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(平21.1.16、裁決事例集No.77 552頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、原処分庁が、審査請求人(以下「請求人」という。)から金銭の貸付けを受けている酒類製造業を営む法人の滞納国税を徴収するため、滞納国税の法定納期限等より前に譲渡担保の設定登記がされた酒類を差し押さえた上で公売し、その換価代金等の配当処分をしたのに対し、請求人が、請求人の有する譲渡担保権によって担保される債権が滞納国税に優先するとして、同処分の一部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 原処分庁は、平成19年12月17日に、C社(以下「滞納法人」という。)の別表1の滞納国税(以下「本件滞納国税」という。)を徴収するため、P市p町○○番地所在の滞納法人の本社工場内にある蒸留酒、合成酒、清酒の在庫商品、在庫原材料及び在庫製品(以下、これらを併せて「本件酒類」という。)を滞納法人の財産として差し押さえた(以下、この差押えを「本件差押処分」という。)。
ロ 原処分庁は、平成20年2月12日以降、本件差押処分に係る本件酒類を4回にわたり順次公売した。
ハ 原処分庁は、上記ロの各公売に係る換価代金等について、平成20年2月15日付、同年3月7日付、同年3月28日付及び同年6月13日付で、それぞれ別表2の「配当処分」欄のとおり配当した(以下、平成20年2月15日付の配当処分を「本件配当処分1」、同年3月7日付の配当処分を「本件配当処分2」、同年3月28日付の配当処分を「本件配当処分3」、同年6月13日付の配当処分を「本件配当処分4」といい、これらを併せて「本件各配当処分」という。)。
 なお、本件配当処分1及び本件配当処分2におけるD税務署長への配当は、国税通則法及び酒税法の規定によって徴収されることとなった本件酒類の公売に伴う移出に係る酒税(以下「移出酒税」という。)に対するものであり、国税徴収法(以下「徴収法」という。)第11条《強制換価の場合の消費税等の優先》の規定により、第1順位とされたものである。
 また、本件配当処分4において、配当順位が第1位とされた原処分庁への配当は、徴収法第10条《直接の滞納処分費の優先》の規定により徴収される本件酒類の換価に係る滞納処分費に対するものである。
ニ 請求人は、本件各配当処分を不服として、別表2の「異議申立て」欄のとおり、それぞれ異議申立てをしたところ、異議審理庁が、同表の「異議決定」欄のとおり、棄却又は却下する旨の異議決定をしたことから、本件配当処分1、本件配当処分2及び本件配当処分3については平成20年6月19日に、本件配当処分4については同年8月6日に、それぞれ審査請求をした。
 そこで、これらの審査請求について、国税通則法第104条《併合審理等》第1項の規定により、併合して審理をする。

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(3) 関係法令

イ 徴収法第24条《譲渡担保権者の物的納税責任》
(イ) 第1項は、納税者が国税を滞納した場合において、その者が譲渡した財産でその譲渡により担保の目的となっているもの(以下「譲渡担保財産」という。)があるときは、その者の財産につき滞納処分を執行してもなお徴収すべき国税に不足すると認められるときに限り、譲渡担保財産から納税者の国税を徴収することができる旨規定している。
(ロ) 第8項は、徴収法第24条第1項の規定は、国税の法定納期限等以前に、担保の目的でされた譲渡に係る権利の移転の登記がある場合又は譲渡担保権者が国税の法定納期限等以前に譲渡担保財産となっている事実を、その売却決定の前日までに、証明した場合には適用しない旨規定している。
ロ 徴収法第129条《配当の原則》第1項は、差押財産の売却代金は、次に掲げる国税その他の債権に配当する旨規定している。

第1号 差押えに係る国税

第2号 交付要求を受けた国税、地方税及び公課

第3号 差押財産に係る質権、抵当権、先取特権、留置権又は担保のための仮登記により担保される債権

第4号 徴収法第59条《引渡命令を受けた第三者等の権利の保護》第1項後段、第3項又は第4項(第三者の損害賠償請求権等への配当)(これらの規定を同法第71条《自動車、建設機械又は小型船舶の差押え》第4項(自動車等についての準用規定)において準用する場合を含む。)の規定の適用を受ける損害賠償請求権又は借賃に係る債権

ハ 徴収法第171条《滞納処分に関する不服申立て等の期限の特例》第1項は、滞納処分について次の各号に掲げる処分に関し欠陥があること(第1号に掲げる処分については、これに関する通知が到達しないことを含む。)を理由としてする異議申立て(国税通則法第11条《災害等による期限の延長》又は同法第77条《不服申立期間》の規定により異議申立てをすることができる期間を経過したものを除く。)は、これらの規定にかかわらず、当該各号に掲げる期限まででなければ、することができない旨規定している。

第1号 督促 差押えに係る通知を受けた日(その通知がないときは、その差押えがあったことを知った日)から2月を経過した日

第2号 不動産等についての差押え その公売期日等

第3号 不動産等についての徴収法第95条《公売公告》の公告(同法第109条第4項《随意契約による売却》において準用する同法第96条《公売の通知》の通知を含む。)から売却決定までの処分 換価財産の買受代金の納付の期限

第4号 換価代金等の配当 換価代金等の交付期日

ニ 酒税法第9条《酒類の販売業免許》は、酒類の販売業又は販売の代理業若しくは媒介業をしようとする者は、販売場の所轄税務署長の免許を受けなければならない旨規定している。

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(4) 基礎事実

イ 請求人は、平成18年9月5日、滞納法人及び滞納法人の代表取締役であるGとの間で、滞納法人が請求人から貸付極度額○○○○円の金銭の貸付けを受ける旨の金銭消費貸借契約を締結し、その契約に係る契約書を取り交わした。
ロ 請求人は、平成18年9月5日、滞納法人及びGとの間で、上記イの金銭消費貸借契約に基づく滞納法人の請求人に対する債務を担保するための譲渡担保設定契約(以下「本件譲渡担保設定契約」といい、この契約による譲渡担保権を「本件譲渡担保権」という。)を締結し、「担保設定契約書(アセット・ベースト・レンディング用)」を取り交わした。
ハ 上記ロの担保設定契約書(アセット・ベースト・レンディング用)には、要旨次のとおり記載されている。
(イ) 第1条(定義)
 本契約において「担保目的動産」とは、滞納法人が現在又は将来において所有する別紙記載の材料、仕掛品並びに倉庫、営業所又は店頭における在庫等の動産をいう(第1項第4号)。
(ロ) 第3条(集合動産譲渡担保権の設定)
A 滞納法人は、請求人に対し、被担保債務を担保するため、次条以下の定めに従い、本契約締結日に滞納法人が所有する担保目的動産を譲渡し、その所有権を移転した(第1項)。
B 滞納法人及び請求人は、本契約締結日以降に滞納法人が所有権を取得することとなる担保目的動産について、別紙記載の保管場所に搬入された時点で請求人に譲渡し、所有権を移転する(第2項)。
(ハ) 第4条(担保目的動産の引渡し等)
A 滞納法人は、本契約締結日において、本日現在の担保目的動産について、占有改定(第三者がこれらを直接占有している場合には、指図による引渡し)の方法により、請求人に対する引渡しを完了した(第1項)。
B 滞納法人は、前条第2項により担保目的動産を構成することとなる物件については、これらの物件が担保目的動産に該当することとなった時点で、当然に占有改定(第三者がこれらを直接占有している場合には、指図による引渡し)の方法により、請求人に対する引渡しを行うことに合意した(第2項)。
ニ 本件酒類に係る動産譲渡登記ファイルの登記事項証明書(一括)には、要旨次の内容が記載されている。
 平成18年9月○日、譲渡人を滞納法人とし、譲受人をE銀行(F支店取扱い)及び請求人として、P市p町○○番地に所在する滞納法人の本社工場に保管されている蒸留酒、合成酒、清酒の在庫商品、在庫原材料及び在庫製品を同月5日に譲渡担保とした旨登記し、その登記の存続期間の満了年月日は平成23年9月5日である。
ホ 上記ハの(イ)の担保目的動産と本件酒類は、同一物である。

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2 争点

(1) 争点1 酒類を担保の目的財産とする本件譲渡担保設定契約は有効か否か。

(2) 争点2 本件差押処分の欠陥を理由として、本件各配当処分の取消しを求めることができるか否か。

(3) 争点3 本件譲渡担保権によって担保される債権は、徴収法第129条第1項に規定する配当を受けることができる債権に該当するか否か。

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3 主張及び判断

(1) 争点1 酒類を担保の目的財産とする本件譲渡担保設定契約は有効か否か。

イ 主張

原処分庁 請求人
 本件差押処分は、次の理由から、請求人を権利者とする本件譲渡担保設定契約を無効と判断して行ったものである。  本件譲渡担保設定契約は、次の理由から有効なものである。
(イ) 酒税法は、酒類の製造、卸売及び小売販売に至るまで、すべて免許制度を採用していることから、酒類販売業免許を有していない請求人は、譲渡担保の目的とした酒類の私的実行が行い得ないので、譲渡担保権者とはなり得ず、本件譲渡担保設定契約は、請求人と滞納法人との間において有効であるとしても、国税当局との間においては、相対的に無効というべきである。 (イ) 酒類について設定された本件譲渡担保設定契約が税務当局との関係で相対的に無効であるとの原処分庁の主張は、次の二つの理由から、担保に関する実務を無視した明らかに誤った解釈というべきである。
A 製造・処分等につき免許等の要件のある譲渡担保財産については、免許のある事業者(譲渡担保権設定者を含む。)に処分業務を委託して行うので、譲渡担保財産の処分が違法に行われることは実務上あり得ない。
 なお、酒類の移出によって発生した酒税は、処分を委託した免許事業者等に納税を委託するので、税法上の遺漏を生じることはない。
B 輸入取引における金融方法として用いられるトラスト・レシート(輸入担保荷物保管証)は、輸入貨物についての(集合物)譲渡担保そのもので、酒類もその対象となっており、輸入事業者に債務不履行が生じた場合には、金融機関が譲渡担保権を行使し、酒類の販売業者に委託して、酒税・関税を納付の上、担保処分される実例は少なくない。
(ロ) 請求人は、本件各配当処分のうち、移出酒税への配当については、異議を申し立てていないが、譲渡担保財産の価額の一部分を対象に譲渡担保が成立することはあり得ないところ、仮に、本件譲渡担保設定契約が有効であるとするならば、酒類の売買価額の一部(場合によっては全部。)を構成している移出酒税そのものを譲渡担保の目的にしていることになるから、公序良俗に反する無効な契約というべきである。 (ロ) 譲渡担保物件の処分に当たって移出に伴う課税が発生することと、本件譲渡担保権の有効性あるいは相当性とは全く無関係な議論である。担保となった酒類の処分価額が移出酒税に及ばないこともあり得るが、そのような場合は担保権者が担保権を放棄する可能性があるにすぎない。

ロ 判断
(イ) 原処分庁は、上記イの「原処分庁」欄の(イ)のとおり、本件譲渡担保設定契約は、請求人と滞納法人との間において有効であるとしても、国税当局との間においては、相対的に無効であると主張する。
 しかしながら、酒税法が酒類の製造及び販売業について免許制度を採用したのは、酒類の消費に担税力を認め、その製造場から酒類が移出された場合に、その製造者に酒税の納税義務を課すこととし、酒類販売業者を介しての代金回収を通じてその税負担を最終的な担税者である消費者に転嫁するという仕組みを採用したことから、遵法精神に欠ける者や経営基盤が薄弱な者が行う酒類製造及び業として行う酒類販売を禁止することにより、酒税の適正かつ確実な賦課徴収を図ろうとしたものであると解される。すなわち、酒税法は、酒税の適正かつ確実な賦課徴収を図る観点から、酒類の製造と業として行う酒類の販売について免許を必要とする旨を定めたものであって、酒類の製造免許又は販売業免許を有していない者が行う酒類の譲渡そのものを禁止したものではない。そして、酒税法及び他の法令においても、酒類を譲渡担保の対象にすることを禁止した規定はないことから、譲渡担保権者が酒類の製造免許又は販売業免許を有していないという理由のみで、酒類の譲渡担保設定契約が無効又は課税庁に対して相対的に無効であるということはできない。
 したがって、この点に関する原処分庁の主張には理由がない。
(ロ) また、原処分庁は、上記イの「原処分庁」欄の(ロ)のとおり、酒類を譲渡担保の目的にすることは、公序良俗に反して無効である旨主張する。
 しかしながら、酒税は、その製造場から酒類が移出された場合にその製造者に課されるものであり、譲渡担保権の実行によってその製造場から酒類が移出された場合もその製造者に酒税が課されることになるが、そのことから直ちに、酒類を譲渡担保の目的とすることが移出酒税そのものを譲渡担保の目的にしているとは解し難い。そして、徴収法第24条に規定する譲渡担保財産とは、納税者が自己又は第三者の債務の担保とする目的で債権者又は第三者に譲渡した財産をいい、動産、有価証券、債権、不動産、無体財産権等一定の財産的価値を有し、譲渡できるものはすべて譲渡担保財産とすることができると解されるし、酒類を譲渡担保財産とすることは法令上禁止されていない。確かに、譲渡担保権の実行による酒類の売却代金がすべて譲渡担保の被担保債権の弁済に充てられた場合には、移出酒税の納付・徴収が困難になることが考えられるが、製造者が酒税を滞納した場合、製造者の総財産が滞納処分の対象になることを考えれば、酒類を譲渡担保の目的としたことによって酒税の徴収が全く不可能になるとは考えられない。
 以上のことからすれば、本件譲渡担保設定契約が詐害性や反社会性を有するとも認められず、たとえ移出酒税が酒類の販売価額の一部を構成しているとしても、本件酒類を譲渡担保の目的としたことが公序良俗に反するとはいえない。
 したがって、この点に関する原処分庁の主張には理由がない。
(ハ) 以上のとおり、原処分庁の主張はいずれも理由がなく、当審判所の調査によっても、本件譲渡担保設定契約を無効とする事実は認められないので、本件譲渡担保設定契約は有効である。

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(2) 争点2 本件差押処分の欠陥を理由として、本件各配当処分の取消しを求めることができるか否か。

イ 主張

原処分庁 請求人
 不服申立ての期限の特例について、動産に関する明文の規定はないが、請求人が、先に行われた処分である本件差押処分の欠陥を主張して、後に行われた処分の取消しを求めることができるのは、不動産と同様に公売期日までであり、請求人は本件各配当処分の取消しを求めることはできない。  徴収法第171条第1項各号は限定列挙であり、動産については配当処分の段階でも差押えの違法性は主張できる。

ロ 判断
 原処分庁は、差押処分の欠陥を理由とする不服申立ての期限について、上記イの「原処分庁」欄のとおり主張する。
 しかしながら、先に行われた処分に違法性がある場合に、それに続く後に行われた処分に違法性が承継されるか否かについて、先に行われた処分と後に行われた処分が相結合して一つの法律的効果の実現を目指し、これを完成させるものであるときは、原則として違法性が承継されると解され、滞納処分における差押処分や公売処分、配当処分は、滞納となった国税債権の強制的実現という同一目的のために段階的に行われるものであるから、差押処分の違法性は、その後の公売処分や配当処分に承継されることとなる。そして、徴収法第171条第1項第2号は、不動産等についての差押えに欠陥があることを理由とする不服申立ては、その公売期日等までにしなければならない旨を定めているが、これは、差押処分の違法性がその後の公売処分や配当処分に承継されることを前提として、滞納処分手続の安定や換価手続により権利を取得した者等の権利利益の保護を図るため、不服申立てについての制限を定めたものと解されるところ、酒類のような動産の差押えについては、このような不服申立てについての制限を定めた規定はない。
 そうすると、動産の差押処分の違法性は配当処分にも承継されるから、請求人は、本件差押処分の欠陥を理由として、本件各配当処分の取消しを求めることができると解される。
 したがって、原処分庁の主張には理由がない。

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(3) 争点3 本件譲渡担保権によって担保される債権は、徴収法第129条第1項に規定する配当を受けることができる債権に該当するか否か。

イ 主張

原処分庁 請求人
 差押財産の売却代金から配当を受けることができるのは、徴収法第129条第1項に規定する国税その他の債権であり、譲渡担保権の被担保債権は同項に規定する国税その他の債権のいずれにも当たらないので、本件譲渡担保権によって担保される債権は同項に規定する債権に該当しない。  徴収法第24条第8項は、法定納期限前に対抗要件を具備した譲渡担保権の国税に対する優越を明記しており、優先する譲渡担保権者に換価代金等を配分しないとするならば、同項は実質的に空文となるといわざるを得ない。また、譲渡担保権者の権利に配慮して制定された徴収法第129条第1項の立法経緯に照らし、譲渡担保権の被担保債権が換価代金等の配当の対象にならないとの解釈は誤りである。

ロ 判断
(イ) 法令解釈等
A 徴収法第24条の立法趣旨
 徴収法は、国税が私債権に優先することを原則としながら、国税の法定納期限等以前に滞納者の財産に質権や抵当権が設定されている場合には、その財産の換価代金等の配当に当たっては、その被担保債権が国税に優先することとしている。
 ところで、滞納処分は、本来、滞納者の財産に対して行わなければならないが、譲渡担保財産は法形式上担保権者に所有権が移転しているため、設定者に対する滞納処分として差し押さえることができないことから、譲渡担保の設定が国税の法定納期限等後であっても、譲渡担保権者は譲渡担保財産の換価代金等から常に国税に優先して配当を受けることができることとなり、質権や抵当権との均衡を欠くことになる。そこで、徴収法第24条は、すべての担保制度が租税の徴収の面からはできるだけ同一の取扱いを受けることが望ましいとの観点に立った上で、譲渡担保財産が譲渡担保権者に移転していることを考慮して、その譲渡担保権の設定が国税の法定納期限等後に行われ、かつ、滞納者の財産から国税を徴収することができないときに限って、譲渡担保権者を第二次納税義務者とみなして、その譲渡担保財産に対する滞納処分を行うことによって、その換価代金等から国税を優先的に徴収することができることとしている。
B 徴収法第129条第1項により配当を受けることができる債権等
 配当処分とは、既に確定した租税債権が納期限までに完納されない場合において、滞納処分の最終段階として、換価代金等について国税その他の債権を基に配当すべき金銭を決定することをいい、この配当を受けることができる債権の範囲は、徴収法第129条第1項各号に列挙するものに限られており、それ以外の債権には配当されないこととされている。
 そして、換価代金等が国税その他の債権を上回る場合には、配当後のその残余の金銭を滞納者に交付するものとし(徴収法第129条第3項)、不足する場合は、法令の定めに従い配当すべき順位及び金額を定めて配当しなければならないとされている(同条第5項)。
(ロ) これを本件についてみると、次のとおりである。
 請求人は、上記イの「請求人」欄のとおり、徴収法第24条第8項の規定等を根拠に、譲渡担保権の被担保債権が換価代金等の配当の対象にならないとの解釈は誤りである旨主張する。
 しかしながら、徴収法第24条の立法趣旨は、上記(イ)のAのとおりであり、同条は滞納国税と譲渡担保権の優劣関係を定めているにすぎないから、本件譲渡担保権が本件滞納国税に優先するとしても、当然には請求人に換価代金等の配当を受ける資格が与えられるものではない。また、上記(イ)のBのとおり、徴収法第129条第1項の規定は、配当を受けることができる債権の範囲を限定列挙したものと解されるから、本件譲渡担保権の被担保債権は同項に規定する債権には該当しない。
 したがって、請求人の主張には理由がない。

(4) 本件各配当処分について

 原処分庁は、本件譲渡担保設定契約を無効と判断し、本件差押処分をしているが、上記(1)のロの(ハ)のとおり、本件譲渡担保設定契約は有効であり、本件酒類は請求人に帰属するので、本件差押処分は、財産の帰属認定を誤った違法な差押えと認められる。そうすると、上記(3)のロの(ロ)のとおり、本件譲渡担保権の被担保債権は、配当を受けることができる債権には該当しないものの、上記(2)のロのとおり、本件差押処分の違法性が本件各配当処分に承継され、本件滞納国税は配当を受ける資格を有しないので、原処分庁に配当された部分の金額のうち、本件配当処分4の配当順位1の金額以外の金額は、残余金として請求人に交付すべきである。
 そして、配当処分は、配当計算書に基づいて換価代金を配当する一つの処分であり不可分な処分と解されることからすれば、本件各配当処分は、その全部を取り消すべきである。

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