(平22.6.22、裁決事例集No.79)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、原処分庁が、特殊浴場を営むF社、G社及びH社(以下、3社を併せて「本件各滞納法人」という。)の各滞納国税について、審査請求人(以下「請求人」という。)に対し、国税徴収法(以下「徴収法」という。)第37条《共同的な事業者の第二次納税義務》第2号に基づく第二次納税義務の各納付告知処分を行ったのに対し、請求人が、自分は本件各滞納法人の株主又は社員ではないなどとして、当該各処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 原処分庁は、平成14年2月21日から平成20年11月25日までの間、本件各滞納法人が納付すべき別表1ないし3の各滞納国税について、国税通則法(以下「通則法」という。)第43条《国税の徴収の所轄庁》第3項の規定に基づき、J税務署長から徴収の引継ぎを受けた。
ロ 原処分庁は、平成21年2月10日付で、請求人に対し、本件各滞納法人の別表1ないし3の各滞納国税について、別紙不動産目録記載の各不動産(以下「本件不動産」という。)を限度として納付通知書による第二次納税義務の納付告知処分(以下「本件各告知処分」という。)を行った。
ハ 請求人は、平成21年3月25日、本件各告知処分に不服があるとして、それぞれ異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年6月17日付でいずれも棄却の異議決定をした。
ニ 請求人は、平成21年7月8日、異議決定を経た後の本件各告知処分に不服があるとして、それぞれ審査請求をした。そこで、これらの審査請求について併合して審理する。

(3) 関係法令

イ 徴収法第32条《第二次納税義務の通則》第1項は、国税局長(徴収法第184条《国税局長が徴収する場合の読替規定》の規定による読替え後のもの。以下同じ。)は、納税者の国税を第二次納税義務者から徴収しようとするときは、その者に対し、政令で定めるところにより、徴収しようとする金額、納付の期限その他必要な事項を記載した納付通知書により告知しなければならない旨規定している。
ロ 徴収法第37条第2号は、納税者が同族会社である場合、その判定の基礎となった株主又は社員が納税者の事業の遂行に欠くことのできない重要な財産を有し、かつ、当該財産に関して生ずる所得が納税者の所得となっている場合において、その納税者がその供されている事業に係る国税を滞納し、その国税につき滞納処分を執行してもなおその徴収すべき額に不足すると認められるときは、当該財産を限度として、その滞納に係る国税の第二次納税義務を負う旨規定している。

(4) 基礎事実

イ 関係者等
(イ) 請求人
 請求人は、本件不動産の登記簿上の所有者であり、F社の監査役及びH社の取締役として登記されているほか、平成13年10月1日から平成14年5月9日まで、G社の取締役として登記されていた。
(ロ) E
 Eは、請求人の夫であり、昭和55年ないし昭和60年ころから、F社に従業員として勤務し、平成3、4年ころ、同社が本件不動産で営業している店舗「K」の店長となった者である。
 なお、同人は、平成12年に入院し、約1年位で回復したが、後遺症を負った。
(ハ) F社
 F社は、昭和55年8月○日、共同浴場の経営等を目的として設立された株式会社であり、本件不動産において「K」及び「L」の店名で、特殊浴場を営業している。
 なお、F社の事業年度は、6月1日から翌年5月31日までである。
(ニ) G社
 G社は、昭和55年9月○日、特殊浴場の経営等を目的として設立された有限会社であり、本件不動産において「M」の店名で、特殊浴場を営業している。
 なお、G社の事業年度は、8月1日から翌年7月31日までである。
(ホ) H社
 H社は、昭和55年9月○日、特殊浴場の経営等を目的として設立された有限会社であり、本件不動産において「N」の店名で、特殊浴場を営業している。
 なお、H社の事業年度は、7月1日から翌年6月30日までである。
(ヘ) Q
 Qは、遅くとも平成7年から、F社の代表取締役として登記されている者である。
(ト) R
 Rは、平成14年から、G社の取締役として登記されている者である。
 なお、G社が所轄警察署に提出したとする平成18年7月1日付定款の写しには、同人が、同社の出資3,000口すべてを保有する旨記載されている。
(チ) S
 Sは、平成20年からH社の取締役として登記されている者である。
ロ 本件不動産
(イ) 本件不動産は、昭和55年9月30日に新築され、T社が所有していた建物である。
(ロ) 本件不動産は、昭和56年2月10日、T社名義で所有権保存登記がされた後、平成10年9月24日、同日売買を原因として、T社から請求人に所有権移転登記が経由されている。
ハ U銀行V支店の請求人及びE名義の各預金について、以下のとおり入出金が行われている。
(イ) 平成10年8月28日、請求人名義の普通預金口座から、7,900,000円が出金された。
(ロ) 平成10年9月1日、請求人名義の定期預金10,000,000円が解約され、同日、E名義の普通預金口座に10,000,000円が入金された。
ニ 請求人は、平成10年12月○日、W社を設立して同社の取締役に就任し、同社との間で本件不動産の賃貸借契約を締結した上、同社と本件各滞納法人との間で、本件不動産の一部について、転貸借契約を締結している。
ホ 本件各滞納法人の法人税の申告状況等
 本件各滞納法人が、平成11年から平成20年までにJ税務署長に提出した法人税申告書に添付された別表二「同族会社等の判定に関する明細書」(以下、この「同族会社等の判定に関する明細書」を「別表二」という。)の記載内容は、要旨次のとおりである。
(イ) F社
A 平成10年6月1日から平成11年5月31日までの事業年度の法人税申告書の別表二には、Eが同社の株式を100%保有している旨記載されている。
B 平成12年6月1日から平成18年5月31日までの各事業年度の法人税申告書には、判定基準となる株主等の氏名の記載はない。
C 平成18年6月1日から平成20年5月31日までの各事業年度の法人税申告書の別表二には、請求人が同社の株式を100%保有している旨記載されている。
(ロ) G社
A 平成10年8月1日から平成11年7月31日までの事業年度の法人税申告書の別表二には、出資金額3,000,000円のうち、Xが500,000円、Eが2,500,000円を出資している旨記載されている。
B 平成11年8月1日から平成18年7月31日までの各事業年度の法人税申告書には、判定基準となる株主等の氏名の記載はない。
C 平成18年8月1日から平成20年7月31日までの各事業年度の法人税申告書の別表二には、請求人が同社の株式を100%保有している旨記載されている。
(ハ) H社
A 平成10年7月1日から平成11年6月30日までの事業年度の法人税申告書の別表二には、Yが出資金額5,000,000円全額を出資している旨記載されている。
B 平成11年7月1日から平成18年6月30日までの各事業年度の法人税申告書には、判定基準となる株主等の氏名の記載はない。
C 平成18年7月1日から平成20年6月30日までの各事業年度の法人税申告書の別表二には、請求人が同社の株式を100%保有している旨記載されている。
ヘ 本件各滞納法人は、いずれも株主名簿又は社員名簿を作成しておらず、株券等も発行していない。
ト J税務署所属の調査担当職員は、平成17年から平成18年にかけて、本件各滞納法人に対する税務調査を行い、本件各滞納法人が収入を除外し、その一部を経費の支払に充て、残額をすべてEに渡していたことを確認した。その際、本件各滞納法人の当時の関与税理士であるZ及び事務担当者aは、当該調査担当職員に対し、Eが本件各滞納法人の100%株主であり、実質オーナーであると説明した。
 その後、本件各滞納法人は、「実質経営者 E」の署名・押印のある、収入除外の事実を認める旨の申述書を提出し、収入除外分のうち経費の支払に充てた部分以外は、Eに対する賞与に当たるとして、修正申告書を提出した。

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2 争点

本件の争点は、次の2点である。
争点1 請求人は、別表1ないし3の各滞納国税に係る期間、本件各滞納法人の同族会社の判定の基礎となる株主又は社員であったといえるか否か。
争点2 請求人が同族会社の判定の基礎となる株主又は社員に当たる場合、本件不動産は、「重要な財産」に当たるか否か。

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3 主張

(1) 争点1について

イ 原処分庁
 同族会社の判定の基礎となる株主又は社員の判定に当たっては、株主名簿、社員名簿の記載等にかかわらず、役員・事業主と本件各滞納法人の間において、閉鎖的、家族的な事業が行われており、役員等と会社の利害対立が見られず、役員等の都合により法人が操作されることが容易であるなど、その特殊関係の有無を重視すべきであり、以下の事実によれば、請求人が本件各滞納法人の株主又は社員であるといえる。
(イ) 請求人は、本件各滞納法人の役員に就任している。
(ロ) 請求人及びEは、原処分庁に対し、平成13年1月以降、本件各滞納法人の実質的なオーナー(株主又は社員)は請求人であると申述している。
(ハ) 本件各滞納法人は、J税務署長に提出した平成19年及び平成20年中に終了した各事業年度に係る法人税申告書の別表二に、請求人が100%株主であると記載している。
(ニ) 請求人及びEは、原処分庁に対し、店舗不動産の所有者が株主又は社員であると申述している。本件各滞納法人が営業している○○地区の同業他社にも、株主が店舗不動産を所有している場合及び株主が代表取締役として支配する別法人が店舗不動産を所有している場合が確認できる。
(ホ) 平成10年8月28日、請求人名義の普通預金から7,900,000円が出金され、また、同年9月1日、請求人名義定期預金10,000,000円が解約され、同日、Eの普通預金口座に振り替えられたと推察されるところ、店舗不動産の所有者と株主又は社員との間に密接な関係があることからすれば、本件不動産の売買契約時に近接した時期に資金移動が行われたことは、株式又は出資の取得のための資金移動と見るのが自然である。
ロ 請求人
(イ) F社及びH社は、Eが全株式又は出資を所有する一人会社であり、また、G社は、Eが全出資を取得した後、現在の取締役であるRに当該出資のすべてを譲り渡しており、遅くとも平成18年7月1日以降は同人の一人会社である。よって、請求人は、本件各滞納法人の株主又は社員ではない。
(ロ) 原処分庁は、請求人が本件各滞納法人の役員に就任している事実を捕らえて、請求人が株主又は社員であると判断しているが、株主又は社員でなければ役員に就任できないという法令上の制約はない。
(ハ) 本件各滞納法人の平成19年及び平成20年中に終了した各事業年度に係る法人税申告書の別表二には、同族会社の判定基準となる株主又は社員として請求人の氏名が記載されているが、これは、本件各滞納法人の税務代理人の事務担当者であるaが、請求人に確認することなく、推測で記載したものにすぎず、当該書類をもって請求人が株主又は社員であると判断するのは違法・不当である。
(ニ) 同業者の多くに、株主又は株主が支配する別法人が店舗不動産を所有する形態が見られるとしても、このような形態を採らなければ特殊浴場の許可が受けられないものでもなく、営業許可が取り消されるものでもないから、原処分庁の主張には論理の飛躍がある。
(ホ) 原処分庁が主張する資金移動は、本件不動産の売買のための資金移動であり、株式取得のための資金移動ではない。

(2) 争点2について

イ 原処分庁
 徴収法第37条にいう「事業の遂行に欠くことができない重要な財産」とは、当該財産を特殊関係者が所有していない場合には、その事業の遂行が不可能になるか、又は不可能になるおそれがあると認められるところ、本件各滞納法人は、店舗として本件不動産を使用しており、これ以外に経営する店舗はなく、本件各滞納法人の売上げはすべて本件不動産に係るものである。よって、本件不動産は、上記「事業の遂行に欠くことができない重要な財産」に当たる。
ロ 請求人
 本件各滞納法人は、請求人が本件不動産を取得する以前から、本件不動産を第三者から賃借して事業を遂行できたのであるから、本件不動産は、徴収法第37条にいう「事業の遂行に欠くことができない重要な財産」に当たらない。

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4 判断

(1) 争点1について

イ 法令解釈
 徴収法第37条第2号によれば、第二次納税義務の主体となるのは、納税者が法人税法第2条第10号の同族会社である場合におけるその判定の基礎となった「株主又は社員」であり、同条第14号によれば、同条第10号の「株主等」とは、株式会社の株主又はその他法人の出資者をいうとされているから、徴収法第37条第2号の「株主又は社員」とは、民法及び会社法にいう株主又は社員と同義であり、会社の出資者を指すものと解される。
 したがって、ある者が、ある会社の「株主又は社員」であるといえるためには、その会社の設立又は増資の際に出資をしたか、他の株主又は社員から出資を譲り受けたといえることが必要である。
 もっとも、株主(社員)名簿への記載は、会社に対する対抗要件にすぎないから、株主(社員)名簿に記載がなくても、会社に対して実際に権利を行使できる場合には、そのような実質的な出資者も「株主又は社員」に該当すると解すべきである。
 そこで、以下、原処分関係資料、請求人提出資料及び当審判所の調査の結果により、請求人が本件各滞納法人の実質的な出資者であるといえるか否かについて検討する。
ロ 関係証拠等
(イ) 定款の記載等
A F社がJ税務署長に提出した定款の写しには、同社は、昭和55年8月○日、共同浴場の経営及びこれに付帯する一切の事業を目的として、資本金の額1,000,000円、発行する株式の総数8,000株、発行済株式の総数2,000株で設立された法人であり、設立時における発行済株式数2,000株のうち、1,993株をbが、残り7株をdらがそれぞれ1株ずつ保有した旨記載されている。
 F社の資本金の額は、平成7年8月12日付で4,000,000円(発行する株式の総数8,000株)、平成7年10月8日付で9,000,000円(発行する株式の総数18,000株)、平成7年10月26日付で10,000,000円(発行する株式の総数20,000株)に増資され現在に至っている。
B もっとも、bの妻であるdは、原処分庁職員に対し、要旨次のとおり申述している。
 F社という会社は全く知らず、自分が株主になっていることも知らなかった。夫が私の名前を使っただけだと思うが、夫は平成5年に死亡しており、確認のしようがない。夫の相続財産にF社の株式等はなかった。
C G社がJ税務署長に提出した定款の写しには、同社は、昭和55年9月○日、特殊浴場の経営及びこれに付帯する一切の事業を目的として、資本金の額500,000円で設立された法人であり、設立時における総出資口数500口のうち、300口をeが、200口をfが出資した旨記載されている。
 G社の資本金の額は、平成7年9月12日付で3,000,000円に増資され現在に至っている。
 なお、上記1の(4)のイの(ト)のとおり、G社の平成18年7月1日付定款の写しには、Rが同社の出資3,000口すべてを出資している旨の記載がある。
D H社がJ税務署長に提出した法人設立届出書及び法人設立時の事業概況書には、同社は、昭和55年9月○日、特殊浴場の経営及びこれに付帯する一切の事業を目的として、資本金の額5,000,000円で設立された法人であり、設立時における総出資額のうち、gが1,000,000円を、hが4,000,000円を出資した旨記載されている。
(ロ) 請求人の原処分庁職員に対する申述
 請求人は、原処分庁職員に対し、要旨次のとおり申述している。
A 平成20年10月7日付聴取書
 本件不動産について、前所有者であるT社の経営が行き詰まり、物件を手放さなければならなくなったことから、転貸人のj社、債権者のk銀行及び夫のEが話し合い、私名義で物件を引き受けることに決めた。
 (本件各滞納法人の役員又は株主若しくは出資者となっていないか、との問いに対し)私は、F社の監査役になっていることは知っているが、そのほかのことは分からない。監査役も名ばかりのことであり、詳しい内容は把握していない。
 (本件各滞納法人を経営していないか、との問いに対し)一切、そのようなことはない。
 (本件不動産の購入資金はどのように調達したのか、との問いに対し)当時、表立ってやり取りしていたのはEであるから、Eに確認してほしい。
B 平成20年11月20日付聴取書
 本件不動産の購入代金は、各店舗からの受取家賃から、毎月5,000,000円ずつ24回払でk銀行に支払った。k銀行のT社に対する抵当権が付いていたので、購入代金に代えて借入金を弁済した形である。
 (F社の平成19年及び平成20年中に終了した各事業年度に係る法人税申告書の別表二に、請求人が同社の株式のすべてを保有していると記載されているが、間違いないか、との問いに対し)そのように申告しているのだから間違いない。
 (いつから株主になっているのか、との問いに対し)会社を始めて以来、だれが株主かという認識はしてこなかった。よって、いつから株主かと聞かれても答えようがない。
 (以前は、Eが株主であったと言われているが、株主としての認識はあったのか、との問いに対し)多分、そういう認識はなかったと思う。以前、店舗は自分のものだと言っていたので、税理士もそのように申告したのだと思う。
 (いつからF社の株主が請求人に代わったと思うか、との再度の問いに対し)実質的には平成13年の初めころだと思う。
 (なぜそう思うか、との問いに対し)当時、本件不動産のローンの支払が終わり、名実ともに私のものとなったからである。また、平成12年2月にEが倒れ、少なくとも家賃等の関係で金銭面の管理をするのは自分しかいなくなった。事実上はその時だと思う。また、風俗営業店は、会社とともに店舗自体に営業許可が与えられており、不動産の所有者がオーナーであることが自然だからである。
 (平成19年5月以降、株主として請求人が申告書に出たのはなぜか、との問いに対し)詳しい理由はよく分からない。F社のコンサルティングを依頼しているaの指導だと思う。平成18年2月のJ税務署の調査で、役員でもないEに対する賞与を認定され、課税されたことから、現状と形式を同一にしようと考えたからだと思う。
 (では、具体的には平成18年2月から請求人が名実ともにF社の株主に なったと理解してよいか、との問いに対し)そのように言われればそのとおりだと思う。G社及びH社も全く同様であると理解していただいてよい。
C 平成20年12月17日付聴取書
 本件不動産は、私名義で登記し、ローンを支払い、賃貸借契約を結び、賃料収入を申告しているから、私の不動産であることは間違いない。しかし、私が受け取るべき賃料は、W社の口座にSから振り込まれるもの以外は直接もらったことがない。私が決められた賃料を受け取るべきであるが、その元手となる各店舗の売上現金は、すべて夫であるEの手に渡ってしまうことから、私の元へ届くことはないというのが現実である。
 (F社の平成19年及び平成20年中に終了した各事業年度に係る法人税申告書の別表二に、請求人が同社の株式のすべてを保有している旨の記載があるが、何か心当たりはないか、との問いに対し)具体的にどのような書類を作ったのか、私が株主に就任したかなどの認識はない。ただ、平成17年の暮れにF社が税務調査を受け、何らかの指導を受けたのか、対外的に株主として記載をしなければならなくなったか等の理由で、私を株主とする申告書を提出したのではないかと思う。G社及びH社も同様である。
 株主又は出資者としての認識はないので、いつから株主なのかと聞かれても、答えようがない。Eもそのような認識はないと思う。
 (改めて、なぜ、本件各滞納法人の株主又は出資者を請求人とすることにしたのか、との問いに対し)実質的なことを考えてそうしたものだと思う。平成12年2月にEが倒れ、少なくとも家賃等の関係で金銭面の管理をするのは私しかいなくなった。平成13年1月には本件不動産のローンも終わり、名実ともに私のものになった。また、風俗営業店は、会社とともに店舗自体に営業許可が与えられているから、不動産の所有者が店舗のオーナー、ひいては法人のオーナーであることが自然な流れなのではないかと思う。
 株式等の譲渡契約書、株主総会や取締役会の決議等は存在しない。だれが株主や出資者であるかなどということはあまり考えたことはなかった。
(ハ) 請求人の当審判所に対する答述
 請求人は、当審判所に対し、要旨次のとおり答述した。
 (本件各滞納法人での請求人の立場は、との問いに対し)立場はない。各店舗の経営には関与していないし、関与する立場でもない。各店舗に店長がおり、Eが実質的に各店舗を支配管理している。
 (本件各滞納法人が経営する店舗の仕事をやっていたか、との問いに対し)Eが平成12年に倒れ、入院・リハビリ中に、購入した本件不動産及び敷地の返済金を、銀行に頼み、支払を延ばしてもらったことはあった。
 本件不動産の家賃は、ほとんど受け取っていない。Eが本件各滞納法人の店舗から売上金を回収してしまうため、各店舗に家賃を支払う資金がなくなるためである。各店舗の社長に話しても、Eに渡したと言われれば終わりである。ただし、H社については、Sが社長になってからは遅れながらも何とか入ってくる。
 本件不動産の所有名義は私だが、実際にはEのものである。購入資金はEが用意してくれた。銀行が集金に来て、毎月5,000,000円ずつ返済していたが、その集金の前にEが現金を用意し、自宅に持ってくるので、それを預かり、銀行の人に渡していた。私は単なる取次ぎにすぎなかった。Eが倒れてから回復するまでの間は、私が店舗に行き、返済資金を集めていた。
 実際の購入の話もT社とEと銀行の間で行っていた。
 本件各滞納法人の平成19年及び平成20年中に終了した各事業年度に係る法人税申告書の別表二に、請求人が株主であると記載されていることは、昨年、国税局徴収部の調査があるまで知らなかった。aが勝手に書いたものではないかと思う。説明は受けていない。過去に本件各滞納法人の株主又は社員になったことはないし、現在も株主又は社員ではない。
(ニ) Eの原処分庁職員に対する申述
 Eの原処分庁職員に対する申述の内容は、要旨以下のとおりである。
A 平成20年10月7日付聴取書
 以前は、本件各滞納法人を設立し、ソープランドを経営していたが、平成12年ころに倒れて入院してからは経営から手を引いている。
 昭和54年ころから、F社の従業員として勤務するようになった。その後、店舗を任されるようになり、平成7年ころにかけてだと思うが、本件不動産を取得するとともに会社の営業権を手に入れ、株主となった。
 本件不動産は、妻である請求人名義になっているが、代金の支払等はすべて私が行ったので、本来は私の名義とすべきだったが、請求人との年齢差などを考え、不動産屋と相談して、請求人名義にした。本件不動産及び敷地は私のものである。
 平成12年に倒れるまでは、本件各滞納法人の実質的な経営は私が仕切っており、従業員から選んだ者を店長に据えていた。店長を据えたのは、私に何かあったときに店舗が存続できるようにするためであり、倒れてからは、それぞれの代表者が経営している。
B 平成20年11月6日付聴取書
 昭和60年ころF社に入社し、「K」でボーイとして働いて、店舗を任されるようになったが、店長等の役職には就けなかった。
 本件不動産は、T社が所有し、私は、j社から店舗を任されていた。話の流れで本件不動産を購入することになったが、資金がなかったので月5,000,000円位の返済を銀行に対して行っていた。本件不動産の名義は、はっきり覚えていないが、銀行の指示で請求人名義にした。返済は、家賃収入から行っており、家賃の管理も請求人がしていた。名実ともに本件不動産及び店舗のオーナーは請求人である。株主は、現状に合わせて請求人がなっている。
 (F社等の株主になったことはあるか、との問いに対し)株式の発行もなく、譲渡もなく、契約書等もない。私が株主だったということは一切ない。現在においては、不動産の所有の事実に合わせて実質的オーナーは請求人であると認識している。
(ホ) Eの当審判所に対する答述
 Eは、当審判所に対し、要旨次のとおり答述した。
 私は、昭和56、57年ころから従業員としてF社に勤務し、10年位してから、社長のmから「K」の経営を引き継いだ。
 その後、時期は思い出せないが、F社のもう一店舗、次にG社の店舗を経営するようになり、本件不動産を購入した後、H社の店舗の経営に関与している。元々、本件各滞納法人の各店舗の家主はT社であり、店舗に関する管理はj社が行っていた。
 F社及びG社の経営を仕切っているのは私であり、現在、H社は私ではないが、以前は私が仕切っていた。それぞれ従業員を社長にしている。
 平成3年ころまで、約11年間に渡り、j社のbに毎月100万円ずつ支払った。bから、「払い終わったときは、一店舗をEのものにする。」と言われて支払った。したがって、F社の店舗が私のものになったのは平成3年ころからである。
 F社等の従業員からは、平成9年ころから会長と呼ばれている。会長と呼ばれるのは私がオーナーだからである。
 G社の代表者として登記されていたXは平成7年ころの同社の責任者で、社長である。nは、Xが倒れた後の人である。
 (G社はいつからあなたが経営しているか、との問いに対し)Xのときは私ではない。はっきりしないが、私が本件不動産を買ったころだと思う。
 (平成13年10月にG社の代表者がnから請求人に変更されているが、何か関係があるか、との問いに対し)請求人が登記されているのであれば、G社の経営はそのころではないか。
 (平成7年にG社が増資をしているが知っているか、資金を出したか、との問いに対し)増資のことは知らないし、金を出したこともない。
 G社は、金を払って引き継いだものではない。
 本件不動産は、T社の社長から売買の話があって購入した。銀行と相談し、請求人との年齢差から私が先に死ぬこと及び子供がいたことから請求人の名義にした。購入資金はF社の店舗で稼いだ私の金で支払い、契約交渉は私が1人で行った。
 (F社は平成7年に増資をしているが、増資の理由は何か、資金はだれが出したか、との問いに対し)覚えていない。
 (本件各滞納法人への営業へ関与しているのかの問いに対し)女の子を集めるとか、従業員の教育を行っており、去年(平成20年)までは、すべての店を自分でやっていたが、今は「K」だけである。
 (F社及びG社の株主はだれか、との問いに対し)分からない。株主ということを考えたことがない。
 (請求人は株主か、との問いに対し)だれが株主という認識はしていない。請求人は本件不動産の登記上の所有者であり、監査役にもなっているが、本件各滞納法人の経営者ではない。
(ヘ) その他の関係人の原処分庁職員に対する申述及び当審判所に対する答述
A Q
 Qは、当審判所に対し、要旨次のとおり答述した。
 F社の経営形態については、私は責任者として「L」の一店舗を任されているだけで、経営全体について総括しているのはEである。店舗の日々の売上げについては、経費を差し引いた残金をEに渡している。
 請求人は、F社の経営には関与していないし、私の知る限り何か言ってくることもない。
B R
 Rは、当審判所に対し、要旨次のとおり答述した。
 G社の経営形態については、私は店舗を任されているだけで、日々の売上げについても経費を差し引いた残金をEに渡している。
 G社は、Eが売上金をすべて管理しており、私もEに雇われているため、Eの会社であると認識している。
 請求人は、G社の経営には関与していないし、何か言ってくることもない。
C S
 Sは、原処分庁職員に対し、要旨次のとおり申述している。
 私は、「N」の経営をしており、H社の代表者である。H社は単なる営業許可(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)を受ける会社で、H社を使わないと営業できないため代表者になっている。
 また、H社の出資を買い取るとか、名義の使用料を支払うとかはなく、毎月の賃料2,000,000円をW社に支払っている。
 H社の平成19年6月に終了した事業年度の法人税申告書の別表二に請求人が100%株主となっていることについては、特に関心がないことなのでよく分からないが、請求人はH社の取締役であり、家主であることから自然なことだと思っている。
D a
 aは、当審判所に対し、要旨次のとおり答述した。
 私は、税理士法人qの事務代行を行い、本件各滞納法人については、四半期に一度データを回収し、試算表、決算書を作成している。
 以前は別の税理士が関与していたが、平成12年ころの税務署の調査の後から関与するようになった。
 最初に関与するようになったのは、Eが入院したころで、そのころ、請求人及び各社長に、日々の各店舗の売上金を預金や夜間金庫に入金するシステムを提案し、半年位入金があったが、Eが退院してからは、同人に反対され、全く機能しなくなった。
 本件各滞納法人の平成19年及び平成20年中の決算期において、請求人を100%株主と記載した法人税申告書の別表二を提出したが、これは、株主名簿等もなく、以前の法人税申告書の別表二もない状況で、株主がだれか分からなかったので、資産の所有者であり、W社を通じて資金を管理している請求人を実質的オーナー、出資者とするのが妥当であると判断したものである。別表二に請求人の氏名を書いたことについては、だれにも説明していない。自分の判断で行った。
 本件各滞納法人の実質的な支配者は、Eである。最初に関与するときから、同人が実質オーナーであると感じた。請求人が経営に関与することはないし、できない。
ハ 検討
(イ) 本件各滞納法人の設立の際の出資者について
 上記ロの(イ)の定款等の記載によれば、請求人が、本件各滞納法人の設立の際、本件各滞納法人に出資をしたとは認められず、他にかかる事実を認めるに足る証拠もない。実質的に見ても、EがF社で働き始めた際の立場はボーイであり(なお、Eの申述が変遷しているため、働き始めた時期は定かでないが、本件各滞納法人が設立された後である可能性が高い。)、その妻である請求人が、本件各滞納法人の設立に際し、出資をしたとは考え難い(なお、原処分庁もそのような主張はしていない。)。
(ロ) 増資の引受け又は出資の譲受けの有無について
A 次に、請求人が、本件各滞納法人の増資の際に出資をし又は他者の出資を譲り受けたといえるか否かについて検討するに、上記1の(4)のヘのとおり、本件各滞納法人は、株主(社員)名簿を作成しておらず、株券等も発行していない上、本件各滞納法人の株式又は出資の売買契約書等の証拠も存在しないから、これらの直接的な資料により、請求人が本件各滞納法人の増資を引き受け、又は、出資を譲り受けた事実を認定することはできない。
 この点、原処分庁は、上記1の(4)のハの資金移動は、本件各滞納法人の株式又は出資の取得のための資金移動と見るのが自然であると主張するが、請求人がだれから株式又は出資を譲り受けたと主張するのかは必ずしも明らかでない。
 請求人及びEは、上記ロの(ロ)ないし(ホ)のとおり、本件各滞納法人の株主又は社員がだれかということはあまり考えたことがなかった旨の申述及び答述をし、上記1の(4)のハの資金移動が、株式又は出資の取得のための資金移動であるなどとは全く申述していない。他に、これらの資金が株式又は出資の取得のために用いられたことをうかがわせる証拠も全く存在せず、この点に関する原処分庁の主張は採用できない。
B そこで、更に、請求人その他の関係者の申述等並びにその余の間接事実により、請求人が本件各滞納法人の増資を引き受け、又は、出資を譲り受けた事実が認められるか否かについて検討する。
 この点、同族会社においては、所有と経営の分離が行われていない場合が多いから、原処分庁が主張するとおり、役員等が会社を自由に操作している事実が認められる場合には、その事実は、当該役員が当該会社の出資者であることをうかがわせる重要な間接事実であるといってよい。
 これを本件についてみると、確かに、上記1の(4)のイの(イ)のとおり、請求人が、本件各滞納法人の役員に就任している事実は認められる。
 しかしながら、上記ロの(ロ)ないし(ヘ)の関係者の各申述等並びにJ税務署所属の調査担当職員が、上記1の(4)のトのとおり、平成17年に行った法人税調査の際のE及び関与税理士の言動等を総合すると、請求人自身、F社の監査役に就任していることは認識しているものの、G社及びH社の役員になっていることについては、その認識すらなく、役員として本件各滞納法人の経営に関与する意思は全く有していなかったといえる。
 他方、本件各滞納法人が経営する各店舗の店長の側でも、自分達を店長に任命したのはEであり、同人がオーナーであると認識していて、請求人がオーナーであるとは認識してないから、請求人が本件各滞納法人の経営に関与することは不可能であったといえる。
 現に、請求人は、Eが入院していた平成12年の一時期、本件不動産のローンの支払に充てるため、本件各滞納法人が経営する各店舗の売上金を集金した以外には、本件各滞納法人の経営に関与した事実は全く認められない。
 以上によれば、請求人が本件各滞納法人を自由に操作していたということはできない。
 そうすると、請求人が本件各滞納法人の役員に就任している事実が認められるからといって、そのことから、請求人が本件各滞納法人の実質的な出資者であると推認することはできない。
(ハ) 原処分庁の主張について
A 店舗不動産の所有者が出資者であるとの主張について
 これに対し、原処分庁は、請求人及びEが店舗不動産の所有者が本件各滞納法人の実質的な株主又は社員である旨の申述し、請求人が株主又は社員であると認めていること、また、同業者の中にも法人の株主又は株主が所有する別法人が店舗の所有権を保有している場合が多いことを理由に、請求人が株主又は社員である旨主張する。
 確かに、上記ロの(ロ)及び(ニ)のとおり、請求人及びEの原処分庁職員に対する申述の中には、風俗営業店は会社とともに店舗自体に営業許可が与えられており、不動産の所有者がオーナーであることが自然であることなどを理由に、請求人が本件各滞納法人の株主又は社員であることを認める部分が存在し、請求人が原処分庁に対して提出した平成21年2月10日付確認書にも同旨の記載がある。
 しかしながら、他方で、請求人及びEは、だれが株主又は社員かということを意識したことはなく、いつから株主又は社員かと聞かれても答えられないという趣旨の申述もしているのであって、元々、本件各滞納法人の株主又は社員がだれかという点について明確な認識を有していなかったことが認められる。
 例えば、請求人は、上記ロの(ロ)のBのとおり、平成20年11月20日付聴取書の中だけでも、いつから本件各滞納法人の株主又は社員になったかとの問いに対し、「いつから株主かと聞かれても答えようがない。」、「(Eが入院した)平成12年2月」、「(本件不動産のローンが終わった)平成13年初め」、「(J税務署の調査が入った後の)平成18年2月」などと相互に矛盾する申述をしており、その申述態度は、場当たり的で一貫しておらず信用性に乏しい。
 また、そもそも、風俗営業の許可が店舗に対してなされるということと、その店舗の入っている不動産の所有権がだれに帰属するかということとは、法律的には全く無関係であるから、仮に本件不動産の所有権が請求人に帰属するとしても、そのことは、請求人が本件各滞納法人の株主又は社員であることの根拠にはならない。
 以上によれば、請求人及びEの上記申述により、請求人を本件各滞納法人の出資者であると認定することはできない。
B 本件不動産の所有権の帰属について
 ところで、原処分庁は、上記Aのとおり、本件不動産の所有権が請求人に帰属するとの前提で、請求人が本件各滞納法人の株主又は社員であると主張するものであるが、この前提自体も、疑わしいものといわざるを得ない。
 確かに、請求人は、上記ロの(ロ)のB及びCのとおり、原処分庁職員に対し、本件不動産の購入資金は、家賃収入の中から請求人が支払ったと申述しているが、他方で、家賃の元手となる各店舗の売上金はEの手に渡ってしまい、自分には、H社のSから振り込まれるもの以外、ほとんど家賃が入ってこないとも申述している。後者の申述は、上記ロの(ヘ)の本件各滞納法人の登記上の代表者の答述及び申述並びに上記1の(4)のトの事実にも沿うものであり、請求人が本件不動産の購入代金を支払った旨の申述とは矛盾するものである。
 また、請求人は、上記ロの(ロ)のAのとおり、原処分庁職員から本件不動産の購入資金について問われた際、表立って行動したのはEであり、同人に確認してほしい旨の申述もしている。
 そして、請求人は、当審判所に対しては、上記ロの(ハ)のとおり、自分は単なる取次ぎで、資金はEが用意したから、本件不動産はEの所有である旨、原処分庁職員に対する申述とは矛盾する答述をしており、Eも、当審判所に対し、同(ホ)のとおり、同様の答述をしている。
 上記の請求人、E及びその他の関係者の各申述及び答述等を総合勘案すれば、本件各滞納法人の売上金は、Eが入院していた平成12年の一時期を除き、同人が管理しており、請求人に家賃はほとんど支払われていなかったと認められるから、請求人が家賃収入の中から本件不動産の購入代金を支払って本件不動産の所有権を取得したとの原処分庁職員に対する申述よりも、本件不動産の真実の取得者はEであり、請求人は単なる登記名義人にすぎないとの当審判所に対する答述の方が自然である。
C 法人税申告書の別表二の記載について
 次に、原処分庁は、本件各滞納法人が平成19年及び平成20年に提出した法人税申告書の別表二に、請求人が本件各滞納法人の株式又は出資を100%保有している旨の記載があることを根拠に、本件各告知処分の対象期間のすべてにおいて、請求人が本件各滞納法人の株主又は社員であった旨主張する。
 しかし、上記1の(4)のホのとおり、本件各滞納法人が平成11年中に提出した法人税申告書の別表二には、株主として、E等、請求人以外の者の氏名が記載され、平成12年から平成18年までの間に提出した法人税申告書の別表二には、請求人が本件各滞納法人の株主又は社員である旨の記載はない。
 よって、原処分庁が指摘する2年分の法人税申告書の別表二の記載のみから、請求人が本件各滞納法人の株主又は社員であったと認定することは到底できない。
 また、これら2年分の法人税申告書の別表二に、株主として請求人の氏名を記載した理由について、決算業務に携わったaは、当審判所に対し、上記ロの(ヘ)のDのとおり、だれが株主か分からなかったので、資産のオーナーである請求人を出資者とするのが妥当であると判断した旨の答述をするが、請求人が本件不動産の登記名義人であることと、本件各滞納法人の出資者がだれかということとは直接関係がないことは上記のとおりであり、請求人が本件各滞納法人の出資者であることの根拠とはなり得ない。
 したがって、かかる記載から、請求人が本件各滞納法人の実質的な出資者であると認定することはできない。
(ニ) 以上のとおり、原処分関係資料、請求人提出資料及び当審判所の調査の結果を総合しても、請求人が本件各滞納法人の実質的な出資者であったと認定することはできず、原処分庁の主張は採用できない。

(2) 上記(1)のとおり、請求人が本件各滞納法人の同族会社の判定の基礎となる株主又は社員に該当すると認めるに足る証拠はないから、争点2について判断するまでもなく、原処分は、徴収法第37条第2号の要件を欠く違法な処分であるといわざるを得ず、その全部を取り消すのが相当である。

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