ホーム >> 公表裁決事例集等の紹介 >> 公表裁決事例 >> 裁決事例集 No.65 >> (平15.5.20裁決、裁決事例集No.65 486頁)

(平15.5.20裁決、裁決事例集No.65 486頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、電気機械器具製造業等を営む審査請求人(以下「請求人」という。)が納付した外国法人税に係る法人税法(平成14年法律第79号による改正前のものをいい、以下「法」という。)第69条《外国税額の控除》第1項の規定の適用に関し、控除をされるべきこととなる外国法人税の額の全部を確定申告書に記載しなかったことについて、同条第15項に規定するやむを得ない事情があるか否かを主な争点とする事案である。

トップに戻る

(2)審査請求に至る経緯

イ 請求人は、平成12年4月1日から平成13年3月31日までの事業年度(以下「平成13年3月期」という。)の法人税について、別表の「確定申告」欄のとおり記載した確定申告書(以下「本件確定申告書」という。)を法定申告期限までにG税務署長に提出した。
ロ 請求人は、平成14年6月4日に、別表の「更正の請求」欄のとおりとすべき旨の更正の請求(以下「本件更正の請求」という。)をした。
ハ G税務署長は、これに対して、原処分庁所属の職員の調査に基づき、平成14年8月30日付で、更正をすべき理由がない旨の通知処分(以下「原処分」という。)をしたところ、請求人は、原処分を不服として、同年10月25日に審査請求をした。

(3)関係法令

イ 法第69条等
(イ)法第69条第1項は、内国法人が各事業年度において外国の法令により課される法人税に相当する税で政令で定めるもの(以下「外国法人税」という。)を納付することとなる場合には、各事業年度の所得に対する法人税の額のうち、当該事業年度の所得でその源泉が国外にあるものに対応するものとして政令で定めるところにより計算した金額を限度として、その外国法人税の額(所得に対する負担が高率な部分として政令で定める金額を除く。以下「控除対象外国法人税の額」という。)を当該事業年度の所得に対する法人税の額から控除する旨規定している(以下、当該規定による控除を「外国税額控除」という。)。
(ロ)法人税法施行令(以下「施行令」という。)第141条《外国法人税の範囲等》第1項は、外国法人税は、外国の法令に基づき外国又はその地方公共団体により法人の所得を課税標準として課される税とする旨規定している。
 なお、施行令第141条第2項第3号は、外国法人税の範囲について、法人の所得を課税標準として課される税と同一の税目に属する税で、法人の特定の所得につき、徴税上の便宜のため、所得に代えて収入金額その他これに準ずるものを課税標準として課されるものは、外国法人税に含まれるものとする旨規定しており、これらの外国法人税には、利子、配当、ロイヤリティなどの収入金額を基準として源泉徴収される所得税のような税が含まれると解される。
(ハ)法第69条第13項は、確定申告書に同条第1項の規定による控除を受けるべき金額及びその計算に関する明細の記載があり、かつ、控除対象外国法人税の額を課されたことを証する書類その他財務省令で定める書類の添付がある場合に限り、同条第1項の規定が適用され、この場合において、同項の規定による控除をされるべき金額は、当該金額として記載された金額を限度とする旨規定している。
(ニ)法第69条第15項は、同条第1項の規定による控除をされるべきこととなる金額の全部又は一部について同条第13項に規定する記載又は書類の添付がない確定申告書の提出があった場合においても、その記載又は書類の添付がなかったことについてやむを得ない事情があると認めるときは、税務署長は、その記載又は書類の添付がなかった金額につき同条第1項の規定を適用することができる旨規定している。
ロ 法人税基本通達(平成14年課法2−1による改正前のものをいい、以下「基本通達」という。)16−3−1《外国法人税の一部につき控除申告をした場合の取扱い》の注書は、内国法人が当該事業年度において納付する外国法人税の一部につき法第69条の規定を適用し、他の外国法人税につき同条の規定を適用しないで損金の額に算入して申告した場合において、その申告をしたことが当該損金の額に算入した外国法人税につき同条第1項に規定する外国法人税に該当するかどうか明らかでなかったことによるものであると認められるときは、同条第15項に規定するやむを得ない事情があるものとして取り扱う旨定めている。
ハ 国税通則法(以下「通則法」という。)第23条《更正の請求》
 通則法第23条第1項は、納税申告書を提出した者は、納税申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったことにより、当該申告書の提出により納付すべき税額が過大であるときには、当該申告書に係る国税の法定申告期限から1年以内に限り、税務署長に対し、その申告に係る課税標準等又は税額等につき更正をすべき旨の請求をすることができる旨規定している。

(4)基礎事実

 以下の事実は、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所が調査したところによってもその事実が認められる。
イ 請求人は、P県Q市に本店を置くH株式会社のシステム事業部が平成12年3月1日に分離独立して設立された法人であり、H株式会社がその発行済株式の約85パーセントを所有している。
ロ マレーシア国に所在するK(以下「K社」という。)は、エアコン用部品の製造業を営む外国法人であり、H株式会社がその発行済株式の全部を所有している。
ハ 請求人は、平成12年4月1日に、K社との間で、エアコンと冷蔵庫の銅管部品の製造に関する技術情報の提供に係るROYALTY AGREEMENT(以下「本件ロイヤリティ契約」という。)を締結した。
ニ 本件ロイヤリティ契約に係る書面(以下「本件ロイヤリティ契約書」という。)には、要旨次の内容が記載されている。
(イ)ロイヤリティの支払
A K社は、認可製品の正味売上金額の○パーセントに相当する額を、ロイヤリティとして請求人に支払う(第6条第1項)。
B K社は、当該ロイヤリティ金額を1か月ごとに算定し、算定対象月の月末から15日以内に、請求人の指定する銀行口座に送金する(第6条第2項)。
C K社は、送金日の外国為替相場で換算した金額を支払う(第6条第4項)。
(ロ)税金
A 請求人は、マレーシア国の法律及び規則によって賦課される税金(以下「マレーシア外国税」という。)を負担する(第7条前段)。
B K社が、マレーシア外国税の額を支払額から差し引いた場合には、マレーシア税務当局発行の公式領収書を請求人に送付する(第7条後段)。
ホ 請求人は、平成12年5月以後、K社からL銀行M支店の請求人名義の当座預金口座に毎月送金される円貨額を、ロイヤリティの収入金額として、雑収入勘定に計上している。
ヘ 本件確定申告書には、法人税の額から控除を受けるべき外国法人税の額及びその計算に関する明細の記載はなく、また、控除対象外国法人税が課されたことを証する書類の添付もない。

トップに戻る

2 主張

(1)請求人の主張

 次の理由により、本件更正の請求は認められるべきであるから、原処分の全部の取消しを求める。
イ 本件確定申告書に法第69条第1項の規定を適用するために必要な同条第13項の記載をしなかったことには、次のとおり、同条第15項に規定するやむを得ない事情がある。
(イ)法第69条第15項に規定するやむを得ない事情の判断においては、二重課税を排除するという外国税額控除の趣旨や納税者を救済するという同項のゆうじょ規定の趣旨からしても、外国進出企業に対する国際的な二重課税の負担をできるだけ排除するような解釈、運用がなされるべきである。
(ロ)請求人は、K社からロイヤリティに関する送金内訳書及び公式領収書の送付を受けていなかったため、K社から送金されたロイヤリティの額がマレーシア外国税の額を差し引いた後の金額であることを知り得る立場になかった。
 なお、K社からのロイヤリティの送金額がマレーシア外国税額を差し引いた後のものであることは、平成14年5月22日に取引先のL銀行から指摘を受けて請求人がK社に照会し、同月23日にK社からの回答があったことによって初めて判明したものである。
(ハ)基本通達16−3−1の注書において、外国法人税の一部につき損金の額に算入して申告した場合に、その申告をしたことが当該損金の額に算入した外国法人税につき外国税額控除の対象となる外国法人税であるか明らかでなかったことによるものであるときは、法第69条第15項に規定するやむを得ない事情があるものとして取り扱われていることからすると、外国法人税が課されていることを知らされていなかったこともやむを得ない事情があるものとして取り扱われるべきである。
ロ 請求人は、マレーシア外国税の額を差し引いて送金されたロイヤリティ金額を収益として計上しており、当該マレーシア外国税の額を損金の額に算入したのと同様の結果になっているが、当該マレーシア外国税の額を損金の額に算入するとの明確な意思を示していないから、当該マレーシア外国税について外国税額控除の適用を受けることができる。

(2)原処分庁の主張

 原処分は、次の理由により適法であるから、本件審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 上記1の(4)のヘのとおり、本件確定申告書には、法第69条第13項が規定する外国税額控除を受けるための記載及び書類の添付はない。
ロ また、法第69条第15項が規定するやむを得ない事情とは、自己の責めに帰すことのできない客観的事情をいうと解されているところ、本件においては、本件ロイヤリティ契約の内容の確認や契約額と送金額との差額の照合を行うことにより、マレーシア外国税の額を差し引いた後の金額で送金されていることが容易に分かるため、やむを得ない事情は存しない。
ハ そうすると、納付すべき税額が過大となっている事実はないから、本件更正の請求に対して更正をすべき理由がないとした原処分は適法である。

トップに戻る

3 判断

(1)認定事実

 請求人の提出資料及び当審判所が調査したところによれば、次の事実が認められる。
イ マレーシア国Income Tax Acts(所得税法)第109条は、マレーシア国において生じたロイヤリティを非居住者に対して支払う者は、当該ロイヤリティに適用される所定の税率による源泉所得税の金額を、当該支払う金額から控除し、その支払った日から1か月以内に、マレーシア税務当局に納付しなければならない旨規定している。
ロ H株式会社のNグループのリーダーであるS及び請求人のTグループのUは、当審判所に対して、要旨次のとおり答述した。
(イ)Sの答述
A 請求人が設立される前は、H株式会社が、K社に対して、エアコンと冷蔵庫の銅管部品の製造に関する技術情報の提供を行っていたが、請求人が設立されたのに伴い、請求人が、H株式会社から引き継いで、当該技術情報の提供を行うこととなった。
B K社からのロイヤリティがH株式会社へ送金されていた当時においては、ロイヤリティ支払明細書も送付されていた。また、当該明細書には、マレーシア外国税の額を差し引いた旨の記載があるものとないものがあり、記載があるものについては、外国税額控除の適用を受けていた。
(ロ)Uの答述
A 請求人の経理スタッフは、Uを含むH株式会社からの転籍者2名と臨時職員1名の合計3名である。
 また、平成13年3月期は設立2期目であり、経理スタッフは、経理事務に精通しておらず、総務及び人事に関する事務も兼務していたことから、請求人においては、日々の記帳、月次試算表の作成等を行うが、決算事務から確定申告書の下書きまでをH株式会社のNグループに委託していた。
B 本件ロイヤリティ契約は、請求人の代表者であるWが自らK社と交渉して締結したものであるが、K社からのロイヤリティの送金額がマレーシア外国税額を差し引いた後のものであることが判明するまで、本件ロイヤリティ契約が締結されていたこと及びその内容を承知していたのは、Wだけである。
C ロイヤリティの算定根拠資料及び公式領収書は、一度もK社から請求人に送付されたことはなかった。
D 請求人は、K社との相互信頼関係から、同社に対して送金額の算定根拠資料等の送付を要請せず、送金額をそのままロイヤリティの収入金額としていた。
ハ 本件確定申告書に添付された勘定科目の内訳説明書である「雑収入の内訳書」には、「科目」欄に「ロイヤリティ」、「相手先」欄に「K社」、「金額(円)」欄に「19,438,043」との記載がある。

トップに戻る

(2)やむを得ない事情

イ 請求人は、本件更正の請求が認められるべきであるとする理由として、本件確定申告書に法第69条第1項の規定を適用するために必要な同条第13項の記載をしなかったのは、K社からのロイヤリティの送金内訳書及びロイヤリティに係る公式領収書の送付が一切なかったため、送金されたロイヤリティの額がマレーシア外国税の額を差し引いた後の金額であることを知ることができなかったからであり、このことには、同条第15項に規定するやむを得ない事情がある旨主張する。
(イ)確かに、請求人が主張するとおり、K社からの送金内訳書及び公式領収書が平成13年3月期の法定申告期限までに請求人に送付された事実は認められず、他にこれに代わる資料等の送付があった事実も認められない。
(ロ)しかしながら、上記(1)のロの(ロ)のBの答述からすると、本件ロイヤリティ契約を締結したのは請求人の代表者であるWであり、同人は、本件ロイヤリティ契約書に上記1の(4)のニのとおりの定めがあることを承知していたと認められるから、同人が、本件ロイヤリティ契約を締結したこと及び本件ロイヤリティ契約書に上記1の(4)のニのとおりの定めがあることを関係部課に周知し又は伝達し、所要の措置を講ずるよう指示するなど、その職責上通常要求される事務を行っていれば、請求人において、ロイヤリティの送金額がマレーシア外国税の額を差し引いた後のものであることが容易に判明したといえる。
(ハ)また、本件確定申告書を提出するまでに、Wからの本件ロイヤリティ契約書の伝達及びK社からの送金額に係る資料等の送付がなかったとしても、K社に対してロイヤリティの送金額の算定根拠を確認するなど、経理実務において通常要求される程度の確認作業をしていれば、上記(ロ)と同様に、ロイヤリティの送金額がマレーシア外国税の額を差し引いた後のものであることが容易に判明したはずであり(実際、上記2の(1)のイの(ロ)のとおり、請求人は、取引先銀行からの指摘によりK社に確認したところ、直ちに当該事実が判明したことを自認している。)、特に平成13年3月期がK社からロイヤリティの送金が開始された最初の事業年度であることからすると、その確認作業を行う必要性は高かったといえる。
(ニ)そうすると、請求人は、請求人内部の意思疎通が不十分であったこと及び経理実務において通常要求される程度の確認作業を怠ったことによって、ロイヤリティの送金額がマレーシア外国税の額を差し引いた後の金額であることを知らなかったものであるから、その責めは請求人自身が負うべきものであり、ロイヤリティの送金内訳書及びロイヤリティに係る公式領収書の送付がなかったことをもって、やむを得ない事情があったと認めることはできない。
ロ また、請求人は、基本通達16−3−1の注書の取扱いの趣旨からみて、マレーシア外国税の額が差し引かれていることを知らされていなかった場合は、法第69条第15項に規定するやむを得ない事情があるものとして取り扱われるべきである旨主張する。
(イ)基本通達16−3−1の注書は、外国税額控除を受けようとする者が、控除対象外国法人税の一部につき法第69条第1項の規定を適用せずに申告したことについて、外国税額控除の対象となる税に該当するか否かの判定が困難であると認められる場合には、やむを得ない事情があるものとして取り扱うことを明らかにしたものと解される。
(ロ)本件において、マレーシア外国税の額が差し引かれていることを請求人が知らされていなかったとしても、それを知ることに困難性はなく、請求人自身がその責めを負うべきものであることは、上記イの(ニ)のとおりである。
 また、請求人は、K社からL銀行M支店の請求人名義の当座預金口座に送金された円貨額がロイヤリティに係る支払金額であると承知していたこと、マレーシア国Income Tax Actsには、マレーシア国において生じたロイヤリティを非居住者に対して支払う者は、当該ロイヤリティに適用される所定の税率による源泉所得税の金額を、当該支払う金額から差し引き、納付しなければならない旨明示されていることからすると、差し引かれたマレーシア外国税が外国税額控除の対象となる外国法人税に該当するか否かの判定に困難性があるとはいえない。
(ハ)そうすると、基本通達16−3−1の注書の趣旨に照らしても、請求人の主張は採用できない。
ハ 以上のとおり、請求人が控除をされるべきこととなる外国法人税の額の全部を本件確定申告書に記載しなかったことに、やむを得ない事情があるとは認められない。
(3)さらに、請求人は、法第69条第15項に規定するやむを得ない事情の有無についての判断は、納税者の救済という同項の趣旨からも、外国進出企業に対する国際的な二重課税の負担をできるだけ排除するよう解釈、運用されるべきである旨主張する。
 しかしながら、法第69条第15項に規定するやむを得ない事情とは、本人の責めに帰すことのできない事由により生じた客観的な事情をいうものと解され、かつ、上記(2)のイの(ニ)及びロの(ロ)のとおり、請求人が控除をされるべきこととなる外国法人税の額の全部を本件確定申告書に記載しなかったことは、請求人の責めに帰すべき事情によるものであるから、このような場合にまで、同項の規定を拡大して解釈、運用することはできない。
 したがって、この点に関する請求人の主張は採用できない。
(4)加えて、請求人は、マレーシア外国税の額を差し引いて送金されたロイヤリティ金額を収益として計上しており、当該マレーシア外国税の額を損金の額に算入したのと同様の結果になっているが、当該マレーシア外国税の額を損金の額に算入するとの明確な意思を示していないから、当該マレーシア外国税について外国税額控除の適用を受けることができる旨主張する。
 上記請求人の主張は、外国税額につき法人が一度損金の額に算入した場合には、そのことにより当然に以後外国税額控除の適用を受けることができなくなり、また、原処分が外国税額控除の適用を認めなかったのも、請求人が損金の額に算入したからであるという理解を前提にして、請求人自身が損金の額に算入するという意思を表示していないから外国税額控除の適用を受けることができるはずであるという趣旨のものと解される。
 しかしながら、法第41条《法人税額から控除する外国税額の損金不算入》は、法第69条第1項の規定の適用を受ける場合には、控除対象外国法人税の額を損金の額に算入することができない旨を規定しており、外国法人税の額について外国税額控除を受ける処理と損金の額に算入する処理を同時に行うことを認めていないが、同法第41条は、当初の確定申告書において外国税額を損金の額に算入する処理をしたからといって、そのことにより当然に、後日、当該外国税額について、損金の額に算入する処理を外国税額控除の適用を受ける処理に変更することまでは禁じておらず、このことを明確に禁じた法令上の規定はない。むしろ、法第69条第13項に規定する記載及び書類の添付のない確定申告書を提出した後においても外国税額控除の適用を受け得るか否かは、同条第15項に規定するやむを得ない事情があるか否かにより判断されるべきであり、当初の確定申告において損金の額に算入する処理をしたことやその処理に至る経緯は、このやむを得ない事情の有無を判断する要素のうちの一つにすぎないというべきである。
 また、原処分関係資料をみても、原処分の理由が、請求人がマレーシア外国法人税の額を損金の額に算入したことにあるとは認められない。
 そうすると、本件においては、本件確定申告書に法第69条第13項に規定する記載及び書類の添付がなく、また、同条第15項に規定するやむを得ない事情もないのであるから、当該マレーシア外国税について外国税額控除を適用することはできないのであって、このことは、請求人がマレーシア外国税を損金の額に算入するとの明確な意思を示したか否かにかかわらない。
 したがって、請求人の主張には理由がない。
(5)以上のとおり、本件において、法第69条第13項の規定する要件を満たしておらず、また、同条第15項に規定するやむを得ない事情もなく、同条第1項の規定を適用することはできないことから、本件確定申告において納付すべき法人税の額が過大になっているとはいえず、本件更正の請求は、通則法第23条第1項第1号の要件を満たしていない。
 したがって、本件更正の請求に対して更正をすべき理由がないとした原処分は、適法である。
(6)その他
 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

トップに戻る