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(平16.3.8裁決、裁決事例集No.67 350頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、審査請求人であるJ、K、L、M及びN(以下「請求人ら」という。)が共有していた土地を法人に譲渡したことについて、著しく低い価額の対価により土地を譲渡したとして、所得税法第59条《贈与等の場合の譲渡所得等の特例》第1項第2号(以下「低額譲渡の特例」という。)の規定を適用できるか否かを争点とする事案である。

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(2)審査請求に至る経緯

イ 請求人らは、平成11年分の所得税について、確定申告書にそれぞれ別表1の「確定申告」欄のとおり記載して、いずれも法定申告期限までに申告した。
ロ P税務署長は、Kに対し、課税所得の計算に誤りがあったとして、平成12年5月30日付で、別表1の「更正」欄のとおり更正処分をした。
ハ Mは、P税務署長に対して、所得から差し引かれる金額に誤りがあったとして、平成13年8月29日に、別表1の「修正申告」欄のとおりの修正申告書を提出した。
ニ その後、P税務署長は、同署所属の調査担当者(以下「調査担当職員」という。)の調査に基づき、平成14年10月23日付でJ、K、L及びMに対して、また、Q税務署長は、同署所属の調査担当者の調査に基づき、平成14年11月13日付でNに対して、別表1の「更正処分及び賦課決定処分」欄のとおり、それぞれ更正処分(以下「本件各更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」といい、本件各更正処分と併せて「原処分」という。)をした。
ホ 請求人らは、P税務署長及びQ税務署長(以下、両税務署長を併せて「原処分庁」という。)が行った原処分を不服として、J、K、L及びMは平成14年11月25日に、また、Nは平成14年11月27日に、異議申立てをしたところ、それぞれの異議審理庁は、J、K、L及びMに対して、平成15年2月17日付で、また、Nに対して、平成15年2月21日付で、棄却の異議決定をした。
ヘ 請求人らは、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成15年3月14日に、それぞれ審査請求をした。
ト なお、請求人らは、平成15年5月12日に、Jを総代として選任する旨及び一括しての審査を求める旨を届け出た。
 そこで、これらの審査請求について併合審理をする。

(3)基礎事実

 以下の事実は、請求人ら及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所が調査したところによっても、その事実が認められる。
イ 請求人らは、平成10年11月27日に死亡したd(以下「d」という。)の相続人であり、J及びMはe株式会社(以下「e社」という。)の取締役、Lは会社員、Kはパートタイマーで、いずれもX市に居住し、Nはパートタイマーで、Y市に居住している。
ロ 請求人らは、dから相続した別表2の土地1,596.81平方メートル(請求人らの持分は、それぞれ5分の1。以下「本件土地」という。)を、平成11年5月10日付の売買契約により、e社に対して、総額7,000,000円(以下「本件譲渡価額」という。)で譲渡した。
 なお、請求人らの持分に係る各人の譲渡価額は、1,400,000円である。
 また、1平方メートル当たりの価額は、4,383円である。
ハ 本件土地の平成10年度から平成14年度における固定資産税評価額は、いずれも1平方メートル当たり14,280円であり、変動していない。
ニ f信用金庫(以下「f信金」という。)は、本件土地について、平成11年10月29日に、債務者をe社とする、極度額30,000,000円の根抵当権を設定している。
ホ e社及び同社の代表取締役会長でJの夫でもあるg(以下「g」という。)は、別表3の土地6,010.37平方メートル(以下「近傍土地」という。)とその上に存する建物(倉庫)を、平成13年6月22日付の売買契約により、重機会社を経営するh(以下「h」という。)に対して、43,000,000円で譲渡した。
 なお、近傍土地の平成14年度の固定資産税評価額は、宅地が1平方メートル当たり8,540円、雑種地と原野が1平方メートル当たり5,978円である。

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2 主張

(1)請求人らの主張

 原処分は、次の理由により違法であるから、その全部の取消しを求める。
イ 更正処分
 請求人らが平成11年5月10日付の売買契約によりe社に譲渡した本件土地の譲渡価額は、次の理由により、低額譲渡の特例には該当しない。
(イ)低額譲渡の特例の趣旨は、関係者が恣意的に利益を得ることを防止するものであると考えられるが、本件譲渡価額は、次のとおり、譲渡者である請求人らと譲受者であるe社の双方ともに、恣意的に利益を得るために決定したものではないので、低額譲渡の特例の適用を受けることはできない。
A 本件土地は、市街化調整区域に所在するため、将来、値上がりする可能性はなく、売却も困難である。
 また、請求人らは、本件土地の利用を考えていないので、資材置場として賃貸していたe社に対して購入を強く要望した結果、本件土地についての売買契約が成立したものである。
B 譲渡価額の7,000,000円は、e社が購入することができる金額を考慮して総合的に決まったものであり、請求人らにとっては、全く売れそうもない土地が総額7,000,000円で売れたことは、大変有難く満足している。
(ロ)e社及びgは、平成13年6月22日に、近傍土地を3.3平方メートル当たり23,609円で譲渡しているが、近傍土地の譲渡は、第三者である仲介業者3社が介在して取引されたことから、近傍土地の売買実例が本件土地の周辺の時価を反映しているものである。
 そうすると、本件土地の3.3平方メートル当たりの譲渡価額である14,466円は、近傍土地の3.3平方メートル当たりの譲渡価額である23,609円の2分の1以上となっていることから低額譲渡の特例には該当しない。
 また、本件土地と近傍土地は、次のとおり、所在区域、利用価値、形状等の条件に差異はない。
A 本件土地及び近傍土地ともに市街化調整区域内に所在し、しかも、近傍土地は、本件土地と道路を隔てた場所に位置し、極めて至近距離にある。
B 近傍土地は、本件土地と同様に倉庫建設の許可を取り、現に近傍土地にも倉庫が建っているから、本件土地と近傍土地は、利用価値が同じである。
C 本件土地は、近傍土地のように広い面積の土地であるので、少々の土地の形状の違いは土地価額に影響を及ぼさない。
(ハ)一般的に、市街化調整区域内の土地の価額は、その売買理由や取得目的によってかなりの変動があり、例えば、所有している土地に隣接した土地を購入するというような場合には高値で取引されることになり、このような取引の場合には、周辺の時価を適正に示しているとはいえず、また、原処分庁が示した売買実例は、具体的な場所も分からないので、採用できない。
 また、e社及びgが近傍土地を譲渡した経緯等を参考にすると、不動産鑑定士が評価したような価額で、本件土地を売買することは不可能であると考えられる。
(ニ)e社は、本件土地を取得した後の平成11年10月に、f信金に融資を申し込んだ際、本件土地を担保に供しているが、f信金は、本件土地の評価額を15,000,000円として融資をしたものではなく、また、e社は、無担保となっていた本件土地を機械的に担保の物件としたものであり、本件土地の評価に見合う融資が行われたものではない。
ロ 過少申告加算税の賦課決定処分
 上記イのとおり、本件各更正処分は違法であるから、過少申告加算税の本件各賦課決定処分についても、その全部を取り消すべきである。

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(2)原処分庁の主張

 原処分は、次の理由により適法であるから、審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 更正処分
 請求人らが平成11年5月10日に行ったe社に対する本件土地の譲渡は、次のとおり、低額譲渡の特例に該当する。
(イ)低額譲渡の特例について
 請求人らは、低額譲渡の特例の趣旨は関係者が恣意的に利益を得ることを防止するものであるから、本件土地の譲渡はこれに違反しているものではないので、低額譲渡の特例を適用することができない旨主張する。
 しかしながら、低額譲渡の特例は、居住者の有する山林(事業所得の基因となるものを除く。)又は譲渡所得の基因となる資産について、法人に対して、時価の2分の1未満の価額による譲渡があった場合には、その時の時価により譲渡があったものとみなして、その資産の所有期間中における値上り益(キャピタル・ゲイン)について、その所有者であった譲渡人に対し所得税を課税するというものである。
 また、この低額譲渡の特例の考え方は、個人に対する資産の贈与等の場合には、資産の譲受者がその資産の譲渡者の取得価額を引き継ぎ、譲受者が資産を譲渡した際にそれまでに生じているキャピタル・ゲインに対する清算課税を行うとし、一方、法人に対する資産の贈与又は低額譲渡の場合には、譲渡者の取得価額を譲受者に引き継がせてしまうと、個人に帰属すべき譲渡所得を法人の所得として課税するという不合理が生じることから、資産の移転の際にそれまでに個人に生じているキャピタル・ゲインに対する清算課税を行うというものであり、課税の公平負担を期するための妥当なものというべきである。
 したがって、請求人らの主張には理由がない。
(ロ)近傍土地の取引価額について
 請求人らは、近傍土地の取引価額について、不動産取引業者3社が仲介したことをもって、その売買実例が本件土地の周辺の時価を示しているとして、本件土地の時価は、近傍土地の売買実例が示す3.3平方メートル当たり23,609円の2分の1以上であるから低額譲渡の特例には該当しない旨主張する。
 しかしながら、本件土地と近傍土地を比較すると、次のとおり、その利用価値、区画形状等が大きく異なっているから、近傍土地の取引価額をもって、本件土地の時価とみることには合理性が認められない。
A 本件土地は、市街化調整区域であるが、「既存宅地確認申請書」(平成12年5月19日改正前の都市計画法(以下「旧都市計画法」という。)第43条《開発許可を受けた土地以外の土地における建築等の制限》第1項第6号ロに規定する都道府県知事の確認を受けたもの)が提出されているため、自己の居住用又は事業用の建築物の建築が可能である。
B 本件土地の現状は、その地目がすべて宅地で自己の居住用又は事業用の建築物の建設が可能であるが、近傍土地は、その一部が宅地で他の部分は雑種地及び原野であり、上記Aの「既存宅地確認申請書」が提出されていないことから、建築物の建設に制限があり、宅地としての利用価値が大きく異なっており、このことは、本件土地と近傍土地とでは1平方メートル当たりの固定資産税評価額が前記1の(3)のハ及びホのとおり、大きく異なっていることからも明らかである。
C 本件土地の形状は、国道○○号線に面している間口が約45メートル、奥行が約37メートル、面積が約1,600平方メートルであるのに対して、近傍土地の形状は、国道○○号線に面している間口が約19メートル、奥行が約140メートル、面積が約6,000平方メートルであり、同様の形状であるとはいえない。
D e社は、譲り受けた本件土地を金融機関の担保に供した際、本件土地には、平成11年10月29日付で極度額30,000,000円の根抵当権が設定されている。
E 異議申立てに係る調査において、不動産取引業者は、「本件土地と近傍土地とではその形状からしても土地の値段が違う。近傍土地は国道に面している部分が短くて価値は全く違う。近傍土地の方の価額が安い。」旨申し述べている。
F 以上のとおり、本件土地と近傍土地とでは、その立地条件及び利用価値等も異なることから、近傍土地の取引価額をもって本件土地の時価とみることには合理性がない。
G したがって、請求人らの主張には理由がない。
(ハ)時価について
 時価とは、課税時期において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいうものと解されており、一方において、客観的要素が考慮されるとともに、他方において主観的な要素が排除されたものとした場合における価額をいうものと解されている。
 そこで、本件土地の譲渡の時における価額について、売買実例価額、不動産鑑定士による鑑定評価額等をしんしゃくしたところ、次のとおり、本件土地の価額は、総額で25,400,000円(1平方メートル当たり約15,900円)であると認められる。
A 売買実例からの算定価額 26,947,232円
 次の売買実例による1平方メートル当たりの譲渡価額を基に算定した本件土地の価額の平均値である。
(A)売買実例1
a 取引年月日 平成13年7月
b 1平方メートル当たりの譲渡価額 15,124円
c 算定価額
15,124円×1,596.81平方メートル(本件土地の地積)=24,150,154円
(B)売買実例2
a 取引年月日 平成13年12月
b 1平方メートル当たりの譲渡価額 17,860円
c 算定価額
17,860円×1,596.81平方メートル(本件土地の地積)=28,519,026円
(C)売買実例3
a 取引年月日 平成12年3月
b 1平方メートル当たりの譲渡価額 17,643円
c 算定価額
17,643円×1,596.81平方メートル(本件土地の地積)=28,172,518円
B 不動産鑑定士による鑑定評価額
25,400,000円
C 上記A及びBのとおり、本件土地と立地条件等が類似する土地の売買実例からみた場合の土地の価額と、不動産鑑定士による本件土地の鑑定評価額は同程度の金額であり、また、買い進みや売り急ぎの事情を排除すべきことを考慮すれば、不動産鑑定士による鑑定評価額をもって本件土地の価額とみるのが合理的である。
(ニ)本件土地の譲渡時の価額について
 請求人らは、〔1〕市街化調整区域内の土地の価額については、売買の理由等によってかなりの変動があるため、原処分庁の示した売買実例が必ずしも周辺の時価を適正に示しているとはいえないから、それを採用することはできない、〔2〕不動産鑑定士が評価したような価額では、本件土地を売買することは不可能であると考えられる旨主張する。
 しかしながら、時価は、次のとおり、売買実例価額などの各種の要素を考慮して、最終的に不動産鑑定士による鑑定評価額をもって本件土地の譲渡の時における価額とみるのが合理的であるから、請求人らの主張には理由がない。
A 売買実例価額
 上記(ハ)のAのとおり、3件の売買実例をみると、その売買価額は1平方メートル当たり15,124円から17,860円の範囲内にある。
 また、これらの売買実例は、平成12年又は平成13年のものであるが、R県が実施した地価調査結果によれば、平成11年から平成13年にかけて、S市s町内の地価調査基準地の地価変動率は、住宅地、市街化調整区域内宅地及び宅地見込地のいずれも0%と横ばいの状況にあることから、特に時点修正を行う必要はないと判断される。
B 地価公示価格及び地価調査基準地の標準価格
 本件土地の時価1平方メートル当たり約15,900円は、国土庁土地鑑定委員会の地価公示価格及びR県の地価調査基準地の標準価格からみても、次のとおり、妥当なものである。
(A)地価公示価格
 地価公示法に基づいて公示された国土庁土地鑑定委員会の「平成11年地価公示」には、S市s町内に所在する宅地として、S市s町○○○番外の宅地1,141平方メートル及び同町○○○番の宅地256平方メートルが掲載されており、当該地価公示地に係る平成11年地価公示価格は、それぞれ1平方メートル当たり59,500円及び41,500円となっている。
(B)地価調査基準地の標準価格
 国土利用計画法施行令第9条《基準地の標準価格》の規定に基づいて公表されたR県の「平成11年地価調査基準地の標準価格」には、S市s町内に所在する宅地として、同町○○番○の宅地285平方メートル、同町○○番○○の宅地294平方メートル及び同町○○番○○○の宅地549平方メートルが掲載されており、当該基準地に係る平成11年標準価格は、それぞれ1平方メートル当たり44,800円、35,400円及び11,400円となっている。
(ホ)以上のとおりであるから、本件土地の譲渡の時における価額は、25,400,000円であり、共有持分者1人当たりの価額は5,080,000円となる。
 そうすると、請求人らが主張するe社に対する本件土地の共有持分者1人当たりの譲渡価額は1,400,000円であり、この金額は、上記5,080,000円の2分の1に満たない金額であるから、低額譲渡の特例に該当する。
(ヘ)したがって、本件土地の譲渡の時における価額5,080,000円により本件土地の譲渡があったものとみなして、本件土地に係る譲渡所得の金額及びこれに伴う納付すべき税額を計算し、これに基づいてなされた本件各更正処分は適法である。
(ト)請求人らの分離長期譲渡所得の金額について
 なお、請求人らの平成11年分の所得税に係る分離長期譲渡所得の金額を計算したところ、次のとおり、3,823,600円である。
A 譲渡価額 5,080,000円
 本件土地の譲渡時における価額は、上記(ハ)のとおり、25,4000,000円であるから、これを共有持分者5名で除した1人当たりの譲渡価額である。
B 本件土地の概算取得費 254,000円
 租税特別措置法(以下「措置法」という。)第31条の4《長期譲渡所得の概算取得費控除》第1項の規定により譲渡価額5,080,000円の100分の5に相当する金額である。
C 譲渡費用 2,400円
 請求人らが確定申告において計上していた収入印紙に係る費用である。
D 特別控除額 1,000,000円
 措置法第31条《長期譲渡所得の課税の特例》第4項に規定する特別控除額である。
E 分離長期譲渡所得の金額 3,823,600円
 上記Aの金額から上記B、C及びDの金額を控除した金額である。
ロ 過少申告加算税の賦課決定処分
 本件各更正処分は、上記イのとおり、適法であり、また、請求人らが本件土地に係る譲渡所得の金額を過少に申告したことについて、国税通則法(以下「通則法」という。)第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項及び第2項の規定に基づいてなされた本件賦課決定処分は適法である。

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3 判断

 本件の争点は、請求人らが本件土地を譲渡したことについて、低額譲渡の特例を適用できるか否かにあるので、以下審理する。

(1)更正処分

イ 認定事実
 請求人提出資料、原処分庁関係資料及び当審判所が調査したところによれば、次の事実が認められる。
(イ)本件土地は、別紙のとおり、東側が国道○○号線に面した間口が約45メートル、奥行が約37メートル、面積が約1,600平方メートルの市街化調整区域内(建ぺい率:70%、容積率:400%)にある台形の土地である。
 なお、e社は、本件土地を譲渡されるまで、資材置場としてdから賃借していた。
(ロ)本件土地は、平成6年9月に旧都市計画法第43条第1項第6号ロの規定による県知事の確認を受けている土地(以下「既存宅地」という。)である。
(ハ)j株式会社の代表取締役で不動産鑑定士でもあるkは、原処分庁の鑑定依頼を受けて本件土地の鑑定評価(以下「本件鑑定」という。)を行い、鑑定評価額を25,400,000円とする鑑定評価書(以下「本件鑑定書」という。)を平成14年10月11日に原処分庁へ提出した。
 なお、本件鑑定書には、要旨次の記載がある。
A 鑑定評価額の総額は25,400,000円、単価は1平方メートル当たり15,900円である。
B 価格時点は平成11年5月10日(過去時点)で、鑑定評価を行った日は平成14年10月7日である。
C 鑑定評価の対象とする権利は所有権、鑑定評価の依頼目的は時価調査のため、価格の種類は正常価格である。
D 対象地にはプレハブ倉庫(所有者:e社)が存するが、簡易な構造であること及び未登記であることから、借地権は発生しないと判断して、更地価格を鑑定評価する。
E 鑑定評価手法の適用に当たっては、更地の鑑定評価であり、取引事例比較法を適用する。
 なお、原価法については、適切な造成事例が見当たらないため適用せず、収益還元法についても、近隣地域における行政的条件による制約等により収益性からの価格接近は困難であると判断し、適用しない。
F 取引事例比較法を適用して、本件土地の近隣で市街化調整区域内に所在する宅地の取引事例3件を抽出し、これらの取引価額のそれぞれに事情補正、時点修正、建付減価補正、標準化補正、地域格差の比較に基づく価格修正を行い、その標準価格を1平方メートル当たり17,100円と査定した。
G 標準画地と比較すると、環境条件、画地条件の個別格差が認められることから、これらの個別的要因に伴う格差率を判断して、比準価格を1平方メートル当たり15,900円と決定した。
H 本件土地の近隣で市街化調整区域内に所在する公示地(S市10−a)の公示価格を規準とした価格1平方メートル当たり14,300円との均衡にも留意した。
(ニ)近傍土地は、別紙のとおり、西側が国道○○号線に接する間口距離が約19メートル、奥行が約140メートル、面積が約6,000平方メートルの市街化調整区域内(建ぺい率:70%、容積率:400%)に存し、他人が所有する農地317平方メートルを挟んだ不整形の土地で、平成13年7月に譲渡されるまでは、e社の資材置場であった。
(ホ)上記(ニ)の農地317平方メートルは、平成13年8月31日に、近傍土地の買主であるhが2,000,000円で購入している。
(ヘ)請求人らは、当審判所に対して、次の証拠書類を提出した。
A 平成11年5月11日の状況(4枚)
B 7,000,000円を引き出した通帳の写し(1枚)
C 各人に1,400,000円を手渡したときに受領した領収書の写し(5枚)
D 借入及び返済状況(第35期)(3枚)
E 借入及び返済状況(36期)(2枚)
F 不動産売買契約書(平成11年5月10日付)
G 不動産売買契約書(平成13年6月22日付)
H 不動産の色分形状図(1枚)
I 相続の土地の時価の減価要因について(1枚)
(A)土地賃貸契約書(2枚)
(B)固定資産税・都市計画税納税通知書(1枚)
(C)e社が支払った伝票の写し(2枚)
(ト)上記Eのe社の「借入及び返済状況 第36期(H11.9.1〜H12.8.31)」の短期借入金のf信金の欄には、平成11年10月29日借入23,000,000円との記載がある。
(チ)上記Iの(A)のうち、dとe社との間で交わされた平成9年6月1日及び平成10年6月1日契約の本件土地の貸借契約書には、それぞれ借地料(1ヶ年)69,800円及び75,000円の記載がある。
 また、上記Iの(B)の本件土地に係る平成9年度及び平成10年度S市固定資産税・都市計画税納税通知書には、それぞれ年税額69,800円及び75,000円との記載がある。
(リ)f信金の「不動産担保調査評価表(土地)」及び「不動産担保台帳兼稟議書」には、本件土地の査定時価が30,396,000円、担保価額が21,275,000円との記載がある。
 また、不動産担保台帳兼稟議書には、「査定の7割を貸している。今回は21,275に対し23,000を貸している。他にも貸しているため。」のメモ書がある。
(ヌ)Jは、当審判所に対して、要旨次のとおりの答述をした。
A 本件土地は、従前からe社が土場として使用していたことから、請求人らはe社の土地と思っていたが、平成6年ころに、母の財産となっていることを知り、それ以降は、賃貸料として、e社が固定資産税を負担することにした。その後、母が平成10年に死亡したことから、請求人らが相続した。
B e社に賃貸している本件土地を、他人に売買することは考えられないことから、これまで賃貸していたe社に買ってもらいたいと思い、購入を依頼した。
 当時、e社は、財務状況が思わしくなく、e社の顧問税理士に購入を反対されたが、資金の都合が付くということで売買契約が成立した。
C 譲渡価額の7,000,000円は、e社の顧問税理士の助言により決定したものであるが、譲受人が関係法人であるe社ということでもあり、具体的な算出根拠は明確でなく、漠然としたものだった。
 なお、本件土地は、関係法人であるe社への売買であったことから、不動産業者も介在しておらず、参考とした取引事例もない。
D 近傍土地のs町○○番の宅地については、取得した当時、市街化区域の線引きの設定がなかったことから、現在の倉庫を建てる際に、現存宅地として地目を宅地に変更している。
 なお、同町○○番の雑種地及び同町○○番の原野については、e社が、昭和63年ころ、宅地化の申請をしたものの許可を受けられなかったため、地目はそのままの雑種地及び原野となっている。
(ル)gは、当審判所に対して、要旨次のとおりの答述をした。
A 本件土地は、初代社長であるmの代から賃借していたものである。
 今回、請求人らから購入してくれとの強い申し出があったものの、e社としては当時、財務状況が思わしくなく、顧問税理士からも購入することに反対された。
 しかしながら、資金の都合が付くということで売買契約が成立した。
B 購入金額の7,000,000円は、関与税理士の助言により決定したが、具体的な算出根拠は明確でなく、漠然としたものだった。
 なお、本件土地は、購入後も、従前と同様に、資材置き場として利用している。
C e社が譲渡した同社所有の近傍土地については、会社の財政状況が思わしくなく、また、f信金から貸付金の資金回収の動きがあった時期でもあり、そのような時に、重機会社を経営しているhから、面積も広い近傍土地を買いたいとの申し込みがあったので、両者の思惑が一致して、譲渡価額を43,000,000円とする契約が成立した。
 なお、仲介業者は、e社側がn株式会社、また、h側がp株式会社(以下「p社」という。)及びq不動産(代表r)が、それぞれ介在して、売買契約が成立した。
(ヲ)近傍土地の譲渡契約に係る仲介者であるn株式会社の代表取締役t(以下「t」という。)は、調査担当職員に対して、要旨次のとおりの申述をした。
A 近傍土地の売買価額は、買主側の仲介者であるp社から、「先方は38,000,000円位で買いたいと言っている。」旨聞いたが、それではあまりに安いと感じて、5,000,000円上積みして43,000,000円に決まった。
B 売買価額の43,000,000円を土地代及び倉庫代に区分していないが、土地の価額が99%である。
 なお、倉庫は、屋根と外壁のみで、中は空っぽの状態だった。
C 本件土地の時価は、坪40,000円ないし50,000円位はする。近傍土地とは地理的にも土地の形状からしても全く異なっており、値段的には全く違う。
 また、本件土地は、ガソリンスタンド等の構築物を建てることができ、沿道サービス業であれば営業ができるから、価値はあると思う。
(ワ)近傍土地の譲渡契約に係る仲介者であるp社の元従業員u(以下「u」という。)は、調査担当職員に対して、要旨次のとおりの申述をした。
A 私とq不動産が買主の仲介者であった。
 当初、売主は、45,000,000円位の希望であったが、買主との話し合いの結果、売買価額を43,000,000円にすることが決まった。
B 本件土地を売る話もあったが、当時は、坪100,000円位という話だったので、とてもその金額では難しいと判断して仲介できなかった。
 当時、本件土地も総額35,000,000円(坪70,000円位)では売れたかもしれないが、e社の方からは、坪100,000円位を希望していたということを聞いていた。
C 近傍土地は、国道○○号に接している部分が短く、本件土地とは価値が全然違う。本件土地は、事業用、サービス業としての利用はできると思う。
(カ)近傍土地の買受人であるhは、調査担当職員に対して、要旨次のとおりの申述をした。
A 近傍土地の売買価額については、契約書が見当たらないのではっきり覚えていないが、ここに43,000,000円の領収書があるので、43,000,000円に間違いないと思う。
B 今回、自分が近傍土地を買うときに、q不動産だったか、gさんだったか記憶していないが、「本件土地でもいいよ。坪100,000円でも安いよ。」というような話があったものの、全然、土地の値段が違うので断った記憶がある。
C 本件土地が、今の時点で、坪幾らかというのは分からないが、当時の値段が坪50,000円位だったら買ったかもしれない。
(ヨ)周辺の土地の譲渡人であるv(以下「v」という。)は、調査担当職員に対して、要旨次のとおりの申述をした。
A 私は、当時、譲渡した土地を坪50,000円で買っていたから、そのままの坪50,000円で売った。坪50,000円は、この辺の相場であると思うし、買った値段で売れたから、良かったと思っている。
B 私が譲渡した土地の買主から、本件土地が、平成13年7月ころに、坪70,000円で売りに出ているという話を聞いたことがある。
(タ)e社が借入れを行ったf信金○○支店の支店長代理であるw(以下「w」という。)は、調査担当職員に対して、要旨次のとおりの申述をした。
A 融資に当たり、家屋については、建築価額や購入価額の聴取を行うが、土地については、固定資産税評価額と相続税評価倍率を基にした評価を重視している。
B 本件土地を担保として、e社に23,000,000円の融資を行っているが、これについては、担保物件(本件土地)の査定時価30,396,000円を基にしていることに間違いはない。
ロ 関係法令
 ところで、所得税法第59条第1項第2号は、「個人から法人に対する著しく低い価額の対価として政令で定める額による譲渡があった場合には、その事由が生じた時に、そのときの価額に相当する金額により譲渡があったものとみなす。」旨規定し、同法施行令第169条《時価による譲渡とみなす低額譲渡の範囲》は、「低額譲渡の特例が適用される著しく低い価額の対価の範囲を時価の2分の1に満たない金額とする。」旨規定している。
 この低額譲渡の特例の趣旨は、譲渡所得の総収入金額の計算に関する特例規定であって、現実に収入した金額にかかわらず、譲渡所得の基因となる資産の移転の事由が生じた時に、その時における価額に相当する金額をもって、当該資産の譲渡があったものとみなして、譲渡収入金額を擬制するものであると解される。
 また、個人から法人に対して著しく低い価額での譲渡があった場合における時価の算定方法について、所得税法上、明確な規定はないが、一般的に財産の時価とは、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額、すなわち、主観的な要素を排除した客観的な交換価値をいうものと解される。
 そして、「著しく低い価額の対価に該当するか否か」については、当該財産の譲渡の事情、当該譲渡の対価、当該譲渡に係る財産の通常の取引価額、当該財産の評価通達に基づく相続税評価額などを総合勘案して、社会通念に従って客観的に判断すべきものと解される。
ハ これを本件についてみると、以下のとおりである。
(イ)請求人らは、低額譲渡の特例の趣旨は関係者が恣意的に利益を得ることを防止することにあるので、譲渡者である請求人らと譲受者であるe社の双方は、恣意的に利益を得ることを目的として本件譲渡価額を決定したものではないので、低額譲渡の特例には該当しない旨主張する。
 しかしながら、低額譲渡の特例については、上記ロのとおり、低額譲渡か否かは譲渡価額が時価の2分の1に満たない金額か否かによって判断すべきであるから、租税回避を目的とした行為に適用されるのはもちろんのこと、また、それに限らず、当事者の具体的な意図、目的及び恣意性の有無を問わず、この低額譲渡の特例の規定が適用されるものである。
 したがって、請求人らの主張は採用することができない。
(ロ)また、請求人らは、本件土地と近傍土地とでは、所在区域、利用価値、形状等の条件に差異はないこと、また、近傍土地の譲渡は、第三者である仲介業者3社が介在して取引されたものであるから、近傍土地の売買実例が本件土地の周辺の時価を示しているものである旨主張する。
A 確かに、請求人らが主張するように、近傍土地は、本件土地と同じ市街化調整区域内に所在し、本件土地と国道○○号線を隔てた場所に位置し、極めて至近距離に存することが認められる。
B しかしながら、本件土地と近傍土地とでは、次のとおり、差異が認められる。
(A)本件土地は、その全てが宅地であるのに対して、近傍土地は、その面積6,010.37平方メートルのうち、宅地が1,670.37平方メートル、雑種地が3,815平方メートル及び原野が525平方メートルである。
(B)本件土地は、上記イの(ロ)のとおり、平成6年9月に既存宅地の確認を受けているのに対して、近傍土地は、上記イの(ヌ)のDのJの答述のとおり、e社が雑種地及び原野について、昭和63年ころに、宅地化の申請をしたが、許可を受けられず、地目はそのままの雑種地及び原野となっている。
(C)国道○○号線に面する間口距離は、本件土地が約45メートルであるのに対し、近傍土地は約19メートルである。
(D)前記1の(3)のハ及びホのとおり、本件土地の固定資産税評価額は1平方メートル当たり14,280円であるのに対し、近傍土地の固定資産税評価額は、宅地が1平方メートル当たり8,540円、雑種地と原野が1平方メートル当たり5,978円である。
(E)tは、上記イの(ヲ)のCのとおり、本件土地の時価は坪40,000円ないし50,000円位はする。近傍土地とでは、地理的にも土地の形状からしても、全く異なっており、値段的には全く違う旨申述している。
(F)uは、上記イの(ワ)のBのとおり、本件土地を売る話もあったが、当時は、坪100,000円位という話だったので、とてもその金額では難しいと判断して仲介できなかった。また、e社は、坪100,000円位を希望していたということを聞いていた旨申述している。
(G)hは、上記イの(カ)のB及びCのとおり、近傍土地を買う時に、本件土地については、q不動産だったかgさんだったか記憶していないが、坪100,000円でも安いというような話があったものの、近傍土地と比較した場合、全然、土地の値段が違っていた。また、本件土地が当時の値段で坪50,000円位だったら買ったかもしれない旨申述している。
(H)vは、上記イの(ヨ)のBのとおり、本件土地が、平成13年7月ころに、坪70,000円で売りに出ているという話を聞いたことがある旨申述している。
C 以上のことから、本件土地と近傍土地とでは、その立地条件、利用価値、区画形状等が大きく異なり、本件土地の1平方メートル当たりの価額は、近傍土地の価額に比べ、かなり高額であったと推認できる。
(ハ)さらに、請求人らは、〔1〕原処分庁が示した売買実例については、具体的な場所も分からず、周辺の時価を適正に示しているとはいえないから、原処分庁が主張する売買実例は採用できない。〔2〕e社が近傍土地を譲渡した経緯等を参考にすると、不動産鑑定士が評価したような価額では本件土地を売買することは不可能と考えられる。〔3〕賃貸契約がなされている土地については、賃貸契約がない土地より時価が安くなる。そして、〔4〕本件土地の3.3平方メートル当たりの譲渡価額である14,466円は、近傍土地の3.3平方メートル当たりの譲渡価額である23,609円の2分の1以上となっているから、低額譲渡には該当しない旨主張する。
 そこで、当審判所において、原処分庁が採用した売買実例及び鑑定評価について検討したところ、次のとおりである。
A 売買実例について
(A)ところで、一般的に、土地の時価相当額は、当該物件の取引に関して、時間的、場所的同一性及び物件的、用途的同一性の点で可及的に類似する物件の取引事例に依拠し、それを比準して算定するのが最も合理的で、相当な方法であると解される。
(B)原処分関係資料によれば、原処分庁は、S市s町における売買実例の中から、別表4のとおり、3件の売買実例を基礎とし、別表5のとおり、〔1〕特殊事情のしんしゃく、〔2〕本件土地の売買契約の締結日との時点修正、〔3〕本件土地との標準化補正(画地条件修正)、及び〔4〕本件土地との地域要因の修正をした上、3件の修正後の1平方メートル当たりの価額を基に本件土地の価額を算定し、その平均額である26,947,232円を本件土地の価額としていることが認められる。
(C)そうすると、原処分庁は、本件土地の適正価額の算定に当たって、時間的、場所的同一性及び物件的、用途的同一性の点で類似した物件の売買実例3件を採用し、〔1〕時点の相違、〔2〕画地条件の格差及び〔3〕地域要因の格差を考慮の上、1平方メートル当たりの価額を算出しているから、当審判所においても、この算定方法が相当であると認められる。
(D)したがって、原処分庁が売買実例を基にして算出した価額26,947,232円は、妥当なものである。
B 鑑定評価について
(A)ところで、客観的な交換価値を示す価額を算定するに当たって、不動産鑑定士による鑑定評価額も、合理的なものの一つであると解される。
(B)原処分庁は、本件土地の価額について、上記イの(ハ)のとおり、不動産鑑定士に鑑定を依頼し、取引事例比較法を適用して鑑定評価を行い、1平方メートル当たり15,900円と決定し、その総額を25,400,000円と算定している。
(C)そして、本件鑑定評価は、別表6及び別表7のとおり、取引事例比較法による価格を試算するために採用された取引事例や公示価格等を規準とした価格を試算するために採用された公示地を選択し、また、これらに係る事情補正、時点修正、建付減価補正、標準化補正及び地域要因格差の比較についても、角地であるか否か、街路条件、交通・接近条件及び環境条件等の比較が的確にされており、当審判所が調査したところによっても、その鑑定方法は相当であると認められる。
(D)したがって、本件鑑定評価額25,400,000円は、本件土地の価額として妥当なものである。
C 賃貸契約のある土地の減価要因
 請求人らは、平成15年6月16日に当審判所に対して、本件土地は、賃貸契約がされている土地であるから、賃貸契約がない土地より時価は安くなるとして、土地貸借契約書、固定資産税・都市計画税納税通知書及びe社が支払った伝票の写しを提出した。
 しかしながら、本件土地は、上記イの(イ)のとおり、e社が、賃借し、資材置場として、使用していたことが認められるものの、〔1〕その地代は、上記イの(チ)のとおり、本件土地の固定資産税額等の額と同額であり、実費程度の負担であること、〔2〕本件土地上の建物は、上記イの(ハ)のDのとおり、簡易な構造のプレハブ倉庫で、未登記であることから、e社が借地権を有していたとは認められず、本件土地について、更地としての価額を減額すべき理由はないと認められる。
D 以上のとおり、本件土地の適正価額の算定に当たって、原処分庁が採用した売買実例に基づく方法及び鑑定評価に基づく方法には、合理性があると認められるから、上記A及びBのとおり、原処分庁が、売買実例に基づいて算定した価額と鑑定評価額が同程度の価額であること及び買い進みや売り急ぎの事情や安全性を考慮し、鑑定評価額をもって本件土地の価額と認定したことは、相当であると認められる。
 そうすると、本件土地の価額は、上記(ハ)のBの(D)のとおり、25,400,000円であるから、3.3平方メートル当たりに換算(25,400,000円÷1,596.81平方メートル×3.3平方メートル)すると52,492円となり、請求人らが主張する3.3平方メートル当たり14,466円は、その2分の1以下となる。
 したがって、請求人らの主張は採用できない。
(ニ)なお、請求人らは、平成11年10月にf信金がe社に融資を行う際、e社は、本件土地を担保に供しているが、f信金は本件土地の評価額を15,000,000円として融資をしたものではなく、e社所有の無担保となっていた本件土地を機械的に担保物件としたものであり、評価に見合う融資が行われたのではない旨主張する。
 しかしながら、次の理由により、請求人らの主張は採用できない。
A 本件土地には、前記1の(3)のニのとおり、平成11年10月29日に債務者をe社、根抵当権者をf信金として、極度額30,000,000円の根抵当権が設定されている。
B e社は、上記イの(ト)のとおり、本件土地を担保として、平成11年10月29日にf信金から23,000,000円を借り入れている。
 また、f信金は、上記イの(リ)のとおり、本件土地の査定時価30,396,000円の7割の21,277,000円を基に融資を行っていることが認められる。
C wは、上記イの(タ)のBのとおり、e社は平成11年10月29日に本件土地を担保として23,000,000円の融資を受けているが、これについては、担保物件(本件土地)の査定時価30,396,000円を基に融資をしたことに間違いない旨申述している。
D 以上のことから、f信金は、本件土地の相続税評価額を基に査定時価30,396,000円を算定し、査定時価の7割の21,277,000円を担保価額として、その相当額の23,000,000円の融資を行っていることからすると、評価に見合う融資であったことが認められる。
(ホ)一方、原処分庁は、国土庁土地鑑定委員会の地価公示価格及びR県の地価調査基準地の標準価格を根拠として、本件土地の時価1平方メートル当たり約15,900円は妥当なものである旨主張する。
 しかしながら、本件の判断に影響はないものの、次の理由により、国土庁土地鑑定委員会の地価公示価格及びR県の地価調査基準地の標準価格を根拠とすることはできない。
 したがって、この点に関する原処分の主張は採用できない。
A 「平成11年地価調査基準地の標準価格(付 地価公示価格)」(R県)(以下「基準地価格冊子」という。)の「本書の見方について」には、本書において使用されている符号等は、次のとおりであるとして、「基準地番号」欄において、一連番号の前に見出し数字を付していないものは住宅地、見出し番号の3は宅地見込地、5は商業地、7は準工業地、9は工業地、10は市街化調整区域内の宅地であることを示している旨の記載がある。
 また、基準地価格冊子の「3 平成11年地価公示の公示価格等」には、S市s町○○○番外の宅地1,141平方メートルは「S市5−a」、同町○○○番の宅地256平方メートルは「S市−a」であるとの標準地番号の記載がある。
 さらに、基準地価格冊子の「1 平成11年地価調査基準地の標準価格等一覧」には、S市s町○○番○の宅地285平方メートルは「S市(県)−a」、同町○○番○○の宅地294平方メートルは「S市(県)−b」、同町○○番○○○の宅地549平方メートルは「S市(県)10−a」であるとの基準地番号の記載がある。
B 上記のとおり、原処分庁が根拠とした2件の地価公示地は、〔1〕市街化区域内の商業地域内の宅地及び住宅地域内の宅地と認められること、〔2〕3件の地価調査基準地のうち2件は、市街化区域内の住宅地域内の宅地と認められることから、本件土地が所在する市街化調整区域内の宅地と地域要因が全く異なっていることが認められる。
C そうすると、これらの地価公示価格及び地価調査基準地の標準価格からみても本件土地の時価は妥当であるとする原処分庁の主張は、合理的な根拠を欠くものといえる。
ニ 以上のとおりであるから、本件土地の譲渡価額7,000,000円は、原処分庁が、譲渡の時における価額として認定した25,400,000円(請求人らの持分に係る譲渡価額は5,080,000円)の2分の1に満たない金額であることは明らかであるから、低額譲渡の特例を適用したのは相当であり、本件各更正処分は適法である。

(2)過少申告加算税の賦課決定処分

 上記(1)のとおり、本件各更正処分は適法であり、また、本件各更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が、更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項及び第2項の規定に基づきされた過少申告加算税の本件賦課決定処分は適法である。
(3)原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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