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(平17.6.20裁決、裁決事例集No.69 217頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)の母が死亡したことにより亡母が提起していた課税処分の取消訴訟を承継した請求人が、判決の確定に伴い受領した還付金(以下「本件還付金」という。)及び還付加算金(以下「本件還付加算金」という。)について、本件還付金が相続により取得した財産に該当するとしてされた平成12年7月29日相続開始に係る相続税の更正処分(以下「本件相続税の更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件相続税の賦課決定処分」という。)、並びに本件還付加算金が雑所得に該当するとしてされた平成14年分の所得税の更正処分(以下「本件所得税の更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分について、違法を理由としてその全部の取消しを求めた事案であり、争点は次の3点である。
争点1 本件還付金は、相続により取得した財産に該当するか否か。
争点2 本件相続税の更正処分により生じた納付すべき税額の計算の基礎となった事実について、国税通則法(以下「通則法」という。)第65条《過少申告加算税》第4項に規定する「正当な理由があると認められる場合」に該当するか否か。
争点3 本件還付加算金は、雑所得あるいは一時所得のいずれに該当するか。

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(2)審査請求に至る経緯

 請求人の平成12年7月29日相続開始に係る相続税及び平成14年分の所得税について、審査請求(平成15年9月26日請求)に至る経緯等は、別表の(1)及び(2)のとおりである。

(3)基礎事実

 以下の事実は、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所が調査したところによっても、その事実が認められる。
イ 原処分庁は、平成12年7月29日(以下「本件相続開始日」という。)に死亡した請求人の母であるA(以下「本件被相続人」という。)に対して、平成8年2月27日付で、〔1〕平成6年○月○日に死亡した本件被相続人の夫であるB(以下「亡B」という。)に係る平成4年分の所得税についての更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「平成4年分の更正処分等」という。)、並びに〔2〕本件被相続人に係る平成5年分の所得税についての更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「平成5年分の更正処分等」といい、「平成4年分の更正処分等」と併せて「所得税の各更正処分等」という。)を行った。
ロ これに対して、本件被相続人は、所得税の各更正処分等を不服として適法な不服申立てを経て、平成9年4月11日に、所得税の各更正処分等の取消しを求める訴訟(以下「本件訴訟」という。)をC地方裁判所に提起した。
 なお、平成4年分の更正処分等に対する提訴は、亡Bの相続人である本件被相続人の相続分に対するものである。
ハ 本件被相続人は、本件相続開始日に死亡したため、請求人が本件訴訟を承継した。
 なお、本件被相続人の相続人は、請求人だけである。
ニ 本件訴訟は、C地方裁判所において、平成13年9月○日に、所得税の各更正処分等を取り消す判決が言渡され、平成13年10月○日に確定した。
ホ 原処分庁は、上記ニのとおり判決が確定したことから、平成13年12月26日付で、平成4年分の申告所得税に係る還付金24,093,400円及び平成5年分の申告所得税に係る還付金3,825,400円(これらの還付金の合計額27,918,800円が本件還付金の額となる。)並びに平成4年分の申告所得税に係る還付加算金7,348,000円及び平成5年分の申告所得税に係る還付加算金1,163,700円(以下、これらの還付加算金の合計額8,511,700円を「13年還付加算金」という。)を本件被相続人の相続人である請求人に支払った。
 なお、原処分庁は、還付加算金の計算に誤りがあったとして、平成14年1月29日付で、平成4年分の申告所得税に係る還付加算金の不足額775,800円及び平成5年分の申告所得税に係る還付加算金の不足額124,800円の合計額900,600円(以下「14年還付加算金」という。)を本件被相続人の相続人である請求人に支払った。
ヘ 原処分庁は、本件還付金は相続財産に該当するとして、請求人に対して相続税の修正申告をしょうようしたが、請求人は、平成14年3月15日に、本件還付金及び13年還付加算金を一時所得として、平成13年分の所得税の確定申告書を原処分庁に提出した。
 また、請求人は、平成15年3月13日に、14年還付加算金を一時所得として、平成14年分の所得税の確定申告書を原処分庁に提出した。
ト 原処分庁は、平成15年4月18日付で、本件還付金については相続財産に該当するとして、請求人に対して本件相続税の更正処分及び本件相続税の賦課決定処分を行うとともに、13年還付加算金については、一時所得ではなく雑所得に該当するとして平成13年分の所得税を減額する更正処分を行い、更に、14年還付加算金についても同様に雑所得に該当するとする本件所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を行った。
 なお、平成13年分の所得税の更正処分については、不服申立てはされていない。

(4)関係法令等

 関係法令等の要旨は、別紙1のとおりである。

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2 主張

(1)請求人

 原処分は、別紙2「当事者の主張」の「請求人」欄のとおりの理由により違法であるから、その全部の取消しを求める。

(2)原処分庁

 原処分は、別紙2「当事者の主張」の「原処分庁」欄のとおりの理由により適法であるから、審査請求を棄却するとの裁決を求める。

3 判断

(1)争点1

 本件還付金は、相続により取得した財産に該当するか否か。
イ 相続財産性
(イ)相続税において課税対象となる財産は、「相続又は遺贈により取得した財産」であり、相続により取得した財産には、身分権など相続の対象にならない一身専属権以外の財産権の対象となる一切のもの及び権利が含まれると解されている。
(ロ)これを本件についてみると、次のとおりである。
 本件被相続人は、本件訴訟を提起し、その訴訟を通じて過納金の還付を受けるべき旨を主張していたと認められるところ、訴訟係属中に死亡したため、相続人である請求人が本件被相続人から相続により訴訟上の地位を承継したものである。
 この場合の訴訟上の地位は、一身専属的なものではなく、財産的性格をもつもの、すなわち、過納金の還付を求める権利(以下「本件過納金の還付を求める権利」という。)であると解されるから、本件過納金の還付を求める権利は、請求人が本件被相続人から相続により取得した財産であるということができる。
ロ 財産の価額
 本件過納金の還付を求める権利の価額は、〔1〕本件訴訟は、本件被相続人等に係る所得税の更正処分等取消訴訟であり、この訴訟を通じて過納金の還付を求めていること、〔2〕本件訴訟に係る判決の確定により更正処分等の全部が取り消され、具体的に還付金の金額が確定していることからすれば、還付金相当額と同額として評価するのが相当である。
ハ 以上のとおり、請求人は、本件過納金の還付を求める権利を相続により取得したものであり、その評価額は、本件還付金相当額と同額と認められるから、本件過納金の還付を求める権利を相続財産に該当するとしてされた本件相続税の更正処分は適法である。

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(2)争点2

 本件相続税の更正処分により生じた納付すべき税額の計算の基礎となった事実について、通則法第65条第4項に規定する「正当な理由があると認められる場合」に該当するか否か。
イ 通則法第65条に規定する過少申告加算税は、当初から適法に申告した者とこれを怠った者との間に生じる不公平を是正するとともに、過少申告による納税義務違反の発生を防止し、申告秩序の維持を図るため、適法な申告をしなかった納税者に対して、同条第4項に規定する「正当な理由があると認められるものがある場合」を除き、単に過少申告であるという客観的事実のみによって課されるものである。
 なお、ここにいう「正当な理由があると認められるものがある場合」とは、例えば、申告当時適法とみられていた申告がその後の事情の変更により、納税者の故意過失に基づかずして過少申告となった場合のように、当該申告が真にやむを得ない理由によるものであり、こうした納税者に過少申告加算税を課することが不当又は酷になる場合がこれに該当し、単に過少申告が納税者の税法の不知又は誤解に基づく場合はこれに該当しないと解される。
ロ これを本件についてみると、次のとおりである。
(イ)本件訴訟において、原処分庁は、所得税の各更正処分等は適法である旨主張し、一方、請求人は、前記1の(3)のハのとおり本件訴訟を承継し、本件被相続人の主張と同じく所得税の各更正処分等が不適法である旨を主張していた。
 そして、前記1の(3)のニのとおり、本件訴訟に係るC地方裁判所の判決が確定したことにより、所得税の各更正処分等は不適法であるとして取消しとなったものである。
(ロ)つまり、原処分庁は、本件被相続人に係る相続税の申告時点において、本件訴訟を通じて所得税の各更正処分等は適法である、すなわち、請求人に対して還付されるべき金額はないと主張していたのであり、このような状態において、原処分庁は、請求人に対して本件過納金の還付を求める権利を相続財産として申告することを予定しておらず、また、請求人においても、本件過納金の還付を求める権利の適正な金額を正確に判断し、申告することは困難であると認められる。
(ハ)したがって、上記イのとおり、過少申告加算税は、申告秩序の維持を図るため、適法な申告をしなかった納税者に対して課されるものであることもかんがみれば、上記(ロ)のような場合は、請求人に対して過少申告加算税を課することは酷となる場合に該当し、通則法第65条第4項に規定する「正当な理由があると認められる場合」と認められる。
ハ 以上のとおりであるから、本件相続税の賦課決定処分は、その全部を取り消すべきである。

(3)争点3

 本件還付加算金は、雑所得あるいは一時所得のいずれに該当するか。
イ 還付加算金は、各租税法に規定する各種還付金並びに過誤納金の還付に当たり、原則として還付金等の発生の翌日から還付の日までの期間に応じ年7.3%の割合で加算されるものであるが、これらの加算金は、租税を滞納した場合に延滞税等が課されることのバランスなどを考慮して還付金等に付する一種の利子と解される。
ロ 請求人は、不法行為に対する損害賠償金的性格が強いので一時所得と判断した旨主張するが、還付加算金は、過誤納の原因となった賦課徴収手続の暇疵等それ自体を原因として、その賠償として支払うという性質のものではなく、また、通則法第58条は、各種還付金と過誤納金とを区別することなく、これらの還付の際には一様に加算金を付することとしていることからすれば、本件還付加算金についても一種の利子と解するのが相当である。そうすると、還付加算金は、一時的・偶発的に発生した所得とはいえないので一時所得に該当せず、また、所得税法第23条に規定する利子所得に含まれないことは同条の規定から明らかであり、同法第24条《配当所得》ないし第34条に規定するいずれの所得にも該当しないことから、同法第35条に規定する雑所得に該当する。
ハ 以上のとおりであるから、本件還付加算金を雑所得に該当するとしてされた本件所得税の更正処分は適法である。

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(4)その他

 所得税の過少申告加算税の賦課決定処分を含む原処分のその他の部分については、当審判所の調査によっても、これを不相当とする理由は認められない。

別紙1 関係法令等の要旨

1 民法第882条は、「相続は、死亡によって開始する。」と、また、同法第896条は、「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。但し、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。」と規定している。
2 通則法第15条《納税義務の成立及びその納付すべき税額の確定》第2項第4号は、「相続税の納税義務は、相続又は遺贈(贈与者の死亡により効力を生ずる贈与を含む。)による財産の取得の時に成立する。」旨規定し、相続税法基本通達(昭和34年1月28日付直資10国税庁長官通達。以下「相続税通達」という。)1・1の2共−7《財産取得の時期の原則》は、「相続又は遺贈による財産取得の時期は、相続の開始の時によるものとする。」旨定めている。
3 相続税法(平成15年法律第8号による改正前のもの、以下同じ。)第1条《相続税の納税義務者》第1号は、「相続又は遺贈に因り財産を取得した個人で当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有する者は、相続税を納める義務がある。」旨、また、同法第2条《相続税の課税財産の範囲》第1項は、「相続税法第1条第1号の規定に該当する者については、その者が相続又は遺贈に因り取得した財産の全部に対し、相続税を課する。」旨規定し、相続税通達11の2−1《「財産」の意義》は、「相続税法に規定する『財産』とは、金銭に見積ることができる経済的価値のあるすべてのものをいう。」旨定めている。
4 相続税法第22条《評価の原則》は、「相続、遺贈又は贈与に因り取得した財産の価額は、特別の定めのあるものを除き、当該財産の取得の時における時価により、当該財産の価額から控除すべき債務の金額は、その時の現況による。」旨規定し、財産評価基本通達(昭和39年4月25日付直資56ほか国税庁長官通達。以下「評価通達」という。)1《評価の原則》の(2)は、時価の意義について、「財産の価額は、時価によるものとし、時価とは、課税時期(相続、遺贈若しくは贈与により財産を取得した日若しくは相続税法の規定により相続、遺贈若しくは贈与により取得したものとみなされた財産のその取得の日をいう。)において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、その価額は、この通達の定めによって評価した価額による。」旨定めている。
5 通則法第65条第1項は、「期限内申告書が提出された場合において、修正申告書の提出又は更正があったときは、当該納税者に対し、その修正申告又は更正に基づき同法第35条《申告納税方式による国税等の納付》第2項の規定により納付すべき税額に100分の10の割合を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課する。」旨、また、同条第4項は、「第1項又は第2項に規定する納付すべき税額の計算の基礎となった事実のうちにその修正申告又は更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて正当な理由があると認められるものがある場合には、これらの項に規定する納付すべき税額からその正当な理由があると認められる事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除して、これらの項の規定を適用する。」旨規定している。
6 通則法第58条《還付加算金》第1項は、「国税局長、税務署長又は税関長は、還付金等を還付し、又は充当する場合には、当該還付金又は過納金に係る国税の納付があった日の翌日からその還付のための支払決定の日又はその充当の日までの期間の日数に応じ、その金額に年7.3%の割合を乗じて計算した金額をその還付し、又は充当すべき金額に加算しなければならない。」旨規定している。
7 所得税法第23条《利子所得》第1項は、「利子所得とは、公社債及び預貯金の利子並びに合同運用信託、公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託の収益の分配に係る所得をいう。」旨規定している。
8 所得税法第34条《一時所得》第1項は、「一時所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいう。」と規定している。
9 所得税法第35条《雑所得》第1項は、「雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得をいう。」と規定している。

別紙2 当事者の主張

争点1 本件還付金は、相続により取得した財産に該当するか否か。
請求人

1 本件被相続人の死亡による相続税の課税時期において、本件被相続人が取消しを求めていた所得税の更正処分が適法、有効に存在している以上、課税処分の公定力により、その相続税の課税時期において、財産権としての還付請求権は発生していないから、本件被相続人は、還付請求権を有していないことはいうまでもない。
 そして、請求人は、本件被相続人の原処分庁に対する所得税還付請求権を「相続により取得」したものではなく、本件訴訟の判決が確定した時に初めて所得税還付請求権が確定したものであり、そのときに所得税還付請求権を請求人自らの財産権として取得したものであるから、還付請求権が、その権利が発生していない本件相続開始日に存在したとして相続財産を構成することはあり得ない。
 以上のとおり、所得税の更正処分の公定力を前提とする限り、請求人は、還付請求権を相続により取得したことにならないことは明らかである。
2 仮に、所得税還付請求権が「訴訟中の権利」に該当するとしても、その評価は、「課税時期の現況により係争関係の真相を調査し、訴訟進行の状況をも参酌して原告と被告との主張を公平に判断して適正に評価する。」(評価通達210)ことになるのであり、本件訴訟の相手方は、更正処分を行った当事者である原処分庁であり、原処分庁は、前記1の(3)のイの〔1〕及び〔2〕の所得税の更正処分等を適法として長年にわたり争い、裁決でも適法として支持されているのであるから、所得税等の納付額に相当する価額が、当該係争中の所得税還付請求権の時価であるとして評価することは、不可能であることは当然のことである。

原処分庁

1 過納金が発生したのは、課税処分の取消判決が確定したときと考えられるが、本件被相続人は、本件訴訟を通じて、過納金の存在及びその還付を求め主張していたものであり、これは、本件被相続人の生前の所得税の更正処分等に係る税額の納付に基因するものであるから、本件被相続人は、過納金の還付を求める権利、すなわち還付請求権を有していたといえる。
 そして、請求人は、相続により本件被相続人の財産上の債権債務を包括的に承継することにより訴訟上の地位を承継したものであり、この訴訟上の地位とは、本件被相続人の財産上の権利、すなわち本件訴訟を通じて主張する還付請求権であるといえるから、請求人は、本件被相続人から相続により還付請求権を取得したということができる。
2 確定判決により所得税の更正処分等が取り消されたことによって、遡って過納金が存在していたことが明らかとなったものであって、当該過納金は、本件被相続人の納税に基づくものであるから、請求人が取得した本件還付金は、判決によって発生したものというよりは、請求人が相続した過納金の還付を求める権利に基づくものというべきである。
 したがって、本件還付金は、本件被相続人から相続した過納金の還付を求める権利に基づくものであるから、その価額は、本件還付金の金額によるのが相当である。

争点2 本件相続税の更正処分により生じた納付すべき税額の計算の基礎となった事実について、通則法第65条第4項に規定する「正当な理由があると認められる場合」に該当するか否か。
請求人

 仮に、原処分庁が主張するように所得税還付請求権が相続財産としても、原処分庁の請求人に対する還付請求権を相続財産とする修正申告のしょうように、請求人が応じなかったことが問題とされるのではなく、当初の相続税の申告において、所得税還付請求権を相続財産として申告しなかった過少申告に「正当な理由」があるかどうかが問われるのである。
 そうすると、請求人は、公定力を有する所得税の更正処分が取り消されずに有効に存続している以上、所得税還付請求権は法的に存在しないから、還付請求権を相続財産として申告をしていなかったものであり、相続税の申告額が過少であったことについて、通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」があるものというべきである。

原処分庁

 原処分庁は、還付請求権は相続財産に該当するとして、請求人に対して相続税の修正申告のしょうようを行ったが、請求人はこれに応じず一時所得として申告したものであり、このことは、還付請求権が相続財産に該当しないとする請求人の税法解釈の誤りに基因して過少申告となったものであるから、通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」があるとは認められない。

争点3 本件還付加算金は、雑所得あるいは一時所得のいずれに該当するか。
請求人

1 本件還付加算金は、請求人自らが申告・納税した国税等に係る還付加算金ではないことから、一般的な国税等の還付加算金とは異なり、所得税法第35条に規定する雑所得には該当しない。
2 本件還付加算金は、国が敗訴したことに基因する金利相当額を還付加算金という名目で支出した罰金的な金員であり、一時偶発的に発生した所得であるため、所得税法の規定がないことになるから、請求人からみた所得の発生原因・所得の意義からその所得区分を判断すべきである。
3 還付加算金は、確かに利子的計算をするが、それは金額算定の手段にすぎないのであって、本件の権利発生原因の一時的・偶発的性格を妨げるものではなく、本件の場合、相続人が訴訟追行をした結果、判決の日に一時的・偶発的に突然発生した所得税等の額に係る還付請求権に関する還付加算金であるから、その発生も、やはり一時的・偶発的所得であり、また、労務その他の役務の対価又は資産の譲渡の対価としての性格を有しないものである。
 したがって、本件還付加算金は、利子的計算をした金額ではあるが、不法行為に対する損害賠償金的性格が強いので一時所得と認識して申告したものであり、所得税法に反するものではない。

原処分庁

1 本件還付加算金は、本件判決の確定に基づき通則法第58条の規定により支払決定されたものであり、納付の日の翌日から支払決定の日までの期間に応じて計算され支払われたものであり、国が敗訴したことに基因する罰金的な性質のものではなく、租税を滞納した場合に延滞税が課されることとのバランスなどを考慮して、還付金等に付する一種の利子であると解するのが相当であるが、所得税法第23条にいう利子所得に含まれないことは同条の文理上明らかであり、さらに同法第34条までに規定するいずれの所得区分にも当たらないから、同法第35条の雑所得に該当する。
 このことは、還付加算金が、所得税基本通達35−1《雑所得の例示》の(5)において、雑所得に該当すると定めていることからも明らかである。
2 請求人は、本件還付加算金については、所得税法の規定がないから、請求人からみた所得の発生原因、所得の意義からその所得区分を判断すべきである旨主張するが、請求人が本件還付加算金を所得税法に規定がない金員であると判断するのであれば、前述した所得税法第35条に規定する利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得、つまり雑所得に該当すると判断すべきである。

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