(平成24年7月23日裁決)

《裁決書(抄)》

1 審査請求人(以下「請求人」という。)は、原処分庁が、納税者C(以下「本件滞納者」という。)の滞納国税を徴収するため行った、別表に掲げる不動産(以下「本件公売不動産」という。)に係る平成24年5月1日付の公売公告処分及び平成24年6月6日付の最高価申込者の決定処分(以下、これらの処分を併せて「本件各公売処分」という。)について、その全部の取消しを求めている。
2 ところで、請求人は、本件公売不動産は、本件滞納者ではなく請求人に帰属することから、本件各公売処分に係る通知は、所有者である請求人に対してされるべきところ、その通知がされていない違法があると主張し、本件各公売処分の取消しを求めている。そこで、本件公売不動産の所有権の帰属が問題となるが、請求人は本件各公売処分の名宛人たる滞納者ではないから、審査請求を審理するに当たっては、まず、請求人が不服申立てをすることができる資格を有するか否かを判断する必要があるところ、国税通則法第75条《国税に関する処分についての不服申立て》第1項は、国税に関する法律に基づく処分に不服がある者は、不服申立てをすることができる旨規定しているが、この「国税に関する法律に基づく処分に不服がある者」とは、その処分によって直接自己の権利又は法律上の利益を侵害された者であることを要すると解される。
3 請求人は、平成24年6月15日付の審査請求において、本件公売不動産における所有権を主張し、当審判所に対し、本件公売不動産について、本件滞納者を売主・請求人を買主とする平成19年6月11日付の不動産売買契約書の写し及びその売買代金の支払を確認できるものとしてD銀行及びE信用金庫の普通預金通帳の写しを提出している。
 当該契約書の写しの内容によれば、売買代金は契約締結時に手付金を支払い、残代金は平成19年7月10日から平成33年10月10日までの分割払とする旨及び所有権移転、引渡し、登記手続の日については、いずれも請求人が売買代金の全額を支払い、本件滞納者がこれを受領した日とする旨それぞれ約定されているところ、当該各普通預金通帳の写しに記載された内容からは、売買代金について平成24年7月2日までに全額が支払われた事実は認められないことから、本件公売不動産については、本件滞納者から請求人に対して所有権の移転が行われていないと認めるのが相当である。
4 そうすると、本件各公売処分の名宛人たる滞納者ではない請求人の場合は、本件各公売処分によって直接自己の権利又は法律上の利益を侵害された者であることを証拠上認定できないことから、本件各公売処分により、直接自己の権利又は法律上の利益が侵害された者とは認められない。
 したがって、請求人は、国税通則法第75条第1項に規定する「国税に関する法律に基づく処分に不服がある者」に該当しないから、本件審査請求は不適法なものである。

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