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(平21.1.19、裁決事例集No.77 207頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、請求人の従業員の一部に対する給与を事業実態のない会社等への外注費であるかのように装うことによって、自らが源泉徴収義務者として当該従業員の給与に係る源泉徴収に係る所得税(以下「源泉所得税」という。)を納付するのではなく事業実態のない会社の名義を用いて納付していたところ、原処分庁が、本来の源泉徴収義務者は請求人であるなどとして、源泉所得税に係る納税告知処分及び重加算税の賦課決定処分を行ったのに対し、請求人が、事業実態のない会社の名義を用いて納付された源泉所得税は、請求人が法定納期限内に納付していたものであるから、請求人が納付したものとして取り扱うべきであるとして、これらの処分の一部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

 請求人の審査請求に至る経緯及び内容は、別表のとおりである(以下、別表の各納税告知処分を「本件各納税告知処分」、重加算税の各賦課決定処分を「本件各賦課決定処分」といい、両処分を併せて「本件各納税告知処分等」という。)。
 なお、請求人は、異議決定を経た後の原処分(H税務署長が平成19年8月28日付でした源泉所得税の各納税告知処分等及びJ税務署長が平成19年10月12日付でした源泉所得税の各納税告知処分等)に不服があるとして、それぞれ平成20年2月19日及び平成20年3月31日に審査請求をした。そこで、平成20年2月19日の審査請求に平成20年3月31日の審査請求を併合して審理する。

(3) 関係法令の要旨

 別紙のとおりである。

(4) 基礎事実

 次の事実は、請求人と原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 請求人は、○○国税局査察部による査察調査(以下「本件調査」という。)を受け、請求人の従業員に対する給与として処理すべき金額について、個人事業者であるいわゆる一人親方(以下「一人親方」という。)や事業実態のないA社、B社及びC社(以下、A社、B社と併せて「本件関係各社」という。)に対する外注費であるかのように仮装していた事実(以下、本件関係各社に対する外注費に仮装して請求人の従業員に支給していた金額を「本件支給額」といい、一人親方に対する外注費として仮装していた金額と併せて「本件支給額等」という。)等を認め、次表のとおり、法人税並びに消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)の修正申告書をそれぞれ提出した。

事業年度又は課税期間 法人税修正
申告書の提出
消費税等修正
申告書の提出
平成14年1月1日から
  同14年12月31日まで
1 (減額更正) 平成19年3月5日
平成15年1月1日から
  同15年4月30日まで
2 平成19年3月14日
平成15年5月1日から
  同16年4月30日まで
3
平成16年5月1日から
  同17年4月30日まで
4
平成17年5月1日から
  同18年4月30日まで
5

ロ 本件各納税告知処分等に対応する期間(平成13年1月分から平成18年2月分まで)において、請求人が給与を外注費と仮装していた仮装の相手先及び仮装していた期間並びに当該期間の本件支給額等に係る源泉所得税の納付状況は、次表のとおりであり、本件支給額に係る源泉所得税について、請求人が、本件関係各社の名義を用いて各税務署長へそれぞれ納付していた。

区分 仮装の相手先 仮装していた期間 左の期間における
源泉所得税の納付状況
本件支給額等   一人親方 平成13年1月分から
 同14年4月半ば分まで
納付なし
本件支給額 本件関係各社 A社 平成14年4月半ば分から
 同15年4月分まで
J税務署長へ納付
B社 平成15年5月分から
 同17年5月分まで
K税務署長へ納付
C社 平成17年6月分から
 同18年2月分まで
J税務署長へ納付

ハ 請求人は、平成17年5月○日に本店所在地をP市p町○−○(所轄税務署長は、J税務署長)から肩書地(所轄税務署長は、H税務署長)へ移転したが、本件の審査請求に対応する期間の請求人自身の源泉所得税の納付は、平成17年5月支払分まではJ税務署長に、また、平成17年6月以降支払分についてはH税務署長にそれぞれ納付していた。
ニ 請求人は、本件各納税告知処分等のうち、本件関係各社の名義を用いて納付した金額以外の部分については争っていない。

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2 争点及び当事者の主張

(1) 争点

 請求人による本件関係各社名義を用いた源泉所得税の納付の法的効果が、請求人に帰属するか否か。すなわち、請求人による本件関係各社の名義を用いた源泉所得税の納付が請求人の納付として認められるか否か。

(2) 主張

イ 本件各納税告知処分について
(イ) 原処分庁
 請求人が本件関係各社の名義を用いて納付した源泉所得税は、請求人が納付すべき源泉所得税と支給対象者や支給金額等が同等のものであったとしても、それは、請求人が本件関係各社の名義を利用して仮装したところによるものであり、原処分庁に対して請求人が納付した事実は存在しない。
 なお、請求人は、請求人と本件関係各社の間には「請求人の通称ないし別名と判断できる事実の存在が認められる」旨主張するが、1本件関係各社は、その設立に当たっては商業登記がなされた実在する法人であり、このことのみをもってしても、外観上一見して請求人の通称ないし別名と判断することはできないどころか、請求人とは別個の独立した法人格を有することが明白であること、また、2請求人の通称ないし別名と判断できる事実の存在とは、請求人が主張するような本件調査によって判明したような事実ではなく、本件関係各社の名義で各月々の納付があった時点において誰の目から見ても一見して、請求人の「通称ないし別名」(同一の人格について、正式な名称以外の名称)を用いて納付があったと判断できることが最低限の要件として求められているのであることからすると、本件関係各社の名義で納付された源泉所得税は飽くまで本件関係各社による納付であって、その法的効果を請求人に帰属させるべき理由はない。
 したがって、本件支給額等は、請求人の従業員に対する給与であるから、請求人は、本件支給額等について、所得税法第183条第1項の規定に基づき、所得税を徴収し、それぞれ本件各納税告知処分の対象月の翌月10日までに国に納付しなければならないところ、請求人が本件支給額等に係る源泉所得税額を納付した事実は認められず、本件調査における請求人が納付すべき本件支給額等に係る源泉所得税の額は、別表の「各納税告知処分(源泉所得税の額)」欄に記載した金額と同額となることから、本件各納税告知処分はいずれも適法である。
(ロ) 請求人
 本件支給額に係る源泉徴収義務(源泉所得税の計算、徴収及び納付の各事務)は、請求人が履行していた。すなわち、本件支給額に係る源泉所得税は、請求人が本件関係各社の名義を用いて納付していたのであるから、当該源泉所得税の納付の名義が本件関係各社となっていることのみを捉えて請求人が納付した事実は存在しないとしてなされた原処分は、実情を無視するものであり納得できない。
 このことは、東京地裁(平成19年(行ウ)第333号)平成20年1月25日判決が判示しているように、第三者名義で納付した場合の源泉所得税の納付の効果がだれに帰属するかの判定に当たっては、「外観上一見して請求人の通称ないし別名と判断できる事実」の存否が重要であるところ、請求人と本件関係各社が一体であることを示す事実の存在、すなわち、1本件関係各社は、本件調査において指摘されたとおり、事業実態のない法人であるから源泉徴収事務を行えるはずがないこと、2本件関係各社の名義で納付した期間については、税額表適用区分の誤りがあった部分を除き、請求人が納付すべきであった源泉所得税に不足額は生じていないこと及び3原処分において、従業員が本件関係各社あてに提出した給与所得者の扶養控除等申告書を請求人に提出したものとして取り扱っているという事実に目をつぶり行ったものであるから、その判断には、重大な欠陥が存在するといわざるを得ない。
 したがって、請求人が本件関係各社の名義で納付した源泉所得税は、請求人が期限内に納付した(法的効果は請求人に帰属する)ものとして取り扱うべきであるから本件各納税告知処分は違法である。
ロ 本件各賦課決定処分について
(イ) 原処分庁
 上記イの(イ)のとおり、本件各納税告知処分は適法であるところ、通則法第67条第1項に規定する「正当な理由があると認められる場合」に該当する事由が存在するものとは認められず、また、本件調査によれば、請求人は、平成9年10月にA社を設立して以来、請求人の従業員をA社の従業員であるかのように仮装した上、請求人の従業員給料をA社に対する外注費として架空計上していたところ、A社が設立3期目を迎え、消費税等の納付が発生することが想定され、これを回避するため、平成13年1月から同14年4月半ばまでの間については、それまでA社の従業員としていたトラックの運転手を、一人親方であると更に仮装した上で、これら一人親方に対する外注費を架空計上していたと認められる。なお、請求人は、一人親方を利用して仮装した期間においては、当該一人親方とした者に係る所得税等の負担をも行っていたが、この負担が消費税等を免れる金額を上回ることとなり、同年4月半ばに至って当該一人親方を利用する仮装行為を断念し、平成15年4月までの間、一人親方とした者及びそれ以外の者を再度A社の従業員と仮装していたものである。また、平成○年○月○日に行われた請求人を被告会社とする消費税法違反、地方税法違反被告事件の第1回公判において、請求人の前代表者であり、同被告事件の被告人であるDが、請求人の業務に関し、消費税等の税額を免れようと企て、B社及びC社を順次設立し、請求人の従業員給料を両者に対する外注費と仮装することにより、同税額を免れていた旨の起訴事実を全面的に認めている。
 以上のとおり、請求人には、本件支給額等を一人親方や本件関係各社に対する外注費であるかのように仮装して、本件支給額等に係る源泉所得税をその法定納期限までに納付しなかった事実が認められ、このことは、重加算税を規定する通則法第68条第3項「納税者が事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づきその国税をその法定納期限までに納付しなかったとき」に該当する。
 なお、請求人は、通則法第68条第3項のかっこ書を引用し、本件関係各社の名義で納付された源泉所得税に相当する部分については、仮装又は隠ぺいの事実がないとして、重加算税の対象から控除されるべきである旨を主張するが、請求人において仮装の事実があったのは上記のとおりであるから請求人の主張には理由がない。
 したがって、本件各賦課決定処分はいずれも適法である。
(ロ) 請求人
 本件関係各社の名義を用いて納付した源泉所得税(職権還付された金額に相当)に係る部分については、税額表適用区分の誤りがあった部分を除き、適法・適正に源泉徴収義務を履行し、期限内に完納しており、少なくとも源泉所得税について不正行為等、税を免れようとした意図も事実も存在しない。
 そして、通則法第68条第3項後段かっこ書において、「その税額の計算の基礎となるべき事実で隠ぺいし、又は仮装されていないことが明らかであるものは除かれる。」旨規定されていることからすると、本件関係各社の名義で納付済みの部分については、重加算税の対象から控除されるべきであるから、本件各賦課決定処分は違法である。

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3 判断

(1) 認定事実

 請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
イ 請求人及び請求人の前代表者であったDは、上記1の(4)のイの表の「3」から「5」までの課税期間の消費税等について、消費税法違反及び地方税法違反容疑で起訴され、平成○年○月○日、○○地方裁判所平成○年(○)第○号消費税法違反、地方税法違反被告事件(以下「本件消費税法等違反被告事件」という。)において、双方ともに有罪判決(Dについては、執行猶予付)の言渡しを受け、控訴したもののその後取り下げ、当該判決は確定した。
ロ 本件消費税法等違反被告事件において、Dは、○○地方検察庁検察官に対し、要旨以下のとおり供述している。
(イ) 新設会社には、2年間消費税がかからないことを承知していた。
(ロ) A社は、平成9年10月、消費税を免れるために設立した実体のない会社であり、その実態は請求人の業務そのもので、売上げは請求人からだけ、経費は請求人の従業員に対する給料がほとんどであった。
 なお、A社は、平成11年7月期までの2年間は免税事業者であったが、平成12年7月期には売上げが2億円超となり、その結果、平成14年7月期においては、簡易課税制度が選択できないため消費税が原則どおり発生することが予想され、請求人の従業員の給料をA社の外注費に付け替えている利点がなくなると思った。そこで、A社の従業員と仮装していたドライバーを、形さえ一人親方とすれば消費税を免れることができると考え、更に仮装した。
(ハ) B社及びC社についても、消費税を免れるために設立した実体のない会社で、その実態は請求人の業務そのものであった。また、両社の売上げ及び経費についても請求人に帰属するものであった。
ハ 本件関係各社の設立、解散等の状況は、次表のとおりである。

法人名 A社 B社 C社
商業登記の状況 本店
所在地
P市p町○−○ Q市q町○−○ P市p町○−○
代表者
氏名
E F G
設立
年月日
平成9年10月○日 平成15年5月○日 平成17年6月○日
解散
年月日
平成16年5月○日 平成17年5月○日 平成18年3月○日
給与支払事務所等の開設届出書の提出先
(給与の支払地)
J税務署長
(本店所在地に同じ)
K税務署長
(本店所在地に同じ)
J税務署長
(本店所在地に同じ)
本件各納税告知処分等に対応する期間の申告の有無等 年度等 法人税 消費税等 年度等 法人税 消費税等 年度等 法人税 消費税等
14/7 16/3 免税 18/2 免税
15/7 17/3 免税      
      17/5      

(2) 本件各納税告知処分について

 請求人による本件関係各社の名義を用いた源泉所得税の納付が請求人の納付として認められるか否かについて争いがあるので、判断する。
イ 法令解釈
 源泉徴収制度は、給与や利子・配当などの特定の所得の支払者(源泉徴収義務者)がその所得を支払う際に、所定の方法により所得税額を計算し、その支払金額から所得税額を差し引いて国に納付する制度である。この源泉所得税の納税義務は、所得の支払のときに成立し(通則法第15条第2項第2号)、その成立と同時に特別の手続を要しないで確定する(自動確定方式、同条第3項第2号)。また、源泉所得税は、支払者がこれを受給者から徴収しなかった場合において、課徴権者たる国から徴収を受け、又は期限後にこれを納付した場合、その徴収をしていなかった所得税の額に相当する金額を、以後、受給者に対して支払うべき金額から控除し、又は求償すべきものとされている(所得税法第222条)。すなわち、源泉所得税の徴収に関して、課徴権者たる国と直接の対立当事者関係に立つのは、徴収義務者たる支払者のみであって、租税負担者たる受給者は、徴収の法律関係における当事者とならない。そして、通則法は、徴収義務者を「納税者」と規定する(通則法第2条第5号)とともに、源泉所得税について、これを「徴収して国に納付する義務」を「納税義務」と規定している(通則法第15条第1項)。
 このように、源泉徴収制度における国と支払者の関係は、私法関係と異なり、法的安定性、法律関係の明確性の要請が強く支配する租税法の下において、源泉所得税を徴収して国に納付する義務としての納税義務の確定とその義務の履行という関係にあるから、租税法は、源泉徴収義務者本人が第三者名義で源泉所得税を徴収・納付するということを予定していないというべきであり、これが外観上一見して源泉徴収義務者本人の通称ないし別名と判断できるような場合でない限り、源泉徴収義務者本人の徴収・納付としての法的効果は生じないものと解するのが相当である。
ロ 本件関係各社は、上記(1)のハ及び上記1の(4)のロのとおり、それぞれが、1商業登記された法人であること、2給与支払事務所等の開設届出書を提出し、本件関係各社名で源泉所得税が納付されていること、及び3法人税及び消費税等の申告をしていることが認められる。
 これらを上記イの法令解釈に照らし合わせると、そもそも、租税法は、源泉徴収義務者本人(本件の場合は、請求人)が第三者名義で源泉所得税を納付することを予定しておらず、上記1ないし3のことからすれば、請求人による本件関係各社の名義を用いた源泉所得税の徴収・納付は、外観上一見して請求人の通称ないし別名でなされたと判断することはできないから、本来の源泉徴収義務者である請求人自身の徴収・納付としての法的効果を生じないものと解される。
ハ 請求人は、本件支給額に係る源泉徴収義務(源泉所得税の計算、徴収及び納付)は、請求人が本件関係各社の名義を用いて履行していた旨、また、請求人と本件関係各社が一体であることを示す事実の存在、すなわち、本件関係各社は、本件調査において指摘されたとおり、事業実態のない法人であるから源泉徴収事務を行えるはずがないこと等の事実があるから、請求人が、本件関係各社の名義で納付した源泉所得税は、請求人が期限内に納付した(法的効果は請求人に帰属する。)ものとして取り扱うべきである旨主張する。
 しかしながら、請求人の主張する事実は、本件調査によらなければ判明しえない事実であり、請求人が本件関係各社の名義を用いて源泉所得税を納付した時点において、外観上一見して請求人自身の納付であることが判断できるような事実はない。
 したがって、本件関係各社の名義で納付した源泉所得税は、請求人が期限内に納付(法的効果は請求人に帰属する)したものとして取り扱うことはできず、この点に関する請求人の主張には理由がない。
ニ 上記ロ及びハのとおり、本件関係各社の名義で納付された本件支給額に係る源泉所得税について、請求人自身の納付としての法的効果を認めることはできない。そして、請求人は、本件支給額等に係る源泉所得税を法定納期限までに納付していなかったために、原処分庁から、本件各納税告知処分を受けたものであり、請求人が納付すべき本件支給額等に係る本件各月分の源泉所得税の額は、別表の「各納税告知処分(源泉所得税の額)」欄に記載した本件各納税告知処分の額と同額となることから本件各納税告知処分はいずれも適法である。

(3) 本件各賦課決定処分について

イ 法令解釈
 通則法第68条第3項は、通則法第67条第1項の規定に該当する場合において、納税者が事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき源泉所得税を法定納期限までに納付しなかったときには、不納付加算税に代えて、重加算税を徴収する旨規定しており、ここでいう事実を仮装するとは、所得、財産あるいは取引上の名義等に関し、それが事実であるかのように装う等故意に事実を歪曲することをいうものと解される。
ロ 請求人は、本件関係各社の名義を用いて納付した源泉所得税については税額表適用区分誤りを除き、適法・適正に源泉徴収義務を履行し、期限内に納付しており、少なくとも源泉所得税について不正行為等、税を免れようとした意図も事実も存在しないから本件各賦課決定処分は違法である旨主張する。
 しかしながら、本件関係各社の名義で納付された本件支給額に係る源泉所得税について、請求人自身の納付としての法的効果を認めることができないことは上記(2)のニのとおりであり、請求人は、請求人が給与等の支払者であるにもかかわらず、上記(1)並びに上記1の(4)のイ及びロのとおり、本件支給額を本件関係各社に対する外注費として処理し、本件支給額に係る源泉所得税を本件各関係会社名義で納付することにより、請求人においては本件支給額に係る源泉徴収義務がないかのように事実を仮装し、本来、請求人自身が源泉徴収義務者として納付すべき本件支給額に係る源泉所得税を法定納期限までに納付していなかったことが認められる。このことは、上記イの法令解釈に照らし合わせると重加算税の賦課要件に該当すると認められるから、通則法第68条第3項の規定に基づいて行われた本件各賦課決定処分は適法である。

(4) その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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