(平22.9.14裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、平成20年7月○日に死亡したG(以下「本件被相続人」という。)の相続(以下「本件相続」という。)に係る相続税について、原処分庁が、法定申告期限内に他の共同相続人から提出された相続税の申告書には審査請求人(以下「請求人」という。)の記名、課税価格等の記載はあるものの、請求人の押印がないことなどを理由に請求人の申告書ではないとし、法定申告期限後に請求人から提出された修正申告書の様式による申告書を期限後申告書であるとして、無申告加算税の賦課決定処分をしたのに対し、請求人が、他の共同相続人から提出された相続税の申告書によって請求人も法定申告期限内に相続税の申告を行っているなどとして、同処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

 審査請求(平成22年3月26日請求)に至る経緯及び内容は、別表1のとおりである。
 なお、以下、平成21年12月25日付でされた平成20年7月○日相続開始に係る相続税の無申告加算税の賦課決定処分を「本件賦課決定処分」という。

(3) 関係法令

イ 国税通則法(以下「通則法」という。)第66条《無申告加算税》第1項は、期限後申告書の提出があった場合には、期限内申告書の提出がなかったことについて正当な理由があると認められる場合を除いて、当該納税者に対し、当該申告に基づく納付すべき税額に100分の15の割合を乗じて計算した金額に相当する無申告加算税を課する旨、同条第5項は、期限後申告書の提出があった場合において、その提出が、その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について決定があるべきことを予知してされたものでないときは、その申告に基づく納付すべき税額に係る同条第1項の無申告加算税の額は、同項の規定にかかわらず、当該納付すべき税額に100分の5の割合を乗じて計算した金額とする旨各規定している。
ロ 通則法第124条《書類提出者の氏名及び住所の記載等》第1項は、国税に関する法律に基づき税務署長に申告書その他の書類を提出する者は、当該書類にその氏名及び住所又は居所を記載しなければならない旨、同条第2項は、同条第1項に規定する書類には、当該書類を提出する者が押印しなければならない旨各規定している。
ハ 相続税法第27条《相続税の申告書》第5項は、同一の被相続人から相続により財産を取得した者が二人以上ある場合において、当該申告書の提出先の税務署長が同一であるときは、これらの者は、政令で定めるところにより、当該申告書を共同して提出することができる旨規定している。
ニ 相続税法施行令第7条《申告書の共同提出》は、相続税法第27条第5項の規定により二人以上の者が共同して行う同条第1項の申告書の提出は、これらの者が一の申告書に連署してするものとする旨規定している。

(4) 基礎事実

イ 本件相続についての共同相続人は、本件被相続人の姉である請求人及び本件被相続人の妻であるHの2名である。
ロ Hは、平成21年5月16日、本件相続に係る相続税の申告書(以下「本件第1申告書」という。)を原処分庁に法定申告期限内に提出した。
 本件第1申告書は、相続により財産を取得した者が共同で提出することができる形式の申告書であり、「氏名」欄には、H及び請求人の各氏名が記名されているところ、Hについては記名に続いて押印されているが、請求人については押印されていない。
 また、本件第1申告書は、別表2のとおり、H及び請求人のそれぞれの課税価格、納付すべき税額などが記載されている。
ハ Hは、平成21年5月20日、自己の相続税として○○○○円、請求人の相続税として○○○○円(いずれも本件第1申告書の納付すべき税額と同額である。)を各納付した。
ニ 請求人は、平成21年5月22日、「相続税の期限内申告書が提出できなかった理由について」と題する書面(以下「本件理由書」という。)を原処分庁に提出した。
 本件理由書には、まる1請求人は、本件相続に係る相続税の申告をするため、相続税法第49条《相続時精算課税等に係る贈与税の申告内容の開示等》第1項の規定に基づき、同項所定の開示の請求を行ったが、原処分庁から該当なしとの回答を得たこと、まる2他の共同相続人であるH並びに同人に関与している弁護士及び税理士から連絡がなく、相続財産の全容が解明できず、相続財産を確定することができないことから、相続税の期限内申告書を提出することができなかったことを報告する旨記載されている。
ホ J税理士は、平成21年5月22日、税理士法第30条《税務代理の権限の明示》の規定に基づき、請求人が本件相続に関してJ税理士に同法第2条《税理士の業務》第1項第1号に規定する税務代理を委任する旨記載した税務代理権限証書を原処分庁に提出した。
ヘ 請求人は、平成21年11月26日、本件相続に係る相続税について、修正申告書の様式を使用した申告書(作成税理士をJ税理士とする申告書で、以下「本件第2申告書」という。)を原処分庁に提出した。
 本件第2申告書は、相続により財産を取得した者が共同で提出することができる形式の申告書であり、「氏名」欄には、H及び請求人の各氏名が記名されているところ、請求人については記名に続いて押印されているが、Hについては押印されていない。
 また、本件第2申告書は、本件第1申告書の相続財産の価額を2,500,000円増額して修正するという内容のものであり、別表3のとおり、本件第2申告書のH及び請求人の「修正前の課税額」の各欄には、本件第1申告書に記載された課税価格、納付すべき税額などがそれぞれ記載されている。
ト 原処分庁は、平成21年12月25日、本件第2申告書を請求人の期限後申告書であると認定し、通則法第66条第5項の規定を適用して、請求人に対し本件賦課決定処分を行った。

(5) 争点

争点1 本件第1申告書は、請求人が他の共同相続人と共同して提出した申告書であるか否か。

争点2 仮に、本件第1申告書は請求人が提出した申告書ではないとする場合、請求人が期限内申告書を提出しなかったことについて、通則法第66条第1項ただし書に規定する正当な理由があるか否か。

トップに戻る

2 主張

(1) 争点1(本件第1申告書は、請求人が他の共同相続人と共同して提出した申告書であるか否か。)

原処分庁 請求人
 以下の理由により、本件第1申告書は、請求人が他の共同相続人と共同して提出した申告書ではない。  以下の理由により、本件第1申告書は、請求人が他の共同相続人と共同して提出した申告書である。
イ 通則法第124条第2項は、同条第1項に規定する申告書を提出する場合には、当該申告書を提出する者が押印しなければならない旨規定しているところ、本件第1申告書には請求人の押印がなされていない。
ロ 請求人は、平成21年5月22日、相続税の期限内申告書を提出することができなかった旨記載した本件理由書を原処分庁に提出しており、法定申告期限内に相続税の申告書を提出していないことを認めている。
ハ 以上からすれば、本件第1申告書は、Hが単独で提出したものと認められる。
イ 本件第1申告書は、請求人の押印がないとしても、Hの氏名とともに請求人の氏名が記名され、かつ、請求人の課税価格、納付すべき税額なども記載され、形式的な記載要件は満たしているのであるから、請求人の申告の意思に基づいていれば有効な申告というべきである。
 そして、請求人は、適正に相続税の申告をするため、本件理由書に記載しているとおり、相続財産の全容を解明するための努力をしたが、その全容を解明するに至らなかった。
 このため、請求人は、自らは相続税の申告書を作成していなかったが、法定申告期限内に相続税の申告をする意思は有していた。
 また、請求人は、Hから相続税の申告をする旨の連絡があれば、これに応じて本件第1申告書に押印する意思を有していた。
 以上のとおり、請求人は、法定申告期限内に相続税の申告をする意思を有していたのであるから、本件第1申告書は請求人の申告の意思に基づく有効な申告書である。
ロ Hが、請求人の相続税を納付し、相続税法第34条《連帯納付の義務》に規定する連帯納付の義務を履行していることからも、請求人とHが申告書を共同して提出し、これにより請求人の納税義務が確定していたものといえる。

(2) 争点2(仮に、本件第1申告書は請求人が提出した申告書ではないとする場合、請求人が期限内申告書を提出しなかったことについて、通則法第66条第1項ただし書に規定する正当な理由があるか否か。)

請求人 原処分庁
 仮に、本件第1申告書が請求人の期限内申告書と認められないとしても、本件被相続人の相続財産はHが管理していたところ、同人から相続財産の資料の提示はあったものの、請求人はその説明を受けておらず、また、資料も不足していたことから、請求人は相続財産の全容を知ることができなかった。
 このように、請求人には、単独で申告書を作成することができない事情が存したのであるから、期限内申告書の提出がなかったことについて、通則法第66条第1項ただし書に規定する正当な理由がある。
 請求人が期限内申告書を提出し得なかったのは、相続人間に争いがあったため、相続財産の全容を知ることができなかったという理由によるものであり、期限内申告書を提出しなかったことについて請求人の責めに帰すべき事由がないとは認められないので、期限内申告書の提出がなかったことについて、通則法第66条第1項ただし書に規定する正当な理由はない。

トップに戻る

3 判断

(1) 争点1について

イ 法令解釈
 上記1の(3)のロのとおり、通則法上、納税申告書には氏名を記載し、押印することが必要とされているところ、上記1の(3)のハ及びニのとおり、相続により財産を取得した者が相続税の申告書を共同して提出する場合には、共同申告書(共同して提出する申告書。以下同じ。)に連署して提出することが必要となるが、この場合においても連署した者は押印することが必要となる。
 しかし、共同申告書に署名した者又は記名された者に押印がない場合においても、単なる押印漏れであることも考えられるので、納税申告書としての他の要件を具備している限り、押印がないことのみをもって納税申告書としての効力がないものとはいえない。
 このような場合には、共同申告書が提出された時点において、当該共同申告書が署名した者又は記名された者の申告の意思に基づいて提出されたものと認められるか否かによって、押印がない者の申告の効力を判断すべきである。
ロ 認定事実
 請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、以下の事実が認められる。
(イ) 本件第1申告書の作成及び提出に関する事実
A Hは、平成20年9月ころ、K税理士に本件相続に係る相続税の申告書の作成を依頼した。
B 本件相続については、共同相続人であるHと請求人が、それぞれ弁護士を代理人として遺産分割協議を行っていたが、相続税の法定申告期限までに遺産分割協議は整わなかった。
 なお、Hの代理人は、L弁護士であり、請求人の代理人は、当初はM弁護士であったが、平成21年4月15日にN弁護士に交代した。
 K税理士は、上記AのHの依頼に基づき、相続税の申告書の原案等を作成し、L弁護士が求める都度、これらの写しをL弁護士に渡していた。
C K税理士は、平成21年5月16日、Hの相続税の申告書(本件第1申告書)を郵送により原処分庁に提出した。
 なお、上記1の(4)のロのとおり、本件第1申告書には、H及び請求人の各氏名が記名されているほか、請求人の欄には、課税価格、納付すべき税額などが記載されているところ、K税理士の当審判所に対する答述によれば、K税理士の事務所で使用している相続税計算ソフトは、相続により財産を取得した者が共同して申告する申告書を作成するシステムであるため、本件第1申告書には、Hの氏名、課税価格、納付すべき税額などのほか、請求人のそれらも併せて印字されたものと認められる。
 また、K税理士は、本件第1申告書の提出に際し、税理士法第30条の規定に基づき、依頼者HがK税理士を代理人として、本件相続に関して税務代理を委任する旨記載された税務代理権限証書を原処分庁に提出しているが、請求人を依頼者とする税務代理権限証書は提出していない。
D Hは、本件第1申告書の提出に当たり、その申告内容を請求人に知らせて共同して提出するか否かの意思を確認しなかった。
E 請求人及びJ税理士は、N弁護士を介して、平成21年7月6日、請求人名義の相続税の領収証書の写しを入手し、その後、本件第1申告書の控えを入手して、初めて本件第1申告書が原処分庁に提出されていることを知った。
(ロ) 本件理由書の提出に至る経緯
A L弁護士は、平成21年3月12日、M弁護士に対し、K税理士が作成した相続税の申告書の原案(以下「本件第1原案」という。)、その作成の基となった相続財産一覧表、同一覧表に記載された財産に係る関係資料など(不動産評価に係る資料、金融機関の残高証明書等)を提供し、請求人は、M弁護士を介してこれを入手した。
 本件第1原案は、共同相続人の取得財産の価額を○○○○円、課税価格の合計額を○○○○円とするものであった。
B 請求人は、平成21年4月6日、J税理士に本件相続に係る相続税の申告書の作成を依頼した。
C L弁護士は、平成21年4月9日、M弁護士に対し、再度、相続税の申告書の原案(以下「本件第2原案」という。)、本件被相続人の所得税の確定申告書の控えの写しなどを提供し、請求人は、M弁護士を介してこれを入手した。
 本件第2原案は、共同相続人の取得財産の価額を○○○○円、課税価格の合計額を○○○○円とするものであった。
D 請求人及びJ税理士は、Hから提供された申告書の各原案及び関係資料では、相続財産の全容を確認できないと判断して、平成21年4月16日、原処分庁に対し、相続税法第49条第1項の規定に基づき開示の請求を行ったほか、金融機関に対し、取引資料の提示を求める手続などをして相続財産の調査を行った。
 なお、請求人が、法定申告期限までに、代理人である弁護士を介するなどして、相続税の申告に関してHに問い合わせをしたり、同人と協議をしたりした形跡を認めることはできない。
E 請求人は、平成21年5月22日、上記1の(4)のニのとおり、法定申告期限内に相続税の申告ができなかったとして、本件理由書を原処分庁に提出した。
(ハ) 本件第2原案と本件第1申告書における課税価格の相違
 上記(ロ)のCのとおり、本件第2原案の課税価格の合計額は○○○○円であり、別表2のとおり、本件第1申告書の課税価格の合計額は○○○○円であるところ、これは、P社の株式の評価額が420,000円増加したことによるものと認められる。
(ニ) Hが請求人の相続税として金員を納付した理由
 上記1の(4)のハのとおり、Hは、請求人の相続税として○○○○円を納付しているところ、Hは、当審判所に対し、その理由について、「相続税の申告書の案を基に請求人が相続税の申告をしたとしても、請求人が納めるべき相続税を私が負担する理由はないのですが、納付しないまま、分割協議が長引くと高い延滞税がかかり、請求人の負担となってはいけないと思い、私は夫の死亡に伴い小規模企業共済契約に係る共済金を受け取っており、納税資金もあったことから、請求人の相続税を代わって納付しました。」、「私が納めた請求人の相続税は、分割協議が整った際に精算して返してもらいます。」と答述していることからすれば、Hは、将来の遺産分割により精算されることを前提として、請求人の相続税として○○○○円を納付したものにすぎず、本件第1申告書により請求人の納付すべき税額が確定していることを前提として、連帯納付義務を履行したものとは認められない。
ハ 判断
(イ) 上記ロの(イ)のとおり、本件第1申告書は、Hの依頼によりK税理士が作成して提出したものであり、本件第1申告書の作成に関し、K税理士は請求人からその作成を依頼されていないこと、本件第1申告書に請求人の氏名が記名され、課税価格、納付すべき税額などが記載されているのも、K税理士の相続税計算ソフトのシステム上記載されたものにすぎないこと、請求人は、平成21年7月6日以後、本件第1申告書が原処分庁に提出されていることを初めて知ったこと、上記ロの(ロ)のEのとおり、請求人は、法定申告期限内に相続税の申告ができなかったとして本件理由書を原処分庁に提出していることからすれば、本件第1申告書は、請求人の申告の意思に基づいてK税理士が作成して提出したものとは認められないから、本件第1申告書は、請求人が他の共同相続人と共同して提出した申告書であるとはいえない。
(ロ) この点、請求人は、上記2の(1)の「請求人」欄のイのとおり、請求人が法定申告期限までに申告の意思を有していたことを前提として、本件第1申告書が請求人の納税申告書としての形式的な記載要件を満たしているのであるから、本件第1申告書は請求人の申告の意思に基づく有効な申告書である旨主張する。
 しかしながら、本件第1申告書が請求人の申告書であるといい得るためには、単に請求人が申告の意思を有していたのみでは足りず、本件第1申告書が申告の意思に基づいて提出されたものであるか否かの観点から判断すべきところ、上記(イ)のとおり、本件第1申告書は請求人の意思に基づいて提出されたものとはいえず、本件第1申告書を請求人の申告書ということができないことは明らかであるから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
 また、請求人は、上記2の(1)の「請求人」欄のロのとおり、Hが、相続税法第34条に規定する連帯納付の義務の履行として、請求人の相続税を納付していることからも、請求人とHが本件第1申告書を共同して提出し、これにより請求人の納税義務が確定していたものといえる旨主張する。
 しかしながら、上記ロの(ニ)のとおり、Hが請求人の相続税として○○○○円を納付したことについて、本件第1申告書の提出により請求人の納付すべき税額が確定していることを前提として、Hが連帯納付義務を履行したものとは認められないから、この点に関する請求人の主張には理由がない。

(2) 争点2について

イ 法令解釈
 無申告加算税は、申告納税制度を維持するためには、納税者により法定申告期限内に適正な申告が自主的にされることが不可欠であることにかんがみ、申告書の提出が法定申告期限内にされなかった場合の行政上の制裁として課されるものである。
 この趣旨に照らせば、期限後申告であっても例外的に無申告加算税が課されない場合として、通則法第66条第1項ただし書が規定する「正当な理由があると認められる場合」とは、法定申告期限内に申告できなかったことについて、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、無申告加算税の制度趣旨に照らしても、なお、納税者に無申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合をいうものと解される。
ロ 判断
(イ) 上記(1)のハの(イ)のとおり、本件第1申告書は、請求人が他の共同相続人と共同して提出した申告書であるとはいえないところ、上記1の(4)のヘのとおり、本件第2申告書は法定申告期限後に提出されているから、これが請求人の期限後申告書であると認められる。
 そして、請求人が期限内申告書を提出しなかった理由は、上記(1)のロの(ロ)のA、C及びDのとおり、請求人は、法定申告期限までにHから2回にわたり相続税の申告書の各原案及びそれらの作成の基となった関係資料を提供されたものの、それらでは相続財産の全容を確認できないと判断したというものであるが、上記(1)のロの(ハ)のとおり、本件第2原案と本件第1申告書の課税価格の合計額は、P社の株式の価額が420,000円相違しているだけであったのであるから、請求人は、提供された関係資料を基に検討し、不明点については、代理人である弁護士を介して解明するなどの措置を講じるなどすれば、法定申告期限までに本件第2原案を基に相続税の申告書を作成することは可能であるところ、上記(1)のロの(ロ)のDのとおり、請求人が、代理人である弁護士を介するなどして、Hに相続財産の全容を解明するための問い合わせをしたり、同人と協議をしたりした形跡は認められない。
 また、請求人が、相続財産の全容を確認することが困難であると判断したとしても、当時判明している相続財産を基に相続税の申告をし、法定申告期限後に判明した相続財産があれば、修正申告をするなどの方法をとることは十分可能であったものと認められる。
 以上からすれば、請求人が期限内申告書を提出しなかったことは、請求人自身の責めに帰するべき事情によるものと認めるのが相当であり、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があったとはいえないから、正当な理由があるとは認められない。
(ロ) この点、請求人は、上記2の(2)の「請求人」欄のとおり、相続財産の全容を知ることができず、単独で申告書を作成することができない事情があったのであるから、正当な理由がある旨主張するが、当該事情が真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情であるとはいえず、本件において正当な理由があるとは認められないことは、上記(イ)で述べたとおりであるから、この点に関する請求人の主張には理由がない。

(3) 本件賦課決定処分について

 上記(2)のロの(イ)のとおり、本件第2申告書は請求人の期限後申告書と認められ、請求人が期限内申告書を提出しなかったことについて、通則法第66条第1項に規定する正当な理由があるとは認められない。
 そこで、当審判所が、通則法第66条第5項の規定を適用して、無申告加算税の額を算定すると○○○○円となり、この金額は、本件賦課決定処分の額と同額となるから、本件賦課決定処分は適法である。

(4) その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によってもこれを不相当とする理由は認められない。

トップに戻る

トップに戻る