(平成26年1月17日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、産業廃棄物収集運搬業等を営む審査請求人(以下「請求人」という。)の所得税並びに消費税及び地方消費税(以下、消費税及び地方消費税を併せて「消費税等」という。)について、原処分庁が、原処分に係る調査(以下「本件調査」という。)を受けた請求人から提出された各修正申告書に基づいて重加算税等の各賦課決定処分を行ったのに対し、請求人が、本件調査の手続には違法又は不当があるから当該各修正申告書による修正申告は無効であるとして、当該各賦課決定処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯等

イ 平成17年分、平成18年分、平成19年分、平成20年分、平成21年分、平成22年分及び平成23年分(以下、これらを併せて「本件各年分」という。)の所得税について、審査請求(平成25年3月25日請求)に至る経緯及び内容は、別表1−1及び別表1−2のとおりである。
 以下、平成24年10月26日付でされた所得税に係る平成17年分の過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分(重加算税の賦課決定処分については、平成25年2月25日付でされた異議決定により過少申告加算税相当額を超える部分が取り消された後のもの。以下「平成17年分所得税各賦課決定処分」という。)、平成18年分及び平成19年分の過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分(重加算税の各賦課決定処分については、平成25年2月25日付でされた異議決定によりいずれも一部につき過少申告加算税相当額を超える部分が取り消された後のもの)、平成20年分、平成21年分及び平成23年分の重加算税の各賦課決定処分(平成20年分については、平成25年2月25日付でされた異議決定により一部につき過少申告加算税相当額を超える部分が取り消された後のもの)並びに平成22年分の重加算税の賦課決定処分(平成25年2月25日付でされた異議決定により一部につき過少申告加算税相当額を超える部分が取り消され、平成25年11月26日付でされた変更決定処分後のもの)を併せて「本件所得税各賦課決定処分」という。

ロ 平成18年1月1日から同年12月31日まで、平成19年1月1日から同年12月31日まで、平成20年1月1日から同年12月31日まで、平成21年1月1日から同年12月31日まで、平成22年1月1日から同年12月31日まで及び平成23年1月1日から同年12月31日までの各課税期間(以下、順次「平成18年課税期間」、「平成19年課税期間」、「平成20年課税期間」、「平成21年課税期間」、「平成22年課税期間」及び「平成23年課税期間」といい、これらを併せて「本件各課税期間」という。)の消費税等について、審査請求(平成25年3月25日請求)に至る経緯及び内容は、別表2−1及び別表2−2のとおりである。
 以下、平成24年10月26日付でされた平成18年課税期間及び平成19年課税期間の消費税等に係る過少申告加算税の各賦課決定処分並びに本件各課税期間の消費税等に係る重加算税の各賦課決定処分を併せて「本件消費税等各賦課決定処分」という。

(3) 基礎事実

 次の事実は、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。

イ 消費税等の納税義務
 請求人は、本件各課税期間において、消費税法第5条《納税義務者》第1項及び地方税法第72条の78《地方消費税の納税義務者等》第1項の各規定に基づき、消費税等の納税義務者であった。

ロ 原処分に至る経緯
(イ) 本件調査の担当者(以下「本件調査担当者」という。)は、平成24年8月29日、請求人の事務所に赴き、請求人に対する所得税及び消費税等の調査を開始した。

(ロ) 請求人は、平成24年10月11日、本件調査担当者による修正申告のしょうようを受け、同日、所得税については、別表1−1及び別表1−2の「修正申告」欄のとおりとする各修正申告書を、消費税等については、別表2−1及び別表2−2の「修正申告」欄のとおりとする各修正申告書をそれぞれ提出した。
 以下、上記の各修正申告書を併せて、「本件各修正申告書」といい、本件各修正申告書による各修正申告を「本件各修正申告」という。

(ハ) 原処分庁は、平成24年10月26日付で、請求人に対し、本件各修正申告に基づいて、所得税については、別表1−1及び別表1−2の「賦課決定処分」欄の各賦課決定処分を、消費税等については、本件消費税等各賦課決定処分をそれぞれ行った。

(4) 争点

 本件各修正申告は、無効であるか否か。

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2 主張

請求人 原処分庁
 次のとおり、本件調査の手続には違法又は不当があるから、本件各修正申告は無効である。  次のとおり、本件調査の手続に違法と評価される事実は存在せず、本件各修正申告は無効ではない。
(1) 本件調査担当者は、請求人が所有する車両の中に保管していた領収証等の書類を散逸させた。 (1) 「請求人」欄の(1)から(4)までについて、請求人が主張するような違法行為と評価される事実は存在しない。
(2) 本件調査担当者は、請求人が所有する車両の中に保管していた取引先の産業廃棄物保管用の箱の鍵を一時所在不明にした。 (2) 「請求人」欄の(5)について、本件各修正申告書は、関与税理士の立会いの下、本件調査担当者の所得税及び消費税等に係る修正申告のしょうように応じて、原処分庁に提出されたものであり、請求人は、関与税埋士とともに本件各修正申告書についての説明を受けていた。
(3) 本件調査担当者が請求人の複数の取引先に対して請求人との取引中止を促す発言をしたことにより、実際にこれらの取引先との取引が中止された。 (3) 「請求人」欄の(6)について、本件調査担当者が請求人に対して税額を減額するとの説明をした事実は存在しない。
(4) 本件調査担当者は、請求人の取引先に対して、領収証の保存がなければ経費として認めない旨の発言をし、当該取引先を脅迫した。  
(5) 本件調査の全過程において、本件調査担当者から、売上金額、所得金額等の合計額や内訳についての説明はなく、これらを記載した書類の提示もなかった。  
(6) 請求人は、関与税理士の立会いの下、本件調査担当者から税額を減額するとの説明を受けたため、本件各修正申告書を提出したが、実際には税額が減額されることはなかった。  

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3 判断

(1) 争点について

イ 認定事実
 原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、本件調査の経過について、次の事実が認められる。

(イ) 請求人の取引先に対する調査
 本件調査担当者は、請求人が提示した証ひょう書類等に基づき、本件各年分の所得税について、申告漏れの売上げが存在することを把握したことから、その内容を確認するため、平成24年8月30日から同年9月24日までの間に、請求人の取引先に対する調査を実施した。
 本件調査担当者が調査した上記取引先の中には、本件調査の実施中に請求人との取引を中止した取引先が存在し、また、領収証の一部を保存していない取引先も存在したが、本件の全証拠を精査しても、本件調査担当者が、取引先に対する調査時に、請求人との取引を中止することを促す発言をしたり、領収証の保存がなければ経費として認めることはできない旨の発言をしたりした事実を認めることはできず、さらに、本件調査担当者の調査を受けた取引先が、その後、G税務署に直接又は関係各機関を経由して、本件調査担当者の発言等を問題視して、抗議又は苦情を申し立てるなどした事実を認めることはできない。

(ロ) 必要経費に関する申立て
 請求人は、平成24年9月5日以降複数回にわたって、本件調査担当者に対し、請求人の関与税理士であるH(以下「H税理士」という。)及び本件調査中に新たに税務代理権限証書を提出し請求人の関与税理士となったJ(以下「J税理士」といい、H税理士と併せて「本件各税理士」という。)を通じて又は直接、本件各年分において申告漏れの必要経費が存在する旨申し立て、これに関する資料を提出した。

(ハ) 売上金額等に関する説明

A 本件調査担当者は、平成24年9月18日、本件各税理士に対し、当日までの本件調査に基づき、本件各年分の所得税について、本件各年分ごとに作成した申告漏れの売上金額を記載した書面(各取引先ごとに、調査により判明した売上金額、総勘定元帳に計上された売上金額及びそれらの差額並びにこれらの合計額を整理して記載したもの)を提示して、当日時点における申告漏れの売上金額について説明した。
 これに対し、本件各税理士は、提示された内容を請求人に説明する旨回答した。

B 本件調査担当者は、平成24年9月28日、本件各税理士に対し、当日までの本件調査に基づき、本件各年分の所得税について、本件各年分ごとに、調査により把握した売上金額の合計額、総勘定元帳に計上された売上金額の合計額及びそれらの差額(本件各年分における申告漏れの売上金額の合計額が上記Aの説明より4,049円増加している。)を説明し、併せて、請求人が申し立てた申告漏れの必要経費についても、本件各年分ごとに認容することとなる金額を説明した。
 これに対し、本件各税理士は、説明された内容を請求人に説明する旨回答した。

C 本件調査担当者は、平成24年10月3日、本件各税理士の同席の下、請求人に対し、本件各年分の所得税について、上記Bと同様の事項(本件各年分における申告漏れの売上金額の合計額が上記Bの説明より600円減少し、申告漏れの必要経費の合計額が上記Bの説明より50円減少している。)について説明した。
 これに対し、請求人は、本件調査担当者の説明について理解している旨述べたが、申告漏れの必要経費についてもう少し認めてほしい旨申し立てた。

(ニ) 所得金額等に関する説明
 本件調査担当者は、請求人が申し立てた申告漏れの必要経費について検討した結果、その一部を認容する旨の結論に至り、平成24年10月10日、本件各税理士に対し、その旨説明した上で、本件各年分の所得税については増加する事業所得の金額等及び本件各課税期間の消費税等については増加する課税標準額等を説明した。

(ホ) 修正申告のしょうよう
 本件調査担当者は、平成24年10月11日、J税理士の事務所に赴き、本件各税理士の同席の下、請求人に対し、次のとおり、本件各年分の所得税及び本件各課税期間の消費税等について修正申告のしょうようをした。

A 本件調査担当者が請求人に対して本件調査の結果の説明をする前に、J税理士は、請求人に対し、本件調査担当者の上記(ニ)の説明に基づいてJ税理士自らが作成した書類(追加で納付すべき所得税及び消費税等の各税額に加えて加算税や事業税等の各税額が記載されたもの)を提示しながら、本件各年分の所得税及び本件各課税期間の消費税等に係る各修正申告書を提出した場合に納付することとなる国税等を説明した。

B 上記AのJ税理士の説明後、本件調査担当者は、請求人に対し、本件各年分の所得税について、まる1申告漏れの売上金額、まる2消費税等の精算差額(請求人は、平成18年から平成23年までの消費税等が課される売上げ等の取引に係る経理処理はいずれも税抜経理方式を採用している。)、まる3申告漏れの必要経費として認容する金額、まる4増加する事業所得の金額及びまる5追加で納付すべき所得税額を記載し、併せて、本件各課税期間の消費税等について、まる1増加する課税標準額及びまる2追加で納付すべき消費税等の額を記載した書面を提示しながら、これらの内容について説明した。

C 本件調査担当者は、上記Bの説明を了した後、請求人に対し、本件各年分の所得税及び本件各課税期間の消費税等に係る各修正申告書の提出に伴いそれぞれ賦課されることになる加算税のほか、延滞税について説明した。
 また、本件調査担当者は、請求人に対し、賦課されることになる加算税(重加算税又は過少申告加算税)は、税務署内での検討を経て最終決定されるものであるため、仮に加算税の基礎となる税額に35%の割合が適用される重加算税を課すべきではないとの結論に至った場合には、その部分には10%又は15%の割合が適用される過少申告加算税が課されることとなるが、重加算税又は過少申告加算税の確定金額は、後日、賦課決定通知書で通知することとなる旨説明した。

(ヘ) 本件各修正申告書の提出
 上記(ホ)の各修正申告のしょうようの後、請求人は、本件調査担当者があらかじめ必要事項を記載して用意していた本件各年分の所得税及び本件各課税期間の消費税等の各修正申告書の用紙に署名、押印し、原処分庁に本件各修正申告書を提出した。

ロ 判断

(イ) 争点について
 上記イのとおり、本件調査担当者は、まる1本件各修正申告に至るまで複数回にわたって、請求人に対し、本件各税理士を通じて又は直接、本件調査により把握した本件各年分の申告漏れの売上金額を説明しており、そのうち、平成24年9月18日の本件各税理士に対する説明においては、本件各年分ごとに作成した申告漏れの売上金額を記載した書面を提示して説明していたこと、まる2上記まる1の説明に併せ、請求人に対し、本件各税理士を通じて又は直接、請求人が申し立てた申告漏れの必要経費についての検討結果を説明し、最終的には請求人の同年10月3日の申立てを受けて、申告漏れの必要経費を認容したこと、まる3上記まる1及びまる2の経過を経て、同月10日、本件各税理士に対し、本件調査の結果に基づく本件各年分の増加する事業所得の金額等及び本件各課税期間の増加する課税標準額等を説明したこと、そして、まる4同月11日、本件各税理士同席の下、請求人に対し、本件調査の結果に基づく本件各年分の増加する事業所得の金額、本件各課税期間の増加する課税標準額及び追加で納付すべき税額や各修正申告書の提出に伴う加算税等について説明し、請求人は、その説明後、自ら署名、押印して本件各修正申告書を提出したことが認められる。
 このように、本件調査担当者が、請求人に対し、本件各税理士を通じて又は直接、本件調査の結果把握した申告漏れの売上金額の内容、請求人が申し立てた申告漏れの必要経費に対する検討結果、所得金額等を説明し、請求人が、その説明を受けて本件各修正申告に至ったという経過からすれば、請求人は、本件各修正申告書を自らの意思に基づいて提出したものと認めるのが相当である。
 以上から、本件各修正申告は有効であると認められる。

(ロ) 請求人の主張について

A 請求人は、上記2の「請求人」欄の(1)及び(2)のとおり、まる1本件調査担当者が書類を散逸させたこと、まる2本件調査担当者が鍵を一時所在不明にしたことから、本件調査の手続に違法又は不当がある旨主張する。
 しかしながら、請求人が主張する上記各事実は本件各修正申告の有効性に影響する事柄ではなく、また、本件の全証拠を精査しても、請求人が主張する上記各事実は認められない。
 したがって、これらの点に関する請求人の主張にはいずれも理由がない。

B 請求人は、上記2の「請求人」欄の(3)のとおり、本件調査担当者の請求人の取引先に対する請求人との取引中止を促す発言が原因で取引が中止されたことから、本件調査の手続に違法又は不当がある旨主張する。
 しかしながら、上記イの(イ)のとおり、本件調査担当者が請求人の取引先に対して請求人が主張する発言をした事実はなく、請求人が主張する本件調査担当者の発言を原因として、当該取引先が請求人との取引を中止したという事実もないので、請求人の上記主張は前提となる事実を誤っている。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。

C 請求人は、上記2の「請求人」欄の(4)のとおり、本件調査担当者が請求人の取引先に対して領収証の保存がなければ経費として認めない旨発言をし、当該取引先を脅迫したことから、本件調査の手続に違法又は不当がある旨主張する。
 しかしながら、上記イの(イ)のとおり、本件調査担当者が請求人の取引先に対して請求人が主張する発言をした事実はなく、また、請求人が主張する発言のほかに、本件調査担当者が当該取引先を脅迫したと評価すべき事実があったか否かを検討しても、当該取引先がG税務署に対して抗議又は苦情を申し立てるなどした事実もないことからすると、本件調査担当者が当該取引先を脅迫したと評価すべき事実も認められないので、請求人の上記主張は前提となる事実を誤っている。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。

D 請求人は、上記2の「請求人」欄の(5)のとおり、本件調査の全過程において、本件調査担当者から、売上金額、所得金額等の合計額や内訳についての説明はなく、これらを記載した書類の提示もなかったことから、本件調査の手続に違法又は不当がある旨主張する。
 しかしながら、請求人の上記主張内容は、調査手続の違法性又は不当性の根拠となる事柄を含まないものであり、また、上記(イ)のとおり、本件調査担当者は、本件各修正申告に至るまで複数回にわたって、請求人に対し、本件各税理士を通じて又は直接、本件調査により把握した本件各年分の申告漏れの売上金額を説明し、平成24年9月18日の本件各税理士に対する説明においては、本件各年分ごとに作成した申告漏れの売上金額を記載した書面を提示して説明し、同年10月11日の修正申告のしょうよう時には、上記イの(ホ)のBのとおり、本件各年分の増加する事業所得の金額等、本件各課税期間の増加する課税標準額等を記載した書面を提示しながら、これらの内容について説明しており、請求人の上記主張は前提となる事実を誤っている。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。

E 請求人は、上記2の「請求人」欄の(6)のとおり、関与税理士の立会いの下、本件調査担当者から税額を減額するとの説明を受けたため、本件各修正申告書を提出したが、実際には税額が減額されることはなかったことから、本件調査の手続に違法又は不当がある旨主張する。
 しかしながら、各修正申告のしょうよう時に本件調査担当者が請求人に対し追加で納付すべき税額及び加算税の額につき説明した内容は、上記イの(ホ)のB及びCで認定したとおりであり、他方、本件の全証拠を精査しても、本件調査担当者が、請求人に対し、追加で納付すべき税額又は加算税の額を本件各修正申告書の提出後に減額する旨の説明をしたことを認めることはできない。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。

(2) 本件所得税各賦課決定処分について

イ 認定事実
 原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、本件各年分における申告漏れの売上金額等について、次の事実が認められる。

(イ) 原処分庁は、別表3−1及び別表3−2の本件各年分のまる1欄の各金額は、本件各年分に係る総収入金額に算入すべきものであるところ、請求人が、当該各金額について、まる1K社及びL社との取引に係る現金を受け取る際に、両社備付けの判取帳に請求人以外の名義を使用し、また、まる2取引に係る売上金の受領方法について、請求人以外の名義で開設した金融機関の口座に対する振込みにより受け取り、そして、まる3当該各取引に係る金額を総勘定元帳に計上しなかったことは、「隠ぺい又は仮装行為」に基づく申告漏れであると認定し、上記1の(3)のロの(ハ)のとおり、平成24年10月26日付で本件各年分の重加算税の各賦課決定処分をした。

(ロ) 異議審理庁は、異議申立てに係る調査の結果、別表3−1及び別表3−2の本件各年分のまる4欄の各金額は、いずれも別表3−1及び別表3−2の本件各年分のまる1欄の各金額に対応する必要経費であるとし、その結果、平成17年分については、「隠ぺい又は仮装行為」に基づく申告漏れの売上金額に対応する所得金額は算出されないとして、また、平成18年分から平成20年分まで及び平成22年分については、重加算税の額の計算の基礎となるべき税額が減少するとして、平成25年2月25日付の異議決定において、平成17年分の重加算税の賦課決定処分は過少申告加算税相当額を超える部分を、平成18年分から平成20年分まで及び平成22年分の重加算税の各賦課決定処分はいずれも一部につき過少申告加算税相当額を超える部分をそれぞれ取り消した。

ロ 平成18年分から平成23年分まで

(イ) 原処分庁が上記イの(イ)のとおり、別表3−1及び別表3−2の「平成18年分」欄から「平成23年分」欄までのまる1欄の各金額を「隠ぺい又は仮装行為」に基づく申告漏れと認定していることについては、請求人は、現金で受領する上記イの(イ)のまる1の売上金及び金融機関への振込みの方法で受領する上記イの(イ)のまる2の売上金について、いずれも当該各売上金が請求人に帰属しないような外形を作出して、総勘定元帳の「売上高」勘定に計上しなかったものと認められるから、原処分庁の上記認定は当審判所においても相当と認められる。

(ロ) 上記(1)のロの(イ)のとおり、平成18年分から平成23年分までの所得税の各修正申告は有効であるところ、上記(イ)のとおり、当該各年分における請求人の行為(別表3−1及び別表3−2の当該各年分のまる1欄の各金額の申告漏れに係る行為)は、国税通則法(以下「通則法」という。)第68条《重加算税》第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たし、通則法第70条《国税の更正、決定等の期間制限》第4項に規定する「偽りその他不正の行為」にも該当するから、当該各年分の所得税に係る各賦課決定処分は、同項に規定する期間制限内に行われたものと認められる。
 また、平成18年分から平成20年分までの所得税の各修正申告により納付すべき税額の計算の基礎となった各事実のうち、別表3−1の当該各年分のまる2欄の各金額が当該各年分の修正申告前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があると認められるものがある場合には該当しない。
 以上から、本件所得税各賦課決定処分のうち平成17年分所得税各賦課決定処分を除く各賦課決定処分は、いずれも適法である。

ハ 平成17年分
 原処分庁は、上記イの(イ)のとおり、別表3−1の「平成17年分」欄のまる1欄の金額を「隠ぺい又は仮装行為」に基づく申告漏れの売上金額と認定しているが、上記イの(ロ)のとおり、「隠ぺい又は仮装行為」に基づく申告漏れの売上金額(別表3−1の「平成17年分」欄のまる1欄の金額)に対応する所得金額は、異議決定により算出されないとしたから、それに対応する所得税額は存在しない。
 そうすると、平成17年分の所得税の修正申告により納付すべき税額は、別表3−1の「平成17年分」欄のまる2欄の金額の申告漏れに係るものであると認められる。
 ところで、通則法第70条第4項は、納税者が「偽りその他不正の行為」により国税を免れた場合の加算税の賦課決定の除斥期間を7年と規定しているところ、当審判所が上記申告漏れの態様を調査した結果によれば、別表3−1の「平成17年分」欄のまる2欄の金額が申告漏れとなったことについて、別表3−1及び別表3−2の「平成18年分」欄から「平成23年分」欄までのまる1欄の各金額の申告漏れの場合のように、請求人が自らに帰属しないような外形を作出したとか、本件調査において、請求人が真実の所得を秘匿するため、虚偽の資料を作成し又は領収証の控えつづりを秘匿するなどして、これらの申告漏れが発覚し難い状況を作出したとかの事実を認めることはできず、請求人が平成17年分の所得税の賦課徴収を不能又は困難にするような何らかの偽計その他の工作を伴う不正な行為を行ったとはいえないから、別表3−1の「平成17年分」欄のまる2欄の金額の申告漏れに係る行為は、通則法第70条第4項に規定する「偽りその他不正の行為」には該当しないというべきである。
 以上から、平成17年分の加算税の賦課決定は、加算税の賦課決定の除斥期間を7年とする通則法第70条第4項の規定を適用することはできないので、期間制限を徒過した平成17年分所得税各賦課決定処分は、その全部を取り消すべきである。

(3) 本件消費税等各賦課決定処分について

 上記(1)のロの(イ)のとおり、本件各課税期間の消費税等の各修正申告は有効であるところ、上記(2)のロの(イ)のとおり、本件各課税期間における請求人の行為(別表3−1及び別表3−2の本件各課税期間のまる6欄の各金額の申告漏れに係る行為)は、通則法第68条第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たし、通則法第70条第4項に規定する「偽りその他不正の行為」にも該当するから、本件消費税等各賦課決定処分は、同項に規定する期間制限内に行われたものと認められる。
 また、平成18年課税期間及び平成19年課税期間の消費税等の各修正申告により納付すべき税額の計算の基礎となった各事実のうち、別表3−1の当該各課税期間のまる7欄の各金額が当該各課税期間の修正申告前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、通則法第65条第4項に規定する正当な理由があると認められるものがある場合には該当しない。
 以上から、本件消費税等各賦課決定処分は、いずれも適法である。

(4) その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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