別紙2

当事者の主張
争点1元取締役及び従業員2名に対する退職給与の支給事実はあったか。

原処分庁 請求人
1 Y・Z当初入金口座に振り込まれた金員について
 以下の事情によれば、Y・Z当初入金口座に振り込まれた金員は退職金ではなく、預け金にすぎないから、これを損金に計上することはできない。
1 Y・Z当初入金口座に振り込まれた金員について
 以下のとおり、請求人は、Y及びZに対し、退職金を実際に支給しているから、これを損金に計上することができる。
(1) Y及びZは、本件調査開始日に○○税務署の調査担当者(以下「本件調査担当者」という。)に対して、退職金を受領していない旨の申述をしており、これは、同人らに事前連絡を行うことなく実施した調査においてなされたものであるから信用できる。その後、Y及びZは、平成17年10月12日に本件調査担当者に対して、退職金を受領した旨の申述をしているが、同人らは、本件調査開始日においてHに個人的にも長い間お世話になったとも申述しており、同人らがHの恩義に報いるため、請求人に有利になるように先の申述を変えたものと想定されるので信用できない。 (1) Y及びZが、本件調査開始日に退職金を受領していない旨申述したのは、Hから、防犯上の問題、様々な勧誘やたかりの危険があるから、受領の事実を人には言わないほうが良いとするアドバイスを受けていたためであり、その後の、Y及びZの申述どおり、退職金を受領したことは真実である。
(2) 請求人は、以下のとおり、Y・Z当初入金口座及びY・Z振替先口座を管理していたと認められる。 (2) 以下のとおり、Y・Z当初入金口座及びY・Z振替先口座は各預金口座の名義人が管理していた。
イ Y及びZが平成17年10月12日に本件調査担当者に対してした、Y・Z当初入金口座からの出金、同口座の多額の解約出金及びY・Z振替先口座への振込みを名前も知らない請求人の従業員に依頼した旨の申述の内容並びに同口座の開設の際の印鑑票に、連絡先として請求人の電話番号が記載されていることは、いずれも不自然である。  イ Y及びZは、Y・Z当初入金口座のある二つの金融機関から投資信託等の勧誘が頻繁にあるため、Hと相談して請求人と取引のあるj銀行にY・Z振替先口座を開設して退職金を振り込んだ。Y及びZは、Y・Z当初入金口座の解約及びY・Z振替先口座の開設の際に、Xに同行してもらい、出金手続等を依頼して手伝ってもらった。
 また、Y及びZは、長年の従業員であり、連絡先に会社の電話番号の記載があることも不思議はなく、まして、投資信託等の勧誘で迷惑を受けているのでなおさらである。
ロ Y・Z振替先口座の印鑑票に使用された印章は、その印影から請求人が購入したものと同一と認められ、Y及びZが、平成17年10月12日に本件調査担当者に対してした、印章は自分で用意した旨の申述は信用できず、当該印章は請求人のものと認められる。 ロ Y・Z振替先口座の印鑑票に使用した印章は、Y及びZの手持ちの印章が、欠けていたり古かったため、Hの指示により、請求人が購入して同人らに贈与したものである
ハ Y・Z振替先口座からの本件調査開始日までの入出金に係る伝票の筆跡は、請求人の従業員等のものである。 ハ Y及びZから依頼され、Jが預金の払戻請求書を代筆したことや請求人の従業員が代わりに銀行に行ったことがあるにすぎず、筆跡が請求人の従業員等のものであったとしても不自然ではない。
  ニ Y・Z振替先口座から、Y及びZそれぞれのm保険株式会社の損害保険料が、本件調査開始日以前から振替により支払われている。
2 N当初入金口座に振り込まれた金員について
 以下の事情によれば、請求人は、N当初入金口座を管理していると認められ、同口座に振り込まれた金員のうち、○○○○円以外は役員退職給与ではなく、預け金にすぎないから、これを損金に計上することはできない。
2 N当初入金口座に振り込まれた金員について
 以下のとおり、NがN当初入金口座を管理しており、請求人は、Nに対し、退職金を実際に支給しているから、これを損金に計上することができる。
(1) Nは、平成17年10月13日に本件調査担当者に対して、N当初入金口座の通帳及び届出印は、現在自分が所持しているが、その前は当該通帳等の管理を請求人の事務員であるXあるいはnに任せていた旨の申述をしている。 (1) Nは、異議審理庁の担当者に対して、本件調査開始日において、N当初入金口座の通帳を保管しており、当該通帳は、本件調査担当者の座った席の後ろの戸棚にあったが、内緒の場所であり他にもいろいろ入っていたのでその当時言わなかった旨の申述をしている。
(2) Nは、平成17年10月13日に本件調査担当者に対して、N当初入金口座のキャッシュカードの作成手続をXに依頼し、作成されたキャッシュカードを請求人に預けた、当該キャッシュカードの暗証番号は知らない旨の申述をしている。その後、Nは、異議審理庁の担当者に対し、当該キャッシュカードの暗証番号を知っていた旨申述を変えているが、これは、Nが自分の居住するマンションをHから無償で借りていることから、請求人に有利になるように申述を変えたものと想定され信用できない。 (2) Nは、異議審理庁の担当者に対して、平成17年10月13日に本件調査担当者に対し、キャッシュカードの暗証番号を知らないと言ったが、これは、当然知っていたが、知っていると言えば番号を言えと言われるのでその当時言わなかった旨の申述をしている。
(3) Xは、平成17年10月11日に本件調査担当者に対して、N名義の預金口座について、入出金の手続を行ったことがある旨の申述をしている。 (3) N当初入金口座からの出金は、Nが、Xと一緒に銀行に車で行って同人に出金してもらい、Nは車で待っていたものである。

争点2 請求人の前代表者及びその夫である元取締役に対する役員退職給与の額は過大か。

原処分庁 請求人
 F及びHに対する役員退職給与については、次のことから、○○○○円が不相当に高額な部分の金額として過大である。  F及びHに対する役員退職給与については、次のことから○○○○円のみが不相当に高額な部分の金額として過大である。
1 本件更正処分において採用した功績倍率は2.2であるが、請求人と同業種同規模法人のうち、3社の代表取締役及び2社の取締役に支給した退職給与の功績倍率を検討した結果、功績倍率は1.6となる。 1 原処分庁が、選定した会社は不明で、数も少なく、代表取締役と取締役の功績倍率が同じというのは不自然であり、社会通念上も余りに低率であること、Fは創業以来の代表取締役であり、Hは創業者の妻であり創業以来の取締役であること、裁判事例や裁決事例でも功績倍率が3.3〜3.6倍というのは定着していることなどからすると、Fの功績倍率を3.6、Hの功績倍率を3.3とするのが相当である。
2 G社については、登記簿上請求人と別法人であり、また、確認できる範囲では、法人税の確定申告書の提出がなく、業務・経営の引継ぎに係る契約書等の証票類も確認できない。
 したがって、請求人の設立が昭和62年6月○日であり、Fは平成15年9月○日に死去しており、勤続年数は16年3か月、Hは平成16年1月31日に退職しており、勤続年数は16年7か月であることから、ともに勤続年数は17年である。
2 請求人は、個人事業を引き継いで昭和48年4月に設立されたG社の業務・経営を平成○年○月に引き継いでおり、また、FはG社の代表取締役、Hは取締役であることから、勤続年数については、実質的に判断すべきであり、昭和48年4月から計算すると、Fの勤続年数は30年5か月、Hは30年9か月であり、ともに勤続年数は31年である。
 なお、原処分庁は、G社の法人税の確定申告が確認できないことを勤続年数算定の根拠にしているが、請求人が発見した、昭和○年○月から昭和○年○月期のG社の法人税確定申告書によると、代表取締役Fに年額○○○○円、取締役○○○○に年額○○○○円及び監査役Hに年額○○○○円がそれぞれ支給されていた。これは、明らかに請求人への業務の引継ぎと、役員の引継ぎを物語るものである。
3 上記1、2を基に計算すると不相当に高額な部分の金額は、次のとおりとなり、原処分が過大とした金額○○○○円は、この範囲内である。 3 上記1、2を基に計算すると不相当に高額な部分の金額は、次のとおりとなる。
(1) F
○○○○円−○○○○円×17年
×1.6=○○○○円
(1) F
○○○○円−○○○○円×31年
×3.6=○○○○円
(2) H
○○○○円−○○○○円×17年
×1.6=○○○○円
(2) H
○○○○円−○○○○円×31年
×3.3=○○○○円
(3) (1)及び(2)の合計額
○○○○円
(3) (1)及び(2)の合計額
○○○○円

争点3 元取締役及び従業員2名に対する退職給与を支給したとしてこれらを損金の額に算入したことについて、事実の仮装があったか。

原処分庁 請求人
 争点1のとおり、請求人は、元取締役及び従業員2名に対する退職給与等を支給した事実がないにもかかわらず支給したとして損金の額に算入したものであり、このことは、通則法第68条第1項に規定する事実の仮装に当たる。  争点1のとおり、請求人は、元取締役及び従業員2名に対する退職給与等を実際に支給しているから、通則法第68条第1項の規定には該当しない。

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