(平22.11.18裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、空調機器メンテナンス業を営んでいた審査請求人(以下「請求人」という。)が、納税の猶予の申請をしたところ、原処分庁が、請求人には納税を猶予することができる事実がないとして、納税の猶予不許可処分をしたため、請求人が、当該処分は違法であるとして、その取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 確定申告
 請求人は、平成20年1月1日から平成20年12月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税について、原処分庁に対し、納付すべき税額を○○○○円として、法定申告期限までに確定申告をした。
ロ 申請及び処分
 請求人は、上記イの納付すべき税額○○○○円について、原処分庁に対し、平成21年3月30日に納税の猶予を申請したところ、原処分庁は、同年7月8日付で納税の猶予不許可処分をした。
ハ 不服申立て
 請求人は、上記ロの納税の猶予不許可処分を不服として、平成21年8月20日に異議申立てをしたところ、異議審理庁が同年10月28日付で棄却する旨の異議決定をしたので、同年11月27日に審査請求をした。

(3) 関係法令等

イ 国税通則法(以下「通則法」という。)第46条《納税の猶予の要件等》
 第2項では、税務署長等は、次の各号の一に該当する事実(以下「猶予該当事実」という。)がある場合において、猶予該当事実に基づき、納税者がその国税を一時に納付することができないと認められるときは、その納付することができないと認められる金額を限度として、納税者の申請に基づき、1年以内の期間を限り、その納税を猶予することができる旨規定した上で、猶予該当事実として、第4号では、納税者がその事業につき著しい損失を受けたこと(以下、第4号で規定する事実を「4号該当事実」という。)を、第5号では、前各号の一に該当する事実に類する事実があったこと(以下、第5号で規定する第4号に該当する事実に類する事実を「5号該当(4号類似)事実」という。)を、それぞれ規定している。
ロ 「納税の猶予等の取扱要領の制定について」(昭和51年6月3日徴徴3−2及び徴管2−32の国税庁長官通達をいい、以下、この通達を「猶予取扱要領」という。)
 猶予取扱要領は、以下に掲げる事項について、要旨次の(イ)ないし(ニ)のとおり定めている。
(イ) 猶予期間の始期(第2章第1節3の(1))
 納税の猶予をする期間の始期は、納税の猶予の申請書に記載された日とする。
(ロ) 「納税者がその事業につき著しい損失を受けたこと」に該当する事実及びその判定方法(第2章第1節1の(3)のニの(イ)及び(ロ))
 4号該当事実とは、調査日(納税の猶予の始期の前日をいい、以下、単に「調査日」という。)前1年間(以下「調査期間」という。)の損益計算において、調査期間の直前の1年間(以下「基準期間」という。)の利益金額の2分の1を超えて損失が生じていると認められる場合(基準期間において損失が生じている場合には、調査期間の損失金額が基準期間の損失金額を超えているとき。)をいうものとし、4号該当事実の判定に当たっては、調査期間及び基準期間のそれぞれについて仮決算を行うこととなるが、調査日又は基準期間の末日に近接した時期において特定の損益計算期間が終了している場合には、その期間の損益計算の結果を基に、上記の利益金額又は損失金額を推計して判定して差し支えない。
 なお、調査期間以内において、例えば、購入予定の資材の高騰、在庫商品の価額の下落、取引先の都合による売買契約の解除等の損失発生の原因となるような事実(季節変動等による恒常的なものを除く。以下「損失原因」という。)があり、損失原因の発生した日(損失原因が継続的に発生していたような場合には、最初にその事実が生じたと認められる日)の特定ができる場合には、その日以降調査日までの間に生じたと認められる損失金額と基準期間の利益金額(損失が生じている場合には、損失金額)のうち損失原因の生じた日以降調査日までの期間に対応する期間の利益金額(又は損失金額)とを比較して判定しても差し支えない。
(ハ) 「納税者に事業上の著しい損失に類する事実があったこと」に該当する事実(第2章第1節1の(3)のヘの(ハ))
 5号該当(4号類似)事実とは、下請企業である納税者が、親会社からの発注の減少等の影響を受けたこと、その他納税者が市場の悪化等その責めに帰すことができないやむを得ない事由により、従前に比べ事業の操業度の低下又は売上げの減少等の影響を受けたことをいう。
(ニ) 猶予該当事実と納付困難との関係(第2章第1節1の(4))
 「猶予該当事実に基づき納付することができない」とは、納税者に猶予該当事実があったことにより、資金の支出又は損失があり、その資金の支出又は損失のあることが国税を一時に納付することができないことの原因となっていることをいい、「国税を一時に納付することができない」(以下「納付困難」という。)とは、納税者に納付すべき国税の全額を一時に納付する資金がないこと、又は資金があっても、それによって一時に納付した場合には、納税者の生活の維持若しくは事業の継続に著しい支障が生ずると認められることをいう。

(4) 基礎事実

イ 納税の猶予申請書の記載内容
 請求人が平成21年3月30日に原処分庁に提出した納税の猶予申請書の記載内容は、次のとおりである。
(イ) 「納税の猶予を受けようとする理由」欄
 (通則法第46条第2項第4号に該当)前年所得の2分の1を超えて損失が生じた為
 (通則法第46条第2項第5号に該当)やむを得ない事由により、売上の減少
(ロ) 「納税の猶予を受けようとする期間」欄
 平成21年4月1日から平成22年3月31日まで12月間
ロ C社の概要
 C社は、平成20年3月○日に設立された空調設備点検修理施工業を営む法人であり、その代表取締役には請求人の子であるDが、また、取締役に請求人がそれぞれ就任している。

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2 争点

(1) 争点1 請求人には、5号該当(4号類似)事実があるか否か。

(2) 争点2 請求人は、納付困難と認められるか否か。

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3 主張

(1) 争点1 請求人には、5号該当(4号類似)事実があるか否か。

請求人 原処分庁
 請求人には、次のとおり、5号該当(4号類似)事実がある。
 納税の猶予申請に係る消費税額○○○○円は、平成20年3月に個人事業を廃止したため、同年1月から同年3月までの間に請求人が行った事業活動によるもので、当該期間の売上金額は2,559,745円で、平成19年1月から同年3月までの期間の売上金額は2,886,928円であり、親会社の発注減により11.33%の売上げの減少が生じている。
 また、請求人は平成20年3月に個人事業を廃止し、同年4月からC社の取締役として役員報酬を受け取る立場となったが、C社が営業不振であり、請求人の収入は、個人営業と同様かそれ以下の役員報酬しか取れなかった。
 請求人には、次のとおり、5号該当(4号類似)事実があるとは認められない。
 通則法第46条第2項第5号は、納税者の責めに帰すことができないやむを得ない事由による「売上げの減少」等があった場合にも、「著しい損失を受けた」場合に類する猶予該当事実としているところ、売上げ減少の理由であると請求人が主張した、「平成20年3月C社を請求人の二男を代表取締役、請求人を取締役として設立し、収入が給与収入のみになったこと」は、納税者がその責めに帰すことができないやむを得ない事由には該当しない。

(2) 争点2 請求人は、納付困難と認められるか否か。

請求人 原処分庁
 請求人は、次のとおり、納付困難と認められる。
 調査日である平成21年3月31日における預金残高はほとんどなく、大変逼迫した状態にあり、国税を一時に納付できないことが明らかである。また、生活費と借入返済がやっとの営業状況であり、所得は生活保護基準に照らしてかつかつか、それをさえ下回るものでしかない。
 請求人には、猶予該当事実が認められない以上、通則法第46条第2項に規定するその他の要件を判断するまでもない。

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4 判断

(1) 争点1 請求人には、5号該当(4号類似)事実があるか否か。

イ 法令等解釈
(イ) 4号該当事実
 通則法第46条第2項に基づく納税の猶予は、期限内納付及び国税が期限内に完納されなかった場合の強制徴収の例外として、一定の事由により納付困難になった納税者を救済するものであるが、租税徴収手続における他の納税者との公平という観点をも考慮すると、4号該当事実とは、納税の猶予を申請した納税者の責めに帰すことができないやむを得ない事由によって生じた国税の納付を困難ならしめる事業についての著しい損失をいうものと解される。
(ロ) 5号該当(4号類似)事実
 通則法第46条第2項第5号は、同項第1号から第4号までに掲げる事実に類する事実に基づき、納税者がその国税を一時に納付することができないと認められるときは、その納付することができないと認められる金額を限度として、その納税を猶予することができる旨規定しているところ、これは、同項第1号から第4号までに掲げる事実とはいえない場合であっても、当該事実に類する事実が生じた場合には、国税の納付が困難となる場合もあることから、納税の猶予をすることができる旨規定したものと解される。
 そして、上記(イ)のとおり、4号該当事実とは、納税の猶予を申請した納税者の責めに帰すことができないやむを得ない事由によって生じた国税の納付を困難ならしめる事業についての著しい損失をいうものと解されることからすれば、5号該当(4号類似)事実とは、事業についての著しい損失と同視できるような著しい売上げの減少等であって、納税の猶予を申請した納税者の責めに帰すことができないやむを得ない事由によって生じた国税の納付を困難ならしめるものをいうものと解される。
(ハ) 猶予取扱要領における4号該当事実の判定方法の相当性
 上記(イ)のとおり、4号該当事実とは、納税の猶予を申請した納税者の責めに帰すことができないやむを得ない事由によって生じた国税の納付を困難ならしめる事業についての著しい損失をいうものと解されるところ、事業についての損失の有無は、一定の期間における損益計算を行うことによって判定することが相当であり、損益計算の期間が通常1年間であることからすれば、原則として、それぞれその期間を1年とする調査期間と基準期間における損益を比較して、基準期間の利益金額の2分の1を超えて損失、すなわち赤字が生じていると認められる場合(基準期間において損失が生じている場合には、調査期間の損失金額が基準期間の損失金額を超えているとき)に該当するかどうかにより4号該当事実の有無を判定することとし、例外的に、調査期間以内において、損失原因があり、損失原因の発生した日が特定できる場合は、その日以降調査日までの間に生じたと認められる損失金額と基準期間の利益金額(又は損失金額)のうち損失原因の生じた日以降調査日までの期間に対応する期間の利益金額(又は損失金額)とを比較して4号該当事実の有無を判定しても差し支えないとする前記1の(3)のロの(ロ)の4号該当事実に関する猶予取扱要領の定めは、当審判所においても相当と認められる。
(ニ) 猶予取扱要領における5号該当(4号類似)事実の相当性
 前記1の(3)のロの(ハ)の5号該当(4号類似)事実に関する猶予取扱要領で定める事実は、納税の猶予を申請した納税者の責めに帰すことができないやむを得ない事由によって、国税の納付が困難となる場合が多いと考えられることからすれば、当該定めは合理的な定めというべきであり、当審判所においても相当と認められる。
 そして、上記(ロ)からすれば、猶予取扱要領で定める5号該当(4号類似)事実としての売上げの減少等とは、著しい売上げの減少のみならず、原材料費をはじめとする著しい経費の増加など、事業上の損失が生じる原因となる事実をいうものと解される。
(ホ) 5号該当(4号類似)事実の判定方法等
 5号該当(4号類似)事実が上記(ロ)のとおり解され、猶予取扱要領における4号該当事実の判定方法の定めが相当であることからすれば、5号該当(4号類似)事実の有無を判定するに当たっても、4号該当事実と同様に、それぞれその期間を1年とする調査期間と基準期間における売上げ等を比較して、判定することが相当である。
 なお、上記(イ)及び(ハ)によれば、4号該当事実が、納税の猶予を申請した納税者の責めに帰すことができないやむを得ない事由によって生じた国税の納付を困難ならしめる事業についての著しい損失をいうものと解されることからすれば、利益の減少による5号該当(4号類似)事実があるというためには、事業上の著しい損失、すなわち、著しい赤字の状態が生じたとまではいえないが、それに近い赤字の状態が生じていることが必要であると解される。
ロ 認定事実
 請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ) 請求人が原処分庁に提出した平成19年分及び平成20年分の所得税の確定申告書(以下、それぞれ「本件平成19年分確定申告書」、「本件平成20年分確定申告書」という。)の記載内容
 本件平成19年分確定申告書及び本件平成20年分確定申告書には、事業所得の所得金額が、それぞれ○○○○円、○○○○円と記載されているが、それらに対応する総収入金額は記載されていない。
 また、本件平成20年分確定申告書には、給与所得に対応する収入金額○○○○円、同収入から差し引かれた源泉徴収税額○○○○円、給与所得の所得金額○○○○円及び総合譲渡所得の収入金額から必要経費等を控除した差引金額○○○○円などと記載されている。
(ロ) 請求人が原処分庁に提出した請求人の個人事業の開廃業等届出書、C社が原処分庁に提出した法人設立届出書及び平成19年12月1日から平成20年11月30日までの決算報告書の記載内容等から認められる事実
 請求人は、平成20年3月○日に個人事業を廃業し、同日付で設立されたC社が、請求人の事業を引き継いだ。そして、請求人は、同日以降平成20年11月30日までの間に、○○○○円の役員報酬を受領している。
(ハ) 請求人の売上金額等
 請求人が当審判所に提出した平成19年1月から平成21年2月までの請求人及びC社の売上金額を記載した書類には、売上先別に預金口座への入金金額が記載されており、これによれば、平成19年1月から平成20年3月までの期間における請求人の売上金額は別表のとおりである。
ハ 本件への当てはめ
(イ) 猶予取扱要領が定める方法等による5号該当(4号類似)事実の判定の可否
 請求人は、前記3の(1)の「請求人」欄のとおり、納税の猶予申請に係る消費税及び地方消費税の額○○○○円は、平成20年1月から同年3月までの間の請求人の事業活動によるもので、この3か月間の売上金額は2,559,745円、この3か月間に対応する平成19年の売上金額は2,886,928円であり、親会社の発注減により11.33%の売上げの減少が生じているから、5号該当(4号類似)事実がある旨主張する。
 ところで、上記イの(ハ)のとおり、猶予取扱要領が定める4号該当事実の有無の判定方法は相当と認められ、また、同(ホ)のとおり、5号該当(4号類似)事実の有無を判定するに当たっても、4号該当事実と同様に判定することが相当であるが、請求人が平成20年1月から同年3月までの間に損失原因が発生した旨主張するものと解したとしても、その間においては、別表のとおり、前年の同時期の売上金額と大きな変動がないことから、その間において、損失原因が発生したとは認められず、上記ロの(ロ)のとおり、請求人は、平成20年3月○日に個人事業を廃止し、同日付で設立されたC社が請求人の事業を引き継ぎ、請求人はC社から役員報酬を受け取ることとなったが、このことも損失原因とは認められない上、請求人が原処分庁に提出した納税の猶予申請書に記載された納税の猶予を受けようとする期間の始期は、前記1の(4)のイの(ロ)のとおり、平成21年4月1日であるから、同(3)のロの(ロ)により、本件における調査日は同年3月31日(以下「本件調査日」という。)、これに基づく本件における調査期間は平成20年4月1日から平成21年3月31日まで、基準期間は平成19年4月1日から平成20年3月31日までとなり、損失原因は、当該調査期間以内に発生したものでないことからも、同年1月から同年3月までの間に損失原因があるとして、猶予取扱要領が定める4号該当事実の有無についての例外的な判定方法と同様の方法によって5号該当(4号類似)事実の有無を判定することは相当でない。
 また、上記ロの(ロ)のとおり、請求人は平成20年3月に個人事業を廃止しているので、本件調査日を基準とする調査期間及び基準期間の売上金額を比較することはできない。
 さらに、上記イの(ハ)のとおり、猶予取扱要領が定める4号該当事実の有無の判定方法は相当と認められ、また、同(ホ)のとおり、5号該当(4号類似)事実の有無を判定するに当たっても、4号該当事実と同様に判定することが相当であるから、本件調査日に近接した時期において、1年間の売上げの計算期間が終了している場合又は終了させることができる場合には、その期間の売上金額に基づき、売上げの減少の程度が著しいか否かを判断するのが相当であるが、上記ロの(ロ)のとおり、請求人は、平成20年3月○日に個人事業を廃止しているのであるから、著しい売上げの減少の有無を判定するための1年間の売上げの計算期間の終期は、同日又は同日に近接した時期とせざるを得ないところ、本件調査日が平成21年3月31日であることからすれば、平成20年3月○日又は同日に近接する時期が本件調査日に近接する時期とはいえず、したがって、この方法によって著しい売上げの減少の有無を判定することも相当でない。
 加えて、請求人は平成20年1月から同年3月までの売上金額と平成19年1月から同年3月までの売上金額を比較して著しい売上げの減少の有無を判定する旨主張するが、そのことを相当とする根拠は見当たらず、仮に、それぞれの売上金額を比較しても、別表のとおり、平成20年1月から同年3月までの売上金額は2,559,745円、平成19年1月から同年3月までの売上金額は2,886,928円であり、その減少の程度が著しいということができないことは明らかである。
 なお、本件の場合、請求人は、平成20年3月○日に事業を廃止し、請求人の事業を引き継いだC社から役員報酬を受け取っているので、役員報酬を売上金額とみなして判定することも考えられないではないが、個人事業における売上げに労務の対価としての部分が含まれることは否定できないものの、外部との取引に基づく事業における売上げと法人内部において決定される役員報酬は、その性質を異にするものであるから、役員報酬収入を個人事業における売上げとみなして、著しい売上げの減少の有無を判定することも相当でない。
(ロ) 請求人が主張する個人事業廃止後の事由の5号該当(4号類似)事実該当性
 請求人が個人事業を廃止し、請求人の事業を引き継いだC社から請求人が役員報酬を受領するようになったことは、いわゆる法人成りと認められ、これは、請求人自らの選択によるものであるから、このことによって、個人事業における売上金額に比較して、役員報酬の額が減少したとしても、それは請求人の責めに帰すことができないやむを得ない事由によって生じたものとは認められず、したがって、これが5号該当(4号類似)事実に当たるということはできない。
 また、請求人は、C社が営業不振のため、個人営業と同様かそれ以下の役員報酬しか取れなかったと主張するところ、C社の平成19年12月1日から平成20年11月30日までの決算報告書によれば、請求人からの短期借入金898,305円が計上されている一方、C社は○○○○円の経常利益を計上しており、代表取締役であるDその他の者からの借入れが計上されておらず、このことからすれば、請求人が個人営業と同様かそれ以下の役員報酬しか取れなかったことは、請求人が受け取る役員報酬の一部をC社に対し、請求人自身の判断によって貸し付けたものと評価できるので、これが、請求人の責めに帰すことができないやむを得ない事由によって生じたものと認めることもできず、したがって、これが5号該当(4号類似)事実に当たるということはできない。
(ハ) まとめ
 上記(イ)及び(ロ)によれば、請求人に5号該当(4号類似)事実があると認めることはできず、この点に関する請求人の主張には理由がない。

(2) 争点2 請求人は、納付困難と認められるか否か。

 通則法第46条第2項に規定する納税の猶予は、1納税者に猶予該当事実があること、2猶予該当事実に基づき、納税者が納付困難と認められること、3納税者から国税通則法施行令第15条《納税の猶予の申請手続等》第2項に規定する納税の猶予の申請書が提出されていること、4通則法第46条第1項の規定による納税の猶予の適用を受ける場合でないこと、5原則として、通則法第46条第5項に規定する担保の提供があることのすべての要件を充足する場合に限り、税務署長等がその申請を許可できるものである。
 したがって、上記(1)のハの(ハ)のとおり、請求人には、5号該当(4号類似)事実があるとは認められず、上記1の要件を充足しないことから、納税の猶予が認められる余地はなく、争点2については判断するまでもない。

(3) その他

 原処分のその他の部分については、当審判所の調査によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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