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(平18.5.24裁決、裁決事例集No.71 741頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、各登記申請時に登録免許税法第4条《公共法人等が受ける登記等の非課税》第2項の規定(以下「本件非課税規定」という。)を適用せずに登録免許税を納付して登記を受けた後、登録免許税の過誤納があったとして、同法第31条《過誤納金の還付等》第2項に規定する還付通知の各請求を行ったのに対し、原処分庁が、還付の通知をすべき理由がない旨の各通知処分を行ったことから、これを不服とする請求人が、各処分全部の取消しを求めた事案である。

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(2)審査請求に至る経緯

イ 請求人は、別表2−1ないし2−10記載の各土地について、別表1−1ないし1−4の「登記申請」欄記載のとおりの各登記の申請(以下「本件各登記申請」という。)をし、原処分庁は、本件各登記申請に対し、同表の「登記(所有権移転等)」欄各記載のとおりの各登記(以下「本件各登記」という。)をした。
ロ 請求人は、本件各登記の申請書に、登録免許税として、別表2−1ないし2−10の「課税標準額」欄記載の各金額にそれぞれ1,000分の10を乗じた別表1−1ないし1−4の「登記申請」欄の「登録免許税の額」欄記載の各金額を原処分庁に納付した(以下「本件各納付」という。)。
ハ 請求人は、平成17年4月8日、原処分庁に対し、別表1−1ないし1−4の「還付通知の請求」欄記載のとおり、請求人の納税地の所轄税務署長に還付通知をすべきである旨の各請求をした(以下「本件各還付通知請求」という。)。
ニ 原処分庁は、平成17年5月9日付で、請求人に対し、別表1−1ないし1−4の「還付通知をすべき理由がない旨の通知」欄記載のとおりの各通知処分(以下「本件各通知処分」という。)をしたことから、これを不服とする請求人が、同年6月10日に審査請求をした。

(3)関係法令

 別紙記載のとおり

(4)基礎事実(当事者間に争いがなく、当審判所の調査によっても認められる事実)

イ 請求人は、本件各登記は、租税特別措置法第72条《不動産の登記に係る登録免許税の税率の特例》第1項の「所有権のその他の原因による移転の登記」であるとして登録免許税法第9条《課税標準及び税率》の規定に基づき、本件各納付における登録免許税の額を算出しており、この算出方法及び算出額に誤りはない。
ロ 本件各還付通知請求は、本件各登記に係る登録免許税は本件非課税規定の適用により非課税となるから、本件各納付により過誤納が生じているとしてされたものであり、本件各通知処分は、本件各納付により過誤納は生じていないとしてされたものである。
ハ 請求人は、本件非課税規定に定める別表第三の24の第1欄に掲げる農業協同組合連合会に該当し、本件各登記は、別表第三の24の第3欄の第2号に掲げる公的医療機関の建物の敷地の用に供する土地の権利の取得登記に該当することから、本件各登記申請に際し、本件非課税規定に定める別表第三の24の第4欄に掲げる第3欄の第2号の登記に該当するものであることを証する財務省令で定める書類(以下「本件各証明書」という。)を添付することによって本件非課税規定の適用を受ける余地があったが、添付しなかった。
ニ 本件非課税規定を適用した場合の本件各登記に係る登録免許税の額は、いずれも零円である。
ホ 請求人は、平成16年12月28日、A県知事に対し、本件各証明書の発行申請を行い、同知事から平成17年1月12日に本件各証明書の交付を受け、同年4月8日、原処分庁に対し、本件各証明書を添付して本件各還付通知請求をした。
ヘ 本件各登記申請は、不動産登記法(平成16年法律第123号による改正前のもの。)第49条各号に規定する却下事由には該当しないことから、原処分庁は、本件各登記をした。

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2 争点

 本件各納付により登録免許税の過誤納が生じているか。

3 争点に対する当事者の主張

(1)請求人

 次のとおり、本件各納付により登録免許税の過誤納が生じているから、本件各通知処分は違法であり、取り消されるべきである。
イ 請求人が本件各証明書を添付せずに本件各登記申請をしたのは、本件各登記申請時までに本件各証明書の入手が間に合わなかったことによるが、このことは、本件各登記の申請書に記載した登録免許税の課税標準又は税額の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったことにより、登録免許税の過誤納があるときに該当する。
ロ 本件非課税規定は、本件各証明書の提出時期を制限していないことなどから、本件各証明書を添付しないで登記を済ませた場合であっても、後日、本件各証明書を提出した場合には、本件非課税規定の適用を認めるべきである。
 そうすると、請求人は本件各登記後に本件各証明書を提出しているのであるから、本件非課税規定が適用され、その結果、本件各納付により登録免許税の過誤納が生じていることになる。

(2)原処分庁

 請求人は、本件各登記申請時において、登録免許税の納税額を本件各登記の申請書に記載するとともに、請求人が自ら登録免許税を納付したものであるから、登記の完了の時点で、その申請内容に基づいて納税義務が成立し税額も確定しており、過誤納の事実も認められない。
 したがって、本件各通知処分は適法である。

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4 判断

(1)登録免許税の納付義務は、登記の時に成立し、納付すべき税額は、納税義務の成立と同時に特別の手続を要しないで確定するのであり(国税通則法第15条第2項第12号及び同条第3項第5号)、登録免許税の納付をした場合において過誤納が生じるのは、国税として納付された金員に対応する確定した登録免許税が、登記の申請書に記載した登録免許税の課税標準又は税額の計算が国税に関する法律の規定に従っていないことなどにより存在しない場合である(登録免許税法第31条第2項参照)。
(2)そこで、本件各納付により過誤納が生じているか否かについてみると、本件各登記は適法にされていることから(前記1の(4)のヘ)、登録免許税の納付義務は、登記の時に成立し、納付すべき税額も同時に確定しており、本件各納付は、登録免許税法第9条及び租税特別措置法第72条第1項の規定に基づいて、税額の計算が正しく行われた上でされているのであるから(前記1の(4)のイ)、請求人が本件各登記の申請書に記載した登録免許税の課税標準又は税額の計算が国税に関する法律の規定に従っていないとはいえない。
 したがって、本件は、本件各納付に係る登録免許税が存在しない場合には当たらないのであって、本件各納付により過誤納が生じているとはいえないから、この点に関する請求人の前記3の(1)のイの主張には理由がない。
(3)また、請求人は、前記3の(1)のロのとおり主張するが、本件各証明書の追完による本件非課税規定の適用を認める規定が存在しない以上、上記主張は採用することはできない。
(4)以上によれば、還付通知をすべき理由がないとしてされた本件各通知処分は、いずれも適法である。
(5)原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された資料によっても、これを不相当とする理由は認められない。

別表1 審査請求に至る経緯

別表2 各登記申請に係る物件明細

別紙 関係法令

1 登録免許税法第4条第2項は、同法の別表第三の第1欄に掲げる者が自己のために受けるそれぞれ同表の第3欄に掲げる登記等(同表の第4欄に財務省令で定める書類の添付があるものに限る旨の規定がある登記等にあっては、当該書類を添付して受けるものに限る。)については、登録免許税を課さない旨規定している。
2 登録免許税法第31条第2項は、登記等を受けた者は、当該登記等の申請書に記載した登録免許税の課税標準又は税額の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったことにより、登録免許税の過誤納があるときは、当該登記等を受けた日から1年を経過する日までに、政令で定めたところにより、その旨を登記機関に申し出て、前項の通知をすべき旨の請求をすることができる旨規定し、同法第31条第1項は、登記機関は、過大に登録免許税を納付して登記等を受けたとき等に該当する事実があるときは、遅滞なく、当該納付された登録免許税の額等その他政令で定める事項を登記等の申請した者又は登記等を受けた者の当該登録免許税に係る同法第8条《納税地》第2項の規定による納税地の所轄税務署長に通知しなければならない旨規定している。
3 国税通則法第15条《納税義務の成立及びその納付すべき税額の確定》第2項第12号は、登録免許税の納税義務は登記等の時に成立するとし、同条第3項第5号は、登録免許税は納税義務の成立と同時に特別の手続を要しないで納付すべき税額が確定する旨をそれぞれ規定している。

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