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(平16.4.12裁決、裁決事例集No.67 589頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、〔1〕審査請求人が、相続により取得した土地の評価に当たり、路線価による方法によって評価すべきか、それとも相続後に譲渡した当該土地の譲渡価額等により評価すべきか、また、〔2〕被相続人の負担すべき固定資産税等を審査請求人が立て替えて納付したことにより発生したとする債務を相続財産から控除できるか否かを主な争点とする事案である。

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(2)審査請求に至る経緯

イ 平成13年1月2日(以下「本件相続開始日」という。)に死亡したE(以下「被相続人」という。)の共同相続人である、X(以下「X」という。)、Y、Z及びU(Xと併せて、以下「Xら」という。)は、この相続に係る相続税について、別表1の「申告」欄のとおり記載した申告書を法定申告期限までに提出した。
ロ Xらは、上記相続により取得した財産のうち、P市p町○番○の土地(394.37平方メートル、以下「本件土地」という。)の価額は、平成14年7月に譲渡した本件土地の譲渡価額の7割相当である35,908,177円とすべきであること及びP市q町の借地権は、その存続について争いがあるから価額を零円とすべきであることを理由に、平成14年10月3日に、別表1の「更正の請求」欄のとおり更正の請求をした。
ハ 原処分庁は、平成14年12月20日付で、本件土地の価額について別表2のとおり造成費相当額等を減額した上、別表1の「更正処分」欄のとおり、更正の請求の一部を認容する更正処分(以下「本件減額更正処分」という。)を行った。
ニ Xらは、平成15年1月28日に、本件減額更正処分に不服があること及びP市q町の借地に係る未払地代9,000円の債務控除を認めるべきであることを理由に、別表1の「異議申立て」欄のとおり、異議申立てをした。
ホ Xらのうち、Uが平成15年2月21日に死亡したため、その法定相続人であるF、G、Hの3人が、異議申立人の地位を承継した(Uを除く共同相続人に、この3名を加えて、以下「請求人ら」という。)。
ヘ さらに、請求人らは、平成15年2月28日付で納骨に要した費用35,960円並びに同年3月18日付でXとその夫である故J(以下「X夫妻」という。)が被相続人に代わって納付したとする昭和52年6月13日納期限の相続税に係る延滞税2,326,500円及び昭和62年度第1期分以降の固定資産税・都市計画税2,869,440円の合計5,195,940円(以下「本件立替金」という。)の債務控除を求めて、それぞれ上申書を原処分庁に提出した。
ト 原処分庁は、平成15年4月25日付で、異議申立ての理由のうち、上記ニの未払地代(9,000円)の一部(750円)は債務に該当するが、これを認容して計算した納付すべき税額は原処分の額と同額になるとして、更正の請求額を下回る部分については却下の、その他の部分については棄却の異議決定を行った。
チ 請求人らは、平成15年5月8日に、本件土地の価額及び本件立替金に係る請求人らの主張は認められるべきであるとして審査請求を行った。
 なお、請求人らは、Xを総代として選任し、その旨を平成15年5月8日に届け出た。

(3)基礎事実

 以下の事実は、請求人らと原処分庁の間に争いがなく、当審判所が調査したところによってもその事実が認められる。
イ 本件土地が接する道路に付された平成13年分の路線価は、160千円(1平方メートル当たり、以下「本件路線価」という。)である。
ロ Xらは、平成14年7月2日付の不動産売買契約書(土地実測用)のとおり、本件土地を51,297,677円(以下「本件譲渡価額」という。)で譲渡した。

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2 主張

(1)請求人らの主張

 原処分は、次のとおり違法であるから、その全部の取消しを求める。
イ 本件土地の価額
(イ)本件土地の価額は、次の理由から、本件譲渡価額の7割相当額である35,908,177円とすべきである。
A 相続財産の評価の一般的基準として定められた財産評価基本通達(昭和39年4月25日付直資56ほか1課共同国税庁長官通達、平成13年5月10日付課評2−6による改正前のものをいい、以下「評価通達」という。)によると、市街地の宅地は、原則として路線価方式により評価するとされているが、評価通達は法律ではなく通達にすぎないのであるから、地価の下落が著しい状況下では、路線価方式、鑑定評価及び売買を基準にした価額のうちから、請求人らに最も有利な評価方法を選択できる権利がある。
B 本件相続開始日(平成13年1月2日)と本件土地を譲渡した時点(平成14年7月2日)の実勢相場は全く変わらないから、本件相続開始日における本件土地の時価は、本件譲渡価額というべきである。
 そして、本件路線価は、本件譲渡価額の1平方メートル当たりの価格(以下「本件譲渡単価」という。)130,075円を上回っているから、本件土地の価額は、本件譲渡価額に基づいて評価すべきである。
C また、土地の相続税評価額は、時価の7割程度が妥当であるから、本件土地については評価通達に基づく評価によらず、本件相続開始日の時価である本件譲渡価額の7割相当額で評価すべきである。
D さらに、原処分庁が、別表2のとおり、本件路線価を基礎とする方法(○○国税局長が定めた平成13年分財産評価基準書の4宅地造成費相当額の定めに基づき、造成費相当額を控除して本件土地の評価額を算定、以下同じ。)によって評価した価額も、本件相続開始日の時価である本件譲渡価額を上回っており、造成費云々のことより本件路線価が高額すぎるのである。
(ロ)また、仮に、上記(イ)の主張が認められないとしても、相続税に係る物納物件で、本件土地の近隣に所在するP市p町○番○の土地(以下「本件公売地」という。)が、相続開始年と同じ年である平成13年7月31日にL財務局から坪単価380,000円(1平方メートル当たり115,151円、以下「本件公売価額」という。)で公売に付されており、本件相続開始日における本件土地の時価を算定する場合、本件公売価額を基準にして評価した方が合理的であるから、本件土地の価額は、本件公売価額により算定すべきである。
ロ 本件立替金
 本件立替金は、次の理由から、Xに対する被相続人の債務になるから、相続財産の価額から控除すべきである。
(イ)被相続人は、昭和56年9月以降、死亡するまで入院しており収入がなかったため、平成5年7月までは故Jが、それ以降はXが自宅に保管していたポケットマネーから拠出して、被相続人に代わって納付したものであり、納付領収書等はXが保管していた。
 また、近親間の金銭貸借は、預金通帳等を経由しないと認められないという原処分庁の主張は、社会通念上、通用しない論理である。
(ロ)本件立替金を証する書類として、平成9年12月20日付の確認書(以下「本件確認書」という。)が存在する。
 本件確認書は、Xと病院から外泊許可を得た被相続人が、Xの自宅で作成したものであり、両名が署名・押印している。
ハ 二重課税
 相続税を納付した後、本件土地を申告した価額より安い価額で譲渡したのに、その差額に所得税を課されることは、法律で禁止されている二重課税に当たる。

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(2)原処分庁の主張

 原処分は、次の理由により適法であるから、審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 本件土地の価額
(イ)相続税法第22条《評価の原則》は、特に定める場合を除き、相続により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価による旨規定しており、この時価とは、相続開始の時における財産の現状に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に成立すると認められる客観的な交換価値をいうものとされている。
 しかしながら、財産の客観的な交換価値は、必ずしも一義的に確定するものではないことから、課税上、特別の事情がある場合を除き、評価通達の定めに基づく画一的な評価方法によって財産評価を行うこととされている。
 そして、評価通達においては、市街地的形態を形成する地域にある宅地は、原則として路線価方式により評価するものとされ、路線価の価額は、売買実例価額、地価公示法による公示価格、精通者意見価格等を基として、その路線に面する標準的な画地の1平方メートル当たりの価額として国税局長が評定するものとされている。
(ロ)ところで、請求人らは、本件路線価(160千円)が本件土地の時価を上回っている旨主張するが、公示価格は、地価公示法第6条の規定により公示された標準地の正常価格であり、路線価は、公示価格の80%を目安として定められているところ、本件路線価は、本件土地の近隣に位置し、ともに普通住宅地区内に所在する状況が類似する公示地(P市p町○番○、以下「本件公示地」という。)の平成13年1月1日現在の1平方メートル当たりの公示価格196千円の81.6%と、おおむね80%相当となっており、本件土地の時価を下回っていることは明らかであるから、別表2のとおり、本件路線価を基礎とする方法によって、本件土地の価額を59,090,416円と評価したことは適正である。
(ハ)次に、請求人らは、本件路線価が本件公売価額を上回っている旨主張するが、本件路線価は、上記(ロ)のとおり、本件土地の時価を下回っていることが明らかであるから、請求人らにおいて本件路線価が時価と比較して高額であることを立証すべきである。
ロ 本件立替金
 相続税法第13条《債務控除》第1項及び同法第14条《控除すべき債務》第1項によれば、相続財産から控除される債務は、被相続人の債務で相続開始の際に現に存在し、かつ、確実と認められるものに限るとされているところ、本件立替金は、次の理由から、相続財産から控除される債務とは認められない。
(イ)請求人らは、本件確認書を証拠書類として提出しているが、X夫妻が被相続人に代わって本件立替金を支払った事実を示す預金通帳等の資金出所に関する証拠書類を何ら提出していない。
(ロ)本件確認書には、本件立替金の返済に関して、「Xが申し出たら、上記金額を被相続人は滞りなく返金しなければならないものとする。」としか記載されておらず、また、返済期日が明示されていないことから、上記(イ)の証拠書類が提出されていないことと併せて判断すると、その信ぴょう性に疑問が残るといわざるを得ない。
(ハ)Xが被相続人に対して返済を求めたとする具体的な証拠書類を原処分庁に提出していないことからすると、Xは、被相続人の生存中、同人に対して本件立替金の返還請求をしていなかったものと推認するのが相当であることから、本件立替金は、確実な債務、すなわち履行が確実と認められる債務には該当しない。
ハ 二重課税
 相続税は死亡した人の財産を相続や遺贈により取得したことに対して課せられる税金であり、他方、土地等の譲渡所得に係る税金は、その土地等の値上り益に対して課せられる税金である。
 相続税と譲渡所得に係る所得税とは、その趣旨・目的が異なるのであるから、二重課税には当たらず、請求人らの主張には理由がない。

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3 判断

(1)本件土地の価額

イ 請求人ら提出資料及び原処分関係資料によれば、次の事実が認められる。
(イ)Xらは、本件土地の価額について、本件路線価に本件土地の地積を乗じた63,099,200円と評価して申告した。
(ロ)次に、Xらは、本件土地の価額は、本件譲渡価額の7割相当である35,908,177円とすべきであるとする更正の請求をした。
(ハ)原処分庁は、本件減額更正処分において、別表2のとおり、本件路線価を基礎とする方法によって、本件土地の価額を59,090,416円と評価した。
ロ 相続税法第22条の規定による時価とは、相続による取得の時点において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に成立すると認められる客観的な交換価値をいうとされているところ、課税行政庁である国税庁は、課税の公平の観点から統一の基準を示すため評価通達を定め、各種財産の時価評価に関する原則及びその具体的な評価方法を明らかにし、さらに、市街地的形態を形成する土地の価額については、国税局長が具体的に路線価を定めて、部内職員に示達するとともに、これを公開することによって納税者の申告・納税の便に供している。
 そして、路線価は、地価公示法に基づいて公示される標準地の各年1月1日現在の1平方メートル当たりの正常な価格である公示価格(当該土地について、自由な取引が行われるとした場合におけるその取引において通常成立すると認められる価格)、売買実例価額、精通者意見等を基として、その路線に面する標準的な画地の1平方メートル当たりの価額として評定されるものであり、その際、当該路線価が相続税等の課税に当たって1年間適用されるものであることから、その間の地価変動にも耐え得るものにする必要性など評価の安全性等を考慮して、公示価格よりも低額となるように公示価格の80%水準(以下、公示価格に対する割合を「評価水準」という。)を目途に評定するものとされている。
ハ ところで、請求人らは、本件相続開始日における本件路線価(160千円)は、本件土地の時価というべき本件譲渡単価(130,075円)を上回っているから、本件譲渡価額を基に評価すべきであると主張するので以下審理する。
(イ)原処分庁は、本件公示地を、平成13年分の路線価を評定するための基準地点に選定して本件路線価を評定していると認められるところ、本件公示地と本件土地は、ともに、P市p町に位置しており、都市計画法上の用途地域(第一種低層住居専用地域)や建築基準法上の規制(容積率80%、建ぺい率40%)も同じであり、両地点の宅地としての価額が異なる特別な理由は認められない。
(ロ)平成13年以降の本件公示地に係る公示価格は、別表3のとおり、前年に比べ、平成14年では13.8%、平成15年では8.9%下落していることから、P市p町付近の地価は、本件相続開始日以降、下落傾向にあったものと認められる。
 さらに、請求人らが当審判所に提出した平成14年7月に撮影したとする本件土地の写真及び本件土地の造成は買主が行ったという請求人らの答述からすると、本件土地は、本件相続開始日以降、平成14年7月までの間本件土地の現況に変更はなかったものと認められる。
(ハ)また、上記(ロ)の請求人らの答述に照らして判断すると、本件相続開始日における本件土地は、接する道路から約3メートル高い位置にあり、住宅を建築するためには土砂の流出や崩壊を防止するための擁壁を設ける必要があると認められるところ、原処分庁が、上記イの(ハ)のとおり、本件路線価を基礎とし、宅地造成費相当額を控除する方法によって算定した本件土地の同日における評価額の1平方メートル当たりの価格(以下「本件造成前評価単価」という。)は、149,834円となる。
(ニ)次に、本件相続開始日が平成13年1月2日であること及び上記(イ)のとおり本件公示地と本件土地の宅地としての価額が異なるという特別な事情が認められないことから、本件公示地の平成13年1月1日現在の公示価格196千円などを基に、別表4のとおり、本件譲渡単価を基礎として公示価格の変動率に基づき相続開始時点における本件土地の時価相当額を算定すれば、その1平方メートル当たりの価格(以下「公示価格の変動率に基づく評価単価」という。)は、157,858円となる。
(ホ)そうすると、譲渡時点と同じ形状の土地として本件土地を比較すると、本件造成前評価単価(149,834円)は、公示価格の変動率に基づく評価単価(157,858円)を下回っていることが認められるから、本件路線価が、本件相続開始日における本件土地の時価を上回っているとはいえず、請求人らの主張は採用できない。
ニ また、請求人らは、本件土地の価額は、評価通達によらず、本件譲渡価額の7割相当額とすべきである旨主張するので以下審理する。
(イ)請求人らは、その根拠について、相続税関係の本に書いてあったからと答述するのみであるが、その趣旨は、平成3年分以前の路線価が公示価格の70%の評価水準を目途に定められていたことを念頭に置いたものであると解せられる。
(ロ)ところで、この評価水準は、上記ロのとおり、課税行政庁内部において土地の評価に関する取扱いを統一するに当たり、評価の安全性にも配慮しながら均一な評価を効率的に行うために取り入れられているものであって、その意味では課税行政庁が、実務上少なくともこれを乗じた価額を下回ることは通常ないであろうと認めるところにより課税処分等をするための計算上の一要素にすぎないものである。
 したがって、路線価等によらず、土地の時価を個別の事情に基づき個々に求める場合には、評価水準をしん酌すべき合理的な理由は全くなく、本件土地の価額は、本件譲渡価額の7割相当額とすべきであるとの請求人らの主張は採用できない。
ホ さらに、請求人らは、以上の主張が認められないならば、本件土地の価額は、請求人らが把握している本件公売価額(1平方メートル当たり115,151円)に基づき算定すべきであるとも主張する。
 しかしながら、本件公売地の売却手続を行ったL財務局は、本件公売地の公売価格を開示しておらず、請求人らの主張する価格の真偽を確認することはできないが、公売は、換金を目的とした強制売却であるという特殊性を有しており、その売却価額が客観的時価より低額であるのが通例であると認められること、また、当審判所が調査したところによると、平成13年中に、本件公売地と状況が類似するP市p町の土地が1平方メートル当たり164,086円で取引されているという売買実例があることからすると、本件公売価額を本件相続開始日における本件土地の時価と認めることはできない。
ヘ 以上のことから判断すると、本件土地の価額に関する請求人らの主張は、いずれもその主張を認めるに足りる理由がなく、原処分庁が、上記イの(ハ)のとおり、本件土地の価額を評価したことは適正と認められる。

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(2)本件立替金

イ 請求人ら提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査によると、次の事実が認められる。
(イ)請求人らが提出した本件確認書には、本件立替金に係る金額等の明細とその総額(5,195,940円)のほか、〔1〕被相続人に課税された税金は、X及び故Jが支払ったことを確認する、〔2〕Xが申し出たら、上記金額を被相続人は滞りなく返金しなければならないものとする、〔3〕返金が完了した際は改めて確認書を作成するものとするとの記載があり、X及び被相続人の署名、押印がある。
(ロ)請求人らは、本件立替金の支払を証する書類として差押解除通知書及び固定資産税・都市計画税の納付(入)書兼領収証書の各写し(以下「本件領収証書」という。)を、本件確認書とともに提出した。
(ハ)本件領収証書に係る固定資産税等(以下「本件固定資産税等」という。)の納付日及び納付金額等の明細は、別表5の「本件領収証書の明細」欄のとおりである。
(ニ)M銀行N支店の被相続人名義の普通預金口座(No.○○○○、以下「本件預金口座」という。)に入金されている金員は、被相続人が受給した年金であり、X夫妻から入金されたと認められるものはなく、また、本件預金口座から出金された金員のうち本件領収証書に押印された出納印の日付前後における状況は、別表5の「本件預金口座の出金状況」欄のとおりである。
ロ ところで、請求人らは、本件立替金を、X夫妻が自宅に保管していたポケットマネーから拠出して、被相続人に代わって納付した旨主張する。
 しかしながら、本件預金口座に入金された金員は、上記イの(ニ)のとおり、被相続人に帰属するものであり、また、別表5の「本件預金口座の出金状況」及び「本件領収証書の明細」を比較検討すると、平成4年1月6日から平成4年5月28日の間の出金は、その翌日等に本件固定資産税等として納付されていることが認められ、さらに、平成5年11月1日以降の出金は、当日に当該銀行内において本件固定資産税等として振替納付されている事実が認められる。
 したがって、本件立替金のうち固定資産税・都市計画税分については、その大半が被相続人の預金から支払われており、請求人らの主張が事実と相違しているのは明らかである。
ハ 上記ロのような事実からすると、本件立替金のうち被相続人が納付すべき相続税の延滞税をX夫妻が立て替えて納付したという請求人らの主張についてもにわかに信用することができず、また、X夫妻が当該延滞税を納付したことを明らかにする証拠書類の提出もないことから、X夫妻が当該相続税の延滞税を被相続人に代わって納付したとする心証を得ることはできない。
ニ 以上のことから、本件立替金に係る請求人らの主張を認めることはできない。

(3)二重課税

 相続税は、相続により無償で取得した財産に担税力を見出す税であり、譲渡所得に係る所得税は、所有資産の価値の値上がり益に担税力を見出す税であって、その課税根拠が異なり、課税根拠の相違から課税時期、課税対象も異なってくるのであるから、二重課税には当たらないというべきであって、請求人らの主張には理由がない。
(4)原処分のその他の部分については、請求人らは争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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