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(平17.6.9裁決、裁決事例集No.69 177頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、製材業を営む同族会社である審査請求人(以下「請求人」という。)が取得した減価償却資産であるさん橋の耐用年数を争点とする事案である。

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(2)審査請求に至る経緯

イ 請求人は、平成12年7月1日から平成13年6月30日まで及び同年7月1日から平成14年6月30日までの各事業年度(以下、順次「平成13年6月期」、「平成14年6月期」といい、これらを併せて「本件各事業年度」という。)の法人税について、別表の「確定申告」欄のとおり記載した青色の確定申告書を、平成13年6月期は法定申告期限までに、平成14年6月期は提出期限(法人税法第75条の2《確定申告書の提出期限の延長の特例》第1項の規定により1月間延長されたもの。)までにA税務署長に対してそれぞれ提出した。
ロ A税務署長は、原処分庁所属の調査担当職員の調査に基づき、平成15年9月30日付で、別表の「更正処分等」欄のとおり、本件各事業年度の法人税の各更正処分(以下「本件各更正処分」という。)及び過少申告加算税の各賦課決定処分をした。
ハ 請求人は、上記ロの各処分を不服として、平成15年11月25日に審査請求をした。
ニ その後、A税務署長は、原処分庁所属の調査担当職員の調査に基づき、平成15年11月26日付で、別表の「再更正処分等」欄のとおり、本件各事業年度の法人税の各再更正処分(以下「本件各再更正処分」という。)及び過少申告加算税の各賦課決定処分をした。
ホ 請求人は、上記ニの各処分を不服として、平成16年1月22日に審査請求をした。
ヘ そこで、平成16年1月22日にされた審査請求を、平成15年11月25日にされた審査請求に併合して審理する。

(3)基礎事実

 以下の事実は、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 請求人は、長さ165メートル(うち○○メートルが岸壁に接している。)、幅21メートルから30メートルまでのさん橋及び長さ257メートル(○○メートルが岸壁に接している。)、幅22メートルから28メートルまでのさん橋(以下、これら2つのさん橋を併せて「本件各さん橋」という。)を建設し、それぞれ平成○年12月1日及び平成○年9月1日に事業の用に供した。
 なお、本件各さん橋は、減価償却資産の構築物に該当し、その構造は、上部床部分が鉄骨鉄筋コンクリート造りで、当該上部床部分を鋼管杭で支えるものである。
ロ 請求人は、本件各さん橋の減価償却資産の耐用年数等に関する省令(以下「耐用年数省令」という。)で定める耐用年数(以下「法定耐用年数」という。)を、耐用年数省令別表第一(以下「本件別表第一」という。)に掲げる第1欄「構築物」の第2欄「金属造のもの」の第3欄「鋼矢板岸壁」の25年であるとして本件各事業年度に係る本件各さん橋の減価償却費を計算し、それぞれ損金の額に算入した。
 これに対して、原処分庁は、本件各さん橋の法定耐用年数については、本件別表第一に掲げる「構築物」の「金属造のもの」の第3欄は「鋼矢板岸壁」の25年ではなく「その他のもの」の45年であると判断し、これに基づいてA税務署長は、本件各更正処分及び本件各再更正処分を行った。
ハ 本件別表第一の「構築物」の「金属造のもの」の第3欄「細目」に、「さん橋」は特掲されていない。

(4)関係法令等

 耐用年数の適用等に関する取扱通達1−1−9(以下「本件通達」という。)は、構築物等で細目が特掲されていないもののうちに、当該構築物等と「構造又は用途」及び使用状況が類似している本件別表第一に特掲されている構築物等がある場合には、別に定めるものを除き、税務署長(調査課所管法人にあっては、国税局長)の確認を受けて、当該特掲されている構築物等の耐用年数を適用することができる旨定めている。

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2 主張

原処分庁

 本件各さん橋の法定耐用年数は、〔1〕本件各さん橋が、その使用可能期間を最も左右する下部の構造が鋼管杭であるから本件別表第一の第2欄「構造又は用途」に掲げる「金属造のもの」に該当し、〔2〕「金属造のもの」の第3欄「細目」には「さん橋」が特掲されていないことから「その他のもの」の45年となる。
 なお、本件通達は、本件別表第一の細目欄に特掲されていない構築物等について類似資産がある場合には、税務署長等の確認を受けて、その類似資産の耐用年数の適用を認めるものであり、類似資産を選択する際には「構造又は用途」及び使用状況から合理的に判断するところ、調査で確認した結果、本件各さん橋及び鋼矢板岸壁は、いずれも船舶が接岸、係留して荷役を行う係留施設のうち接岸施設として区分されるものであるが、それぞれ、いわゆる「さん橋」及び「岸壁」に細分され、構造面で相違することが認められる。
 したがって、本件各さん橋については、類似資産が「構築物」の「金属造のもの」の細目欄にはないから、本件通達を適用することはできない。

請求人

 次の理由から、本件各さん橋の法定耐用年数を「金属造のもの」の項の細目欄の中で選択する場合には、「鋼矢板岸壁」の25年とすべきである。
(1)本件別表第一上、第2欄「構造又は用途」の「鉄骨鉄筋コンクリート造又は鉄筋コンクリート造のもの」、「コンクリート造又はコンクリートブロック造のもの」などの各項の細目欄において、「岸壁」と「さん橋」が並列で特掲され同一の法定耐用年数とされているのは、その機能や構造、利用のされ方において著しく類似性が高く、また、岸壁に付随して設置されるさん橋について両者一体不可分の扱いをすることが経済実態に伴うものと認識されていることを明らかにした取扱いであると認められる。
 しかしながら、「金属造のもの」の項の細目欄には、「鋼矢板岸壁」は特掲されているが「さん橋」は特掲されていない。
(2)このような本件別表第一の表記を踏まえ、「金属造のもの」の項の細目欄に特掲されていない本件各さん橋の法定耐用年数については、材質、構造及び使用のされ方がほぼ同一と認められる「鋼矢板岸壁」の法定耐用年数の適用を認めることが当然であり合理的である。

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3 判断

(1)認定事実

 原処分関係資料及び当審判所の調査によれば、次の事実が認められる。
イ 本件各さん橋は、鋼矢板岸壁に接して構築され、船舶の接岸、係留に際して荷役作業を行うために当該鋼矢板岸壁と一体として使用されていること。
ロ 大型船舶係留のためにさん橋を構築する場合においては、必要な水深並びに強度及び耐久性を確保するために、接する岸壁の構築、改修及び補強が必要と認められる場合もあるところ、請求人は、それらの必要性から本件各さん橋に接する鋼矢板岸壁も本件各さん橋の構築に併せて構築等していること。

(2)本件各更正処分及び本件各再更正処分(本件各さん橋の法定耐用年数)

イ 個々の減価償却資産の法定耐用年数は、本件別表第一の第1欄「種類」、第2欄「構造又は用途」、第3欄「細目」の順に従っていずれに該当するかを判断し、その該当する耐用年数を適用することとされている。
 そうすると、本件各さん橋の法定耐用年数は、本件別表第一の構築物の「金属造のもの」の項の細目欄に「さん橋」が特掲されていないことから一義的には同項の細目欄の「その他のもの」の45年となる。
ロ 一方、耐用年数の適用等に関する取扱通達の序章「本通達運用上の基本的留意事項」では、「個々の減価償却資産の種類、構造、用途等の判断については、合理的な社会的慣行を尊重しつつ、弾力的な処理を行うべきものと考えられる」とされているところ、請求人は、本件別表第一上、構築物の第2欄の「鉄骨鉄筋コンクリート造又は鉄筋コンクリート造のもの」などの各項の細目欄においては「岸壁」と「さん橋」が並列で特掲されているものの、「金属造のもの」の項の細目欄には「鋼矢板岸壁」が特掲されているのみで「さん橋」の特掲がないことを踏まえ、本件各さん橋の法定耐用年数を適用する場合には、材質、構造及び使用状況がほぼ同一と認められる「鋼矢板岸壁」の適用を認めるのが合理的である旨主張する。
ハ ところで、本件通達は、構築物について、その細目が特掲されていないもののうちに、当該構築物と「構造又は用途」及び使用状況が類似している本件別表第一に特掲されている構築物がある場合には、別に定めるものを除き、当該特掲されている構築物の法定耐用年数を適用することができる旨定めているところ、当該取扱いは、本件別表第一における構築物等の細目の区分(特掲)が精粗まちまちであり、かつ、「その他のもの」の法定耐用年数が特掲された資産の法定耐用年数に比して長いなどの理由からすれば、本件別表第一適用上、個々の減価償却資産の実情に合致せず不適当である場合も認められることから、耐用年数省令の規定の下で個々の実情に即し弾力的な取扱いをすることを明らかにしたものと認められ、当審判所においても、法令の解釈として相当と認められる。
ニ そこで、本件通達の取扱いを踏まえ判断すれば、本件通達が類似性の判断基準としている「構造又は用途」については本件別表第一の第2欄をいうと認められるところ、本件各さん橋の「構造又は用途」は、鋼矢板岸壁と同じ「金属造のもの」の項に属し、また、使用状況については、上記(1)認定事実のとおり、本件各さん橋の構築目的及び耐久性等の観点からこれに接する鋼矢板岸壁も本件各さん橋の構築に併せて構築等され、かつ、どちらも船舶の接岸、係留に際して荷役作業を円滑に行うために一体として使用されていることから、本件各さん橋は、鋼矢板岸壁と「構造又は用途」及び使用状況が類似すると認めるのが相当である。
ホ この点について、原処分庁は、本件各さん橋と鋼矢板岸壁は構造面で相違すると認められるから、鋼矢板岸壁を類似する資産として、本件通達を適用すべきではない旨主張する。
 しかしながら、原処分庁は、本件各さん橋について、本件別表第一の第2欄「構造又は用途」は、鋼矢板岸壁と同じ「金属造のもの」の項に属するとしており、当審判所の調査によってもそれを不相当とする事実は認められないから、本件通達の適用に当たって、本件各さん橋と鋼矢板岸壁の構造面が異なるとする原処分庁の主張には理由がなく、採用することができない。
ヘ 以上のとおり、本件各さん橋に係る法定耐用年数の適用において、請求人の主張のとおり、本件別表第一の第3欄「細目」は、「鋼矢板岸壁」の耐用年数25年を適用することが相当と認められるから、平成13年6月期の再更正処分及び更正処分はその全部を、また、平成14年6月期の再更正処分及び更正処分はその一部を取り消すべきである。

(3)過少申告加算税の賦課決定処分

 上記(2)のとおり、平成13年6月期の法人税の再更正処分及び更正処分は、その全部を取り消すべきであるから、平成15年9月30日付及び同年11月26日付でされた過少申告加算税の各賦課決定処分については、いずれもその全部を取り消すべきである。
 また、平成14年6月期の法人税の再更正処分及び更正処分は、その一部を取り消すべきであるから、平成15年9月30日付でされた過少申告加算税の賦課決定処分についてはその一部を取り消し、同年11月26日付でされた過少申告加算税の賦課決定処分についてはその全部を取り消すべきである。

(4)その他

 原処分のその他の部分については、当審判所の調査の結果によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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