ホーム >> 公表裁決事例集等の紹介 >> 公表裁決事例 >> 裁決事例集 No.68 >> (平16.11.19裁決、裁決事例集No.68 144頁)

(平16.11.19裁決、裁決事例集No.68 144頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、審査請求人D及び同E(以下、両名を併せて「請求人ら」という。)の相続税の算定に当たって、金融機関が、相続開始の約2年後に被相続人以外の者を主たる債務者とする貸付金債権と被相続人が有していた当該金融機関の定期預金とを相殺した場合、当該定期預金が課税財産に該当するか否かを主な争点とする事案である。

トップに戻る

(2)審査請求に至る経緯

イ 請求人らは、平成12年10月16日(以下「本件相続開始日」という。)に死亡したF(以下「本件被相続人」という。)の共同相続人であるが、この相続に係る相続税(以下「本件相続税」という。)について、平成15年1月22日に相続税法(平成15年法律第8号による改正前のものをいう。以下同じ。)第30条《期限後申告の特則》の規定に基づき、課税価格及び納付すべき税額を別表1の「申告」欄のとおりとする申告(以下「本件申告」という。)をした。
ロ 原処分庁は、これに対し、平成15年10月28日付で、本件相続税について別表1の「更正処分等」欄のとおりとする各更正処分(以下「本件各更正処分」という。)及び無申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」という。)をした。
ハ 請求人らは、これらの処分を不服として、平成15年11月8日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、平成16年2月5日付でいずれも棄却する旨の異議決定をした。
ニ 請求人らは、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成16年2月29日に審査請求をした。
 なお、請求人らは、Dを総代として選出し、その旨を平成16年2月29日に届け出た。

(3)関係法令等の要旨

 関係法令等の要旨は、別紙1のとおりである。

(4)基礎事実

 以下の事実は、請求人ら及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 本件被相続人は、昭和51年7月26日付の銀行取引約定及び昭和53年5月17日付の「証」と題する書類により、自らが経営する株式会社G(以下「G社」という。)がH銀行J支店(以下「H銀行」という。)との取引により負担する一切の債務について、連帯保証をしている(以下、この保証により本件被相続人が負担する保証債務を「本件保証債務」という。)。
ロ G社は、平成12年4月26日に、H銀行から返済期日を同年10月26日とする手形借入れの方法により90,000,000円を借り入れた(以下、この借入れによる債務を「本件手形借入債務」という。)が、当該借入れの返済期日は、その後、手形書換が行われたことで平成14年10月26日となった。
ハ 本件被相続人は、平成12年10月11日付の公正証書により、遺産のすべてをK及びL(以下、両名を併せて「Kら」という。)に遺贈し、養子である請求人らには遺産を取得させない旨の遺言をしている。
ニ 本件被相続人は、本件相続開始日現在、H銀行に同人名義の定期預金4口合計76,000,000円(以下「本件定期預金」という。)及び普通預金3,611,190円を有している。
ホ 請求人らは、本件被相続人の遺産について、Kらに対し遺留分減殺請求(○○家庭裁判所平成○年(家○)第○号遺留分減殺請求調停事件)をしたところ、平成14年10月29日に成立した調停により、本件定期預金及び上記ニの普通預金を請求人ら及びKらがそれぞれ4分の1ずつ取得することに合意した。
ヘ H銀行は、平成14年12月4日に、G社に対する上記ロの手形貸付債権90,000,000円と、請求人ら及びKらがH銀行に対して有する各々の預金債権19,903,486円(本件定期預金76,000,000円及び上記ニの普通預金残高3,613,945円の各々4分の1の額)とを相殺した(以下、この相殺を「本件相殺」という。)。

トップに戻る

2 主張

(1)請求人

イ 本件各更正処分について
 本件定期預金を相続財産とした本件各更正処分は、次の理由によりいずれも違法であるから、その全部を取り消すべきである。
(イ)本件相殺の効力は、民法第506条第2項の規定により本件相続開始日にさかのぼることから、本件定期預金は、本件相続開始日に消滅しており、相続財産とはならない。
(ロ)本件定期預金が本件相続開始日に存在するものとしても、本件被相続人は、本件相続開始日において、本件保証債務を負っており、G社の財産状態は本件手形借入債務を弁済できる状態にはなく、本件被相続人が同債務を弁済しなければならない状況であったこと、そして、本件相殺後において、請求人らは、主たる債務者であるG社に対して求償権を有するものの、G社の財産状態ではこれを回収することは不可能であることから、本件定期預金の評価額は、同預金の額から同額の本件保証債務の額を控除した零円とすべきである。
(ハ)請求人らは、次のとおり、本件定期預金を相続財産に含めないで申告することにつき原処分庁所属のM統括国税調査官(以下「M統括官」という。)に了解を得た上で、本件申告をしたのであるから、本件各更正処分は信義則ないし禁反言の法理に違反する。
A 平成14年12月3日、請求人らは、N税理士(以下「N税理士」という。)及びS税理士とともに原処分庁に出向き、M統括官及びT上席国税調査官(以下、両名を併せて「統括官ら」という。)に本件定期預金を相続財産に含めて申告すべきか否かを相談したところ、統括官らから「F氏相続関係」と題する書面(以下「本件書面」という。)が提示され、その内容について質疑応答があったものの、本件定期預金を相続財産に含めて申告すべきか否かについての指示はなかったので、この件について、統括官らに検討を求めた。
B 平成15年1月6日午後4時18分に、N税理士が、M統括官に電話で、本件定期預金を相続財産に含めて申告すべきか否かにつき指示を求めたところ、同月16日午前10時40分に、M統括官から電話により「そちらの判断で申告してよい。将来7,600万円が入金されたら修正申告をしてください。」との指示があった。
C N税理士は、この指示に基づき、本件定期預金を相続財産から除外したところで本件相続税の申告書を作成し、平成15年1月22日に原処分庁に同申告書を提出した。
ロ 本件各賦課決定処分について
 本件各賦課決定処分は、次の理由により、いずれも違法であるからその全部の取消しを求める。
(イ)本件各更正処分は、上記イのとおりいずれも違法であるから、本件各賦課決定処分も違法であり、いずれも取り消すべきである。
(ロ)本件各賦課決定処分に係る通知書には加算税の名称を無申告加算税と記載されているところ、本件申告は相続税法第30条の規定に基づくものであるから、本件各更正処分に係る納付すべき税額に対し国税通則法(以下「通則法」という。)第66条第1項の規定する無申告加算税を賦課することはできず、当該通知書に記載された加算税の額が過少申告加算税の額と同額であっても、過少申告加算税と無申告加算税とはその本質を全く異にするものであるから、名称を誤った処分である以上、本件各賦課決定処分は取り消されるべきである。
(ハ)本件申告が過少申告となったのは、上記イの(ハ)のとおり、統括官らの指導によるものであるから、請求人らには通則法第65条第4項に規定する正当な理由がある。

トップに戻る

(2)原処分庁

 原処分は、次の理由により適法であるから、本件審査請求をいずれも棄却するとの裁決を求める。
イ 本件各更正処分について
(イ)異議審理庁の調査によれば、次の事実が認められる。
A G社の平成11年10月1日から平成12年9月30日まで、平成12年10月1日から平成13年9月30日まで及び平成13年10月1日から平成14年9月30日までの各事業年度(以下、順次「平成12年9月期」、「平成13年9月期」及び「平成14年9月期」という。)の各期末現在における資産及び負債の額は、別表2のとおりである。
B 統括官らは、本件相続税の調査において、N税理士に対し本件定期預金を相続財産として課税価格に算入すべき旨を説明している。
(ロ)相続税法第2条《相続税の課税財産の範囲》第1項は、相続税の課税財産の範囲について「相続又は遺贈により取得した財産」と規定され、相続税の課税対象は、納税者において、相続等所定の理由によって課税財産を取得することが必要であり、かつ、それをもって足りると解されていることから、本件においては、本件相続開始日に本件定期預金が存在し、請求人らが本件定期預金を相続により取得したことは明らかである。
 また、相続により取得した財産の価額から控除する金額は、被相続人の債務で相続開始の際に現に存するもので確実と認められるものに限られ、保証債務については、主たる債務者が弁済不能の状態にあり、保証債務者がその債務を履行しなければならない場合で、かつ、主たる債務者に求償して返還を受ける見込みがない場合には、債務として控除するとされているところ、G社の資産及び負債の額は別表2のとおりで債務超過とは認められないから、本件相続開始日において本件手形借入債務について弁済不能の状態になく、また、請求人らがその履行をしなければならない場合であったとは認められないので、本件保証債務を債務として控除することはできない。
(ハ)請求人らの本件相続税に係る納付すべき税額は、別表1の「更正処分等」欄のとおりそれぞれ3,682,500円となるから、この金額と同額で行った本件各更正処分は適法である。
ロ 本件各賦課決定処分について
(イ)統括官らは、本件相続税の調査時において、上記イの(イ)のBのとおり、本件定期預金を本件相続税に係る課税価格に算入すべきことを説明しているところ、その経緯から判断すれば、本件定期預金を本件相続税に係る課税価格に算入すべきことの是非を最終的に請求人らに委ねたものと認めるのが相当であり、請求人らが主張するような本件定期預金を課税価格に算入しなくてよい旨を指導した事実は認められない。
 したがって、請求人らの主張には理由がなく、過少申告になったことについて、他に正当な理由があると認められる場合に該当する事実は認められないから、本件各賦課決定処分は適法である。
(ロ)本件各賦課決定処分に係る通知書には、加算税の区分を過少申告加算税と記載すべきところ、誤って無申告加算税と記載したものであるが、当該通知書に記載された加算税の額は、通則法第65条第1項及び第2項の規定に従って正当に計算された金額と同額であるから、本件各賦課決定処分を取り消すべき理由はない。

トップに戻る

3 判断

(1)認定事実

 請求人らの提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
イ G社は、昭和49年に設立された建設業を営む会社であり、同社の各事業年度末現在における資産及び負債の額は別表2に記載したとおりで、同社は、本件相続開始日において事業を継続している。
ロ 本件書面には、本件相続税に係る財産及び債務の明細が記載されており、「現金預貯金等」の欄には、本件定期預金について「定期預金、H銀行・J支店、3,500,000円」及び「定期預金、H銀行・J支店、72,500,000円」と明細が記載されている。

(2)関係者の答述

 M統括官は、当審判所に対し、N税理士との本件定期預金に係る応答について要旨次のとおり答述している。
イ 平成14年12月3日、統括官らは、P市p町に所在するS税理士の事務所において、請求人ら、N税理士及びS税理士に、本件書面を提示し、本件相続税の申告をしょうようしたところ、N税理士から本件定期預金が相殺されていることの確認を求められた。
ロ 平成14年12月16日、M統括官は、N税理士に電話で、本件定期預金が相殺されていることは確認したが、本件定期預金が相続財産になることには変わりがない旨を伝えると、同税理士から、なぜ相殺したのかの判断が必要である旨を伝えてきた。その後に、M統括官は、再びN税理士に電話をし、相続開始の時点でG社は債務超過になっていないと判断していること、本件定期預金は相続財産に含まれる旨を伝えた。
ハ 平成15年1月6日、M統括官は、N税理士から電話で〔1〕本件定期預金を除いたところで本件相続税の申告をしたいこと、〔2〕本件相殺は、G社がH銀行に返済をしていないことから、返済する意思がないとして行ったもので、請求人らが求償権を行使してもG社は支払う意思はないようであること、〔3〕H銀行から本件相殺をした判断について聞く必要があること、〔4〕必要であれば本件定期預金を相続財産に加えて申告することもやむを得ないと思っている旨が伝えられたことから、同税理士に再度連絡する旨を伝えた。
ニ 平成15年1月16日、M統括官は、N税理士に電話で、本件相殺はH銀行独自の判断である旨を伝えたところ、同税理士から、請求人らの求償権はG社が支払うかどうかはっきりしない状況で実質的に回収できないこと、そして、来週中にも相続税の申告書を提出したい旨が伝えられた。
 これに対し、M統括官は、N税理士に、G社や請求人らの意思を確認したところで同税理士の判断で行われたいことを伝えるとともに、その後に変化が生じたらどうするかを質問したところ、同税理士から修正申告をする旨が伝えられた。

トップに戻る

(3)本件各更正処分について

イ 請求人らは、本件定期預金は、本件相続開始日に本件相殺により消滅しているから、相続財産にならない旨主張する。
 しかしながら、民法第506条第2項は、相殺は双方の債権が相殺適状を生じた時に遡及して効力を生ずる旨を規定しており、これを本件についてみると、本件手形借入債務は、その返済期限である平成14年10月26日が相殺適状を生じた日となることから、本件相殺の効力は、同日に遡及し、同日より前には遡及しない。
 したがって、本件定期預金は本件相続開始日に本件被相続人の預金として存在するから、この点に関する請求人らの主張には理由がない。
ロ 請求人らは、上記2の(1)のイの(ロ)のとおり、本件定期預金の評価額は本件保証債務の額を控除した零円である旨主張する。
 ところで、相続税の課税価格の計算において、預貯金の価額は、相続開始の時の預入高と同時期に解約するとした場合の既経過利子の額から源泉所得税額を控除した金額との合計であり、相続財産の価額から控除する金額は、相続税法第13条第1項及び同法第14条第1項のとおり、被相続人の債務で相続開始の時に存するもので確実と認められるものに限られている。
 そして、被相続人が主たる債務者のためになした保証債務は、相続等により承継された場合でも、将来現実にその履行義務が発生するか否かは不確実であり、仮に将来その保証債務を履行する場合でも、求償権の行使によって補てんされ得るものであるから確実な債務とはいい難いため、原則として相続税法第13条第1項に規定する債務控除の対象とされない。ただし、相続開始の時の現況において、主たる債務者が弁済不能の状態にあり、保証債務者がその債務を履行しなければならない場合で、かつ、主たる債務者に求償して返還を受ける見込みがないときには、主たる債務者が弁済不能の部分の金額については、確実な債務として債務控除の対象とされる。
 本件において、G社は本件相続開始日においても営業を継続していること、G社の平成12年9月期末及び平成13年9月期末における資産及び負債の額を比べると、別表2のとおり、いずれの期末においても債務超過の状態とは認められず、G社は本件相続開始日において弁済不能の状態であったとは認められないことから、本件保証債務は債務控除の対象となる確実な債務には該当しない。
 したがって、本件相続税の課税価格の計算に当たり、本件定期預金の価額から本件保証債務の額を控除すべき事由はなく、また、本件保証債務を相続税法第13条第1項に規定する債務控除の対象とすべき事由もないことから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
ハ 請求人らは、本件定期預金を相続財産に含めないで申告することは統括官らの了解を得たものであるから、本件各更正処分は信義則ないし禁反言の法理に違反する旨主張する。
 しかしながら、統括官らが請求人ら及びN税理士に本件相続税に係る課税財産が記載された本件書面を示したこと、本件定期預金に関してM統括官とN税理士との間で応答があったことは認められるものの、統括官らが本件定期預金を相続財産として申告しなくてよい旨の了解を与えたと認めるに足りる証拠はなく、他に統括官らの説明及び指導に誤りがあったと認めるに足りる証拠もない。
 したがって、本件各更正処分が信義則ないし禁反言の法理に違反しているとは認められないから、この点に関する請求人らの主張は理由がない。
ニ 以上により、請求人らの主張にはいずれも理由がなく、本件定期預金は本件相続税の課税財産に該当するところ、請求人らの本件相続税の課税価格及び納付すべき税額は、別表1の「更正処分等」の各欄の金額と同額となるから、本件各更正処分はいずれも適法である。

トップに戻る

(4)本件各賦課決定処分について

イ 請求人らは、本件各更正処分に係る納付すべき税額に対し無申告加算税を賦課することはできないこと、そして、加算税の名称を誤った処分である以上、本件各賦課決定処分は取り消されるべき旨主張する。
 ところで、通則法第65条に規定する過少申告加算税は、申告納税制度の秩序の維持を図ることをその目的として、当初から適法に申告した者とこれを怠った者との間に生ずる不公平を是正するとともに、過少申告による納税義務違反の発生を防止し、正当な理由があると認められるものがある場合を除き、単に過少申告であるという客観的事実のみによって課されるものであり、通則法第66条に規定する無申告加算税は、申告納税制度の秩序を維持し適正な申告の実現を確保することを目的として、当初から適正に申告納税をした者とこれを怠った者との間に生ずる不公平を是正するとともに、無申告による申告義務違反の発生を防止し、無申告の事実があれば正当な理由があると認められる場合を除いて一律に課されるものであるところ、無申告加算税及び過少申告加算税はいずれも納税義務違反の発生を防止する趣旨で課される税であり、本質において変わりはないと解される。
 本件において、本件申告は、相続税法第30条に基づくもので通則法第66条第1項ただし書の正当な理由が認められる場合に該当し、同法第65条第1項の規定により期限内申告書が提出された場合と同様に扱われることから、本件各更正処分により新たに納付すべき税額に賦課すべき加算税は、通則法第65条第1項に規定する過少申告加算税ということになり、本件各更正処分に伴う無申告加算税の賦課決定処分は、加算税の名称を誤ったものである。
 しかしながら、上記のとおり無申告加算税と過少申告加算税は本質において変わるものではなく、また、本件各賦課決定処分で賦課された加算税の額は、本件各更正処分に係る納付すべき税額に通則法第65条第1項及び第2項の規定に基づいて算出した過少申告加算税としての税額と同額であるから、請求人らが過大な加算税の額を賦課されるという不利益を受けたものではない。
 したがって、本件各賦課決定処分の加算税の名称が誤ったことをもって、本件各賦課決定処分を取り消す理由には当たらないと判断されることから、この点に関する請求人らの主張を採用することはできない。
ロ 請求人は、本件申告が過少申告となった原因は、統括官らの指導に基づくものであるから、通則法第65条第4項に規定する正当な理由がある旨主張する。
 しかしながら、上記(3)のハのとおり、統括官らに誤指導があったとは認められず、本件申告が過少申告となったのは本件定期預金を本件相続税の課税財産として申告しなかったことに基因するものであるから、通則法第65条第4項に規定する正当な理由があると認められる場合には該当せず、また、他に通則法第65条第4項に規定する正当な理由に該当する事実を認めるに足りる証拠もない。
 したがって、この点に関する請求人らの主張は理由がない。
ハ 以上のとおり、本件各賦課決定処分には取り消すべき事由はない。

トップに戻る

(5)その他

 原処分のその他の部分については、請求人らは争わず、当審判所に提出された証拠資料によっても、これを不相当とする理由は認められない。

別紙1 関係法令等の要旨

民法第506条

(第2項)
 相殺の意思表示は、双方の債務が互いに相殺をなすに適したる始に遡りて、その効力を生ず。

相続税法第13条《債務控除》

(第1項第1号)
相続又は遺贈により財産を取得した者の当該財産に係る課税価格に算入すべき価額は、当該財産の価額から被相続人の債務で相続開始の際現に存するものの金額のうちその者の負担に属する部分の金額を控除した金額による。

相続税法第14条《控除すべき債務》

(第1項)
第13条の規定によりその金額を控除すべき債務は、確実と認められるものに限る。

相続税法第30条《期限後申告の特則》

相続税の申告書の提出期限後において、遺留分による減殺の請求があったため新たに申告書を提出すべき要件に該当することとなった者は期限後申告書を提出することができる。

国税通則法第65条《過少申告加算税》

(第1項)
期限内申告書が提出された場合(期限後申告書が提出された場合において、第66条第1項ただし書の規定の適用があるときを含む。)において、更正があったときは、その更正に基づき納付すべき税額に100分の10の割合を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課する。
(第2項)
 第1項に規定する納付すべき税額が期限内申告税額に相当する金額と50万円とのいずれか多い金額を超えるときは、その超える部分に係る過少申告加算税の額は、第1項の規定による過少申告加算税の額に、その超える部分に相当する金額に100分の5の割合を乗じて計算した金額を加算した金額とする。
(第4項)
 第1項に規定する納付すべき税額の計算の基礎となった事実のうちに、その更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて正当な理由があると認められるものがある場合には、納付すべき税額からその正当な理由があると認められる事実に基づく税額を控除して、第1項の規定を適用する。

国税通則法第66条《無申告加算税》

(第1項)
期限後申告の提出があった場合には、当該納税者に対し、当該申告に基づき納付すべき税額に100分の15の割合を乗じて計算した金額に相当する無申告加算税を課する。ただし、期限内申告書の提出がなかったことについて正当な理由があると認められる場合は無申告加算税を課さない。

トップに戻る