適用を受ける旨の記載がある場合には、具体的に記載された金額にかかわりなく、正当に計算された場合の外国法人税の額を法第69条第1項が規定する控除をされるべき金額の限度とする趣旨である旨主張する。
 しかしながら、法第69条第10項が、上記のとおり、内国法人が確定申告書に外国税額控除を受けるべき金額として記載し、当該確定申告書に添付した書類が証する限りの金額を、控除をされるべき金額の限度とする旨を明確に規定し、同条第12項が、上記1の(3)のイの(ホ)のとおり、確定申告書に当該記載又は書類の添付がない金額について外国税額控除の適用を受けるためには、やむを得ない事情を要求していることからすると、外国税額控除の適用を受け得るのは、確定申告書に記載され、書類の添付がされたことにより、具体的に確認することのできる金額の範囲に限られると解すべきであり、それを超えて外国税額控除を適用できると解することはできない。
 したがって、この点に関する請求人の主張は、採用できない。
ロ さらに、請求人は、本件確定申告書に控除を受けるべき金額として別紙の「確定申告」欄の「外国税額」欄のとおり28,100,936円と記載し、本件確定申告書の別表にその計算に関する明細を示し、本件確定申告書に添付した書類もその内容を証していることから、納付すべき法人税の額から控除をされるべき外国法人税の額は、上記の28,100,936円となり、その額について外国税額控除の適用を受けたことは相当である。
 また、さかのぼり計算をしなかったために過少になったと請求人が主張する外国法人税の額については、上記1の(4)のハの(ハ)のD及びニのとおり、本件確定申告書の記載及び書類の添付もないことから、外国税額控除の適用を受けることはできない。
ハ そうすると、請求人は、本件確定申告書により、控除をされるべき外国法人税の額の限度額である28,100,936円の控除を受けているのであるから、控除をされるべき外国法人税の額が過少になっているとはいえず、そのため、納付すべき法人税の額が過大になったとはいえない。
ニ なお、請求人は、国際的な二重課税の排除という外国税額控除の制度の本来の趣旨から見ても、本件更正の請求は認められるべきであると主張する。
 しかしながら、法に定める要件を充足していないものについて、外国税額控除の適用を認めることはできない。
 したがって、この点に関する請求人の主張は、採用できない。

(2)やむを得ない事情の有無

 また、請求人は、本件更正の請求が認められるべきであるとする理由として、控除をされるべきこととなる外国法人税の額の一部を確定申告書に記載しなかったのは、請求人にとって法第69条第4項及び第6項の規定を適用することが初めてであり、証明書類の入手が遅れ、短期間に複雑な計算をせざるを得なかったことから、外国税額控除に関する記載の内容を十分に検証できなかった事情が存し、このことは、法第69条第12項に規定する「やむを得ない事情」である旨主張する。
 しかしながら、請求人の主張する理由は、いずれも専ら請求人の責めに帰する理由にすぎず、他に客観的な理由があると認めるに足りる事実もない。
 したがって、上記「やむを得ない事情」は認められず、請求人の主張は採用できない。
(3)以上のとおり、本件確定申告において控除された外国法人税の額が過少であったとはいえず、法第69条第12項に規定する「やむを得ない事情」もないため、本件更正の請求は、通則法第23条第1項第1号の要件を満たしていない。
 したがって、本件更正の請求に対して更正をすべき理由がないとした原処分は、適法である。
(4)その他
 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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