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(平18.7.11、裁決事例集No.72−534頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、原処分庁が、河川敷等に対する占用許可に基づく占用権(後記本件占用権)は相続財産であるとして、平成14年2月○日(以下「本件相続開始日」という。)に死亡した被相続人の相続に係る相続税の更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分を行ったのに対し、審査請求人(以下「請求人」という。)が、同占用権は法人に帰属する権利であって相続財産ではないから、原処分は違法であるとして、その全部の取消しを求めた事案であり、争点は、次の2点である。
争点1 本件占用権は、相続財産に該当するか否か。
争点2 本件占用権の評価額は、妥当か否か。

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(2) 審査請求に至る経緯

 審査請求(平成17年7月20日請求)に至る経緯及び内容は、別表1のとおりである。

(3) 基礎事実

 以下の事実は、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査によってもその事実が認められる。
イ 請求人の父であるJは、昭和30年ころに河川管理者である○○県○○治水事務所長(以下「治水事務所長」といい、同事務所についても以下「治水事務所」という。)から、河川法(平成11年法律第160号による改正前のもの。以下同じ。)第24条《土地の占用の許可》に基づき、P市Q町○番○号地先の○○川左岸の河川敷(以下「本件土地」という。)及び流水面(以下「本件流水面」といい、本件土地と併せて「本件土地等」という。)の占用許可を受け、以後、平成11年3月31日までの間、3年ごとに許可を受けてきた(以下、平成11年3月31日までの許可に基づく権利を「許可占用権」という。)。
ロ Jは、引き続き、平成11年4月1日付けで治水事務所長から占用許可(許可番号:○○県指令○○治水第○−○号、以下「本件占用許可」という。)を受けた(以下、本件占用許可に基づく権利を「本件占用権」といい、本件占用権のうち、本件土地に係るものを「本件土地占用権」、本件流水面に係るものを「本件流水面占用権」という。また、本件占用権と許可占用権を併せて「本件占用権等」という。)。
 本件占用許可には、許可条件(以下「本件許可条件」という。)が付されており、主な条項は次のとおりである。
(イ) 第1条 許可する占用目的は、造船施設、浮桟橋、荷役場(無舗装)及びけい船場(以下、これらを併せて「造船施設等」という。)のためとする。
(ロ) 第3条 河川区域内の占用面積は、河川敷1,348.73平方メートル、流水面841.62平方メートルとする。
(ハ) 第4条 占用期間は、平成11年4月1日から平成14年3月31日までとする。
(ニ) 第5条 占用料は、1か年につき4,290,920円とする。
(ホ) 第12条 許可を受けた権利は、これを第三者に転貸してはならない。
(ヘ) 第13条 許可を受けた権利は、治水事務所長の承認を受けなければ譲渡することができない。
(ト) 第14条 相続、法人合併などの事由により、地位を承継した者は、その承継の日から30日以内に、治水事務所長にその旨を文書で届け出なければならない。
ハ Jは、平成14年2月○日に死亡した。
ニ Jの法定相続人は、請求人及びKの2名である。
ホ 請求人は、Jの死亡に伴い平成14年3月8日付けで、治水事務所長に対し、遺産分割協議書を添付して本件占用許可に基づく地位を引き継ぐ旨の地位承継届(以下「本件届出書」という。)を提出し、同所長は、同月12日付けでこれを受理した旨請求人に通知した。

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2 主張及び判断

(1) 争点1 本件占用権は、相続財産に該当するか否か。

イ 主張

原処分庁 請求人
 本件占用権は、次の理由でJに帰属しており、相続財産に該当する。  本件占用権は、次の理由でL社に帰属しており、相続財産には該当しない。
(イ) 請求人は、昭和53年○月に、許可占用権がJからL社へ譲渡された旨主張するが、請求人から、これを裏付ける契約書等の具体的な証拠の提出はなく、当該譲渡があったかどうか定かではない。
 仮に、許可占用権を譲渡する旨の契約があったとしても、治水事務所長は、Jに対して本件土地の占用を許可しており、当該譲渡について承認をしていないから、当該契約は無効である。
(イ) Jは、昭和53年○月にL社を設立した際に、同人の個人事業に係る資産及び負債をL社に引き継いだが、許可占用権もその中に含まれている。
 このことは、許可占用権自体は資産でなく資産台帳に記載されていないものの、L社の決算書に、造船施設等の減価償却資産が、昭和53年から計上されていることから裏付けられる。
(ロ) 治水事務所長は、平成11年4月1日付けで、Jが同日から平成14年3月31日までの間、本件土地等を占用することを許可しており、本件相続開始日以後については、請求人が、Jの当該許可に基づく地位を承継した旨を治水事務所長に届け出ている。 (ロ) L社は、昭和53年○月から本件土地等を事業に供し実質的に支配しており、占用許可の更新手続や占用料の支払も行っている。
 また、治水事務所長は、このことを黙認しており、L社は、治水事務所長から本件許可条件第13条等に関して何らの指導を受けたことはなく、形式的にJ名義で、占用許可の更新が行われていたにすぎない。

ロ 判断
(イ) 関係法令
A 相続税法(平成15年法律第8号による改正前のもの。以下同じ。)第1条《相続税の納税義務者》第1号は、相続に因り財産を取得した個人で当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有するものは、この法律により、相続税を納める義務がある旨規定している。
B 相続税法第2条《相続税の課税財産の範囲》第1項は、同法第1条第1号の規定に該当する者については、その者が相続に因り取得した財産の全部に対し、相続税を課する旨規定している。
C 河川法第24条は、河川区域内の土地を占用しようとする者は、建設省令で定めるところにより、河川管理者の許可を受けなければならない旨規定している。
D 河川法第34条《権利の譲渡》第1項は、同法第23条から第25条までの許可に基づく権利は、河川管理者の承認を受けなければ、譲渡することができない旨規定している。
(ロ) 法令解釈
A 相続税法は、納税義務者及び課税財産について、上記(イ)のA及びBのとおり、相続により取得した財産の全部に対し、相続税を課する旨規定しているが、ここにいう財産とは、金銭に見積もることができる経済的価値のあるものすべてをいうと解される。
B 河川法第24条の規定に基づく河川区域内の土地の占用許可は、特定人に対し、当該土地の本来の用法を超えて特別の継続的な使用権を設定するものであり、当該権利は、河川管理者との関係では公法上の債権の性格を持ち、また、その権利の実質からみると当該許可を受けた者の私的な経済的利益を満たすものであり、河川管理者の承認があれば移転性も認められるので、私法上の財産権としての性質を持つと解される。
C 河川法第24条の規定に基づく土地の占用の許可は、法律行為の効力要件であり、認可を受けないでした行為は、効力を生じないと解される。これは、河川の利用が、河川の公物性を基本として公共性又は公益性を主眼に行われるべきものであることから、許可に係る権利を当事者間の自由な処分にゆだねるべきではないとの考えに基づくものである。
(ハ) 認定事実
 請求人及び原処分庁の提出した資料及び当審判所の調査によれば、以下の事実が認められる。
A 請求人は、本件占用権に係る地位を承継する際に、治水事務所の職員から、占用許可を受けている者が死亡した場合は、河川法上、相続人が権利義務を承継することになり、L社又は同社の代表者であるMへの名義変更はできず、また、相続人以外の者が地位承継をした事例もないとの説明を受けたため、地位の承継について治水事務所と争った場合は、L社の営業ができなくなるおそれがあると考え、やむを得ず請求人がJの地位を承継した(請求人の答述)。
B 治水事務所長は、本件土地に対するJの従来の利用状況があまり良くなかったので、同人からL社への本件占用権等の譲渡を認めなかった(治水事務所の職員の答述)。
C L社の昭和57年5月1日から昭和58年4月30日までの事業年度の法人税の確定申告書の別表16(2)の「定率法による減価償却資産の償却額の計算に関する明細書」には、本件土地に存する建物(以下「本件建物」という。)及びクレーン等の造船設備を昭和53年○月から昭和56年8月の間に取得した旨記載されている。
D 本件占用権等に係る占用料は、J名義の納入通知書兼領収証書により納付されている。
(ニ) 本件占用権は相続財産に該当するか否かについて
A 本件占用権は、上記1の(3)のロのとおり、治水事務所長の本件占用許可に基づくものであり、上記(ロ)のA及びBのとおり、同所長の承認を受ければ譲渡可能な権利であって、移転性があることから、相続税法上の財産に該当すると認められる。
B 本件占用権に係る治水事務所長による許可名義は、上記1の(3)のロのとおり、Jである。その後、上記1の(3)のホのとおり、請求人が遺産分割協議書を添付した上で本件届出書を治水事務所長に提出し、同所長は、平成14年3月12日付けで当該届出書を受理した旨請求人に通知している。そして、本件占用権等を譲渡するには河川管理者である治水事務所長の承認が必要であり、この承認を受けずにした譲渡は無効であるところ、上記(ハ)のA及びBによれば、本件占用権等の譲渡の承認はされていない。以上によれば、本件占用権は、JからL社に移転したとは認められないから、相続開始時点においては、Jに帰属していた財産と認められる。
(ホ) 請求人の主張について
A 請求人は、JがL社を設立した際に、許可占用権を含めた個人事業に係る資産及び負債を同社に引き継いでおり、このことは、同社の決算書に、造船施設等の減価償却資産が昭和53年から計上されていることからもいえる旨主張する。
 しかしながら、本件占用権等の移転が認められないことは、上記(ニ)のBのとおりである。
 また、L社の減価償却資産に造船設備等が計上されていることは、上記(ハ)のCのとおりであるが、造船設備等と本件占用権等とは税法上別個の資産であるから、本件占用権の帰属の判断に影響を与えるものではない。
B 請求人は、本件土地等を事業に供し実質的に支配しているのはL社で、占用許可の更新手続や占用料の支払も同社が行っていることを治水事務所長も黙認しており、同所長から権利の譲渡等に関して何ら指導を受けたことはなく、占用許可の更新は形式的にJ名義で行われていたにすぎないから、本件占用権はL社に帰属する旨主張し、請求人の答述中には、これに沿う部分も存する。そして、請求人及び原処分庁の提出した資料及び当審判所の調査によれば、L社が本件土地等を事業に供し実質的に支配していること、占用許可の更新手続や占用料の支払は同社が行っていること並びに権利の譲渡等に関して治水事務所長から何ら指導されたことはないことが認められる。
 しかしながら、上記(ロ)のCのとおり、河川法第24条の許可の趣旨からすれば、L社が本件土地等を事業に供し実質的に支配していること、占用許可の更新手続や占用料の支払を同社が行っていること又は権利の譲渡等に関して治水事務所長から何ら指導されたことがないことをもって、本件占用権がL社に移転したとか、本件占用権の譲渡の承認がされたと認めることはできない。請求人の上記答述は、にわかに信用することができず、他に請求人の上記主張を裏付けるに足りる証拠はない。
C したがって、請求人の上記主張は、いずれも採用できない。

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(2) 争点2 本件占用権の評価額は、妥当か否か。

原処分庁 請求人
 本件土地占用権の評価方法及び評価額の算定は、次の理由で妥当である。  本件土地占用権の評価方法及び評価額の算定は、次の理由で妥当ではない。
(イ) 相続財産の価額は、財産評価基本通達(昭和39年4月25日付直資56ほか国税庁長官通達。以下「評価通達」という。)によって評価することが著しく不適当と認められる特段の事情がない限り、あらかじめ定められた評価通達によって画一的に評価するのが相当であり、本件土地占用権のように取引事例のない占用権の評価方法については、評価通達87−5《占用権の評価》において、以下の1及び2に区分され、評価方法が定められている。
1 地下街又は家屋の所有を目的とする占用権
2 上記1以外の占用権
 本件土地占用権は、土地の上に存する権利の一種であることから、その価額は借地権等と同様、占用権の目的となっている土地の価額に占用権の割合を乗じて評価することが合理的であると解される。したがって、本件土地占用権のように取引事例のない占用権について、評価通達87−5を適用することに誤りはない。
(イ) L社の造船施設や造船設備がある土地部分及び荷役場部分は、R入堀の管理施設の一部であり、ゴルフ場などのように土地と同様とみなされる河川敷とは異なる。また、評価通達87−5の定めは、地下街を目的とした道路敷の占用権やゴルフ場、野球場、自動車練習所のような大規模な土地の占用権を評価する場合を想定しているものであり、本件土地占用権のような小規模の管理施設についての占用権は、一般市場における譲渡、流通になじまない権利であることから、当該権利の評価に当たって評価通達87−5の定めを適用すべきではない。
 本件土地占用権は、土地の占用使用権とは異なるR入堀の管理施設の占用使用権という特殊なものであるから、その実態を正しく反映した評価を行うためには、評価通達6《この通達の定めにより難い場合の評価》を適用すべきである。
(ロ) 「家屋」とは、屋根及び周壁又はこれらに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供しうる状態にあるものをいい、固定資産税の課税対象となる家屋も同趣旨のものであると解される。
 本件建物は、「家屋」として固定資産税・都市計画税の課税対象となっていることからも、家屋に該当すると認められるため、本件土地占用権のうち造船施設等(荷役場部分を除く。)のある部分については、「家屋の所有を目的とする占用権」として評価するのが相当である。
(ロ) 評価通達87−5(2)で定める家屋とは、土地に定着する工作物で、屋根及び壁を有し人が住むための建築物のことをいう。
しかしながら、本件建物は、壁も床もない、作業場を覆うだけの設備であり家屋には該当しない。
 したがって、原処分庁が本件土地占用権のうちの造船施設等がある河川敷部分の評価を「家屋の所有を目的とする占用権」として評価することは誤っている。
 また、本件建物は家屋として固定資産税の課税対象とされているが、その判断に従う必要はない。
(ハ) 本件土地が面する通路(以下「本件通路」という。)は、公道に接続しており、不特定多数の者の自由な通行の用に供されていることから道路と認めるのが相当であり、また、本件土地の内造船施設等がある部分から西側のN社までは宅地として利用されており、評価通達14《路線価》に定める「宅地の価額がおおむね同一と認められる一連の宅地が面している路線」に該当することから、本件通路に路線価を設定することに誤りはない。
 なお、同一路線でありながら路線価の設定がない箇所があるのは、評価対象となる宅地がないからである。
(ハ) 本件土地占用権の目的となっている物件は、現実的には○○川左岸ではなく、R入堀の管理施設の一部であり、評価の基とされた路線価の設定箇所は、同施設内の管理用通路で、一般公衆の通行に供している道路ではなく、道路管理者であるP市建設局○○工営所もP市の認定道路として管理していない。
 また、路線価を設定し、評価すべき宅地も存在していないから、評価通達14で定める「宅地の価額がおおむね同一と認められる一連の宅地が面している路線ごとに設定する」の条件を満たしていないので、路線価を設定し、当該路線価を適用して評価することは誤りである。
(ニ) L社は、本件土地の占用について治水事務所長の承認を受けておらず、許可条件第12条のとおり、Jが許可を受けた権利を第三者に転貸することは禁止されているため、仮にL社が本件占用権を賃借していたとしても、その賃借による地位・権利は何ら保護されるものではない。
 したがって、本件土地占用権の評価上、上記賃借による地位等については何らしんしゃくする必要はない。
(ニ) 本件占用権等については、L社が昭和53年○月から20数年間、高額な賃借料を支払い、本件占用権等を実行支配し、事業活動を営んできており、実質は占用権の転貸(以下「転貸占用権」という。)であり、治水事務所長はそのことを黙認してきたことから、本件土地占用権の評価に当たっては、転貸占用権を考慮するべきである。

ロ 判断
(イ) 関係法令等
A 相続税法第22条《評価の原則》は、この章で特別の定めがあるものを除く外、相続に因り取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価による旨規定している。
B 相続税法第23条《地上権及び永小作権の評価》は、地上権の価額は、その残存期間に応じ、地上権が設定されていない場合の時価に、一定の割合を乗じて算出することとし、存続期間の定めのない場合の当該割合は100分の40とする旨規定している。
C 評価通達6は、評価通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する旨定めている。
D 評価通達9《土地の上に存する権利の評価上の区分》の(10)で占用権は、地価税法施行令第2条《借地権等の範囲》第2項に規定する権利をいう旨定め、同項第1号は、河川法第24条の規定による同法第24条に規定する河川区域内の土地の占用の許可に基づく権利で、ゴルフ場、自動車練習所、運動場その他の工作物(対価を得て他人の利用に供するもの又は専ら特定の者の用に供するものに限る。)の設置を目的とするものである旨規定している。
E 評価通達14は、路線価は、宅地の価額がおおむね同一と認められる一連の宅地が面している路線(不特定多数の者の通行の用に供されている道路をいう。以下同じ。)ごとに設定し、路線に接する宅地で、1その路線のほぼ中央部にあること、2その一連の宅地に共通している地勢にあること、3その路線だけに接していること、4その路線に面している宅地の標準的な間口距離及び奥行距離を有するく形又は正方形のものであること、のすべての事項に該当するものについて、売買実例価額、公示価格、不動産鑑定士等による鑑定評価額、精通者意見価格等を基として国税局長がその路線ごとに評定した1平方メートル当たりの価額とする旨定めている。
F 評価通達87−5は、占用権の価額は、同通達87−6《占用権の目的となっている土地の評価》の定めにより評価したその占用権の目的となっている土地の価額に、次に掲げる区分に従い、それぞれ次に掲げる割合を乗じて計算した金額によって評価する旨定めている。
(A) 取引事例のある占用権
 売買実例価額、精通者意見価格等を基として占用権の目的となっている土地の価額に対する割合として国税局長が定める割合
(B) (A)以外の占用権で、地下街又は家屋の所有を目的とする占用権
 その占用権が借地権であるとした場合に適用される借地権割合の3分の1に相当する割合
(C) (A)及び(B)以外の占用権
 その占用権の残存期間に応じその占用権が地上権であるとした場合に適用される法定地上権割合の3分の1に相当する割合
 なお、「占用権の残存期間」は、占用の許可に係る占用の期間が、占用の許可に基づき所有する工作物、過去における占用の許可の状況、河川等の工事予定の有無等に照らし実質的に更新されることが明らかであると認められる場合には、その占用の許可に係る占用権の残存期間に実質的な更新によって延長されると認められる期間を加算した期間をもってその占用権の残存期間とする。
(ロ) 法令解釈等
A 相続税法第22条は、相続により取得した財産の価額は、同法第3章で特別の定めのあるものを除き、当該財産の取得の時における時価により評価するものと規定している。ここでいう時価とは、相続財産の取得のときにおいて、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われるとした場合に通常成立すると認められる価額、すなわち、相続開始時における当該財産の客観的交換価値をいうものと解される。
 ところで、客観的交換価値は、必ずしも一義的に明確に確定されるものではないことから、課税実務上は、評価通達に定められている評価方法により相続財産を評価することとされているところ、これは、相続財産の客観的な交換価値を個別に評価する方法をとると、その評価方法、基礎資料の選択の仕方等により、同種の財産であっても異なった評価額が生じることを避け難く、また、課税庁の事務負担が重くなり、回帰的、かつ、大量に発生する課税事務の迅速な処理が困難となるおそれがあること等から、あらかじめ定められた評価方法により画一的に評価する方が、納税者間の公平、納税者の便宜、徴税費用の節減という見地からみて合理的であるという理由に基づくものである。
 しかしながら、このような評価通達の趣旨からすれば、評価通達に定められた評価方法を画一的に適用するという形式的な平等を貫くことによって、かえって、実質的な租税負担の公平を著しく害することが明らかであるなどこの評価方法によらないことが正当と是認されるような特別な事情、すなわち、評価通達が想定していなかった特別の事情が存すると認められる場合には、他の合理的な方法により評価をすることも許されるものと解される。このことは、評価通達6において、「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。」旨定められていることからも明らかである。
 したがって、評価通達が想定していなかった特別の事情が存すると認められる場合には、同通達の定める評価方法によることなく、他の合理的な方法により、相続税法第22条に規定する「時価」を算定することができると解される。
B 評価通達は、土地の上に存する権利の評価上の区分として、評価通達9の(10)において、地価税法施行令第2条第2項に規定する権利、すなわち、河川敷内において、ゴルフ場、自動車練習所、運動場その他の工作物の設置を目的とする河川占用許可に基づく権利又は地下街、駐車場等の設置を目的とする道路占用許可に基づく経済的利益を生ずる権利等を占用権として個別に評価すべき旨を定めている。そして、「その他の工作物」とは、建物、道路、駐車場等など、人工的作業によって地上、空中又は地下に設置されたすべての施設が該当すると考えられる。
 つぎに、評価通達は、当該占用権の評価方法について、占用権は、土地の上に存する権利の一種であると解され、その価額は借地権等と同様、占用権の目的となっている土地の価額に占用権の割合を乗じて評価することが合理的であると考えられるから、評価通達87−5において、87−6の定めにより評価したその占用権の目的となっている土地の価額に、取引事例がある占用権か否か、また、取引事例がない占用権にあっては、地下街又は家屋の所有を目的とする占用権か否かに応じて区分し、それぞれの区分に従って定める割合を乗じて計算した金額によって評価する旨を定めている。この区分によれば、1取引事例がある場合においては、その取引事例を基に定めた割合によることが合理的であるから、売買実例価額や精通者意見価格等を基に国税局長が定める割合によるものとし、2取引事例のない占用権で地下街又は家屋の所有を目的とするものについては、現実の永続性を考慮して借地権割合を基本として評価することとし、借地権と占用権との法的保護の強弱の対比の観点、すなわち、占用権には法定更新の制度がなく、公益上の必要性の見地からいつでも占用許可を取り消すことができることなどから、その占用権が借地権であるとした場合に適用される借地権割合の3分の1に相当する割合とし、3取引事例のない占用権で2以外のものについては、専らその占用権の存続期間の長短によりその占用権の価額を算定することが合理的であるから、法定地上権割合を基本として、その占用権の残存期間に応じ、その占用権が地上権であるとした場合に適用される法定地上権割合の3分の1に相当する割合とする旨定めている。なお、3の場合、占用許可の期間は通常1年ないし10年と比較的短期間であるが、継続して占用許可を受けている事例がほとんどであるから、占用権の残存期間の認定に当たっては、実質的な更新によって延長されると認められる期間を加算することとし、占用権の実態に即した評価を行うこととしている。
 このような占用権に係る評価方法は、占用権が土地の上に存する権利の一種であるから、その価額は借地権等と同様に、土地の価額に占用権の割合を乗じて評価することとしていること並びに当該土地の価額に乗ずる占用権の割合は、取引事例がある占用権か否か、また、取引事例がない占用権にあっては、地下街又は家屋の所有を目的とする占用権か否かという、取引事例の有無と占用権の目的に応じて区分していることに照らし、当該権利の実態に即した合理的な手法であり、適切な評価方法であるといえるから、当審判所もこれを相当と認める。
C 評価通達上の家屋とは、住宅、店舗、工場、倉庫その他の建物を指称しており、固定資産税の課税客体となる家屋、つまり、不動産登記法の建物とその意義を同じくするもので、建物登記簿に登記されるべき建物と同趣旨であると解される。
 地方税法第341条《固定資産税に関する用語の意義》第3号は、家屋とは「住家、店舗、工場(発電所及び変電所を含む。)、倉庫その他の建物をいう。」と規定している。そして、「地方税法の施行に関する取扱いについて(市町村税関係)」と題する自治庁次長通達(昭和29年5月13日自乙市発第22号、ただし、平成17年4月1日総税市第30号による改正前のもの。)の「第3章 固定資産税」「第1節 通則」「第1 課税客体」の2項は、「家屋とは不動産登記法の建物とその意義を同じくするものであり、したがって建物登記簿に登記されるべき建物をいうものであること。」と定めている。また、不動産登記法上の建物の認定基準について、不動産登記事務取扱手続準則(昭和52年9月3日民三第4473号法務省民事局長通達。ただし、平成17年2月25日法務省民二第456号民事局長通達による改正前のもの。)第136条第1項は、「建物とは、屋根及び周壁又はこれに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるものをいう。」と定めており、同条第2項は、建物であるかどうかを定め難い建造物について、「次の例示から類推し、その利用状況等を勘案して判定しなければならない。」と定めた上、「一 建物として取り扱うもの」として「イ 停車場の乗降場及び荷物積卸場、ただし、上屋を有する部分に限る。」、「ロ 野球場、競馬場の観覧席、ただし、屋根を有する部分に限る。」と例示している。
 以上を総合すると上記準則は、「建物」の認定基準として、1土地の定着性、2外気遮断性及び3用途性を一応要求してはいるものの、2については、上記の例示から類推すると、少なくとも周壁については、必ずしも完全な外気遮断性があることまでも要求するものではなく、その建築物の用途や利用状況を勘案して、完全な周壁を設けないことがその建造物の効用上合理的であり、完全な周壁を設けるとかえって不都合が生じると認められる場合には、同要件を緩和して認定することを妨げない趣旨であると解するのが相当である。
D 河川法第24条の趣旨は、河川区域内の土地が河川管理施設とあいまって、雨水の流路を形成し、洪水の際には安全にこれを流過させ、洪水による被害を除却し又は軽減させ、かつ、公共用物として本来一般公衆の自由な使用に供されるべきものであることから、その占用を原則として認めるべきではないとする一方、占用の目的・態様等によってはこれを認めるべき場合があることから、河川区域内の土地の利用関係を調整するべく河川管理者の許可を必要とした上で、例外的にこれを認めているものと考えられる。
 そうすると、河川法第24条の河川区域内の土地とは、同法第6条《河川区域》第1項所定の河川区域内の土地であり、河川の流水が継続して存する土地、すなわち、河状を呈している土地を含むと考えるのが相当と認められる。
(ハ) 認定事実
原処分庁の提出資料及び当審判所の調査によれば、以下の事実が認められる。
A 本件通路の登記事項証明書上の記載は、本件相続開始日における本件通路の所有者が建設省(現在の国土交通省)、登記上の地目が防潮堤敷である。
 本件通路は、防潮堤敷であって道路法及び建築基準法に規定する道路ではないが、公道と接続しており、西側に車止めが設置されているために車の通抜けはできないが、乗入れは可能であり、また、歩行者にとっては、行止りでもなく通行に際して何の制限もない。
B 本件建物の南側部分は、L社の事務所兼同社の代表者であるMの居宅、北側部分は、造船等のための作業場であり、同作業場は屋根を有している。作業場の西側及び北側は周壁で囲まれているが、東側は周壁がなく開放され、船架やクレーンを利用して船の陸揚げ等ができるようになっている。なお、造船施設のその他の部分は、クレーン等の造船設備である。
C P市役所の家屋調書(家屋課税台帳等登録事項)によれば、本件建物は、所有者をJ、種類(用途)を工場として固定資産税及び都市計画税が賦課されている。
D 本件土地は、造船施設が設置されている部分(別紙の「甲」の部分で、以下「甲土地」といい、同土地に係る占用権を「甲占用権」という。)及び荷役場部分(別紙の「乙」の部分で、以下「乙土地」といい、同土地に係る占用権を「乙占用権」という。)からなる。
E Jが治水事務所長に提出した測量図の中には、甲土地の面積が、1,130.50平方メートル、乙土地の面積が218.23平方メートルであるとする「求積図」と題する図面(以下「測量図A」という。)及び甲土地の面積が1,010.94平方メートル、乙土地の面積が337.79平方メートルであるとする「配置図」と題する図面(以下「測量図B」という。)がある。もっとも、測量図Aと測量図Bがそれぞれいつ治水事務所長に提出されたのかは、明らかではない。
F 本件土地等の形状は、概略別紙のとおりであり、間口距離(別紙のイに相当する)は95.1メートルである。また、一画地として算定した想定整形地の間口距離及び奥行距離(それぞれ別紙のロ及びハに相当する)は、それぞれ101.1メートル及び27.0メートルである。なお、別紙は、測量図Aに基づいて作成したものである。
G 平成14年分財産評価基準書の路線価図によれば、甲土地に接する本件通路に付されている路線価は、1平方メートル当たり96,000円であり、本件土地の地区の区分は普通住宅地区に該当し、借地権割合は60%である。
H 治水事務所においては、占用許可は、原則として、許可を受けた者がその申請を取りやめない限り許可の継続が見込まれるものと解している(治水事務所の職員の答述)。
(ニ) 評価通達87−5の適用の可否について
A 本件土地占用権は、河川法第24条に基づくものであり、上記1の(3)のロの(イ)のとおり、許可する占用目的は造船施設等である。そして、評価通達においては、占用権として評価される占用権は、上記(ロ)のBのとおり、ゴルフ場、自動車練習所、運動場その他の工作物の設置を目的とする河川占用許可に基づく権利等と定めているところ、本件占用許可が目的とした造船施設等は工作物に該当すると認められるから、本件土地占用権は、評価通達9の(10)に定める占用権に該当する。
 そして、当該占用権の評価方法を定める評価通達87−5の定めが相当であることは上記(ロ)のBのとおりであるところ、本件土地占用権は、取引事例がないことが明らかである。
 したがって、本件土地占用権には評価通達87−5を適用することができると解すべきである。
B 請求人は、本件土地はR入堀の管理施設の一部であり、ゴルフ場のように土地と同様とみなされる河川敷とは異なる上、評価通達87−5の定めは、地下街を目的とした道路敷のような大規模な土地の占用権を評価する場合を想定しているものであり、本件土地占用権のような小規模の管理施設についての占用権は、一般市場における譲渡、流通になじまない権利であるから、当該権利の評価に当たって同通達87−5の定めを適用すべきではなく、本件土地占用権の実態を正しく反映した評価を行うためには、同通達6の定めを適用すべきである旨主張する。
 しかしながら、評価通達6の定めは、上記(ロ)のAのとおり、同通達が想定していなかった特別の事情が存すると認められる場合に、例外的に他の合理的な方法により評価することを許容するものである。そして、上記(ロ)のBのとおり、評価通達87−5は、一般に市場価格が形成されていない本件土地占用権のような占用権についてもその評価方法を定めたものであるが、土地の規模の大小に関する評価上の差異については特に定めていない。また、請求人の主張するように、本件土地がR入堀の管理施設の一部であったとしても、本件占用許可は、河川法第24条に基づき河川区域内の土地に対してされたものであるところ、同法においても規模による同法適用上の差異は定められていない。さらに、河川法は、許可に基づく権利の一般市場流通性に関し、河川管理者の承認を得れば譲渡が可能な権利であることを定めているから、本件土地占用権についても、他の河川区域内の土地の占用の許可に基づく権利と取扱いの差異はない。
 そうすると、請求人が主張する理由は、評価通達87−5を適用することができない特別の事情とはいえないから、請求人の上記主張は採用できない。
(ホ) 本件建物は評価通達上の家屋に該当するか否かについて
A 本件建物は、上記(ハ)のBのとおり、事務所兼居宅部分と造船等のための作業場で構成されており、作業場は屋根を有している。また、本件建物は、二方に周壁を有し、一方は居宅兼事務所に接しているから、外気遮断性を有しているとみるのが相当であり、さらに、柱を有し土地に定着した造船施設としての用途性も満たしている。
 そうすると、本件建物は家屋と認定するのが相当である。
B 請求人は、本件土地に存する建物は壁も床もない作業場を覆うだけの設備であり家屋に該当しないから、評価通達87−5の(2)を適用するのは誤りである旨主張する。そして、なるほど、本件建物は、上記(ハ)のBのとおり、東側の周壁がなく開放されている。
 しかしながら、本件建物が外気遮断性を有し、造船施設としての用途性も満たしていることは、上記Aのとおりである。そして、周壁がないのは、船の陸揚げや造船等のための作業場としての効用上必要かつ合理的であるからであり、これら必要性及び合理性が認められる以上、本件建物のこのような構造は、家屋に該当するかどうかの判定に影響を与えるものではない。
 したがって、請求人の上記主張は採用できない。
(ヘ) 本件通路に設定された路線価を適用して評価することの可否について
 請求人は、原処分庁が路線価を設定した箇所は一般公衆の通行の用に供している道路ではなく、当該評価対象となる宅地も存在しないから、路線価の設定は妥当ではなく、当該路線価を適用して本件土地占用権を評価することは誤りである旨主張する。
 しかしながら、本件通路は、上記(ハ)のAのとおり、車の通抜けはできないが、乗入れは可能であり、歩行者は通行に際して何らの制限もないから、評価通達14に定める不特定多数の者の通行の用に供されている道路と認めるのが相当である。そして、本件通路に設定された路線価は、本件土地のうち甲土地の東端から西側のN社の西端までの河川区域内の土地に接する路線について設定されたものであるところ、当該路線に接する北側の土地は実際に建物の敷地として利用されており、宅地と認められるから、本件通路に路線価が設定されていることに特段の不合理はない。また、仮に、本件通路のうち路線価の設定されていない部分に路線価を設定するとした場合にも、当該部分は本件通路と同一路線内にあるから、設定された路線価と同額の1平方メートル当たり96,000円とするのが相当と認められる。そうすると、原処分庁が本件占用権を評価するに当たり、これらの路線価を適用したことに特段の不合理はない。
 したがって、請求人の上記主張は採用できない。
(ト) L社の転貸占用権について
 請求人は、本件占用権が相続財産であったとしても、L社が本件土地を事実上占用使用しており、その賃借料を支払ってきたから転貸占用権が発生しており、本件占用権の評価に当たっては、当該転貸占用権を考慮すべきである旨主張する。
 しかしながら、本件占用権は、あくまでもJが河川管理者である治水事務所長から受けた本件占用許可に基づいて生じたものであり、仮に、JとL社との間で事実上の転貸関係があったとしても、そのような利用は、上記1の(3)のロの(ホ)の許可条件に違反しており、本件占用許可の権原を有する治水事務所長は、L社への上記転貸を了承していない。
 そうすると、本件占用権に係るL社の地位及び権利は、何ら保護されるものではないから、相続税法上評価する必要性は認められない。
 したがって、請求人の上記主張は採用できない。
(チ) 本件土地占用権の評価額の算定について
A 評価額の算定方法
 評価通達7−2《評価単位》は、土地の評価単位を地目ごとに利用の単位となっている一画地等により評価すると定めているところ、本件占用許可は、上記(ロ)のDのとおり、本件土地と本件流水面が一体となったものと考えられ、また、上記1の(3)のロの(イ)のとおり、占用目的も造船施設等とされていることからすると、当該許可に基づき設定された本件占用権は、造船等事業用としての利用が予定されているものであって、実際にも、造船及びそれに付随する一連の事業に使用されていると認められる。
 そうすると、本件土地占用権の評価の基礎となる本件土地等は、一画地として評価すべきものである。
B 評価額の算定
(A) 本件土地の面積
 上記(ハ)のEのとおり、本件土地の面積を裏付けるものとしては、Jが治水事務所長に提出した測量図A及びBが存する。そして、当審判所の調査によれば、原処分庁は、測量図Bに基づき、甲土地の面積を1,010.94平方メートル、乙土地の面積を337.79平方メートルと算定した結果、本件土地等を一画地として評価したものと認められる。
 しかしながら、本件占用許可に付された本件許可条件において、河川敷の占用面積が1,348.73平方メートルとされていることは、上記1の(3)のロの(ロ)のとおりである。また、当審判所の調査によれば、請求人は、Jから地位を承継した後である平成14年7月17日付けで、治水事務所によるR入堀の一部埋立てに伴い、荷役場の範囲が変更されたことから、占用変更許可申請書を治水事務所長に提出し、これを許可されたこと、その際の添付図面は、測量図Aそのものは利用していないものの、本件土地(河川敷)の面積を測量図Aと同じく1,348.73平方メートルと計算していること並びに同許可申請に基づき占用面積の変更許可がされたことが認められる。
 そうすると、本件土地占用権の評価の基礎となる本件土地の面積は、原処分庁の判断とは異なり、測量図Aに基づき、甲土地が1,130.50平方メートル、乙土地が218.23平方メートルの合計1,348.73平方メートルとして認定するのが相当である。
(B) 本件土地の1平方メートル当たりの価額
 本件土地を一画地として評価する場合の1平方メートル当たりの価額は、本件通路に付された路線価96,000円に、別表2−1の(注)2及び別表2−2の(注)1の(2)の不整形地補正率である0.99を適用した結果95,040円となる。
(C) 甲土地及び甲占用権の価額
 甲土地は、造船施設が設置されているから、甲占用権の評価に当たっては、評価通達87−5の(2)を適用するのが相当である。
 甲土地の評価額は、当審判所において認定した上記(B)の1平方メートル当たりの価額である95,040円と上記(A)の面積1,130.50平方メートルを基に計算すると、別表2−1の「審判所認定額等」欄の自用地の評価額のとおり、107,442,720円となる。
 そうすると、甲占用権の価額は、上記甲土地の評価額である107,442,720円を基に、上記(ハ)のGのとおり、本件土地の借地権割合である60%の3分の1に相当する割合を適用して計算すると、別表2−1の「審判所認定額等」欄の占用権の価額のとおり、21,488,544円となる。
(D) 乙土地及び乙占用権の価額
 乙土地は、荷役場として利用されているから、乙占用権の評価に当たっては、評価通達87−5の(3)を適用するのが相当である。
 乙土地の評価額は、当審判所において認定した上記(B)の1平方メートル当たりの価額である95,040円と上記(A)の面積218.23平方メートルを基に計算すると、別表2−2の「審判所認定額等」欄の自用地の評価額のとおり、20,740,579円となる。
 そうすると、乙占用権の価額は、上記乙土地の評価額である20,740,579円を基に、上記(イ)のB及び(ハ)のHから別表2−2の(注)2のとおり、法定地上権割合である100分の40の3分の1に相当する割合を適用して計算すると、別表2−2の「審判所認定額等」欄の占用権の価額のとおり、2,765,410円となる。
(E) 以上のとおり、当審判所認定による甲占用権及び乙占用権の評価額の合計は、24,253,954円になる。
C そうすると、本件の場合、上記(E)のとおり、本件流水面占用権(別紙の「丙」の部分の占用権)の評価額を算定するまでもなく、甲占用権及び乙占用権の評価額の合計額によって、すでに本件更正処分の額を超えることになる。

(3) 以上の結果、本件占用権は相続財産に該当し、そのうち本件土地占用権の評価額は、上記Bの(E)のとおりとなり、本件更正処分に係る評価額を上回ると認められるから、これを下回る評価額でされた本件更正処分は適法である。

(4) 過少申告加算税の賦課決定処分を含め、原処分のその他の部分については、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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