(平成23年2月14日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、飲食店を営む審査請求人(以下「請求人」という。)の法人税及び源泉徴収に係る所得税(以下「源泉所得税」という。)について、原処分庁が、「法人税の当初更正処分において請求人の関連法人に帰属するとした収益及び費用は請求人に帰属する」として法人税の再更正処分及び従業員給与等に係る源泉所得税の納税告知処分等を行ったのに対し、請求人が、これらの法人税の再更正処分及び源泉所得税の納税告知処分等は、原処分庁が調査を行わずにしたものであり、手続に違法があるなどとして同処分等の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 源泉所得税について
(イ) 請求人は、平成16年9月から平成18年8月までの各月分の役員、従業員の給与等及び退職手当等に係る源泉所得税について、別表1の「自主納付」欄記載の金額(合計まる1)をいずれも法定納期限までに納付した。
(ロ) また、請求人は、平成16年10月から平成18年9月までの各月分のホステス等の業務に関する報酬又は料金(以下「ホステス報酬等」という。)に係る源泉所得税について、別表2の「自主納付」欄記載の金額をいずれも法定納期限までに納付した。
(ハ) 原処分庁は、平成19年6月6日付で、請求人の上記(イ)の役員、従業員の給与等に係る源泉所得税のうち、平成16年10月及び平成18年8月の各月分について、別表1の「当初告知処分等及び還付等」の「告知額及び還付額等(まる2まる1)」欄の金額のとおりの各納税告知処分をした(以下、これらの各納税告知処分を、それぞれ「平成16年10月分当初告知処分」及び「平成18年8月分当初告知処分」という。)。
 また、原処分庁は、同日付で平成18年8月分当初告知処分に係る納付すべき税額について重加算税の額を○○○○円とする賦課決定処分をした(以下、「当初賦課決定処分」といい、平成16年10月分当初告知処分及び平成18年8月分当初告知処分と併せて「当初告知処分等」という。)。
(ニ) 請求人は、当初告知処分等を不服として、平成19年6月28日に異議申立てをしたところ、原処分庁は、平成19年8月28日付で、平成18年8月分当初告知処分及び当初賦課決定処分の全部を取り消した。
(ホ) 異議審理庁は、上記(ニ)の異議申立てについて、平成19年9月27日付で、まる1平成16年10月分当初告知処分に係る異議申立てを棄却する、まる2その他の処分(平成18年8月分当初告知処分及び当初賦課決定処分)に係る異議申立ては却下するとの異議決定をした。
(ヘ) 請求人は、異議決定を経た後の当初告知処分等に不服があるとして、平成19年10月22日に審査請求(以下「前回審査請求」という。)をした。
(ト) 国税不服審判所長は、請求人の前回審査請求と請求人の関連法人であるD社、E社及び請求人の役員であるFがした審査請求とを併合審理の上、請求人の前回審査請求については、平成20年10月20日付で、平成16年10月分当初告知処分については棄却、その他の処分(平成18年8月分当初告知処分及び当初賦課決定処分)については却下するとの裁決(以下「前回裁決」という。)をした。
(チ) 原処分庁は、前回裁決により、当初の減額更正処分においてD社に帰属するとしたクラブG(以下「本件クラブ」という。)に係る収益及び費用が請求人に帰属するとされたことから、従業員給与等の支払者は請求人であるとして、平成21年10月9日付で、請求人の平成16年9月から平成18年8月までの各月分の給与等及び退職手当等に係る源泉所得税並びに平成16年10月から平成18年9月までの各月分のホステス報酬等に係る源泉所得税について、それぞれ別表1の「原処分」の「原処分告知額(従業員分)」欄及び別表2の「原処分告知額」欄のとおりの各納税告知処分(以下「本件各告知処分」という。)をした。
 また、同日付で平成16年9月から平成18年5月までの各月分の源泉所得税の不納付加算税の各賦課決定処分並びに平成17年8月及び平成18年5月から平成18年8月までの各月分の源泉所得税の重加算税の各賦課決定処分をした(別表1の「原処分」の「賦課決定」欄記載のとおり。)。
(リ) 請求人は、上記(チ)の各処分を不服として、平成21年11月13日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、平成22年2月9日付で、不納付加算税及び重加算税の各賦課決定処分のうち、平成17年1月分については、不納付加算税の賦課決定処分の一部を取り消すとし、その他の各月分の不納付加算税及び重加算税の各賦課決定処分については、その全部を取り消すとする異議決定(当該異議決定により取り消された後の賦課決定処分を「本件賦課決定処分」といい、本件各告知処分と併せて「本件各告知処分等」という。)をし、その他の各処分については棄却の異議決定をした(異議決定後の状況は、別表1及び別表2の「異議決定」欄記載のとおり。)。
(ヌ) 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成22年3月8日に審査請求をした。
ロ 法人税の更正処分について
(イ) 請求人は、平成16年9月1日から平成17年8月31日まで及び平成17年9月1日から平成18年8月31日までの各事業年度(以下、それぞれ「平成17年8月期」及び「平成18年8月期」といい、これらを併せて「本件各事業年度」という。)の法人税について、確定申告書に別表3の「確定申告」欄のとおり記載して法定申告期限までにそれぞれ申告した。
(ロ) 原処分庁は、請求人の本件各事業年度の法人税の確定申告に係る収益及び費用の一部は、D社の営業に係るものであり請求人に帰属しないとして平成19年6月6日付で、別表3の「当初の更正処分」欄のとおり、本件各事業年度の当該確定申告に係る所得金額を減額する更正処分をした(以下「当初減額更正処分」という。)。
(ハ) 次いで、原処分庁は、平成22年5月10日付で、当初減額更正処分においてD社に帰属するとした収益及び費用は請求人に帰属するとして、請求人に対し、別表3の「原処分」欄のとおり本件各事業年度の法人税の各再更正処分(以下「本件各再更正処分」という。)をした。
(ニ) 請求人は、本件各再更正処分を不服として、平成22年6月10日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年8月6日付で棄却の異議決定をした。
(ホ) 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成22年9月15日に審査請求をした。
ハ そこで、上記イの(ヌ)の審査請求に上記ロの(ホ)の審査請求を併合して審理する。

(3) 関係法令等

イ 国税通則法(以下「通則法」という。)第24条《更正》は、税務署長は、納税申告書に記載された課税標準等又は税額等がその調査したところと異なるときは、その調査により、当該申告書に係る課税標準等又は税額等を更正する旨規定している。
ロ 通則法第26条《再更正》は、税務署長は、更正をした後、その更正をした課税標準等又は税額等が過大又は過少であることを知ったときは、その調査により、当該更正に係る課税標準等又は税額等を更正する旨規定している。
ハ 通則法第36条《納税の告知》第1項本文及び同項第2号は、税務署長は、国税に関する法律の規定により源泉徴収による国税でその法定納期限までに納付されなかったもの等の国税を徴収しようとするときは、納税の告知をしなければならない旨規定している。
ニ 所得税法第221条《源泉徴収に係る所得税の徴収》は、所得税を徴収して納付すべき者がその所得税を納付しなかったときは、税務署長は、その所得税をその者から徴収する旨規定している。
ホ 所得税法第205条《徴収税額》第2号及び同法施行令第322条《支払金額から控除する金額》は、所得税法第204条《源泉徴収義務》第1項第6号に掲げる報酬又は料金について徴収すべき所得税の額は、同一人に対し1回に支払われる当該報酬又は料金の金額から5,000円に当該支払金額の計算期間の日数を乗じて計算した金額を控除した残額に100分の10の税率を乗じて計算した金額とする旨規定している。

(4) 争点

イ 争点1 本件各告知処分等及び本件各再更正処分は調査手続を欠く違法なものであるか否か。
ロ 争点2 一度還付した源泉所得税額について納付すべきとした本件各告知処分等は違法であるか否か。

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2 主張

(1) 争点1について

イ 原処分庁
 「調査」とは、課税庁が行う課税標準等及び税額等を認定するに至る一連の判断過程の一切を意味するものであり、調査方法等については、権限ある職員の合理的な裁量に委ねられていると解されているところ、本件各告知処分等及び本件各再更正処分は、H国税局査察部(以下「査察部」という。)の実施したD社を犯則嫌疑者とする国税犯則取締法に基づく犯則調査並びに請求人及びE社の調査(以下、これらの調査を併せて「本件査察調査」という。)において収集した資料等を再度確認検討して行われたものであり、調査手続に違法はない。
ロ 請求人
 原処分庁は、本件査察調査をもって請求人に対し調査をした旨主張するが、本件査察調査に基づく当初告知処分等は平成19年6月6日付でなされており、本件各告知処分等及び本件各再更正処分をする際には、改めて調査(所得税法第234条及び法人税法第153条に基づく質問検査)がなされなければならないにもかかわらず、請求人は、本件各告知処分等及び本件各再更正処分に際して原処分庁から帳簿等の閲覧を求められたことも、これを見せたこともないのであるから、原処分庁が調査をすることなく行った本件各告知処分等及び本件各再更正処分は、適正な手続を欠く違法なものである。

(2) 争点2について

イ 原処分庁
 原処分庁は、当初減額更正処分において、本件クラブの営業に係る収益及び費用はD社に帰属するものであり請求人は給与等の支払者には該当しない等として、上記1の(2)のイの(イ)及び(ロ)の請求人が自主納付した源泉所得税の一部の金額について職権による還付又は請求人が納付すべき国税に充当(以下「本件還付等」という。)をしているところ、原処分調査によれば、本件クラブの営業に係る収益及び費用は(前回裁決のとおり)請求人に帰属し、請求人がその従業員の給与等及び退職手当等並びにホステス報酬等の支払者と認められる。
 そうすると、請求人は、本件還付等がなされた従業員の給与等及びホステス報酬等の費用に係る源泉所得税を法定納期限までに納付していないこととなるから、通則法第36条第1項第2号の規定に基づき本件各告知処分等を行ったもので適法である。
ロ 請求人
 本件各告知処分で、一度減額したものについて、いかなる理由があろうとも再度増額の納税告知処分をすることは、権利の濫用であり違法である。

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3 判断

(1) 争点1について

イ 法令解釈
 通則法第24条及び同法第26条に規定する「調査」とは、課税標準等又は税額等を認定するに至る一連の判断過程の一切を意味すると解され、課税庁の証拠資料の収集、証拠の評価あるいは経験則を通じての要件事実の認定、租税法その他の法令の解釈を経て更正処分に至るまでの思考、判断を含む極めて包括的な概念であるところ、同法がその方法、時期等の具体的手続について何ら規定していないことからすると、その方法、時期、範囲に関しては、課税庁の合理的な裁量に委ねられており、課税庁がその必要と判断する範囲及び程度において調査し、それをもって足りるものと解され、課税庁が内部において既に収集した資料を基礎として正当な課税標準を求めることも上記裁量権の範囲内であり「調査」に含まれるものと解するのが相当である。
 また、国税査察官が犯則嫌疑者に対し、適法な犯則調査を行った場合に、課税庁がその調査若しくはその過程で収集された資料を引き継ぎ、これを課税処分を行うために利用することは許されると解するのが相当である。
ロ 認定事実
 原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ) 請求人は、平成16年9月○日に、a県b市c町○−○を本店所在地とし、Jを代表取締役として設立された、バー、クラブ等の飲食店の経営等を目的とする同族会社である。
 なお、請求人の代表取締役は、平成19年1月○日付で、Jから同人の娘であるMに変更されている。
(ロ) 本件クラブは、a県d市e町○−○所在のナイトクラブであり、本件クラブの営業に係る収益及び費用については、平成16年9月○日の請求人の設立後は、請求人の営業に係るものとして請求人が法人税の確定申告をしていた。
(ハ) 査察部は、平成18年9月20日からD社を犯則嫌疑者として、国税犯則取締法に基づく犯則調査を実施し、併せて請求人及びE社も調査した。
(ニ) 原処分庁は、請求人の役員及び従業員に係る給与等の源泉所得税並びに請求人の法人税について、査察部から引継ぎを受けた資料等を調査した上で、平成19年6月6日付で、当初告知処分等及び当初減額更正処分をした。
(ホ) その後、原処分庁は、前回裁決により上記1の(2)のイの(チ)のとおり、当初減額更正処分においてD社に帰属するとした収益及び費用が請求人に帰属することとされたことから、源泉所得税については、従業員給与等の支払者は請求人であるとして、当初告知処分等において減額した又は本件還付等の対象とした従業員給与等に係る源泉所得税の徴収処理をするため、当初告知処分等に係る請求人の源泉徴収簿等の関係資料、請求人の源泉所得税の納付事績等を改めて照合及び検討し、また、法人税については、当初減額更正処分に係る本件クラブの営業に係る収益及び費用の帰属誤りを是正するため、当初減額更正処分に係る関係資料、請求人が原処分庁に提出した法人税等の確定申告書、決算報告書及び勘定科目内訳書等を改めて照合及び検討して、平成21年10月9日付で本件各告知処分等をし、平成22年5月10日付で本件各再更正処分をした。
A 本件各告知処分の内容は次のとおりである。
 本件各告知処分のうち、平成16年12月、平成17年1月、平成17年8月、平成17年12月、平成18年1月及び平成18年6月の各月分に係る各納税告知処分は、従業員に対する賞与に適用した源泉徴収税額の算出率及び年末調整の計算に誤りがあること等により従業員の給与等に係る源泉所得税の額の修正を含むものである。
 なお、上記の6月分以外の本件告知処分に係る各月分の従業員の給与等及び退職手当等並びにホステス報酬等に係る源泉所得税の金額は、上記1の(2)のイの(イ)及び(ロ)の自主納付の金額と同額である。
B 本件各再更正処分の内容は次のとおりである。
 当初減額更正処分においてD社に帰属するとした本件クラブの営業に係る収益及び費用は、請求人の確定申告どおり請求人に帰属するとするものである(当初減額更正処分に係る所得金額に当初減額更正処分における減算金額と同額を加算し、当初減額更正処分における加算金額のうち架空計上の役員報酬等を除く部分の金額を減算するものである。)。
ハ 本件への当てはめ
 通則法第24条及び同法第26条に規定する「調査」の方法、時期、範囲に関しては、課税庁の合理的な裁量に委ねられ、課税庁がその必要と判断する範囲及び程度において調査し、それをもって足りるものと解されているところ、課税庁が内部において既に収集した資料を基礎として正当な課税標準を求めることも「調査」の範囲に含まれるものと解される。
 本件における本件各納税告知処分等及び本件各再更正処分は、上記ロの(ホ)のとおり、まる1請求人の源泉所得税について、当初告知処分等に係る請求人の源泉徴収簿等の関係資料及び源泉所得税の納付事績等の既に収集した資料等を改めて照合及び検討した上で、また、まる2請求人の法人税について、当初減額更正処分の関係資料、法人税の確定申告書及び同附属書類等の既に収集した資料等を改めて照合及び検討した上で行われたものであり、適法な調査により行われたものであるから調査手続を欠く違法な処分とは認められない。したがって、請求人の主張には理由がない。

(2) 争点2について

 請求人は、本件各告知処分等で、納付すべき税額を一度減額したものについて、再度増額の納税告知処分をすることは権利の濫用であり違法である旨主張する。
 しかしながら、課税庁は、自ら行った処分に瑕疵を発見したときは、その瑕疵が実体的なものであれ、手続的なものであれ、適正な課税の確保実現を図るため、これを取り消して新たな処分をなし得るものと解すべきである。
 本件は、原処分庁が当初告知処分等及び本件還付等を行ったところ、その後本件クラブの従業員の給与等及び退職手当等並びにホステス報酬等の費用が請求人に帰属し、請求人がこれらの費用の支払者と認められることが判明し、所得税法第221条に規定する所得税を徴収して納付すべき者がその所得税を納付しなかったときに該当することが分かったから、処分が行われたものである。
 したがって、原処分庁が通則法第36条第1項第2号の規定に基づき請求人に対して本件各告知処分等を行ったことに違法性はなく、請求人の主張には理由がない。

(3) 本件各告知処分について

イ 給与等及び退職手当等に係る源泉所得税の額
 原処分庁は、上記(1)のロの(ホ)のAのとおり、請求人の源泉所得税の計算誤り等のある各月の従業員の給与等に係る源泉所得税の額を修正した上で本件各告知処分を行っているところ、当審判所の調査によっても本件各告知処分に係る給与等及び退職手当等に係る源泉所得税の額に誤りは認められない。
ロ ホステス報酬等に係る源泉所得税の額
 請求人は、ホステス報酬等に係る源泉所得税の上記1の(2)のイの(ロ)の自主納付の額の算定に当たり、各月の1日から末日までの期間を1回の支払期間とし、各人ごとに各月のホステス報酬等の支払金額から5,000円に各人の出勤日数を乗じた金額を控除し、その残額に100分の10の税率を乗じて源泉所得税の額を算定していることが認められるところ、原処分庁も同様の計算方法により本件各告知処分を行っている。
 しかしながら、所得税法第205条及び同法施行令第322条において、ホステス報酬等について徴収すべき源泉所得税の額は、ホステス報酬等の金額から5,000円にその支払金額の計算期間の日数を乗じて計算した金額を控除した残額に100分の10の税率を乗じて計算した金額とする旨規定されているところ、ホステス報酬等の額が一定の期間ごとに計算されて支払われている場合においては、ホステス報酬等から控除する控除額の算定の基礎となる「支払金額の計算期間の日数」はホステス報酬等の支払金額の計算期間に含まれるすべての日数を指すものと解するのが相当である(最高裁判所平成22年3月2日第三小法廷判決)。
 そこで、当審判所において、当該各月のすべての日数を請求人の支払金額の計算期間の日数として請求人のホステス報酬等に係る源泉所得税の額を計算すると、当該金額は、別紙「取消額等計算書」の「2取消税額の計算」の「裁決後の額B」欄のとおりとなり、これらの金額はいずれも本件各告知処分の報酬に係る源泉所得税の額を下回るから、ホステス報酬等に係る源泉所得税の額を別紙「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。

(4) 本件賦課決定処分について

 平成17年1月分の給与等に係る源泉所得税の納税告知処分は、上記(3)のイのとおり適法であり、また、当該納税告知処分のうち不納付加算税の額の計算の基礎となるべき税額については、上記(1)のロの(ホ)のAのとおり、適用した源泉所得税額の算出率の誤り及び年末調整の計算誤りにより生じたものであり、同処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が同処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、通則法第67条《不納付加算税》第1項に規定する正当な理由があるとは認められないから、本件賦課決定処分は適法である。

(5) その他の請求人の主張について

 請求人は、原処分庁が当初減額更正処分及び当初告知処分等において架空計上であると認定した当時の代表取締役J及び取締役Kに対する役員報酬について、架空計上したものではない旨主張する。
 しかしながら、これらの役員報酬については、前回裁決においてFに対する役員報酬を上記両名に対する役員報酬であるかのように仮装したものである旨判断されているところ、本件審査請求においてもこれを覆すに至る証拠は認められないから、請求人の主張には理由がない。

(6) その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によってもこれを不相当とする理由は認められない。
 また、請求人は、平成21年10月9日付でされた平成16年9月から平成16年12月まで及び平成17年2月から平成18年5月までの各月分の源泉所得税の不納付加算税の各賦課決定処分並びに平成17年8月分及び平成18年5月から平成18年8月までの各月分の源泉所得税の重加算税の各賦課決定処分の取消しを求めているが、それらの各処分は平成22年2月9日付の異議決定において既に取り消されているから、当該審査請求はその対象を欠く不適法なものである。
 さらに、請求人は、平成22年2月9日付でされた異議決定の訂正を求めているが、通則法第76 条《不服申立てができない処分》の規定によれば、異議決定に対する審査請求は認められないから、当該審査請求は不適法である。

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