(平成25年1月22日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、宗教法人である審査請求人(以下「請求人」という。)がその所有する会館を請求人の檀家以外の者に対し葬儀等の会場として利用させ金員を受領したことについて、原処分庁が、当該会館を檀家以外の者に対し利用させ金員を受領したことは、法人税法上の公益法人等が行う収益事業(席貸業)に該当し、また、消費税法上の課税資産の譲渡等に該当するなどとして、法人税の更正処分等並びに消費税及び地方消費税の決定処分等を行ったことに対し、請求人が同処分等の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 法人税について
 平成18年4月1日から平成19年3月31日まで、平成19年4月1日から平成20年3月31日まで、平成20年4月1日から平成21年3月31日まで、平成21年4月1日から平成22年3月31日まで及び平成22年4月1日から平成23年3月31日までの各事業年度(以下、順次「平成19年3月期」、「平成20年3月期」、「平成21年3月期」、「平成22年3月期」及び「平成23年3月期」といい、これらを併せて「本件各事業年度」という。)の法人税について、審査請求(平成24年8月24日請求)に至る経緯は、別表1のとおりである(以下、平成24年5月29日付でされた本件各事業年度の法人税の各更正処分を「本件法人税各更正処分」という。)。
ロ 消費税及び地方消費税について
 平成18年4月1日から平成19年3月31日まで、平成19年4月1日から平成20年3月31日まで、平成20年4月1日から平成21年3月31日まで、平成21年4月1日から平成22年3月31日まで及び平成22年4月1日から平成23年3月31日までの各課税期間(以下、順次「平成19年3月課税期間」、「平成20年3月課税期間」、「平成21年3月課税期間」、「平成22年3月課税期間」及び「平成23年3月課税期間」といい、これらを併せて「本件各課税期間」という。)の消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)について、審査請求(平成24年8月24日請求)に至る経緯は、別表2のとおりである(以下、平成24年5月29日付でされた本件各課税期間の消費税等の各決定処分を「本件消費税等各決定処分」という。)。

(3) 関係法令等の要旨

イ 法人税法関係
(イ) 法人税法第2条《定義》第6号は、公益法人等とは同法別表第二に掲げる法人をいう旨規定し、同別表は、公益法人等の一つとして根拠法を宗教法人法とする宗教法人を掲げている。
(ロ) 法人税法第2条第13号は、収益事業とは、販売業、製造業その他の政令で定める事業で、継続して事業場を設けて行われるもの(なお、平成20年法律第23号による改正前は「行われるもの」が「営まれるもの」であった。以下、同条第13号については、便宜上、改正後の「行われるもの」をもって表記することとする。)をいう旨規定している。
 そして、法人税法施行令第5条《収益事業の範囲》第1項は、上記政令で定める事業は、同項各号に掲げる事業(その性質上その事業に付随して行われる行為を含む。)とする旨規定し、同項第14号は、席貸業のうちまる1不特定又は多数の者の娯楽、遊興又は慰安の用に供するための席貸業(同号イ)及びまる2上記まる1に掲げる席貸業以外の席貸業(同号ロの(1)ないし(4)に掲げるものを除く。)(同号ロ)を掲げている。また、法人税法施行令第5条第1項第14号ロの席貸業から除かれる席貸業として、同号ロ(4)は、法人がその主たる目的とする業務に関連して行う席貸業で、当該法人の会員その他これに準ずる者の用に供するためのもののうちその利用の対価の額が実費の範囲を超えないものを掲げている。
(ハ) 法人税法第4条《納税義務者》(平成19年法律第6号により見出しは削除された。)第1項は、公益法人等については、収益事業を行う(なお、平成20年法律第23号による改正前は「行う」が「営む」であった。以下、同項については、改正後の「行う」をもって表記することとする。)場合に限り法人税を納める義務がある旨規定し、同法第7条《内国公益法人等の非収益事業所得等の非課税》は、公益法人等の各事業年度の所得のうち収益事業から生じた所得以外の所得については、各事業年度の所得に対する法人税を課さない旨規定している。
ロ 消費税法関係
(イ) 消費税法第2条《定義》第1項第4号は、事業者とは、個人事業者及び法人をいい、また、同項第8号は、資産の譲渡等とは、事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供をいい、さらに、同項第9号は、課税資産の譲渡等とは、資産の譲渡等のうち、同法第6条《非課税》第1項の規定により消費税を課さないこととされるもの以外のものをいう旨、それぞれ規定し、同法第2条第1項第14号は、基準期間とは、法人についてはその事業年度の前々事業年度をいう旨規定している。
(ロ) 消費税法第5条《納税義務者》第1項は、事業者は、国内において行った課税資産の譲渡等につき、消費税を納める義務がある旨規定し、同法第9条《小規模事業者に係る納税義務の免除》第1項は、事業者のうち、その課税期間に係る基準期間における課税売上高が10,000,000円以下である者については、同法第5条第1項の規定にかかわらず、その課税期間中に国内において行った課税資産の譲渡等につき、消費税を納める義務を免除する旨規定している。
(ハ) 消費税法第28条《課税標準》第1項は、課税資産の譲渡等に係る消費税の課税標準は、課税資産の譲渡等の対価の額(対価として収受し、又は収受すべき一切の金銭又は金銭以外の物若しくは権利その他経済的な利益の額とし、課税資産の譲渡等につき課されるべき消費税額及び当該消費税額を課税標準として課されるべき地方消費税額に相当する額を含まないものとする。)とする旨規定している。
(ニ) 消費税法基本通達5−1−1《事業としての意義》の注書2は、法人が行う資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供は、その全てが「事業として」に該当する旨定め、同通達5−1−2《対価を得て行われるの意義》は、消費税法第2条第1項第8号に規定する「対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供」とは、資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供に対して反対給付を受けることをいう旨定めている。

(4) 基礎事実

 以下の事実は、請求人と原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査の結果によっても、その事実が認められる。
イ 請求人は、宗教法人法に基づき設立された宗教法人であり、法人税法第2条第6号に規定する公益法人等に該当する。
ロ 請求人には檀家総代○名によって構成される総代会並びに当該檀家総代のうち○名及び代表役員によって構成される責任役員会が組織されており、当該総代会又は当該責任役員会によって重要事項に関する協議、決定が行われる。
ハ 請求人は、平成16年4月1日から平成17年3月31日まで及び平成17年4月1日から平成18年3月31日までの各事業年度(以下、順次「平成17年3月期」及び「平成18年3月期」という。)並びに本件各事業年度において、請求人が境内に所有するD会館の1階部分及び2階部分(以下、当該D会館の1階部分及び2階部分を「本件会館」という。)を、通夜、葬儀及び告別式並びにこれらに続いて行われる法要(以下「葬儀等」という。)の式場として利用し、又は、法要後の会食会場として檀家に対して利用させていた他、檀家以外の者に対しても葬儀等の式場及び法要後の会食会場として利用させており、その利用料(利用時間は午後4時から翌日の午後4時までの24時間)は、1階部分が○○○○円、2階部分が○○○○円であった。
 なお、本件会館を檀家以外の者に利用させること及びその利用料について、1階部分が昭和62年5月の請求人の責任役員会において、また、2階部分が平成14年2月の請求人の総代会においてそれぞれ決定され、当該利用料は、当該決定以後、本件各事業年度を通じて変更はなかった。
ニ 請求人の平成17年3月期ないし平成23年3月期の各事業年度の収入内訳は、別表3−1のとおりであるところ、請求人は、請求人が本件会館を檀家に利用させた場合、又はごくまれではあるものの、檀家以外の者に対し本件会館を利用させ、その葬儀等に請求人の僧侶が出仕(本件においては、僧侶が葬儀等に出席して読経等を行うことをいう。以下同じ。)した場合に受領した金員について、「布施収入」として同表の「科目」の「布施収入」欄記載の各収入金額を平成17年3月期ないし平成23年3月期の総勘定元帳に計上し、また、本件会館を請求人の僧侶が出仕しないで檀家以外の者に対し利用させ受領した金員について、「会館収入」として同表の「科目」の「会館収入」欄記載の各収入金額(以下、本件各事業年度に係る「会館収入」欄記載の各収入金額を「本件各会館収入」という。)を平成17年3月期ないし平成23年3月期の総勘定元帳に計上していた。
ホ 請求人は、本件各事業年度の法人税について、別表3−1の「科目」欄記載の各科目に係る各収入金額のうち「土地収入」欄記載の各収入金額(以下「本件各土地収入」という。)のみが、法人税法第2条第13号に規定する収益事業(以下「収益事業」という。)から生じたものであるとして、別表3−2のとおりとする確定申告をしたが、本件各課税期間の消費税等については申告しなかった。
 なお、請求人は、上記の確定申告に当たり、本件各事業年度における請求人の事業(収益事業及び収益事業以外の事業)のために支出した金額のうち本件各土地収入に係る収益事業のために支出した金額として、本件各土地収入の請求人の当該事業に係る総収入金額に占める割合等に基づき別表3−2の「支出の額(経費)」欄記載の各金額のとおり計算し、また、本件各土地収入のうち同欄記載の各金額を超える金額がある場合は、当該超える金額について法人税法第37条《寄附金の損金不算入》第5項の規定(以下、同項の規定により、その収益事業に係る寄附金の額とみなされたものを「みなし寄附金」という。)を適用するなどして所得金額及び納付すべき税額を算定した。
ヘ 原処分庁は、本件各会館収入に関し、請求人が本件会館を請求人の僧侶が出仕しないで檀家以外の者に対し利用させる行為(以下「本件行為」という。)は、法人税法施行令第5条第1項第14号に規定する席貸業(以下「席貸業」という。)に該当し収益事業であるとして本件法人税各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分をし、また、請求人が本件行為により金員を受領する行為は、消費税法第2条第1項第9号に規定する課税資産の譲渡等に該当し、請求人は本件各課税期間において消費税法第9条第1項の規定により消費税の納税義務が免除される事業者(以下「免税事業者」といい、免税事業者に該当しない事業者を「課税事業者」という。)に該当しないとして本件消費税等各決定処分及び無申告加算税の各賦課決定処分をした。
 なお、原処分庁は、本件法人税各更正処分に当たり、本件各事業年度における請求人の事業(収益事業及び収益事業以外の事業)のために支出した金額のうち本件各土地収入及び本件各会館収入に係る収益事業のために支出した金額として、本件各土地収入及び本件各会館収入の合計金額の請求人の当該事業に係る総収入金額に占める割合等に基づき計算し、また、当該合計金額のうち当該収益事業のために支出したとして計算された金額を超える金額がある場合は、当該超える金額について法人税法第37条第5項の規定を適用するなどして、所得金額及び納付すべき税額を算定した(別表4の本件各事業年度における「原処分の金額」欄参照)。さらに、原処分庁は、本件消費税等各決定処分に当たり、本件各会館収入に基づき消費税の課税標準の額を計算して、当該課税標準額に対する消費税額を算出するとともに、本件各課税期間における請求人の事業(収益事業及び収益事業以外の事業)のために支出した金額について、消費税法第60条《国、地方公共団体等に対する特例》第4項の規定に基づき、課税標準額に対する消費税額から控除することができる課税仕入れに係る消費税額を計算して、消費税等の納付すべき税額を算定した。

(5) 争点

イ 争点1 本件行為は、席貸業に該当し収益事業に当たるか否か。
ロ 争点2 請求人が本件行為により金員を受領したことは、消費税法第2条第1項第8号に規定する資産の譲渡等(以下「資産の譲渡等」という。)に当たるか否か。

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2 主張及び判断

(1) 争点1(本件行為は、席貸業に該当し収益事業に当たるか否か。)について

イ 主張

原処分庁 請求人
 請求人は、本件会館を檀家以外の者に対し葬儀等の行事のために利用させているところ、当該行事に請求人の僧侶が出仕しない場合、本件会館を檀家以外の者に利用させる行為は、本件会館を請求人が自ら利用するものではなく、他の者に単に利用させているにすぎないから、席貸業に該当する。そして、請求人は、当該席貸業を本件各事業年度の全期間を通じて継続して事業場を設けて行っているものと認められる。
 したがって、本件行為は、席貸業に該当し収益事業に当たる。
 本件会館を檀家以外の者に対し利用させるに当たって、請求人は、本件会館の利用を葬儀等に限定しており、また、請求人の僧侶は、通夜終了後に施錠する際や翌日に開扉した際に、本件会館内に安置されている遺体に対し線香を立て合掌しているほか、請求人は、本件会館の利用料を対価性のない布施として受領しているのであるから、請求人が本件会館を檀家以外の者に利用させる行為は、請求人が本来の目的である公益事業として行う活動の一環であることにほかならない。
 したがって、本件行為は、席貸業に該当せず収益事業に当たらない。

ロ 判断
(イ) 法令解釈等
A 法人税法が公益法人等の所得のうち収益事業から生じた所得についてのみ法人税を課することとしている趣旨は、元来公益法人等は、公益を目的として設立されたものであって営利を目的とするものではないが、公益法人等が一般私企業と競合する事業を行う場合には、一般私企業に対する課税とのバランス又は課税の公平等を考慮して、当該事業から生ずる所得に対しては法人税を課することとしたものと解されるところ、このような趣旨に鑑みれば、宗教法人の行う事業が法人税法施行令第5条第1項各号に規定する事業に該当するか否かについては、当該事業に伴う財貨の移転が役務等の対価の支払として行われる性質のものか、それとも役務等の対価でなく喜捨等の性格を有するものか、また、当該事業が宗教法人以外の法人の一般的に行う事業と競合するものか否か等の観点を踏まえた上で、当該事業の目的、内容、態様等の諸事情を社会通念に照らして総合的に検討して判断するのが相当である。
 なお、公益法人等の課税対象となる事業の範囲は、収益事業として法人税法施行令第5条第1項各号において個別に法定されているから、当該事業が同項各号に規定されている収益事業のいずれかに該当する場合には、たとえ当該事業が公益法人等の本来の目的とされているものであったとしても、当該事業から生ずる所得については法人税が課されることになるが、収益事業の範囲は、上記のように専ら税法固有の目的に従って法定されているものであるから、公益法人等の本来の事業が税法上の収益事業に該当したとしても、当該事業の公益性を否定するものではないと解するのが相当である。
B 法人税法施行令第5条第1項第14号に規定する席貸業とは、一般にいわゆる席料や利用料を受領して座席、集会場等一定の場所を随時、時間や期間等を区切って利用させるために賃貸する事業をいうものと解される。
(ロ) 認定事実
 当審判所に対する請求人の代表役員の答述、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の各事実が認められる。
A 請求人は、檀家以外の者の本件会館の利用に当たって、葬家又は葬儀会社から利用申込みがあった際、本件会館の利用予定がない限り、その申込みに応えて利用させており、葬家からの利用申込みの際には上記1の(4)のハの利用料を利用申込者に対し明示していた。なお、葬儀会社からの利用申込みに際し、当該葬儀会社には利用料をあらかじめ知らせていたから、利用申込みがある都度、利用料を伝えることは少なかった。
B 請求人は、本件行為により、平成19年3月期80回、平成20年3月期83回、平成21年3月期83回、平成22年3月期65回及び平成23年3月期64回と、本件各事業年度を通じて継続して本件会館を檀家以外の者に利用させ、上記Aのとおり、請求人が利用者に明示していた利用料を受領していた。
C 本件会館が所在するa県b市には、宗教法人以外の葬儀会社等が運営する斎場があるところ、それらの斎場の利用料は、請求人のそれと大きく乖離するものではなかった。
(ハ) 当てはめ
A 席貸業の該当性について
(A) 本件会館を葬儀等の行事に利用する行為の場合、当該行事に請求人の僧侶が出仕するときは、当該行為は請求人が自ら本件会館を利用して葬儀等の行事を行うものであるから席貸しの行為が介在する余地はなく、当該行為は席貸業に該当しないとするのが相当である。
 これに対し、本件行為、すなわち本件会館を利用して行われる葬儀等の行事が檀家以外の者に係るもので、かつ、当該行事に請求人の僧侶が出仕しない場合は、請求人が自ら本件会館を利用するものではなく、請求人が本件会館を当該者に利用させているにすぎず、そして、請求人は、上記1の(4)のハのとおり、本件会館を当該者に利用させる場合の利用料を請求人の責任役員会又は総代会において定め、上記(ロ)のA及びBのとおり、本件会館を当該者が利用する場合に、当該利用料をあらかじめ当該者に対して明示し、その明示した利用料を受領していることからすれば、本件会館を当該者に利用させ、その対価として当該者から当該利用料を受領したものと認められ、当該利用料が喜捨等の性格を有するということはできない。
(B) また、本件行為は、その目的、内容及び利用料の定め方等からすれば、葬儀会社等が自ら運営する施設を葬儀会場として貸し付ける行為とその本質において異なるところがないと認められ、さらに、上記(ロ)のCのとおり、本件会館の利用料が、葬儀会社等が運営する斎場(葬儀会場)の利用料と大きく乖離するものではないことからすれば、本件行為は、宗教法人以外の法人が一般的に行う事業と競合する関係にあるものと認められる。
(C) 以上のことからすれば、請求人は、本件会館について、利用予定がない限り檀家以外の者からの利用申込みに応え、当該者に対し利用時間を区切って利用させ、その対価として利用料を受領していたのであり、また、本件行為は、宗教法人以外の法人が一般的に行う事業と競合関係にあるから、本件行為は席貸業に該当するというべきである。
 なお、法人税法施行令第5条第1項第14号ロ(4)は、席貸業のうち、法人がその主たる目的とする業務に関連して行うもので、当該法人の会員その他これに準ずる者の用に供するためのもののうちその利用の対価の額が実費の範囲を超えないものについては、席貸業から除く旨規定しているところ、当該会員その他これに準ずる者とは、その構成員として公益法人等の業務運営に参画し、その業務運営のための費用の一部を負担している者をいうものと解するのが相当であり、これを本件行為についてみると、檀家以外の者に利用させ、かつ、請求人の僧侶が出仕しないものは、請求人の会員その他これに準ずる者に係るものとは認められないから、本件行為に係る対価の額が実費の範囲であるか否かを判断するまでもなく、席貸業から除かれるものには該当しない。
B 収益事業の該当性について
 上記Aの(C)のとおり、請求人の本件行為は席貸業に該当するところ、上記(ロ)のBのとおり、請求人は、本件各事業年度の全期間を通じて継続して本件会館を檀家以外の者に対して利用させていたのであるから、本件行為は収益事業に当たるというべきである。
(ニ) 請求人の主張について
 請求人は、本件行為は、本件会館の利用が葬儀等に限定されていること、請求人の僧侶が線香を立て合掌するなどしていること、本件会館の利用料を布施として受領していることから、請求人の本来の目的である公益事業として行う活動の一環であることにほかならず、収益事業に該当しない旨主張する。
 しかしながら、上記(イ)のAのとおり、公益法人等の行う事業が収益事業のいずれかに該当する場合には、たとえ当該事業が公益法人等の本来の目的とされているものであったとしても、当該事業から生ずる所得については法人税が課されることになり、また、上記(ハ)のAの(A)のとおり、請求人は、本件行為の対価としてその利用料を受領したものであり、当該利用料が喜捨等の性格を有するということはできず、同Bのとおり、本件行為は、席貸業に該当し収益事業に当たるというべきである。
 したがって、請求人の主張には理由がない。

(2) 争点2(請求人が本件行為により金員を受領したことは、資産の譲渡等に当たるか否か。)について

イ 主張

原処分庁 請求人
 請求人は、本件行為により金員を受領していたところ、当該金員は、本件会館を利用させた対価として受領したものであるから、本件行為により金員を受領していたことは、資産の譲渡等に該当する。  請求人は、本件行為により檀家以外の者から本件会館の利用料を受領する際、領収証のただし書に「会館使用布施」と記載し、本件会館の利用料を布施として受領しており、本件会館を利用させた対価として利用料を受領したものではないから、本件行為により金員を受領していたことは、いわゆる不課税取引に当たり、資産の譲渡等に該当しない。

ロ 判断
(イ) 法令解釈等
 消費税法は、国内において事業として対価を得て行われる資産の貸付けのうち、消費税を課さないこととされるもの以外のものは課税資産の譲渡等に該当し消費税を納める義務がある旨規定しているところ、消費税法基本通達5−1−1の注書2及び同通達5−1−2は、法人が行う全ての資産の貸付けは「事業として」行われるものであり、資産の貸付けに対して反対給付を受けることは「対価を得て行われる」ものであることを明らかにしており、当審判所においてもこれらの取扱いは相当であると認められる。
 また、消費税法第28条第1項は、課税標準となる課税資産の譲渡等の対価の額の意義として「対価として収受し、又は収受すべき一切の金銭又は金銭以外の物若しくは権利その他経済的な利益の額」とする旨規定していることからすると、一般に対価を得て行う取引は、広く消費税等の課税の対象になると解される。
(ロ) 当てはめ及び請求人の主張の当否について
 上記(イ)のとおり、法人が行う全ての資産の貸付けは「事業として」行われるものであるから、本件行為は、「事業として」行われるものに該当すると認められる。また、一般的に「対価」とは、資産の譲渡等に対する反対給付として支払を受けることをいうから、資産の貸付けが無償で行われる場合や支払行為に対価性がない場合には消費税が課されないことになるが、本件においては、上記(1)のロの(ハ)のAの(A)のとおり、請求人は、本件行為の対価としてその利用料を受領したものであり、さらに、当該利用料が喜捨等の性格を有するということはできないから、上記の資産の貸付けが無償で行われる場合や支払行為に対価性がない場合には当たらないというべきであり、この判断は、請求人が本件会館の利用者に交付した領収証に「会館使用布施」と記載していたとしても左右されるものではない。
 そうすると、請求人が本件行為により金員を受領する行為は、「事業として対価を得て行われる資産の貸付け」に該当し、資産の譲渡等に該当すると認めるのが相当である。
 したがって、請求人の主張には理由がない。

(3) 本件法人税各更正処分について

 上記(1)のロの(ハ)のBのとおり、本件行為は収益事業に該当するから、請求人は、当該収益事業から生じた所得について法人税を納める義務があるところ、本件法人税各更正処分には、本件各事業年度の所得金額の計算上、請求人の収益事業から生じた本件各土地収入及び本件各会館収入に係る経費の額の計算や集計に誤りが認められ、また、この誤りに連動してみなし寄附金の額に誤りが認められ、さらに、平成19年3月期、平成21年3月期及び平成22年3月期の確定申告において当期欠損の額とした各金額に関して法人税法施行令第73条《一般寄附金の損金算入限度額》第1項第3号ハに規定する寄附金の損金算入限度額の計算に誤りが認められるから、これらを補正して、本件各事業年度の所得金額及び納付すべき税額を算定すると、別表4の「審判所認定額」の各欄記載のとおりとなり、これらの所得金額及び納付すべき税額はいずれも本件法人税各更正処分の額を上回るから、本件法人税各更正処分はいずれも適法である。

(4) 法人税に係る過少申告加算税の各賦課決定処分について

 上記(3)のとおり、本件法人税各更正処分はいずれも適法であり、また、本件法人税各更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が、本件法人税各更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項及び第2項の規定に基づき行われた過少申告加算税の各賦課決定処分はいずれも適法である。

(5) 本件消費税等各決定処分について

 上記(2)のロの(ロ)のとおり、請求人が本件行為により金員を受領する行為は、資産の譲渡等に該当し、また、消費税法第6条第1項の規定により同法別表第一に規定する消費税を課さないこととされる資産の譲渡等に該当しないから、当該行為は、同法第2条第1項第9号に規定する課税資産の譲渡等に該当するところ、本件各課税期間の基準期間における課税売上高(平成17年3月期ないし平成21年3月期の本件各会館収入に105分の100を乗じた各金額)はいずれも10,000,000円を超えるから、請求人は、本件各課税期間において課税事業者に該当する。
 そして、上記1の(4)のヘのとおり、原処分庁は、本件消費税等各決定処分に当たり、本件各会館収入に基づき消費税の課税標準の額を計算して、当該課税標準額に対する消費税額を算出するとともに、本件各課税期間における請求人の事業(収益事業及び収益事業以外の事業)のために支出した金額について、消費税法第60条第4項の規定に基づき、課税標準額に対する消費税額から控除することができる課税仕入れに係る消費税額を計算して、消費税等の納付すべき税額を算定しているところ、当該消費税等の納付すべき税額に誤りは認められないから、本件消費税等各決定処分は適法である。

(6) 消費税等に係る無申告加算税の各賦課決定処分について

 上記(5)のとおり、本件消費税等各決定処分はいずれも適法であり、請求人が消費税の期限内申告書を提出しなかったことについて、国税通則法第66条《無申告加算税》第1項ただし書に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項及び第2項の規定並びに地方税法附則第9条の4《譲渡割の賦課徴収の特例等》及び第9条の9《譲渡割に係る延滞税等の計算の特例》第1項の規定に基づき行われた無申告加算税の各賦課決定処分はいずれも適法である。

(7) 原処分のその他の部分については、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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