(平成25年11月5日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、外国法人である審査請求人(以下「請求人」という。)が国外で仕入れた商品を国内の顧客に販売して生じた所得について、原処分庁が、請求人は請求人のために契約を締結するための注文の取得等の行為のうちの重要な部分を行う代理人等を国内に置いているから、当該所得の金額は法人税の課税標準とされる国内源泉所得に係る所得の金額に当たるとして法人税の決定処分等を行ったのに対し、請求人が、原処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ d税務署長は、原処分庁所属の調査担当職員の調査に基づき、平成24年5月14日付で、請求人に対し、平成18年4月1日から平成19年3月31日まで、平成19年4月1日から平成20年3月31日まで及び平成20年4月1日から平成21年3月31日までの各事業年度(以下、順次「平成19年3月期」、「平成20年3月期」及び「平成21年3月期」といい、これらを併せて「本件各事業年度」という。)の法人税の各決定処分(以下「本件各決定処分」という。)及び無申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」という。)を別表「決定処分等」欄記載のとおり行った。

ロ 請求人は、これらの処分を不服として、平成24年7月13日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年10月10日付で棄却の異議決定をした。

ハ 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成24年11月9日に審査請求をした。

(3) 関係法令等の要旨

 別紙のとおりである。

(4) 基礎事実

 以下の事実は、請求人と原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。

イ 請求人は、平成10年6月○日に設立された中華人民共和国香港特別行政区(以下「香港」という。)を本店登録地とする外国法人であり、M社が100%出資する法人である。
 なお、請求人は、平成24年4月5日、名称を「U社」から「J社」に変更した。

ロ M社は、e県d市を本店所在地とし、商品カタログ等を媒体として衣料品、家庭用品などを販売する事業等を行う法人である。

ハ 請求人は、本件各事業年度において、香港で仕入れたサプリメント、ブランド化粧品、ブランド雑貨などの各種商品のカタログを作成し、これを日本国内の消費者に頒布した上で、電話、はがき、ファックス等で商品の購入注文を受け、受注した商品を香港から発送し、日本国内の発注者に納品する形態の商品販売事業(以下「本件商品販売事業」という。)を行った。

ニ 請求人は、平成17年6月15日、N社との間で、同社に対して、本件商品販売事業に関し、日本国内の顧客からの個人の輸入購入申込書の取りまとめなどを委託することを内容とする業務委託契約を締結した。

ホ N社は、f県g市を本店所在地として、電話・郵便・ファクシミリ・インターネット・移動体通信機器・電子メールを利用した営業、販売、受注の請負、顧客対応業務及びそれらに関するコンサルティング業務などを目的として平成17年5月○日、設立された法人である。

ヘ 請求人は、平成17年6月16日、P社との間で、同社に対して、本件商品販売事業に関し、カタログ制作のための援助業務(以下「カタログ制作サポート業務」という。)などを委託することを内容とする業務委託契約を締結した。

ト P社は、香港を本店登録地として平成17年4月○日、設立された外国法人である。

チ Q社は、平成17年6月15日、N社との間で、同社に対して、上記ニの契約と同じ内容の業務委託契約を締結した。

リ Q社は、平成12年7月○日に設立されたアメリカ合衆国h州に所在した外国法人であり、M社が100%出資する法人であった。Q社の事業内容は、化粧品やサプリメント等の海外商品を日本国内の顧客に対して販売する事業であった。

ヌ Q社は、平成17年6月16日、P社との間で、同社に対して、上記ヘの契約と同じ内容の業務委託契約を締結した。

ル P社は、平成17年7月15日、N社との間で、同社に対して、本件商品販売事業及びQ社の商品販売事業に関し、カタログ制作サポート業務などを委託することを内容とする業務委託契約を締結した。

ヲ 請求人は、平成20年4月1日、P社との間で、同社に対して、本件商品販売事業に関し、カタログ制作サポート業務及び販売促進計画策定並びに電話やメール、申込書による受注業務などを委託することを内容とする業務委託契約を締結した。

ワ Q社は、平成20年4月1日、P社との間で、同社に対して、上記ヲの契約と同じ内容の業務委託契約を締結した。

カ P社は、平成20年3月31日、N社との間で、同社に対して、本件商品販売事業及びQ社の商品販売事業に関し、カタログ制作サポート業務及び日本国内の顧客からの個人の輸入購入申込書の取りまとめなどを委託することを内容とする業務委託契約を締結した。
 なお、上記業務委託契約に基づき、P社とN社は、業務委託期間を平成20年4月1日から平成22年3月31日までと定める覚書を交わした。

ヨ N社は、本件各事業年度において、本店所在地としていたf県g市の本社(以下「g本社」という。)のほか、e県d市の事務所(以下「d支店」という。)を有しており、これらの事務所では、上記ニ、チ、ル及びカの委託を受けた業務を行っていた。

タ 請求人は、本件各事業年度の法人税の確定申告書をd税務署長あてに提出していない。

レ d税務署長は、原処分庁所属の調査担当職員の調査に基づき、平成24年5月14日付で、請求人の納税地はd市i町○−○であるとした上で、請求人の本件商品販売事業により生じた所得のうち別表の「所得金額」欄に記載の金額は法人税の課税標準となる国内源泉所得に当たるとして、請求人に対し、本件各決定処分及び本件各賦課決定処分を行った。

ソ d税務署長は、原処分庁所属の調査担当職員の調査に基づき、平成25年9月10日付で、請求人に対し、平成21年3月期の法人税の減額更正処分及び無申告加算税の変更決定処分を別表「更正処分等」欄記載のとおり行った。

(5) 争点

イ 請求人が行った本件商品販売事業は、法人税法第141条第3号に規定する国内に置く代理人等により行われたものに当たるか否か。
 以下、同号を受けた法人税法施行令第186条第3号に規定する者を「注文取得代理人」といい、平成20年政令第156号による改正後の法人税法施行令第186条本文かっこ書に規定する者を「独立代理人」という。

(イ) N社は、請求人の注文取得代理人に当たるか否か。

(ロ) N社は、独立代理人に当たるか否か。

ロ 原処分は、請求人の納税地を所轄する税務署長が行った処分であるか否か。

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2 主張

(1) 争点イ(イ)(注文取得代理人該当性)について

イ 原処分庁

 N社の業務は、以下の各要件をいずれも満たすことから、N社は請求人の注文取得代理人に該当する。

(イ) 注文の取得、協議その他の行為のうちの「重要な部分」

 N社は、請求人から業務委託を受けて日本国内の顧客から購入注文を受け、請求人から指示された判断基準に基づき、その注文に応じられるか否かの判断をして、受注業務を行った。
 また、請求人は、カタログ以外での販売を行っていないため、請求人が日本国内の顧客に頒布するカタログは、有店舗販売における店舗と同一視することができることから、N社が行ったカタログの企画・制作サポート業務は、請求人の営業形態において重要な役割を果たしていると認められる。
 したがって、N社が行った業務は、法人税法施行令第186条第3号に規定する「注文の取得、協議その他の行為のうちの重要な部分」に該当する。

(ロ) 一の外国法人のために

 法人税法施行令第186条第3号は、注文取得代理人について、一の外国法人のために注文の取得、協議その他の行為を行う者であることを要件とし、「一の外国法人」には、その外国法人の主要な株主等その他その外国法人と特殊の関係のある者を含むと規定している。
 「その外国法人と特殊の関係のある者」には、親子会社だけでなく、その会社の傘下にある関係会社までも含む趣旨であると解され、いわゆる兄弟会社をも含むと解するのが相当である。
 N社は、請求人及びQ社のための注文の取得、協議その他の行為をしていると認められるが、請求人とQ社はいずれもM社により100%の出資を受けた、いわゆる兄弟会社であるから、法人税法施行令第186条第3号に規定する「その外国法人と特殊の関係のある者」に該当する。
 したがって、「一の外国法人のために」の要件は満たす。

ロ 請求人

 N社の業務は、以下の各要件を満たさないため、N社は請求人の注文取得代理人に該当しない。

(イ) 注文の取得、協議その他の行為のうちの「重要な部分」

 N社が行った業務は、顧客からの一方的意思等を単に集計ないし取り次ぐといういわば単純な機械的業務にすぎない。
 また、カタログの作成サポート等の業務についても、当該カタログは商品の宣伝資料にすぎない。
 したがって、N社が行った業務は、法人税法施行令第186条第3号に規定する「注文の取得、協議その他の行為のうちの重要な部分」に該当しない。

(ロ) 一の外国法人のために

 N社は、請求人以外の外国法人であるQ社のためにも同種の業務を行っていた者であるから、法人税法施行令第186条第3号に規定する「一の外国法人のために」注文の取得、協議その他の行為を行う者であることの要件を欠く。
 同条同号の「その外国法人と特殊の関係のある者」については、同一の共通の支配下に当該企業と共に置かれている他の企業を含む旨の法令上の定義はないことから、いわゆる兄弟会社が含まれると解することはできず、Q社は、請求人とは資本的にいわゆる兄弟会社の関係にあるといえるにすぎず、親子会社の関係にないのはもとより、請求人と支配的な上下関係のある傘下関係にあるものではないことから、法人税法施行令第186条第3号に規定する「その外国法人と特殊の関係のある者」にも該当しない。
 したがって、「一の外国法人のために」の要件を満たさない。

(2) 争点イ(ロ)(独立代理人該当性)について

イ 請求人

 仮に、N社が請求人の注文取得代理人に該当するとしても、法人税基本通達20−2−5(以下「本件通達」という。)に定める、まる1法的独立性、まる2経済的独立性及びまる3通常業務性の各要件の全てを満たしていることから、N社は独立代理人に該当する。

(イ) 法的独立性について

 N社は、株式会社として独立した法人格を有している。同社はいわゆるコールセンター事業と称される事業を主に行っており、そのために必要な諸設備・機器類を自らの計算において構築・設置し、従業員として企画・オペレーター等おおむね100名前後(アルバイト、出向を含む。)を雇用して、自らの計算において会社経営を行っている。このことから、N社は、法的に独立しているといえる。
 なお、カタログ制作等の業務委託を受けた者が委託者の意向を聞きながら希望に沿う内容のカタログを制作することは当然であり、また、N社に価格決定権限がないことについても、委託者が商品の販売価格の決定権限を有することは当然であり、受託者の自由な裁量や判断で受託業務が行われるものではない。

(ロ) 経済的独立性について

 経済的独立性とは、取引先の多寡等をいうのではなく、N社が請求人の経営的支配又は経済的支援を受ける関係にあるか否かに係る経済的自主性の観点から判断すべきものである。
 N社は、自らの経営上の判断に基づいて委託契約を締結し、その契約に基づいた約定に従って報酬金、手数料等の収入を得ながら、人件費・設備投資費等の諸経費を自らの計算で支出しているのであり、独自の経営判断の下に運営されていた。
 したがって、N社は、請求人の経営的支配及び経済的支援を受ける関係にはなく、経済的に独立している。

(ハ) 通常業務性について

 N社は、コールセンターの業務のノウハウを活用してコールセンターを構築し、当該業務を請け負うことを事業目的として設立された法人である。
 コールセンターの業務の受託先である請求人及びQ社については、それぞれの事業上のニーズを盛り込んだ別個の受付マニュアル(業務仕様書)を作成するが、コールセンター事業そのものに対する支配を受けるものではない。
 コールセンター事業の事業活動は、顧客からの一方的な電話による申込みや苦情等を受け付けることであり、N社は、自己の事業経営の本分を通常の方法で行っているものである。
 したがって、N社は、通常業務性の要件を満たす。

ロ 原処分庁

 独立代理人該当性の要件は、本件通達に定める各要件をいずれも満たすことが必要であるところ、N社については、以下のとおり法的独立性及び経済的独立性の要件を満たさないことから独立代理人に該当しない。

(イ) 法的独立性について

 本件通達(1)は、独立代理人の要件である法的独立性とは、代理人として当該業務を行う上で、詳細な指示や包括的な支配を受けず、十分な裁量権を有するなど本人である外国法人から法的に独立していることと定めている。
 そこで、代理人が外国法人からの詳細な指示や包括的な支配を受けず、十分な裁量権を有して自らの事業を行っているかどうかの観点から判断すると、N社は、請求人から指示を受けてカタログを制作していたこと、商品販売価格の決定権限がなかったこと及び請求人から指示された判断基準に基づいて受注業務を行っていたことから、十分な裁量権を有して自らの事業を行っていると認められず、請求人から法的に独立していない。

(ロ) 経済的独立性について

 本件通達(2)は、独立代理人の要件である経済的独立性とは、当該業務に係る技能と知識の利用を通じてリスクを負担し、報酬を受領するなど本人である外国法人から経済的に独立していることと定めている。
 そこで、代理人が企業家として行う事業活動に係るリスクを自ら負担しているかどうかの観点から判断すると、N社は、以下の点から、請求人から経済的に独立していない。

A 本件商品販売事業に係る商品売買を自らの勘定で行っていないことから、在庫商品を保有することや商品販売代金の貸倒れの危険といった経済的リスクを負担していない。

B M社の代表取締役の働きかけにより、まさにコールセンター事業を行うために設立された法人であり、本件商品販売事業及びQ社の事業の委託業務に全面的に特化し、収入を当該委託業務に依存している。

C 法人設立から平成21年9月までの期間において、請求人から取得資産等の金額を超える資金借入れをしており、業務委託料収入以外の事業資金の調達を請求人からの借入金のみに依存している。

(3) 争点ロ(納税地)について

イ 原処分庁

 請求人の納税地は、以下のとおり、d市と認められ、原処分は納税地を所轄する税務署長が行った処分である。

(イ) 法人税法第17条第1号に規定する「事業に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地」は、当該事業に係る業務が行われている代理人の事務所等の所在地をいうものであると解するのが相当であり、これらの事務所等が二以上ある場合には、その主たるものの所在地を納税地とするとされている。
 したがって、国内に代理人等を置く外国法人の納税地は、代理人である法人の本店所在地に限られるものではなく、代理人が業務を行う場所の中から、事務所、事業所その他これらに準ずるものを事実関係に照らして特定し、その主たるものの所在地が納税地となる。

(ロ) N社は、d支店とg本社のコールセンターの二つの事業所等を有しているが、d支店では、カタログ制作・企画サポートという本件商品販売事業の売上げを左右する重要な業務を行っており、g本社のコールセンターで行う受注業務は、d支店でこの業務を行った結果であることから、本件商品販売事業に係るN社の業務が行われた主たる事務所等はd支店であり、その所在地であるd市が請求人の納税地である。

ロ 請求人

 仮に、請求人の本件商品販売事業により生じた所得が国内源泉所得に該当するとしても、請求人の納税地は、以下のとおり、N社の本店所在地であるg市となるから、原処分は納税地を所轄する税務署長が行ったものではない。

(イ) 法人税法第17条第1号に規定する外国法人の納税地のうち、同法第141条第1号又は第2号に規定する支店等の恒久的施設を有する外国法人については、その恒久的施設の所在地を納税地とし、同条第3号に規定する国内に代理人等を置く外国法人については、外国法人が支店等の恒久的施設を国内に有する場合とは異なり、外国法人の事業に関して代理行為を行う者の住所地が納税地となるものである。

(ロ) 会社法第4条《住所》は、会社の住所はその本店所在地にあるものとする旨規定しており、また、法人税法第16条《内国法人の納税地》は、内国法人の納税地はその本店所在地とする旨規定している。
 そうすると、N社の住所地はその本店所在地であり、請求人の納税地はN社の本店所在地であるg市となる。

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3 判断

(1) 争点イ(イ)(注文取得代理人該当性)について

イ 法令解釈

 法人税法第141条は、外国法人の所得に対する法人税の課税標準について規定しており、同条第3号は、国内に代理人等を置く外国法人の国内源泉所得についても、一定の場合、その所得の金額が法人税の課税標準となる旨規定している。したがって、内国法人に業務を委託して国内で事業を行う外国法人の当該事業により生じた所得が、法人税の課税対象となるか否かについては、業務の委託を受けた当該内国法人が、国内に置く代理人等に該当するか否かにより決せられることとなる。
 そして、同号を受けた法人税法施行令第186条第3号は、国内に置く代理人等の一形態として、注文取得代理人を規定しているが、同条同号の規定から、注文取得代理人に該当するためには、代理人等の行為が、注文の取得、協議その他の行為(以下「注文取得等の行為」という。)のうちの「重要な部分」を行っているといえること、かつ、その行為が「一の外国法人のために」行っているといえることの各要件を満たすことが必要である。
 そこで、注文取得代理人該当性の解釈においては、代理人等の行為が、どのような場合に注文取得等の行為のうちの「重要な部分」であるといえるのか、また、どのような場合に「一の外国法人のために」行っているといえるのかが問題となる。

(イ) 注文取得等の行為のうちの「重要な部分」について

 この点、法人税法施行令第186条第3号の規定が、外国法人の事業に関し契約を締結する権限を有し、かつ、これを常習的に行使する者(以下「契約締結代理人」という。)を規定する同条第1号と別に置かれている趣旨は、契約締結のみを国外で行うことで、契約締結代理人該当性を回避し、課税を免れることを可能とすることを防止することにあるものと解されるが、同趣旨から、注文取得代理人とは、契約締結代理人に該当しない者であっても、実質的に契約締結代理人と同視し得る者であるものと判断される。
 とするならば、注文取得代理人該当性の要件である、注文取得等の行為のうちの「重要な部分」の解釈においても、上記趣旨を考慮に入れるべきであり、「重要な部分」とは、注文の形式的な取りまとめにとどまらず、実質的に、契約を締結する権限を有する者の行為と同視し得るような行為、すなわち、契約締結に至る一連の過程において、契約の締結のために必要不可欠となる行為がこれに当たると解するのが相当である。
 また、同条第3号の文言上、注文取得代理人に該当するためには、その注文取得等の行為が「重要な部分」であることで足り、必ずしも業務を行う者の行為により注文取得等が完遂されなくとも、注文取得代理人該当性の要件を満たすものと解される。

(ロ) 「一の外国法人のために」について

 法人税法施行令第186条第3号は、注文取得代理人は、専ら又は主として一の外国法人のために注文取得等の行為のうちの重要な部分をする者であることを要件とし、ここにいう「一の外国法人」には、その外国法人の主要な株主等その他その外国法人と特殊の関係のある者を含むと規定している。
 当該規定は、契約締結代理人を規定する同条第1号と異なり、外国法人と注文取得代理人との関係が、原則として一対一の専属的関係にあることを要求し、その適用要件を限定しているが、その一方で、「一の外国法人」に、その主要な株主等その他特殊の関係のある者を含むとして、一定の範囲を認めている。
 そして、「一の外国法人」にその主要な株主等を含むとしている趣旨は、国内において事業を行う外国法人が複数存在する場合に、それらの外国法人の一方が他方の主要な株主等である関係、すなわちそれらの外国法人が互いに親子会社等の関係にある場合には、当該親子会社が、それぞれの事業に関する注文取得等の業務を国内の同一の者に行わせることは、その経営判断において合理的かつ必然的であると考えられ、このような場合においても注文取得代理人等の規定の適用を除外することは実態にそぐわず、合理性を有しないためであると解される。
 上記趣旨を考慮するならば、複数の外国法人がそれぞれの事業に関する注文取得等の業務を国内の同一の者に行わせている場合、当該複数の外国法人の相互関係からみて上記と同様の状況にあり当該業務を同一の者に行わせることに合理性かつ必然性が認められる場合には、当該複数の外国法人は、親子会社のように直接的な資本的支配関係がない場合であっても、特殊の関係にあるとして「一の外国法人」に含まれると解すべきである。
 そうすると、「その外国法人の主要な株主その他特殊の関係のある者」とは、当該外国法人と親子会社の関係にある者がこれに当たるほか、当該外国法人との資本関係、事業内容に関する相互関係などから、その事業に関する注文取得等の業務を同一の者に行わせることに合理性かつ必然性が認められる関係にある者がこれに当たると解するのが相当である。
 なお、外国法人がその事業に関し注文取得等の業務を国内の者に委託する場合に、当該者との直接的な委託関係のみならず、他の者を介在させた複数の委託関係が存在することも十分想定されるが、そのような場合であっても、同条第3号にいう外国法人とは、注文取得等の業務を他者に委託することにより事業遂行において利益を受ける者、すなわち事業の主体である外国法人を指すものと解すべきである。

ロ 認定事実

 請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の各事実が認められる。

(イ) g本社における業務等

A g本社では、約90人の社員が在籍し、約70台の電話が設置され、顧客からの電話にオペレーターが対応し商品購入申込み対応等の事務処理を行う業務(以下「コールセンター業務」という。)を行っていた。

B コールセンター業務の対象となる顧客は、本件商品販売事業及びQ社の商品販売事業における商品の購入申込みを希望する国内の消費者であった。

C コールセンター業務の内容は、顧客からの電話による商品購入申込みへの対応及びそれに係るデータの入力、はがき、ファックス及びインターネットによる注文データの入力のほか、顧客からの入金確認、支払遅延者に対する電話や文書での支払の督促であった。

D 電話で注文を受ける場合、オペレーターは、顧客の申出から、カタログ番号、商品番号及び数量等の注文データをパソコンに入力し、顧客に対して1〜2週間で国際郵便により発送することなどを説明後、顧客からの必要事項の確認が終了した際は、「ご注文ありがとうございました」と対応していた。

E はがき及びファックスでの注文を受ける場合には、記載された注文内容を、インターネットでの注文を受ける場合には、送信されたメールに記載された注文内容をオペレーターが入力していた。

F コールセンター業務においては、電話対応等の業務マニュアルや受注基準の定めがあり、それにのっとって業務が行われていた。

G 顧客からの商品購入申込みが上記Fの受注基準に沿わないものであった場合には、オペレーターが顧客に対してその申込みを断るなど、予め請求人と協議し決められたルールにのっとって対応していた。

H コールセンターでデータ入力された注文情報は、請求人、P社及びN社の三者が共有する電算システムにおいて、入力日の夜間にデータ処理後、請求人又はP社が注文データを確認できるシステムとなっていた。

I 商品の発送の可否は、請求人において在庫等の確認をした後に決定され、請求人において発送されており、商品が入荷できず発送できないと請求人が判断した場合には、g本社のオペレーターから顧客に断りの連絡をしていた。

(ロ) d支店における業務

A d支店では、最大時には約13人、最小時には約10人の社員が在籍し、カタログ制作サポート業務を行っていた。

B カタログ制作サポート業務において制作されていたのは、「R」という名称のカタログであり、請求人の本件商品販売事業及びQ社の商品販売事業の双方にかかる商品が掲載されていた。
 カタログは、発行当初はA4版の4分の3程度の大きさで70数ページ、A4版に変更後は30数ページの規格のものであった。カタログは月に1回発行され、その中に申込みはがきが綴じ込まれ、受注の際の連絡先電話番号等、注文に必要な情報が掲載されていた。

C カタログ制作サポート業務の具体的内容は、P社が作成したカタログの原案を基に、商品掲載のレイアウト及び掲載商品の説明文などの素案について、国内の印刷業者と各商品の担当者とで校正作業をすることであった。当該校正作業は、一つのカタログにつき3回ほど行われた。

D カタログ制作サポート業務の一環として、校正作業のほか、商品展示会に出品された商品の情報、日本国内での商品の流行状況などの情報を収集し、P社に報告していた。

(ハ) 請求人とQ社の相互関係

A 本件各事業年度において、請求人及びQ社は、いずれもM社の連結財務諸表における連結子会社であり、両者はM社を親会社とする法人グループの事業の中で、食料品、化粧品、健康食品等の単品通信販売事業を行う子会社として位置付けられていた。

B 請求人及びQ社は、いずれも各種商品に係るカタログを日本国内の消費者に頒布し、電話等で商品の購入注文を受け、受注した商品を国外から発送することにより、日本国内の発注者に納品する形態の商品販売事業を行っていた。

ハ 判断

(イ) 注文取得等の行為のうちの「重要な部分」について

 上記イ(イ)のとおり、N社の業務が、注文取得等の行為のうちの「重要な部分」に該当するためには、当該業務が、契約締結に至る一連の過程において、契約の締結のために必要不可欠となる行為であると認められる必要がある。そして、一般に契約の成立は、一方当事者からの申込みに対する他方当事者の承諾により認められるのであるから、N社の業務が契約の締結のために必要不可欠となる行為であるか否かの判断においては、請求人の本件商品販売事業における、上記契約成立に至る申込みから承諾までの一連の流れの中で、当該業務がどのような役割を担っていたかについて検討されなければならない。そこで、以下、g本社とd支店の業務についてそれぞれ検討する。
 g本社での業務は、上記ロ(イ)のとおり、請求人の本件商品販売事業に関し、カタログに掲載された商品について、国内の消費者が電話、はがき等により商品購入の申込みを行う際の窓口として申込みを受け付け、申込者からの注文情報を請求人に報告するものであった。そして、具体的な受注対応としては、上記ロ(イ)D、E、F、G及びIのとおり、定められた受注基準及びマニュアルにのっとってオペレーターが受付処理を行っており、請求人に注文情報が報告された後は、受け付けた注文のうち、請求人が発送可能であると判断した場合には改めて申込者に対する承諾の連絡もなく商品が発送され、発送が不可能であると請求人が判断した場合にのみ、申込者に対してその旨の連絡がなされるというものであった。
 このように、本件商品販売事業においては、受注以後、承諾ができない場合にのみ申込者への連絡がなされ、それ以外は承諾の通知もなく商品が発送されていたのであるから、原則的にg本社での受注行為は、単なる注文の取りまとめにとどまらず、契約締結と同視し得るか、少なくとも契約締結に直結した業務であるといえ、請求人は本件商品販売事業において商品の販売を反復継続して行う業者であり、注文を受け付けたオペレーターが「ご注文ありがとうございました」と対応していることを考慮するならば、通常の消費者が注文受付の時点で契約が成立していると合理的期待を有することが一般的であると考えられることからしても、契約の締結のために必要不可欠となる行為であると判断し得る。
 なお、請求人は、g本社の業務は、顧客からの一方的意思等を単に集計ないし取り次ぐといういわば単純な機械的業務にすぎない旨主張するが、g本社での受注行為は契約の締結のために必要不可欠となる行為であることは上記のとおりであり、請求人の主張は採用できない。
 一方、d支店での業務は、上記ロ(ロ)のとおり、請求人の発行する商品カタログの制作サポートであった。請求人の本件商品販売事業において、d支店の業務がどのような位置づけであったかについて検討すると、本件商品販売事業の形態から、商品カタログは、商品に関する情報を提供し、商品購入のための一連の手続を記載した唯一のものであり、消費者が購入の申込みをするためには不可欠のものであったと認められる。また、カタログの発行のためには、印刷、校正作業等が必要になってくるが、上記ロ(ロ)B及びCのとおり、d支店では一月に1回の定期的な発行のために必要な作業を行っており、カタログそのものの不可欠性をも考慮するならば、d支店のカタログ制作サポート業務は、契約締結に至る一連の過程において、契約の締結のために必要不可欠となる行為であったものと認められる。そして、上記のとおり本件商品販売事業におけるカタログの不可欠性を考慮するならば、カタログは商品の宣伝資料にすぎないとする請求人の主張は採用できない。
 したがって、g本社及びd支店において行われていた業務はいずれも契約締結のために必要不可欠な行為であると認められ、N社が請求人から委託を受けて行っていた業務は、請求人が本件商品販売事業に関し契約を締結するための注文取得等の行為のうちの重要な部分に該当する業務であったものと認められる。

(ロ) 「一の外国法人のために」について

 請求人及びQ社は、上記1(4)イ及びリのとおりM社が100%出資する法人で、同一の法人を親会社とする関係にあり、さらには、上記ロ(ハ)Aのとおり、親会社M社の法人グループ事業の中で、いずれも単品通信販売事業を行う子会社の一つとして位置付けられていた。これはすなわち、両者はそれぞれの商品販売事業において、単一企業の事業を展開していたという意味を有するだけではなく、両者の事業が親会社グループ事業の事業展開の中でそれぞれの役割を有するものとして組み込まれていたことを意味するものと判断し得る。
 したがって、請求人及びQ社においては、親会社が共通であり、いずれも100%の出資であったことから、共通の親会社からいずれも強い支配力を受けていたという状況のみならず、両者に対する親会社の支配力が、グループ事業という共通の事業展開の中で発揮され、その行使が一体としてなされていたという状況が存在したことが十分に想定され、上記ロ(ハ)Bのとおり、事業形態が同一であったことからしても、両者は極めて密接な関係にあったものと認められる。さらには、請求人及びQ社の商品販売事業に関してN社に委託された業務は、上記ロ(イ)B及び(ロ)Bのとおり同時に処理されており、その遂行において共通の作業で行うことが可能な内容であった。
 上記のような状況が存在することからすると、親会社の支配力を背景に、請求人及びQ社は、事業内容に関する相互関係から、事業遂行のために共通の国内の事業者に業務委託することには合理性かつ必然性があったものと認められる。また、ここにいう外国法人とは事業主体となる法人を指すものであるので、請求人及びQ社とN社との業務委託契約上、P社が介在しているという事実は認められるが、事業主体は請求人及びQ社であることから、委託契約におけるP社の存在は上記判断には影響を及ぼさない。
 そうすると、上記イ(ロ)のとおり、複数の外国法人がそれぞれの事業に関する注文取得等の業務を国内の同一の者に行わせることに合理性かつ必然性が認められる場合には、当該複数の外国法人は、特殊の関係にあるとして「一の外国法人」に含まれると解すべきであるから、Q社は、請求人にこれを含めて一の外国法人とみなすべき特殊の関係のある者であったと認められる。
 したがって、請求人の本件商品販売事業に関する、N社の注文取得代理人該当性の判断における「一の外国法人」の要件は満たされる。
 この点、「一の外国法人」における「特殊の関係のある者」の解釈に関し、請求人は、法人税法第2条《定義》第10号を受けた法人税法施行令第4条《同族関係者の範囲》が、「特殊の関係のある法人」について、原則として直接的な支配的関係のある者に限定し、それ以外の関係の者については同条第4項のみなし規定により規律していることを根拠に、このようなみなし規定や特別の規定がない限りは、直接の支配関係がない者を特殊の関係のある者に含めるべきではない旨主張する。しかし、法令の中にみなし規定を置くか否かは、その規定が置かれた法令の趣旨によるところが大きく、同様の考慮が法人税法施行令第186条第3号の解釈において必ずしも妥当するとは限らず、本件においても「特殊の関係のある者」は、上記のとおり、親子会社や支配的な上下関係にあるものに限定すべきではないことから、請求人の主張は採用できない。

(ハ) 以上、上記(イ)及び(ロ)のとおり、N社は、一の外国法人と認められる請求人及びQ社のために、本件商品販売事業に関し契約を締結するための注文取得等の行為のうちの重要な部分を行っており、本件各事業年度の間、上記1(4)ニ、チ、ル及びカの委託契約に基づき、上記ロ(イ)及び(ロ)のとおりの業務を行っており、常習性も認められることから、法人税法施行令第186条第3号の各要件を満たす。したがって、N社は、請求人の注文取得代理人に該当する。

(2) 争点イ(ロ)(独立代理人該当性)について

 上記(1)ハのとおり、N社は、請求人の注文取得代理人に該当するが、平成20年4月1日以降は、法人税法施行令第186条本文かっこ書の規定により、代理人等が注文取得代理人に該当する者であっても、その者に独立代理人該当性が認められる場合には、当該代理人等は国内に置く代理人等に該当せず、したがって、外国法人の当該事業に関する国内源泉所得は法人税の課税対象とはならないこととなる。よって、以下、N社の独立代理人該当性について判断する。

イ 法令解釈

 独立代理人を、国内に置く代理人等から除く旨規定する同条本文かっこ書は、平成20年政令第156号により挿入されたが、その経緯は、日本国の締結している租税条約及び二国間の租税条約の国際基準とされている「OECD(経済協力開発機構)モデル租税条約」において、独立の地位を有する代理人は恒久的施設とされる代理人の範囲から除くこととされているため、国内法においても統一的な取扱いをすべく改正されたものである。
 独立代理人の該当性について、本件通達では、外国法人の代理人等が本人である外国法人から、法的に独立していること(法的独立性)、経済的に独立していること(経済的独立性)及び代理人が行う業務が通常の方法により行われること(通常業務性)の三要件を挙げ、これらの要件の全てを満たす必要があると定めている。本件通達の要件は、OECDモデル条約の解釈のための「モデル租税条約コメンタリー」に示された要件にも沿った内容であり、本件通達の定める要件を採用することは当審判所も相当と解する。
 そして、法人税法施行令第186条本文かっこ書が挿入された経緯からすると、独立代理人該当性の三要件の判断においては、モデル租税条約コメンタリーにおける解釈を参考にすることが相当であると解されるが、その観点から、法的独立性の要件は、代理人が代理人としての業務を行う際に十分な裁量権を有しているか否か、経済的独立性の要件は、代理人が企業家としてのリスクを負担しているか否か、また、通常業務性の要件は、代理人が業務を遂行する際に代理人の事業の通常過程において行動しているか否か等で判断されるべきである。

ロ 認定事実

 原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の各事実が認められる。

(イ) g本社におけるコールセンター業務において使用されていた上記(1)ロ(イ)Fの業務マニュアルや受注基準は、M社が請求人の商品販売事業において受注業務の委託を受け使用されていたものに改良を加えたものである。なお、業務マニュアルの変更には、請求人の承諾が必要であった。

(ロ) コールセンター業務において、顧客からの受注について疑義が生じたり、顧客から重大な苦情が寄せられたりしたときには、その都度、請求人又はP社に連絡し、その対応方法の指示を受けていた。

(ハ) カタログに掲載する商品の決定権限は請求人にあり、掲載商品の入替えについてN社から提案することはなかった。

(ニ) N社は、M社の意向を受けて、請求人及びQ社の商品販売事業に係るコールセンター業務等を行うために設立された。

(ホ) N社の事業運営資金は、請求人からの借入金に依存していた。

(ヘ) N社の設立時から、請求人の本件商品販売事業が廃止されるまでの期間に行っていた事業は、請求人及びQ社から委託された業務に限定されており、N社の売上は、これらの委託料収入に限定されていた。

(ト) N社は、請求人の本件商品販売事業の廃止と同時期にコールセンター事業を廃止し、その後ホテル経営に事業内容を変更した。

ハ 判断

 独立代理人該当性については、上記イの各要件が一つでも該当しなければ認められないものであるが、N社は、以下のとおり、法的独立性、経済的独立性及び通常業務性の各要件をいずれも満たしているとは認められない。したがって、N社は独立代理人には該当しない。

(イ) 法的独立性について

 上記ロ(イ)から(ハ)までのとおり、g本社でのコールセンター業務においては、請求人の業務委託を受けたM社が使用していた業務マニュアルや受注基準を使用し、その変更にも請求人の承諾が必要であったというのであるから、業務処理の全体的な枠組みにおいて、請求人の方針を実行することが徹底されていたものといえる。また、受注に関する疑義や顧客からの苦情への対応などについても、その都度、請求人又はP社に連絡し、詳細な指示を受けていたというのであるから、日々の処理においても請求人の意向が働いていた。
 以上からすると、g本社では、業務全般において請求人の包括的支配を受けていたものといえる。また、d支店におけるカタログ制作サポート業務に関しても、カタログに掲載する商品は請求人が決定しており、上記(1)ロ(ロ)Cのとおり、カタログの原案は請求人から委託を受けたP社が作成していたというのであるから、業務の全般にわたって請求人の方針に従っていたものであるといえる。したがって、コールセンター業務及びカタログ制作サポート業務の両面において、請求人からの詳細な指示や包括的な支配が働いていることが認められ、業務を遂行する上でのN社の裁量の範囲は極めて限られたものであったといえる。
 よって、N社に法的独立性は認められない。

(ロ) 経済的独立性について

 上記ロ(ニ)から(ト)までのとおり、N社は、企業として存続するための必要な事業運営資金を請求人からの借入れに依存しており、企業活動としても、その事業期間の極めて長い期間、その業務は請求人及びQ社からの受託業務のみであった事実が認められる。したがって、独立した企業として、経済的リスクを自ら負担して事業を行っていたとはいえないことから、その経済的独立性は認められない。

(ハ) 通常業務性について

 上記ロ(ニ)及び(ヘ)のとおり、N社は、請求人の事業領域に属する業務のみを遂行するために設立されたのであるから、N社自身の事業を遂行する上での通常過程ということは観念することはできない。上記ロ(ト)のとおり、請求人の本件商品販売事業の廃止と同時期に、事業内容を変更したという事実はこれを裏付ける。したがって、N社が自らの業務の遂行上、通常過程において行動することはありえないことから、その通常業務性についても認められない。
 なお、独立代理人該当性の判断においては、上記のとおり、代理人等の業務の内容を実質的に捉えてなされるべきであり、請求人の主張は採用できない。

(3) 争点イ(国内に置く代理人等による事業の該当性)について

 上記(1)及び(2)のとおり、N社は、請求人の注文取得代理人に該当し、かつ、独立代理人に該当しないことから、請求人の国内に置く代理人等であると認められる。したがって、請求人の本件商品販売事業は、請求人が国内に置く代理人等により行われたものと判断される。

(4) 請求人の所得の国内源泉所得該当性について

 ところで、本件審査請求は、請求人の本件商品販売事業から生じた所得に対する、原処分庁の本件各決定処分及び本件各賦課決定処分が争われているものであるが、原処分の前提として請求人に法人税の納税義務が生ずるためには、請求人の本件商品販売事業により生じた所得が、法人税法第138条第1号及びこれを受けた法人税法施行令第176条第1項第1号に規定する国内源泉所得に該当することが必要である。そこで、争点ロ(納税地)についての判断に先立って、以下、請求人の本件商品販売事業から生じた所得が法人税の課税対象となる国内源泉所得に該当するか否かについて、判断する。
 請求人の本件商品販売事業における商品は、上記1(4)ハのとおり、請求人が国外である香港において仕入れたサプリメント、ブランド化粧品、ブランド雑貨などの動産であり、消費者からの注文に応じて販売していたものであるから、製造等はされずにそのままの形状で送付されていたものといえる。したがって、本件商品販売事業における商品は、同号に規定するたな卸資産に該当する。
 また、上記(1)の認定のとおり、請求人は、本件商品販売事業において注文取得等の行為のうちの重要な部分を、内国法人であるN社に業務委託して国内において行っているのであるから、この事実は、法人税法施行令第176条第4項第3号に規定する、譲渡に関する契約を締結するための注文の取得等の重要な部分を国内において行っていた場合に該当し、したがって、同項本文により、本件商品販売事業における商品の譲渡は国内においてあったものと認められる。
 そうすると、本件商品販売事業は、同条第1項第1号に規定する、国外において譲渡を受けた動産であるたな卸資産につき国外において製造、加工等の価値を増加させるための行為をしないで、これを国内において譲渡する場合に該当し、よって、同号の規定により、本件商品販売事業により生じたすべての所得は、法人税法第138条第1号に規定する国内源泉所得に該当する。
 したがって、法人税法第4条第3項の規定により、請求人に法人税の納税義務が生ずる。

(5) 争点ロ(納税地)について

 以上より、請求人に法人税の納税義務が生ずることから、以下、納税地について判断する。

イ 法令解釈

 外国法人の納税地を定めるに当たっては、法人税法第17条の規定によることになるが、国内に恒久的施設を有する外国法人の納税地については、同条第1号が、その外国法人が国内において行う事業に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地とする旨規定している。一方で、恒久的施設を有しない外国法人の納税地については、同条第3号が適用され、具体的には、同号を受けた法人税法施行令第16条第1号が、法人税法第17条第1号又は第2号の規定により納税地を定められていた外国法人がこれらの規定のいずれにも該当しないこととなった場合には、その該当しないこととなった時の直前において納税地であった場所をその外国法人の納税地とする旨規定している。
 ここにいう「該当しないこととなった場合」とは、同条第1号の場合、外国法人がその恒久的施設を廃止した場合がこれに当たり、国内に代理人等を置いて事業を行う外国法人においては、外国法人がその事業を終了すること等により、当該代理人等との業務委託関係が消滅あるいは終了し、事務所等の存在が認められなくなった時がこれに当たるものと解される。
 そして、法人税法第17条第1号にいう事務所等とは、法人税法第141条第1号に規定する、国内に自らの支店、工場等の事業を行う場所を有する外国法人においては当該外国法人の事務所等となるが、同条第3号に規定する、国内に置く代理人等を有する外国法人においては、当該代理人等の事務所等がこれに当たるものと解せられるので、その事業に関して代理人等に業務委託している関係が終了した場合の外国法人の納税地については、事業が終了すること等により、当該代理人等との業務委託関係が消滅あるいは終了し、代理人等の事務所等の存在が認められなくなった直前の時点における、当該代理人等の事務所等の所在地ということになると解すべきである。

ロ 認定事実

 原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の各事実が認められる。

(イ) g本社の事務所は、平成21年8月9日までf県g市j町○−○に所在していた。

(ロ) d支店の事務所は、平成20年6月1日から平成21年9月30日まで、e県d市i町○−○に所在していた。

(ハ) 請求人は、平成21年9月末日、本件商品販売事業を廃止した。

ハ 判断

 N社は、請求人の本件商品販売事業において、上記(3)での認定のとおり、請求人が国内に置く代理人等と認められ、本件商品販売事業における、N社の業務の内容は、上記(1)ロの各事実のとおり、g本社のコールセンター業務及びd支店におけるカタログ制作サポート業務であった。そして、これらの業務は、上記(1)ハ(イ)のとおり、いずれもが注文取得等の行為のうちの重要な部分であると認められることから、g本社及びd支店(以下「本件各事務所」という。)は、いずれも請求人が国内に置く代理人等の業務を行っていたということができ、本件各事務所以外には本件商品販売事業の業務を行う請求人の事務所等は存在しなかったのであるから、本件各事務所は、双方とも請求人が国内に置く代理人等の事務所等に該当する。
 そして、本件商品販売事業において、上記ロ(ハ)のとおり、原処分時においては、既に請求人は当該事業から撤退しており、原処分時に請求人が国内に置く代理人等は存在せず、その事務所等は存在しなくなっていたのであるから、法人税法第17条第3号が適用され、上記イのとおり、事業終了等により代理人等の事務所等の存在が認められなくなった直前の時点における代理人等の事務所等の所在地が、請求人の事業撤退後の法人税の納税地となる。
 そこで、本件各事務所のいずれが直前の時点における代理人等の事務所等といえるかについてみると、上記ロ(イ)及び(ロ)のとおり、g本社が平成21年8月9日まで、d支店が平成21年9月30日まで、それぞれ存在していたことが認められるが、請求人が本件商品販売事業を廃止した直前の時点においては、d支店のみが請求人の代理人等の事務所等として存在していたと認められる。
 したがって、請求人の本件商品販売事業終了により代理人等の事務所等の存在が認められなくなった直前の時点における納税地は、d支店の所在していたe県d市@町○−○であるから、当該所在地が、請求人の法人税の納税地となる。
 以上のとおり、請求人の法人税の納税地は、e県d市i町○−○と認められ、当該納税地は、財務省組織規則第544条に規定するd税務署が管轄する納税地である。
 したがって、原処分は、請求人の納税地を所轄する税務署長によって行われており、国税通則法第30条第1項及び同法第33条第1項の規定に基づく適法な処分である。
 なお、請求人は、外国法人の納税地について、外国法人が国内に代理人等を置いて事業を行う場合には、代理人等の住所地が外国法人の納税地となるものであり、当該代理人等が法人である場合にはその住所地である本店所在地が当該外国法人の納税地となる旨主張するが、法人税法第17条第1号にいう外国法人が国内において行う事業に係る事務所等とは、上記イのとおり、国内に置く代理人等を有する外国法人にあっては、当該外国法人の事業に関する業務遂行という観点から決せられるものであることから、代理人等の本店所在地には限られるものではなく、請求人の主張は採用することができない。

(6) 本件各決定処分及び本件各賦課決定処分について

イ 本件各決定処分について

 以上のとおり、本件各決定処分には、いずれの争点についてもこれを取り消すべき理由はなく、当審判所の調査の結果によっても、他にこれらの処分を取り消すべき事由があるとは認められないから、本件各決定処分はいずれも適法である。

ロ 本件各賦課決定処分について

 上記イのとおり、本件各決定処分はいずれも適法であり、また、本件各事業年度の法人税の期限内申告書の提出がなかったことについて、国税通則法第66条第1項ただし書に規定する正当な理由があるとは認められないことから、同条第1項及び第2項の規定に基づいて行われた本件各賦課決定処分はいずれも適法である。

(7) 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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