別紙2

争点に対する当事者双方の主張

請求人 原処分庁
 本件各更正処分及び本件各賦課決定処分は、次の理由により違法である。
1 争点1について
(1) 白蟻防除施工に係る賠償責任保険契約(以下、別紙2において「本件保険契約」という。)は、次のとおり、生産物賠償責任保険契約(以下、別紙2において「生産物保険契約」という。)と同様であるところ、生産物保険契約はかかるパンフレット等に損金処理ができる旨記載されていることから、本件保険料は支払時に全額を損金の額に算入することができる。
イ 保険期間
 本件保険契約の保険期間は、生産物保険契約と同様に、7月1日午後4時を基点とする1年間である。
ロ 保険料の計算方法
 本件保険契約に係る保険料(以下、別紙2において「本件保険料」という。)の計算は、1年間の特約期間中の施工面積(施工面積は請求人の売上高に連動する。)とてん補限度額によって計算され、生産物保険契約に係る保険料も1年間の保険期間中の保険対象物の一件ごとの数量に売上単価を乗じて計算された売上高によって計算される。
ハ 掛け捨て保険であること
 本件保険契約では定期検査を行わなかった場合、当該定期検査期間満了時に失効するところ、この場合、本件保険契約に係る保険会社(以下、別紙2において「本件保険会社」という。)は保険料を一切返還しないことから、本件保険契約は、生産物保険契約と同様に掛け捨て保険契約である。なお、本件保険会社の担当者から、1顧客に保証している以上、保証を打ち切ること、つまり解約など想定していないこと及び2未経過保険料の返還の事態が生じる可能性があるのは、顧客が破綻等した場合であり、一般的な理由による保証の打切りや保険の解約では、未経過保険料の返還はないことを確認していることからも、本件保険契約は掛け捨て保険である。
ニ 保険対象
 生産物保険契約の保険対象は、「生産物」若しくは「仕事」であり、本件保険契約も生産物保険契約における「仕事」と同様の白蟻防除施工である。
ホ 保険としての性質
 生産物保険契約は過去の「仕事」についても保証するが、解約後は保証されないところ、製造物責任法により10年間は責任を免れないのに対し、本件保険契約は保険期間の「仕事」(施工)のみを対象とし、解約後も5年の保証期間は保証される。生産物保険契約が契約前の仕事を対象とするのに対して、本件保険契約が契約時の仕事のみを対象とするかに違いがあるように思われるが、本件保険契約も生産物保険契約も「損害責任保険普通約款」を基本に設計され、共に掛け捨てで保険期間が1年契約であり、賠償請求を受けた時点から考えると本件保険契約は過去5年間保証し、生産物保険契約は過去10年間に渡り保証するものであるので、経済実態としての保険の性質は全く同じものである。
 本件各更正処分及び本件各賦課決定処分は、次の理由により適法である。
1 争点1について
(1) 本件保険契約は、白蟻防除施工後5年間の保証期間に係るものであるから、本件保険料は、本件各事業年度において、保証期間の経過に応じて損金の額に算入すべきであり、未経過期間に対応する保険料を損金の額に算入することはできない。
 なお、請求人は、本件保険契約と生産物保険契約とが同一であることを理由として、本件保険料は支払時に全額を損金の額に算入できる旨主張するが、本件保険契約は、次のとおり、掛け捨ての保険契約であるとは認められず、また、本件保険契約と生産物保険契約とではその保証期間が異なるものであり、そして、その性質も異なるものであって、更には、その保険料の計算方法が同様であるものとは認められないことから、請求人の主張には理由がない。
イ 保険期間
 本件保険契約は、請求人が顧客に交付する保証書に記載された保証期間である5年間にわたり保証するものであり、当該期間を保証期間とする保険契約であるものと認められる。
ロ 保険料の計算方法
 本件保険料については、施工面積と5年間の保証期間を基礎とした基本料金に補償限度額と事故発生率を加味して料金が設定されており、各特約書において、建面積及びてん補限度額に応じて1保証ごとに5年間の保証期間に係る保険料が定められていることから、これが、対象物の数量に応じて計算される生産物保険契約における保険料の計算方法と同様のものではない。
ハ 掛け捨て保険ではないこと
 本件保険契約は、かしなく有効に成立した保険契約が契約内容に反する事実がない状況で、契約当事者双方の合意の上で解約により存在しなくなった場合でも、保証は5年間であるので、5年間の保証期間内は損害の保証をすることとなり、その後、保証も打ち切ることとなった場合には、約定がないことから調整は必要であると思われるが、保証の未経過期間に対応する保険料の返還が生じることとなると考えられる旨の本件保険会社の支社長等の申述から、本件保険契約は単なる掛け捨ての保険契約であるとは認められない。
 また、そもそも掛け捨て保険であることをもって、直ちに本件保険料全額を支出時の損金の額に算入することができる理由とはならない。
ニ 保険の対象及び性質
 生産物保険契約は、過去の製造物等に対して保証をしているものではなく、その保険期間に応じた被保険者の製造物責任法に基づく賠償責任により発生した損害を保証するものである。これに対して、本件保険契約は、契約者及び被保険者である請求人が施工工事した対象物を特定し、その対象物に白蟻が再発した場合の事故に対して保証するものである。したがって、本件保険契約と生産物保険契約の性質は大きく異なっており、保険の性質が全く同じものとは認められない。
 なお、仮に、生産物保険契約に係る保険料が、請求人が主張するように1年間の保険期間中の売上高によって計算されるものであれば、1保証ごとに保険料が定められている本件保険契約とでは、その保険料の計算方法が同様であるものとは認められない。
 また、本件保険契約は5年間を保証期間とするものであるから本件保険と生産物保険の経済実態としての保険の性質は同じものではない。
(2) 期間損益及び課税所得の適正性
 本件保険契約に関して、期間損益の適正性及び期間ごとの課税所得を考えた場合、一の期間において施工したことによる売上高に対して一の期間における保険料を計算して所得が計算され、その後の期間に当該期間に施工された物件に事故があった場合にはその保証による費用が発生するが、同額の保険金を受け取ることによって、この部分の所得は発生しない。したがって、本件保険料は保険期間における売上高に対応する原価というべきものであり、保険期間において全額を損金の額に算入することに妥当性がある。
(2) 請求人が支払う本件保険料については、その支払がなくても、白蟻防除施工に係る収入を得ることができ、その支払は自己の施工に伴うリスクを回避するためのものであることからすると、白蟻防除施工に係る収入に直接対応する費用又は売上原価と同様の性格を有するものとは認められない。
 そして、本件保険料は請求人における販売費又は営業活動に係る費用であり、本件保険料のうちその支出の日の属する事業年度終了の日においていまだ提供を受けていない役務に対応するものは前払費用に該当することから、本件保険料の全額を支出時の損金の額に算入することは妥当でない。
2 争点2について
 預託金制のゴルフ会員権を株式制のゴルフ会員権へ転換する手続において、請求人が行った譲渡損失の計上については、ゴルフ会員権に係る会員契約が継続している以上、ゴルフ会員権の包括的権利の一部である預託金請求権のみが譲渡されたとしても、資産の本質は変わらないため、資産の譲渡とはみなされないと解されていることから、現在のゴルフ会員権の解釈によると、譲渡とすることに解釈の相違があったといわざるを得ない。
 しかしながら、次の理由から、転換により取得した株式制のゴルフ会員権のうち期末に所有しているゴルフ会員権(以下、別紙2おいて「本件株式正会員権」という。)の評価損(以下、別紙2において「本件評価損」という。)を損金の額に算入することができる。
(1) 本件株式正会員権の発行会社であるY社の平成19年3月31日現在の貸借対照表によると、純資産合計は○○○○円、同時点の発行済株式総数は6,179株となっているので、1株当たりの純資産額は○○○円となる。
(2) 原処分庁の認定によると、請求人が所有している本件株式正会員権6株の取得価額は30,000千円であるから、1株当たりの取得価額は5,000千円となる。
(3) 法人税法第33条第2項及び同法施行令第68条第1項第2号ロによると、証券取引所において上場されていない有価証券については、その有価証券を発行する法人の資産状態が著しく悪化したため、その価額が著しく低下している場合には評価損の計上が認められており、これに則して判断すると、1株当たりの価額が5,000千円から○○○円に著しく低下しているといえる。
(4) ゴルフ場経営の厳しさは広く一般に知られる状況であり、1株当たりの価額が取得価額と比べ○○%の下落があることから、近い将来その価額の回復が見込まれないほど著しく低下したものと認められる。
2 争点2について
 法人税法第33条第2項に規定する資産の評価損の計上が認められる場合とは、証券取引所に上場されていない有価証券については、同法施行令第68条第1項第2号ロにおいて、その有価証券を発行する法人の資産状態が著しく悪化したため、その価額が著しく低下したことと規定されているところ、これらは単に一時的なものではなく、既に固定的であって近い将来回復する見込みのない状態にあることを要すると解すべきである。
 Y社の平成19年3月31日現在の貸借対照表から算出した1株当たりの金額が本件株式正会員権の1株当たりの取得価額を下回っていることをもって、直ちに、請求人の平成19年8月期末においてY社の資産状態が著しく悪化していたことを意味することにはならず、また、近い将来その価額の回復が見込まれないほど本件株式正会員権の価額が著しく低下したものとも認められないことから、本件において、資産の評価損を損金の額に算入することはできない。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。

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