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(平21.5.22、裁決事例集No.77 482頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、原処分庁が、審査請求人(以下「請求人」という。)の職員を社会福祉法人Eの通所介護業務に従事させて請求人が得た金員は課税資産の譲渡等の対価に該当するとして、消費税及び地方消費税の更正処分等を行ったのに対し、請求人は、当該金員は出向させた職員の給与負担金を収受したものであるから課税資産の譲渡等の対価には該当しないとして、その全部の取消しを求めた事案であり、争点は、次のとおりである。

争点 請求人の職員を通所介護業務に従事させて得た金員(以下「本件金員」という。)は、消費税法基本通達5−5−10《出向先事業者が支出する給与負担金》(以下「本件通達」という。)に定める出向先事業者が支出する給与負担金に該当するか否か。

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(2) 審査請求に至る経緯

イ 請求人は、平成17年4月1日から平成18年3月31日まで及び平成18年4月1日から平成19年3月31日までの各課税期間(以下、順次「平成18年3月課税期間」及び「平成19年3月課税期間」といい、これらを併せて「本件各課税期間」という。)の消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)について、別表の「確定申告」欄のとおり記載して、いずれも法定申告期限までに申告した。
ロ 原処分庁は、平成20年1月28日付で別表の「更正処分等」欄のとおり、本件各課税期間について消費税等の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分をした。
ハ 請求人は、上記ロの処分を不服として、平成20年2月29日に異議申立てをした。
ニ 原処分庁は、上記ロの各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分について、平成20年4月28日付で別表の「再更正処分等」欄のとおり再更正処分(以下「本件各更正処分」という。)及び平成19年3月課税期間の過少申告加算税の変更決定処分(以下、平成20年1月28日付でされた平成18年3月課税期間に係る過少申告加算税の賦課決定処分と併せて「本件各賦課決定処分」という。)をした。
ホ 異議審理庁は、平成20年5月15日付で、本件各更正処分における上記イの確定申告額を超える部分及び本件各賦課決定処分を審理した上、別表の「異議決定」欄のとおり、棄却の異議決定をした。
ヘ 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成20年6月2日に審査請求をした。

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(3) 関係法令等

イ 消費税法第2条《定義》第1項第8号は、事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供を資産の譲渡等という旨規定し、また、同項第9号では、資産の譲渡等のうち、同法第6条《非課税》第1項の規定により消費税を課さないこととされるもの以外のものを課税資産の譲渡等という旨規定し、さらに、同法第4条《課税の対象》第1項は、国内において事業者が行った資産の譲渡等には、この法律により、消費税を課すと規定している。
ロ 本件通達は、事業者の使用人が他の事業者に出向した場合において、その出向した使用人(以下「出向者」という。)に対する給与を出向元事業者が支給することとしているため、出向先事業者が自己の負担すべき給与に相当する金額(以下「給与負担金」という。)を出向元事業者に支出したときは、当該給与負担金の額は、当該出向先事業者におけるその出向者に対する給与として取り扱う旨定めている。
ハ 国税通則法第65条《過少申告加算税》第1項は、期限内申告書が提出された場合において、修正申告書の提出又は更正があったときは、当該納税者に対し、その修正申告又は更正に基づき納付すべき税額に100分の10の割合を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課する旨規定し、同条第4項は、同条第1項に規定する納付すべき税額の計算の基礎となった事実のうちにその修正申告又は更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて正当な理由があると認められるものがある場合には、納付すべき税額からその正当な理由があると認められる事実に基づく税額として国税通則法施行令第27条《過少申告加算税を課さない部分の計算》に定めるところにより計算した金額を控除して過少申告加算税を課する旨規定している。

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(4) 基礎事実

イ 請求人は、平成9年1月○日に設立された医療法人であり、Fが理事長に就任し、同年2月には同人が個人経営を行っていたG病院の業務を引き継ぎ、現在に至っている。
ロ 請求人は、p市との間で、平成16年6月10日付で「H施設運営に関する協定書」(以下「本件協定書」という。)を作成し、同市が運営していた介護業務を行うH施設の業務全般を同市から承継するために、同年11月○日に、介護業務を行う法人として社会福祉法人Eを設立し、同年12月3日の社会福祉法人Eの理事会の承認を得てFが理事長に就任し、現在に至っている。また、請求人の総務課長であるJも設立当初から理事に就任している。
ハ 請求人は、社会福祉法人Eとの間で、平成17年3月30日付の「業務委託契約書」(以下、「本件契約書」といい、本件契約書による契約を「本件契約」という。)を取り交わしており、本件契約は、要旨次のとおり定めている。
(イ) 契約件名は、通所介護業務である。
(ロ) 社会福祉法人Eは、請求人に対して別紙仕様書に定める業務を委託し、請求人は、これを受託する。(第1条)
 なお、当該仕様書の要旨は、次のとおりである。
A 履行場所は、「P県p市○−○ 社会福祉法人E H施設内」である。
B 業務内容は、生活相談、機能訓練及び介護である。
C 業務時間は、月曜日から金曜日は8時40分から17時まで、土曜日は8時40分から正午までであり、業務を要しない日は日曜、祝日及び年末年始(12月31日から1月3日まで)とし、業務を要しない日に出勤した場合は振替休日とする。
D 業務責任者は、請求人の総務課長Jをあてる。
(ハ) 請求人は、本件契約の履行に当たり、善良な管理者の注意をもって処理する。
 また、請求人は、これを遂行するに当たり、従業員を適正に配置し、指導監督を行い、仕様書に従い計画的に業務処理を行うものとする。(第2条)
(ニ) 本件契約に基づき、社会福祉法人Eが請求人に支払う契約料金の金額及び支払方法については、別紙料金協定書に定めたとおりとする。(第3条)
 なお、当該料金協定書の要旨は、次のとおりである。
A 契約料金の月額は、800,000円とする。
B 締切日を毎月20日とし、請求人は社会福祉法人Eに業務完了報告書を直ちに提出し、社会福祉法人Eの確認印を受ける。
C 当該締切日の月の末日までに請求書を提出し、その請求日の翌月末日までに請求人の指定する銀行口座に振り込む。
D 指定する銀行口座は、K銀行L支店の請求人名義の口座番号○○○○とする。
(ホ) 請求人は、本件業務の履行に当たり業務責任者を選任し、次の業務を行わせるものとする。(第5条)
A 請求人の従業員の配置及び業務上の指揮命令
B 請求人の従業員の労務管理
C 本契約業務の履行に関する社会福祉法人Eとの連絡及び調整
(ヘ) 請求人は、請求人の従業員に対する雇用主として、労働基準法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法、職業安定法、社会保険諸法令その他従業員に対する法令上の責任をすべて負い、責任を持って労務管理を行うものとする。(第6条)
(ト) 請求人は、請求人の従業員の教育指導に万全を期し、秩序規律及び風紀の維持に責任を負うものとする。(第7条)
(チ) 請求人は、本件契約業務の処理中、請求人の責に帰すべき事由により、社会福祉法人E若しくは第三者に与えた損害に対し、損害賠償の責を負うものとする。(第11条)

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2 主張

原処分庁 請求人
 消費税法第4条第1項は、国内において事業者が行った資産の譲渡等は、この法律により、消費税を課する旨規定し、同法第2条第1項第8号において、資産の譲渡等とは、事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供をいうとしている。
 請求人は、社会福祉法人Eとの間で、請求人の職員が、社会福祉法人Eにおいて行う通所介護業務(以下、「本件業務」といい、本件業務に従事した職員を「本件職員」という。)について業務委託契約を締結しており、本件業務は、通所介護業務に係る役務を提供する請負に該当することから、その対価は課税資産の譲渡等の対価であり、消費税等の課税の対象となる。
 本件通達は、事業者の使用人が他の事業者に出向した場合において、その出向者に対する給与を出向元事業者が支給することとしているため、出向先事業者が給与負担金を出向元事業者に支出したときは、当該給与負担金の額は、出向先事業者におけるその出向者に対する給与として取り扱う旨定めている。
 原処分庁は、業務委託契約に基づいて消費税等の課否判定を行っているが、本件契約書は、社会福祉法人Eの理事会に提出する資料として形式的に作成されたものであり実用性はない。
 また、本件職員は、請求人が予算の制約の中、いかに効率的に同族法人グループ全体の業務運営を行うかを考慮して職員配置を行ったものであり、実質的には出向である。
 したがって、出向元である請求人が、出向先の社会福祉法人Eから得た金員は、本件職員に係る給与負担金を受領したものであることから、本件通達の適用があり、消費税法第2条第1項第8号に規定する資産の譲渡等には該当しない。

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3 判断

(1) 認定事実

 原処分関係資料及び請求人から提出された証拠並びに当審判所の調査したところによれば、次の事実が認められる。
イ 請求人は、就業規則及び給与規程を定め、行政官庁に届け出ているが、当該就業規則には出向に関する規定はない。
 他方、社会福祉法人Eも、就業規則及び給与規程を定めており、その内容は、請求人のものとほぼ同様のものとなっている。
ロ 本件契約の契約期間は平成17年4月1日から平成18年3月31日であり、その後書面による更新契約を行った形跡はないが、平成18年4月1日以降においても、本件契約に沿って、指定された請求人名義の預金口座(K銀行L支店口座番号○○○○)に本件業務に係る契約料金が振り込まれ、また、本件職員は、本件契約の内容に沿って本件業務に従事している。
ハ 本件業務は、平成18年3月課税期間において、平成17年4月から請求人の従業員であるM、N及びQの3名が担当し、同年8月からRが担当に加わった。また、平成19年3月課税期間においては、平成18年3月課税期間と同様の職員4名が引き続き従事していたが、平成18年7月にQが担当から外れ、代わりに同月からSが新たに担当に加わった。
 なお、本件職員は、本件各課税期間において、上記1の(4)のハの(ロ)のCに掲げた勤務条件に従い本件業務に従事していた。
ニ F及びJは、当審判所に対し、本件職員の雇用主は請求人である旨答述し、Mをはじめとする本件職員への給与及び賞与は、請求人の他の従業員と同様に、請求人の給与規程に基づいて支払われ、給与支給に関連する、給与、賞与、通勤費などの事務処理等も請求人が行い、また、本件職員に係る労働保険、健康保険等も請求人が負担している。
 なお、本件職員に支給した給与総額は、平成18年3月課税期間は9,072,756円(平均月額756,063円)、平成19年3月課税期間は9,777,727円(平均月額814,810円)であった。
ホ 請求人とp市は、本件協定書において、平成16年12月1日をもって、デイサービス施設設置、運営するための社会福祉法人の設立に関する諸手続及び介護保険法の規定に基づく事業者の許可等、デイサービス施設運営に関する法的な手続を完了することを約している(第2条の(6))。
ヘ 社会福祉法人Eは、p市から市有財産を借り受けるために、同市との間で、平成16年12日1日付で「市有財産貸付契約書」を作成し、本件協定書を遵守することを条件に、当該契約に基づき同市からH施設の敷地、施設の建物及び備品を無償で借り受けている。

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(2) 争点(本件金員は、本件通達に定める出向先事業者が支出する給与負担金に該当するか否か。)について

イ 消費税法における給与の位置付け
 消費税法は、上記1の(3)のイのとおり、同法第2条第1項第8号において、事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付並びに役務の提供を資産の譲渡等と定義づけ、また、同項第9号において、資産の譲渡等のうち、同法第6条第1項の規定により消費税を課さないこととされるもの以外のものを課税資産の譲渡等とし、さらに、同法第4条第1項において、消費税の課税の対象を、国内において事業者が行った資産の譲渡等とし、当該資産の譲渡等に対して、この法律により、消費税を課する旨規定している。
 すなわち、消費税の課税の対象は、国内において、消費税法に規定される非課税取引以外の資産の譲渡等を、事業者が事業として対価を得て行った場合ということとなる。
 ところで、課税資産の譲渡等とは、上述のとおり、事業者が事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供と規定されており、ここにいう事業とは、自己の計算と危険において資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供が反復、継続、独立して行われるものと解され、個人が使用者に従属し、かつ、その使用者の計算により行われる事業に提供した役務に対して対価を得る行為、すなわち給与所得者の役務の提供は事業として行われる役務の提供には該当しないことから、課税資産の譲渡等に該当しない。
ロ 本件通達の適用について
(イ) 出向における雇用関係について
 出向とは、出向者が出向元との労働契約を維持しつつ、出向者と出向元間との雇用関係が存続する一方、出向者は出向先の指揮命令に服して就労する形態であり、労使間の権利義務が出向元、出向先間で分割され、部分的に出向先に移転する(出向先に、労務指揮権が移転する。)と解されている。また、賃金支払義務に関しては、実務上出向元が自らの基準で支払い、出向先が一部を負担する方法と、出向先が自らの基準で支払い、出向元の基準を下回る場合に差額を出向先が補てんする方法があり、前者は出向元が引き続き賃金支払義務を負い、後者は出向先が賃金支払義務を負い、この賃金支払義務の移転は、法的には債務引受けを意味するとされる。このように、出向とは、出向元との関係でも出向先との関係でも雇用関係に基づき勤務する形態であるから、たとえ出向先事業者において負担する給与相当額が負担金名目で出向元に支出されたとしても、当該給与負担金名目の金員は、当該出向先事業者においてはその出向者の労務の提供に対する実質的な対価とみるべきで、その出向者に対する給与として取り扱うのが相当であると解される。
(ロ) 本件通達について
 上記1の(3)のロに掲げた本件通達は、事業者の使用人が他の事業者に出向した場合において、その出向者に対する給与を出向元事業者が支給することとしているため、出向先事業者が給与負担金を出向元事業者に支出したときは、当該給与負担金の額は、当該出向先事業者におけるその出向者に対する給与として取り扱う旨定めているが、これは、上記(イ)で述べた雇用関係を踏まえて、出向先事業者が負担すべき給与に相当する金額を支出したときには、給与として取り扱うとしたものであり、当審判所においても相当であると認められる。
(ハ) まとめ
 上記(イ)及び(ロ)で述べたように、労務の提供を受けた事業者が支出する金員が、出向に係る給与等に該当し、本件通達の適用があるか否かについては、その出向者とその労務の提供を受ける事業者との間の雇用関係の有無により判定することとなる。
ハ 本件金員について
(イ) 請求人は、本件契約書は形式的に作成されたものであり実用性はなく、本件業務に基づき社会福祉法人Eから受領した金員は実質的には出向に基づくものであって、本件通達に定める給与負担金に該当し、消費税の課税対象とはならない旨主張する。
(ロ) ところで、社会福祉法人Eは、請求人との間で、H施設内の通所介護業務について上記1の(4)のハのとおり本件契約を締結し、請求人に本件業務を委託したのであるが、本件契約書においては、契約料金として月額800,000円を請求人に支払う旨規定しているのみで、本件業務に従事させる職員の数も定められておらず、請求人は、これを遂行するに当たり、従業員を適正に配置し、指導監督を行い、仕様書に従い計画的に業務処理を行うものとするとされている。
 また、上記のほか本件契約書では、業務責任者は請求人が選任し、業務責任者に本件職員の配置や業務上の指揮命令及び労務管理等を行わせることとし、本件職員に対する労働基準法、労働安全衛生法等の労働関係法規上の責任や秩序規律及び風紀の維持に対する責任も請求人が負い、さらに、業務遂行上第三者に与えた損害は請求人が負担する旨を定めている。
 このように、本件契約の内容をみる限りにおいては、本件職員と社会福祉法人Eとの間には雇用関係及び業務上の指揮命令関係は存在せず、本件職員との雇用契約は、請求人との間のみに存在すると認められる。
(ハ) この点について、請求人は、上記(イ)のとおり主張するものの、本件金員を出向労働関係に基づくものと認めるには、社会福祉法人Eと本件職員との間に別個の雇用関係が必要であり、かかる雇用関係があったことは請求人の立証責任に帰するべきであるところ、上記(1)のイのとおり、請求人の就業規則には出向についての定めはなく、また、本件職員が社会福祉法人Eとの間で雇用契約を締結したことを証する書類は提示されていない。
 また、上記(1)のニのとおり、F及びJは、本件職員の雇用主は請求人であると答述するほか、上記(1)のロ及びハのとおり、本件契約に沿って本件業務の対価が支払われ、本件職員は本件契約の内容に沿って本件業務に従事し、さらに、平成17年7月までは3名の本件職員が従事していたが、同年8月からは4名に増員され、本件職員の給与支給額が増加しても、社会福祉法人Eは契約料金の月額800,000円のみを負担しており、このことは、当該契約料が実質的にみて給与負担金ではないことを意味するものである。
(ニ) 以上のとおり、請求人と社会福祉法人Eとの間に出向協定はなく、本件職員との間の雇用契約は、請求人との間のみに存在し、社会福祉法人Eとの間には認められないのであるから、本件業務を出向によるものとみることはできず、請求人は、本件契約に基づき、委託された業務を自己の計算と危険において行い、その業務委託の対価として契約料金を受領しているものと認めるのが相当であり、出向における雇用関係を前提とした給与負担金とみることはできない。
 したがって、請求人が社会福祉法人Eから受領する本件金員は、本件契約に基づき受領する請求人の役務の提供に対する対価と認められ、消費税法上の課税資産の譲渡等に該当すると解するのが相当である。
(ホ) また、請求人は、いかに効率的に同族法人グループ全体の業務運営を行うかを考慮して職員配置を行ったものであり、実質的には出向であるとも主張する。
 ところで、上記1の(4)のイ及びロの事実関係によれば、請求人は、p市からH施設における介護業務を承継するに当たり、社会福祉法人Eを設立したものと認められる。
 社会福祉法人Eの設立に当たり、上記(1)のホ及びヘのとおり、請求人は、請求人とp市との間で作成した本件協定書において、p市との間で運営開始日である平成16年12月1日までに運営するための社会福祉法人を設立し、介護保険法の規定に基づく事業者の認可等デイサービス施設運営に関する法的な手続を完了することを約しており、さらに、「市有財産貸付契約書」において平成16年12日1日付で市有財産の貸付けをp市から受けたのは、請求人ではなく、社会福祉法人Eであることからすれば、社会福祉法人Eは、H施設の運営移管をp市から受けるために設立された社会福祉法人であり、本件契約は、p市から本件業務の運営移管を受けた社会福祉法人Eから請求人が業務の委託を受け、それによって、請求人とp市との間で作成された本件協定書の内容を履行しているものということができるのであり、社会福祉法人Eは、請求人から独立した事業活動を行う法人というべきである。
 本件において、請求人と社会福祉法人Eは、業務委託を約する際に本件職員について出向の形態を採ることも可能であったかもしれないが、現実には、請求人は社会福祉法人Eとの間で出向の形態を採らない本件契約を締結し、本件契約に基づき請求人が社会福祉法人Eに対して役務提供しているのであり、この業務委託契約に基づく対価が消費税法第2条第1項第8号に規定する資産の譲渡等に該当することに疑問の余地はない。
ニ 結論
 請求人は、本件契約書は形式的に作成されたものであり実用性はないと主張するが、上記ロで述べたとおり、現に本件契約に即して本件職員は社会福祉法人Eの業務を行い、本件契約に定める金員が支払われ、また、本件契約を出向協定と判断することはできず、本件契約以外に当該金員を得る根拠はないことから、本件金員は業務委託契約に基づく対価と認めざるを得ない。
 したがって、本件金員は、本件通達が定める給与負担金とみることはできず、本件契約に基づき受領する請求人の役務の提供に対する対価と認められ、消費税法第2条第1項第9号に規定する課税資産の譲渡等に該当するとして原処分庁が行った本件各更正処分は適法であり、請求人の主張は採用できない。

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(3) 本件各賦課決定処分について

 本件各賦課決定処分は、上記3で述べたとおり本件各更正処分が適法であり、当該各更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が、更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、正当な理由があるとは認められないことから、国税通則法第65条第1項の規定に基づき行った本件各賦課決定処分は適法である。

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(4) その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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