ホーム >> 公表裁決事例集等の紹介 >> 公表裁決事例 >> 裁決事例集 No.71 >> (平18.2.28裁決、裁決事例集No.71 719頁)

(平18.2.28裁決、裁決事例集No.71 719頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、薬局を営む同族会社である審査請求人(以下「請求人」という。)が消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第2項に規定する課税仕入れ等の税額の計算を行うに当たり、同項第1号に規定する方法(以下「個別対応方式」という。)を選択して申告しているところ、原処分庁が個別対応方式における課税仕入れの用途区分に区分誤りがあるとして行った更正処分に対し、区分誤りはないとして同処分の全部の取消しを求めた事案である。

トップに戻る

(2)審査請求に至る経緯

イ 請求人は、平成14年10月1日から平成15年9月30日までの課税期間(以下「本件課税期間」という。)の消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)について、確定申告書に別表1の「確定申告」欄のとおり記載して法定申告期限までに申告した。
ロ これに対し、原処分庁は、平成16年7月6日付で本件課税期間の消費税等について、別表1の「更正処分等」欄のとおり更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」という。)をした。
ハ 請求人は、これらの処分を不服として平成16年8月2日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年10月29日付でいずれも棄却する異議決定をした。
ニ 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成16年11月10日に審査請求をした。

(3)関係法令等

イ 消費税法第6条《非課税》第1項は、国内において行われる資産の譲渡等のうち、別表第一に掲げるものには消費税を課さない旨規定し、同表第6号には、健康保険法、国民健康保険法、船員保険法、国家公務員共済組合法、地方公務員等共済組合法及び私立学校教職員共済法等(以下、これらを併せて「健康保険法等」という。)の規定に基づく療養の給付と規定している。
ロ 消費税法第30条第2項は、同条第1項の場合において、同項に規定する課税期間中に国内において行った資産の譲渡等の対価の額の合計額のうち課税資産の譲渡等の対価の額の合計額に占める割合(以下「課税売上割合」という。)が100分の95に満たないときは、同項の規定により控除する課税仕入れ等に係る消費税額は、同項の規定にかかわらず、同条第2項第1号又は第2号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める方法により計算した金額とする旨規定している。
(イ)第1号
 当該課税期間中において行った課税仕入れ等につき、〔1〕課税資産の譲渡等にのみ要するもの(以下「課税売上対応分」という。)、〔2〕課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等にのみ要するもの(以下「非課税売上対応分」という。)、及び〔3〕課税資産の譲渡等及び課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等に共通して要するもの(以下「共通売上対応分」という。)にその区分が明らかにされている場合には、Aに掲げる金額にBに掲げる金額を加算する方法
A 課税売上対応分に係る消費税額の合計額
B 共通売上対応分に係る消費税額の合計額に課税売上割合を乗じて計算した金額
(ロ)第2号
 上記(イ)に掲げる場合以外の場合には、当該課税期間における課税仕入れ等に係る消費税額の合計額に課税売上割合を乗じて計算する方法
ハ 健康保険法第70条《保険医療機関又は保険薬局の責務》第1項は、保険薬局は、当該保険薬局において調剤に従事する保険薬剤師に、調剤に当たらせるほか、厚生労働省令で定めるところにより療養の給付を担当しなければならない旨規定し、当該厚生労働省令を定めた保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則第9条《使用医薬品》は、保険薬剤師は、厚生労働大臣の定める医薬品以外の医薬品を使用して調剤してはならない旨規定している。
 これに基づき、平成14年3月18日厚生労働省告示第99号の第14は、保険薬剤師が保険調剤に用いることができる医薬品を限定し、使用薬剤の薬価(以下「薬価基準」という。)に収載されている医薬品等とする旨定めている。

(4)基礎事実

 以下の事実は、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 請求人は、複数の店舗の薬局を有し、そのうちJ店は、健康保険法第65条《保険医療機関又は保険薬局の指定》に規定する厚生労働大臣の指定を受けた保険薬局である。
ロ 請求人は、J店の中に、健康保険法等の規定により薬品等の給付を取り扱う部門(以下「調剤部門」という。)とそれ以外の薬品等を取り扱う部門を有している。そして、調剤部門において取り扱う薬品等(以下「調剤薬品等」という。)に係る売上げ及び仕入れについて、それ以外の薬品等を取り扱う部門の薬品等と明確に区分し、元帳の売上高調剤勘定及び調剤薬品仕入高勘定に記帳している。
ハ 請求人は、本件課税期間における消費税等の申告において、課税仕入れ等に係る消費税額の控除額(以下「控除対象仕入税額」という。)の計算について個別対応方式を選択し、課税仕入れに係る消費税等の額について、別表2の「消費税等の額」の「合計」欄のとおり、課税売上対応分11,407,239円、非課税売上対応分604,965円及び共通売上対応分7,567,198円と区分し、控除対象仕入税額を別表3の「請求人主張額」欄のとおり算出している。
ニ 請求人は、消費税等について税抜経理の方式を採用している。

トップに戻る

2 主張

(1)請求人

 原処分は、次の理由により違法であるから、その全部の取消しを求める。
イ 本件更正処分について
(イ)個別対応方式における区分
A 課税仕入れである調剤薬品等の仕入れについては、非課税売上対応分及び共通売上対応分とに区分している。
B 他の保険薬局から仕入れた調剤薬品等は、健康保険法等が適用され非課税売上げ用として使用されるものであるから、非課税売上対応分と区分している。
C 問屋から仕入れた調剤薬品等は、保険医等からの処方せんに基づき販売され非課税売上げ用として使用されるもののほか、ほぼ毎日他の保険薬局へ販売され又は自費診療分として販売され課税売上げ用として使用されるものがあるので、その仕入れた時点においては、課税売上げとなるのか又は非課税売上げとなるのかの区分ができないため、共通売上対応分と区分している。
 なお、問屋から仕入れた調剤薬品等は、譲渡後でなければ譲渡先が明らかにならず、しかもその時に明らかになるのは品名及び数量のみであって、何時、いくらで仕入れたものなのかの追跡が不可能である。
D 個別対応方式における区分は、事業者の主観ではなく、消費税法、消費税法基本通達及び質疑応答事例により客観的に判断すべきであるから、請求人は、病院において健康保険法等が適用される診療とそれ以外の診療に使われる薬品等が、その仕入れた時点においてそれぞれに区分することは困難であり、その薬品、機材等の課税仕入れを共通売上対応分として取り扱う趣旨の質疑応答事例を根拠とし、問屋からの調剤薬品等の仕入れに係る消費税等を共通売上対応分と区分したものである。
 また、病院が行う診療行為に基づき使用する薬品の給付と、請求人が保険薬局で行う診療行為に基づく薬品の給付は、ともに健康保険法第63条《療養の給付》第1項に規定する療養の給付であるから質疑応答事例にある「病院」を「薬局」と読み替えても差し支えない。
(ロ)控除対象仕入税額
 上記(イ)のとおり、問屋からの調剤薬品等の仕入れの区分を適法に行っているものであるから、本件課税期間における控除対象仕入税額は、別表1の「確定申告」の「消費税」の「控除対象仕入税額」欄のとおり12,556,539円である。
ロ 本件賦課決定処分について
 上記イのとおり、本件更正処分は違法であり取消しを免れないから、本件賦課決定処分も取り消すべきである。

トップに戻る

(2)原処分庁

 原処分は、次の理由により適法であるから、審査請求をいずれも棄却するとの裁決を求める。
イ 本件更正処分について
(イ)個別対応方式による区分
A 消費税法が仕入れに係る消費税額の控除の規定を設けている趣旨は、同法が課税売上げを課税対象とする多段階課税方式を採用していることから、課税売上げに係る消費税額から仕入れに含まれている消費税額を控除して税の累積を排除することにある。そして、個別対応方式により控除対象仕入税額の計算を行う場合には、課税仕入れの用途区分を必ず行うことが必要であり、非課税売上対応分に係る消費税額は、仕入れに係る消費税額の控除の対象とすることはできない。
B 保険薬局とは、健康保険法等の規定により保険医等から交付された処方せんに基づき療養の給付として薬品等の支給を行うものであるから、健康保険法等が適用となる薬品等は、健康保険法等の規定に基づく給付を目的として仕入れられたものである。
 請求人の調剤薬品等の仕入れは、専ら保険薬局として非課税となる健康保険法等が適用される診療に係る調剤売上げを行うための仕入れであり、当該調剤薬品等が健康保険法等の適用されない自費診療に係る販売や他の保険薬局に対する販売などの課税売上げとして使用されることがあるとしても、それは、本来の目的とは別途に事後的に発生するものであるから、調剤薬品等の仕入れは、課税仕入れを行った日の状況においては、非課税売上対応分と区分すべきである。
C 病院における薬品等は診療行為に伴って使用されるものであり、同一の薬品等が健康保険法等が適用される診療とそれ以外の診療に共通して使用されることが多く、その使用も随時渾然一体となって行われることから、その区分が困難な場合には、請求人が主張する質疑応答事例のとおり共通売上対応分として区分することもやむを得ない。
 しかし、請求人の調剤薬品等の仕入れは、そのまま他に譲渡される資産であるから、自ずと課税売上げ又は非課税売上げに区分され共通売上対応分とはなり得ず、病院における薬品等の区分と同様に取り扱うことはできない。
(ロ)控除対象仕入税額
 上記(イ)のとおり、請求人の調剤薬品等の仕入れに係る消費税額は、非課税売上対応分の消費税額であるから、別表4−2の「原処分庁主張額」の「非課税売上対応分」欄のとおり6,112,909円となり、控除対象仕入税額は、別表3の「原処分庁主張額」の「控除対象仕入税額」欄のとおり10,023,725円となる。
(ハ)消費税等の計算
A 課税標準額及び課税標準額に対する消費税額
 課税標準額及び課税標準額に対する消費税額は、請求人が申告した金額と同額で、別表7の「原処分庁主張額」の「課税標準額」欄及び「課税標準額に対する消費税額」欄のとおり、それぞれ○○○○円及び○○○○円となる。
B 控除対象仕入税額
 控除対象仕入税額は、上記(ロ)のとおり10,023,725円となる。
C 差引税額
 差引税額は、上記Aの課税標準額に対する消費税額から上記Bの控除対象仕入税額を差し引いた金額で、別表7の「原処分庁主張額」の「差引税額」欄のとおり○○○○円となる。
D 既に納付の確定した消費税額
 既に納付の確定した消費税額は、請求人が申告した控除不足還付税額と同額で、別表7の「原処分庁主張額」の「既に納付の確定した消費税額」欄のとおりである。
E 差引納付すべき消費税額
 差引納付すべき消費税額は、上記Cの差引税額から上記Dの既に納付の確定した消費税額を差し引いた金額で、別表7の「原処分庁主張額」の「差引納付すべき消費税額」欄のとおり○○○○円となる。
F 地方消費税の課税標準額及び譲渡割額
 地方消費税の課税標準額は、上記Cの差引税額と同額であり、譲渡割額は、地方消費税の課税標準額に100分の25を乗じた金額で、別表7の「原処分庁主張額」の「課税標準となる消費税額」欄及び「譲渡割額」欄のとおり、それぞれ○○○○円及び○○○○円となる。
G 既に納付の確定した譲渡割額
 既に納付の確定した譲渡割額は、請求人が申告した金額と同額で、別表7の「原処分庁主張額」の「既に納付の確定した譲渡割額」欄のとおりである。
H 差引納付すべき譲渡割額
 差引納付すべき譲渡割額は、上記Fの譲渡割額から上記Gの既に納付の確定した譲渡割額を差し引いた金額で、別表7の「原処分庁主張額」の「差引納付すべき譲渡割額」欄のとおり○○○○円となる。
I 差引納付すべき合計税額
 差引納付すべき合計税額は、上記Eの差引納付すべき消費税額に上記Hの差引納付すべき譲渡割額を加算した金額で、別表7の「原処分庁主張額」の「差引納付すべき合計税額」欄のとおり○○○○円となる。
 以上のとおり、差引納付すべき合計税額は○○○○円となり、別表7の「更正処分」の「差引納付すべき合計税額」欄の○○○○円を上回るから、本件更正処分は適法である。
ロ 本件賦課決定処分について
 上記イのとおり、本件更正処分は適法であり、請求人の場合、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由がある場合には該当しないことから、同条第1項の規定に基づいて行った本件賦課決定処分は適法である。

トップに戻る

3 判断

(1)認定事実

 請求人の提出した資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
イ 本件課税期間における売上げの額は、別表5の「合計」欄のとおり○○○○円であり、そのうち調剤部門における課税売上げの額は438,242円、非課税売上げの額は230,100,941円である。
ロ 調剤薬品等の売上げに係る元帳の売上高調剤勘定への記載状況は、次のとおりである。
(イ)課税売上げ
 〔1〕他の保険薬局への小分販売、〔2〕医師の指示書による販売、及び〔3〕自費診療(患者負担10割)による販売は、いずれも健康保険法等が適用とならない課税売上げとしており、勘定の「摘要」欄に「○○調剤薬局小分け、税抜」又は「○○代、税抜」等と記載している。
(ロ)非課税売上げ
 保険医等の処方せんに基づいて販売し、患者から窓口で現金を受領又は社会保険診療報酬支払基金等に請求した時には、非課税売上げとしており、勘定の「摘要」欄に「J調剤、非課」又は「○○月分、非課」と記載している。
ハ 調剤薬品等の仕入れに係る元帳の調剤薬品仕入高勘定への記載状況は、次のとおりである。
(イ)他の保険薬局からの仕入れ
 他の保険薬局から仕入れた調剤薬品等は、すべて健康保険法等が適用される非課税売上げ用に使用されるため、非課税売上対応分と区分しており、勘定の「摘要」欄には「○○調剤薬局小分け、抜非」と記載している。
(ロ)問屋からの仕入れ
 問屋から仕入れた調剤薬品等は、そのほとんどが健康保険法等が適用される非課税売上げ用として使用されるが、健康保険法等が適用されない課税売上げ用として使用されることもあるため、そのすべてについて共通売上対応分と区分しており、勘定の「摘要」欄には「○○月分、抜共」と記載している。
ニ 当審判所の調査によれば、請求人が問屋から仕入れ、共通売上対応分とした本件課税期間における調剤薬品等には、薬価基準に収載されているものと薬価基準に収載されていないものが混在しており、薬価基準に収載されていない医薬品等は、別表6の「薬品名等」欄のとおりであり、その金額は同表の「合計」欄のとおり309,950円である。

トップに戻る

(2)本件更正処分について

イ 個別対応方式の区分と適用
 課税売上割合が95パーセント未満の事業者に対して、消費税法は、控除対象仕入税額の計算について、上記1の(3)のロのとおり、個別対応方式と第30条第2項第2号に規定する方式(一括比例配分方式)とを設け、どちらの方式を採用するかは事業者の選択に委ねられている。
 この個別対応方式により仕入れに係る消費税額の控除が認められるためには、課税仕入れについて、〔1〕課税売上対応分、〔2〕非課税売上対応分、及び〔3〕共通売上対応分とに区分が明らかにされていることが適用要件であり、課税売上対応分に係る課税仕入れ等の税額の合計額と共通売上対応分に係る課税仕入れ等の税額の合計額に課税売上割合を乗じて計算した金額との合計額が、個別対応方式による控除対象仕入税額となる。
 ここにいう「課税売上対応分」とは、課税売上げのみに要する課税仕入れを、また、「非課税売上対応分」とは、非課税売上げのみに要する課税仕入れをいい、「共通売上対応分」とは、課税売上げのみに要する課税仕入れ及び非課税売上げのみに要する課税仕入れのいずれにも該当しない課税仕入れをいうものとされている。
 次に、消費税法第30条第2項第1号にいう「・・・その区分が明らかにされている」という規定に関しては、どの程度まで、どのような方法で、それぞれの区分を明確にしておけばよいのかは、現行法上明記されている規定はなく、消費税法基本通達11−2−18《個別対応方式の適用方法》において「・・・課税仕入れの中から課税資産の譲渡等にのみ要するものを抽出し、それ以外のものをすべて課税資産の譲渡等と課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等に共通して要するものに該当するものとして区分することは認められない」とされているにすぎない。
 そうすると、事業者が、課税仕入れについて、合理的な根拠に基づいてこの3区分に区分をしている限りにおいては、当該区分が認められなければならず、また、当該区分を明らかにする方法については、消費税法第30条第7項の法定帳簿を区分経理しておくとか同条第9項の請求書等を区分編てつしておくとか、具体的な方法が消費税法上に規定されていないことから、何らかの方法で事業者がその区分を明らかにしていれば、法定要件を満たしていると言わざるを得ない。
ロ これを本件についてみると、次のとおりである。
 請求人は、上記1の(4)のハのとおり、個別対応方式を選択し、調剤薬品等の仕入れについて、上記(1)のハの(イ)のとおり、他の保険薬局から仕入れた調剤薬品等は非課税売上げのみに使用されることから、調剤薬品仕入高勘定の「摘要」欄に「○○調剤薬局小分け、抜非」と記載することにより非課税売上対応分と区分し、別表2の「消費税等の額」の「調剤薬品等」欄のとおり、本件課税期間における非課税売上対応分に係る消費税等の額を526,221円とし、また、上記(1)のハの(ロ)のとおり、問屋から仕入れた調剤薬品等は課税売上げ用又は非課税売上げ用として使用されることから、調剤薬品仕入高勘定の「摘要」欄に「○○月分、抜共」と記載することにより共通売上対応分と区分し、別表2の「消費税等の額」の「調剤薬品等」欄のとおり、本件課税期間における共通売上対応分に係る消費税等の額を5,586,688円としていることが認められる。
 このように、調剤薬品等は、販売により上記(1)のイのとおり、課税売上げの額438,242円及び非課税売上げの額230,100,941円となり、問屋から仕入れた調剤薬品等は、そのほとんどが非課税売上げ用として使用されているものであるが、上記(1)のロの(イ)のとおり、現実的に〔1〕保険薬局への小分販売、〔2〕医師の指示書による販売、〔3〕自費診療(患者負担10割)による販売として課税売上げが発生していることから、その仕入れた時点における区分は、課税売上げのみに要する課税仕入れ又は非課税売上げのみに要する課税仕入れとは認められないので、上記イのとおり、共通売上対応分の課税仕入れとするのが相当である。
 そうすると、請求人が上述のとおり区分し課税仕入れに係る消費税等の額を別表2のとおり〔1〕課税売上対応分、〔2〕非課税売上対応分、及び〔3〕共通売上対応分としたことは、調剤薬品等のほとんどが非課税売上げ用として使用されるとしても、上記イに照らしてみると、法令の趣旨に沿わない不合理な区分とまではいうことができないから、この区分により個別対応方式による控除対象仕入税額を算出することは相当であると認められる。
 なお、当審判所の調査によれば、上記(1)のニのとおり、請求人が共通売上対応分と区分した本件課税期間における調剤薬品等の仕入れには、別表6のとおり薬価基準に収載されていない医薬品等の額309,950円が含まれていることが認められ、当該医薬品等は、上記1の(3)のハのとおり、保険適用外となり、販売により課税売上げとなるので、当該医薬品等の仕入れは、課税売上げのみに要する課税仕入れと認められ、請求人が共通売上対応分と区分した調剤薬品等の仕入れのうち、別表6の医薬品等の額は、課税売上対応分に区分することが相当であり、その区分を訂正すべきものと認められる。
 また、原処分庁は、請求人が共通売上対応分と区分した調剤薬品等の仕入れについて、当該調剤薬品等が課税売上げ用に使用されたとしても当該売上げは本来の目的とは別途に事後的に発生するものであり、課税仕入れを行った日の状況においては非課税売上対応分とすべきである旨主張するが、現実的に課税売上げが日常的に発生し、その区分の判定時期である課税仕入れの時点においては、非課税売上げのみに要する課税仕入れとは認められないから、この点に関する原処分庁の主張には理由がない。
ハ 消費税等の計算
(イ)課税標準額及び課税標準額に対する消費税額
 原処分庁は、課税標準額及び課税標準額に対する消費税額を請求人が申告した金額と同額としているところ、当審判所の調査によっても相当と認められ、別表7の「審判所認定額」の「課税標準額」欄及び「課税標準額に対する消費税額」欄のとおり、それぞれ○○○○円及び○○○○円となる。
(ロ)課税売上割合
 原処分庁は、請求人が主張する課税売上割合と同じであるとし、別表3の「原処分庁主張額」の「課税売上割合」欄のとおりとしているところ、当審判所の調査によっても相当と認められ、同表の「審判所認定額」の「課税売上割合」欄のとおり56.67%となる。
(ハ)控除対象仕入税額
 上記ロのとおり、別表6に記載した医薬品等の仕入れは、課税売上対応分に区分すべきであるから、調剤薬品等の仕入れに係る消費税等の額を再計算すると、別表4−2の「審判所認定額」欄のとおり課税売上対応分14,759円、非課税売上対応分526,221円及び共通売上対応分5,571,929円となり、課税仕入れに係る消費税等の額の明細は、別表4−1の「審判所認定額」欄のとおりとなる。
 これに基づき控除対象仕入税額を再計算すると、別表3の「審判所認定額」の「控除対象仕入税額」欄のとおりとなり、控除すべき消費税額は、別表7の「審判所認定額」の「控除対象仕入税額」欄のとおり12,561,577円となる。
(ニ)控除不足還付税額
 原処分庁は、差引税額を別表7の「原処分庁主張額」の「差引税額」欄のとおり○○○○円と主張しているところ、当審判所の調査による控除不足還付税額は、同表の「審判所認定額」の「差引税額」欄のとおり○○○○円となる。
(ホ)差引納付すべき消費税額
 原処分庁は、差引納付すべき消費税額を別表7の「原処分庁主張額」の「差引納付すべき消費税額」欄のとおり○○○○円と主張しているところ、上記(ニ)のとおり控除不足還付税額は○○○○円となることから、同表の「更正処分」の「差引納付すべき消費税額」欄の○○○○円は、その全額を取り消すべきである。
(ヘ)地方消費税の課税標準額及び譲渡割額
 原処分庁は、地方消費税の課税標準額を差引税額と同額とし、別表7の「原処分庁主張額」の「課税標準となる消費税額」欄のとおり○○○○円と主張しているところ、上記(ニ)の控除不足還付税額と同額であるから、同表の「審判所認定額」の「課税標準となる消費税額」欄のとおり控除不足還付税額○○○○円となる。
 原処分庁は、譲渡割額を地方消費税の課税標準額に100分の25を乗じた金額で、別表7の「原処分庁主張額」の「譲渡割額」欄のとおり○○○○円と主張しているところ、当審判所の調査による還付相当額は、同表の「審判所認定額」の「譲渡割額」欄のとおり○○○○円となる。
(ト)差引納付すべき譲渡割額
 原処分庁は、差引納付すべき譲渡割額を別表7の「原処分庁主張額」の「差引納付すべき譲渡割額」欄のとおり○○○○円と主張しているところ、上記(ヘ)のとおり譲渡割額は○○○○円の還付となることから、同表の「更正処分」の「差引納付すべき譲渡割額」欄の○○○○円は、その全額を取り消すべきである。
(チ)差引納付すべき合計税額
 原処分庁は、差引納付すべき合計税額を別表7の「原処分庁主張額」の「差引納付すべき合計税額」欄のとおり○○○○円と主張しているところ、上記(ホ)及び(ト)のとおり、差引納付すべき消費税額及び差引納付すべき譲渡割額を取り消すべきであるから、同表の「更正処分」の「差引納付すべき合計税額」欄の○○○○円は、その全額を取り消すべきである。
 以上のとおり、本件更正処分はその全部を取り消すべきである。

(3)本件賦課決定処分について

 上記(2)のとおり、本件更正処分はその全部を取り消すべきであるから、原処分庁が行った本件賦課決定処分もその全部を取り消すべきである。

(4)その他

 原処分のその他の部分については、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

トップに戻る