(平成23年2月23日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、仮受金勘定に計上された金額は売上げに計上すべきであったなどとして法人税並びに消費税及び地方消費税の修正申告をしたところ、原処分庁が、請求人の仮受金に関する経理処理が隠ぺい又は仮装に当たるなどとして重加算税の賦課決定処分を行ったことに対し、請求人が、当該処理は隠ぺい又は仮装に当たらないとして同処分の一部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 請求人は、別表1記載のとおり、平成14年2月1日から平成15年1月31日まで、平成15年2月1日から平成16年1月31日まで、平成16年2月1日から平成17年1月31日まで、平成17年2月1日から平成18年1月31日まで、平成18年2月1日から平成19年1月31日まで、平成19年2月1日から平成20年1月31日まで及び平成20年2月1日から平成21年1月31日までの各事業年度(以下、それぞれ「平成15年1月期」などといい、これらの各事業年度を併せて「本件各事業年度」という。)の法人税の修正申告に係る重加算税の賦課決定処分について、その一部の取消しを求め平成22年5月27日に審査請求をした。
ロ 請求人は、別表2記載のとおり、平成14年2月1日から平成15年1月31日まで、平成15年2月1日から平成16年1月31日まで、平成16年2月1日から平成17年1月31日まで、平成17年2月1日から平成18年1月31日まで、平成18年2月1日から平成19年1月31日まで、平成19年2月1日から平成20年1月31日まで及び平成20年2月1日から平成21年1月31日までの各課税期間(以下、それぞれ「平成15年1月課税期間」などという。)の消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)の修正申告に係る重加算税の賦課決定処分について、その一部の取消しを求め平成22年5月27日に審査請求をした。

(3) 関係法令

 国税通則法(以下「通則法」という。)第68条《重加算税》第1項は、同法第65条《過少申告加算税》第1項の規定に該当する場合において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額(その税額の計算の基礎となるべき事実で隠ぺいし、又は仮装されていない事実に基づく税額を控除した税額)に係る過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に100分の35の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する旨規定している。

(4) 基礎事実

イ 請求人の事業等
 請求人は、食品の卸売業を目的として平成6年2月○日に設立された法人である。
 なお、請求人の主な事業は、スーパーマーケット又はデパート等(以下「スーパー等」という。)の店頭などの場所を借りて、第三者に商品の販売を行わせるものであり(以下、請求人の事業を「本件事業」といい、商品の販売を行う第三者を「本件売子」という。)、本件売子が請求人から仕入れた商品を販売する取引(以下「本件販売員取引」という。)と本件売子が自ら調達した商品を販売する取引(以下「本件帳合先取引」という。)の2つの形態がある。
ロ 本件事業に係る取引代金の決済等
 請求人は、スーパー等から、本件事業に係る商品販売の売上金のうちスーパー等の取り分(以下「本件歩銭」という。)を差し引かれた後の金員(以下「本件受取金員」という。)を受け取り、当該金員から、次の(イ)から(ニ)までの各金員を控除した後の金員(以下「本件売子支払金員」という。)を本件売子に支払っている。
(イ) 請求人の収入となるロイヤリティ(以下「本件帳合料収入」という。)。
(ロ) スーパー等の販路の拡張に携わった者(以下「本件拡張員」という。)に支払う帳合料(以下「本件拡張員帳合料」という。)。
(ハ) 請求人が、本件売子に対して提供した本件事業に係る商品販売に使用する販売台や車両などの賃料収入等(以下「本件リース料収入」という。)。
(ニ) 請求人からの仕入代金など及び請求人が立て替えて支払った本件事業に係る商品販売における各種の経費(以下「本件立替経費」という。)など。
ハ 本件売子支払金員の支払に際して作成される帳票等
(イ) 請求人は、本件販売員取引に関し、本件売子ごとに支払明細書と題する帳票(以下「本件支払明細書」という。)を作成しているところ、当該帳票には、本件事業に係る商品販売の売上額のほか、本件歩銭及び本件拡張員帳合料の率並びに同売上額から本件歩銭及び本件拡張員帳合料を控除した額が記載され、そのほか、本件帳合料収入、本件リース料収入及び本件立替経費の額などの控除金額並びにその控除後の本件売子支払金員が記載されている。
(ロ) 本件帳合先取引に関しては、本件売子ごとに御取引先別台帳と題する帳票(以下「本件御取引先別台帳」という。)を作成しているところ、当該帳票には、本件事業に係る商品売上額、同商品売上額から本件売子に支払われる金額及びその同商品売上額に対する支払割合を表記しているほか、1か月の合計額が末尾に記載され、本件リース料収入及び本件立替経費などが発生したものについては、本件御取引先別台帳の各月の取引の末尾に、本件リース料収入及び本件立替経費の額などが手書きで記載され、これらの金員を控除した後の金員が、本件売子支払金員となる旨が記載されている。また、本件帳合先取引に係る本件帳合料収入については、スーパー等ごとに集計した表(以下「本件帳合料収入一覧表」という。)を作成している。
ニ 請求人における経理処理の状況
 請求人が収受した本件受取金員については仮受金勘定に計上され、本件帳合料収入については仮受金勘定から売上勘定に振り替えられていたところ、本件拡張員帳合料については、その支出時に外注費勘定に計上する経理処理はされていたものの、それに対応する仮受金勘定について売上勘定に振り替えられておらず、本件リース料収入及び本件立替経費については、固定資産の減価償却費の計上や経費処理などがされていたところ、それに対応する仮受金勘定について、本件販売員取引に関する分は売上勘定などに振り替えられたが、本件帳合先取引に関する分は同じ経理処理がされなかったため、仮受金勘定のまま残ることとなった。
ホ 請求人は、本件拡張員帳合料に関しては、本件販売員取引及び本件帳合先取引による各支払金額を本件拡張員ごとに記載した「支払一覧表」と題する帳票を作成するなどして、その支払額を、現金出納帳に業務委託手数料と記帳していた。
ヘ 請求人の本件各事業年度の確定申告書に添付された貸借対照表に記載された仮受金勘定の額は、別表3の「仮受金勘定の残高」各欄記載のとおりである。
ト 請求人は、原処分に係る調査(以下「本件調査」という。)を担当した職員(以下「本件調査担当職員」という。)から、売上げの計上漏れがあるなどの指摘を受け、別表1及び別表2の「修正申告」欄記載のとおりの法人税及び消費税等の各修正申告(以下「本件各修正申告」という)をした。
チ 原処分庁は、本件各修正申告のうち、別表4の「修正申告額」欄記載の仮受金勘定に係る部分は隠ぺい又は仮装に当たるなどとして、そのほかの収入除外に係る修正申告額などを含めて、別表1及び別表2の「重加算税の額」欄記載のとおり、法人税及び消費税等に係る重加算税の各賦課決定処分(以下「本件重加算税各賦課決定処分」という。)を行った。

(5) 争点

 仮受金勘定の一部を適正に経理処理をしていなかったことが隠ぺい又は仮装に当たるか否か。

トップに戻る

2 主張

(1) 原処分庁

 請求人の経理処理は、次の理由により、隠ぺい又は仮装に当たる。
イ 請求人の代表者であるBは、請求人の顧問税理士であったD税理士の事務所の事務員のEから、仮受金勘定の残高が累増する理由を解明するよう求められたにもかかわらず、これを解明することなく放置していたことが認められ、また、平成19年1月期の決算において仮受金勘定の一部を売上げに振り替える経理処理を行ったにもかかわらず、その翌事業年度以降において、仮受金勘定に関し適正な経理処理をしなかったことなどからすれば、仮受金勘定の残高の中に請求人の所得となるものが含まれているとの認識がありながら、あえて適正な経理処理をせずに放置していたものと認められる。
ロ 請求人は、本件拡張員帳合料が本件受取金員から支払われるのであるから、その支払は仮受金勘定の減少となることを認識していたと認められるところ、本件拡張員帳合料の支払について、現金出納帳に業務委託手数料の支払として虚偽の記載をしていたことが認められる。そしてD税理士に経理関係資料の一部を提出せず、また、本件拡張員帳合料の取引内容を具体的に説明しないことにより、D税理士をしてこれを外注費と経理せしめたものと認められる。
ハ また、仮受金勘定のうち、請求人の収入となる本件リース料収入に相当する金員が仮受金勘定のままとなっていたところ、平成20年1月期に、Eから本件リース料収入の一部が収入に計上されていない旨の指摘を受けたにもかかわらず、指摘を受けた年分の経理処理を行ったのみで過年度分については経理処理を行わなかった。
 また、本件御取引先別台帳には、本件リース料収入などを控除した金員が本件売子支払金員となる旨記載されていることからすると、当該台帳をD税理士に提出していれば適正な経理処理がされたにもかかわらず、あえてこれを提出しなかった。
ニ 以上のとおり、請求人は、仮受金勘定の残高の中に請求人の所得になるものが含まれているとの認識がありながら正当な経理処理をせずにあえてこれを放置し、さらに、本件御取引先別台帳の存在を隠匿してこれをD税理士に提出しなかったのであり、このことは、所得を過少に申告するという確定的な意図のもとでなされた行為であり、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたものと解されるから、隠ぺい又は仮装を行っていたことになる。

(2) 請求人

 仮受金勘定に係る経理処理が誤っていたとしても、そのことは、次のとおり、隠ぺい又は仮装に当たらないから、本件重加算税各賦課決定処分のうち仮受金勘定の経理処理に係る部分は違法である。
イ 本件事業に係る取引は、取引業者や取引件数が多く、取引内容も多岐にわたる上、代金決済に係る締日、入金日等がまちまちであるため、仮受金勘定について正確な経理処理を行うためには全体の取引を熟知し、関係書類の精査・照合が必要であるから、会計や税務の素人であるBとしては仮受金勘定の増加要因を解明することは困難であった。また、仮に、Bが、仮受金勘定の増加に疑問を抱いていたとしても、そのことをもって隠ぺい又は仮装をしていたことにはならない。
 他方、Eは、毎年期限に迫られて決算処理を行っていたため正確な経理処理を先送りし、誤った経理処理のまま放置したものである。
ロ 請求人は、本件御取引先別台帳に代わるものとして、D税理士の指示により、本件帳合先取引に係る本件帳合料収入について、本件帳合料収入一覧表を作成し、同税理士に提出していた。
 本件拡張員帳合料の支払を現金出納帳に業務委託手数料と記載した理由は、当該支払がスーパー等の販路拡大に係る手数料を意味するからである。そして、Eは、本件拡張員の存在を認識していたはずであるから、本件拡張員帳合料が、本件受取金員から支払われることは容易に理解できたのであって、仮受金勘定が正しく経理処理されなかった理由は、Eが安易な判断によって誤った経理処理を行ったからである。よって、請求人が、現金出納帳に虚偽の記載をした事実も、D税理士をして偽りの経理処理をさせた事実もない。
ハ 請求人は、本件調査において、本件調査担当職員に対して何のちゅうちょもなく本件御取引先別台帳を提示したことからしても、本件御取引先別台帳の存在を隠し意図的にこれをD税理士に提出しなかったとはいえない。また、本件御取引先別台帳は、請求人の事務所内の書庫に他の帳簿書類と一緒に保管されていたのであるから、D税理士又はEは当該台帳を自由に見ることができる状態にあった。そして、仮に、本件御取引先別台帳を提出しなかったことによって、請求人がD税理士をして正確な経理処理を行うことを阻害したというのであれば、本件御取引先別台帳の提出がないことと仮受金勘定に係る経理処理の誤りとの間には明確な因果関係がなければならないところ、そのような因果関係も認められない。
ニ なお、請求人がした仮受金勘定に係る修正申告には、すでに除斥期間が経過している本件各事業年度以前に計上された仮受金勘定に係る取引が含まれている可能性もあるところ、これらを精査することなく画一的に重加算税の対象とするのは不適切である。

トップに戻る

3 判断

(1) 法令解釈

 通則法第68条第1項に規定する重加算税の制度は、納税者が過少申告をするにつき事実の隠ぺい又は仮装という不正な方法に基づいて行われていた場合に、違反者に対して課せられる行政上の措置であるから、重加算税を課すためには、納税者が課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺい、又は仮装の行為を原因として過少申告の結果が発生したものであれば足り、それ以上に、申告に際し、納税者において過少申告を行うことの認識を有していることまでを必要とするものではないと解される。
 そして、この「事実を隠ぺいする」とは、納税者がその意思に基づいて、課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実を隠ぺいしあるいは脱漏することをいい、また、「事実を仮装する」とは、納税者がその意思に基づいて、所得、財産あるいは取引上の名義等に関し、あたかも、それが事実であるかのように装うなど、事実を歪曲することをいうと解される。
 ただし、通則法第68条第1項の適用に当たっては、架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為が存在したことまで必要であると解するのは相当でなく、納税者が、当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたような場合には、重加算税の賦課要件が満たされるものと解すべきである。

(2) 認定事実

 請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、以下の各事実が認められる。
イ 請求人が本件受取金員の経理処理において仮受金勘定を使用したのは、設立当初の関与税理士からの提案によるものであり、D税理士に代わってからも同様の経理処理を続けてきた。また、本件拡張員帳合料についても、設立当初から、業務委託手数料として現金出納帳に記帳してきた。
ロ Bは、請求人の仮受金勘定の残高が増加していることについては、Eから指摘を受け、疑問に感じてはいたものの、自分では原因が分からず、増加要因を積極的に解明することはしておらず、D税理士から、あらためて仮受金勘定の内訳の分かる資料の提出などを求められたこともなかった。
ハ Eは、請求人の設立当初から請求人の決算等を担当してきたところ、本件拡張員帳合料は、販路拡大のための手数料である旨の説明を受け、外注費とする経理処理をしてきたものの、仮受金勘定の詳細が分からなかったなどの理由から、これを売上げへ振り替えるなどの処理はしなかった。
ニ Eは、請求人において仮受金が増加する原因について解明に至らなかったものの、平成19年1月期の決算において、Bの指示はなかったが、特に仮受金勘定の内容を精査することなく、自らの判断で仮受金を売上げに振り替えることとした。
ホ Bは、平成19年1月期の決算においてEが行った、仮受金勘定の一部を売上げに振り替える経理処理を容認した。
ヘ 請求人は、D税理士に対し、現金出納帳、本件販売員取引に関する資料として本件支払明細書及び本件帳合先取引に関する資料として本件帳合料収入一覧表を提出したものの、本件御取引先別台帳は提出しなかった。
ト 本件御取引先別台帳は、請求人の事務所内の書庫に他の帳簿書類等と一緒に保管されており、請求人の関係者はこれを自由に見ることができる状態にあった。請求人は、本件調査において、本件御取引先別台帳を他の帳簿書類とともに本件調査担当職員に提示した。

(3) 判断

イ 原処分庁は、まる1請求人が仮受金勘定の残高の中に請求人の所得となるものが含まれているとの認識がありながら、あえて適正な経理処理をせずに放置していたこと、まる2本件拡張員帳合料の支払について現金出納帳に虚偽の記載をしたり、D税理士に具体的に説明しなかったことによって外注費として計上させたこと、まる3本件御取引先別台帳をD税理士にあえて提出しなかったことなどの事実をもって、隠ぺい又は仮装の行為である又は所得を過少に申告する確定的な意図を外部からうかがい得る特段の行動であるなどとして、請求人の経理処理が隠ぺい又は仮装に当たる旨主張する。
ロ 本件御取引先別台帳の不提出について 
 請求人は、本件販売員取引につき、上記1(4)ハ(イ)及び上記(2)ヘのとおり、本件拡張員帳合料の率が記載されている本件支払明細書をD税理士に提出していた一方、本件帳合先取引については、上記1(4)ホ及び上記(2)ヘのとおり、当該取引に係る本件拡張員帳合料が計上されている現金出納帳をD税理士に提出していたことからすれば、本件帳合先取引の明細が記載された本件御取引先別台帳をD税理士に提出していないとはいえ、D税理士において本件販売員取引及び本件帳合先取引のいずれに関しても本件拡張員帳合料が発生していることを容易に知り得るだけの資料を提出していたというべきである。そして、上記(2)トによれば、本件御取引先別台帳の保管状況はそれが隠匿されていたとはいい難いものであり、本件調査における請求人の態度は本件御取引先別台帳を隠匿しようという態度であるとはいい難い。
 以上によれば、本件御取引先別台帳がD税理士に提出されていなかった事実があっても、その保管状況や本件調査時の請求人の態度、事実関係が明らかになる他の資料をD税理士に提出していることなど事実の隠ぺい又は仮装の故意を有する者及び過少申告の意図を有する者の行動にしては不自然な事実が認められることに照らすと、かかる事実が請求人の故意によるものであるといえないだけでなく、この事実から請求人に過少申告の確定的な意図があったとまでいうこともできない。
ハ 本件拡張員帳合料の経理処理について
 上記(2)イによれば、請求人における仮受金勘定を利用した経理処理は、設立当初の関与税理士主導の下に行われたものであり、現金出納帳の記載についても設立当初から行われているものであって、上記(2)ハのとおり、Eが、請求人の設立当初から関与税理士がD税理士に代わった後も請求人の決算等を担当してきていることを併せて考えると、Eが請求人の取引形態を熟知しており、請求人の帳簿等の記載については設立当初の関与税理士及びEが深く関与していたと認められる。
 以上の事実からすると、まず、請求人の経理処理の方法を主導したのが設立当初の関与税理士であるから、請求人が主導的にD税理士に誤った経理処理をさせたとの事実の存在には疑問を抱かざるを得ず、D税理士の事務員であるEが、請求人の取引について既に熟知しており、設立当初の関与税理士主導の下に経理処理の方法が確立していたのであるから、請求人が取引内容の具体的説明をD税理士自身にしなかったからといって、それが故意の隠ぺい又は仮装の行為であるとか、過少申告の確定的意図を外部からうかがい得る特段の行動であるなどということはできない。また、上記の事実に照らすと、現金出納帳の記載についても税理士若しくはEの指導に基づくものである可能性を否定できず、これをもって、請求人が故意に誤った記載をしたものとまでいうことはできないだけでなく、請求人に過少申告の確定的意図があったということもできない。
ニ 仮受金勘定の経理処理について
 上記(2)ロからすれば、請求人は、仮受金勘定が増加していることの認識はあったものの、請求人とD税理士及びEとの間での認識の相違及び意思疎通の欠如などにより、具体的な要因を解明することなく、正当な経理処理を行わないまま放置していたと認められる。また、平成19年1月期に仮受金勘定の一部を売上げに振り替える経理処理を行っているものの、これは、上記(2)ニ及びホのとおり、仮受金勘定の増加要因が解明されたからではなく、仮受金勘定の増加要因を具体的に特定するまでには至っていなかったと認められる。
 これらのことからすれば、請求人、D税理士及びEが、帳簿書類等について十分な検討をし、かつ、意思疎通を十分に図るなどして原因を解明して適正な経理処理をすべきであり、請求人の経理処理が適正さを欠いた処理であったことについて非難を加えられるべきことであったとしても、請求人が積極的な意思をもってあえて適正な経理処理を行うことなくこれを放置したとまで認めるには至らず、かかる仮受金勘定の誤った経理処理をもって、故意の隠ぺい又は仮装の行為や過少申告の確定的意図を外部からうかがい得る特段の行動があったとまでいうことはできない。
ホ 本件重加算税各賦課決定処分について
 仮受金勘定の一部を適正に経理処理をしていなかったことについては、上記ロ、ハ及びニのとおり、隠ぺい又は仮装に当たるとは認められないことから重加算税を賦課することは相当ではないと認められる。また、本件各修正申告により納付すべき税額の計算の基礎となった事実のうちに、当該修正申告前の税額の計算の基礎とされなかったことについて、通則法第65条第4項に規定する正当な理由がある場合に該当しない以上、過少申告加算税の賦課要件は満たしていることとなるから、本件重加算税各賦課決定処分の中で仮受金勘定の経理処理に係るもののうち過少申告加算税に相当する額を超える部分については、別紙1−1から別紙1−7まで及び別紙2−1から別紙2−7までの「取消額等計算書」のとおり、その一部を取り消すのが相当である。

(4) 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

トップに戻る

トップに戻る