(平成23年9月2日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、種苗店を営む傍ら不動産の貸付けを業とする審査請求人(以下「請求人」という。)が、請求人及びその親族が役員を務める法人に対して、賃貸の用に供する建物及び駐車場施設の各管理業務を委託したことの手数料の全額を不動産所得の必要経費及び消費税の課税仕入れに係る支払対価の額として所得税並びに消費税及び地方消費税(以下、消費税及び地方消費税を併せて「消費税等」という。)の申告をしたのに対し、原処分庁が、当該法人が別法人に対して再委託した建物の管理業務以外の管理業務を行っているとは認められず、上記委託手数料のうち別法人に対する再委託に係る部分を除いた額を必要経費及び課税仕入れに係る支払対価の額とすることはできないなどとして、所得税及び消費税等に係る各更正処分等を行ったことから、請求人が、これらの処分の一部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯等

イ 審査請求に至る経緯は、別表1及び2のとおりである。
 なお、原処分庁は、同各別表の「賦課決定」欄のとおり、平成22年6月25日の所得税又は消費税等の各修正申告に対し、同月30日付で過少申告加算税の各賦課決定処分をしているが、請求人は、これらについては争っていない。
ロ 以下、平成19年、平成20年及び平成21年を併せて「本件各年」、平成19年分、平成20年分及び平成21年分を併せて「本件各年分」、平成19年1月1日から同年12月31日まで、平成20年1月1日から同年12月31日まで及び平成21年1月1日から同年12月31日までの各課税期間を併せて「本件各課税期間」といい、原処分庁が平成22年6月30日付でした、本件各年分の所得税に係る各更正処分及び当該各更正処分に係る過少申告加算税の各賦課決定処分を、それぞれ「本件所得税各更正処分」及び「本件所得税各賦課決定処分」、本件各課税期間の消費税等に係る各更正処分及び当該各更正処分に係る過少申告加算税の各賦課決定処分を、それぞれ「本件消費税各更正処分」及び「本件消費税各賦課決定処分」という。

(3) 関係法令

イ 所得税法の必要経費について
(イ) 所得税法26条《不動産所得》第1項及び同法27条《事業所得》第1項は、不動産所得の金額及び事業所得の金額は、それぞれ、その年中の当該所得に係る総収入金額から必要経費を控除した額とする旨規定している。
(ロ) 所得税法第37条《必要経費》第1項は、その年分の不動産所得の金額又は事業所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用の額とする旨規定している。
ロ 消費税法の課税仕入れについて
(イ) 消費税法第2条《定義》第1項第12号は、課税仕入れとは、事業者が事業として他の者から資産を譲り受け、若しくは借り受け、又は役務の提供を受けることをいう旨規定している。
(ロ) 消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第1項は、事業者(同法第9条《小規模事業者に係る納税義務の免除》第1項本文の規定により消費税を納める義務が免除されている事業者を除く。)が、国内において行う課税仕入れについては、当該課税仕入れを行った日の属する課税期間の課税標準に対する消費税額から、当該課税期間中に国内において行った課税仕入れに係る消費税額(当該課税仕入れに係る支払対価の額に百五分の四を乗じて算出した金額)を控除する旨規定している。

(4) 基礎事実

イ 請求人が所有する不動産の使用状況等
(イ) 請求人は、昭和63年にa県b市c町○−○、同○番○及び同○番○の一団となった土地の所有及び平成元年に当該各土地上に新築された鉄筋コンクリート造4階建の建物(以下「本件建物」という。)の所有を、それぞれ開始し、現在に至っている。
 その間、請求人は、本件建物の1階の一部を自己が営む種苗店の店舗とし、同建物の4階を自宅として、それぞれ使用するほか、同建物の1階(上記店舗部分を除く。)、2階及び3階を、賃貸の用に供している。なお、上記店舗部分、自宅部分及び賃貸部分の各床面積が本件建物の総床面積(共用部分を除く。)に占める割合は、それぞれ、10.28%、14.33%及び75.39%である。
(ロ) また、請求人は、昭和63年にa県b市c町○−○の土地の所有を開始し、現在に至っている。
 その間、請求人は、当該土地を駐車場施設として、賃貸の用に供している(以下、この駐車場施設を「本件駐車場」という。)。
ロ 有限会社の設立及びその役員等
(イ) C社は、不動産の賃貸借、管理、駐車場の経営等を目的として、平成元年に設立された法人である(以下「本件同族会社」という。)。
(ロ) 本件同族会社の社員は、設立当初から、本件各年を経て現在に至るまで、請求人の妻であるD、請求人の子であるE、同F及び同Gのみである。また、本件同族会社の役員は、設立当初はD(代表取締役)及び請求人(取締役)の2名であったが、その後、平成11年にEが取締役に就任し、平成18年にDが代表取締役を辞任して取締役となるとともに、Eが代表取締役に就任し、現在に至っている。
(ハ) 本件同族会社では、設立当初から本件各年を経て現在に至るまで、従業員を雇用したことはない。
(ニ) なお、Dは、本件建物の1階の種苗店に常駐している。
ハ 請求人と本件同族会社との間における、本件建物及び本件駐車場の各管理委託契約の締結等
(イ) 請求人は、本件建物について、本件同族会社との間で、平成元年12月12日以降の「貸室並びに委託広告営業に関する業務その他建物の一般管理運営業務」を同社に委託する旨の契約(以下「本件建物管理委託契約」という。)を同日付で締結し、以後、現在まで同契約を更新している。
(ロ) また、請求人は、本件駐車場について、本件同族会社との間で、平成2年2月1日以降の「駐車場経営並びに委託広告営業に関する業務その他土地の一般管理運営業務」を同社に委託する旨の契約(以下「本件駐車場管理委託契約」といい、本件建物管理委託契約と併せて「本件各管理委託契約」という。)を同日付で締結し、以後、現在まで同契約を更新している。
(ハ) なお、請求人は、本件各管理委託契約により、本件同族会社に対し、上記(イ)及び(ロ)の各業務に対する各手数料(以下「管理費」という。)として、本件建物及び本件駐車場の各月額賃料収入の15%を支払う旨の合意をしている。
ニ 本件同族会社と別会社との間における、本件建物の管理請負契約等の締結等
(イ) 本件同族会社は、本件建物について、H社(以下「本件請負会社」という。)との間で、平成元年12月12日以降のまる1建築設備保安業務、まる2清掃業務、まる3事務管理業務を同社に委託する旨の建物総合管理請負契約(以下「本件建物管理請負契約」という。)を同日付で締結し、以後、現在まで同契約を更新している。
(ロ) また、本件同族会社は、本件建物について、J社(以下「本件警備会社」といい、本件請負会社と併せて「本件再委託先会社」という。)との間で、警備業務を同社に委託する旨の警備請負契約(以下「本件建物警備請負契約」といい、本件建物管理請負契約と併せて「本件再委託契約」という。)を、上記(イ)と同時ころに締結し、以後、現在まで同契約を更新している。
(ハ) 以下、本件再委託契約により、本件同族会社が本件再委託先会社に対してそれぞれ委託した各業務(上記(イ)のまる1ないしまる3の業務及び上記(ロ)の警備業務)を併せて「本件再委託業務」という。
ホ 管理費等の支払状況等
(イ) 請求人は、本件各年において、本件同族会社に対し、本件建物管理委託契約に基づく本件建物の管理費として、平成19年分8,959,694円、平成20年分8,763,134円、平成21年分8,763,134円を、また、本件駐車場管理委託契約に基づく本件駐車場の管理費として、平成19年分520,759円、平成20年分475,867円、平成21年分493,194円を、それぞれ支払い、当該各金額を請求人の本件各年分における不動産所得の必要経費に算入するとともに、本件各課税期間における課税仕入れに係る支払対価の額に含めて、所得税及び消費税等の確定申告及び修正申告をした。
(ロ) また、本件同族会社は、本件各年において、本件再委託先会社に対し、本件建物管理請負契約に基づく本件建物の管理委託料及び本件建物警備請負契約に基づく本件建物の警備料(以下、両者を併せて「本件再委託料」という。)として、平成19年分3,902,320円、平成20年分3,819,268円、平成21年分3,893,450円を支払った。

(5) 争点

 本件の争点は、請求人の本件各年分の不動産所得の金額又は事業所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき管理費の額、並びに本件各課税期間の課税仕入れに係る支払対価の額に含まれるべき管理費の額であるが、その前提として、本件各年において、本件同族会社が、本件再委託業務以外の本件建物及び本件駐車場の各管理業務を、自ら行ったか否かが併せて問題となる。

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2 主張

(1) 原処分庁

 原処分庁は、本件各管理委託契約及び本件再委託契約の有効性を否定するものではないが、原処分に係る調査の際に、請求人から、本件各年において本件同族会社が本件再委託業務以外の管理業務を行った旨の主張を裏付ける証拠が提出されなかったため、本件同族会社が本件再委託業務以外の管理業務を行ったとは認められないと判断した。なお、仮に、本件同族会社が、本件建物又は本件駐車場について、請求人が主張するような何らかの管理行為を行っていたとしても、極めて僅少なものにすぎないから、本件同族会社が本件建物及び本件駐車場の各管理業務を行っていたと評価することはできない。
 そうすると、請求人の不動産所得又は事業所得の必要経費に算入し、また、課税仕入れに係る支払対価の額に含めるべき管理費の額は、本件同族会社が本件再委託先会社に対して支払った本件再委託料の額のうち、請求人の店舗部分及び賃貸部分に係る部分の金額(以下「原処分庁主張管理費額」という。別表3−1参照)であり、これを超える部分の金額については、請求人の不動産所得又は事業所得を生ずべき業務の遂行上客観的に必要な費用であるとはいえないから、これらの所得の必要経費に算入することはできず、また、課税仕入れに係る支払対価の額にも含まれない。

(2) 請求人

 請求人は、本件各管理委託契約により、本件同族会社に対して、本件建物及び本件駐車場の各管理業務のすべてを委託し、本件同族会社は、受託した本件建物の管理業務の一部を本件再委託先会社に対して再委託した上、それ以外の管理業務(具体的には、借主から賃料等(賃料並びに本件建物の借主が負担する共益費及び電気・水道利用料をいう。以下同じ。)を徴収して請求人に納入する賃料等管理業務、入金遅延者に対する督促業務、随時の清掃業務、軽微な修繕業務、賃貸借等の契約代理業務及び不法侵入者対策業務等)を、自ら行っている。
 したがって、請求人が本件同族会社に対して支払った、本件建物の管理費の額のうち請求人の店舗部分及び賃貸部分に係る部分の金額と、本件駐車場の管理費の額との合計額(以下「請求人主張管理費額」という。別紙3−2参照)は、その全額が、請求人の不動産所得又は事業所得を生ずべき業務の遂行上必要な費用であるから、これらの所得の必要経費に算入され、また、課税仕入れに係る支払対価の額にも含まれる。

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3 判断

(1) 法令解釈

 所得税法第37条第1項の規定によれば、不動産所得の金額又は事業所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額には、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額だけでなく、その年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用の額も含まれるところ、「販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用の額」とは、当該業務の遂行上生じた費用の額であり、客観的にみて、その費用が当該業務と直接の関係を持ち、かつ、当該業務の遂行上必要であるものをいうと解するのが相当である。

(2) 認定事実

 請求人から当審判所に提出された資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
イ 本件建物及び本件駐車場の各貸付けの状況等
(イ) 本件建物は、K駅の出入口階段の脇に位置し、その賃貸部分である1階の一部、2階及び3階は、請求人が本件建物の一部を賃貸の用に供した当初から、本件各年を経て現在に至るまで、飲食店○軒、歯科医院、美容室及び不動産業者各○軒という合計○軒のテナントが、継続して賃借している。
(ロ) 本件駐車場は、本件建物から約80メートル離れた場所に位置し、駐車可能台数は最大12台である。本件駐車場の駐車区画の一部は、請求人が本件駐車場を賃貸の用に供した当初から、本件各年を経て現在に至るまで、本件建物のテナントの一部が継続して賃借しているが、その他の駐車区画については、借主が順次交代している。
ロ 請求人の本件同族会社に対する本件建物及び本件駐車場に係る委託業務内容
(イ) 本件建物に係る委託業務内容
 請求人が、本件建物管理委託契約によって本件同族会社に委託した「貸室並びに委託広告営業」の範囲は、まる1テナント等の募集、まる2建物の内外及びこれに付随する物の清掃管理、まる3テナント賃料の集金に伴う一切の業務、まる4入居テナント及びその利用者とのトラブル処理、まる5建物の管理・保守・整備等に伴う一切の業務、まる6その他両者間で合意を得たもの、である。
(ロ) 本件駐車場に係る委託業務内容
 請求人が、本件駐車場管理委託契約によって本件同族会社に委託した「駐車場経営並びに委託広告営業」の範囲は、まる1駐車場利用者等の募集、まる2駐車場敷地及びこれに付随する敷地、物の清掃管理、まる3駐車場利用者の賃料集金及びこれに伴う一切の業務、まる4駐車場利用者とのトラブル及びこれに伴う一切のトラブルの処理、まる5土地の管理・整備等に伴う一切の業務、まる6その他両者間で合意を得たもの、である。
(ハ) 本件建物及び本件駐車場に共通の委託業務内容
A 本件同族会社は、賃料等を請求人の指示する方法等により請求人に納入する。本件同族会社が賃料等の納入を遅延し、請求人に損害を及ぼした場合は、賠償を負担する。(本件各管理委託契約に係る各契約書の第6条及び第11条)
B 本件同族会社は、貸室、駐車場経営並びに広告看板につきそれぞれ請求人から指示又は承認があった第三者との間に請求人に代理して賃貸借等に関する契約を締結することができる。(上記各契約書の第5条)
C 本件同族会社は、管理運営上生じる小規模な修繕費等の費用を負担する。(上記各契約書の第10条)
ハ 本件同族会社の本件再委託先会社に対する本件建物に係る再委託業務内容
(イ) 本件請負会社に対する再委託業務内容
 本件同族会社が、本件建物について、本件請負会社に再委託した業務の内容は、まる1法令に基づくものを含む電気・消防・エレベーター等の設備の保守・点検等及びそれらに関する報告、並びに共用部分の照明ランプの取替え、まる2平日に1日3時間の日常清掃及び毎月1回の定期清掃等、まる3請求業務(電気、水道メーター検針、請求書発行)及び管理運営業務(官公庁、施工業者等との連絡・折衝、通知事項の伝達)、である。
(ロ) 本件警備会社に対する再委託業務内容
 本件同族会社が、本件建物について、本件警備会社に再委託した業務の内容は、警報装置を設置して行う機械警備の方法による建物警備業務である。
ニ 本件建物及び本件駐車場の各賃料の集金及び納入業務の状況
 当該業務(上記ロの(イ)及び(ロ)の各まる3、並びに同(ハ)のAの各契約書第6条及び第11条関係)の状況は、請求人が本件建物及び本件駐車場を各賃貸の用に供した当初から、本件各年を経て現在に至るまで、次のとおりである。
(イ) 本件建物及び本件駐車場の各借主は、本件同族会社名義の預金口座あてに振り込む方法、若しくは本件建物の1階の種苗店に常駐するDに対して現金を持参する方法のいずれかにより、本件建物及び本件駐車場の各賃料の支払をしている。
(ロ) Dは、請求人の受け取るべき賃料等の全額から本件同族会社が受領すべき管理費の金額を控除した残額を同社名義の預金口座から請求人名義の預金口座へ振り替える方法により、請求人への賃料等の納入をしている。
 その際、Dは、本件建物及び本件駐車場の各借主による賃料等の支払が遅延している場合であっても、遅延のない場合と同様に、請求人の受け取るべき賃料等の全額から、本件同族会社が受領すべき管理費の金額を控除した残額を、請求人に納入している。
(ハ) 本件建物及び本件駐車場の各借主が支払った賃料等は、本件同族会社の預り金として経理処理されている。また、請求人が本件各管理委託契約に基づいて支払った管理費の金額は、本件同族会社の収益に計上されている。
ホ 本件建物及び本件駐車場の各賃貸借契約等の締結業務の状況
 当該業務(上記ロの(ハ)のB)の状況は、本件建物及び本件駐車場を各賃貸の用に供した当初から、本件各年を経て現在に至るまで、次のとおりである。
 D又はEは、請求人の指示又は承認を得た上、本件建物及び本件駐車場の各借主との間で、同建物に係る各賃貸借契約の更新に関する合意等や、同駐車場に係る各賃貸借契約を、本件同族会社の名義で締結している。
ヘ 本件建物に係る本件再委託業務の履行確認業務の状況
 当該業務(上記ロの(イ)のまる5及び同ハの(イ)のまる1)の状況は、本件建物を賃貸の用に供した当初から、本件各年を経て現在に至るまで、次のとおりである。
 本件請負会社の点検担当者は、本件建物の各種点検業務を実施した際、同建物の1階の種苗店に常駐するDに対し、所要の報告をした上、関係書類に押印をもらうなどし、これによって、Dが、本件請負会社による本件再委託業務の履行確認を行っている。
ト 本件建物の修繕業務の状況
 当該業務(上記ロの(ハ)のC)の状況は、本件建物を賃貸の用に供した当初から、本件各年を経て現在に至るまで、次のとおりである。
(イ) 本件請負会社の従業員は、本件建物の1階の種苗店に常駐するD、E若しくは請求人のいずれかから、同建物の修繕依頼の連絡を受け、依頼された修繕を行うと、本件同族会社あての修繕費用に係る請求書を作成し、当該費用の請求を行っている。
(ロ) これに対し、Dは、本件同族会社名義の預金口座から本件請負会社名義の預金口座へ、上記(イ)の修繕費用の額を振り込んでいる。また、同額は、本件同族会社の費用として損金の額に算入されている。

(3) 当てはめ

イ 本件同族会社が自ら管理業務を行っていたか否かについて
 請求人は、上記1の(4)のハ及び上記(2)のロのとおり、本件各管理委託契約により、本件同族会社に対して本件建物及び本件駐車場の各管理業務全般を委託し、本件同族会社は、上記1の(4)のニ及び上記(2)のハのとおり、本件再委託契約により、本件再委託先会社に対して本件建物の管理業務の一部を再委託したのであるから、本件同族会社において、本件建物の管理業務の残りの部分及び本件駐車場の管理業務の全部を行うことが、上記各契約上、当然に予定されていることが明らかである。
 そこで、まず、本件駐車場についてみると、本件同族会社は、本件駐車場管理委託契約により受託した上記(2)のロの(ロ)のまる1ないしまる6及び同(ハ)の各業務を自ら行う義務を負っているところ、上記(2)のニ及びホのDらの行動の内容は、いずれも同契約により本件同族会社が自ら行うべき業務そのものである。そして、上記(2)のニの(ハ)のとおり、請求人に納入すべき本件駐車場の賃料等は、そのすべてが最終的には本件同族会社に帰属しないものとして取り扱われる一方で、本件同族会社が受領すべき同駐車場の管理費は、すべて同社の収益とされるという、本件駐車場管理委託契約に沿った経理処理が行われている。以上の事実を総合すれば、Dらの行動は、いずれも本件駐車場管理委託契約に基づく本件同族会社の役員としての行動であると見るのが相当である。
 また、本件建物についてみると、本件同族会社は、本件建物管理委託契約により受託した上記(2)のロの(イ)の少なくともまる1まる3まる4及びまる6、並びに同(ハ)の各業務を、自ら行う義務を負っているところ、上記(2)のニないしトのとおり、Dらの行動の内容は、いずれも同契約により本件同族会社が自ら行うべき業務そのものである。そして、上記(2)のニの(ハ)及び同トの(ロ)のとおり、本件同族会社が受領すべき本件建物の管理費は、すべて同社の収益とされるとともに、同社が負担すべき同建物の軽微な修繕費用は、そのすべてが同社の費用とされるという、本件建物管理委託契約に沿った経理処理が行われている。以上の事実を総合すれば、Dらの行動は、いずれも本件建物管理委託契約に基づく本件同族会社の役員としての行動であると見るのが相当である。
 そうすると、本件同族会社は、本件各年において、本件建物及び本件駐車場について、本件各管理委託契約により請求人から受託した業務のうち、本件再委託業務を除く各管理業務を行っていたと認められる。
ロ 必要経費及び課税仕入れに係る支払対価の額に当たるか否かについて
 上記イの認定・判断を前提とすると、請求人が本件同族会社に支払った管理費は、いずれもその全額が本件各管理委託契約に基づいて本件同族会社が行った各管理業務の対価である。
 そうすると、請求人主張管理費額は、その全額が、本件建物の賃貸部分及び本件駐車場の貸付業務、又は種苗店の経営業務と直接の関係を持つ費用であり、かつ、本件同族会社が行った管理業務の内容からみて、当該各業務の遂行上必要な費用であると認められる。
 したがって、請求人主張管理費額は、請求人の本件各年分の不動産所得の金額又は事業所得の金額の計算上必要経費に算入するべきである(なお、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は別表3−2のまる4欄及びまる5欄の各金額の合計額であり、事業所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は同表のまる2欄の金額である。)。
 また、請求人主張管理費額は、請求人が事業として本件同族会社から受けた役務の提供の対価として支払われたものであるから、その全額が課税仕入れに係る支払対価の額に含まれる。

(4) 本件所得税各更正処分及び本件消費税各更正処分について

イ 本件所得税各更正処分
 異議決定後の本件各年分の不動産所得の金額及び事業所得の金額は、別表4−1及び別表4−2の各「原処分庁主張額」欄のとおりであるところ、上記(3)のロのとおり、請求人主張管理費額を、本件各年分の不動産所得及び事業所得の必要経費にそれぞれ算入するべきであるから、請求人の本件各年分の不動産所得及び事業所得の各金額は、同各別表の「審判所認定額」欄のとおりとなる。
 そうすると、請求人の納付すべき本件各年分の税額は、別表5−1の「納付すべき税額」欄のとおりとなり、本件所得税各更正処分の金額をいずれも下回るから、当該各更正処分は、いずれもその一部を別紙2ないし別紙4のとおり取り消すべきである。
ロ 本件消費税各更正処分
 異議決定後の本件各課税期間の課税仕入れに係る支払対価の額は、別表4−3の「原処分庁主張額」欄のとおりであるところ、上記(3)のロのとおり、請求人主張管理費額が、すべて本件各課税期間の課税仕入れに係る支払対価の額に該当するから、本件各課税期間の消費税の各課税仕入れに係る支払対価の額は、別表4−3の「審判所認定額」欄のとおりとなる。
 そうすると、請求人の納付すべき本件各課税期間の税額は、別表5−2の「納付すべき消費税額」欄及び「納付すべき地方消費税額」欄のとおりとなり、本件消費税各更正処分の金額をいずれも下回るから、当該各更正処分は、いずれもその一部を別紙5ないし別紙7のとおり取り消すべきである。

(5) 本件所得税各賦課決定処分及び本件消費税各賦課決定処分について

イ 本件所得税各賦課決定処分
 本件所得税各更正処分は、上記(4)のイのとおり、いずれもその一部を取り消すべきであり、これらの税額の計算の基礎となった事実について、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められない。
 したがって、請求人に対して賦課するべき各過少申告加算税の額は、別表5−1の「過少申告加算税の額」欄のとおりとなり、本件所得税各賦課決定処分の金額をいずれも下回るから、当該各賦課決定処分は、いずれもその一部を別紙2ないし別紙4のとおり取り消すべきである。
ロ 本件消費税各賦課決定処分
 本件消費税各更正処分は、上記(4)のロのとおり、いずれもその一部を取り消すべきであり、これらの税額の計算の基礎となった事実について、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められない。
 したがって、請求人に賦課するべき各過少申告加算税の額は、別表5−2の「過少申告加算税の額」欄のとおりとなり、本件消費税各賦課決定処分の金額をいずれも下回るから、当該各賦課決定処分は、いずれもその一部を別紙5ないし別紙7のとおり取り消すべきである。

(6) 原処分のその他の部分については、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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