(平成25年8月22日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)の共同相続人の一人を原告とする貸金請求訴訟において、原告の請求を棄却する旨の判決が確定したことにより、相続財産として申告していた貸付金が存在しないこととなったため、相続税法(平成16年法律第147号による改正前のもの。以下同じ。)第32条《更正の請求の特則》第5号及び相続税法施行令(平成17年政令第37号による改正前のもの。以下同じ。)第8条《更正の請求の対象となる事由》第1号に規定する事由があるとして、請求人が更正の請求をしたところ、原処分庁が、当該判決は相続税法施行令第8条第1号に規定する判決には当たらないとして、更正をすべき理由がない旨の通知処分をしたことから、請求人が、原処分庁の法令解釈には誤りがあるなどとして、同処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯及び基礎事実

 以下の事実については、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 請求人は、平成15年6月○日に死亡したDの相続(以下「本件相続」という。)に係る相続税について、申告書に別表の「当初申告」欄のとおり記載して、共同相続人のEと共に法定申告期限までに申告した。
 なお、本件相続に係る共同相続人は、Dの長男であるF、同次男である請求人及び同三男であるEの3名である。
ロ 請求人は、本件相続について原処分庁所属の調査担当職員の調査を受け、平成19年2月19日に、別表の「修正申告」欄のとおりとする修正申告をした。
 なお、当該修正申告に係る申告書第11表「相続税がかかる財産の明細書」の中に、相続財産として医療法人社団G会H病院に対する貸付金190,150,000円(以下「G会貸付金」という。)及び同会理事長であるJに対する貸付金40,000,000円(以下「J貸付金」という。)が記載されている。
ハ 原処分庁は、これに対し、平成19年3月1日付で、別表の「賦課決定処分」欄のとおり過少申告加算税の賦課決定処分をした。
ニ その後、原処分庁は、請求人に対し、平成21年2月12日付で、J貸付金が本件相続開始前に弁済されているとして、別表の「更正(減額)処分」欄のとおり更正処分及び過少申告加算税の変更決定処分をした。
ホ 請求人は、K地方裁判所(以下「K地裁」という。)に、G会貸付金及びJ貸付金のうち請求人の法定相続分に相当する金員の支払などを求める訴訟(平成○年(○)第○号貸金等請求事件)を提起したところ、K地裁は、平成21年3月○日の判決(以下「請求人判決」という。)において、これらの貸付金の存在を認めるに足りる証拠はないなどとして請求人の請求を棄却し、請求人判決は同年4月○日に確定した。
ヘ 請求人は、請求人判決が確定したことにより、G会貸付金が存在しないこととなったため、国税通則法(平成18年法律第10号による改正前のもの。以下「通則法」という。)第23条《更正の請求》第2項第1号に規定する事由があるとして、平成21年6月15日に、別表の「更正の請求まる1」欄のとおりとすべき旨の更正の請求をしたところ、原処分庁は、同年12月16日付で、請求人判決は同号に規定する判決に該当しないとして、更正をすべき理由がない旨の通知処分をした。
ト 請求人は、請求人判決は通則法第23条第2項第1号に規定する判決に該当するから、上記ヘの通知処分に不服があるとして、平成22年2月13日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、まる1G会貸付金は、Dの相続財産と推認するのが合理的であること、まる2当該訴訟は、訴訟当事者を誤ったものということもできること及びまる3請求人判決は、十分な攻撃防御が尽くされた結果の判決とは認められないことから、同号に規定する判決に該当するとは認められないことを理由として、同年5月13日付で棄却の異議決定をし、請求人が審査請求をしなかったことから、当該通知処分は確定した。
チ Eは、K地裁に、G会貸付金のうち同人の法定相続分に相当する金員の支払を求める訴訟(平成○年(○)第○号貸金請求事件)を提起したところ、K地裁は、平成21年11月○日の判決(以下「本件判決」という。)において、G会貸付金の存在を認めることはできないとして同人の請求を棄却し、本件判決は同年12月○日に確定した。
リ 請求人は、本件判決が確定したことにより、G会貸付金が存在しないこととなったため、相続税法第32条第5号及び相続税法施行令第8条第1号に規定する事由があり、本件判決があったことを知ったのは平成24年4月5日であるとして、同月24日に、別表の「更正の請求まる2」欄のとおりとすべき旨の更正の請求(以下「本件更正の請求」という。)をしたところ、原処分庁は、本件判決は相続税法施行令第8条第1号に規定する「相続若しくは遺贈又は贈与により取得した財産についての権利の帰属に関する訴えについての判決」に当たらないとして、平成24年7月3日付で、更正をすべき理由がない旨の通知処分(以下「本件通知処分」という。)をした。
ヌ 請求人は、本件通知処分を不服として、平成24年7月9日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年10月5日付で棄却の異議決定をした。
ル 請求人は、異議決定を経た後の本件通知処分に不服があるとして、平成24年10月29日に審査請求をした。

(3) 関係法令

 関係法令の要旨は、別紙のとおりである。

(4) 争点

 本件判決は相続税法施行令第8条第1号に規定する判決に該当するか否か。

トップに戻る

2 主張及び判断

(1) 主張

請求人 原処分庁
 本件判決は、以下の理由から、相続税法施行令第8条第1号に規定する判決に該当する。  本件判決は、以下の理由から、相続税法施行令第8条第1号に規定する判決に該当しない。
イ 通則法第23条第2項第1号は、申告等に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えについての判決により、その事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定したときは、更正の請求をすることができる旨規定しているところ、同号には、当該判決を受けた者について明文の規定がないから、自己の申告等に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎としたところが当該判決により異なることとなる者であれば、当該判決に係る訴訟当事者以外の者であっても、同号の規定による更正の請求をすることができるものと解される。 イ 通則法第23条第2項第1号に規定する判決とは、申告等に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実を訴えの対象とする民事訴訟の判決をいうものと解されるところ、民事訴訟法第115条《確定判決等の効力が及ぶ者の範囲》第1項第1号において、確定判決の効力が及ぶ者について当事者を掲げていることからすると、通則法第23条第2項第1号に規定する判決は、更正の請求をする者に訴訟当事者として既判力が及ぶ訴訟の判決であることが必要であると解するのが相当であるから、当該判決に係る訴訟当事者以外の者は、同号の規定による更正の請求をすることはできない。
ロ もっとも、通則法第23条第2項第1号は、その確定した日の翌日から起算して2月以内に更正の請求をすることが要件とされているところ、相続税においては、共同相続人間で常に情報が共有されているとは限らず、他の共同相続人が提起した相続財産についての権利の帰属に関する訴えについての判決があったことを容易に知り得ない場合もあることから、相続税法第32条第5号及び相続税法施行令第8条第1号の規定により、当該判決があったことを知った日の翌日から4月以内に更正の請求をすることができることとしているものと解される。 ロ 相続税法施行令第8条第1号に規定する判決の意義について、相続税法上特段の定義規定を置いていないが、同法第32条は、通則法第23条に規定する更正の請求の特例的な規定として設けられたものであることからすると、相続税法施行令第8条第1号に規定する判決は、通則法第23条第2項第1号に規定する判決と同義に解するのが相当であり、上記イのとおり、通則法第23条第2項第1号に規定する判決は、更正の請求をする者が訴訟当事者である判決をいうのであるから、相続税法第32条において更正の請求の期限が請求人の主張のように規定されているとしても、相続税法施行令第8条第1号に規定する判決に、更正の請求をする者が訴訟当事者となっていない判決が含まれることにはならない。
ハ 文理解釈上も、通則法第23条第2項第1号及び相続税法施行令第8条第1号に規定する判決が、更正の請求をする者が訴訟当事者である判決に限らないことは、例えば、通則法第71条《国税の更正、決定等の期間制限の特例》第1項第1号が「当該裁決等を受けた者」と規定し、訴訟当事者のみに更正等の期間制限の特例を認めているのに対し、通則法第23条第2項第1号及び相続税法施行令第8条第1号には、かかる明文の規定がないことから明らかである。 ハ 通則法第71条第1項第1号は、争訟の提起があった場合において、その裁決、決定又は判決による原処分の異動に伴い、その対象となった年分以外の年分等について更正決定等すべき場合の期間制限の特例を規定したものであり、当該規定をもって、判決に係る訴訟当事者以外の者が、通則法第23条第2項第1号及び相続税法施行令第8条第1号の規定に基づいて更正の請求をすることができることにはならない。
ニ また、相続税法には、同法第11条《相続税の課税》、第16条《相続税の総額》及び第17条《各相続人等の相続税額》の規定により、同一の被相続人から相続等により財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格が各相続人の相続税額の計算の基礎となるという同法特有の事由があることから、同法第32条が通則法第23条の一般的な更正の請求の規定に対する特例的な規定として設けられたものであることに鑑みれば、相続税法施行令第8条第1号に規定する判決は、更正の請求をする者が訴訟当事者となっていない判決も含むものと解され、そのことは、相続税法第35条《更正及び決定の特則》第3項第1号が、同一の被相続人から相続等により財産を取得した者の間における税負担の公平を求めるために設けられたものとされ、一つの相続においては、全ての相続人について矛盾のない課税を行うために、除斥期間を超えて職権による更正を行うことを命じた規定であることからも明らかである。 ニ 相続税法第1条の3《相続税の納税義務者》の規定により、相続税の納税義務者は相続等により財産を取得した個人とされ、申告についても、同法第27条《相続税の申告書》第1項の規定により個別申告を原則とし、同条第5項の規定により例外的に共同申告を認めているにすぎないため、相続人が複数いる場合であっても、相続税の申告及び課税は相続人ごと別個に独立して行われ、その効力も個別的に判断することになるから、ある相続人の課税価格が異動したとしても、原則として他の相続人の課税価格に影響を及ぼすものではない。
 また、相続税法第35条第3項第1号は、「更正の請求に基づき更正をした場合において」として、更正の請求に基づく減額更正処分が先行する場合の規定であって、いかなる場合に更正の請求をすることができるかについて規定したものではないから、当該規定をもって、相続税法施行令第8条第1号に規定する判決に、更正の請求をする者が訴訟当事者となっていない判決が含まれることにはならない。
ホ 相続税法第32条第1号の規定に基づく更正の請求について、他の共同相続人を当事者とする家庭裁判所の審判の確定により、相続税の課税価格及び相続税額が過大となったときに、当該審判の当事者ではない共同相続人が当該審判の確定を知った日の翌日から4月以内に更正の請求を行うことを認めた、平成20年1月31日裁決が存在する。 ホ 請求人が主張する裁決は、相続税法第32条に規定する更正の請求の期限を徒過したものであるか否かが争点となった事案の裁決であり、本件とはその前提事実や争点を異にするものである。
ヘ 平成19年7月4日発行の税務大学校論叢第53号に掲載された論文「国税通則法23条2項1号に基づく更正の請求と判決の既判力との関係」には、通則法第23条第2項第1号の規定からすると、判決の訴訟当事者以外の者でも「申告等に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えについての判決」であって、同号の要件を満たせば同号に基づく更正の請求が可能ではないかと思われる旨の記述があり、訴訟当事者以外の者が更正の請求をすることができる例として、認知の訴えにより認知が認められた確定判決の場合の相続税法第32条第2号の規定に基づく更正の請求を挙げている。 ヘ 請求人が主張する論文の内容については、全て執筆者の個人的見解にすぎず、判決に係る訴訟当事者以外の者でも更正の請求をすることができるという根拠にはなり得ない。
 また、当該論文の請求人の主張する記述は、例示として相続税法第32条第2号の規定に基づく更正の請求を挙げたものであり、本件において当該規定を適用するものではない。

(2) 法令解釈

イ 通則法第23条第2項第1号の規定の趣旨は、申告等に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実関係について民事上紛争を生じ、判決や和解によってこれと異なる事実が明らかにされたため、申告等に係る課税標準等又は税額等が過大になった場合において、更正の請求を認めようとするものであり、ここにいう判決とは、申告等に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実の得喪変更に関する訴訟に係る判決を意味するものと解される。
 この場合において、通則法第23条第2項第1号は、当該判決が確定したことを要件としており、民事訴訟法第115条第1項第1号の規定によれば、確定判決は当事者に対してその効力を有するものとされているところ、確定判決の効力が及ばない者であれば、当該確定判決でどのような事実が認定されようとも何らの影響も受けず、当該確定判決によって自己の申告等に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎とした事実が異なることはない。
 したがって、通則法第23条第2項第1号に規定する判決は、更正の請求をする者にその効力が及ぶ判決、すなわち、更正の請求をする者が訴訟当事者である判決に限られるものと解される。
ロ 相続税法施行令第8条第1号は、平成15年度税制改正により相続税法第32条の更正の請求の特則事由として追加されたものであるが、その改正趣旨は、同号の事由が、通則法第23条第2項の規定により、期限なしに更正の請求ができる事由であることから、税額の減額には対応できるが、その影響で他の相続人の税額が増加することとなる場合には、他の相続人に対して増額の処分をしなければならないところ、それを可能とする規定が通則法にはないため、相続税法第32条において上記事由を更正の請求の特則事由として特記することにより、同法第35条第3項の規定による他の相続人に対する増額処分も可能とするためであると解される。
 したがって、この改正趣旨からすると、相続税法施行令第8条第1号に規定する判決は、通則法第23条第2項第1号に規定する判決と同義のものといえるから、更正の請求をする者にその効力が及ぶ判決、すなわち、更正の請求をする者が訴訟当事者である判決に限られるものと解される。

(3) 判断

イ 上記1の(2)のチのとおり、本件判決は、Eが提起した貸金請求事件の判決であるから、請求人にはその効力が及ばない判決、すなわち、請求人が訴訟当事者ではない判決であるところ、上記(2)のロのとおり、相続税法施行令第8条第1号に規定する判決は、更正の請求をする者が訴訟当事者である判決に限られるのであるから、本件判決は請求人にとって同号に規定する判決には該当しない。
ロ 請求人は、通則法第23条第2項第1号には、当該判決を受けた者について明文の規定がないから、自己の申告等に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎としたところが当該判決により異なることとなる者であれば、当該判決に係る訴訟当事者以外の者であっても、同号の規定による更正の請求をすることができる旨主張するが、上記(2)のイのとおり、そもそも、確定判決の効力が及ばない者であれば、当該確定判決でどのような事実が認定されようとも何らの影響も受けず、当該確定判決によって自己の申告等に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎とした事実が異なることはないのであるから、請求人の主張には理由がない。
ハ 請求人は、相続税法第32条第5号及び相続税法施行令第8条第1号の規定により、当該判決があったことを知った日の翌日から4月以内に更正の請求をすることができるとされていることをもって、相続税法施行令第8条第1号に規定する判決には更正の請求をする者が訴訟当事者となっていない判決も含む旨の主張をするが、上記(2)のロのとおり、同号に規定する判決は、通則法第23条第2項第1号に規定する判決と同義のものであり、更正の請求をする者が訴訟当事者である判決に限られるのであるから、相続税法第32条において「知った日」と規定されていることをもって、相続税法施行令第8条第1号に規定する判決に、更正の請求をする者が訴訟当事者となっていない判決が含まれると解することはできず、請求人の主張には理由がない。
ニ 請求人は、通則法第23条第2項第1号及び相続税法施行令第8条第1号に規定する判決が、文理解釈上、更正の請求をする者が訴訟当事者である判決に限らない根拠として、通則法第71条第1項第1号の規定を例に主張するが、同号は、更正決定等に係る不服申立て又は訴えについての裁決、決定又は判決(以下「裁決等」という。)による原処分の異動に伴い、それ以外の年分又は事業年度について更正決定等をすべき場合の期間制限の特例を規定したものであって、「当該裁決等を受けた者」自体についての更正決定等の期間制限の特例を規定したものではないから、同号の文理解釈をもって、請求人が主張するように、通則法第23条第2項第1号及び相続税法施行令第8条第1号に規定する判決が更正の請求をする者が訴訟当事者である判決に限らないとする論拠とはなり得ず、請求人の主張には理由がない。
ホ 請求人は、相続税法には、同一の被相続人から相続等により財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格が各相続人の相続税額の計算の基礎となるという同法特有の事由があることから、同法第32条が通則法第23条の一般的な更正の請求の規定に対する特例的な規定として設けられたものであることに鑑みれば、相続税法施行令第8条第1号に規定する判決は、更正の請求をする者が訴訟当事者となっていない判決も含むものと解され、そのことは、相続税法第35条第3項第1号の規定の趣旨からも明らかである旨主張する。
 確かに、相続税法第11条、第16条及び第17条の規定によれば、同一の被相続人から相続等により財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格が各相続人の相続税額の計算の基礎とされているが、これは各相続人の納付すべき相続税額を算出するための計算方法を規定したものにすぎないところ、相続税の納税義務は、同法第1条の3の規定により各相続人が独立して負うものであり、申告書も、同法第27条第1項の規定により各相続人が個別に提出するものであって、例外的に、申告の簡素化の観点から、同一の被相続人に係る納税義務者が2人以上ある場合には、同条第5項の規定により申告書の共同提出が認められているのみで、共同相続の場合であっても、相続税の申告及び課税は、相続人ごとに別個独立に行われ、その効力も個別的に判断されるのである。したがって、相続税法が上記のような計算方法を採用していることをもって、相続税法施行令第8条第1号に規定する判決が、更正の請求をする者が訴訟当事者となっていない判決も含むものと解することはできず、また、相続税法第35条第3項第1号は、同法第32条の規定による更正の請求に基づき更正がされた場合の規定であって、更正の請求をすることができる要件を規定しているものではないから、請求人の主張には理由がない。
ヘ 請求人が主張する上記(1)のホの裁決は、遺産分割事件から脱退した相続人の一人が、当該遺産分割事件が終了した旨を他の共同相続人から聞いて遺産分割が確定したことを知ったとして、相続税法第32条第1号の規定に基づいて行った更正の請求について、更正の請求の期限を徒過していたか否かを争点とする事案に係るものであり、また、同号の更正の請求の理由は、請求人が主張するように「家庭裁判所の審判の確定」ではなく、別紙の8のとおり、「未分割財産の分割」により課税価格及び相続税額が過大となったことであるから、相続税法第32条第5号及び相続税法施行令第8条第1号の規定による更正の請求である本件についての判断を左右するものではなく、請求人の主張には理由がない。
ト 税務大学校論叢の冊子版及び税務大学校のホームページには、税務大学校論叢掲載論文の内容については、全て執筆者の個人的見解であり、国税庁等の公式見解を示すものではない旨が記載されており、また、請求人が主張する上記(1)のヘの論文において、訴訟当事者以外の者でも更正の請求が可能ではないかとして例示されている相続税法第32条第2号の更正の請求の理由は、請求人が主張するように「認知に関する裁判の確定」ではなく、別紙の8のとおり、当該裁判の確定により「相続人に異動を生じたこと」であるから、いずれにしても、相続税法第32条第5号及び相続税法施行令第8条第1号の規定による更正の請求である本件についての判断を左右するものではなく、請求人の主張には理由がない。
チ 以上のとおり、請求人の主張にはいずれも理由がなく、本件判決は相続税法施行令第8条第1号に規定する判決には該当しない。
 なお、請求人にとっての相続税法施行令第8条第1号の規定に該当する判決は、請求人判決であるところ、上記1の(2)のへ及びトのとおり、当該判決に基づく更正の請求に対する通知処分は、既に確定している。

(4) 本件通知処分について

 上記(3)のチのとおり、本件判決は相続税法施行令第8条第1号に規定する判決には該当しないから、本件更正の請求に対して更正をすべき理由がないとした本件通知処分は適法である。

(5) 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

トップに戻る

トップに戻る