(平成24年11月5日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、製造業を営む審査請求人(以下「請求人」という。)が総勘定元帳の運搬勘定に計上した運搬費について、原処分庁が、その一部は過大に計上されたものであるなどとして、法人税並びに消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)の更正処分等をしたのに対し、請求人が、当該運搬費は過大に計上されたものではないなどとして、原処分の一部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 請求人は、平成16年4月1日から平成17年3月31日まで、同年4月1日から平成18年3月31日まで、同年4月1日から平成19年3月31日まで、同年4月1日から平成20年3月31日まで、同年4月1日から平成21年3月31日まで及び同年4月1日から平成22年3月31日までの各事業年度(以下、順次「平成17年3月期」、「平成18年3月期」、「平成19年3月期」、「平成20年3月期」、「平成21年3月期」及び「平成22年3月期」といい、これらを併せて「本件各事業年度」という。)の法人税について、別表1−1及び別表1−2の「確定申告」欄のとおり、いずれも青色の確定申告書により法定申告期限までに確定申告をした。
ロ 請求人は、平成16年4月1日から平成17年3月31日まで、同年4月1日から平成18年3月31日まで、同年4月1日から平成19年3月31日まで、同年4月1日から平成20年3月31日まで、同年4月1日から平成21年3月31日まで及び同年4月1日から平成22年3月31日までの各課税期間(以下、順次「平成17年3月課税期間」、「平成18年3月課税期間」、「平成19年3月課税期間」、「平成20年3月課税期間」、「平成21年3月課税期間」及び「平成22年3月課税期間」といい、これらを併せて「本件各課税期間」という。)の消費税等について、別表2−1及び別表2−2の「確定申告」欄のとおり、いずれも法定申告期限までに確定申告をした。
ハ 請求人は、原処分に係る調査(以下「本件調査」という。)を受け、別表1−1及び別表1−2の「修正申告」欄のとおり、本件各事業年度のうち平成17年3月期を除く各事業年度の法人税について、平成23年2月21日、各修正申告書を提出したところ、原処分庁は、別表1−1及び別表1−2の「賦課決定処分」欄のとおり、同月28日付で、当該各修正申告に基づき過少申告加算税の各賦課決定処分をした。
 また、請求人は、本件調査を受け、別表2−2の「修正申告」欄のとおり、平成22年3月課税期間の消費税等について、平成23年2月22日、修正申告書を提出したところ、原処分庁は、別表2−2の「賦課決定処分」欄のとおり、同月28日付で、当該修正申告に基づき過少申告加算税の賦課決定処分をした。
ニ 原処分庁は、本件調査に基づき、別表1−1及び別表1−2の「更正処分等」欄のとおり、平成23年5月23日付で、本件各事業年度の法人税の各更正処分(以下「本件法人税各更正処分」という。)及び重加算税の各賦課決定処分(以下「本件法人税重加算税各賦課決定処分」という。)並びに平成21年3月期及び平成22年3月期の法人税に係る過少申告加算税の各賦課決定処分をした。
ホ 原処分庁は、本件調査に基づき、別表2−1及び別表2−2の「更正処分等」欄のとおり、平成23年5月23日付で、本件各課税期間の消費税等の各更正処分(以下「本件消費税等各更正処分」という。)及び重加算税の各賦課決定処分(以下「本件消費税等重加算税各賦課決定処分」という。)並びに平成21年3月課税期間の消費税等に係る過少申告加算税の賦課決定処分をした。
ヘ 請求人は、上記ニ及びホの各更正処分及び各賦課決定処分を不服として、平成23年7月12日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年10月7日付で、異議申立てをいずれも棄却する旨の決定をし、その決定書謄本を請求人に対し同月12日に送達した。
ト 請求人は、異議決定を経た後の上記ニ及びホの各更正処分及び各賦課決定処分のうち、本件法人税各更正処分及び本件法人税重加算税各賦課決定処分並びに本件消費税等各更正処分及び本件消費税等重加算税各賦課決定処分の一部を不服として平成23年11月9日に審査請求をした。

(3) 関係法令

イ 国税通則法(以下「通則法」という。)第68条《重加算税》第1項は、通則法第65条《過少申告加算税》第1項の規定に該当する場合において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額(その税額の計算の基礎となるべき事実で隠ぺいし、又は仮装されていないものに基づくことが明らかであるものがあるときは、当該隠ぺいし、又は仮装されていない事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した税額)に係る過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に100分の35の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する旨規定している。
ロ 通則法第70条《国税の更正、決定等の期間制限》(平成23年法律第114号による改正前のもの。以下同じ。)第1項は、更正はその更正に係る国税の法定申告期限から3年を経過した日以後(法人税に係る更正については、法定申告期限から5年を経過した日以後)においては、することができない旨規定し、同条第5項は、偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れた国税(当該国税に係る加算税を含む。)についての更正決定等は、同条第1項の規定に関わらず、その更正に係る国税の法定申告期限から7年を経過する日まで、することができる旨規定している。
ハ 法人税法第22条《各事業年度の所得の金額の計算》第3項本文及び第1号は、内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額とする旨規定している。
ニ 消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第1項本文及び第1号は、事業者が、国内において行う課税仕入れについては、当該課税仕入れを行った日の属する課税期間の同法第45条《課税資産の譲渡等についての確定申告》第1項第2号に掲げる課税標準額に対する消費税額から、当該課税期間中に国内において行った課税仕入れに係る消費税額の合計額を控除する旨規定している。

(4) 基礎事実

 次の事実は、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 請求人の概要等
(イ) 請求人は、昭和9年2月○日に設立され、e市に本店を置く、産業用機械諸施設の設計、製作等を目的とする株式会社である。
(ロ) 請求人は、本件各事業年度において、「○○事業部」という部署で「○○」又は「□□」と呼ばれる圧力容器(以下「□□等」という。)の製造、営業等の事業を、「△△事業部」という部署で「△△」と呼ばれる○○状の鉄板(以下「△△」という。)の製造、営業等の事業をそれぞれ行っていた。
 そして、□□等及び△△は、請求人からH社等の海運会社等にその輸送が発注され、主に海上輸送の方法で請求人の顧客に納入されていた。
(ハ) 請求人は、本件各事業年度において、取引に係る消費税等の経理処理について税抜経理方式を適用し、□□等及び△△の各製品に「製番」と呼ぶ番号を付し、製番ごとに材料費、運搬費等の原価を集計していた。
 そして、請求人は、各製品の原価を構成する各費目について、製番ごとに予算を設定するなどして原価の管理を行っていた。
(ニ) 平成12年5月20日から請求人の取締役兼業務部部長となっていたP2は、本件各事業年度において、請求人の総務、経理、資材調達及び輸送に係る業務の統括責任者の立場にあった。
ロ 請求人の製品の海上輸送等に関係していた会社等
(イ) H社及びその子会社等
A H社
(A) H社は、g県h市に本店を置く、海上運送事業等を目的とする株式会社であり、i市にi営業所を、平成16年10月、j市にj営業所をそれぞれ設置していたが、平成19年3月、j営業所を廃止し、その業務をi営業所に移管した。
(B) H社は、請求人、J社等の顧客から受注した貨物の海上輸送等を、K1社等の海運会社等に外注して海上運送事業等を行っていた。
B H社の子会社
(A) L社
 L社は、j市に本店を置く、貨物運送取扱業等を目的とする株式会社で、平成14年10月1日、H社の子会社となり、H社からの委託で同社の請求手続業務を行っていたが、平成17年4月○日、後記CのM社に合併し解散した。
(B) その他の子会社
 請求人の製品の海上輸送等に関係したH社の子会社には、N社(平成17年10月1日にH社の子会社となったが、平成22年1月○日にQ社に合併し解散した。以下「N社」という。)及びR社(平成17年4月1日にH社の子会社となったが、同年10月○日にN社に合併し解散した。以下「R社」という。)がある。
C P3
 P3は、昭和42年にH社に入社した後、平成16年4月、L社に特命担当部長として出向し、平成17年4月、H社j営業所長を経て、平成19年4月、H社i営業所長に就任した。
 そして、P3は、平成16年4月から平成20年6月までの間、H社の海上輸送等の担当者として、海上輸送等の受注、受注代金の交渉、海運会社等に対する当該海上輸送等の外注代金の交渉等の業務に携わった。
 その後、平成20年7月、P3は、H社の子会社で環境整備作業等を目的とするM社に移籍し、M社j支店の管理・契約室長となったが、海上輸送に係る取引の仲介を個人的に行っていた。
(ロ) 海運等会社
 K1社、S社、T社、U社及びV社は、H社等から受注した貨物の海上輸送等を行っていた。
 以下、V社を除くK1社、S社、T社及びU社を併せて「海運等4社」という。
(ハ) W社
 W社は、e市に本店を置く、一般貨物の運輸等を目的とする特例有限会社(平成18年5月1日前は有限会社法に規定される有限会社)であり、平成16年4月以降、P4が代表取締役に就任していた。
 W社は、請求人等の構内で運搬等の作業を請け負っていた。
ハ 請求人の製品の輸送取引等
(イ) 請求人とH社との取引等
A 請求人は、平成16年4月から平成20年6月頃までの間、□□等及び△△の一部の海上輸送等につき、別紙4の「取引関係図1」のまる1のとおり、H社の担当者であるP3と発注代金等の交渉をした上、別紙4の「取引関係図1」のまる2のとおり、H社に発注していた。
B P3は、上記Aの期間、H社が請求人から受注する製品の海上輸送等につき、H社の担当者として、海運等4社等との間で外注代金等の交渉(別紙4の「取引関係図1」のまる3)を行った。
 そして、H社は、平成16年4月から平成19年3月までの間、別紙4の「取引関係図1」のまる4-aのとおり、子会社であるL社、N社又はR社を経由して、請求人から受注した製品の海上輸送等を海運等4社又はV社に外注していた。
 また、H社は、平成19年4月から平成20年7月頃までの間、別紙4の「取引関係図1」のまる4-bのとおり、直接、海運等4社に対して貨物の海上輸送等を外注していた。
(ロ) 請求人とK1社との取引等
A 請求人は、平成20年7月から平成22年3月までの間、上記(イ)のH社に発注していた□□等及び△△の海上輸送を、別紙4の「取引関係図2」のまる1のとおり、海上輸送の取引の仲介を行うP3との交渉で、別紙4の「取引関係図2」のまる2のとおり、K1社に発注し、その代金を支払っていた。
B 海上輸送の取引の仲介を行うP3は、上記Aの期間、請求人と交渉した海上輸送につき、別紙4の「取引関係図2」のまる3のとおり、K1社又はS社に当該海上輸送の見積りや実施の依頼を行うとともに、その代金等の交渉を行っていた。
C K1社は、P3の仲介により請求人から受注した海上輸送を、自ら行うほか、別紙4の「取引関係図2」のまる4のとおり、S社に外注することもあった。
 K1社は、S社に外注した場合、P3が請求人と取り決めた海上輸送の代金からK1社の手数料とする金額を差し引いた上、外注代金をS社に支払っていた。
(ハ) P3とW社による不正行為
A P3は、W社の代表取締役P4との間で、貨物の海上輸送等につき、W社が、実際には積込作業等を行っていないにも関わらず、これを行ったとして、積込作業料等の名目の請求書を作成する旨通謀し、W社は、平成16年12月分以降、P3の指示に基づき架空の積込作業料等の請求書(以下、当該請求書に記載された架空の積込作業料等名目の請求金額を「W請求額」という。W請求額は、その積込作業等に係る貨物が輸出するものであった場合を除き、消費税等相当額込みの金額である。)を作成するようになった。
B 上記AのW社作成の請求書は、平成16年12月から平成17年3月までの間、別紙4の「取引関係図1」のまる5-a-1のとおり、H社の子会社のうちL社宛に送付され、別紙4の「取引関係図1」のまる5-a-2のとおり、W請求額がW社に支払われた。
 その後、P3の指示により、別紙4の「取引関係図1」のまる5-b-1のとおり、平成17年4月から平成20年6月までの間、上記W社作成の請求書は、請求人の製品の海上輸送等をした海運等4社宛に送付されるようになった。
 そして、海運等4社は、P3との交渉で決められた外注代金にW請求額を加えた金額をR社若しくはN社を経由して又は直接、H社に請求し、H社から上記H社の子会社を経由して又は直接、海運等4社に当該金額が支払われ、別紙4の「取引関係図1」のまる5-b-2のとおり、海運等4社からW請求額がW社に支払われた。
 W社の代表取締役P4は、P3から連絡を受けると、W請求額からW社の手数料とする金額を差し引いた残額を、別紙4の「取引関係図1」のまる6のとおり、P3に支払った。
C P3は、上記(ロ)のとおり、M社に移籍した平成20年7月以降も請求人の製品の海上輸送を仲介し、K1社は、請求人から受注した製品の海上輸送を、自ら行うほか、S社にも外注していた。
 P3は、上記海上輸送の一部につき、上記A及びBと同様に、W社からW請求額を請求させることとし、まるAK1社が自ら貨物の海上輸送をする場合は、別紙4の「取引関係図2」のまる5-a-1のとおり、W社からK1社にW請求額を請求させ、まるBK1社がS社に貨物の海上輸送を外注する場合は、別紙4の「取引関係図2」のまる5-b-1のとおり、W社からS社にW請求額を請求させた。
 そして、上記まるAの場合は、別紙4の「取引関係図2」のまる5-a-2のとおり、K1社からW社にW請求額が支払われ、上記まるBの場合は、K1社から、S社に外注代金が支払われ、別紙4の「取引関係図2」のまる5-b-2のとおり、S社からW社にW請求額が支払われた。
 上記Bと同様に、W社の代表取締役P4は、P3から連絡を受けると、W請求額からW社の手数料とする金額を差し引いた残額を、別紙4の「取引関係図2」のまる6のとおり、P3に支払った。
D 請求人が、本件各事業年度において、総勘定元帳の「運搬勘定」に計上したH社又はK1社を相手先とする運搬費のうち、請求人の製品に係る海上輸送等に関してW請求額が請求されたものを取りまとめた表は、別表3−1から別表3−7までのとおりである。
 なお、別表3−1から別表3−7までの「年月日」欄、「請求人計上金額(税抜き)」欄及び「まる1に対する消費税等」欄は、請求人が、総勘定元帳の運搬勘定にH社又はK1社を相手先とする運搬費を計上した年月日、消費税等抜きの金額及び当該金額に対する消費税等の金額であり(以下、別表4−1から別表4−7までにおいて同じである。)、「W請求額」欄の「税抜金額」欄及び「まる3に対する消費税等」欄は、W請求額のうち消費税等相当額抜きの金額及び当該金額に対する消費税等相当額である。
(ニ) 平成16年12月29日付で運搬勘定に計上された1,200,000円
A 請求人は、別表3−1の順号2のとおり、総勘定元帳の運搬勘定に、平成16年12月29日付で、H社に対する製番1408の製品に係る運搬費として1,200,000円を計上した。
 しかし、製番1408の製品に係る運搬費は、450,000円であったところ、当該運搬費は、平成16年12月29日付で製番1400の製品に係る運搬費として別に計上(別表3−1の順号3の運搬費であり、以下「本件順号3運搬費」という。)されていたから、上記の製番1408の製品に係る運搬費として計上された1,200,000円は、これに対応する輸送の実績がないものであった。
 以下、請求人が、平成16年12月29日付で、製番1408の製品に係る運搬費として計上した別表3−1の順号2の1,200,000円を「本件順号2運搬費」、別表3−1から別表3−7までの各運搬費のうち本件順号2運搬費を除いた各運搬費を「本件各運搬費」といい、これらを併せて「本件各運搬費等」という。
B 請求人の輸送等に係る業務の統括責任者であったP2は、平成17年1月7日頃、H社から「合計請求金額」を「¥1,260,000」、「件名」を「輸送作業」、「作業開始日」を平成16年12月13日、「作業終了日」を同月16日、「品名」を「○○」、「出荷場所」を「k」、「持込場所」を「m」などとする、平成16年12月分の運搬費の請求書(以下「本件請求書A」という。)を受け取ると、本件請求書Aに「♯1408」と、本件請求書Aが製番1408の製品に係る運搬費の請求書である旨の記載をした。
 そして、請求人は、本件請求書Aを本件順号2運搬費に係る請求書として保存し、平成17年1月20日、H社に対し、本件順号2運搬費の額に消費税等相当額を加えた1,260,000円を支払った。
C 請求人が、別表3−1の順号1の製番1401及び1402の製品の運搬費(以下「本件順号1運搬費」という。)に係るH社からの請求書として保存していた「合計請求金額」を「¥1,260,000」、「件名」を「輸送作業」、「作業開始日」を平成16年12月13日、「作業終了日」を同月16日、「品名」を「○○」、「出荷場所」を「k」、「持込場所」を「m/n」などとする請求書は、P3がH社の名義で偽造した請求書であった。
 以下、上記の請求人が本件順号1運搬費に係る請求書として保存していた請求書を「本件偽造請求書」という。
 なお、本件順号1運搬費に消費税等の額を加えた1,260,000円は、平成16年12月20日、請求人からH社に対し、他の平成16年11月分の運搬費と合わせて支払われていた。
D P3は、上記Bの支払があった後の平成17年1月26日、「合計請求金額」を「¥1,260,000」、「件名」を「積込作業」などとする請求人宛のH社の平成17年1月分の請求書(以下「本件積込請求書」という。)を作成し、その決裁を受けた。
 そして、本件積込請求書に記載された積込作業は、実際には外注する積込作業がないにも関わらず、H社からL社を経由してW社に1,180,000円(消費税等抜き)で外注され、W社は、当該積込作業の役務を提供していないにも関わらず、平成17年1月31日付の請求書で、L社に対し、1,180,000円に消費税等相当額を加えた1,239,000円の支払を請求し、平成17年2月28日、その支払を受けた。
E W社は、平成17年2月7日、P3に対し、1,062,000円を支払った。
ニ 請求人に対する税務調査等
(イ) 請求人は、平成22年9月14日から本件調査を受け、平成23年2月21日、本件各事業年度のうち、平成17年3月期を除く各事業年度の法人税について、役員に対する貸付利息相当額を益金の額に算入するなどの修正申告をし、平成23年2月22日、平成22年3月課税期間の消費税等について、課税売上額及び課税仕入れに係る支払対価の額を増額する修正申告をした。
(ロ) 原処分庁は、本件調査に基づき、請求人の法人税について、まる1平成21年3月期の福利厚生費勘定に計上された葬儀費用1,310,019円(消費税等抜き)は、P2の役員給与に該当し、法人税法第34条《役員給与の損金不算入》第1項の規定により損金の額に算入できない、まる2平成22年3月期において営業権勘定として計上された25,000,000円は株式の取得価額であり、その営業権の減価償却費として平成22年3月期の損金の額に算入された5,000,000円は損金の額に算入できないとしたほか、まる3本件各運搬費等の額のうち、別表4−1から別表4−7までの「原処分庁更正額」欄の「まる1のうち水増し計上額」欄の金額は、正当な運搬費に上乗せされたW請求額の一部であるとして、損金の額から減算するなどし、また、請求人の消費税について、上記まる1の葬儀費用に係る消費税等及び別表4−1から別表4−7までの「原処分庁更正額」欄の「まる3に対する消費税等」欄の金額のうち消費税相当額を、控除対象仕入税額から減算するなどして、上記(2)のニ及びホの各更正処分及び各賦課決定処分をした。

(5) 争点

  1. 争点1 本件各運搬費は過大に計上されたものか否か。
  2. 争点2 請求人が本件各運搬費等を計上したことに関して、通則法第70条第5項に規定する偽りその他不正の行為があるか否か。
  3. 争点3 請求人が本件各運搬費等を計上したことに関して、通則法第68条第1項に規定する隠ぺい仮装行為があるか否か。

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2 主張

(1) 争点1(本件各運搬費は過大に計上されたものか否か。)

原処分庁 請求人
 次のとおり、本件各運搬費は過大に計上されたものである。  次のとおり、本件各運搬費は過大に計上されたものではない。
イ P3の本件調査の担当者(以下「本件調査担当者」という。)に対する申述から、まるイP3は、P2から、正当な輸送代金に水増しする額を具体的に指示されていたこと、まるロP3は、請求人に対する輸送代金を、正当な輸送代金にP2から指示された額を水増しした金額にして、H社又はK1社から、上記水増しした輸送代金を請求人に請求させるとともに、W社には、請求人の製品の海上輸送等を行ったK1社等に対し、W請求額を請求させていたこと、まるハ別紙4の「取引関係図1」及び別紙4の「取引関係図2」の各まる6のとおり、P3は、W社から、W請求額のうち相当額を小切手等により受け取り、その後、P2から連絡があった都度、k駅付近でP2に現金を手渡していたことが、それぞれ認められる。
 そうすると、本件各運搬費は、海上輸送等をどの会社に発注するかを決定する権限を有するP2が、P3から受け取る資金を捻出するため、P3と通謀して、正当な輸送代金にW請求額を水増しした金額としたものであり、過大に計上されたものと認められる。
イ 本件各運搬費は、コストが最少となるように、請求人の担当者が、P3と価格交渉をした上で決定しているのであり、過大に計上されたものではない。
 なお、W社がP3に渡す金員を捻出するための別紙4の「取引関係図1」及び別紙4の「取引関係図2」のまる5-a-1、まる5-a-2、まる5-b-1及びまる5-b-2の行為は、いずれもP3の指示によって行われたものであり、P2が、P3にW請求額の請求を指示したことはないし、P3から現金を受け取ったこともない。
 また、原処分庁は、△△事業部の担当者であるP5など、P2以外の担当者がP3と価格交渉をした輸送代金についても、P2が、P3にW請求額の請求を指示したなどと主張しているが、このような場合、P5などの担当者は、P2の干渉を受けずに価格交渉をしていたから、P2が正当な輸送代金に水増しする額を指示していたという原処分庁の主張は、破綻している。
ロ 本件各運搬費が、P2がP3から受け取る資金を捻出するため、過大に計上されたものであることは、次の事実からも推認することができる。
(イ) 本件請求書Aに「#1408」と記載することにより、輸送の実績がないにも関わらず本件順号2運搬費の計上及び支払がされ、本件順号1運搬費に係る請求書としてP3が偽造した本件偽造請求書が保存されているところ、これらは請求人の経理、輸送等に係る業務を統括管理するP2が関与しなければ行うことができない。
 上記の事実と、P3の異議申立てに係る調査の担当者(以下「本件異議調査担当者」という。)に対する申述から、
A P3は、平成16年12月に一度だけ、P2から、全く役務提供の事実がない架空の請求書を作れと指示され、件名欄を「積込作業」とする本件積込請求書を作成して請求人に送付したこと
B 本件積込請求書が請求人に送付された後、P3は、P2から請求人はH社に積込作業を発注することはないので件名が「輸送作業」の請求書を作り直して請求人に送付するように指示されたこと
C 上記Bの指示により、P3は、本件請求書Aのコピーを加工して偽造した本件偽造請求書を請求人に送付したこと
D P2は、本件偽造請求書を本件順号1運搬費に係る請求書として保存する一方、本件請求書Aに製番が1408である旨記載することで、本件順号2運搬費を製番1408の製品に係る運搬費として計上したこと
が認められる。
 そして、上記AからDまでのとおり、P2とP3が通謀して貨物輸送の実績がない本件順号2運搬費を計上したことは、本件各運搬費についても、P2とP3との通謀によって過大に計上されたものであることを推認させるものである。
(ロ) また、平成16年12月以降、請求人が発注した海上輸送の発注先の大半がH社となったことも、P2が、P3からW請求額に係る金員を受け取るようになったためであると考えられる。
ロ 原処分庁が、本件各運搬費が過大に計上されていたとする根拠として指摘する事実は、次のとおり、根拠とならない。
(イ) 製番1401及び1402の製品は平成16年11月に完成したが相手先の都合で納入が遅れたため、請求人は、海上輸送による納入前の同月30日付で売上げを計上するとともに、本件順号1運搬費を同日付で計上したところ、本件順号1運搬費は、請求人が業務上使用している経理システムによって、H社に対する同月分の運搬費に含まれることになり、同年12月20日、本件順号1運搬費の消費税等込金額である1,260,000円を含む同年11月分の運搬費がH社に支払われた。
 他方、製番1401及び1402の製品の輸送は、平成16年12月13日から同月16日に行われ、平成17年1月初旬頃、H社から請求人に本件順号1運搬費に係る本件請求書Aが平成16年12月分の請求書として送付された。
 すると、P2は、本件順号1運搬費が支払済みであることを失念し、製番1408の製品の輸送に係る請求書と誤信し、本件請求書Aに「♯1408」と記載し、請求人は、平成16年12月29日付で本件順号2運搬費を計上した。
 その後、P3から本件偽造請求書が請求人に送られたため、請求人は、本件偽造請求書を、本件順号1運搬費に係る請求書として保存した。
 これらのことは、いずれも単なる過失によるものであり、請求人が本件各運搬費を過大に計上していたとすることの根拠とはならない。
 また、原処分庁は、P3の申述を原処分の根拠とするが、P2が、本件調査中の平成23年11月23日にP3の不正行為を問いただすためにP3と面会した際に録音した会話の内容から、P2とP3が通謀して、請求人に対し、正当な輸送代金にW請求額を水増しした金額を請求していたとは認められないのであるから、P3の申述を根拠に、本件各運搬費が過大に計上されたものであると認めることはできない。
(ロ) 請求人は平成16年12月以前から請求人の製品の海上輸送をH社に発注していたのであり、原処分庁の主張は事実と異なる。

(2) 争点2(請求人が本件各運搬費等を計上したことに関して、通則法第70条第5項に規定する偽りその他不正の行為があるか否か。)

原処分庁 請求人
 上記(1)の「原処分庁」欄のイ及びロのとおり、本件各運搬費等は、P2がP3から受け取る資金を捻出するため、正当な輸送代金にW請求額を水増しして過大に計上し又はP3に本件積込請求書及び本件偽造請求書を作成させて架空の運搬費を計上するなどしたことが明らかである。
 そして、これらは、いずれも社会通念上不正と認められる行為であるから、請求人が本件各運搬費等を計上したことに関して、通則法第70条第5項に規定する偽りその他不正の行為がある。
 上記(1)の「請求人」欄のイ及びロの(イ)のとおり、請求人は、本件各運搬費について過大に計上しておらず、また、本件順号2運搬費は、P2が本件順号1運搬費に係る請求書の処理を誤り、本件順号1運搬費を二重に計上した過失があるにすぎない。
 したがって、本件順号1運搬費と本件順号2運搬費を二重に計上した過失があるだけであり、請求人が本件各運搬費等を計上したことに関して、通則法第70条第5項に規定する偽りその他不正の行為はない。

(3) 争点3(請求人が本件各運搬費等を計上したことに関して、通則法第68条第1項に規定する隠ぺい仮装行為があるか否か。)

原処分庁 請求人
 上記(1)の「原処分庁」欄のイ及びロのとおり、本件各運搬費等は、P2がP3から受け取る資金を捻出するため、正当な輸送代金にW請求額を水増しして過大に計上し又はP3に本件積込請求書及び本件偽造請求書を作成させて架空の運搬費を計上するなどしたことが明らかであるところ、本件各事業年度において、P2は請求人の取締役で輸送に係る業務の統括責任者の立場にあり、P2の行為は請求人の行為と同一視できるから、請求人が本件各運搬費等を計上したことに関して、通則法第68条第1項に規定する隠ぺい仮装行為がある。  上記(1)及び(2)の「請求人」欄のとおり、本件各運搬費は過大に計上されておらず、また、請求人が、本件順号2運搬費を計上したことは過失にすぎないから、請求人が本件各運搬費等を計上したことに関して、通則法第68条第1項に規定する隠ぺい仮装行為はない。

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3 判断

(1) 争点1(本件各運搬費は過大に計上されたものか否か。)

イ 認定事実
 請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ) 請求人における海上輸送等の発注担当者等
A 海上輸送等の発注担当者
 上記1の(4)のロの(イ)のCのとおり、P3は、H社の担当者として海上輸送等の業務に携わり又は個人的に海上輸送の仲介を行っていたところ、P3から請求人宛にファックス送信された平成19年11月21日付から平成22年1月8日付までの御見積書及び「FAX送付ご案内」、L社作成の輸送実績請求明細書、請求人に対する海上輸送に係る代金の請求書の発行をP3がK1社に依頼した平成21年5月31日付から同年12月31日付までの各書面並びにP5の当審判所に対する答述から、まる1本件各事業年度において、P3は、請求人からの海上輸送等の受注及び仲介に際し、その見積書を請求人にファックス送信する場合、○○事業部の製品に係る海上輸送等の見積書はP2宛に送信し、△△事業部の製品に係る海上輸送等の見積書は△△事業部の担当者であるP5宛に送信していたこと、まる2P3は、M社に移籍後、K1社に対し、請求人の△△の輸送は△△事業部宛に、△△以外の製品の輸送はP2宛にそれぞれ請求書を送付するよう依頼していたことなどが認められ、これらから、請求人の△△事業部は、同事業部に係る海上輸送等について、他事業部の製品と併せて海上輸送等をする場合を除き、△△事業部で海上輸送等の見積りを取るなど、○○事業部に係る海上輸送等を担当するP2とは別に、海上輸送等を担当、発注していたものと認められる。
B 海上輸送等の発注担当者からの減額要求
 原処分関係資料から、○○事業部の製品は製番の左端の数字が1から3まで、△△事業部の製品のそれは4となっていたことが認められるところ、H社又はP3作成の請求人宛の御見積書及びH社又はK1社作成の請求人宛の請求書から、別表3−2の順号9、13、16、20及び23から25まで、別表3−3の順号35から37まで、40、41、60及び62、別表3−5の順号86、88、89、91、93、100及び102から106まで、別表3−6の順号109、111、113、115及び121並びに別表3−7の順号124、125、128から132まで、136、139及び140の各運搬費は、当該見積書の金額よりも低い価額となっていること、そのうち、別表3−2の順号9、13、16、20及び23から25まで、別表3−3の順号35から37まで、40、41、60及び62、別表3−5の順号86、88、89、91、93及び102から106まで並びに別表3−6の順号111及び113に係る「見積・受注・外注決裁書」(H社作成の海上輸送等の見積り、受注及び外注に係る社内決裁文書)には、P3が見積書の金額でH社社内の見積決裁を受けた後、値下げした代金でH社社内の受注決裁を受けた記載があること、別表3−5の順号99の「見積・受注・外注決裁書」には、荒天による外注金額増額に伴う受注金額の請求人に対する増額の申出に対し、請求人から外注金額の増額分よりも少ない額の受注金額の増額しか得られなかった旨の記載があることから、P2及び△△事業部の担当者は、P3から提示された見積金額や増額要求に対し、それぞれ減額要求をしていたものと認められる。
(ロ) 海上輸送等について行われたP3の不正行為
A 請求人以外からの海上輸送等の受注等
 上記1の(4)のロの(イ)のC及びハの(ロ)のとおり、P3は、平成16年4月から平成22年3月まで、H社の担当者として海上輸送等の業務に携わり又は個人的に海上輸送の仲介を行っていたところ、H社作成の「j営業所海上輸送対象取引先別売上高一覧表」、「得意先別売上額一覧表」及び「見積・受注・外注決裁書」並びにK1社作成の売掛帳、買掛帳及びJ社p支店宛の請求書から、P3は、請求人以外にJ社、W社、X社、Y社、Z社及びq社(以下、X社からq社までを順次「X社」、「Y社」、「Z社」及び「q社」といい、これらとJ社及びW社とを併せて「J社等」という。)からも貨物の海上輸送等の受注を担当又は個人的に仲介していたことが認められる。
B 請求人以外からの海上輸送等について行われた不正行為
(A) 上記1の(4)のハの(ハ)のとおり、請求人の製品の海上輸送等に関連する輸送代金の一部は、W請求額を含む金額とされていたところ、W社作成のW請求額に係る請求書、P3からW社P4宛にファックス送信されたW請求額に係る連絡文書(以下「本件各ファックス文書」という。)、P3が平成22年12月2日付及び同月6日付で作成した原処分庁宛の確認書並びにP3の本件異議調査担当者に対する申述から、J社等が発注した海上輸送等に係る輸送代金も、実際には積込作業等を行っていない架空の積込作業料等(W請求額)を含むものもあったことが認められる。
(B) J社等が発注した海上輸送等について、W請求額が請求された場合、W社作成のW請求額に係る請求書、本件各ファックス文書、r銀行○○支店のW社名義当座預金口座(番号○○○○)に係る預金取引明細表、H社作成の「j営業所:海上輸送売上実績(2005年4月〜2007年3月)」及びJ社等宛の請求書、海運等4社からH社又はその子会社宛の請求書並びにK1社作成の売掛帳、買掛帳及びJ社p支店宛の請求書から、まる1W社は、直接又はL社等を経由してH社又はK1社にW請求額を請求していたこと、まる2H社又はK1社は、直接又はL社等を経由してW社にW請求額を支払っていたことが認められる。
 H社が請求人及びJ社等から受注した海上輸送等のうち、W社からW請求額が請求されたものを取りまとめた表は別表5−1から別表5−5までのとおりであり、K1社が請求人及びJ社から受注した海上輸送のうち、W社からW請求額が請求されたものを取りまとめた表は別表5−6のとおりである。
(C) 上記1の(4)のハの(ハ)のB及びCのとおり、W社代表取締役のP4は、P3から連絡を受けると、W請求額からW社の手数料とする金額を差し引いた残額をP3に支払っていたところ、H社及びM社作成の聴き取りの日時が平成22年12月6日である「P3氏ヒアリング結果」と題する書面、本件各ファックス文書並びにP4の本件調査担当者に対する申述及び当審判所に対する答述から、まる1P3はP4から借金をしていたこと、また、まる2P3は、W請求額からW社の手数料とする金額を差し引いた残額を、P4から小切手等で受領したほか、W請求額の当該残額を小切手等で受領する代わりにP4からの借入金の返済に充当していたことが認められる。
 本件各ファックス文書には、W請求額の請求先、W社が請求先に送付する請求書に記載する作業月日、船名、向先、請求額等が記載されているところ、本件各ファックス文書の記載に対応する海上輸送等、W請求額、P3が本件各ファックス文書でW社に連絡したP3の受領金額及び借入金返済額を取りまとめた表は別表6−1から別表6−6までのとおりである。
(ハ) 本件順号2運搬費等の計上等
 上記1の(4)のハの(ニ)のAのとおり、請求人は、本件順号2運搬費として1,200,000円を計上しているところ、その経緯に関して次の事実が認められる。
A 請求人の取引先の表記
 請求人の製番台帳、総勘定元帳及びP2の当審判所に対する答述から、平成17年3月期当時、請求人は、取引先であるF1社を製番台帳に記載する際、その英語名(○○○○)から「F1社」と記載し、F1社n事業所を「n事業所」と記載していたこと、ただし、総勘定元帳には「F1社」と記載していたこと、また、取引先であるt社(平成21年12月にu社に商号変更。以下「F2社」という。)を製番台帳に記載する際、その英語名(○○○○)と併せて「F2社」と記載し、総勘定元帳には「F2社」と記載していたことが認められる。
B 製番1400、1401及び1402の製品に係る取引等
(A) 請求人の製番台帳、L社作成の輸送実績請求明細書、平成16年12月13日付F1社作成の受領書及びP2の当審判所に対する答述から、まる1請求人の○○事業部は、平成16年1月13日、F1社との間で、F1社n事業所の×××プラント槽製作工事のための機器番号×××−201(約137.0トン)、×××−301(約170.0トン)、×××−302(約77.0トン)、×××−303(約38.5トン)、×××−304(約30.0トン)及び×××−403(約9.5トン)の各製品につき、代金を合計66,000,000円、機器番号×××−201及び×××−301の製品に係る納期を同年9月10日、それ以外の製品に係る納期を同年11月30日、納入先をF1社n事業所などとする製造販売契約を締結し、製番台帳の製番1398から1403までの各欄に上記各製品を順次記入して各製品に製番を付したこと、まる2その後、上記契約について、製番1403の製品(機器番号×××−403)をキャンセルする旨、製番1400から1402までの製品の納期を同年12月13日から同月16日頃までとする旨、製番1401及び1402の製品の納入先をmとする旨等の変更があったこと、まる3上記製品のうち製番1400から1402までの製品は、同月13日、v県w港のkふ頭でK1社所有の船舶1隻に積み込まれて出航し、そのうち製番1400の製品は、同日、F1社n事業所に納入され、製番1401及び1402の製品は同月16日までにm港でF1社に納入されたことが認められる。
(B) 上記1の(4)のイの(ハ)のとおり、請求人は、製番ごとに運搬費の予算を設定しているところ、まる1請求人の原価計算書から、製番1400から1402までの各製品に係る運搬費の予算を、それぞれ1,900,000円、1,045,000円、850,000円と設定したこと、また、まる2L社作成の輸送実績請求明細書から、H社が請求人から受注した製番1400から1402までの製品の海上輸送に係る運搬費は1,200,000円であったことが認められる。
C 製番1408、1409及び1410の製品に係る取引等
(A) 請求人の製番台帳、F2社作成の請求人宛の注文書及びL社作成の輸送実績請求明細書から、まる1請求人の○○事業部は、平成16年3月18日、F2社との間で、F2社がF3社に納入するかくはん槽を製作するための機器番号○○○○(約124.0トン)、○○○○(約21.6トン)及び○○○○(約64.1トン)の各製品につき、代金を合計83,800,000円、納期を同年12月15日などとする製造販売契約を締結し、製番台帳の製番1408から1410までの各欄に上記各製品を順次記入して各製品に製番を付したこと、まる2その後、上記製品の納入先はy県z港とされ、製番1408から1410までの製品は、△△事業部の△△と併せて積み込まれ、同年12月24日にkふ頭を出航して同月25日までにz港でF2社に納入されたことが認められる。
(B) 製番1408から1410までの各製品に係る運搬費について、まる1請求人の原価計算書から、その予算は、それぞれ2,250,000円、350,000円、720,000円と設定されたこと、まる2L社作成の輸送実績請求明細書から、H社が請求人から受注した製番1408から1410までの製品及び△△の海上輸送に係る運搬費は合計450,000円であったことが認められる。
D 総勘定元帳等への記載等
(A) 請求人の総勘定元帳、「資材購入伝票」の名称の会計伝票、請求人作成のH社宛の平成16年11月分の支払通知書及びP2の当審判所に対する答述から、まる1請求人は、上記Bの(A)のとおり納期が当初平成16年11月30日とされていた製番1400から1402までの製品のうち、製番1401及び1402の製品は既に完成していたことから同月の売上げに計上し、製番1400の製品については納入する同年12月の売上げに計上することとし、総勘定元帳上、同年11月30日付で製番1401及び1402の製品の売上げとして10,700,000円及び9,000,000円を売上勘定に記載したこと、まる2請求人は、上記まる1のとおり「平成16年11月30日付」で売上げを計上したことと併せて、上記Bの(B)のまる2の製番1400から1402までの製品に係る運搬費1,200,000円を同日付で計上することとし、H社から製番1400から1402までの製品に係る運搬費1,200,000円の請求書を受領する前に、同日付で、製番1401に係る運搬費を1,000,000円、製番1402の製品に係る運搬費を200,000円及びそれらの消費税等の合計額を60,000円とする会計伝票を作成し、製番1401の製品に係る運搬費として1,000,000円及び製番1402の製品に係る運搬費として200,000円を、それぞれ総勘定元帳の運搬勘定に記載して、本件順号1運搬費を計上するとともに、製番1401の製品に係る原価計算書の同年11月分の月別原価明細表に運搬費として1,000,000円、製番1402に係る原価計算書の同月分の月別原価明細表に運搬費として200,000円をそれぞれ記載したこと、まる3上記まる2の経理処理に基づき、請求人は、製番1401の製品に係る運搬費1,000,000円、製番1402の製品に係る運搬費200,000円及びそれらの消費税等の額60,000円を記載したH社宛の支払通知書を作成し、上記1の(4)のハの(ニ)のCのとおり、平成16年12月20日、本件順号1運搬費に消費税等の額を加えた1,260,000円を他の運搬費と合わせてH社に対して支払ったことが認められる。
(B) H社作成の請求書番号○○-18458-○、○○-18459-○、○○-18460-○及び○○-18461-○の請求人宛の請求書4通から、まる1H社は、平成17年1月5日頃、平成16年12月に行った請求人の○○等及び△△の海上輸送に係る運搬費の請求書として、請求書番号○○-18458-○、○○-18459-○、○○-18460-○及び○○-18461-○の請求書4通を作成したこと、まる2そのうち請求書番号○○-18458-○の請求書は本件請求書Aであるところ、その記載内容(上記1の(4)のハの(ニ)のB)から、本件請求書Aは、上記Bの(A)のまる3の製番1400から1402までの製品に係る運搬費の請求書として作成されたものであること、また、まる3請求書番号○○-18461-○の請求書(以下「本件請求書B」という。)は、合計請求額欄の「¥472,500」、作業開始日欄の「平成16年12月24日」、作業終了日欄の「平成16年12月25日」、品名欄の「○○/△△」、持込場所欄の「z」などの記載から、上記Cの(A)のまる2の製番1408から1410までの製品及び△△に係る運搬費の請求書として作成されたことが認められる。
 また、請求人が上記請求書4通を受領した日は、請求人作成の郵便物の受領を記載したノートから、いずれも平成17年1月7日であると認められる。
(C) 本件請求書A、本件請求書B、請求人の総勘定元帳及びP2の当審判所に対する答述から、まる1上記(B)のとおり、請求人は、平成17年1月7日、請求書4通を受領すると、そのうち請求書番号○○-18459-○及び○○-18460-○の2通は、△△のみの海上輸送に係る請求書であったことからこれらを△△事業部に回付し、本件請求書A及び本件請求書BをP2に回付したこと、まる2P2は、同日頃、本件請求書A及び本件請求書Bの回付を受けると、上記1の(4)のハの(ニ)のBのとおり、本件請求書Aに「♯1408」と、本件請求書Aが製番1408の製品に係る運搬費の請求書である旨の記載をするとともに、本件請求書Bには「♯1400」と、本件請求書Bが製番1400の製品に係る運搬費の請求書である旨の記載をしたこと、まる3請求人の業務部係員は、本件請求書Aの「♯1408」の記載に基づき、平成16年12月29日付で、総勘定元帳の運搬勘定に製番1408の製品に係る運搬費として1,200,000円(本件順号2運搬費)を記載するとともに、その摘要欄に「12/13-16 k-m ○○」と記載し、製番1408に係る原価計算書の平成16年12月分の月別原価明細表にも、その運搬費欄に1,200,000円及び「12/13-16 k-m」と記載したこと、また、まる4同係員は、本件請求書Bの「♯1400」の記載に基づき、同月29日付で、総勘定元帳の運搬勘定に製番1400の製品に係る運搬費として450,000円(本件順号3運搬費)を記載するとともに、その摘要欄に「12/24-25 k-z ○○」と記載し、製番1400に係る原価計算書の平成16年12月分の月別原価明細表にも、その運搬費欄に450,000円及び「12/24-25 k-z」と記載したこと、まる5請求人は、上記まる3及びまる4の各経理処理に基づき、製番1408に係る運搬費として1,200,000円及びその消費税等の額60,000円並びに製番1400に係る運搬費として450,000円及びその消費税等の額22,500円などを記載したH社宛の支払通知書を作成し、平成17年1月20日、H社に対し、本件順号2運搬費の額に消費税等相当額を加えた1,260,000円及び本件順号3運搬費に消費税等の額を加えた472,500円を、上記(B)の請求書番号○○-18459-○及び○○-18460-○の請求書で請求された運搬費に消費税等の額を加えた額と合わせてH社に対して支払ったことが認められる。
 そして、上記Bの(B)のとおり、P2は、製番1400の製品に係る運搬費の予算を1,900,000円と設定していたところ、平成16年12月29日付で製番1400の製品に係る運搬費として450,000円を計上したことから、原価計算書上の累積実績額は、同月までの繰越額732,775円及び同月に発生したH社以外に対する運搬費等955,045円と合わせて2,137,820円となり、237,820円の予算超過額が生じるに至ったこと、また、上記Cの(B)のとおり、P2は、製番1408の製品に係る運搬費の予算を2,250,000円と設定していたところ、同月29日付で製番1408の製品に係る運搬費として1,200,000円を計上したことから、原価計算書上の累積実績額は、同月までの運搬費の繰越額214,973円及び同月に発生したH社以外に対する運搬費等1,095,000円と合わせて2,509,973円となり、259,973円の予算超過額が生じるに至ったことが認められる。
E 本件偽造請求書の作成時期等
 上記1の(4)のハの(ニ)のCのとおり、本件順号1運搬費に係るH社からの請求書として本件偽造請求書が保存されているところ、まる1本件偽造請求書は、本件請求書Aと同一の請求書番号(○○-18458-○)であること及びP3の本件調査担当者に対する申述から、本件偽造請求書は、本件請求書Aのコピーを加工して偽造したものであること、また、まる2本件積込請求書及び本件請求書Aの記載内容並びにP3の本件調査担当者に対する申述から、本件偽造請求書は本件積込請求書を作成した平成17年1月26日よりも後に作成されたものと認められる。
ロ 判断
(イ) 本件各運搬費の過大計上の有無
A 本件において、請求人がH社又はK1社に対して支払った本件各運搬費が過大に計上されたものであるというためには、まる1請求人が、故意に、本件各運搬費を当該海上輸送等に係る適正な運搬費を超える過大な金額としたこと、また、まる2緊急に納品しなければならないような場合など、通常の取引においても過大な金額を支払うこともあり得ることからすれば、その過大な金額であることを認識している場合には、その過大な金額を支払うことについて通常の取引と認めるべき合理的な理由がないことが必要である。
B この点、確かに、上記1の(4)のハの(ハ)のとおり、H社又はK1社は、直接又は間接にW社に対して架空の積込作業料等名目のW請求額を支払っているが、請求人がH社又はK1社に対して支払った本件各運搬費が過大に計上されたものであるというためには、上記Aのとおり、請求人が、故意に、本件各運搬費を当該海上輸送等に係る適正な運搬費を超える過大な金額としたことが必要であるから、少なくとも、本件各運搬費が過大な金額であることを請求人が認識していたことが必要である。
 しかしながら、本件において、全証拠を精査しても、請求人が、本件各運搬費が適正な運搬費を超える過大な金額であることを認識していたことを直接認めるべき客観証拠はなく、P2などの請求人の海上輸送等の担当者から、P3に対して、適正な海上輸送等の金額にW請求額を加えた金額を請求人に対する海上輸送等の見積額とする旨連絡した書面などの証拠も存在しない。
 原処分庁が、本件各運搬費は過大に計上されたものであるとの主張の根拠とする直接証拠は、上記2の(1)の「原処分庁」欄の主張のとおり、P3の本件調査担当者及び本件異議調査担当者に対する「P2と通謀して、請求人に対し、H社又はK1社で必要となる運搬費にW請求額を水増しした額を請求していた。」などの申述のみである。
 そこで、以下、P3の申述の信用性を検討する。
(A) P3は、M社に対する調査の担当者に対し、平成22年11月18日付聴取書において、P3は、P2と通謀し、見積金額を通常より高めにして捻出した金員をP2に渡していた旨申述した後、本件調査担当者に対する同年12月1日付聴取書、同月2日付確認書、同月6日付確認書、平成23年2月28日付聴取書及び同年3月22日付聴取書並びに本件異議調査担当者に対する同年8月24日付聴取書で、不正な取引を開始した時期、金額などについてその申述を変遷させながら、要旨、次のとおり申述している。
 私は、営業活動資金や遊興費の資金が不足していたため、平成17年頃、W社のP4に相談したところ、そのことをP4から請求人のP2に話してもらうことになった。
 その後、私は、P2と話し合って、まる1H社から請求人に対して海上輸送等の代金を水増しして請求する、まる2H社はW社に架空外注を計上して当該水増し額をW社に支払う、まる3私は、その水増し額に係る金員をW社から返してもらって、それをP2に現金でバックするという流れの不正取引を始めるようになった。
 海上輸送等の代金に水増しする金額は、実際に必要となる運搬費を基礎として、当初、私からP2に提示したが、その後、P2から数万円から数十万円の水増し額を指示された。
 私は、海運等4社に連絡して、P2の指示で水増しした額と同額をW社に積込作業料等の名目で支払うように指示し、その後、私が水増し額に係る金員についてW社から小切手等で回収し、その小切手はr銀行○○支店で現金にして管理していた。
 私は、P2から指示されると、その都度、W社から返金された金員の全額をP2に渡していた。
 私は、P2に返金する金員とJ社等との取引で得たW社から返金された金員とを別々に管理していたわけではなく、どちらも一つの封筒にまとめて入れていた。
 P2は、私に「いくら用意しろ。」と金額を具体的に要求してきたので、私は、P2から要求された額が請求人との取引でW社からP2に返金されるべき金員だと思い、要求どおりの現金を封筒に入れて渡していた。
 P2の指示で、請求人に海上輸送等の代金を水増しして請求しているのだから、P2はW社から返金される額がどれくらいの額になるか知っているはずだし、P2がW社に返金額を確認することもあり得るので、P2に渡す現金をごまかすことはできなかった。
 私は、P2には暴力団関係者が付いていると聞いたこともあったので、P2を裏切ればただではすまないとも思っていたことから、J社等との取引だけで営業活動資金や遊興費の捻出ができればよいと思い、請求人との取引で営業活動資金等を捻出しようとは考えず、請求人との取引でW社から返金された金員は、P2に全額渡していた。
(B) しかしながら、上記(A)のP3の申述は、次のとおり、信用することができない。
a P3は、上記(A)のとおり、海上輸送等の代金に水増しする金額は、H社又はK1社で実際に必要となる運搬費を基礎として、当初、P3からP2に提示したが、その後、P2から水増し額を指示された旨申述する。
 しかし、P2が△△事業部の海上輸送等の発注に関与していたとの証拠はなく、上記イの(イ)のAのとおり、本件各運搬費の一部は、△△事業部の発注に係るものであるところ、△△事業部は、同事業部で海上輸送等の見積りを取るなど、○○事業部の製品に係る海上輸送等を担当するP2とは別に、海上輸送等を担当して海上輸送等の発注金額を決定していたものと認められるのであるから、△△事業部が発注する海上輸送等を含むW請求額の存在する請求人との取引の全部について、P2から水増し額の指示があったとするP3の申述は信用できない。
 また、上記イの(イ)のBのとおり、本件各運搬費には、P2又は△△事業部の担当者から値下げ要求されたものもあったことが認められるところ、P3の申述のとおりとすると、P2が自ら水増し額を指示したにも関わらず、このような値下げ要求があったことになり不自然である。
b P3は、上記(A)のとおり、請求人との取引でW社から返金された金員の全額をP2に返金していたと申述するところ、その申述を前提とすれば、P3が自由に費消できる金員は、J社等との取引でW社から返金を受けたものに限られることになる。
 しかしながら、上記イの(ロ)のBの(C)のとおり、P3は、P4に対し、W請求額からW社の手数料とする金額を差し引いた残額を、小切手等で受領していたほか、P4に対する借入金の返済に充当しているところ、P3は、まる1別表6−1の順号5及び別表6−2の順号6のとおり、同人が自由に費消することができる金額の上限となる請求人以外の取引に係るW請求額を超えてP4からの借入金の返済に充当するよう連絡をし、まる2別表6−1の順号2のとおり、請求人との取引でW社から返金を受ける金員の全額をP4からの借入金の返済に充当するよう連絡をしているのであるから、請求人との取引でW社から返金を受けた金員の全額をP2に返金していたなどという申述を信用することはできない。
c P3は、上記(A)のとおり、P2から指示された金額は、請求人に請求する海上輸送等の代金の水増し額(W請求額)であると申述しているところ、P2が海上輸送等の代金の水増し額を指示しても、W社が手数料として受け取る金額も併せて指示しなければ、P3から実際に返金される金額が確定せず、P3から返金される額を把握、管理することができないから、当該申述は不合理である。
d P3は、上記(A)のとおり、P2から「いくら用意しろ。」と指示があると、その都度、要求された金額をP2に渡した旨申述するが、P3がW社から返金を受けた都度、P2に返金していたのではなく、P2から連絡があった時にP2に返金していたというのであれば、P2に返金すべき金額に誤りがないように、請求人との取引でW社から返金を受けた金員は、P3が自由に費消することができる請求人以外の取引でW社から返金を受けた金員とは別に保管するのが自然であるのに、区別しないで保管していた旨申述する上、P2とトラブルが生じないように、請求人との取引でW社から返金を受けた金額やP2に渡した金額についてメモ等の記録を作成するのが自然であるのに(P2に暴力団関係者が付いていると聞いていたというのであれば、なおさら保身のために記録するのが自然である。)、そのようなメモ等は存在せず、その他、P3のW社からの返金をP2に渡していた旨の申述を裏付ける証拠は一切存在しない。
C 以上のとおり、請求人が、本件各運搬費が過大な金額であることを認識していたと認めるべき客観証拠は存在しない上、P3の「P2と通謀して、請求人に対し、H社又はK1社で必要となる運搬費にW請求額を水増しした額を請求していた。」などという申述は、P2のP3に対する指示、W社から返金された金員の使途、P2に対する返金など、P2がP3と通謀して本件各運搬費を過大な金額としていたことを認定する根幹となる申述の全てが信用できず、裏付け証拠も一切存在しないのであるから、P3の申述に基づき、請求人が、本件各運搬費が過大な金額であることを認識して計上したと認めることはできない。
(ロ) 本件順号2運搬費の計上等について
A 原処分庁は、上記2の(1)の「原処分庁」欄のロの(イ)のとおり、P2とP3が通謀して貨物輸送の実績がない本件順号2運搬費を計上したことが認められるとした上、このことから、本件各運搬費についてもP2とP3との通謀によって過大に計上されたものであることが推認できる旨主張している。
B 確かに、まる1上記1の(4)のハの(ニ)のA、上記イの(ハ)のBの(A)並びにDの(B)及び(C)のとおり、本件請求書Aは、製番1400から1402までの製品に係る運搬費の請求書であったにも関わらず、P2が、本件請求書Aに「♯1408」と記載したこと、そして、まる2本来、本件請求書Bは、製番1408から1410までの製品に係る運搬費の請求書であるにも関わらず、P2が、本件請求書Bに「♯1400」と記載したことが認められ、さらに、まる3上記1の(4)のハの(ニ)のCのとおり、請求人は、本件偽造請求書を本件順号1運搬費に係る請求書として保存していたこと、まる4P3も、本件調査担当者に対し、「本件偽造請求書は、水増し取引を開始した頃の話ですので、良く覚えています。平成17年1月25日頃、P2から電話があり、H社において積込作業の名目で1,200,000円を請求する架空の請求書を作成して請求人に送付し、その積込作業の外注代金としてW社に1,180,000円を払ってほしいとの要請があったので、同月26日に本件積込請求書を作成し、請求人に郵送しました。本件偽造請求書を郵送して数日後の同年2月上旬頃、P2から電話があり、本件積込請求書の積込作業という名目では社内の検収で問題があるので、請求書の名目を積込作業から輸送作業に変更したものを30分以内に作成してファックスで送信するよう要請がありました。私が、本件請求書Aの控えを加工してファックスにより送信しましょうと言ったところ、P2から、自分が見て架空の請求書であると分かるように請求書のH社の社名の字体を変えてくれと言われたので、ファックス送信の送付状に記載されていたH社の社名を本件請求書Aの控えに貼ってコピーを作成したものにH社の社印を押して本件偽造請求書を作成しました。」などと申述し、また、本件異議調査担当者に対し、「平成16年12月に一度だけ、全く役務提供の事実がない架空の請求書を作成するようにP2から指示され、本件積込請求書を作成しました。しかし、この架空の請求書をP2に送った後、P2から請求書の差し替えを指示され、本件偽造請求書を作成し、P2に送付しました。」などと申述していることから、P2があらかじめP3と本件順号2運搬費の計上及び支払について通謀していたとみる余地もある。
 しかしながら、仮に、P3の上記申述するとおり、P2が本件積込請求書及び本件偽造請求書の作成をP3に依頼したのであれば、そのような依頼は本件順号2運搬費を計上するよりも前にされている必要があるが、上記イの(ハ)のDの(C)のとおり、請求人が、海上輸送の実績のない本件順号2運搬費を計上した時期が平成17年1月7日頃であるのに対し、上記イの(ハ)のEのとおり、本件積込請求書及び本件偽造請求書は同月26日よりも後に作成されたものであることなどを考慮すれば、P2が、P3と通謀して、本件偽造請求書を作成した上、製番1400から1402までの製品に係る運搬費を二重に計上し支払ったと認めることはできない。
 なお、本件順号2運搬費に関するP3の申述は、いつP2から架空の請求書の作成を指示されたかという重要な点について変遷している上、本件積込請求書の作成を指示された時期が平成17年1月25日頃であれば、本件順号2運搬費が計上された後であるから、P2が、P3と通謀して本件順号2運搬費を二重計上したと認めることはできず、また、その指示された時期が平成16年12月頃であれば、本件積込請求書が平成17年1月26日になって作成されたことに照らしていずれも不自然で信用できない。
 その他、平成17年1月7日頃までにP2とP3が本件順号2運搬費を計上する旨通謀したとする証拠は存在しない。
C ところで、P2は、当審判所に対し、総勘定元帳等に上記イの(ハ)のDの記載をしたことに関して、「納期が平成16年11月30日とされていた製番1400から1402までの製品のうち、製番1401及び1402の製品は既に完成していたことから同月の売上げに計上し、これの原価として、その運搬費1,200,000円も計上しました。しかし、H社から本件請求書A及び本件請求書Bが送付された平成17年1月7日当時、私は、製番1400から1402までの製品に係る運搬費を平成16年12月20日に支払っていたことを忘れていました。そして、○○事業部の従業員にF1社向けの製番を聞いたところ、○○事業部の従業員が「F1社」と「F2社」と取り違え、本件請求書Aに『♯1408』と記載し、本件請求書Bに『♯1400』と取り違えて記載してしまったことが原因で、製番1400から1402までの製品に係る運搬費を二重に計上して支払ってしまいました。本件偽造請求書については、請求人の業務部係員から平成16年11月30日付で計上した本件順号1運搬費の請求書が来ていないと言われ、私からP3に対して、請求書がまだ来ていないものがあると問い合わせたことから、送られて来たのではないでしょうか。」旨答述する。
 P2の上記答述については、P2が答述するような過失があり得ないことを示す証拠はなく、上記イの(ハ)のDの(C)のとおり、総勘定元帳及び原価計算書に取り違えた納入先をそのまま記載しているなど、製番1400から1402までの製品に係る運搬費が二重に計上されていることや製番1408の製品に係る運搬費を製番1400の製品の運搬費に計上したことが請求人に発覚しないように工作した形跡などは認められず、仮に、請求人において、上記イの(ハ)のDの(C)のとおり、運搬費で予算超過が発生していることに着目して、平成16年12月分の月別原価明細表を点検すれば、F1社n事業所及びm港向けの製品に係る原価計算書に誤ってz港向けの海上輸送に係る運搬費が計上されていること又はz港向けの製品に係る原価計算書に誤ってF1社n事業所及びm港向けの海上輸送に係る運搬費が計上されていることが容易に判明してしまうと考えられることを併せ考慮すれば、P2が、本件順号2運搬費について海上輸送の実績がないことを隠ぺいする意図で故意に製番を取り替えたものとは考えにくい。
 また、請求人が本件偽造請求書を本件順号1運搬費の請求書として保存していた経緯についても、P2が答述するとおり、請求人において製番1400から1402までの製品に係る運搬費が二重に計上されていることに気づかないまま、P3に対して、請求書がまだ来ていない運搬費がある旨問い合わせたところ、P3において、請求人に当該運搬費の二重計上に気づかれないようにするため本件偽造請求書を作成して請求人に送付した結果と認める余地がある。
D 上記B及びCで検討した結果によれば、本件順号2運搬費の計上は、製番1400から1402までの製品に係る運搬費を過失により二重計上したものである可能性があり、請求人が本件偽造請求書を保存していること、P2が請求書に記載すべき製番を取り違えたことは、いずれも直ちにP2とP3との間に本件順号2運搬費の計上及び支払に関する通謀があったと推認させるものではなく、P2から架空の請求書の作成を依頼されたとのP3の申述はその依頼されたとする時期が不自然であるから、P2とP3との間に本件順号2運搬費の計上及び支払に関する通謀があったと推認することはできない。
(ハ) 平成16年12月以降の請求人の海上輸送の発注について
 原処分庁は、上記2の(1)の「原処分庁」欄のロの(ロ)のとおり、平成16年12月以降、請求人が発注した海上輸送の発注先の大半がH社となったことは、P2が、P3からW請求額に係る金員を受け取るようになったためであると考えられるなどと主張する。
 しかしながら、請求人の平成17年3月期における海上輸送の発注先は、別表7のとおり、平成16年12月以前から海上輸送の大半をH社に発注していたのであり、平成16年12月に不正な取引が始まったなどと認めることはできない。
(ニ) 結論
 以上のとおり、本件において、請求人が、故意に本件各運搬費が適正な運搬費を超える過大な金額を計上したと認めるべき証拠はなく、本件各運搬費は過大に計上されたものとは認められない。

(2) 争点2(請求人が本件各運搬費等を計上したことに関して、通則法第70条第5項に規定する偽りその他不正の行為があるか否か。)

 上記(1)のロの(ニ)のとおり、請求人が本件各運搬費を過大に計上したとは認められない。
 また、本件順号2運搬費については、上記(1)のロの(ロ)のDのとおり、過失により製番1400から1402までの製品に係る運搬費を二重に計上したものと認める余地があり、P2とP3との間に本件順号2運搬費の計上及び支払に関する通謀があったと推認することはできない。
 したがって、請求人が本件各運搬費等を計上したことに関して、通則法第70条第5項に規定する偽りその他不正の行為があると認めることはできない。

(3) 争点3(請求人が本件各運搬費等を計上したことに関して、通則法第68条第1項に規定する隠ぺい仮装行為があるか否か。)

 上記(1)のロの(ニ)のとおり、請求人が本件各運搬費を過大に計上したとは認められないから、本件各事業年度及び本件各課税期間について、請求人が本件各運搬費を計上したことに関して、通則法第68条第1項に規定する隠ぺい仮装行為はない。
 また、本件順号2運搬費の計上については、上記(2)のとおり、通則法第70条第5項に規定する偽りその他不正の行為があるとは認められないから、平成17年3月期の法人税及び平成17年3月課税期間の消費税等の各更正処分は、同条第1項に規定する更正の期間を徒過しており違法であるから、通則法第68条第1項に規定する隠ぺい仮装行為の有無について判断するまでもなく、平成17年3月期の法人税及び平成17年3月課税期間の消費税等に係る重加算税の各賦課決定処分は取り消すことになる。

(4) 本件法人税各更正処分

 上記(1)のとおり、本件各運搬費について、過大に計上されているとは認められないところ、本件法人税各更正処分について判断すると、次のとおりである。
イ 平成17年3月期
 上記(2)のとおり、本件順号2運搬費の二重計上について、請求人には通則法第70条第5項に規定する偽りその他不正の行為があったとは認められず、平成17年3月期の法人税の法定申告期限から5年を経過した日以後にされた平成17年3月期の法人税の更正処分は、更正の期間制限を徒過しており違法であるから、その全部を取り消すべきである。
ロ 平成18年3月期、平成19年3月期及び平成20年3月期
 平成18年3月期、平成19年3月期及び平成20年3月期の各所得金額は、別表8−1から別表8−3までの「審判所認定額」欄のとおり、更正処分直前の各所得金額と同額になるから、平成18年3月期、平成19年3月期及び平成20年3月期の法人税の各更正処分は、いずれもその全部を取り消すべきである。
ハ 平成21年3月期及び平成22年3月期
 平成21年3月期及び平成22年3月期の各所得金額は、別表8−4及び別表8−5の「審判所認定額」欄のとおり、平成21年3月期及び平成22年3月期の法人税の各更正処分のその金額を下回るから、当該各更正処分は、いずれもその一部を別紙1及び別紙2の「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。

(5) 本件法人税重加算税各賦課決定処分

イ 平成17年3月期、平成18年3月期、平成19年3月期及び平成20年3月期
 上記(4)のイ及びロのとおり、法人税の各更正処分の全部の取消しに伴い、平成17年3月期、平成18年3月期、平成19年3月期及び平成20年3月期の法人税に係る重加算税の各賦課決定処分については、いずれもその全部を取り消すべきである。
ロ 平成21年3月期及び平成22年3月期
 上記(4)のハのとおり、平成21年3月期及び平成22年3月期の法人税の各更正処分の一部の取消しに伴い、過少申告加算税の基礎となる税額は、それぞれ○○○○円及び○○○○円となり、重加算税の基礎となる税額は、いずれも零円となるところ、当該各更正処分(上記(4)のハの一部取消し後)により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないので、平成21年3月期及び平成22年3月期の法人税に係る重加算税の各賦課決定処分は、いずれも別紙1及び別紙2の「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。

(6) 本件消費税等各更正処分

 上記(1)のとおり、本件各運搬費について、過大に計上されているとは認められないところ、本件消費税等各更正処分について判断すると、次のとおりである。
イ 平成17年3月課税期間
 上記(2)のとおり、本件順号2運搬費の二重計上について、請求人には通則法第70条第5項に規定する偽りその他不正の行為があったとは認められないから、平成17年3月課税期間の消費税等の法定申告期限から3年を経過した日以後にされた平成17年3月課税期間の消費税等の更正処分は、更正の期間制限を徒過しており違法であるから、その全部を取り消すべきである。
ロ 平成18年3月課税期間、平成19年3月課税期間、平成20年3月課税期間及び平成22年3月課税期間
 平成18年3月課税期間、平成19年3月課税期間、平成20年3月課税期間及び平成22年3月課税期間の各控除対象仕入税額は、別表9−1から別表9−3まで及び別表9−5の「審判所認定額」欄のとおり、更正処分直前の各控除対象仕入税額と同額になり、納付すべき消費税額及び納付すべき地方消費税額は、いずれも各確定申告の額(ただし、平成22年3月課税期間については修正申告の額)と同額となるから、平成18年3月課税期間、平成19年3月課税期間、平成20年3月課税期間及び平成22年3月課税期間の消費税等の各更正処分は、いずれもその全部を取り消すべきである。
ハ 平成21年3月課税期間
 平成21年3月課税期間の控除対象仕入税額は、別表9−4の「審判所認定額」欄のとおり、平成21年3月課税期間の消費税等の更正処分のその金額を上回り、納付すべき消費税額及び納付すべき地方消費税額は、当該更正処分のその金額を下回るから、当該更正処分は、その一部を別紙3の「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。

(7) 本件消費税等重加算税各賦課決定処分

イ 平成17年3月課税期間、平成18年3月課税期間、平成19年3月課税期間、平成20年3月課税期間及び平成22年3月課税期間
 上記(6)のイ及びロのとおり、消費税等の各更正処分の全部の取消しに伴い、平成17年3月課税期間、平成18年3月課税期間、平成19年3月課税期間、平成20年3月課税期間及び平成22年3月課税期間の消費税等に係る重加算税の各賦課決定処分については、いずれもその全部を取り消すべきである。
ロ 平成21年3月課税期間
 上記(6)のハのとおり、平成21年3月課税期間の消費税等の更正処分の一部の取消しに伴い、重加算税の基礎となる税額は零円となるから、平成21年3月課税期間の消費税等に係る重加算税の賦課決定処分については、その全部を取り消すべきである。

(8) その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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