(平成25年10月1日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、審査請求人D、同F、同G及び同H(以下、それぞれを「請求人D」、「請求人F」、「請求人G」及び「請求人H」といい、これら4名を併せて「請求人ら」という。)が相続により取得した土地について、原処分庁が、当該土地の一部は貸家建付地ではなく自用地として評価すべきであるとして相続税の各更正処分等を行ったのに対し、請求人らが、当該土地全体について貸家建付地の評価を適用すべきであるなどとして、当該各更正処分等の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

 請求人らは、平成22年4月○日(以下「本件相続開始日」という。)に死亡したJ(以下「本件被相続人」という。)の共同相続人であり、この相続(以下「本件相続」という。)に係る相続税についての審査請求(平成24年11月22日請求)に至る経緯は、別表1のとおりである。
 なお、異議審理庁は、平成24年10月18日付で異議決定をし、同月24日に異議決定書謄本を総代Dに送達した(以下、請求人らに対する異議決定を経た後の相続税の各更正処分を「本件各更正処分」といい、請求人D及び請求人Fに対する異議決定を経た後の過少申告加算税の各賦課決定処分を「本件各賦課決定処分」という。)。
 また、請求人らは、請求人Dを総代として選任し、平成24年11月22日にその旨を当審判所に届け出た。

(3) 関係法令等の要旨

イ 相続税法第22条《評価の原則》は、特別の定めのあるものを除くほか、相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価による旨規定している。
ロ 財産評価基本通達(昭和39年4月25日付直資56ほか国税庁長官通達。以下「評価通達」という。)1《評価の原則》の(2)は、財産の価額は、時価によるものとし、時価とは、課税時期(相続により財産を取得した日をいう。)において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、その価額は、この通達の定めによって評価した価額による旨定めている。
ハ 評価通達2《共有財産》は、共有財産の持分の価額は、その財産の価額をその共有者の持分に応じてあん分した価額によって評価する旨定めている。
ニ 評価通達7−2《評価単位》の(1)は、土地の価額を評価する場合の評価単位について、宅地は、1画地の宅地(利用の単位となっている1区画の宅地をいう。)を評価単位とする旨定めている。
ホ 評価通達26《貸家建付地の評価》は、貸家(評価通達94《借家権の評価》に定める借家権の目的となっている家屋をいう。)の敷地の用に供されている宅地(以下「貸家建付地」という。)の価額は、次の算式により計算した価額によって評価する旨定めている。

その宅地の自用地としての価額 その宅地の自用地としての価額 × 借地権割合 × 評価通達94に定める借家権割合 × 賃貸割合

ヘ 使用貸借に係る土地についての相続税及び贈与税の取扱いについて(昭和48年11月1日付直資2−189ほか国税庁長官通達。以下「使用貸借通達」という。)3《使用貸借に係る土地等を相続又は贈与により取得した場合》は、使用貸借に係る土地又は借地権を相続により取得した場合における相続税の課税価格に算入すべき価額は、当該土地の上に存する建物等又は当該借地権の目的となっている土地の上に存する建物等の自用又は貸付けの区分にかかわらず、全て当該土地又は借地権が自用のものであるとした場合の価額とする旨定めている。
ト 民法第593条《使用貸借》は、使用貸借は、当事者の一方が無償で使用及び収益をした後に返還をすることを約して相手方からある物を受け取ることによって、その効力を生ずる旨規定している。

(4) 基礎事実

 以下の事実は、請求人ら及び原処分庁の間に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 土地及び家屋の状況等
(イ) 本件被相続人は、昭和47年7月17日付の売買契約により、a市d土地区画整理組合の保留地であった別表2記載の土地(以下「本件土地」という。)を取得し、本件相続開始日まで引き続き所有していた。
 本件土地の上に存する別表2記載の家屋(以下「本件家屋」という。)は、主である建物(以下「本件主建物」という。)及び附属建物(以下「本件附属建物」という。)ともに、昭和52年に新築され、請求人Dを所有者とする昭和53年1月27日付の所有権保存登記手続がされた後、平成4年1月28日に本件被相続人に持分10分の1を移転する旨の所有権一部移転登記手続がされ、本件相続開始日においては、本件被相続人が10分の1、請求人Dが10分の9の持分をそれぞれ有していた。
 また、本件主建物の種類は共同住宅、本件附属建物の種類は店舗付住宅であり、本件相続開始日において、それぞれ第三者に貸し付けられていた。
(ロ) 本件家屋は、請求人Dが、平成23年に本件土地とともに譲渡した後に取り壊された。
(ハ) 本件土地は、本件相続開始日において、評価通達14−2《地区》に定める普通商業・併用住宅地区に所在しており、本件土地が接面する路線に付された平成22年分の路線価は135,000円である。
 また、本件相続開始日において、本件土地が所在する地域の借地権割合は50%であり、借家権割合は30%である。
ロ 本件土地の貸借
 本件土地の所有者であった本件被相続人と本件家屋の共有持分を有していた請求人Dとの間で、本件土地の使用に関する賃貸借契約は締結されておらず、請求人Dは、本件土地を本件被相続人から使用貸借により借り受けていた。
ハ 本件相続による本件土地等の取得
 請求人Dは、本件相続により、本件土地及び本件家屋の持分10分の1を取得した。

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2 争点

(1) 争点1

 本件土地の評価に当たり、本件土地の全体について評価通達26に定める貸家建付地の評価を適用すべきか否か。

(2) 争点2

 本件土地の評価単位について、1画地又は2画地いずれの宅地として評価すべきか。

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3 主張

(1) 争点1(本件土地の評価に当たり、本件土地の全体について評価通達26に定める貸家建付地の評価を適用すべきか否か。)

原処分庁 請求人ら
 本件土地の評価に当たっては、次のとおり、本件土地のうち、本件家屋の請求人Dの共有持分である10分の9に相当する部分については、評価通達26に定める貸家建付地の評価を適用すべきではない。  本件土地の評価に当たっては、次のとおり、その全体について評価通達26に定める貸家建付地の評価を適用すべきである。
イ 賃貸借により土地上の建物を貸し付けている場合、敷地所有者の借家人に対する明渡し請求には借地借家法第28条《建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件》に規定する正当の事由が必要になるのに対し、使用貸借により土地を貸し付けている場合、敷地所有者は、当該土地上の建物の借家人に対して借地借家法の制限を受けずに土地の返還請求ができるものというべきであり、両者の法律関係は、当然に同様であるとはいえない。
 そして、使用貸借の場合には、上記のとおり、借地借家法の制限を受けないことから、使用借権が付着していることによる減価を考慮せず、これを更地(自用地)として評価するのが相当である。
 また、請求人Dは、本件土地の相続を受けても、借地借家法の保護を受ける借家人との賃貸借契約に縛られた状態でしか本件土地を利用できないが、これは、たまたま請求人Dが、本件家屋を第三者に賃貸しているという事情があるため、結果としてそうなるというだけであるから、本件土地の評価に影響は与えない。
イ 借家人は、その家屋の敷地を利用せずに家屋に居住等ができないため、家屋の賃借権に基づいて家屋を利用するために必要な範囲内で、その敷地を使用しているということになる。
 そして、借家人の敷地に対する使用権を内包する借家権を消滅させるには、立退料の支払を要する場合もあり、また当該敷地を譲渡する場合には、上記借家権が付着していない場合の価額よりも相対的に低い価額で取引が成立することから、評価通達26により、一定割合を差し引いて貸家建付地の評価額を算定することが税務上認められていると解される。
 本件土地は、賃貸目的の本件家屋の敷地の用以外には供されておらず、自用地であれば自由に処分できるが、借家人の存在があることにより処分が拘束され、自由処分できない土地である。
 したがって、本件家屋の持分にかかわらず、本件土地に及ぶ経済的効果は同一であるといえるから、本件家屋に本件被相続人の持分が一部でもあれば、本件土地の全体について貸家建付地の評価をするのが相当である。
ロ 土地の評価上、所有者による自由な使用収益を制限する他者の権利の有無が、重要な要素であることは明らかであり、また、評価通達2は、共有財産の持分の価額は、その財産の価額をその共有者の持分に応じてあん分した価額によって評価する旨定めていることから、本件土地のように、本件家屋の共有持分に応じてその敷地を制約する権利に相違がある場合には、評価通達2に準じて、その敷地についても、本件家屋の共有持分に応じて、それぞれ権利の有無の状況に応じた評価をするのが相当である。 ロ 評価通達26には、貸家に共有持分がある場合についての定めはなく、ほかに貸家の持分によって土地の評価額が変動すると定めた法令は存在しない。
 また、使用貸借通達にも、評価通達26と同様に、家屋が共有の場合についての定めはない。
 したがって、租税法律主義及び課税要件明確主義に照らし、原処分は違法である。

(2) 争点2(本件土地の評価単位について、1画地又は2画地いずれの宅地として評価すべきか。)

原処分庁 請求人ら
 本件土地は、次のとおり、本件主建物の敷地部分と本件附属建物の敷地部分とを区分する必要はなく、1画地の宅地として評価すべきである。  本件家屋は、住居部分である本件主建物と店舗部分である本件附属建物とが独立して建っていた貸付用の建物2棟であることから、本件土地は、別図1のとおり、本件主建物の敷地部分と本件附属建物の敷地部分とを区分して、2画地の宅地としてそれぞれ評価すべきである。
イ 本件家屋については、登記簿上、本件主建物は「共同住宅」と記載され、本件附属建物は「店舗・共同住宅」と記載されていることから、本件附属建物が効用上、本件主建物と一体のものとして利用される状態にあるとする登記がされている。
ロ 本件土地が所在する地域の住宅地図では、共同住宅である本件主建物と店舗・共同住宅である本件附属建物は接している。
ハ 請求人D及び本件被相続人は、本件家屋を共同住宅及び店舗として賃貸していたことから、本件土地を1画地として利用しており、さらに、請求人らは、本件相続に係る相続税の申告において、本件土地を1画地の宅地として評価している。
 

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4 判断

(1) 争点1 本件土地の評価に当たり、本件土地の全体について評価通達26に定める貸家建付地の評価を適用すべきか否か。

イ 法令解釈等
(イ) 相続税法第22条
 相続税法第22条は、相続により取得した財産の価額は、特別の定めがある場合を除き、当該財産の取得の時における時価によるべき旨規定しているところ、ここでいう時価とは相続開始時における当該財産の客観的交換価値をいい、客観的交換価値とは、当該財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間において自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいうものと解するのが相当である。
(ロ) 評価通達
 相続税法第22条にいう時価とは、上記(イ)のとおりであるところ、課税実務上、相続財産の評価は、原則として、評価通達によって定められた画一的で客観性の高い評価方法によることとされている。これは、相続財産の客観的交換価値を個別に評価することとすると、その評価方式、選択された基礎資料等により異なった評価額が生じることは避け難く、また、課税庁の事務負担が重くなり、課税事務の迅速な処理が困難となるおそれがあることなどに照らして、あらかじめ定められた評価方法によって画一的に相続財産を評価することは、当該評価方法の内容が時価の認識方法としてそれ自体一応合理的なものである限りにおいて、納税者間の公平、納税者の便宜、徴税費用の節減という見地から合理的であるという理由に基づくものであり、相続税法第22条は、このような課税実務を許容する趣旨のものと解される。
 そして、評価通達の定める評価方法は、それ自体、一応合理的であると認められるから、評価通達に基づいて相続財産の評価を行うことが納税者間の公平等の見地に照らしても著しく不適当であるような特段の事情がある場合を除き、相続財産の評価に当たっては、評価通達に定める評価方法によって算出された財産の評価額をもって、当該財産の時価と認めるのが相当である。
(ハ) 使用貸借通達
 使用貸借は、元々当事者間の好意ないし個人的信頼関係を基盤とするもので、建物所有を目的とするものといえども、賃借権のように借地借家法の適用はなく、その権利性はそれほど強固なものではない。そして、この使用貸借に基づく敷地利用権の上に、建物の賃貸借関係が成立しているとしても、この建物賃貸借は、敷地所有者との関係でみると、使用貸借の存続・消滅と運命をともにするものにすぎない。そうすると、使用借権が付着している土地の相続に当たっては、当該土地の上に存する建物の自用又は貸付けの区分にかかわらず、使用借権が付着していることによる減価を考慮せず、これを更地として評価することが相当であり、これを不合理ということはできないと解されるから、当該取扱いを定めた前記1の(3)のヘの使用貸借通達3の評価方法は、相続税法第22条の趣旨に照らし相当と認められる。
ロ 判断
(イ) 本件への当てはめ
 本件土地は、前記1の(4)のイの(イ)のとおり、本件相続開始日において、本件被相続人及び請求人Dが共有する本件家屋の敷地の用に供されていたものであり、本件家屋の共有持分に応じて利用されていたといえることからすると、本件被相続人及び請求人Dは、本件家屋の共有持分に応じて敷地利用権を有していたものと認められる。
 そして、請求人Dが本件家屋の共有持分に応じて有していた敷地利用権は、前記1の(4)のロによれば、使用借権と認められるから、上記イの(ハ)のとおり、当該使用借権が付着している土地については、当該土地の上に存する建物について賃貸借関係が成立しているとしても、当該使用借権が付着していることによる減価を考慮せずに本件土地を評価することが相当である。
 したがって、本件土地のうち、請求人Dの本件家屋の共有持分である10分の9に相当する部分は、評価通達26に定める貸家建付地ではなく自用地として評価すべきであり、本件土地の全体について評価通達26に定める貸家建付地の評価を適用することはできない。
(ロ) 請求人らの主張の当否
A 請求人らは、本件土地は、賃貸目的の本件家屋の敷地の用以外には供されておらず、借家人の存在があることにより処分が拘束された土地であり、本件家屋の持分にかかわらず、本件土地に及ぶ経済的効果は同一であるから、本件家屋に本件被相続人の持分が一部でもあれば、本件土地の全体について貸家建付地の評価をするのが相当である旨主張する。
 しかしながら、上記(イ)のとおり、建物の共有者は、その共有者の持分に応じて共有建物が存する土地の敷地利用権を有するものであるところ、請求人Dの本件家屋の共有持分に相当する部分の敷地利用権は、使用借権であり、上記イの(ハ)のとおり、使用貸借に基づく敷地利用権の上に、建物の賃貸借関係が成立しているとしても、この建物賃貸借は、敷地所有者との関係でみると、使用貸借の存続・消滅と運命をともにするものにすぎず、使用貸主である敷地所有者は、建物の賃借人に対し、借地借家法の制限を受けることなく土地の明渡し請求をすることができるのであるから、本件土地のうち、請求人Dの本件家屋の共有持分である10分の9に相当する部分は、使用貸借通達3に基づき自用地として評価することが相当である。
 なお、確かに、請求人Dは、本件土地の持分の相続を受けても、借地借家法の保護を受ける本件家屋の賃借人との賃貸借契約に縛られた状態でしか本件土地を利用できないが、これは、たまたま、請求人Dが本件家屋を第三者に賃貸しているという事情に基づくものであって、同じ土地の評価を相続人側の事情によって変えるのは妥当ではないから、このような事情は本件土地の評価には影響を与えないというべきである。
 したがって、この点に関する請求人らの主張には理由がない。
B 次に、請求人らは、評価通達26には、貸家に共有持分がある場合についての定めはなく、ほかに貸家の持分によって土地の評価額が変動すると定めた法令は存在せず、また、使用貸借通達にも家屋が共有の場合についての定めはないから、租税法律主義及び課税要件明確主義に照らし、原処分は違法である旨主張する。
 しかしながら、評価通達や使用貸借通達は、民法の規定等によって確定された権利関係を前提として、財産の価額を評価するものであり、共有については民法に定められているのであるから、評価通達26及び使用貸借通達に家屋が共有である場合の記載がないことをもって租税法律主義及び課税要件明確主義に反するものとはいえない。
 したがって、この点に関する請求人らの主張にも理由がない。
(ハ) 結論
 以上のことから、本件土地のうち、請求人Dの本件家屋の共有持分である10分の9に相当する部分については、自用地として評価するのが相当であり、本件土地全体について貸家建付地の評価を適用することはできない。

(2) 争点2 本件土地の評価単位について、1画地又は2画地いずれの宅地として評価すべきか。

イ 法令解釈等
 評価通達7−2の(1)は、宅地の価額の評価については、1画地の宅地(利用の単位となっている1区画の宅地)を評価単位とする旨を定めているところ、課税実務上、評価通達7−2の(1)の定める「1画地の宅地」とは、その宅地を取得した者が、その宅地を使用、収益及び処分をすることができる利用単位又は処分単位であって、原則として、まる1宅地の所有者による自由な使用収益を制約する他者の権利(原則として使用貸借による使用借権を除く。)の存在の有無により区分し、まる2他者の権利が存在する場合には、その権利の種類及び権利者の異なるごとに区分することとされている。
 課税実務上、このように取り扱うのは、宅地の評価単位の判定は、宅地の時価を評価するために行うものであり、上記(1)のイの(イ)のとおり、時価とは客観的交換価値をいうものであることからすれば、宅地の時価を評価するためには、評価対象となる宅地の価額に影響を与える全ての客観的な諸事情を考慮すべきであるから、その宅地の所有者による自由な使用収益を制約する他者の権利等、その宅地の使用、収益及び処分に影響を与える全ての客観的な諸事情を考慮すべきことによるものと解され、当審判所においても、この取扱いは、相当と認められる。
ロ 認定事実
 請求人ら提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ) 本件家屋の配置等及び敷地の状況
 昭和51年12月29日付の本件家屋の建築工事請負契約書に添付された設計図書(配置図)によれば、本件家屋の配置等の概要は、別図2のとおりであり、その後、増築等を行った事実は認められないことからすれば、本件相続開始日において、本件主建物と本件附属建物は別棟で接しておらず、本件主建物は共同住宅として、本件附属建物は店舗付住宅として、それぞれ独立して機能する建物であった。
(ロ) 本件家屋の賃貸状況等
 本件主建物は6戸の共同住宅、本件附属建物は2戸の店舗付住宅であり、それぞれ賃貸借契約に基づき、第三者に対して継続的に貸し付けられていた。そして、本件相続開始日においても、本件主建物は、賃貸借契約に基づき、第三者に対して貸し付けられており、本件附属建物も、賃貸借契約に基づき、本件主建物の賃借人とは別の第三者に対して貸し付けられていた。
ハ 本件への当てはめ
(イ) 上記イのとおり、宅地の価額は、1画地の宅地(利用の単位となっている1区画の宅地)ごとに評価することとされており、その1画地の宅地の判定は、原則として、まる1宅地の所有者による自由な使用収益を制約する他者の権利(原則として使用貸借による使用借権を除く。)の存在の有無により区分し、まる2他者の権利が存在する場合には、その権利の種類及び権利者の異なるごとに区分して行うものと解されるところ、上記ロの(イ)のとおり、本件主建物及び本件附属建物は別棟で接しておらず、それぞれが独立して機能する建物であったと認められ、また、上記ロの(ロ)のとおり、本件主建物は共同住宅として、本件附属建物は店舗付住宅として、それぞれ別の第三者に貸し付けられていたものであることから、本件土地上の本件主建物及び本件附属建物には、それぞれ異なる第三者の権利が存在していたものと認められる。
 以上のとおり、評価通達7−2の(1)の定めによれば、本件土地については、本件主建物の敷地部分と本件附属建物の敷地部分とが別の利用の単位と認められることから、請求人らの主張のとおり別図1に基づき、2画地の宅地として評価するのが相当である。
(ロ) この点について、原処分庁は、まる1本件附属建物が効用上、本件主建物と一体のものとして利用される状態にあるとする登記がされていること、まる2住宅地図では、本件主建物と本件附属建物が接していること、まる3請求人D及び本件被相続人は、本件家屋を共同住宅及び店舗として賃貸し、本件土地を1画地として利用しており、さらに、請求人らは、本件相続に係る相続税の申告において、本件土地を1画地の宅地として評価していることから、本件土地は1画地の宅地として評価すべきである旨主張する。
 しかしながら、上記(イ)のとおり、本件相続開始日において、本件主建物及び本件附属建物は、別棟で接しておらず、それぞれ独立して機能する建物として区分して利用されていたと認められるから、まる1登記簿において「主」及び「附属」の関係であること、並びにまる2住宅地図において本件主建物及び本件附属建物が接していることは、いずれも本件土地を2画地の宅地として評価すべきとの判断に影響する事情とはいえない。また、まる3については、上記(イ)のとおり、本件主建物は共同住宅として、本件附属建物は店舗付住宅として、それぞれ別の第三者に貸し付けられており、それぞれの建物の敷地として独立して利用されていたものと認められるから、1画地として利用されていたとは認められない上、請求人らが本件相続に係る相続税の申告において本件土地を1画地の宅地として評価していたとしても、そのことが直ちに1画地の宅地として評価すべき理由にならないことは明らかである。
 したがって、この点に関する原処分庁の主張にはいずれも理由がない。

(3) 本件土地の評価額について

 上記(1)及び(2)に基づき、本件土地を2画地の宅地とし、それぞれ、10分の9を自用地、10分の1を貸家建付地として評価額を算定すると、本件土地の評価額は、別表3の「本件主建物の敷地部分の評価額」欄の金額27,161,310円と別表4の「本件附属建物の敷地部分の評価額」欄の金額14,192,647円の合計額である41,353,957円となる。

(4) 本件各更正処分について

 上記(3)に基づき、本件相続に係る相続税の計算において、請求人Dの取得財産の価額を減額し、請求人らの納付すべき税額を計算すると、別表5の請求人らの各「納付すべき税額」欄のとおりとなり、いずれも本件各更正処分の金額を下回るから、本件各更正処分はいずれもその一部を別紙2ないし別紙5の「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。

(5) 本件各賦課決定処分について

 上記(4)のとおり、請求人D及び請求人Fに対する各更正処分の一部が取り消されるのに伴い、過少申告加算税の計算の基礎となる税額は、請求人Dが○○○○円、請求人Fが○○○○円となる。
 また、これらの税額の計算の基礎となった事実が更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについては、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められない。
 そうすると、請求人D及び請求人Fに係る過少申告加算税の額は、別表5の請求人D及び請求人Fの「過少申告加算税の額」欄の各金額となり、いずれも本件各賦課決定処分の金額を下回るから、本件各賦課決定処分はいずれもその一部を別紙2及び別紙3の「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。

(6) その他

 原処分のその他の部分については、請求人らは争わず、当審判所の調査の結果によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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