(平22.7.22裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、審査請求人E(以下「請求人E」という。)及び同F(以下「請求人F」といい、これら2名を併せて「請求人ら」という。)が相続により取得した農地について、その全体を1つの評価単位として財産評価基本通達(昭和39年4月25日付直資56ほか国税庁長官通達。ただし、平成20年3月14日付課評2−5による改正前のものをいい、以下「評価基本通達」という。)に定める広大地の評価を適用すべきであるとして相続税の各更正の請求をしたのに対し、原処分庁が、当該農地は3つの評価単位により広大地の評価を適用すべきであるとして、各更正の請求の一部を認める各更正処分をしたことから、請求人らが、当該各処分の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 請求人らは、平成19年12月○日(以下「本件相続開始日」という。)に死亡したG(以下「本件被相続人」という。)の共同相続人であり、この相続(以下「本件相続」という。)に係る相続税の申告書に、別表1の「申告」欄のとおり記載して、法定申告期限までに申告した(以下「本件各申告」という。)。
ロ 請求人らは、平成20年11月5日、別表1の「更正の請求」欄のとおりとすべき旨の各更正の請求(以下「本件各更正の請求」という。)をした。
ハ 原処分庁は、これに対し、平成21年2月27日付で別表1の「更正処分」欄のとおりとする各更正処分(以下「本件各更正処分」という。)をした。
ニ 請求人らは、平成21年4月24日、本件各更正処分を不服として異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年7月6日付でいずれも棄却の異議決定をした。
ホ 請求人らは、平成21年8月6日、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして審査請求をした。
 なお、請求人らは、同日、請求人Eを総代として選任し、その旨を届け出た。

(3) 関係法令等の要旨

イ 相続税法第22条《評価の原則》は、相続又は遺贈により取得した財産の価額は、特別の定めのあるものを除き、当該財産の取得の時における時価による旨規定している。
ロ 評価基本通達7《土地の評価上の区分》は、土地の価額は、地目の別に評価することとし、地目は、課税時期の現況によって判定する旨定めている。
ハ 評価基本通達7−2《評価単位》は、土地の価額は、次に掲げる評価単位ごとに評価する旨定めている。
(イ) 評価基本通達7−2(1)本文は、宅地は、1画地の宅地(利用の単位となっている1区画の宅地をいう。)を評価単位とする旨定めている。
 同通達7−2(1)注書は、贈与、遺産分割等による宅地の分割が親族間等で行われた場合において、例えば、分割後の画地が宅地として通常の用途に供することができないなど、その分割が著しく不合理であると認められるとき(以下「不合理分割」という。)には、その分割前の画地を「1画地の宅地」とする旨定めている。
(ロ) 評価基本通達7−2(2)本文は、田及び畑(以下「農地」という。)は、1枚の農地(耕作の単位となっている1区画の農地をいう。)を評価単位とする旨定めている。
 同通達7−2(2)ただし書は、同通達40《市街地農地の評価》の本文の定めにより評価する市街地農地及び同通達40−3《生産緑地の評価》に定める生産緑地は、それぞれを利用の単位となっている一団の農地を評価単位とし、同通達7−2の(1)の注書に定める場合に該当するときは同注書を準用する旨定めている。
ニ 評価基本通達24−4《広大地の評価》は、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地で都市計画法第4条《定義》第12項に規定する開発行為(以下「開発行為」という。)を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるもの(同通達22−2《大規模工場用地》に定める大規模工場用地に該当するもの及び中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているものを除く。以下「広大地」という。)の価額は、その広大地が路線価地域に所在する場合、その広大地の面する路線の路線価に、同通達15《奥行価格補正》から同通達20−5《容積率の異なる2以上の地域にわたる宅地の評価》までの定めに代わるものとして次の算式により求めた広大地補正率を乗じて計算した価額にその広大地の地積を乗じて計算した金額によって評価する旨定めている。

(算式)
広大地補正率 0.6 0.05 × 広大地の地積
1,000平方メートル

ホ 評価基本通達40は、市街地農地の価額は、その農地が宅地であるとした場合の1平方メートル当たりの価額からその農地を宅地に転用する場合において通常必要と認められる1平方メートル当たりの造成費に相当する金額として、整地、土盛り又は土止めに要する費用の額がおおむね同一と認められる地域ごとに国税局長の定める金額を控除した金額に、その農地の地積を乗じて計算した金額によって評価する旨定めている。
ヘ 評価基本通達40−3の(2)は、課税時期において市町村長に対し買取りの申出が行われていた生産緑地又は買取りの申出をすることができる生産緑地の価額は、その生産緑地が生産緑地でないものとして評価基本通達第2章の定めにより評価した価額から、100分の5の割合を乗じて計算した金額を控除した金額によって評価する旨定めている。

(4) 基礎事実

イ 本件被相続人は、別表2の順号まる1からまる21までの各土地(以下、同まる1からまる11までの各土地を「本件A土地」、同まる12の土地を「本件B土地」、同まる13の土地を「本件C1土地」、同まる14からまる18までの各土地を「本件C2土地」、本件C1土地と本件C2土地を併せて「本件C土地」、同まる19からまる21までの各土地を「本件D土地」といい、これらを併せて「本件各土地」という。)を所有し、自ら畑として耕作していた。
ロ 本件相続開始の直前において、本件各土地のうち、本件C1土地及び本件D土地の一部である別表2の順号まる21の土地(相続開始日当時は一筆の土地)は、本件被相続人及び請求人らの共有であり(持分は、本件被相続人が130,054分の96,804、請求人Eが130,054分の20,970、請求人Fが130,054分の12,280)、その余の各土地は、本件被相続人の単独所有であった。
ハ 本件被相続人は、本件相続開始日に死亡し、本件相続が開始した。本件相続に係る相続人は、いずれも本件被相続人の子である請求人ら2名である。
ニ 本件各土地は、本件相続開始日現在、市街化区域内に所在する農地で、評価基本通達40−3の(2)に定める生産緑地であり、路線価方式(同通達13《路線価方式》に定める評価方式をいう。)により評価する地域に所在し、本件各土地の西側道路に付された平成19年分の路線価(同通達14《路線価》に定める路線価をいう。以下同じ。)は230,000円及び南側道路に付された路線価は225,000円であった。
ホ 請求人らの間で、平成20年10月18日、本件相続に係る遺産分割協議(以下「本件遺産分割」という。)が成立し、請求人らは、本件各土地を、別表2のとおり取得した。
ヘ 本件各土地の位置関係は、別紙2のとおりである。
 なお、本件B土地は、本件相続開始後に本件A土地の一部である別表2の順号まる7まる9まる10及びまる11の土地と併せて分筆され、約10メートル四方の正方形状の三方を本件A土地に、一方を他人の所有地に接しており、直接道路に接していない土地である。
 また、本件C1土地は、本件相続開始後に本件D土地の一部である別表2の順号まる21の土地から分筆され、間口距離約3メートルで道路に接しているものの、奥行距離が約35メートルと長大な帯状地である。
ト 請求人らは、平成20年10月11日、H社との間で、本件D土地及びJ市K町519番3の畑並びに本件D土地に隣接する別表2順号まる3まる6まる13まる14及びまる15の各土地のそれぞれ一部を、売買代金合計182,000,000円で売却する旨の売買契約を締結した。
 なお、本件各土地のうち、上記売買契約により売却された土地を除く各土地は、本件相続に係る遺産分割時点では生産緑地としての利用が継続していた。
チ 請求人らは、平成20年11月5日、本件各土地を1つの評価単位として、評価基本通達24−4を適用し評価すべきであったとして、本件各申告に係る本件各更正の請求をした。
リ これに対し、原処分庁は、本件B土地は評価基本通達7−2(1)注書の不合理分割に該当するとして、本件A土地と一体として評価し、本件各土地を、まる1本件A土地及び本件B土地(以下「本件AB土地」という。)、まる2本件C土地並びにまる3本件D土地の3つの評価単位として、評価単位ごとに評価基本通達24−4を適用して評価額を算定し、本件各更正の請求の一部を認める本件各更正処分をした。

(5) 争点

 本件の争点は、本件各土地を評価する場合の評価単位である。

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2 主張

(1) 請求人ら

イ 主位的主張
(イ) 本件各土地は、物理的な区分がなく、本件相続開始日までは本件被相続人が耕作し、本件相続開始日以後には請求人らが共同耕作し、その全体を継続して農地として使用していたものであるから、評価基本通達7−2(2)ただし書の定めのとおり、利用の単位となっている一団の農地である本件各土地の全体を1つの評価単位として評価すべきである。
(ロ) 原処分庁は、本件各土地のうち、本件B土地の分割が不合理分割に該当すると主張するが、評価基本通達7−2(1)注書の定めのとおり、その分割前の利用の単位となっている一団の農地である本件各土地の全体を1つの評価単位として評価すべきである。
 そして、原処分庁は、不合理分割の適用は、必要最小限の範囲に限ってすべきであると主張するが、評価基本通達にそのような定めはない。また、請求人らは、将来、請求人Fの本件B土地の持分と、請求人Eの本件C1土地の持分とを交換することを予定して、本件B土地を請求人らの共有としたのであり、本件B土地の分割と、本件D土地の売却を前提に行われた本件C1土地の分割とは不可分一体であるにもかかわらず、前者のみを不合理分割として取り扱う原処分庁の主張は、実態を捉えたものではない。
ロ 予備的主張
 仮に、本件各土地の全体を1つの評価単位として評価することが認められないとしても、請求人らがそれぞれ単独で取得した土地と、共有で取得した本件D土地とが隣接していることを考慮すべきである。
 すなわち、共有地における共有持分権も所有権であり、共有持分は当該共有地の全部に及んでいるのであって、共有地には、共有者全員の所有権が重なり合っているにすぎない。
 請求人らがそれぞれ単独で取得した土地と、隣接する本件D土地とは、一体の農地として利用されているから、それぞれ1つの画地内にあるといえる。そして、本件D土地については、2つの評価単位が重なり合っているから、その評価額を持分に応じてあん分して、単独相続分に合算すべきである。
 したがって、本件各土地は、取得者ごとに1つずつ、合計2つの評価単位とすべきである。

(2) 原処分庁

 相続税は、相続人ごとに、その相続によって得た財産の価額を基として税額を算出する方式を採用していることに加え、遺産の分割は相続開始時に遡ってその効力を生ずることから、相続人ごとにその相続によって得た財産の価額を求めて税額を算出することとなる。そうすると、「利用の単位となっている一団の農地」とは、その相続により農地を取得した者が、これを一体として維持・管理、使用・収益又は処分をすることができる単位とするのが相当であり、まる1物理的な連続性により区分し、まる2他者の権利が付着している場合には、その種類及びその権利の主体の異なるごとに区分して判断すべきである。また、共有地は、共有物の変更や処分について、共有者の同意が必要であるなど単独所有の場合と比較して使用・収益及び処分に制約のある土地である。
 したがって、本件各土地は、原則として、まる1本件A土地、まる2本件B土地、まる3本件C2土地及びまる4本件C1土地と本件D土地を併せた土地(以下「本件C1D土地」という。)のそれぞれ4つの評価単位となるが、本件B土地は不合理分割に該当することから、本件B土地の適正な価額を評価し得る必要最小限の範囲と認められる本件A土地と併せて評価することとなる。
 よって、本件各土地は、まる1本件AB土地、まる2本件C2土地及びまる3本件C1D土地の3つの評価単位により評価すべきである。
 なお、原処分庁は、当初、本件各土地は、まる1本件AB土地、まる2本件C土地及びまる3本件D土地の3つの評価単位によるべきであるとして原処分を行ったが、本件C1土地は共有地であり、単独所有地である本件C2土地ではなく、共有地である本件D土地と一体として評価するのが相当であるから、この点について主張を変更する。

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3 判断

(1) 法令解釈等

イ 相続税法第22条は、相続により取得した財産の価額は、特別の定めがあるものを除き、当該財産の取得の時における時価による旨規定しているが、すべての財産の客観的交換価値は、必ずしも一義的に確定されるものではないから、課税実務上は、財産評価の一般的基準が評価基本通達によって定められ、原則として、これに定められた画一的な評価方法によって、当該財産の評価をすることとされている。
 当審判所も、かかる取扱いは、税負担の公平、効率的な租税行政の実現等の観点から合理的であると解する。
ロ 評価単位の判定
(イ) 評価単位の判定は、評価基本通達7−2(1)注書により、遺産分割が著しく不合理であると認められるときは、分割前の画地によるが、かかる事情がない限り、分割後の画地によることとなる。
 これは、相続税の計算について、いわゆる法定相続分課税方式による遺産取得者課税を採用していることなどから、土地の時価の算定に当たり、遺産分割後の所有者単位で評価することが相当であるとの理由に基づくものである。
(ロ) ところで、評価基本通達7−2(2)ただし書の「市街地農地」は、宅地化が進展している地域に存在し、将来的に宅地化の可能性が高いため、その取引価額も宅地の価額の影響を強く受けるものであることから、その評価単位は、耕作の単位となっている「1枚の農地」ではなく、宅地としての効用を果たす規模や形状等の観点から「利用の単位となっている一団の農地」によることとされている。
 この「利用の単位となっている一団の農地」とは、評価基本通達7−2(1)の注書が準用されている点で、同本文にいう「1画地の宅地」に準ずる概念であると解され、当該土地を取得した者が、使用、収益及び処分等することができる利用単位ないし処分単位をいうものと解するのが相当である。
(ハ) したがって、遺産分割後における市街地農地の評価単位となる「利用の単位となっている一団の農地」の判定は、当該土地の利用状況や権利関係等諸般の事情を考慮し、まる1土地の所有者による自由な使用収益を制約する他者の権利の存否により区分し、まる2他者の権利が存在する場合には、その種類及び権利者の異なるごとに区分して行うのが相当である。
 この点、単独所有地は、所有者が何ら制約なく利用できる土地であるのに対し、共有地は、その処分等に共有者の同意が必要であるなど、単独所有の場合と比較して使用、収益及び処分等について制約があるから、評価対象地が共有か否か及び共有の場合の持分割合は、評価単位の判定に当たって考慮すべき事情であるといえる。
(ニ) なお、評価基本通達7−2(1)注書の趣旨は、不合理分割された土地をそのまま評価した場合、実態に即した評価がなされないことから、課税の公平に資する目的で評価単位を是正することにあると解される。
 かかる趣旨に照らすと、遺産分割の一部が不合理分割である場合には、不合理分割に当たる部分についてのみ是正すれば足りるから、その部分のみ分割前の画地により評価単位を判定し、その余の部分については、分割後の画地により評価単位を判定すべきであると解する。

(2) あてはめ

イ これを本件についてみると、本件各土地は、上記1の(4)のニのとおり、市街化区域内に所在する市街地農地に該当することから、本件各土地の評価については、評価基本通達7−2(2)ただし書により、利用の単位となっている一団の農地を評価単位としてそれぞれ評価することとなり、その判定は、同(1)注書の不合理分割に該当する場合を除き、分割後の画地により行うこととなる。
ロ この点、上記1の(4)のホのとおり、本件遺産分割により、本件A土地は請求人Eの単独所有地に、本件C2土地は請求人Fの単独所有地に、本件B土地、本件C1土地及び本件D土地は、それぞれ異なる共有持分割合により、請求人らの共有地になったことが認められる。
 このうち、本件B土地、本件C1土地及び本件D土地の共有持分割合がそれぞれ異なるのは、上記1の(4)のロのとおり、本件C1土地及び本件D土地の一部である別表2の順号まる21の土地について、請求人らが本件相続開始前から持分を有していたことに加え、請求人らの主張を前提とすれば、本件D土地については、売却が予定されていたのに対し、本件C1土地は、請求人らの手元に残した上で、将来、本件B土地の共有持分と本件C1土地の共有持分とを交換することが予定されていたためであるというのであるから、これらの事情を総合的に考慮すれば、本件各土地の分割後の画地は、まる1本件A土地、まる2本件B土地、まる3本件C1土地、まる4本件C2土地及びまる5本件D土地の5つであるというべきである。
ハ しかしながら、このうち、本件B土地は、上記1の(4)のヘのとおり、三方を本件A土地に、一方を他人の所有地に接しており、直接道路に接していない土地であり、当該土地単独で評価した場合には、実態に即した評価がなされないから、その分割は、評価基本通達7−2(1)注書にいう不合理分割に該当するというべきであり、その評価に当たっては、その分割前の画地を評価単位とすべきである。
 そうすると、本件B土地は、上記1の(4)のヘのとおり、分割前においては、本件A土地と一体として本件被相続人が単独で所有していた土地であるから、分割前の画地は、本件A土地と併せた本件AB土地となる。
ニ また、本件C1土地は、上記1の(4)のヘのとおり、間口距離に比べ奥行距離が長大な帯状地であり、当該土地単独で評価した場合には、実態に即した評価がなされないから、その分割は、本件B土地の分割と同様、不合理分割に該当し、その評価に当たっては分割前の画地により評価単位を判定することとなる。
 そうすると、本件C1土地は、上記1の(4)のヘのとおり、本件相続開始後に本件D土地の一部である別表2の順号まる21の土地から分筆された土地であるから、分割前の画地は、本件D土地と併せた本件C1D土地となる。
ホ したがって、本件各土地の評価単位は、まる1本件AB土地、まる2本件C2土地及びまる3本件C1D土地の3つとなる。

(3) 請求人らの主張について

イ 主位的主張について
(イ) 請求人らは、まず、評価基本通達の定めのとおり、現実の利用の単位となっている本件各土地の全体を1つの評価単位として評価すべきである旨主張するが、上記(1)のロの(イ)ないし(ハ)のとおり、評価基本通達に定める市街地農地の評価単位である「利用の単位となっている一団の農地」は、現実の利用の単位とは必ずしも一致しないから、この点に関する請求人らの主張には理由がない。
(ロ) 次に、請求人らは、本件各土地のうち、本件B土地の分割は不合理分割に該当するから、評価基本通達7−2(1)注書の定めのとおり、その分割前の利用の単位となっている一団の農地である本件各土地の全体を1つの評価単位として評価すべきである旨主張する。
 しかし、評価基本通達7−2(1)注書の趣旨は、上記(1)のロの(ニ)のとおりであるところ、仮に、請求人らが主張するとおり、本件各土地の全体の評価単位を是正すると、かえって実態に即した評価が行えず、公平な課税を行うことができなくなるから、この点に関する請求人らの主張も採用できない。
(ハ) また、請求人らは、本件遺産分割の実態を捉えて、その分割前の利用の単位となっている一団の農地である本件各土地の全体を1つの評価単位として評価すべきである旨主張する。
 しかし、上記(1)のロの(イ)のとおり、土地の評価単位は、不合理分割である場合を除いて遺産分割後の画地により判定すべきであり、同(2)のロのとおり、本件遺産分割に至る事情を考慮すれば、分割後の画地は5つとなるが、不合理分割の是正をした結果、評価単位は3つとなるのであって、請求人らの主張には理由がない。
ロ 予備的主張について
 さらに、請求人らは、本件各土地が1つの評価単位と認められないとしても、本件D土地の請求人らの各々の所有権は、本件D土地の全体に及んでいるから、それぞれ請求人らの隣接する単独所有地と本件D土地を併せて1つの評価単位とし、本件遺産分割による本件各土地の取得者数と同様に2つの評価単位により評価すべきである旨主張する。
 しかしながら、上記(1)のロの(ハ)のとおり、単独所有地と共有地とでは、使用、収益及び処分についての制約の有無が異なるし、請求人が主張する遺産分割の事情、すなわち、本件D土地は、当初から売却を前提に分割したことも考慮すれば、単独所有地である本件A土地又は本件C2土地と共有地である本件C1D土地とを1つの評価単位として評価することは相当でない。
 したがって、請求人らの予備的主張も採用できない。

(4) 本件各土地の価額

 以上により、本件各土地はまる1本件AB土地、まる2本件C2土地及びまる3本件C1D土地の3つの評価単位を基に評価することが相当であり、当審判所において本件各土地の価額を算定すると、別表3のとおり、その価額の合計は408,937,354円となる。

(5) 本件各更正処分について

 以上により、本件相続に係る財産の価額を算出すると、本件各土地の課税価格に算入すべき価額の合計は408,937,354円となるところ、本件各土地以外の課税価格に算入すべき財産の価額○○○○円及び債務控除額○○○○円については、請求人らと原処分庁の間に争いはなく、当審判所においても相当と認められる。
 そこで、請求人らの課税価格及び納付すべき税額を計算すると、それぞれ別表4のとおりである。
 そうすると、請求人Eの納付すべき税額は、同人に対する更正処分の額を下回るから、同人に対する更正処分は、その一部を別紙3のとおり取り消すべきである。
 これに対し、請求人Fの納付すべき税額は、同人に対する更正処分の額を上回るから、同人に対する更正処分は適法である。

(6) その他

 原処分のその他の部分については、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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