(平22.3.2、裁決事例集No.79)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、不動産貸付業を営む審査請求人(以下「請求人」という。) の消費税及び地方消費税について、原処分庁が、請求人による駐車場の貸付けが課税資産の譲渡等に該当するなどとして決定処分等をしたのに対し、請求人が、駐車場の貸付けは消費税法別表第一(第6条関係)に掲げる土地の貸付けに該当し非課税であり、請求人は消費税法第9条《小規模事業者に係る納税義務の免除》第1項に規定する消費税を納める義務を免除される事業者に該当するとして、上記処分等の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 処分
 請求人は、平成18年1月1日から平成18年12月31日まで及び平成19年1月1日から平成19年12月31日までの各課税期間(以下、順次「平成18年課税期間」、「平成19年課税期間」といい、併せて「本件各課税期間」という。)の消費税及び地方消費税(以下、併せて「消費税等」という。)について、確定申告をしていなかったところ、原処分庁は、平成21年3月13日付で、別表1の「決定処分及び賦課決定処分」欄のとおり、本件各課税期間の消費税等の各決定処分(以下「本件各決定処分」という。) 及び無申告加算税の各賦課決定処分をした。
ロ 不服申立て
 請求人は、平成21年5月7日に、上記イの各処分を不服として異議申立てをしたところ、異議審理庁が同年7月7日付で棄却の異議決定をしたので、同年8月5日に審査請求をした。

(3) 関係法令等

イ 消費税法
(イ) 第2条《定義》第1項第8号は、資産の譲渡等とは、事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供をいう旨規定し、第9号は、課税資産の譲渡等とは、資産の譲渡等のうち、消費税法第6条《非課税》第1項の規定により消費税を課さないこととされるもの以外のものをいう旨規定している。
(ロ) 第4条《課税の対象》第1項は、国内において事業者が行った資産の譲渡等には、この法律により、消費税を課する旨規定している。
(ハ) 第6条第1項は、国内において行われる資産の譲渡等のうち、消費税法別表第一に掲げるものには、消費税を課さない旨規定しており(以下、同項に規定する消費税を課さないこととされる資産の譲渡等を「非課税取引」という。)、同表第1号は、土地の譲渡及び貸付け(一時的に使用させる場合その他の政令で定める場合を除く。)を規定している。
ロ 消費税法施行令
 第8条《土地の貸付けから除外される場合》は、消費税法別表第一第1号に規定する政令で定める場合は、同号に規定する土地の貸付けに係る期間が1月に満たない場合及び駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合とする旨規定している。
ハ 消費税法基本通達
 6−1−5《土地付建物等の貸付け》の(注)1は、事業者が駐車場又は駐輪場として土地を利用させた場合において、その土地につき駐車場又は駐輪場としての用途に応じる地面の整備又はフェンス、区画、建物の設置等をしていないとき(駐車又は駐輪に係る車両又は自転車の管理をしている場合を除く。)は、その土地の使用は、土地の貸付けに含まれる旨定めている。

(4) 基礎事実

イ 請求人が賃貸している各駐車場
 請求人が平成16年以降賃貸している各駐車場は、別表2のとおりである(以下、別表2の順号1の駐車場を「Q町第1駐車場」、同順号2の駐車場を「Q町第2駐車場」、同順号3の駐車場を「Q町第3駐車場」といい、これらの駐車場を併せて「本件Q町各駐車場」という。そして、同順号4の駐車場を「R町駐車場」、同順号5の駐車場を「S町駐車場」、同順号6の駐車場を「T町駐車場」、同順号7の駐車場を「U町駐車場」といい、これらの駐車場と本件Q町各駐車場を併せて「本件各駐車場」という。)。
ロ 請求人の不動産収入の内訳
 請求人の平成16年1月1日から平成16年12月31日まで及び平成17年1月1日から平成17年12月31日までの各課税期間(以下、順次「平成16年課税期間」、「平成17年課税期間」という。)並びに本件各課税期間の不動産収入の内訳は、別表3のとおりである。
 なお、別表3の「貸店舗・貸ガレージ・貸倉庫・貸事務所収入」欄の各金額は、課税資産の譲渡等の対価の額であり、「貸住宅収入」欄及び「貸地収入」欄の各金額は、非課税取引の対価の額である。

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2 争点

 本件Q町各駐車場の貸付けは、非課税取引か否か。

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3 主張

原処分庁 請求人
 以下の理由から、本件Q町各駐車場の貸付けは、消費税法施行令第8条に規定する駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合に当たるから、消費税法別表第一第1号に規定する土地の貸付けから除外され、非課税取引には該当せず、課税資産の譲渡等に該当する。
(1) 本件Q町各駐車場は、砂利を敷くことにより地面の整備がされ、また、ロープが地面に敷設され、各区画が区分されている。
(2) 本件Q町各駐車場の賃貸借契約書等において、その使用目的が駐車場とされている。
(3) 請求人は、本件Q町各駐車場の各賃借人の駐車位置を見取図で管理している。
(4) 本件Q町各駐車場において、車両の駐車以外の利用が確認されなかった。
 以下の理由から、本件Q町各駐車場の貸付けは、消費税法施行令第8条に規定する駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合に当たらないから、消費税法別表第一第1号に規定する土地の貸付けに該当し、非課税取引に該当する。
(1) 消費税法施行令第8条に規定する駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合とは、その貸付けの主体となるものが施設であって、土地がそれに伴って貸付けされる場合のことであり、飽くまでも施設を伴った駐車場を指すものと解釈される。
(2) 本件Q町各駐車場は、利用者の利便を考えロープ等で区画を区分している程度であり、一部水溜りができないように土や砂利を敷いてある箇所があるものの、アスファルト舗装をしておらず、また、料金徴収設備、建物及び屋根などもなく、一般常識的に施設といわれるものは一切ない。

4 判断

(1) 法令解釈

イ 消費税の性格
 消費税は、生産流通過程を経て事業者から消費者に提供される財貨・サービスの流れに着目して、事業者の売上げを課税の対象とすることにより、間接的に消費に税負担を求めるもので、消費税法は、国内において事業者が行った資産の譲渡等には、消費税を課することを規定し、原則として国内におけるすべての資産の譲渡等を課税対象の取引とするが、他方、本来課税の対象としてなじまないものや政策上課税することが適当でないものを非課税取引としている。
ロ 消費税法施行令第8条の趣旨
 消費税法第6条第1項は「国内において行われる資産の譲渡等のうち、別表第一に掲げるものには、消費税を課さない。」とし、同表第1号で「土地の貸付け(一時的に使用させる場合その他の政令で定める場合を除く。)」と規定して、土地の貸付けを原則非課税取引としつつ、消費税法施行令第8条で消費税法別表第一第1号に規定する政令で定める場合として、「駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合」を規定して、この場合を課税対象の取引としているが、これは、土地の貸付けが消費としてとらえることになじまない性質のものであっても、「駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合」には、土地そのものというよりも施設として貸し付けるものであり、そのような土地の使用の態様に消費としての性格を認めた趣旨によるものと解される。
ハ 消費税法基本通達6−1−5の(注)1の定めの相当性
 消費税法基本通達6−1−5の(注)1は、「事業者が駐車場として土地を利用させた場合において、その土地につき駐車場としての用途に応じる地面の整備又はフェンス、区画、建物の設置等をしていないときは、その土地の使用は、土地の貸付けに含まれる。」と定めており、この取扱いは、上記ロの趣旨に沿って、駐車場として土地を利用させた場合に、それが土地そのものの貸付けに該当するのか施設の利用として土地が使用される場合に該当するのかの判断基準を示したものといえ、当審判所においても相当であると認められる。

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(2) 認定事実

 請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
イ 本件各駐車場の状況
(イ) 本件各駐車場の状況は、平成16年以降少なくとも平成19年末までは、別表4のとおりであった。
(ロ) Q町第1駐車場のうち、A社に貸し付けている9台分の駐車スペース(以下「A社貸付部分」という。)の最奥部分には、小型の焼却炉が置かれていた。
(ハ) 請求人が原処分庁に提出した平成21年1月20日付の「申述書」と題する書面によれば、本件Q町各駐車場には、賃借人から水溜りができるとの苦情もあって、その部分に砂利を入れられたものと認められる。
ロ 本件各駐車場の賃貸借契約
 請求人と本件各駐車場の各賃借人との間の各賃貸借契約(以下「本件各契約」という。)に係る駐車場賃貸借契約書又は駐車場賃貸借念書によれば、指定された区画番号の駐車場所を駐車場として賃貸借することが合意されたことが認められる。

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(3) 法令等の適用

 前記1の(4)及び上記(2)の各事実を上記(1)に照らして判断すると、次のとおりである。
 上記(2)のロのとおり、請求人は、本件各契約において、各賃借人に対して区画を指定した上で、車両を駐車させるという目的に限定して本件各駐車場を貸し付けているところ、同イのとおり、本件各駐車場には砂利やアスファルトを敷き、場所によってはロープや白線、区画番号表示による区画を設けたり、車止めブロックを設置していることからすれば、請求人は、本件各駐車場につき、駐車場としての用途に応じる地面の整備や区画の設置等をしているものと認められ、本件各駐車場の貸付けは、駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合に該当する。
 なお、A社貸付部分については、隣接するガソリンスタンドの業務に利用するため、上記(2)のイのとおり、ロープ等の敷設による各区画の区分や車止めブロックがなく、最奥部分には焼却炉が設置されており、また、車両の駐車のほかガソリンスタンドへのタンクローリーの出入りにも使用されていることが窺われる。
 しかしながら、A社貸付部分についても、請求人は、車両を駐車させる目的で貸し付けた上、上記(2)のイの(イ)のとおり砂利を敷いており、同(ハ)によれば駐車場としての用途に応じる地面の整備をしてきたものと認められ、駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合に該当するというべきである。
 以上のとおり、本件各駐車場の貸付けは、そのすべてが消費税法施行令第8条に規定する駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合に該当するから、消費税法別表第一第1号に規定する土地の貸付けから除外され、非課税取引には該当せず、課税資産の譲渡等に該当する。

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(4) 請求人の主張の当否

 請求人は、前記3の「請求人」欄のとおり、消費税法施行令第8条に規定する駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合とは、施設を伴った駐車場を指すものと解され、本件Q町各駐車場は、一般常識的に施設といわれるものは一切ない旨主張する。
 確かに、別表4のとおり、本件Q町各駐車場には、請求人が主張するようなアスファルト舗装、料金徴収設備、建物及び屋根などの施設は一切ないが、上記(1)のロ及びハのとおり、消費税法施行令第8条の趣旨及び消費税法基本通達6−1−5の(注)1の定めから、駐車場施設として土地が使用される場合に、請求人が主張するような施設の利用も伴ってはじめて課税対象の取引としたものとまでは解されず、上記(3)のとおり、請求人は、車両を駐車させるという目的で本件各駐車場を貸し付け、少なくとも砂利を敷くなどして駐車場としての用途に応じる地面の整備をしていることからすれば、本件Q町各駐車場も含め本件各駐車場の貸付けは、駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合に該当する。
したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。

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(5) 本件各決定処分

イ 本件各課税期間における課税事業者該当性
 上記(3)のとおり、本件各駐車場の貸付けはすべて課税資産の譲渡等に該当するから、請求人の本件各課税期間に係る基準期間である平成16年課税期間及び平成17年課税期間の課税売上高は、それぞれ別表3の「本件各駐車場収入」欄の金額に、前記1の(4)のロのとおり、課税資産の譲渡等の対価の額である「貸店舗・貸ガレージ・貸倉庫・貸事務所収入」欄の金額を加えた額○○○○円及び○○○○円となり、これらの金額はいずれも10,000,000円を超えているから、請求人は、本件各課税期間において消費税法第9条第1項に規定する消費税を納める義務を免除される事業者には該当せず、課税事業者に該当することとなる。
ロ 本件各決定処分の適法性
 上記イのとおり、請求人は、本件各課税期間において課税事業者に該当するので、本件各課税期間の納付すべき消費税等の額について改めて算定すると、別表5の 「審判所認定額」欄の「納付すべき消費税等の額」欄の金額となり、いずれも本件各決定処分の額を上回ることとなる。
 したがって、本件各決定処分はいずれも適法である。

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(6) その他

 無申告加算税の各賦課決定処分を含め、原処分のその他の部分については、当審判所の調査によってもこれを不相当とする理由は認められない。

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