ホーム >> 公表裁決事例集等の紹介 >> 公表裁決事例 >> 裁決事例集 No.76 >> (平20.12.3、裁決事例集No.76 555頁)>> 別紙2
別紙2
双方の主張
原処分庁 | 請求人 |
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請求人の本件建設協力金等の残額の返還義務は、次のとおり、本件滞納法人から債務の免除を受けたことにより消滅しており、請求人には、徴収法第39条に規定する受けた利益があることから第二次納税義務を負う。 | 請求人の本件建設協力金等の残額の返還義務は、次のとおり、損害賠償請求権との相殺により消滅しており、請求人には、徴収法第39条に規定する受けた利益がないことから第二次納税義務は負わない。 |
1 本件敷金について 本件敷金は、賃貸人の賃料債権などを担保するためのものであり、将来、本件賃貸借契約終了の際には、賃借人に債務不履行や原状回復費などがあればその金額を差し引いて、賃借人に返還すべき債務である。 |
1 本件敷金は、明渡し費用と既に相殺され消滅している。 |
2 本件条項について (1) 本件建設協力金は、180回に分割の上、15年間にわたり毎月の賃料の対当額と相殺する方法で返済することから、金銭の消費貸借の性格をも有すると認められ、返還を要する債務である。 (2) 本件条項は、本件滞納法人が新しい賃借人を見付け、請求人がこれを認め、更に本件賃貸借契約内容と同一条件以上の条件が整わなければ、本件建設協力金等の残額の返還請求権を放棄するとの停止条件が定められていることからすると、これらの条件を停止条件とした債務の免除の予約であるといえる。 (3) そして、本件判決では、請求人は、本件滞納法人に対して、本件建設協力金等の残額の返還義務がないことを確認する旨判示されており、本件滞納法人及び請求人は本件判決の既判力に拘束されることからすると、請求人は、本件判決の言渡し日である平成17年1月○日に、本件滞納法人による本件建設協力金等の残額の返還請求権の放棄により、確定的に、債務を免除されたものと認められる。 (4) 更に付言すると、本件条項は、以下のことから極めて不合理なものであり、通常の契約条項とは認められない。 イ 本件条項には、上記(2)のとおりの停止条件が定められているが、当該条件は、本件滞納法人だけに課せられたものであり、請求人に極めて有利な内容となっている。 ロ すなわち、賃貸人である請求人と賃借人である本件滞納法人双方の期待利益は、将来にわたり継続されるであろう本件賃貸借契約を前提とし、請求人にあっては賃料の恒常的収入であり、本件滞納法人にあっては本件建物等の賃借の継続にほかならないのであるから、本件賃貸借契約の中途解約に伴う請求人の損害を担保するには、本件敷金で足りるというべきであって、本件建設協力金の残額の返還請求権を本件滞納法人が放棄しなければならない理由はない。 ハ これが許されるならば、請求人は、本件建設協力金の残額の返還義務を免れるとともに、本件建物等の完全な所有権を取得し、なおかつ、新たな賃借人から賃料を収受できることとなる。事実、本件において請求人は、本件賃貸借契約が中途解約された後、N社と本件建物等に係る新たな賃貸借契約(以下「本件新賃貸借契約」という。)を締結して、本件賃貸借契約と同額の賃料を受領している。 |
2 本件建設協力金の残額の返還義務は、次のとおり、本件滞納法人の中途解約により生じた請求人の逸失利益に係る損害賠償金と相殺されて、消滅したものである。 (1) 本件建設協力金は、 ![]() ![]() (2) 本件建設協力金は、月々の賃料と相殺されるものであり、請求人が本件滞納法人に現金で返還すべきものではなく、また、本件滞納法人が中途解約すれば、請求人の逸失利益の損害賠償請求権と相殺されるものである。 (3) なお、請求人に返還義務が生じるのは、本件滞納法人が中途解約した場合に、本件滞納法人が次の賃借人を新たに紹介し、次の賃借人から請求人が未償還相当分の建設協力金を収受した場合、又は、請求人の方から解約を申し出た場合であるが、本件賃貸借契約の中途解約は、本件滞納法人の都合により中途解約となったものであり、また、本件滞納法人が新規の賃借人を紹介したという事実もないから、請求人には、本件建設協力金の残額の返還義務もない。 |
3 請求人の相殺の主張について 本件建設協力金等の残額の返還請求権は、次のことから請求人の損害賠償請求権との相殺により消滅したものとは認められない。 (1) 請求人は、本件判決において、相殺の主張をしていない。 (2) 請求人は、債務の免除の確定日である平成17年1月○日前に、既にN社と本件新賃貸借契約を締結し、本件賃貸借契約と同額の賃料を受領しており、現実に損害は発生しておらず損害賠償請求権も生じないことから、本件建設協力金等の残額の返還請求権との相殺が行われることはあり得ない。 (3) 仮に、請求人の損害賠償請求権との相殺が認められるとすると、通常、賃貸借契約において弱者にある賃借人の立場にかんがみ、賃借人の負担により不相当に利益を得た賃貸人を許すこととなり、本件賃貸借契約に類似した商取引が横行することを助長し、ひいては徴収法第39条の法の趣旨を没却することにもなりかねない。 |
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4 債務の免除により受けた利益の額について 請求人が、本件滞納法人からの債務の免除により受けた利益の額は、次のことから、本件建設協力金等の残額となる。 (1) 請求人は、平成17年3月期の法人税確定申告において、本件建設協力金等の残額を雑収入に計上している。 (2) 本件判決により、請求人には本件建設協力金等の残額の返還義務がないことが確認されており、当該判決の既判力により判決内容に拘束される。 |
3 債務の消滅により受けた利益の額等 仮に、請求人に第二次納税義務があるとしても、請求人が契約解除により実質的に受領したのは本件建物等であるから、本件建物等の時価相当額である固定資産税評価額を基に計算すると、○○○○円である。 なお、請求人が平成17年3月期において、本件建設協力金等の残額を雑収入に計上しているが、これは徴収法第39条に規定する受けた利益の額を自認しているものではない。 また、請求人は本件建設協力金等の残額に係る法人税を納付しているのであるから、本件告知処分を行うのであれば、同時に請求人が納付した当該法人税は還付すべきである。 |