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(平15.3.25裁決、裁決事例集No.65 772頁)
《裁決書(抄)》
1 事実
(1)事案の概要
本件は、相続税の課税価格に算入する第一種市街地再開発事業施行中の施設建築物の給付を受ける権利の価額の多寡を主な争点とする事案である。
(2)審査請求に至る経緯
イ 審査請求人E及び同F(以下、併せて「請求人ら」という。)は、平成12年1月26日(以下「本件相続開始日」という。)に死亡したG(以下「被相続人」という。)の相続人3人のうちの2人であるが、この相続(以下「本件相続」という。)に係る相続税(以下「本件相続税」という。)の申告書に、別表1の「当初申告」欄のとおり記載して法定申告期限までに申告した(以下、この申告書を「本件申告書」という。)。
ロ 次に、請求人らは、原処分庁所属の調査担当職員の調査を受け、本件相続税について、別表1の「修正申告等」欄のとおりとする修正申告書を平成13年12月25日に提出した。
ハ その後、原処分庁は、本件相続に係る相続財産の価額に誤りがあるとして、平成14年1月25日付で、別表1の「更正処分等」欄のとおりの各更正処分(以下「本件各更正処分」という。)及び過少申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」という。)をした。
ニ 請求人らは、これらの処分を不服として、平成14年3月22日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年6月24日付でいずれも棄却の異議決定をした。
ホ 請求人らは、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成14年7月22日に審査請求をした。
なお、請求人らは、Eを総代として選任し、その旨を平成14年8月12日に届け出た。
(3)関係法令等
イ 相続税法第22条《評価の原則》は、相続又は遺贈により取得した財産の価額は特別に定める場合を除き、当該財産の取得の時における時価による旨規定している。
ロ 財産評価基本通達(昭和39年4月25日付直資56ほか国税庁長官通達。平成12年4月24日付課評2−3による改正前のものをいい、以下「評価基本通達」という。)5《評価方法の定めのない財産の評価》は、この通達に評価方法の定めのない財産の価額は、この通達に定める評価方法に準じて評価する旨定めている。
ハ 評価基本通達91《建築中の家屋の評価》は、課税時期において現に建築中の家屋の価額は、その家屋の費用現価の100分の70に相当する金額によって評価する旨定めている。
(4)基礎事実
以下の事実は、請求人ら及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ P市Q町地内のR地区第一種市街地再開発事業(以下「本件事業」という。)によりP市Q町○○番地に建築される建築物(以下「本件施設建築物」という。)及び本件施設建築物の敷地に係る地域は、平成8年9月13日に本件事業の都市計画決定がされている。
ロ R地区市街地再開発組合(以下「本件組合」という。)は、平成9年1月21日付でS県知事から設立の認可を受けている。
ハ 被相続人は、本件組合に対して、本件事業の施行に伴い、被相続人が施行地内に所有する権利を別表2のとおり変換する権利変換計画に同意する旨の同意書を平成9年3月26日に提出している。
なお、上記同意書には、被相続人が本件施設建築物のうち、100万分の131,300の持分の給付を受ける権利の価額は、553,055,000円(概算)である旨の記載がある。
ニ 本件組合は、本件事業の権利変換計画について、平成9年4月14日付でS県知事から認可を受けている。
ホ 本件事業に係る権利変換期日は、平成9年5月15日である。
ヘ 本件施設建築物の敷地であるP市Q町○○番に所在する土地の登記簿に係る全部事項証明書によれば、平成9年5月15日都市再開発法による権利変換を原因として、平成9年8月8日受付で、被相続人の持分を100万分の73,528とする所有権保存の登記がされている。
ト 本件組合と株式会社H(以下「H」という。)は、賃貸人を本件組合、賃借人をHとする賃貸借予約契約書を平成10年8月3日に作成しており、この賃貸借予約契約書には、本件施設建築物のうちホテルの用に供する部分を賃貸借し、賃貸を開始する日は、賃貸借契約にて定める旨の記載がある。
チ 請求人らは、本件事業により本件施設建築物のホテル部分のうち、100万分の131,300の持分の給付を受ける権利(以下、この持分に係る権利を「本件施設建築物に関する権利」という。)を本件相続により取得した。
リ 本件組合は、本件事業に係る本件施設建築物の建築工事について、平成12年10月26日に完了した旨の公告をした。
ヌ 本件施設建築物(家屋番号Q町○○番の○、○○番○及び○○番○)に係る区分建物全部事項証明書には、種類はホテル、登記原因は平成12年10月26日新築、登記の日付は平成12年12月21日、登記目的は所有権保存、権利者は共有者である被相続人ほか6名(社)で被相続人の持分は100万分の131,300(以下、この建物に係る被相続人の持分100万分の131,300に相当する部分を「本件持分建物」という。)である旨の記載がある。
ル 被相続人が原処分庁に提出した平成12年分の所得税青色申告決算書(不動産所得用)には、本件持分建物に係る賃貸料収入の記載はない。
ヲ Eが原処分庁に提出した平成12年分の所得税青色申告決算書(不動産所得用)には、本件持分建物に係る同年中の賃貸契約期間は平成12年10月から平成12年12月までである旨の記載がある。
ワ 請求人らは、本件申告書に本件施設建築物に関する権利の価額をJ株式会社所属の不動産鑑定士K及び同Lが作成した平成12年10月25日付第○○○号の鑑定評価書(以下「本件鑑定評価書」という。)の鑑定評価額(以下「本件鑑定評価額」という。)に基づき算出した。
なお、本件鑑定評価書には、要旨次のとおり記載がある。
(イ)本件鑑定評価額は390,000,000円(本件持分建物の評価額)
(ロ)評価対象不動産は本件持分建物
(ハ)価格時点は本件相続開始日、鑑定評価を行った日は平成12年10月16日
(ニ)本件施設建築物に関する権利の価額は、本件施設建築物が価格時点では工事中であったが、鑑定評価を行った時点では竣工しているので、完成建物を前提として評価する。
(ホ)本件施設建築物と類似の適切な取引事例は求め難いので、「原価法による積算価格」と「DCF法による収益価格」と関連づけて鑑定評価を決定する。
また、評価対象不動産は収益用不動産であるので、原則として収益価格を重視すべきところ、予測値もあるため積算価格をやや重視して本件施設建築物に関する権利の価額を決定した。
2 主張
(1)原処分庁
原処分は、次の理由により適法であるから、本件審査請求をいずれも棄却するとの裁決を求める。
イ 本件各更正処分について
(イ)本件施設建築物に関する権利の価額
A 相続税法第22条は、上記1の(3)のイのとおり規定しており、この場合における時価とは、課税時期において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われた場合に通常成立すると認められる価額、すなわち、当該財産の客観的な交換価値をいうものと解されている。しかし、相続税の課税対象となる財産は、多種多様であり、当該財産の客観的な交換価額は必ずしも一義的に確定されるものではないことから、課税実務上、相続税法に特別の定めがある場合を除き、相続税の課税価格計算の基礎となる財産を評価するための一般基準である評価基本通達に基づき、画一的な評価方法によって相続財産を評価することとしている。この画一的な評価方法により評価する趣旨は、相続財産の客観的な交換価値を個別に評価する方法を採ると、その評価方式や基礎資料の選択の仕方等により異なった評価額に格差が生じる結果となることを避け難く、また、納税者の申告手続及び課税庁の事務負担が重くなり、課税事務の迅速な処理が困難となるおそれがあることなどから、あらかじめ定められた評価方法によりこれを画一的に評価することが、納税者間の公平、納税者の便宜、徴税費用の節減という見地からみて合理的であるという理由に基づくものと解される。
B 第一種市街地再開発事業とは、低層木造住宅等の密集地域において、その低層木造住宅等を除去したうえ、その地域に高層建築物を建築するとともに、その地域に必要な道路、公園などの公共施設を整備し、従前の低層木造住宅等の居住者をその新たに建築した高層建築物に収容し、その地域における土地所有者、借地権者、建物所有者及び借家権者の権利関係の調整を行う事業をいい、権利変換を希望しない旨の申出をした者を除き、権利変換計画において施行地区内に建築物等を所有する者に対して、施設建築物の一部等が与えられることとされている。
そして、施行地域内の従前の建築物は、権利変換期日において施行者に帰属するとともに、従前の建物所有者には、その建築物に代えて施設建築物の一部等の給付を受ける権利(債権)が与えられることになり、当該権利は、従前の土地、借地権及び建築物の価額を基に関係権利者相互間で不均衡が生じないように定めることとされており、その価額は、事業計画において明らかにされている。
したがって、従前の建物等の所有者は、権利変換期日において、まだ施設建築物は存在しないことから、将来施設建築物が完成したならば、その施設建築物の一部を取得できるという権利(債権)を取得するにとどまり、施設建築物が完成した後において、当該権利に基づき、施設建築物の一部の給付を受けることとなる。
C 上記1の(4)のハからへまでの事実によれば、被相続人は本件事業に伴い、権利変換計画に同意し、平成9年5月15日に都市再開発法による権利変換が行われていることが認められる。
そして、上記1の(4)のリのとおり、本件施設建築物の建築工事の完了が平成12年10月26日に公告されていることからすれば、本件相続開始日における被相続人に帰属する財産は、上記Bのことから、本件施設建築物に関する権利である債権と認められる。
したがって、本件施設建築物に関する権利の価額は、上記1の(4)のハのとおり、本件事業に係る権利変換の時における権利変換価額553,055,000円(以下「本件権利変換価額」という。)を基に算出すべきところ、当該権利は貸付債権等とは異なり、完成すれば、本件施設建築物の一部の給付を受けられること、本件相続開始日の時点では、本件施設建築物は建築中であることから、評価上、一定の安全性を考慮し、また、評価基本通達91の定めとの均衡を図る観点から、本件権利変換価額から30%を減額することが合理的であると判断される。
したがって、本件施設建築物に関する権利の価額は、本件権利変換価額に70%を乗じた387,138,500円となる。
(ロ)請求人らは、本件施設建築物に関する権利の価額は、本件鑑定評価額を基に評価基本通達93《貸家の評価》に定める貸家として評価すべきである旨主張する。
しかしながら、本件鑑定評価額は、上記1の(4)のワのとおり、本件施設建築物の完成を前提とした価額であるところ、上記(イ)のCで述べたとおり、本件相続開始日における被相続人に帰属する財産は本件施設建築物に関する権利であることからすれば、そもそも評価対象財産が異なるものであり、前提が異なる本件鑑定評価額を採用することはできない。
また、貸家とは、借家法又は借地借家法に基づき建物の賃借人が有する権利、すなわち、借家権の目的となっている現況にある家屋をいうところ、上記1の(4)のリからヲまでの事実によれば、本件持分建物は本件相続開始日において完成しておらず、賃貸借が開始されていないことからすれば、本件施設建築物に関する権利の価額の算出に当たり賃貸の用に供されているとして評価することはできない。
したがって、請求人らの主張には理由がない。
(ハ)以上のとおり、請求人らの主張にはいずれも理由がなく、本件相続開始日における本件施設建築物に関する権利の価額は、上記(イ)で述べたとおり、387,138,500円となり、請求人らの本件相続税の課税価格及び納付すべき税額を算出すると、いずれも本件各更正処分と同額となるから、本件各更正処分は適法である。
ロ 本件各賦課決定処分について
上記イのとおり、本件各更正処分はいずれも適法であり、また、請求人らの場合、国税通則法(以下「通則法」という。)第65条《過少申告加算税》第4項に規定する「正当な理由があると認められるものがある場合」には該当しないので、同条第1項の規定に基づき行った本件各賦課決定処分は適法である。
(2)請求人ら
原処分は、次の理由により違法であるから、その全部の取消しを求める。
イ 本件各更正処分について
本件施設建築物に関する権利の価額は、次の理由から、本件鑑定評価額を基に評価基本通達93に定める貸家として評価すべきである。
(イ)原処分庁は、本件施設建築物に関する権利の価額を平成9年の本件権利変換価額を基に算出しているが、評価基本通達204《貸付金債権の評価》及び同通達205《貸付金債権等の元本価額の範囲》は、貸付金債権等のような債権であっても、相続開始時点での債権の回収可能性を考慮し価額を算出する旨定めており、債権であってもその状況によって、権利の状態や価額が異なるものであるから、これを一律に平成9年の本件権利変換価額によって算出するのは違法・不当である。
また、原処分庁は、本件施設建築物に関する権利の価額について、一定の安全性を考慮し本件権利変換価額から30%減額しているが、あくまで評価上の安全性とは相続時点における相続税法上の財産評価の安全性であり、相続時点とは異なる時点で評価されたものまで包括的に考えることは疑問である。
(ロ)本件施設建築物は、本件相続開始日の前に賃貸予約契約を締結し、賃貸目的以外の用に供し得ないことは明らかである。
(ハ)本件施設建築物を投資物件と考えた場合、賃貸収入のない建築中の家屋より完成し賃貸収入のある家屋の価額の方が高いのは明らかであるところ、原処分庁は本件施設建築物に関する権利の価額は、387,138,500円である旨主張するが、賃貸収入のある本件持分建物の価額を評価基本通達の定めにより算出すると、162,423,500円(平成13年度の固定資産税評価額232,033,572円×70%)となり、建築中の家屋の価額が建築後の家屋の価額より高くなるのであるから、これは不合理であり、また、平成13年度に死亡した時の価額に比べて異なった価額となること自体も異常である。
ロ 本件各賦課決定処分について
上記イのとおり、本件各更正処分はその全部を取り消すべきであるから、本件各賦課決定処分はその全部を取り消すべきである。
3 判断
本件審査請求の争点は、本件施設建築物に関する権利の価額の多寡であるので、以下審理する。
(1)本件各更正処分について
イ 認定事実
請求人ら提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ)本件組合は、平成12年9月29日に本件施設建築物を、施行業者から引渡しを受けた。
(ロ)本件組合が請求人らに対し発行した平成13年6月14日付の権利変換価額の確定通知書には、本件権利変換価額が再計算(変更)され、権利者Eの施設建築物に関する権利の価額259,685,180円、清算金(交付額)16,846,320円及び権利者Fの施設建築物に関する権利の価額259,685,180円、清算金(交付額)16,846,320円である旨記載がある。
(ハ)上記(ロ)の本件権利変換価額の変更は、本件施設建築物の工事が完了し、建築請負業者、設計業者及びコンサルタント業者等への支払代金の精算が行われ、清算金の額が当初の権利変換価額の予定額より減額となったことによるものである。
ロ 第一種市街地再開発事業
(イ)第一種市街地再開発事業において、施行地域内の従前の建築物は、権利変換期日において施行者に帰属するとともに(都市再開発法第87条《権利変換期日における権利の変換》第1項)、従前の建物所有者には、その建築物に代えて施設建築物の一部等の給付を受ける権利を与えられることになり(都市再開発法第87条第2項)、当該権利は、従前の土地、借地権及び建築物の価額を基に関係権利者相互間で不均衡が生じないように定められ(都市再開発法第77条《施設建築物の一部等》第4項)、その価額は、事業計画において明らかにされている(都市再開発法第73条《権利変換計画の内容》第1項第4号)。
したがって、従前の建物等の所有者は、権利変換期日においては、まだ施設建築物は存在しないことから、将来施設建築物が完成したときに、その施設建築物の一部を取得できるという権利(債権)を取得するにとどまり、施設建築物が完成した後において、当該権利に基づき、施設建築物の一部の給付を受けることとなるものと認められる。
ハ 本件施設建築物に関する権利の価額
(イ)請求人らは、本件施設建築物に関する権利の価額を一律に本件権利変換価額によって算出するのは違法・不当であり、また、原処分庁が、本件施設建築物に関する権利の価額について、一定の安全性を考慮し本件権利変換価額から30%減額している点について、相続時点とは異なる時点で評価されたものまで包括的に考えることは疑問である旨主張する。
ところで、上記1の(4)のハからヘまでの事実によれば、被相続人は本件事業に伴い、本件施設建築物に関する権利の価額を553,055,000円とする権利変換計画に同意し、その後、平成9年5月15日に都市再開発法による権利変換が行われ、上記1の(4)のチのとおり、請求人らは、本件施設建築物に関する権利を本件相続により取得している。
また、上記1の(4)のリのとおり、本件施設建築物の建築工事の完了が平成12年10月26日に公告されていること及び上記イの(ロ)のとおり、請求人らが相続した本件施設建築物に関する権利に係る権利変換価額の確定通知書によれば、当該価額は553,063,000円に増額変更され、請求人らはこの価額を基に清算金の交付を受けていることが認められる。
これらのことから、本件権利変換価額は、本件相続開始日において当該価額が減少している事実も認められず、本件施設建築物に関する権利の価額は、553,055,000円とするのが相当であるところ、当該権利は貸付債権等とは異なり、完成した後に本件施設建築物の一部の給付を受けるものであること及び本件相続開始日の時点においては、本件施設建築物は建築中であることから、原処分庁が評価基本通達91で定める建築中の家屋の価額との均衡を図るために、本件権利変換価額から30%を減額して算出した本件施設建築物に関する権利の価額は相当と認められる。
したがって、この点に関する請求人らの主張には理由がない。
(ロ)請求人らは、本件施設建築物に関する権利の価額は、本件施設建築物は、本件相続開始日の前に賃貸予約契約を締結し、賃貸目的以外の用に供し得ないことは明らかであるから、貸家として評価すべきである旨主張する。
しかしながら、貸家とは、借家法又は借地借家法に基づき建物の賃借人が有する権利、すなわち、借家権の目的となっている現況にある家屋をいうところ、相続開始時点で賃貸の用に供していない家屋は貸家とはいえないものと解されており(最高裁平成10年2月26日第1小法廷判決)、上記1の(4)のリからヲまでの事実によれば、本件相続開始日現在において、本件施設建築物は完成しておらず、賃貸借が開始されていないことからすれば、本件施設建築物に関する権利の価額を賃貸の用に供されているものとして算出することは相当とは認められない。
したがって、請求人らの主張には理由がない。
(ハ)請求人らは、本件持分建物について、建築中である家屋の価額が建築後の家屋の価額より高くなるのは不合理であり、また、平成13年度に死亡した時の価額に比べて異なる価額となることは異常である旨主張する。
しかしながら、請求人らが主張する本件持分建物の価額の算定の基とした固定資産税評価額は、家屋の場合は再構築価額を基準として評価するものとされており、建築中の家屋と完成後の家屋についての評価方法がそれぞれ異なる以上、投下資本による評価額が固定資産評価額と異なることがあるのは当然であり、本件持分建物の固定資産評価額が投下資本の額を下回る場合があるからといって、その評価方法の合理性が失われることはないというべきである。
したがって、請求人らの主張には理由がない。
(ニ)請求人らは、本件施設建築物に関する権利は本件鑑定評価額を基に評価すべきである旨主張する。
しかしながら、本件鑑定評価額は、上記1の(4)のワのとおり、本件施設建築物の完成を前提とした本件持分建物の価額であるところ、上記1の(4)のチのとおり、請求人らは、本件施設建築物に関する権利(債権)を本件相続により取得しているのであり、その評価の対象となる財産が異なるのであるから、本件鑑定評価額を採用することはできず、請求人らの主張には理由がない。
ニ 以上のとおり、請求人らの主張にはいずれも理由がなく、本件施設建築物に関する権利の価額は、上記ハの(イ)に述べたとおり、本件権利変換価額から30%を控除した387,138,500円となり、この金額は本件各更正処分に係る金額と同額となるから、請求人らに対する本件各更正処分は適法である。
(2)本件各賦課決定処分について
本件各更正処分は、上記(1)のとおり適法であり、請求人らの場合、本件各更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が、本件各更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項の規定に基づいて行った本件各賦課決定処分は適法である。
(3)その他
原処分のその他の部分については、請求人らは争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。