(平成26年2月27日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、原処分庁が、まる1スタンドバーを営む審査請求人(以下「請求人」という。)の所得税について、請求人が家族名義の預金に事業に係る売上金を入金するなどして所得税の全部又は一部を免れたとした上で、推計の方法により事業所得の金額を算出して、所得税の各決定処分及び各更正処分並びに重加算税の各賦課決定処分を行い、また、まる2請求人の消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)について、推計の方法により課税標準額を算出した上で、請求人が課税仕入れの税額の控除に係る帳簿及び請求書等を保存していないなどとして、消費税等の各更正処分及び無申告加算税の各賦課決定処分を行ったのに対し、請求人が、原処分庁の認定には誤りがあるなどとして、原処分の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 平成17年分、平成18年分、平成19年分、平成20年分、平成21年分、平成22年分及び平成23年分(以下、これらを併せて「本件各年分」という。)の所得税について、審査請求(平成25年4月10日請求)に至る経緯及び内容は、別表1のとおりである。
 以下、平成24年12月26日付でされた平成17年分及び平成18年分の所得税の各決定処分(平成18年分については、平成25年3月27日付でされた異議決定によりその一部が取り消された後のもの)並びに平成19年分から平成23年分までの所得税の各更正処分を「本件所得税各更正決定処分」といい、平成24年12月26日付でされた本件各年分の所得税に係る重加算税の各賦課決定処分を「本件所得税各賦課決定処分」という。

ロ 平成20年1月1日から同年12月31日まで、平成21年1月1日から同年12月31日まで及び平成22年1月1日から同年12月31日までの各課税期間(以下、順次「平成20年課税期間」、「平成21年課税期間」及び「平成22年課税期間」といい、これらを併せて「本件各課税期間」という。)の消費税等について、審査請求(平成25年4月10日請求)に至る経緯及び内容は、別表2のとおりである。
 以下、平成24年12月26日付でされた本件各課税期間の消費税等の各更正処分及び無申告加算税の各賦課決定処分(平成20年課税期間の更正処分及び無申告加算税の賦課決定処分については、いずれも平成25年3月27日付でされた異議決定によりその一部が取り消された後のもの)を、それぞれ「本件消費税等各更正処分」及び「本件消費税等各賦課決定処分」という。

(3) 関係法令

イ 国税通則法関係

(イ) 国税通則法(以下「通則法」という。)第68条《重加算税》第2項は、通則法第66条《無申告加算税》第1項の規定に該当する場合において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき法定申告期限までに納税申告書を提出せず、又は法定申告期限後に納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、無申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額に係る無申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に100分の40の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する旨規定している。

(ロ) 通則法第70条《国税の更正、決定等の期間制限》第1項(平成23年法律第114号による改正前のもの)第1号は、更正は、その更正に係る国税の法定申告期限から3年を経過した日以後においては、することができない旨、同条第2項(平成23年法律第114号による改正前のもの)第4号は、法定申告期限から3年を経過した日以後に期限後申告書の提出があった国税についての更正は、その更正に係る国税の法定申告期限から5年を経過する日まで、することができる旨、同条第3項(平成23年法律第114号による改正前のもの)は、通則法第25条《決定》の規定による決定は、その決定に係る国税の法定申告期限から5年を経過した日以後においては、することができない旨、通則法第70条第1項(平成23年法律第114号による改正後のもの)第3号は、課税標準申告書の提出を要しない賦課課税方式による国税の賦課決定は、その納税義務の成立の日から5年を経過した日以後においては、することができない旨それぞれ規定している。
 また、通則法第70条第4項(平成23年法律第114号による改正後のもの。以下同じ。)は、偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れた国税(当該国税に係る加算税を含む。)についての更正決定等は、上記の各規定にかかわらず、更正又は決定は、その更正又は決定に係る国税の法定申告期限から、課税標準申告書の提出を要しない賦課課税方式による国税に係る賦課決定は、その納税義務の成立の日から、それぞれ7年を経過する日まで、することができる旨規定している。

ロ 消費税法関係

(イ) 消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第1項は、事業者(同法第9条《小規模事業者に係る納税義務の免除》第1項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)が、国内において行う課税仕入れについては、当該課税仕入れを行った日の属する課税期間の同法第45条《課税資産の譲渡等についての確定申告》第1項第2号に掲げる課税標準額に対する消費税額から、当該課税期間中に国内において行った課税仕入れに係る消費税額を控除する旨、同法第30条第7項は、同条第1項の規定は、事業者が当該課税期間の課税仕入れの税額の控除に係る帳簿及び請求書等(同項に規定する課税仕入れに係る支払対価の額の合計額が少額である場合その他の政令で定める場合における当該課税仕入れの税額については、帳簿)を保存しない場合には、当該保存がない課税仕入れに係る消費税額については、適用しない旨それぞれ規定している。

(ロ) 消費税法第30条第8項第1号は、同条第7項に規定する帳簿とは、まる1課税仕入れの相手方の氏名又は名称、まる2課税仕入れを行った年月日、まる3課税仕入れに係る資産又は役務の内容、まる4同条第1項に規定する課税仕入れに係る支払対価の額が記載されているものをいう旨規定している。

(ハ) 消費税法第30条第9項は、同条第7項に規定する請求書等とは、次に掲げる書類をいう旨規定している。

A 事業者に対し課税資産の譲渡等を行う他の事業者が、当該課税資産の譲渡等につき当該事業者に交付する請求書、納品書その他これらに類する書類で、まる1書類の作成者の氏名又は名称、まる2課税資産の譲渡等を行った年月日、まる3課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容、まる4課税資産の譲渡等の対価の額、まる5書類の交付を受ける当該事業者の氏名又は名称が記載されているもの(第1号)

B 事業者がその行った課税仕入れにつき作成する仕入明細書、仕入計算書その他これらに類する書類で、まる1書類の作成者の氏名又は名称、まる2課税仕入れの相手方の氏名又は名称、まる3課税仕入れを行った年月日、まる4課税仕入れに係る資産又は役務の内容、まる5同条第1項に規定する課税仕入れに係る支払対価の額が記載されているもの(第2号)

(4) 基礎事実

 次の事実は、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。

イ 請求人の概要

(イ) 請求人の事業
 請求人は、平成15年10月20日、n県知事から食品衛生法第52条の規定に基づく飲食店営業の許可を受け、平成17年、平成18年、平成19年、平成20年、平成21年、平成22年及び平成23年(以下、これらを併せて「本件各年」という。)において、k市所在の屋号を「○○○○」とする店舗(以下「本件店舗」という。)で飲食業(スタンドバー)を営んでいた。

(ロ) 請求人が管理していた普通預金口座
 請求人名義のx1銀行k支店の普通預金口座(番号○○○○。以下「本件請求人第一口座」という。)は、平成11年4月12日に開設され、請求人の子であるp2(以下「子p2」という。)名義のx1銀行m支店の普通預金口座(番号○○○○。以下「本件p2名義口座」という。)は、平成7年9月11日に開設されているところ、請求人は、これらの各普通預金口座の開設以降、当該各普通預金口座に係る預金通帳、キャッシュカード及び印鑑を所持して、当該各普通預金口座を管理し、入出金も請求人が全て行っていた。
 なお、本件p2名義口座は、平成24年8月1日に解約されているところ、平成15年7月1日から当該解約までの間の本件p2名義口座の入出金の状況は、別表3−1から別表3−5までのとおりである。

ロ 原処分に係る調査の状況

(イ) 原処分に係る調査(以下「本件調査」という。)の担当者(以下「本件調査担当者」という。)は、平成24年7月31日、請求人の自宅に臨場して本件調査を開始したが、請求人が、これから出掛ける用事があり対応できないので日を改めてほしい旨申し立てたため、本件調査担当者はこれを了承し、当日の調査は行わなかった。

(ロ) 本件調査担当者は、平成24年8月9日、請求人に対し、事業に係る帳簿書類の提示を求めたところ、請求人から、平成19年から平成23年までの期間の、まる1日々の客ごとの売上金額等を記載した「お会計票」と題する伝票(以下「お会計票」という。)、まる2各月の従業員別の給料の金額(半月ごとの金額)及びこれらの合計金額のほか、その月の「一ヶ月売上額」、「一ヶ月経費」、「一ヶ月給料」及び「一ヶ月黒字額」(その月の「一ヶ月売上額」から「一ヶ月経費」及び「一ヶ月給料」の各金額を差し引いた金額)が記載された「_年_月給料」(下線部分には年及び月が記載されている。)と題する書面(以下「各月合計表」という。)、まる3各月の経費の種類ごとの金額及びこれらの合計金額が記載された「_年_月経費内訳」(下線部分には年及び月が記載されている。)と題する書面(以下「各月経費内訳表」という。)及びまる4経費に係る領収証等の提示を受けたことから、これらの書類を預かった。
 以下、これら請求人が本件調査担当者に対して提示した書類を「本件提示書類」という。

(ハ) 本件調査担当者が、本件提示書類のお会計票を調査したところ、日々のお会計票は、日ごとにホッチキス留めされ、1か月分が輪ゴムで束ねられており、平成22年3月分及び平成23年2月分の日々のお会計票の束の中には、末葉のお会計票の裏面に金額の筆圧痕が残っているものがあった。
 上記筆圧痕の金額は、その筆圧痕の残っていた日のお会計票の各売上金額を合計したものより大きく、このように当該筆圧痕の金額の方が大きい原因は、ホッチキス留めされた日々のお会計票の束の合計が末葉の裏に記載された後、当該束から一部のお会計票(本件提示書類のお会計票には含まれないもの)を請求人が外して捨てたためである。
 なお、原処分庁が認定した平成22年3月分及び平成23年2月分における日ごとのお会計票の売上金額の合計額及び筆圧痕の金額は、別表4−1及び別表4−2のとおりである。

(ニ) 本件調査担当者は、平成24年8月16日、請求人が本件提示書類を返却するよう求めたことに対し、調査のため引き続き預かりたい旨頼んだが、請求人がもともと一週間の約束であったとしてこれに応じなかったことから、同日、本件提示書類を請求人に返却した。

(ホ) 本件調査担当者は、本件提示書類を返却した後も、請求人に対し、本件提示書類を含めた事業に係る帳簿書類の提示を求めたが、請求人は、これに応じず、平成24年12月14日、本件調査担当者に対し、事業に係る帳簿書類は調査が終了しもはや必要ないと思い既に捨てた旨申述し、原処分に至るまで本件各年の事業に係る帳簿書類を提示しなかった。

ハ 請求人の申告状況

(イ) 請求人は、原処分庁に対し、本件各年分の所得税について、法定申告期限までに各確定申告書を提出しなかった。
 また、請求人は、本件各課税期間において、消費税法第5条《納税義務者》第1項及び地方税法第72条の78《地方消費税の納税義務者等》第1項の各規定に基づく消費税等の納税義務者であったところ、請求人は、原処分庁に対し、本件各課税期間の消費税等について、法定申告期限までに各確定申告書を提出しなかった。

(ロ) 請求人は、原処分庁に対し、本件調査中の平成24年10月22日、平成19年分、平成20年分、平成21年分、平成22年分及び平成23年分の所得税の各期限後申告書並びに平成19年1月1日から同年12月31日までの課税期間及び本件各課税期間の消費税等の各期限後申告書を提出した。
 以下、請求人が提出した上記所得税の各期限後申告書を「本件各期限後申告書」という。

ニ 更正処分等の状況

(イ) 原処分庁は、上記ロの(ハ)のとおり把握したお会計票の筆圧痕の状況等から、請求人は、本件各年において、日々のお会計票から一部のお会計票を除くことにより、真実の売上金額を秘匿し、事業に係る売上金を家族名義の預金である本件p2名義口座に入金していたものと認められ、これらの請求人の行為は、通則法第70条第4項に規定する「偽りその他不正の行為」に該当すると認定した上で、請求人の事業所得の金額を実額によって計算することができないとして、各年の純資産の増加額に、その年中に処分(消費)した所得の額を加算し、事業所得以外の収入や非課税所得に該当する額を減算するなどして事業所得の金額を推計する方法(以下「資産負債増減法」という。)により、本件各年分の請求人の事業所得の金額を算出して、請求人に対し、平成24年12月26日付で、平成17年分及び平成18年分の所得税の各決定処分並びに平成19年分、平成20年分、平成21年分、平成22年分及び平成23年分の所得税の各更正処分を行うとともに、請求人の行為は、通則法第68条第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たすとして、本件各年分の所得税に係る重加算税の各賦課決定処分を行った。

(ロ) 原処分庁は、本件調査の結果、本件各課税期間の消費税の課税標準額を実額によって計算することができないとして、青色申告書の提出の承認を受けた者で、請求人と業種業態の類似する同規模程度の同業者(以下「類似同業者」という。)の比率を用いて推計する方法(以下「類似同業者比率法」という。)により、請求人の酒屋からの仕入金額に類似同業者の平均酒屋倍率(酒屋からの仕入金額に対する売上金額の倍率の平均をいう。以下同じ。)を乗じるなどして、本件各課税期間の請求人の消費税の課税標準額を算出した上で、仕入れに係る消費税額について、請求人は消費税法第30条第7項に規定する「課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等を保存しない場合」に該当し、仕入れに係る消費税額を控除することはできないとして、請求人に対し、平成24年12月26日付で、本件各課税期間の消費税等の各更正処分及び無申告加算税の各賦課決定処分を行った。

(5) 争点

争点1 平成17年分及び平成18年分の所得税に係る請求人の行為は、通則法第70条第4項に規定する「偽りその他不正の行為」に該当するか否か。

争点2 原処分庁が採用した所得税に係る推計方法に合理性があるか否か。

争点3 本件各年分の所得税に係る請求人の行為は、通則法第68条第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たすか否か。

争点4 請求人は、消費税法第30条第7項に規定する「課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等を保存しない場合」に該当するか否か。

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2 主張

(1) 争点1(平成17年分及び平成18年分の所得税に係る請求人の行為は、通則法第70条第4項に規定する「偽りその他不正の行為」に該当するか否か。)

原処分庁 請求人
 次のとおり、請求人は、平成17年分及び平成18年分の所得税に係る真実の売上金額を秘匿し、それが課税の対象となることを回避する意図をもって、平成17年分及び平成18年分の所得税の確定申告書を原処分庁に提出しなかったと認められ、このような請求人の行為は、税額を免れる意図の下に税の賦課徴収を不能又は著しく困難にするような偽計その他の工作を伴う不正な行為と認められるから、平成17年分及び平成18年分の所得税に係る請求人の行為は、通則法第70条第4項に規定する「偽りその他不正の行為」に該当する。  次のとおり、原処分庁の認定には誤りがあるから、請求人は、通則法第70条第4項に規定する「偽りその他不正の行為」に該当する行為をしていない。
イ 次のとおり、請求人は、本件各年において、日々のお会計票から一部のお会計票を除くことにより、真実の売上金額を秘匿し、事業に係る売上金を家族名義の預金である本件p2名義口座へ入金して、真実の所得金額を秘匿したことが認められる。
(イ) 請求人が上記1の(4)のロの(ハ)のとおり平成22年3月及び平成23年2月の各月において日々のお会計票から除いていた一部のお会計票は、売上げに係るお会計票であり、これにより真実の売上金額から一部の売上げが除外された。
(ロ) 平成22年3月及び平成23年2月の各月に本件p2名義口座に入金された金額は、いずれも上記(イ)の筆圧痕の金額に基づき各月の売上金額と推定される金額の範囲内であるところ、上記1の(4)のイの(ロ)のとおり、請求人が平成7年の口座開設から平成24年の口座解約まで継続して本件p2名義口座を管理していたこと、本件各年を通じて本件p2名義口座には各月において継続して現金が入金されていること、また、本件p2名義口座への入金原資は請求人が自宅に保管していたと主張する後記ロの現金であるとは認められないことからすれば、本件各年における本件p2名義口座への入金原資は、請求人の事業に係る売上金であると推認される。
イ 請求人が一部捨てていたお会計票は、売上げに計上すべきものではないから、これにより真実の売上金額を秘匿したことはない。
 請求人は、本件店舗において、掛けの入金や厨房を手伝ってくれた友人が無料でお酒を飲んだ分についてもお会計票を作成し、毎年年末に知人が集まった際に日々のお会計票を集計してもらい、その集計した者が当該お会計票の束の裏面に合計額を記載していたところ、掛けの入金や厨房を手伝ってくれた友人が無料でお酒を飲んだ分に係るお会計票は売上げに計上すべきものではないため、知人に集計してもらった後、請求人が、これらのお会計票を捨てていただけである。
ロ 本件p2名義口座への入金原資は、請求人の事業に係る売上金であり、請求人が自宅に保管していた現金などではない。
(イ) 請求人が自宅に保管していたとする昔から貯めていた金員及び三度の離婚による財産分与に係る金員は、具体的な根拠もなく認められない。
(ロ) 請求人が両親から自宅建物の取得の際にもらったとする8,000,000円又は10,000,000円について、もらったとは認められない。
(ハ) 請求人が援助を受けていたとするp3は援助をするほどの資金を持っていなかった。
ロ 本件各年の本件p2名義口座への入金原資は、事業に係る売上金も一部あるが、具体的な時期や金額を特定することはできないものの、大半は、昔から貯めていた金員並びに三度の離婚による財産分与、両親からの援助及び交際相手であるp3からの慰謝料などの援助に係る各金員を自宅に保管して、これを毎月数十万円ずつ小分けにして入金したものであり、事業に係る売上金ではない。
ハ 請求人は、本件調査が開始された平成24年7月31日の翌日に本件p2名義口座を自ら解約しながら、本件調査担当者に対し、請求人自らが解約していない旨の虚偽の申述を行ったものであるところ、このように、請求人が、本件調査において、事業に係る売上金が入金された本件p2名義口座の存在を隠そうとする態度を示したことからすると、請求人は、本件各年分の真実の所得金額が、課税の対象となることを回避する意図を有していたと推認される。 ハ 請求人が本件p2名義口座を解約したのは本件調査担当者に対して本件p2名義口座の存在を隠すためではなく、また、請求人が、本件調査担当者に対し、解約したのが請求人でないと申述したことは、本件p2名義口座の存在を隠すための虚偽の答弁ではないから、これらのことから課税の対象となることを回避する意図を推認することはできない。

(2) 争点2(原処分庁が採用した所得税に係る推計方法に合理性があるか否か。)

原処分庁 請求人
 次のとおり、原処分庁の採用した所得税に係る推計方法には合理性がある。  次のとおり、原処分庁の採用した所得税に係る推計方法には合理性がない。
イ 原処分庁は、請求人の事業所得の金額を推計するために資産負債増減法を、消費税の課税標準額を推計するために類似同業者比率法を採用しているが、これらは事業所得の金額又は消費税の課税標準額を推計するという異なる目的のためにそれぞれ採用したものである。
 本件においては、請求人の純資産の増減、収入及び支出が反映して算定される資産負債増減法は、請求人の事業所得の金額を推計する方法として、請求人の実情に合致する蓋然性がより高いものである。
イ 原処分庁は、請求人の消費税の課税標準額を、本件調査により把握した酒屋からの仕入金額を基礎として推計の方法により算定しているから、請求人の事業所得の金額を推計するに当たっても、当該仕入金額を基礎として、類似同業者の平均酒屋倍率及び当該類似同業者の平均所得率(青色申告者に限り認められている特典を受けないものとして計算し直した所得金額の総収入金額に対する割合の平均値をいう。以下同じ。)を用いた方法を用いるべきである。
ロ 原処分庁が採用した資産負債増減法においては、次のとおり、推計の基礎事実が正確に把握されている。 ロ 原処分庁が用いた資産負債増減法においては、次のとおり、推計の基礎事実が正確に把握されていない。
(イ) 原処分庁が請求人の資産の増加額を算定する基とした本件各年の本件p2名義口座への入金原資は、上記(1)の「原処分庁」欄のイの(ロ)のとおり、請求人の事業に係る売上金であると認められる。
 したがって、請求人の資産の増加額について、本件p2名義口座の入金額を基に算定することには合理性がある。
(イ) 原処分庁は、本件各年の本件p2名義口座への入金額を基に、請求人の資産の増加額を認定しているが、上記(1)の「請求人」欄のロのとおり、本件p2名義口座への入金原資は、事業に係る売上金でないものが大半であるにもかかわらず、原処分庁はこの点を見過ごしている。
(ロ) 原処分庁が請求人の生活費の算定の基にした「総務省統計局の家計調査による年報『第4表 世帯人員・世帯主の年齢階級別1世帯当たり1か月間の収入と支出(全世帯)』」(以下「家計調査年報」という。)は、総務省統計局の家計調査の結果に基づき作成されたものであるところ、その調査結果は、対象世帯の標準的な家計収支等に関する統計として正確性の高いものであると解されている。
 したがって、請求人の生活費の額について、家計調査年報を基に算定することには合理性がある。
(ロ) 原処分庁は、家計調査年報を基に請求人の生活費を算定しているが、請求人は、質素な生活をしており、生活費として費消する額がほとんどないこと、また、子p2は、中学校には○○施設から、高校には請求人の両親宅からそれぞれ通学していたため、その間は請求人が生活費をほとんど負担していないことからすると、原処分庁が算定した生活費の額は、請求人の実情とかけ離れた高額なものである。

(3) 争点3(本件各年分の所得税に係る請求人の行為は、通則法第68条第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たすか否か。)

原処分庁 請求人
 上記(1)の「原処分庁」欄のイのとおり、請求人は、本件各年において、日々のお会計票から一部のお会計票を除くことにより、真実の売上金額を秘匿し、事業に係る売上金を家族名義の預金である本件p2名義口座へ入金して、真実の所得金額を秘匿したことが認められる。
 以上から、請求人は、本件各年において、売上金額の一部を除外し、これを含む事業に係る売上金を本件p2名義口座に入金して、請求人に帰属する事業に係る売上金を隠匿したものと認められるところ、このことは、請求人が、本件各年分において、課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装したことに該当する。
 そして、請求人は、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき、平成17年分及び平成18年分の所得税に係る各確定申告書を法定申告期限までに提出せず、平成19年分から平成23年分までの所得税に係る各確定申告書を法定申告期限後に提出したものと認められるから、請求人の行為は、通則法第68条第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たす。
 上記(1)の「請求人」欄のとおり、原処分庁の認定には誤りがあり、請求人は、本件各年分において、課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装する行為をしていないから、通則法第68条第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たさない。

(4) 争点4(請求人は、消費税法第30条第7項に規定する「課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等を保存しない場合」に該当するか否か。)

原処分庁 請求人
 消費税法第30条第7項に規定する「帳簿及び請求書等」はそれぞれ独立して消費税法上の要件を満たし、その保存がなされている必要があるところ、請求人が事業に係る帳簿書類として提示した本件提示書類のうち、各月合計表及び各月経費内訳表は、仕入れ、経費等の支払の種類ごとの月別の合計金額が記載されているのみであり、いずれも同条第8項に掲げる「帳簿」の記載要件を欠くものであるから、そもそも同条第7項に規定する「帳簿」には当たらない。
 また、上記1の(4)のロの(ホ)のとおり、請求人は、本件調査担当者の事業に係る帳簿書類の提示の求めに対し、それらは破棄した旨述べて提示しなかった。
 したがって、請求人は、消費税法第30条第7項に規定する「課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等を保存しない場合」に該当する。
 請求人は、本件調査担当者に対し、平成24年8月9日、請求人の事業に係る帳簿書類として本件提示書類を提示しており、本件提示書類には、月ごとの支払科目別の合計金額等を記載しているものもあるから、消費税法第30条第7項に規定する「帳簿及び請求書等」としてはこれで足りるというべきである。
 したがって、請求人は、消費税法第30条第7項に規定する「課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等を保存しない場合」に該当しない。

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3 判断

(1) 争点1(平成17年分及び平成18年分の所得税に係る請求人の行為は、通則法第70条第4項に規定する「偽りその他不正の行為」に該当するか否か。)

イ 法令解釈
 通則法第70条第4項は、納税者が「偽りその他不正の行為」により国税を免れた場合の更正決定等の除斥期間を7年と規定し、それ以外の場合よりも長い除斥期間を規定している。
 これは、納税者が「偽りその他不正の行為」によって国税の全部又は一部を免れた場合、納税者間の公平を確保する必要があることなどを考慮し、適正な課税を行うことができるように、通常の場合よりも長期間その国税の賦課を可能として、適正、公平な課税の実現を図ることとしたものである。
 このような通則法第70条第4項の趣旨からすれば、同項が規定する「偽りその他不正の行為」とは、税の賦課徴収を不能又は困難にするような何らかの偽計その他の工作を行うことをいうものと解するのが相当である。

ロ 認定事実
 原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。

(イ) 本件提示書類の写しの作成状況
 原処分関係資料及び本件調査担当者の当審判所に対する答述から、本件調査担当者は、本件提示書類について、まる1平成20年1月分から同年4月分まで及び平成21年1月分から平成23年12月分までのお会計票(以下「本件お会計票」という。)、まる2平成19年分から平成23年分までの各月合計表(以下「本件各月合計表」という。)、まる3平成19年分から平成23年分までの各月経費内訳表、まる4平成23年1月分から同年12月分までの経費に係る領収証等(以下「本件経費領収証等」という。)の写しをそれぞれ作成したことが認められる。
 また、本件調査担当者は、本件お会計票の写しを作成する際に、日々のお会計票の束の末葉の裏面に金額が記載されたもの及び金額の筆圧痕が残っているものが存在したため、後者については、後記(ハ)のBのとおり筆圧調査を行った上で、これらについても写しを作成したことが認められる。

(ロ) お会計票の記載状況等
 本件お会計票及び請求人の当審判所に対する答述から、本件店舗の料金形態及びお会計票の記載状況について、次の事実が認められる。

A セット料金に係る料金形態及びお会計票の記載状況
 セット料金に係る料金形態は、客一人当たり2,000円の一律の基本料金を徴し、それに個別に客が注文した酒代、アイス代、カラオケ代等が加算される料金形態である。
 セット料金に係るお会計票には、まる1日付、まる2客名、まる3客から注文を受けた品名ごとの数量及び金額が記載され、合計欄に売上金額の合計額が記載されている。

B 飲み放題に係る料金形態及びお会計票の記載状況
 飲み放題に係る料金形態は、時間を90分間として客一人当たり4,000円の基本料金を徴し、その間、ウィスキー、ブランデー、焼酎、ビール、ソフトドリンクなどを飲み放題とし、追加の時間等に応じて料金を加算する料金形態である。
 飲み放題に係るお会計票には、まる1日付、まる2客名、まる3客から注文を受けた一部の品名及び数量、まる4飲み放題の時間が記載され、合計欄に売上金額の合計額が記載されている。

(ハ) お会計票の束の状況

A 合計額の記載があるお会計票の束
 当審判所が本件お会計票を調査した結果によれば、別表4−2のとおり、本件お会計票のうち平成23年2月16日及び同月17日のお会計票の束の末葉の裏面にはそれぞれ金額が記載されており、当該各金額はいずれも当該各日のお会計票の束の合計額と一致すること、また、同年1月分の日々のお会計票の束並びに同年3月17日、同月31日、同年9月13日、同月15日、同年10月6日及び同年11月22日の各日のお会計票の束の末葉の裏面にもそれぞれ金額が記載されており、当該各金額はいずれも当該各日のお会計票の束の合計額と一致することが認められる。

B 金額の筆圧痕があるお会計票の束
 本件調査担当者は、当審判所に対し、日々のお会計票の束の末葉の裏面に筆圧痕を発見して筆圧調査を行った状況について、まる1平成22年3月分のお会計票の写しを作成していた際、日々のお会計票の束の末葉の裏面に金額の筆圧痕が残っていることに気付き、同月分の他の日のお会計票においても同様に筆圧痕を確認したので、筆圧調査を行うことにした、まる2筆圧調査は、お会計票を光に当てて筆圧痕の有無を確認した上で、筆圧痕上に鉛筆の芯の粉をまく方法によって行うので、筆圧調査の過程で黒くなった部分を消しゴムで消して元に戻す作業を伴うことから、請求人が定めた1週間の返却期限では全てのお会計票について筆圧調査を行うことは時間的に無理と判断し、鮮明な筆圧痕が認められた平成22年3月分及び平成23年2月分のお会計票について筆圧調査を行った、まる3平成21年の各月分及び平成22年4月分から同年12月分までのお会計票についても、それらの写しを作成する際に筆圧痕が認められたお会計票があったことを確認している旨答述している。
 本件調査担当者の上記答述から、平成22年3月分及び平成23年2月分のお会計票のほか、本件調査担当者が筆圧痕の有無を確認したと認められる平成21年の各月分及び平成22年4月分から同年12月分までのお会計票においても、日々のお会計票の束の末葉の裏面に金額の筆圧痕が残っているお会計票が存在したものと認められる。

(ニ) 売上げに係るお会計票の欠落等の状況

A 「追加」と記載されたお会計票に対応するお会計票
 当審判所が本件お会計票を調査した結果によれば、本件お会計票のうち平成21年9月11日、平成22年11月27日及び平成23年11月25日のお会計票の中には、「追加」と記載されたお会計票とともに同一の客名等が記載されたセット料金に係るお会計票があり、この点について、請求人が、当審判所に対し、「『追加』と記載されたお会計票は、その日の料金精算後に残った客や再度来店した客など、その日のセット料金を既に受領している客について作成するものである。」旨答述していることからすると、請求人は、本件店舗において、セット料金で入店した客が一旦料金を精算した後に再度来店したときなどに、セット料金に係るお会計票に加えて、「追加」と記載したお会計票を作成していたことが認められる。
 そして、当審判所が本件お会計票を調査した結果によれば、平成21年7月10日、平成22年4月16日、平成23年5月10日、同年6月4日及び同年7月25日のお会計票には、それぞれ「追加」と記載されたお会計票があると認められるにもかかわらず、当該各日にこれらに対応するセット料金に係るお会計票が存在しない。

B 掛けの入金に係るお会計票に対応するお会計票
 請求人の当審判所に対する「料金を掛けにされる場合には、必ずお会計票に『掛』と書いていました。」、「掛けの入金があった場合には、客の名前と掛けの入金の金額が分かるようにお会計票に記載し、そして、『掛』と記載したお会計票に『済』と記載していました。」旨の各答述から、請求人は、掛けによる売上げの入金があった場合には、当該入金に係るお会計票を作成するとともに、対応する掛けによる売上げが生じた日のお会計票(「掛」と記載したもの)に「済」と記載して、入金の有無が分かるようにしていたことが認められる。
 そして、当審判所が本件お会計票を調査した結果によれば、本件お会計票の中には、「p4、6/4分4,000円入金」と記載された平成21年6月5日のお会計票及び「p5、6/5分¥16,000入金」と記載された平成22年6月24日のお会計票が存在し、それぞれの記載内容から、当該各お会計票は掛けの入金を記載したお会計票であると認められるところ、前者については、掛けによる売上げが生じたと認められる平成21年6月4日のお会計票が1枚もなく、また、後者については、掛けによる売上げが生じたと認められる平成22年6月5日のお会計票の中に対応する掛けによる売上げが生じたことを示すお会計票が存在しない。

C 振込入金に対応する売上げに係るお会計票
 本件お会計票及び当審判所が本件請求人第一口座の普通預金取引明細表を基にQ社からの振込入金の状況を調査した結果によれば、平成20年2月29日、平成21年9月3日、平成23年1月31日及び同年11月30日に同社から本件請求人第一口座へそれぞれ43,475円、20,000円、55,475円及び9,685円の振込入金が認められ、このうち平成21年9月3日分を除く各振込入金については、平成20年1月26日、平成22年12月18日及び平成23年11月1日に客名をいずれも「Q社」、売上金額をそれぞれ44,000円、56,000円及び10,000円とするお会計票が存在し、各振込入金額に振込手数料(525円又は315円)を加えた金額が当該各売上金額とそれぞれ一致することから、当該各振込入金額は当該各お会計票に係る売上金の入金を示すものと認められるところ、平成21年9月3日のQ社からの振込入金20,000円については、対応する売上げに係るお会計票が存在しない。

(ホ) 本件お会計票に記載されたビールの本数の状況
 請求人が本件店舗で提供する酒類を仕入れていたR社作成の請求書控え(得意先元帳)、本件お会計票及び請求人の当審判所に対する答述から、次の事実が認められる。

A 請求人は、本件各年において、本件店舗の日々の営業開始前に、本件店舗で提供する酒類の在庫を確認の上、必要な数量をR社から仕入れていた。
 また、請求人は、R社からビールを仕入れる場合、本件各年において、「アサヒスーパードライ小瓶」をおおむね30本単位で仕入れていたが、平成23年4月及び同年5月においては、そのほかに「アサヒスーパードライ中瓶」を20本単位で仕入れていた。

B 当審判所が本件お会計票に対応する期間(平成20年1月から同年4月まで及び平成21年1月から平成23年12月までの期間)における上記Aのビールの仕入本数及び本件お会計票に記載されたビールの本数を調査した結果によれば、それぞれの状況は別表5−1及び別表5−2の「仕入本数」欄及び「お会計票のビール本数」欄のとおりであり、当該期間におけるビールの仕入本数の合計が4,378本であるのに対し、本件お会計票に記載されたビールの本数の合計は1,920本にすぎず、仕入本数と本件お会計票に記載された本数とで2,458本の開差(開差の内訳は、平成20年1月から同年4月までの開差が243本、平成21年の開差が636本、平成22年の開差が810本、平成23年の開差が769本である。)が生じている。

C 請求人の当審判所に対する答述から、請求人は、飲み放題のお会計票には、客が飲んだビールの本数を記載していなかったものと認められる。
 そして、当審判所が、請求人がビールを仕入れた日から次の仕入日の前日までの間に飲み放題のお会計票がない期間に係るビールの仕入本数及びお会計票に記載されたビールの本数を調査した結果によれば、それぞれの状況は別表6のとおりであり、当該期間(83日間)におけるビールの仕入本数の合計が330本であるのに対し、同期間のお会計票に記載されたビールの本数の合計は120本にすぎず、仕入本数とお会計票に記載された本数とで210本の開差(開差の内訳は、平成20年1月から同年4月までの開差が5日間で20本、平成21年の開差が14日間で21本、平成22年の開差が51日間で136本、平成23年の開差が13日間で33本である。)が生じている。

(ヘ) 本件各期限後申告書の作成の基となった資料

A 請求人が、本件調査担当者に対し、本件各月合計表の日々の売上金額は本件提示書類のお会計票を合計したものである旨申述していること、また、当審判所が本件お会計票及び本件各月合計表を調査した結果によれば、本件お会計票の中には、客から掛けの入金があった場合にその入金額のみを記載したと認められるお会計票も含まれているところ、これを除いて集計した本件お会計票の各月の合計額及び各月合計表に記載された1か月の売上金額は、別表7−1及び別表7−2のとおりであり、本件お会計票の各月の合計額とこれに対応する期間の各月合計表に記載された1か月の売上金額とは、同額となる月が相当数あり、また、差額が生じている場合があるものの、請求人の上記申述に照らせば、それは単に計算誤りに基因するものと考えられることからすると、請求人は、本件提示書類のお会計票に基づき売上金額を集計して、本件各月合計表の売上金額を計算したものと認められる。

B 当審判所が本件各期限後申告書に添付された平成19年分から平成23年分までの各収支内訳書(以下「本件各収支内訳書」という。)及び本件各月合計表を調査した結果によれば、本件各収支内訳書に記載された「売上(収入)金額」欄の金額は、別表8の「収支内訳書の収入金額」欄のとおり、平成19年分が○○○○円、平成20年分が○○○○円、平成21年分が○○○○円、平成22年分が○○○○円、平成23年分が○○○○円であり、当該各金額は、別表8の「各月合計表の合計額」欄のとおり、平成19年分から平成23年分までの本件各月合計表の売上金額の各年の合計額といずれも同額となるから、請求人は、本件各月合計表に基づいて本件各収支内訳書を作成したものと認められる。

C 以上からすれば、請求人は、本件提示書類のお会計票を集計して本件各月合計表を作成し、これを基に作成した本件各収支内訳書を添付して、本件各期限後申告書を作成し提出したものと認められる。

(ト) 売上金の管理の状況
 本件請求人第一口座の普通預金取引明細表、請求人の異議申立てに係る調査(以下「本件異議調査」という。)の担当者(以下「本件異議担当者」という。)に対する申述及び当審判所に対する答述並びに請求人の従業員であるp13の本件調査担当者に対する申述から、請求人は、事業用の現金について、まる1日々の現金による売上金を入れ、営業終了後は翌日の釣銭を入れておく財布(以下「店舗用財布」という。)、酒類の仕入代金を支払うための現金を入れておくポーチ(以下「酒仕入用ポーチ」という。)、日々の営業終了後に残った現金を入れておくポーチ(以下「残金用ポーチ」という。)を使用して管理していたこと、まる2日々の営業終了後、店舗用財布内の現金について、釣銭用の現金33,000円を店舗用財布に残し、酒仕入用ポーチに10,000円又は20,000円の現金を入れて、残った現金を残金用ポーチに移していたこと、そして、まる3残金用ポーチに貯まった現金で、半月単位で従業員の給料を支払い、また、月末又は月初めに口座振替の方法で支払われる本件店舗の賃料等に充てるための現金を本件請求人第一口座へ入金していたことが認められる。

(チ) 本件請求人第一口座の入出金の状況
 本件請求人第一口座の普通預金取引明細表、本件各収支内訳書及び請求人の当審判所に対する答述から、本件請求人第一口座の各月の入出金の状況について、次の事実が認められる。

A 入金状況
 本件請求人第一口座には、月末又は月初めに上記(ト)のまる3の現金が入金されているほか、本件店舗の売掛金や請求人の事業とは関係のないk市からの児童扶養手当等が振り込まれている。

B 出金状況
 本件請求人第一口座からは、本件店舗の賃料、水道光熱費、有線放送やカラオケに係る費用等の請求人の事業に係る経費のほか、請求人の自宅の水道光熱費、生命保険料等の請求人の生活に必要な費用等がそれぞれ口座振替の方法により支払われている。

(リ) 本件p2名義口座の入出金の状況
 本件p2名義口座、本件請求人第一口座及び請求人の父であるp6(以下「父p6」という。)名義のx1銀行○○支店の普通預金口座(番号○○○○。以下「本件p6名義口座」という。)に係る各普通預金取引明細表、x2損害保険株式会社(平成○年○月の合併前の商号は、x3損害保険株式会社。以下、合併の前後を通じて「x2損保」という。)作成の平成25年10月10日付の「照会への回答書」と題する書面、x4損保作成の平成25年10月8日付の「ご回答」と題する書面(いずれの書面も当審判所が当該各社に対して行った照会に対する回答文書である。)並びに請求人の当審判所に対する答述から、平成15年7月1日から平成24年8月1日(本件p2名義口座の解約日)までの間の本件p2名義口座に係る入出金の状況について、次の事実が認められる。

A 平成15年7月18日の入金(80,000円)
 請求人は、「p7」から平成15年7月17日に本件請求人第一口座へ振り込まれた150,000円(振込入金後の残高172,064円)について、同月18日、130,000円を現金で出金し、同日、このうちの80,000円を本件p2名義口座へ入金した。

B 平成15年7月26日の入金(500,000円)
 請求人は、x2損保から搭乗者傷害保険に係る保険金として平成15年7月25日に本件請求人第一口座へ振り込まれた540,000円(振込入金後の残高582,064円)について、同月26日、500,000円を現金で出金し、同日、同額を本件p2名義口座へ入金した。

C 平成15年8月14日の入金(130,000円)
 請求人は、k市から母子手当として平成15年8月11日に本件請求人第一口座へ振り込まれた169,480円(振込入金後の残高172,965円)について、同月14日、130,000円を現金で出金し、同日、同額を本件p2名義口座へ入金した。

D 平成15年8月20日の入金(1,000,000円)
 請求人は、平成15年8月20日、本件p6名義口座から1,000,000円を現金で出金し、同日、同額を本件p2名義口座へ入金した。

E 平成15年8月27日の入金(900,000円)
 請求人は、x4損保から自動車損害賠償責任保険に係る保険金として平成15年8月25日に本件請求人第一口座へ振り込まれた952,580円(振込入金後の残高984,545円)について、同月27日、930,000円を現金で出金し、同日、このうちの900,000円を本件p2名義口座へ入金した。

F 平成15年12月1日の入金(180,000円)
 請求人は、平成15年12月1日、本件請求人第一口座から180,000円を現金で出金し、同日、同額を本件p2名義口座へ入金した。

G 平成21年10月2日の入金(3,000,000円)
 請求人は、n地方裁判所m支部から請求人の元夫であったp8(平成21年○月○日婚姻、平成25年○月○日離婚。以下「元夫p8」という。)に係る○○保証金3,000,000円(本件p2名義口座から平成21年3月6日に出金し支払われたもの)の返還金として同年10月2日に本件請求人第一口座へ振り込まれた3,000,000円(振込入金後の残高3,180,754円)について、同日、同額を現金で出金し、同額を本件p2名義口座へ入金した。

H 上記AからGまでの入金以外の現金入金
 本件p2名義口座へは、上記AからGまでの入金以外に、別表3−1から別表3−5までのとおり、毎月数回の現金による入金があり、各年における入金の合計額は、平成15年が1,200,000円、平成16年が5,288,411円、平成17年が6,000,000円、平成18年が8,300,000円、平成19年が10,600,000円、平成20年が6,950,000円、平成21年が4,450,000円、平成22年が5,550,000円、平成23年が5,800,000円に上る。

I 平成15年7月22日から同年10月30日までの出金
 別表3−1のとおり、請求人は、平成15年7月18日に上記Aの入金がされた後の同月22日から同年10月30日までの期間、本件p2名義口座から合計1,520,000円(キャッシュカードの手数料を除く。)の現金を出金した。

(ヌ) 本件請求人第一口座の入金に連動する本件p2名義口座の入金
 当審判所が平成15年7月1日から平成16年12月31日まで及び本件各年における本件請求人第一口座及び本件p2名義口座への現金による入金状況を調査した結果によれば、当該各口座へ現金による入金が行われた年月日及び金額の状況は、別表9−1から別表9−5までのとおりである。
 そして、本件請求人第一口座については、平成15年に3回、平成16年に13回、平成17年に15回、平成18年に15回、平成19年に15回、平成20年に20回、平成21年に15回、平成22年に11回、平成23年に12回、合計119回、現金による入金がされているところ、これらと同日に本件p2名義口座へ現金による入金がされた回数は、平成15年が1回、平成16年が9回、平成17年が11回、平成18年が10回、平成19年が14回、平成20年が13回、平成21年が9回、平成22年が9回、平成23年が10回、合計86回に上り、いずれもx1銀行の同一の支店のATM(自動現金預払機)でほぼ同一の時刻に入金手続が行われている。

(ル) 本件p2名義口座への入金原資に関する請求人の答述
 請求人は、当審判所に対し、平成13年頃から又は平成15年頃から、本件p2名義口座へ入金を始めた旨、本件p2名義口座の入金原資について、事業による収入を入金したものも一部あるが、その大半は自宅で保管していた現金を本件p2名義口座へ入金していた旨答述し、その原資として、まる1元夫から財産分与を受けた資金、まる2本件店舗の開業時に所持していた約25,000,000円の資金(昔から貯めていた約15,000,000円の資金と交際相手であり平成19年9月○日に死亡したp3から援助を受けた約10,000,000円の資金の合計額)、まる3請求人の自宅の新築に際して両親から援助を受けた約10,000,000円の資金である旨答述する。
 そこで、請求人の上記答述の信用性について検討したところ、次のとおりである。

A 元夫から財産分与を受けたとする資金について
 請求人の戸籍事項全部証明書から、請求人は、平成5年3月、平成9年3月及び平成13年10月にそれぞれ離婚していることが認められる。
 そして、請求人は、当審判所に対し、平成5年に離婚した元夫(子p2の父)から、別居開始から同年3月に離婚するまで生活費をもらい(同元夫の預金通帳を預かり、その口座から現金を引き出すという方法で生活費を受領していた。)、また、離婚後は子p2の養育費として月30,000円をもらっていた旨答述するところ、仮に請求人が答述するとおりに生活費及び養育費が支払われていたとしても、これらの受領時期及び受領目的から、それぞれ生活費又は養育費として費消されたと推認される。
 また、請求人は、当審判所に対し、平成9年に離婚した元夫から、離婚に際し、現金1,000,000円と自動車をもらった旨答述し、同元夫も、当審判所に対し、離婚の際に慰謝料として1,200,000円か1,300,000円の現金と自動車を渡した旨答述しているところ、後記Bのとおり、当時、請求人に蓄えがなかったと認められることからすると、同元夫から受領した現金は、生活費等で費消されたことが推認される。
 そして、請求人が、当審判所に対し、平成13年に離婚した元夫から同元夫名義の預金通帳と印鑑をもらった旨答述し、併せて、離婚した元夫3名の名義の預金通帳を全部で10冊以上持っており、本件店舗の開業までにそれらの口座の資金を整理した旨答述する点については、請求人がそれぞれの口座から整理した金額を明らかにせず、具体的な金融機関名やいつ頃どのように整理したかは覚えていない旨答述し、また、上述した平成5年に離婚した元夫及び平成9年に離婚した元夫との離婚に際しての財産授受に関する請求人の答述に照らしても、請求人が元夫3名の名義の10冊以上もの預金通帳を所持していたとは考えられず、内容が不自然であるから、請求人の上記答述は信用できない。
 以上から、元夫から財産分与を受けた資金が本件p2名義口座への入金原資となった旨の請求人の答述は信用することができない。

B 昔から貯めていたとする資金約15,000,000円について
 請求人は、当審判所に対し、平成10年頃にm市で開業していたスナックを閉店する時に約15,000,000円貯めており、本件店舗の開業時に、自宅の金庫の中にp3から援助を受けた約10,000,000円と合わせて、約25,000,000円の現金を所持していた旨答述する。
 ところで、請求人は、当審判所に対し、「平成15年の夏頃には、お店を開業することを決めていました。平成15年10月にお店を開業しましたので、本件p2名義口座からその頃に出金したお金は、お店を開業する時の費用を支払ったものだと思います。」、「お店を開業する際、p3からお金をもらっていましたが、そのお金は使わないと決めていましたし、事故の補償金が1,400,000円くらい入ると分かっていましたので、これを開業資金に充てようと思っていました。ただ、補償金がいつ入ってくるか分からなかったので、お金が足りなくなってはいけないと思い、『p7』や父p6からのお金も本件p2名義口座へ入金したのだと思いますが、結果として、補償金が間に合いましたので、それらのお金は残っていると思います。」旨答述しているところ、上記(リ)のAからEまで及びIの各事実及び請求人の当該答述から、まる1請求人は、本件店舗の開業に際し百数十万円の資金が必要であったこと、まる2請求人は、保険会社から事故の保険金が支払われることとなっていたため、これを本件店舗の開業資金に充てることにしたこと、まる3当該保険金は、上記(リ)のB及びEのとおり、平成15年7月25日及び同年8月25日にそれぞれ540,000円、952,580円(合計金額1,492,580円)がいずれも本件請求人第一口座に振り込まれているところ、後者が振り込まれる前の同月19日時点で請求人が調達した資金は710,000円(上記(リ)のAの80,000円、Bの500,000円及びCの130,000円を合計した金額)であり、開業に必要な資金に満たなかったため、請求人は、上記(リ)のDのとおり、同月20日に本件p6名義口座から出金した現金1,000,000円を本件p2名義口座に入金し、この時点において開業に必要な資金を確保したこと、しかし、まる4同月25日に保険金952,580円が本件請求人第一口座に振り込まれたことにより、結果として、事故の保険金の合計額1,492,580円で本件店舗の開業資金をほぼ賄うことができたこと(上記(リ)のIの期間に請求人が本件p2名義口座から出金した現金の合計額もこの金額に見合う1,520,000円である。)が認められる。
 このように、請求人は、本件店舗の開業資金を事故の保険金で確保することとしたが、保険金の支払日が不確定であったため、資金不足となることを懸念してその支払状況に応じて資金調達しているところ、仮に、本件店舗の開業時点で約15,000,000円の資金を所持していたのであれば、本件店舗の開業資金の不足を懸念する必要はなかったはずであり、このような本件店舗の開業資金の調達状況に照らせば、請求人が本件店舗の開業時に約15,000,000円の蓄えを持っていたということは不自然であるから、昔から貯めていた約15,000,000円の資金が本件p2名義口座の入金原資となった旨の請求人の答述は信用することができない。

C p3から援助を受けたとする資金約10,000,000円について
 請求人は、当審判所に対し、p3から、まる1平成13年に慰謝料として合計約5,000,000円、平成15年に本件店舗の開業資金として約5,000,000円の援助を受け、受け取った現金約10,000,000円を自宅の金庫に保管していたほか、まる2平成13年から平成19年に同人が死亡する数か月前までの間、生活費の援助として現金を受領していた旨答述する。
 これに対し、p3の妻であるp9は、本件異議担当者に対し、まる1p3が自由に使えるお金はなかった旨、まる2同人が平成13年頃に約5,000,000円、平成15年頃に約5,000,000円を人にあげるほどお金を持っていたとは考えらないし、そのような話を聞いたことも、そのようなお金を見たこともない旨、請求人の上記答述とは矛盾する内容を申述しているところ、p9が請求人とは利害関係がない者であり、あえて虚偽を述べる理由がなく、また、p9はp3と日常生活を一にしていた者であり、同人の日常の状況などを熟知していた立場にあるものと考えられるから、p9の上記申述は信用性が高いものである。
 そうすると、請求人の上記答述は、信用性が高いp9の申述と矛盾し、また、上記Bのとおり、本件店舗の開業資金の調達状況に照らし、請求人が本件店舗の開業時に約10,000,000円の資金を所持していたということは不自然であるから、信用することができない。

D 両親から援助を受けたとする資金約10,000,000円について

(A) 請求人の申述及び答述要旨
 請求人は、自宅新築等に際して両親から援助を受けたとして、本件調査担当者、本件異議担当者及び当審判所に対し、要旨次のとおり申述又は答述する。

a 平成24年8月16日(本件調査担当者に対する申述)
 自宅家屋の新築に際し、両親から、祝いというか、何回かに分けてもらいました。
 最後にもらったのは8,000,000円くらいでした。

b 平成25年1月24日(本件異議担当者に対する申述)
 家を建てる時に10,000,000円くらい出してもらっています。
 また、毎月、野菜と一緒に現金をもらっていました。

c 平成25年9月26日(当審判所に対する答述)
 父p6から、自宅が建前(棟上げ)だった平成22年2月頃に、現金で10,000,000円をもらいました。
 1,000,000円ずつ束になっていたわけではないが、当時の自宅の金庫に入れる時に数えたので、ほぼ10,000,000円あったことに間違いありません。

(B) 請求人の両親の申述及び答述要旨
 請求人の自宅新築に際する援助に関し、父p6は、本件調査担当者及び本件異議担当者に対し、また、請求人の母であるp10(以下「母p10」という。)は、当審判所に対し、要旨次のとおり申述又は答述する。

a 平成24年9月13日(母p10同席の下における父p6の本件調査担当者に対する申述)

 請求人の自宅の新築に係る援助として、通帳で渡したか、現金で渡したか、何回かに分けて資金を援助した。
 まとまって渡したのは5,000,000円くらいだったと思う。
 (本件調査担当者が請求人は8,000,000円という金額を申述していることを指摘した後)
 だいたいそれくらいだったと思う。
 5,000,000円を渡した年とそれ以外のお金を渡した年は違っていたと思う。

b 平成25年2月15日(父p6の本件異議担当者に対する申述)
 家の棟上げの時に家に持って行った。
 自宅の金庫に9,000,000円くらい入れていたので、そのうち1,000,000円くらいを事業資金として残し、8,000,000円を風呂敷に包んで渡したのを覚えている。
 (本件異議担当者が金庫の中に通常どれくらいの資金を保管しているのか、8,000,000円を渡したことを証明するものはあるのかなどの質問をした後)
 具体的に8,000,000円で間違いないかというと確かではなく8,000,000円より少なかったことはなかったと思うが、それが8,000,000円であったのか9,000,000円であったのかと言われても、はっきりとした金額は分からない。

c 平成25年10月18日(母p10の当審判所に対する答述)
 請求人の自宅の新築に際し、平成22年9月頃、ちょうど家の建前の時に、夫(父p6)と建築中の家に行って、請求人に10,000,000円を渡した。
 その10,000,000円は自宅の金庫に入れていたもので、私が管理していたので、私が数えて10,000,000円を用意した。
 以前から、請求人が自宅を持つ時には、金額が10,000,000円なら税金もかからないと聞いていたので、そのくらいは援助してやろう、後は自分で何とかさせようと、夫(父p6)と話していたので、その時のために自宅の金庫にお金を貯めていた。

(C) 請求人及び両親の申述及び答述の信用性

a 上記(A)のとおり、請求人は、両親から資金援助を受けた旨申述及び答述するが、資金援助を受けた回数や機会について、本件調査担当者に対し、自宅の新築に際し、何回かに分けてもらった旨、また、最後にもらった金額については8,000,000円であった旨申述していたのに対し、本件異議担当者及び当審判所に対しては、毎月、野菜と一緒に現金をもらっていた、自宅を建てる機会にもらった金額は10,000,000円であるなどと、本件調査担当者に対する申述とは若干説明内容を変更しているため、請求人の申述及び答述を直ちに信用することはできない。

b 上記(B)のa及びbのとおり、父p6は、母p10の同席の下、本件調査担当者に対し、請求人に数回に分けて資金援助をし、最後に渡したのは5,000,000円くらいであった旨申述し、資金援助した金額を明確に申述していなかったところ、本件調査担当者が父p6に対して請求人が申述した金額8,000,000円を指摘するや否やそれに追随した上、5,000,000円の援助とそれ以外の援助は年を分けて行った旨申述したこと、そして、本件異議担当者に対しては8,000,000円を風呂敷に包んで1度に渡した旨申述するなど本件調査担当者に対する申述を変遷させた上、本件異議担当者が更に詳細に質問調査を続けた後、先に申述した8,000,000円の金額自体定かではない趣旨の申述をしたことが認められるところ、このように、非常に高額の資金援助をしたとされる側の当事者でありながら資金援助の金額及び回数を明確に答えることができず、更には申述した金額さえ定かではない趣旨の申述をしている状況に照らせば、父p6の申述を信用することはできない。

c 上記(B)のa及びcのとおり、母p10は、本件調査担当者の父p6に対する質問調査の場に同席し、父p6が申述した内容を承知していたと認められること、それにもかかわらず、当審判所に対し、資金援助した金額は10,000,000円であり、請求人が自宅を持つ時には10,000,000円を援助するということは父p6と話をしていた旨答述しているが、母p10が当審判所に答述するようになった経緯は、請求人が本件異議調査の段階までは援助を受けたのは父p6からであったとして本件調査担当者及び本件異議担当者と父p6との面談を設定していたことから、当審判所が父p6との面談を求めたのに対し、両親の家の金庫の管理をしていたのは母p10であるとして母p10との面談を求めてきたというものであり、この経緯及び母p10が同席した上での父p6の本件調査担当者に対する上記(B)のaの曖昧な申述に母p10が異議を唱えなかったことに照らせば、母p10は、請求人の当審判所に対する上記(A)のcの答述に合致するようにあえて答述したと考えられ、母p10の答述を信用することはできない。

d 以上のとおり、請求人が両親から資金援助を受けた旨の請求人の申述及び答述並びに資金の援助をした側の父p6の申述及び母p10の答述は、いずれも信用することができず、本件の全証拠を精査しても、両親からの資金援助があったことを示す具体的な証拠は見当たらないから、請求人が、両親から自宅の建築資金や生活費の援助として現金を受領し、これを自宅の金庫に所持していたと認めることはできない。

E まとめ

 上記AからDまでのとおり、本件p2名義口座への入金原資に係るまる1元夫から財産分与を受けた資金、まる2本件店舗の開業時に所持していた約25,000,000円の資金、まる3請求人の自宅の新築に際して両親から援助を受けた約10,000,000円の資金に関する請求人の各答述はいずれも信用することができないから、請求人が、上記まる1からまる3までの各資金を所持していたとは認められず、本件店舗の開業時以降に本件p2名義口座に入金された現金は、上記まる1からまる3までの各資金以外の現金であると認められる。

(ヲ) 本件p2名義口座の解約

A 上記1の(4)のイの(ロ)のとおり、本件p2名義口座は請求人が管理していた普通預金口座であり、平成24年8月1日に解約されているところ、子p2の本件調査担当者に対する申述及び本件p2名義口座の解約手続が行われたx1銀行k支店の行員の本件調査担当者に対する申述から、本件p2名義口座の解約に際し、まる1請求人及び請求人の依頼に応じて名義人である子p2がx1銀行k支店に赴いたこと、そして、まる2請求人自らが記載した払戻請求書を子p2に渡した後、子p2が本人確認書類を提示するなどして解約の手続を行ったことが認められる。
 以上から、請求人は、平成24年8月1日、子p2に指示して本件p2名義口座を解約したものと認められる。

B 請求人は、本件調査担当者に対し、本件p2名義口座の解約時の状況について、「平成24年8月1日に子p2には会っていません。子p2に解約するように言いましたから、本人が行ったはずです。」旨申述するなど、請求人自身は本件p2名義口座の解約手続に関与していない趣旨の申述をしたことが認められる。

ハ 判断

(イ) 争点について

A 本件店舗の売上金額について

(A) 本件提示書類の提示時点における売上除外の状況

a 上記ロの(ニ)のとおり、売上げに係るお会計票について「追加」と記載されたお会計票があるにもかかわらず、対応するセット料金に係るお会計票が欠落し、また、掛けの入金に係るお会計票に対応する掛けの売上げが生じたことを示すお会計票及び振込入金に対応する売上げに係るお会計票が欠落していることからすれば、請求人は、上記ロの(ニ)で確認された日において売上げに係る一部のお会計票を取り除いていたことが推認される。

b また、上記ロの(ホ)のB及びCのとおり、本件お会計票に対応する期間(平成20年1月から同年4月まで及び平成21年から平成23年までの期間)において、ビールの仕入本数と本件お会計票に記載された本数とで2,458本もの開差が生じ、また、ビールを仕入れた日から次の仕入日の前日までの間に飲み放題のお会計票がない期間(83日間)に係るビールの仕入本数とお会計票に記載された本数とでも210本もの開差が生じているところ、これらの開差の状況は、上記ロの(ホ)のAの請求人の酒類の仕入方法からすると、在庫数の増加によるものとは考えられず、単に過失によるお会計票の紛失などといった理由でも説明し難いほどの大きな開差であることからすれば、請求人は、上記ロの(ニ)で確認された日以外の日においても、お会計票の束から売上げに係る一部のお会計票を取り除いていたことが推認される。

c 上記a及びbのことからすれば、請求人は、本件提示書類の提示時点において、本件お会計票に対応する期間(平成20年1月から同年4月まで及び平成21年から平成23年までの期間)における日々のお会計票の束から売上げに係る一部のお会計票を取り除いていたこと、そして、その取り除いた後の本件お会計票を本件調査担当者に提示したことが推認される。
 加えて、請求人が上記ロの(ヘ)のCのとおり本件提示書類のお会計票を集計して作成した本件各月合計表を基に本件各収支内訳書を作成して事業所得の金額を計算して本件各期限後申告書を作成し提出したことを考慮すると、請求人は、本件提示書類の提示時点において、平成20年から平成23年までの各年の売上げの一部が除外された内容虚偽の平成20年分から平成23年分までの各年分の各月合計表を作成した上で、当該各月合計表を本件調査担当者に提示したものと推認される。

(B) 本件各年における売上金額の把握の状況

a 別表4−2のとおり、平成23年2月分のお会計票のうち同月16日及び17日の各日のお会計票の束の末葉の裏面に記載された金額は、いずれも当該各日のお会計票の束の合計額であること、同月分のお会計票(上記各日のお会計票を除く。)のうち筆圧痕の金額が不明である同月12日及び25日のお会計票を除く各日のお会計票の束の末葉の裏面には金額の筆圧痕があり、それぞれの筆圧痕の金額はそれが含まれるお会計票の束の合計額を超えていること、上記1の(4)のロの(ハ)のとおり、筆圧痕の金額とお会計票の束の合計額が相違する原因は、請求人がお会計票の束から一部のお会計票を外して捨てたものであることからすると、平成23年2月分のお会計票のうち同月12日及び25日を除く各日のお会計票の束には、それぞれの末葉の裏面に合計額が記載されていたものの、同月16日及び17日を除く各日のお会計票の束については、その末葉がそのお会計票の束から取り除かれたため、筆圧痕のある葉が新たに末葉となっていたものと推認される。
 加えて、上記1の(4)のロの(ハ)のとおり、平成22年3月分のお会計票の束の末葉の裏面にも金額の筆圧痕があること、上記ロの(ハ)のとおり、平成23年1月分の日々のお会計票の束並びに平成23年3月17日、同月31日、同年9月13日、同月15日、同年10月6日及び同年11月22日の各日のお会計票の束の末葉の裏面に当該各日のお会計票の束の合計額が記載されていること、平成21年の各月分及び平成22年4月分から同年12月分までのお会計票においても、日々のお会計票の束の末葉の裏面に筆圧痕が残っているお会計票が存在することからすれば、平成23年2月分のお会計票と同様に、これらのお会計票が作成された各月においても、それぞれの束の末葉の裏面に合計額が記載されていたこと、その末葉がそのお会計票の束から取り除かれたため、筆圧痕のある葉が新たに末葉となっていたことが推認される。
 さらに、請求人が本件異議担当者に対して「平成23年1月分のお会計票を集計したのは私です。いくら売上げがあるのだろうかと思い集計しました。」と自ら集計していた月がある旨申述していること、本件店舗の経営者が請求人であり、請求人は本件店舗の経営状況を確認する必要がある立場にあったこと、請求人の他にお会計票を集計する必要があった者は見当たらないことからすると、請求人は、自ら又は本件店舗の従業員に指示して、日々のお会計票を集計していたことが推認される。
 そして、上記のとおり、日々のお会計票の束の末葉の裏面に合計額が記載され又は筆圧痕が残っていること、上記1の(4)のロの(ロ)のとおり、各月合計表は1か月の売上金額、必要経費(経費及び給与額)及び「黒字額」が記載される様式となっており、本件店舗の経営者である請求人としては、最低でも月単位で売上金額や必要経費の額を把握しなければ各月合計表を作成して経営状況を確認できないことからすると、請求人は、お会計票の束の末葉の裏面に合計額が記載され又は筆圧痕が残っている各月について、毎日又は1か月分をまとめてお会計票の集計をしていたことが推認される。

b 上記aのとおり、請求人は、お会計票の束の末葉の裏面に合計額が記載され又は筆圧痕が残っている各月について、毎日又は1か月分をまとめてお会計票を集計していたことに加え、上記(A)のcのとおり、請求人は、本件提示書類の提示時点において、お会計票の一部を取り除いて売上げの一部が除外された平成20年分から平成23年分までの各年分の各月合計表を作成していたものであり、このような売上げの一部の除外行為は真実の売上げを秘匿する効果を有する行為であることに鑑みれば、請求人は、平成20年から平成23年までの各年において、日々のお会計票を集計してその束の末葉の裏面に合計額を記載する方法により、日々及び各月の売上金額を把握するとともに、平成20年分から平成23年分までの各年分の売上金額を把握していたことが推認される。
 そして、平成20年から平成23年までの各年と平成17年から平成19年までの各年とを比較して、まる1本件の全証拠を精査しても、請求人の本件店舗の経営体制に大きな変化があったとは認められず、また、請求人がお会計票の集計を異なる方法で行っていたとみるべき根拠は見当たらないこと、まる2後記Cのとおり、本件p2名義口座へ本件店舗の経費を支払うなどした後の売上金が入金されている状況にも大きな変化はないこと、さらに、まる3請求人は、本件調査担当者及び本件異議担当者に対する各申述並びに当審判所に対する答述において、平成20年より前の時期において日々のお会計票の束が集計されていたことを否定したこともないことからすると、請求人は、平成20年から平成23年までの各年と同様に、平成17年から平成19年までの各年においても、日々のお会計票を集計してその束の末葉の裏面に合計額を記載する方法により、日々及び各月の売上金額を把握するとともに、平成17年分から平成19年分までの各年分の売上金額を把握していたことが推認される。

c 以上からすれば、請求人は、本件各年において、本件店舗の経営者として、日々のお会計票を集計してその束の末葉の裏面に合計額を記載する方法により、本件各年分の売上金額を把握しこれを認識していたことが推認される。

d これに対し、請求人は、当審判所に対し、「大体、年末か年明けに知人に依頼してお会計票を集計してもらっていました。毎年同じ人に集計を依頼していたわけではなく、依頼の際、お会計票のどこをどのように集計するのかという指示もしませんでした。人によって集計の仕方などは違っており、日ごとの売上金額を用紙に記載する人、月の売上金額の合計だけを用紙に記載する人もいました。知人による集計が終わった後、お会計票の束から掛けの入金のお会計票などの売上げとならないお会計票を外して、各月合計表の売上金額を計算していました。」旨答述する。
 しかしながら、本件店舗を経営する請求人は、本件店舗の経営状況を確認するためにも、毎日又は最低でも月単位で日々のお会計票を集計して各年の売上金額を把握する必要があったと考えるのが自然であるところ、請求人は、当審判所に対し、お会計票を年末又は年明けの年に1回しか集計しない合理的な理由を説明していない上、上記答述を前提とすれば、請求人は、お会計票の集計を知人に依頼する際に具体的な集計方法さえ示しておらず、知人による各日又は各月の売上金額の集計後、請求人自らが売上げにならないお会計票を外した上で集計し直して各月合計表を作成するというのであるから、知人に集計を依頼する目的も理解し難いものといえ、その答述内容は、不合理かつ不自然であり、信用することはできない。
 したがって、請求人の上記答述は採用することができず、請求人が、本件各年において、日々のお会計票を集計してその束の末葉の裏面に合計額を記載する方法により、本件各年分の売上金額を把握しこれを認識していた旨の上記認定に影響を及ぼさない。

B 本件提示書類について
 上記Aの(A)のcのとおり、請求人は、本件調査において、まる1平成20年から平成23年までの各年について、日々のお会計票の束から売上げに係る一部のお会計票を取り除いて集計したこと、まる2売上げの一部が除外された内容虚偽の各月合計表を作成したこと、まる3これを本件調査担当者に提示したことが認められるところ、以上の請求人の行為は、平成20年分から平成23年分までの各年分の事業所得の金額の計算の基礎となるべき売上金額について隠ぺい工作を行ったものといえる。
 このように、請求人が本件調査において上記各年分の売上金額の隠ぺい工作を行ったことからすると、請求人は、平成20年分から平成23年分までの各年分において、当初から本件店舗に係る所得税の課税を回避しようとする意図を有していたことが推認される。

C 本件p2名義口座への入金原資について
 上記1の(4)のイの(ロ)のとおり、本件p2名義口座は請求人が管理していた普通預金口座であるところ、上記ロの(ル)のBのとおり、請求人が、本件p2名義口座を介して本件店舗の開業資金を調達していることからすると、請求人は、当初から本件p2名義口座を本件店舗の事業用の口座として使用することを意図していたものと推認される。
 また、上記ロの(リ)のHのとおり、本件p2名義口座へは、証拠上入金原資が判明しているもの(上記ロの(リ)のAからGまでの各入金)を除いて、請求人が本件店舗を開業した平成15年10月の翌月である同年11月9日に現金で600,000円が入金されたのを初めとして、平成16年から平成23年までの各年において、毎月数回の現金による入金があり、年間数百万円から一千万円を超える現金が入金されており、これらの入金手続の一部は、上記ロの(ト)及び(ヌ)のとおり、請求人が日々の現金による売上金を管理し、当該売上金を原資として本件店舗の経費の支払に充てる資金を入金していた本件請求人第一口座への入金手続に併せて行われており、その回数は、平成15年12月から平成23年12月までの97か月間で86回に上っている。
 このように、請求人が当初から本件p2名義口座を事業用の口座として使用することを意図していた状況、本件店舗の開業後に本件p2名義口座への現金による入金が開始され、その後継続して多額の現金が入金されている状況、本件p2名義口座への現金による入金手続の一部が、本件請求人第一口座への本件店舗の売上金を原資とする現金による入金手続に併せて行われている状況が認められることに加え、上記ロの(ル)のEのとおり、本件店舗の開業以降に、請求人が答述する資金(元夫から財産分与を受けた資金、本件店舗の開業時に所持していた資金及び両親から援助を受けた資金)が本件p2名義口座へ入金されたとは認められず、また、本件各期限後申告書及び本件各収支内訳書から、平成19年分から平成23年分までの請求人の所得は本件店舗に係る事業所得のみであったと認められ、その他本件の全証拠を精査しても本件各年において請求人に本件店舗に係る事業所得の収入以外の現金収入があったとは認められないことを併せ考えると、請求人は、本件店舗の開業以降、本件店舗の経費を支払うなどした後の売上金を本件p2名義口座へ入金していたものと認めるのが相当である。

D 本件各年における請求人の行為について
 上記Bのとおり、請求人は、平成20年分から平成23年分までの各年分において、当初から本件店舗に係る所得税の課税を回避しようとする意図を有していたと推認されるところ、上記Cのとおり、請求人は、本件店舗の開業以降、本件店舗の経費を支払うなどした後の売上金を本件p2名義口座へ入金していたこと、そして、上記ロの(ヲ)のとおり、請求人は、本件調査担当者が請求人の自宅に臨場した平成24年7月31日の翌日、子p2に指示して本件p2名義口座を解約したにもかかわらず、本件調査担当者に対しては、当該解約に関与していない趣旨の申述をして、請求人と本件p2名義口座との関連を秘匿する態度を示したこと、さらに、上記ロの(ル)のとおり、請求人は、本件調査担当者に対し、本件p2名義口座へ入金した資金の原資は過去に貯めていた資金や両親から援助を受けた資金であるなどと虚偽の申述をして、本件店舗の売上金と本件p2名義口座との関連を秘匿する態度を貫いたことからすると、請求人は、上記各年分のみならず平成17年分から平成19年分の各年分においても、当初から本件店舗に係る所得税の課税を回避しようとする意図を有していたと推認される。
 また、上記Cのとおり、請求人は、本件店舗の開業に当たり、当初から本件p2名義口座を事業用の口座として使用することを意図し、本件店舗の開業以降平成23年12月31日に至るまで、本件店舗の経費を支払うなどした後の売上金を本件p2名義口座へ入金していたところ、本件p2名義口座が請求人以外の者の名義の口座であり、本件店舗が存するk市ではなくm市に開設された口座であることに照らせば、請求人は、本件p2名義口座の預金が請求人に帰属しないという外観にあること、かつ、本件p2名義口座が本件店舗の遠隔地に開設されたもので本件p2名義口座の存在自体が発覚し難い状況にあることを利用して、本件店舗の経費を支払うなどした後の売上金を本件p2名義口座へ入金していたものと認められる。
 そうすると、請求人は、本件各年分において、上記Aの(B)のとおり、売上金額を認識した上で、当初から本件店舗に係る所得税の課税を回避しようとする意図の下、その存在自体が発覚し難い状況にある本件p2名義口座へ本件店舗の売上金を入金して当該売上金が請求人に帰属しないという外形を作出したものといえ、請求人は、このような方法で本件店舗の売上金について隠ぺいを図ったものと認められる。
 以上から、本件各年分における請求人の行為は、税の賦課徴収を不能又は困難にするような偽計その他の工作に該当する。

E 偽りその他不正の行為について
 上記Dのとおり、本件各年分の所得税に係る請求人の行為は、税の賦課徴収を不能又は困難にするような偽計その他の工作に該当するところ、上記1の(4)のハの(イ)のとおり、請求人は、平成17年分及び平成18年分の所得税の確定申告書を提出せず、平成17年分及び平成18年分の所得税の法定申告期限を徒過したことが認められるから、平成17年分及び平成18年分の所得税に係る請求人の行為は、通則法第70条第4項に規定する「偽りその他不正の行為」に該当する。

(ロ) 請求人の主張について

A 請求人は、上記2の(1)の「請求人」欄のイのとおり、請求人が一部捨てていたお会計票は、掛けの入金や厨房を手伝ってくれた友人が無料でお酒を飲んだ分に係るお会計票であり、売上げに計上すべきものではないから、これにより真実の売上金額を秘匿したことはない旨主張する。
 しかしながら、仮に請求人が一部捨てていたお会計票に、掛けの入金や友人に無料でお酒を提供したものに係るお会計票があったとしても、上記(イ)のAの(A)のcのとおり、請求人は、平成20年分から平成23年分までの各年分について、本件提示書類の提示時点において、日々のお会計票の束から本来売上げに計上すべき一部のお会計票を取り除いていたことが認められ、また、上記(イ)のDのとおり、請求人は、本件各年分の本件店舗の売上金について隠ぺいを図ったことが認められるから、請求人が真実の売上金額を秘匿したことは明らかである。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。

B 請求人は、上記2の(1)の「請求人」欄のロのとおり、本件各年の本件p2名義口座への入金原資は、事業に係る売上金も一部あるが、具体的な時期や金額を特定することはできないものの、大半は、昔から貯めていた金員並びに三度の離婚による財産分与、両親からの援助及び交際相手であるp3からの慰謝料などの援助に係る各金員を自宅に保管して、これを毎月数十万円ずつ小分けにして入金したものであり、事業に係る売上金ではない旨主張する。
 しかしながら、本件p2名義口座へ入金された金員が請求人が主張する金員ではなく本件店舗の経費を支払うなどした後の売上金であることは、上記(イ)のCのとおりである。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。

C 請求人は、上記2の(1)の「請求人」欄のハのとおり、請求人が本件p2名義口座を解約したのは本件調査担当者に対して本件p2名義口座の存在を隠すためではなく、また、請求人が、本件調査担当者に対し、解約したのが請求人でないと申述したことは、本件p2名義口座の存在を隠すための虚偽の答弁ではないから、これらのことから課税の対象となることを回避する意図を推認することはできない旨主張する。
 しかしながら、上記(イ)のDのとおり、請求人は、本件調査担当者が請求人の自宅に臨場した平成24年7月31日の翌日、子p2に指示して本件p2名義口座を解約したにもかかわらず、本件調査担当者に対して、当該解約に関与していない趣旨の申述をして、請求人と本件p2名義口座との関連を秘匿する態度を示したことなどからすると、請求人が本件各年分において当初から本件店舗に係る所得税の課税を回避しようとする意図を有していたことは明らかである。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。

(2) 争点2(原処分庁が採用した所得税に係る推計方法に合理性があるか否か。)
 請求人は、本件各年分の事業所得の金額を推計の方法により算定することについては争わないところ、当審判所の調査の結果によれば、本件調査担当者は、本件提示書類を調査した結果、上記1の(4)のロの(ハ)のとおりの筆圧痕を認め、請求人が一部のお会計票の束から一部のお会計票を外して捨てることにより売上げを除外していることが想定され、筆圧調査を要する状況であり、本件提示書類では各月合計表の売上金額並びに経費及び給与の各金額を検証することができなかったこと、このため、上記1の(4)のロの(ホ)のとおり、本件調査担当者は、本件提示書類を請求人に返却した後も、本件提示書類を含む帳簿書類の提示要求を行ったが、請求人は、事業に係る帳簿書類は捨てた旨申述し、原処分に至るまで本件各年の事業に係る帳簿書類を提示しなかったことが認められ、このような状況下では、原処分庁としては、本件各年分の事業所得の金額を実額により算定することができないので、これらを推計の方法により算定する必要性があったものと認められる。
 また、請求人は、当審判所に対しても、本件各年分の事業所得の金額の計算に必要な本件店舗の収支関係を証する資料を提示せず、また、上記(1)のハの(イ)のAの(A)のとおり、本件提示書類についても、本件お会計票は売上げに係るお会計票が一部取り除かれており、これを基に作成された本件各月合計表は内容虚偽のものであったから、当審判所においても、推計の方法により本件各年分の事業所得の金額を算定せざるを得ない。
 そこで、当審判所において、原処分庁の採用した推計方法の当否を原処分関係資料等により検討したところ、次のとおりである。

イ 推計の合理性の判断基準
 納税者の所得金額を捕捉するのに十分な資料がない場合に合理的な推計の方法により所得金額を算定することは、十分な資料がないというだけで課税を見合わせることが許されないことからいっても、当然に許容されるものである。
 そして、推計の方法による所得金額の算定は、真実の所得金額と合致することが期し難いことをもって違法となることはなく、納税者の所得金額と認めるに足りる真実近似性を保有する一応の合理的な推計の方法をもって算定することで足りると解される。
 また、資産負債増減法は、所得の処分ないし留保の状態から所得の金額を把握しようとするものであって、その年における純資産の増加額はその年の所得により賄われるものであるとの合理的な経験則に基づき、当該純資産の増加額に、その年中に処分(消費)した所得の額を加算し、事業所得以外の収入や非課税所得に該当する額を減算するなどの調整を施して事業所得の金額を算定するものであり、推計の基礎となるべき各項目の金額を正確に把握し得る限り、所得の推計方法として十分な合理性を有するものと解するのが相当である。

ロ 認定事実
 原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。

(イ) 所得税に係る推計方法
 原処分関係資料等から、原処分庁は、所得税に係る推計方法として資産負債増減法を採用し、請求人並びに請求人と生計を一にする子p2及び元夫p8に係るまる1資産及び負債の各年の期首(年初)と期末(年末)の価額を比較するなどして求めた純資産の増加額に、まる2生活費、租税公課等の処分(消費)した所得の額を各年の加算調整項目として加算し、まる3給与収入、障害年金、受取利息等の事業所得以外の収入を各年の減算調整項目として減算して、請求人の本件各年分の事業所得の金額を別表10−1及び別表10−2のまる19欄の各金額のとおり算定したことが認められるところ、原処分庁が認定した上記各項目及び金額(原処分庁主張額)について、次の事実が認められる。

A 純資産の増加額
 原処分庁は、平成16年及び本件各年の期末において、請求人、子p2及び元夫p8は負債を有していなかったと認定した上で純資産の額を算定し、本件各年の期末の純資産の額から期首の純資産の額を差し引いて純資産の増加額を算定しているところ、その算定の基となった資産の種類及び当該各期末の価額は、次のとおりである。

(A) 預貯金
 次の各口座に係る平成16年及び本件各年の12月31日現在の預貯金の残高であり、当該残高は別表11−1及び別表11−2のとおりである。

a 本件請求人第一口座

b 本件p2名義口座

c x1銀行○○支店の元夫p8名義の普通預金口座(番号○○○○。平成19年1月24日開設。以下「本件p8第一口座」という。)

d x5信用金庫本店営業部の元夫p8名義の普通預金口座(番号○○○○。平成21年3月18日開設。以下「本件p8第二口座」という。)

e x6銀行k支店の請求人名義の普通預金口座(番号○○○○。平成20年8月4日開設。以下「本件請求人第二口座」という。)

f x6銀行k支店の子p2名義の普通預金口座(番号○○○○。平成21年3月30日開設。以下「本件p2第一口座」という。)

g x7銀行の子p2名義の通常貯金口座(記号番号○○○○。平成23年8月23日開設。以下「本件p2第二口座」という。)

(B) 土地
 売主をp11、買主を請求人、売買する不動産をk市○町○−○の土地(以下「本件土地」という。)、代金を13,000,000円として締結された不動産売買契約により、請求人が平成20年3月7日に13,000,000円で買い受けた自宅の土地である。

(C) 建物等

a 建物
 注文者を請求人、請負者をS社、建築場所を本件土地、構造等を木造枠組壁工法2階建て建物、代金を27,579,775円、工事名称を「p1(請求人)様邸新築工事」として平成21年11月1日に締結された建物の建築工事請負契約により、請求人が平成22年6月14日に29,085,000円(建物附属設備の代金及び建築工事に係る諸費用を含む。)で取得した自宅の建物(以下「本件建物」という。)である。

b 契約金
 請求人が、平成21年11月1日にS社へ支払った、上記aの建築工事請負契約に係る契約金2,000,000円であり、最終的には、上記aの本件建物の取得価額に含まれるものである。

c 外構工事
 請求人が、平成22年12月21日にS社へ支払った、上記aの建築工事請負契約に含まれない本件建物に係る外構工事代金1,869,000円である。
 以下、上記aの建築工事請負契約により請求人が取得した本件建物及び上記の外構工事により請求人が取得した構築物を併せて「本件建物等」という。

B 加算調整項目

(A) 生活費の額
 家計調査年報の「消費支出」の額を基に算定した本件各年分の請求人に係る生活費の額で、本件各年における請求人の世帯人員を、平成17年1月から平成21年2月までの期間は請求人及び子p2の2名、同年3月から同年9月までの期間は請求人、子p2及び元夫p8の3名、同年10月から平成23年12月までの期間は請求人及び子p2の2名であったとして、本件各年における当該世帯人員数に、家計調査年報の当該世帯人員に対応する1か月の「消費支出」の額(当該期間別の世帯人員に応じた1か月の金額は次のとおりである。)に該当する月数を乗じて算定した額であり、本件各年分の生活費の額は、別表10−1及び別表10−2のまる10欄の各金額のとおりである。

a 平成17年1月から同年12月までが258,167円(世帯人員2名)

b 平成18年1月から同年12月までが254,610円(世帯人員2名)

c 平成19年1月から同年12月までが258,916円(世帯人員2名)

d 平成20年1月から同年12月までが258,123円(世帯人員2名)

e 平成21年1月から同年2月まで及び同年10月から同年12月までが253,318円(世帯人員2名)

f 平成21年3月から同年9月までが295,673円(世帯人員3名)

g 平成22年1月から同年12月までが253,367円(世帯人員2名)

h 平成23年1月から同年12月までが251,783円(世帯人員2名)

(B) 租税公課等の額
 本件各年分における次の租税公課等の額であり、それぞれの内訳及び合計額は別表12の「租税公課等の額」欄のとおりである。

a 子p2が勤務先であるT社から支給された給与から源泉徴収された所得税

b 子p2がT社から支給された給与から特別徴収された市県民税

c 請求人がk市に対して納付した固定資産税

d 請求人がn県に対して納付した自動車税

e 請求人がn県に対して納付した上記dの自動車税に係る延滞金

f 子p2がn県に対して納付した自動車税

g 子p2がk市に対して納付した軽自動車税

h 請求人がn県に対して納付した不動産取得税

i 請求人がk市に対して納付した国民健康保険税

j 子p2がT社から支給された給与から特別徴収された社会保険料

(C) 保険料等の額
 本件各年分における次の保険料の支払額及びローンの分割支払金であり、それぞれの内訳及び合計額は、別表12の「保険料等の額」欄のとおりである。

a 請求人がn県民共済生活協同組合(以下「n県民共済」という。)に対して支払った生命共済及び火災共済の掛金

c 子p2がx2損保に対して支払った自動車の損害保険料

d 請求人がU社(平成21年○月○日、○○社及び○○社の2社と合併して、V社となった。以下、合併の前後を通じて「V社」という。)に対して支払った自動車ローンに係る分割支払金

C 減算調整項目

(A) 給与収入の額
 子p2が平成21年4月1日にT社に入社して以降、T社から支給を受けた給与収入の額であり、平成21年分から平成23年分までの各年分における給与の額は、別表10−2のまる14欄の各金額のとおりである。

(B) 障害年金の額
 元夫p8が平成21年3月以降に支給を受けた障害年金の額であり、平成21年分から平成23年分までの各年分における障害年金の額は、別表10−2のまる12欄の各金額のとおりである。

(C) 受取利息の額
 本件各年分における上記Aの(A)の各預貯金に係る受取利息の額であり、それぞれの内訳及び合計額は、別表13の「受取利息の額」欄のとおりである。

(D) 給付金等の額
 本件各年分における次の給付金等の額であり、それぞれの内訳及び合計額は、別表13の「給付金等の額」欄のとおりである。

a 請求人がk市から受け取った児童扶養手当

b 請求人がk市から受け取った定額給付金及び医療費償還給付金

c 請求人がk市から受け取った浄化槽設置整備事業に係る補助金

d 元夫p8がk市から受け取った障がい者福祉年金

e 請求人が学校法人Xから受け取った学納金減免制度に基づく補助金

f 請求人がn県民共済から受け取った割戻金

g 請求人及び子p2がx2損保から受け取った返戻金

h 請求人がY社から受け取った車両の売却代金

i 元夫p8が平成21年3月9日以降、p12等から受け取った本件p8第一口座への振込金

(ロ) 不動産取得資金の支払

 本件土地に係る不動産売買契約書及び登記事項証明書、本件建物に係る建築工事請負契約書及びS社作成の平成22年6月14日付の精算書並びにS社の総勘定元帳から、請求人は、平成20年3月7日に本件土地を13,000,000円で、平成22年6月14日に本件建物を29,085,000円で、同年12月21日に外構工事に係る構築物を1,869,000円でそれぞれ取得したことが認められるところ、本件p2名義口座の普通預金取引明細表及び請求人の当審判所に対する答述から、請求人は、本件土地及び本件建物等の各取得代金を本件p2名義口座の預金からそれぞれ支払ったことが認められる。

(ハ) 子p2及び元夫p8が請求人と別居していた期間

A 子p2
 n県m○○所長作成の平成25年9月20日付の「回答について」と題する書面(当審判所の照会に対する回答文書)から、子p2は、平成15年9月18日から平成18年3月23日までの期間、○市○町出所在の「q院」(○○施設)に入所していたこと、そのため上記期間において、子p2は請求人と別居していたことが認められる。
 ところで、請求人は、本件異議担当者に対し、「子p2は19歳になった年から会社勤めとなり、家に帰ったり帰らなかったりになりました。平成24年7月に元夫p8が帰ってきた時から私の実家に帰るようになりました。」旨申述しているところ、子p2は、本件調査担当者に対し、「現在は、請求人と同居していません。平成24年7月頃までは同居していましたが、家を出て、結婚を予定している女性のアパートに住んでいます。」旨申述しており、請求人の上記申述は、請求人が元夫p8と同居を再開した平成24年7月以降、子p2と別居するようになったというもので、その時期が後記Bの元夫p8が○○施設を出所した時期及び子p2が申述する時期と符合し、その内容も具体的かつ自然で信用できるから、請求人と子p2は、子p2が「q院」を出所した平成18年3月下旬から平成24年7月頃まで同居していたことが認められる。
 これに対し、請求人は、子p2との同居状況について、当審判所に対し、「子p2は、高校に入ってからは、私の実家の方が高校への交通の便がよかったので、平成18年4月頃から実家に住んで高校に通っていたため、その間は子p2と同居していません。」旨答述し、母p10もこれに沿う答述をしている。
 しかしながら、請求人は、本件異議調査の段階までは平成24年7月頃までは子p2と同居していた旨申述していたにもかかわらず、当審判所に対する答述において上記申述を変遷させたものであり、子p2の上記申述と矛盾するものとなっている上、この変遷理由について合理的な説明をしていないことからすると、請求人の上記答述を信用することはできない。
 また、これと同旨の母p10の答述も、子p2の上記申述と矛盾する内容である上、上記(1)のロの(ル)のDの(C)のcのとおり母p10が請求人の答述にあえて合わせる内容の答述をしたことがあったことからみれば、信用することはできない。
 したがって、請求人及び母p10の上記各答述は、請求人と子p2が平成18年3月下旬から平成24年7月頃まで同居していた旨の上記認定に影響を及ぼさない。

B 元夫p8
 r○○所長作成の平成25年3月28日付の「在所の証明について(回答)」と題する書面(異議審理庁の照会に対する回答文書)から、元夫p8は、平成21年9月25日から平成24年7月24日までの期間、○○施設に入所していたこと、そのため当該期間において元夫p8は請求人と別居していたことが認められる。

(ニ) n県民共済と締結された生命共済及び火災共済に係る契約
 本件請求人第一口座の普通預金取引明細表、異議審理庁がn県民共済に対して行った生命保険等照会に対する平成25年3月12日付及び同月19日付のn県民共済の各回答並びにn県民共済作成の「生命共済ご加入のしおり」及び「新型火災共済ご加入のしおり」から、請求人は、n県民共済との間で、生命共済契約及び火災共済契約をそれぞれ締結し、本件各年において、それぞれの掛金として別表12のまる12欄の各金額(各掛金の合計額)を支払ったこと、当該生命共済契約及び火災共済契約は、いずれも共済期間を1年間とするいわゆる掛け捨て型の共済契約であったことが認められる。

(ホ) x2損保と締結された損害保険契約
 本件請求人第一口座の普通預金取引明細表、x6銀行k支店作成の本件p2第一口座の「取引明細個別照会」及びx2損保作成の平成25年3月18日付の回答書(異議審理庁の照会に対する回答文書)から、請求人及び子p2は、x2損保との間で、それぞれ、名称を「自動車保険」、保険の目的物を請求人又は子p2の自動車、保険料を月払いとする損害保険契約を締結し、本件各年において、損害保険料としてそれぞれ別表12のまる13欄、まる14欄の各金額を支払ったこと、当該損害保険契約は、任意加入の保険契約であったことが認められる。

(ヘ) 請求人が締結した自動車ローン契約
 請求人とZ社との間で作成された申込日を平成18年6月18日とする「sオートローン契約書兼保証委託契約書」及びV社作成の平成25年10月4日付の「回答書」と題する書面(当審判所の照会に対する回答文書)から、請求人は、平成18年6月18日、Z社との間で、割賦元金を2,310,000円、分割払手数料を63,423円、合計2,373,423円を60回の分割により支払う旨の自動車ローンを設定して自家用自動車を取得していること、Z社から当該自動車ローンに係る分割支払金の集金業務を委託されたV社に対し、当該契約に係る分割支払金を支払ったことが認められる。

(ト) 消費税に係る推計方法
A 原処分関係資料から、原処分庁は、消費税に係る推計方法として類似同業者比率法を採用し、請求人が本件店舗で提供する酒類を仕入れていたR社からの仕入金額を基礎数値として、まる01m税務署の管轄区域内において年間を通じてスタンドバーを営む個人事業者であること、まる02青色申告書の提出の承認を受けた者であること、まる3酒屋からの仕入金額がいわゆる倍半基準(請求人の仕入金額の2分の1以上2倍以下という基準)の範囲内の者であることという抽出基準を設定し、当該仕入金額に当該抽出基準により選定された類似同業者の平均酒屋倍率を乗じて売上金額を算定し、当該売上金額に105分の100を乗じて、請求人の消費税の課税標準額を算定したことが認められる。

B 上記Aのとおり、原処分庁は、R社からの仕入金額を基礎数値としているところ、当審判所が本件経費領収証等を調査した結果によれば、本件経費領収証等の中に、日付を平成23年3月12日、購入先をt○○店(ディスカウントストア)、品名及び金額を「白鶴さけパックまる 978円」とするレシートが含まれていることが認められる。
 そうすると、請求人は、R社以外からも酒類の仕入れをしていたことが認められる。

ハ 判断

(イ) 争点について
 原処分庁は、本件各年分の事業所得の金額を資産負債増減法により算定しているところ、上記イのとおり、資産負債増減法は、所得の処分ないし留保の状態から所得の金額を把握しようとするものであって、その基礎となるべき各項目の金額を正確に把握し得る限り、所得の推計方法として十分な合理性を有すると解される。
 そこで、原処分庁が採用した資産負債増減法の基礎となる各項目及び金額について検討すると、次のとおりである。

A 基礎となる各項目の範囲
 上記ロの(イ)のとおり、原処分庁は、請求人、子p2及び元夫p8に係る資産、負債及び処分(消費)した所得から、資産負債増減法におけるその基礎となる各項目の金額を算定しているところ、納税者に生計を一にする親族がある場合には、一般に、生活費等の支出すなわち所得の処分(消費)が一体としてなされるため、両者の資産及び負債は、混在し、また、相互に関連して増減することとなるから、その生計内の特定の者に係る資産、負債及び処分(消費)した所得を他の者のものと明瞭に区分して、推計の基礎となるべき各項目の金額を正確に把握することは困難であるから、このような場合においては、両者の資産、負債及び処分(消費)した所得を区分せずに推計の基礎とした上で、各種調整を加え、その際に当該納税者と生計を一にする者に係る固有の収入等を控除するなどの調整を施すことによって、当該納税者の事業所得の金額を算出する方法を採るのが合理的である。
 これを本件についてみると、本件各年において、子p2及び元夫p8(請求人と婚姻した平成21年3月9日以降)が請求人と生計を一にしていたことについては、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所においても相当と認められるから、原処分庁が、請求人、子p2及び元夫p8に係る資産、負債及び処分(消費)した所得から、資産負債増減法におけるその基礎となる各項目の金額を算定したことは相当と認められる。

B 純資産の増加額

(A) 純資産の額

a 資産の額

(a) 上記ロの(イ)のAのとおり、原処分庁は、請求人、子p2及び元夫p8の各名義の別表11−1及び別表11−2のまる01欄からまる07欄までの預貯金口座の平成16年及び本件各年の期末の残高のほか、請求人が取得した本件土地及び本件建物等の取得価額を基に、当該各年の期末の資産の額を別表10−1及び別表10−2の「資産」欄のまる01欄からまる05欄までのとおり算定しているところ、本件p2名義口座は、上記(1)のハの(イ)のCのとおり本件各年における本件店舗の経費を支払うなどした後の売上金が入金されていたものであるから、本件各年の預金の増加額の算定上は請求人の口座(資産)として整理され、また、本件p2第一口座、本件p2第二口座、本件p8第一口座及び本件p8第二口座はいずれも請求人と生計を一にする親族の口座であると認められるから、原処分庁が、平成16年及び本件各年の期末の資産の額の算定上、別表10−1及び別表10−2の「資産」欄のまる01欄からまる05欄までの資産の額を算定したこと及び上記のとおり算定した資産の額は、当審判所においても相当と認められる。
 なお、本件p8第一口座の普通預金取引明細表から、本件p8第一口座には平成20年12月31日現在で110円の残高があったと認められるが、同日時点において、元夫p8と請求人とは生計を一にしていなかったものであるから、平成20年の期末の資産の額の算定上、当該残高を考慮する必要はない。

(b) ところで、上記ロの(ヘ)のとおり、請求人は、平成18年に自家用自動車を取得しているが、原処分庁は、上記(a)の各年の期末の資産の額の算定に当たり、当該自動車を資産に加えていないので、この点について検討するに、上記ロの(イ)のBの(A)のとおり、原処分庁は、資産負債増減法の採用に当たり、加算調整項目とすべき本件各年分の生活費の額を家計調査年報の「消費支出」の額を基に算定しているところ、この「消費支出」の額には、「自動車等関係費」として自動車の購入費が含まれているから、本件各年分の生活費の額を家計調査年報の「消費支出」の額を基に算定する限りにおいて、平成18年以降の期末の資産の額の算定上、請求人が取得した自動車を考慮する必要はない。

(c) また、原処分庁は、上記(a)の各年の期末の資産の額の算定に当たり、現金の有り高を考慮していないところ、現金は、特段の事情がない限り、その性質上余分に手許に置くものではなく、期首期末とも大きな差がないのが通常であり、また、上記(1)のロの(ル)のEのとおり、請求人が、本件各年において、元夫から財産分与を受けた資金、本件店舗の開業時に所持していた資金及び両親から援助を受けた資金を所持していたとは認められないから、現金の有り高を考慮していなくても、期末の資産の額に影響を及ぼさない。

b 負債の額
 上記ロの(イ)のAのとおり、原処分庁は、平成16年及び本件各年の期末において、請求人、子p2及び元夫p8は負債を有していなかったと認定し、当該各年の期末の負債の額を別表10−1及び別表10−2の「負債」欄のとおりいずれも零円と認定している。
 ところで、上記ロの(ヘ)のとおり、請求人は、平成18年に、自動車の購入資金について、割賦元金の額を2,310,000円とするローンを設定しているので、この点について検討するに、上記aの(b)のとおり、家計調査年報の「消費支出」の額には、「自動車等関係費」として自動車の購入費が含まれているから、本件各年分の生活費の額を家計調査年報の「消費支出」の額を基に算定する限りにおいて、平成18年以降の期末の負債の額の算定上、当該ローンを考慮する必要はない。
 そして、本件の全証拠を精査しても、本件各年において、上記ローンのほかに、請求人、子p2及び元夫p8に考慮すべき負債があったとは認められないから、原処分庁の上記認定は相当と認められる。

c 純資産の額
 上記a及びbで認定したことからすれば、平成16年及び本件各年の期末の資産の額が当該各年の期末の純資産の額となるから、原処分庁が別表10−1及び別表10−2のまる08欄の各金額を当該各年の期末の純資産の額と認定したことは、当審判所においても相当と認められる。

(B) 純資産の増加額
 原処分庁は、本件各年分の純資産の増加額について、本件各年の期末の純資産の額と期首の純資産の額(前年の期末の純資産の額)とを比較して、別表10−1及び別表10−2のまる09欄の各金額のとおり認定しているところ、原処分庁の上記認定は、当審判所においても相当と認められる。
 また、上記のとおり、原処分庁が認定した純資産の増加額は相当と認められるところ、別表10−1及び別表10−2の「資産」欄の状況(まる01欄の預貯金については、別表11−1及び別表11−2の状況)から、本件各年分において純資産が増加した要因は、本件p2名義口座の預金残高が増加し、また、請求人が平成20年及び平成22年に本件土地、本件建物等を取得したことにあると認められる。
 そして、本件p2名義口座の預金残高の推移は、平成17年から平成19年まで及び平成23年は増加し、平成20年及び平成22年は減少しているが、上記ロの(ロ)のとおり、請求人は、平成20年に取得した本件土地及び平成22年に取得した本件建物等の各代金(別表10−2の「平成21年分」欄のまる03欄の本件建物の建築工事請負契約に係る契約金2,000,000円を含む。)を本件p2名義口座の預金で支払ったことからすると、本件各年分における純資産の増加の主要因は、本件p2名義口座の預金残高の増加であると認められる。

C 加算調整項目

(A) 生活費の額
 上記ロの(イ)のBの(A)のとおり、原処分庁は、本件各年の請求人の世帯人員及び家計調査年報の「消費支出」の額を基に本件各年分の請求人に係る生活費の額を算定しているところ、家計調査年報における家計調査は、統計法第2条《定義》第4項に規定する基幹統計の一つであり、総務省統計局が、国民生活における家計収支の実態を毎月明らかにすることを目的として、一定の統計上の抽出方法に基づき選定された全国約9,000世帯を調査対象として、家計の収入、支出、貯蓄及び負債などを毎月調査し、その調査結果を公表するというものであって、その調査結果は、調査対象とされた世帯の標準的な家計収支等に関する統計として信頼性が高いものとされており、その数値の合理性及び客観性は、相当程度担保されていると認められるから、原処分庁が、本件各年分の請求人に係る生活費の額を家計調査年報の「消費支出」の額を基に算定したことには合理性がある。
 ところで、上記ロの(イ)のBの(A)のとおり、原処分庁は、本件各年分の生活費の額の算定に際し、本件各年の請求人の世帯人員は、平成17年1月から平成21年2月までの期間は請求人及び子p2の2名、同年3月から同年9月までの期間は請求人、子p2及び元夫p8の3名、同年10月から平成23年12月までの期間は請求人及び子p2の2名であったとしているところ、上記ロの(ハ)のとおり、子p2は、平成15年9月18日から平成18年3月23日までの期間、元夫p8は、平成21年9月25日から平成24年7月24日までの期間、それぞれ請求人と別居していたことが認められる。
 そして、家計調査年報における世帯人員の判定に関して、家計調査規則(昭和50年11月12日総理府令第71号)第3条《定義》第1項が「世帯とは、住居及び生計を共にする者の集まりをいう。」旨規定し、総務省統計局の「家計調査 用語の解説」によれば、「世帯員とは世帯主とその家族をいうが、家族であっても別居中の人は含めない。」とされていることからすれば、本件各年分の生活費の額の算定上、子p2及び元夫p8が請求人と別居していた期間は、両者を世帯人員に加えるべきではなく、本件各年の請求人の世帯人員は、平成17年1月から平成18年3月までの期間は請求人のみ、平成18年4月から平成21年2月までの期間は請求人及び子p2の2名、平成21年3月から同年9月までの期間は請求人、子p2及び元夫p8の3名、平成21年10月から平成23年12月までの期間は請求人及び子p2の2名とするのが相当である。

(B) 租税公課等の額
 上記ロの(イ)のBの(B)のとおり、原処分庁は、本件各年分の租税公課等の額について、別表12の「租税公課等の額」欄のとおり認定しているところ、これらの各項目は、税金や社会保険料など世帯の自由にならない支出として家計調査年報の「非消費支出」(「直接税」又は「社会保険料」)に分類され、「消費支出」の額に含まれていないから、原処分庁が別表12のまる01欄からまる10欄までの各項目を租税公課等として加算調整項目としたこと及び各項目の額を上記のとおり認定したことは、当審判所においても相当と認められる。

(C) 保険料等の額
 上記ロの(イ)のBの(C)のとおり、原処分庁は、本件各年分の保険料等の額について、別表12の「保険料等の額」欄のとおり認定しているところ、各項目の適否については、次のとおりである。

a 請求人がn県民共済に対して支払った生命共済及び火災共済の掛金(別表12のまる12欄の金額)

 上記ロの(ニ)のとおり、請求人がn県民共済との間で締結した生命共済契約及び火災共済契約は、いずれもいわゆる掛け捨て型の共済契約であり、当該各共済契約に基づいて支払われた掛金は、家計調査年報上、それぞれ「火災・地震保険料」、「非貯蓄型保険料」に分類され、いずれも「消費支出」の額に含まれている。

b 請求人及び子p2がx2損保に対して支払った自動車の損害保険料(別表12のまる13及びまる14の各欄の金額)

 上記ロの(ホ)のとおり、請求人及び子p2がそれぞれx2損保との間で締結した損害保険契約は、任意加入の保険契約であり、家計調査年報上、「自動車保険料(任意)」に分類され、「消費支出」の額に含まれている。

c 請求人がV社に対して支払った自動車ローンに係る分割支払金(別表12のまる12欄の金額)

 上記ロの(ヘ)のとおり、請求人がV社に支払った分割支払金に係る自動車ローン契約は、請求人の自家用自動車の購入に係るローン契約であるところ、上記Bの(A)のbのとおり、本件各年分の生活費の額を家計調査年報の「消費支出」の額を基に算定する限りにおいて、平成18年以降の期末の負債の額の算定上、当該ローンを負債として考慮しないのであるから、当該ローンの返済金である請求人がV社に対して支払った分割支払金も加算調整項目として考慮する必要はない。

d 小括
 以上のとおり、まる01請求人がn県民共済に対して支払った生命共済及び火災共済の掛金の額並びに請求人及び子p2がx2損保に対して支払った自動車の損害保険料の額は、いずれも家計調査年報の「消費支出」の額に含まれており、また、まる02請求人がV社に対して支払った自動車ローンの分割支払金は、加算調整項目とする必要はないから、原処分庁が認定した保険料等の額については、いずれも加算調整項目から除外するのが相当である。

(D) まとめ
 上記(A)から(C)までのとおり、原処分庁が認定した加算調整項目は、加算した項目の一部に誤りが認められるものの、他の各項目の内容は、資産負債増減法において加算すべき処分(消費)した所得の額として相当であると認められるから、上記各誤りを是正した後の各項目及び金額は、資産負債増減法における加算調整項目として相当と認められる。

D 減算調整項目
 上記ロの(イ)のCのとおり、原処分庁が認定した減算調整項目は、まる01子p2の給与収入の額、まる02元夫p8の障害年金の額、まる03請求人、子p2及び元夫p8の各名義の預貯金に係る受取利息の額、まる04請求人及び元夫p8がk市等から受けた各種給付金、割戻金等であり、これらはいずれも請求人の事業に基づき受領したものとは認められず、減算調整項目として相当であると認められるから、各項目及び金額は、資産負債増減法における減算調整項目として相当と認められる。
 また、本件p8第一口座の普通預金取引明細表から、元夫p8が請求人と婚姻し、生計を一にするようになったと認められる平成21年3月9日の前日である同月8日の時点において、本件p8第一口座には8,487円の預金残高があったことが認められるところ、本件のように、資産負債増減法において、請求人と生計を一にする者の資産、負債及び処分(消費)した所得を区分せずに推計の基礎とする場合には、請求人と生計を一にするまでの元夫p8の預金は、元夫p8固有のものであるから、上記預金残高8,487円は、平成21年分の減算調整項目に加えるのが相当である。
 そうすると、原処分庁が認定した減算調整項目に上記預金残高を加えた後の減算調整項目の各項目及び金額は、資産負債増減法における減算調整項目として相当と認められる。

E 資産負債増減法の合理性
 上記イのとおり、資産負債増減法は、所得の処分ないし留保の状態から所得の金額を把握しようとするものであって、その基礎となる計算要素の正確性が担保される限り、真実の所得に近似した数値が算出される客観性を備えた方法ということができるところ、上記BからDまでのとおり、原処分庁が認定した資産負債増減法における純資産の増加額、加算調整項目及び減算調整項目については、一部の加算調整項目及び減算調整項目の内容に誤りが認められるものの、これらはいずれも是正可能なものであって、純資産の増加額並びに加算調整項目及び減算調整項目のその他の内容及び金額はいずれも相当と認められるから、一部の誤りを是正した後の純資産の増加額、加算調整項目及び減算調整項目により算出された所得金額は、正確性が担保された計算要素に基づき算出された所得金額ということができる。
 以上から、原処分庁が採用した所得税に係る推計方法には合理性があるというべきである。

(ロ) 請求人の主張について

A 請求人は、上記2の(2)の「請求人」欄のイのとおり、原処分庁は、請求人の消費税の課税標準額を調査により把握した酒屋からの仕入金額を基礎として推計の方法により算定しており、請求人の酒屋からの仕入金額を把握していたのであるから、請求人の事業所得の金額を推計するに当たっても、当該仕入金額を基礎として、類似同業者の平均酒屋倍率及び当該類似同業者の平均所得率を用いた方法(類似同業者比率法)を用いるべきである旨主張する。
 確かに、請求人が主張する類似同業者比率法も一般的に推計方法としては合理性があるものの、本件においては、上記ロの(ト)のBのとおり、請求人がR社以外からも酒類の仕入れをしていたことから、類似同業者比率法で推計する場合の基礎数値となる酒類の仕入金額には僅かではあるが把握漏れが存在するのに対し、資産負債増減法は、上記(イ)のBの(B)のとおり、純資産の増加額が、請求人が本件店舗の売上金を入金していた本件p2名義口座の預金の増加額で測定され、上記(イ)のEのとおり、純資産の増加額並びに加算調整項目及び減算調整項目の各金額は正確性が担保されたものであるから、資産負債増減法による方が、請求人の真実の所得金額に近似した所得金額が算定される。
 そうすると、請求人の事業所得の金額を推計するに当たっては、資産負債増減法を採用するのがより合理的である。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。

B 請求人は、上記2の(2)の「請求人」欄のロのとおり、まる01本件p2名義口座の入金原資は、事業に係る売上金でないものが大半であること、まる02請求人は、質素な生活をしており、生活費として費消する額がほとんどなく、また、原処分庁の生活費の認定において、子p2の生活状況からみて認定誤りがあるなど原処分庁の算定した生活費の額が請求人の実情とかけ離れた高額なものであることから、推計の基礎事実が正確に把握されていない旨主張する。
 しかしながら、本件p2名義口座への入金原資が本件店舗の経費を支払うなどした後の売上金であると認められることは、上記(1)のハの(イ)のCのとおりであり、また、上記(イ)のCの(A)のとおり、本件各年分の生活費の額を実額により算定できない本件において、子p2の同居状況における原処分庁の認定誤りを是正した上で、請求人の生活費の額を家計調査年報に基づき算定することには、合理性があると認められる。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。

(3) 争点3(本件各年分の所得税に係る請求人の行為は、通則法第68条第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たすか否か。)

イ 法令解釈
 通則法第68条第2項に規定する重加算税は、通則法第66条第1項に規定する無申告加算税を課すべき納税義務違反が事実の隠ぺい又は仮装という不正な方法に基づいて行われた場合に、違反者に対して課される行政上の措置であって、故意に納税義務違反を犯したことに対する制裁ではないから、通則法第68条第2項による重加算税を課し得るためには、納税者が故意に課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺい、仮装行為を原因として無申告の結果が発生したものであれば足りるものと解するのが相当である。

ロ 判断

(イ) 争点について
 上記(1)のハの(イ)のDのとおり、請求人は、本件各年分において、売上金額を認識した上、当初から本件店舗に係る所得税の課税を回避しようとする意図の下、その存在自体が発覚し難い状況にある本件p2名義口座へ本件店舗の売上金を入金して当該売上金が請求人に帰属しないという外形を作出して、本件店舗の売上金について隠ぺいを図ったものであるところ、以上の請求人の行為は、故意に課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装したことに該当する。
 そして、請求人は、上記隠ぺいし、又は仮装したところに基づき、上記1の(4)のハのとおり、本件各年分の所得税の確定申告書を法定申告期限までに提出せず、法定申告期限後に本件各期限後申告書を提出したものであるから、本件各年分の所得税に係る請求人の行為は、通則法第68条第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たす。

(ロ) 請求人の主張について
 請求人は、上記2の(3)の「請求人」欄のとおり、原処分庁の認定には誤りがあり、請求人は、本件各年分において、課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装する行為をしていないから、通則法第68条第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たさない旨主張する。
 しかしながら、本件各年分の所得税に係る請求人の行為が通則法第68条第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たすことは、上記(イ)のとおりである。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。

(4) 争点4(請求人は、消費税法第30条第7項に規定する「課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等を保存しない場合」に該当するか否か。)

イ 認定事実
 請求人は、本件異議担当者に対し、「本件調査時に保存していた書類は、本件提示書類が全てです。各月合計表及び各月経費内訳表が帳簿です。」旨申述しているところ、当審判所が、請求人が帳簿と申述する本件各課税期間に係る各月合計表及び各月経費内訳表の内容を検討したところ、次の事実が認められる。

(イ) 各月合計表
 上記1の(4)のロの(ロ)のまる02のとおり、各月合計表は、各月の従業員別の給料の金額(半月ごとの金額)及びこれらの合計額が記載されているほか、1か月の売上金額、1か月の経費の金額、1か月の給料の金額及び1か月の黒字額が記載されているところ、1か月の経費の金額について、合計額は記載されているものの、まる01請求人が各経費を支出したとする取引の相手方の氏名又は名称、まる02当該取引を行った年月日、まる03当該取引に係る資産又は役務の内容、まる04当該取引に係る支払対価の額は記載されていない。

(ロ) 各月経費内訳表
 上記1の(4)のロの(ロ)のまる03のとおり、各月経費内訳表は、各月の経費の種類ごとの金額及びこれらの合計額が記載されているところ、経費の種類ごとの金額は、家賃、酒代、食品、雑費等が「品名」として記載され、当該各「品名」ごとの合計額は記載されているものの、まる01請求人が各経費を支出したとする取引の相手方の氏名又は名称、まる02当該取引を行った年月日、まる03当該取引に係る資産又は役務の内容、まる03当該取引に係る支払対価の額は記載されていない。

ロ 判断

(イ) 争点について
 消費税法第30条第7項及び第8項の各規定から、事業者が課税仕入れを行った日の属する課税期間の課税仕入れの消費税額の控除に係る「帳簿及び請求書等」を保存しない場合には、当該課税期間について課税仕入れに係る消費税額の控除を行う旨の同条第1項の規定は適用しないこととなり、そして、「帳簿」といえるには、まる01課税仕入れの相手方の氏名又は名称、まる02課税仕入れを行った年月日、まる03課税仕入れに係る資産又は役務の内容、まる04課税仕入れに係る支払対価の額が記載されていることが要件とされている。
 これを本件についてみると、上記イのとおり、本件各課税期間に相当する平成20年分から平成22年分までの各月合計表及び各月経費内訳表は、いずれも、まる01請求人が各経費を支出したとする取引の相手方の氏名又は名称、まる02当該取引を行った年月日、まる03当該取引に係る資産又は役務の内容、まる04当該取引に係る支払対価の額が記載されていないから、いずれも消費税法第30条第8項に規定する「帳簿」の要件を満たさず、その他本件の全証拠を精査しても、他に請求人について「帳簿」の要件を満たすものは見当たらない。
 したがって、請求人は、消費税法第30条第7項に規定する「課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等を保存しない場合」に該当する。

(ロ) 請求人の主張について
 請求人は、上記2の(4)の「請求人」欄のとおり、本件提示書類には、月ごとの支払科目別の合計金額等を記載しているものもあるから、消費税法第30条第7項に規定する「帳簿及び請求書等」として足りるものである旨主張する。
 しかしながら、請求人が保存していた本件各課税期間に相当する平成20年分から平成22年分までの各月合計表及び各月経費内訳表が、いずれも消費税法第30条第8項に規定する「帳簿」の要件を満たさないことは、上記(イ)のとおりである。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。

(5) 本件所得税各更正決定処分

 上記(1)のハの(イ)のEのとおり、平成17年分及び平成18年分の所得税に係る請求人の行為は、通則法第70条第4項に規定する「偽りその他不正の行為」に該当し、偽りその他不正の行為により、請求人は当該各年分の所得税の確定申告書を法定申告期限までに提出しないことで税額を免れていたと認められるから、本件所得税各更正決定処分が行われた平成24年12月26日の時点で、原処分庁は、平成17年分以降の所得税について決定処分又は更正処分を行うことができる。

イ 事業所得の金額
 上記(2)のハの(イ)のEのとおり、原処分庁が資産負債増減法を用いて請求人の事業所得の金額を推計することは、合理性があると認められるが、原処分庁の用いた資産負債増減法の一部の項目には誤りがあると認められる。
 そこで、当審判所において、資産負債増減法を用いて請求人の本件各年分の事業所得の金額を算定すると、次のとおりとなる。

(イ) 純資産の増加額

 本件各年の資産、負債及び純資産の額並びに本件各年分の純資産の増加額は、原処分庁主張額とそれぞれ同額であり、本件各年分の純資産の増加額は、別表14−1及び別表14−2のまる09欄の各金額のとおりである。

(ロ) 加算調整項目

A 生活費の額
 本件各年分の生活費の額は、本件各年の請求人の世帯人員を、上記(2)のハの(イ)のCの(A)のとおり、平成17年1月から平成18年3月までの期間は請求人のみ、平成18年4月から平成21年2月までの期間は請求人及び子p2の2名、平成21年3月から同年9月までの期間は請求人、子p2及び元夫p8の3名、平成21年10月から平成23年12月までの期間は請求人及び子p2の2名として、本件各年について、家計調査年報の当該世帯人員に応じた1か月の「消費支出」の額(当該期間別の世帯人員に応じた1か月の金額は次のとおりである。)に該当する月数を乗じて算定した金額であり、別表14−1及び別表14−2のまる10欄の各金額のとおりである。

(A) 平成17年1月から同年12月までが177,343円(世帯人員1名)

(B) 平成18年1月から同年3月までが163,699円(世帯人員1名)

(C) 平成18年4月から同年12月までが254,610円(世帯人員2名)

(D) 平成19年1月から同年12月までが258,916円(世帯人員2名)

(E) 平成20年1月から同年12月までが258,123円(世帯人員2名)

(F) 平成21年1月から同年2月まで及び同年10月から同年12月までが253,318円(世帯人員2名)

(G) 平成21年3月から同年9月までが295,673円(世帯人員3名)

(H) 平成22年1月から同年12月までが253,367円(世帯人員2名)

(I) 平成23年1月から同年12月までが251,783円(世帯人員2名)

B 租税公課等の額
 本件各年分の租税公課等の額は、原処分庁主張額と同額であり、別表14−1及び別表14−2のまる11欄の各金額のとおりである。

C 保険料等の額
 上記(2)のハの(イ)のCの(C)のdのとおり、原処分庁が認定した保険料等の額は、いずれも加算調整項目から除外するのが相当であるから、本件各年分の保険料等の額は、別表14−1及び別表14−2のまる12欄のとおり、いずれも零円となる。

D 加算調整項目の額
 上記AからCまでのとおり、本件各年分の加算調整項目の額は、別表14−1及び別表14−2のまる13欄の各金額のとおりとなる。

(ハ) 減算調整項目
 減算調整項目のうち、本件各年分の給与収入の額、障害年金の額、受取利息の額及び給付金等の額は、原処分庁主張額とそれぞれ同額であるが、上記(2)のハの(イ)のDのとおり、本件p8第一口座の平成21年3月8日時点の預金残高である8,487円は、平成21年分の減算調整項目に加えるべきである。
 そうすると、本件各年分の減算調整項目の額は、別表14−1及び別表14−2のまる19欄の各金額のとおりとなる。

(ニ) 事業所得の金額
 以上のとおり、当審判所において、資産負債増減法を用いて請求人の事業所得の金額を算定すると、本件各年分の事業所得の金額は、別表14−1及び別表14−2のまる20欄のとおり、平成17年分が○○○○円、平成18年分が○○○○円、平成19年分が○○○○円、平成20年分が○○○○円、平成21年分が○○○○円、平成22年分が○○○○円、平成23年分が○○○○円となる。

ロ 総所得金額
 上記(1)のハの(イ)のCのとおり、請求人には本件各年分において事業所得以外の所得金額はないから、上記イの(ニ)の事業所得の金額が本件各年分の総所得金額となる。
 そうすると、本件各年分の総所得金額は、別表15のまる01欄のとおり、平成17年分が○○○○円、平成18年分が○○○○円、平成19年分が○○○○円、平成20年分が○○○○円、平成21年分が○○○○円、平成22年分が○○○○円、平成23年分が○○○○円となる。

ハ 所得控除の額
 原処分庁は、本件各年分の所得控除の額を別表16−1から別表16−3までの「原処分庁主張額」欄の各欄のとおり主張し、このうち平成23年分について、元夫p8は同居特別障害者に該当するとして障害者控除の額を750,000円と認定しているところ、上記(2)のロの(ハ)のBのとおり、平成23年12月31日の現況において、元夫p8は請求人と同居していないから、同居特別障害者には該当せず、元夫p8に係る障害者控除の額は、400,000円(特別障害者としての控除額)とするのが相当である。
 平成23年分の上記の障害者控除の額を除いて、原処分庁が認定した本件各年分の所得控除の額は、当審判所の調査の結果によっても相当と認められる。
 そうすると、本件各年分の所得控除の合計額は、別表15のまる02欄のとおり、平成17年分が1,056,325円、平成18年分が1,318,067円、平成19年分が1,429,882円、平成20年分が1,367,515円、平成21年分が1,211,444円、平成22年分が1,193,270円、平成23年分が1,213,654円となる。

ニ 納付すべき税額
 本件各年分の納付すべき税額は、次のとおりとなる。

(イ) 課税総所得金額及びこれに対する税額
 本件各年分の課税総所得金額は、上記ロの本件各年分の総所得金額から上記ハの本件各年分の所得控除の合計額を控除した金額で、別表15のまる03欄のとおり、平成17年分が○○○○円、平成18年分が○○○○円、平成19年分が○○○○円、平成20年分が○○○○円、平成21年分が○○○○円、平成22年分が○○○○円、平成23年分が○○○○円(いずれの金額も、通則法第118条《国税の課税標準の端数計算等》第1項の規定を適用して1,000円未満の端数金額を切り捨てた後の金額である。)となる。
 そして、本件各年分の課税総所得金額に対する税額は、上記各金額に所得税法第89条《税率》(平成17年分及び平成18年分については、平成18年法律第10号による改正前のもの)の規定を適用して算定した金額で、別表15のまる04欄のとおり、平成17年分が○○○○円、平成18年分が○○○○円、平成19年分が○○○○円、平成20年分が○○○○円、平成21年分が○○○○円、平成22年分が○○○○円、平成23年分が○○○○円となる。

(ロ) 定率による税額控除の額

 平成17年分及び平成18年分の定率による税額控除の額は、上記(イ)の当該各年分の課税総所得金額に対する税額に、経済社会の変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税の負担軽減措置に関する法律(平成17年分については平成17年法律第21号により改正される前のもの、平成18年分については平成18年法律第10号により廃止される前のもの)第6条《定率による税額控除の特例》を適用して算定した金額で、別表15のまる05欄のとおり、平成17年分が○○○○円、平成18年分が○○○○円となる。

(ハ) 納付すべき税額
 本件各年分の納付すべき税額は、上記(イ)の各金額から上記(ロ)の各金額を控除した金額で、別表15のまる06欄のとおり、平成17年分が○○○○円、平成18年分が○○○○円、平成19年分が○○○○円、平成20年分が○○○○円、平成21年分が○○○○円、平成22年分が○○○○円、平成23年分が○○○○円(いずれの金額も、通則法第119条《国税の確定金額の端数計算等》第1項の規定を適用して100円未満の端数金額を切り捨てた後の金額である。)となる。
 そうすると、本件各年分の納付すべき税額は、いずれも本件所得税各更正決定処分のそれを下回るので、本件所得税各更正決定処分は、いずれもその一部を別紙1から別紙7までの「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。

(6) 本件所得税各賦課決定処分
 上記(3)のロの(イ)のとおり、本件各年分の所得税に係る請求人の行為は、通則法第68条第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たすところ、上記(5)のニの(ハ)のとおり、本件所得税各更正決定処分の一部がそれぞれ取り消されることに伴い、本件各年分の所得税に係る重加算税の計算の基礎となる税額は、平成17年分が○○○○円、平成18年分が○○○○円、平成19年分が○○○○円、平成20年分が○○○○円、平成21年分が○○○○円、平成22年分が○○○○円、平成23年分が○○○○円となるから、当該基礎となる税額に基づき本件各年分の所得税に係る重加算税の額を計算すると、平成17年分が○○○○円、平成18年分が○○○○円、平成19年分が○○○○円、平成20年分が○○○○円、平成21年分が○○○○円、平成22年分が○○○○円、平成23年分が○○○○円となる。
 そうすると、本件各年分の重加算税の額は、いずれも本件所得税各賦課決定処分のそれを下回るので、本件所得税各賦課決定処分は、いずれもその一部を別紙1から別紙7までの「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。

(7) 本件消費税等各更正処分

イ 消費税の課税標準額

(イ) 請求人は、本件各課税期間の消費税の課税標準額を推計の方法により算定することについては争わないところ、当審判所の調査の結果によれば、原処分庁は、本件各年分の事業所得の金額を推計の方法により算定する必要性があったのと同様の理由(上記(2)で述べた理由)で、本件各課税期間の消費税の課税標準額を推計の方法により算定する必要性があったものと認められ、当審判所においても、推計の方法により本件各課税期間の課税標準額を算定せざるを得ない。

(ロ) また、請求人は、原処分庁が採用した類似同業者比率法を用いて本件各課税期間の課税標準額を算定することについては争わないところ、請求人の事業所得の金額を推計するに当たっては、上記(2)のハの(ロ)のAのとおり、資産負債増減法を採用するのがより合理的であると認められるが、消費税の課税標準額の推計方法としては、資産負債増減法を採用して算定した事業所得の金額と消費税の課税標準額とは一定の相関関係を有するものの、その相関関係の程度は、仕入金額と消費税の課税標準額との相関関係に劣ると認められるから、本件においては、原処分庁が採用した酒屋からの仕入金額に基づく類似同業者比率法により課税標準額を算定する方法が合理的であると認められる。

(ハ) ところで、原処分庁は、本件各課税期間の消費税の課税標準額について、請求人の取引先などを調査して把握した酒屋からの仕入金額(平成20年課税期間が○○○○円、平成21年課税期間が○○○○円、平成22年課税期間が○○○○円)を基礎として、当該金額に上記(2)のロの(ト)のAの抽出基準により選定した類似同業者の平均酒屋倍率(平成20年課税期間が8.35倍、平成21年課税期間が9.26倍、平成22年課税期間が9.24倍)を乗じて算出した金額に105分の100を乗じて、本件各課税期間の消費税の課税標準額を、平成20年課税期間が○○○○円、平成21年課税期間が○○○○円、平成22年課税期間が○○○○円(いずれの金額も、通則法第118条第1項の規定に基づき、1,000円未満の端数金額を切り捨てた後の金額である。)と認定している。
 そこで、原処分庁の上記認定について検討すると、原処分庁が、類似同業者を選定するに当たり、上記(2)のロの(ト)のAの抽出基準を設けたことは相当であり、当審判所の調査の結果によれば、原処分庁は当該抽出基準により同業者を機械的に選定したことが認められるから、原処分庁が選定した同業者は、類似同業者として相当である。
 しかしながら、当審判所の調査の結果、類似同業者に係る酒屋倍率の計算上、類似同業者の売上金額に一部誤りがあり、また、原処分庁が認定した請求人の酒屋からの仕入金額には、平成22年課税期間において一部誤りがあるため、これらを改めて、本件各課税期間の類似同業者の売上金額及び平均酒屋倍率を計算すると、別表17の「売上金額」欄の各金額及び「平均」欄の各倍率のとおりとなり、本件各課税期間の請求人の酒屋からの仕入金額を計算すると、別表18のまる01欄の各金額のとおりとなる。
 以上を前提として、本件各課税期間の消費税の課税標準額を算定すると、別表18のまる03欄のとおり、平成20年課税期間が○○○○円、平成21年課税期間が○○○○円、平成22年課税期間が○○○○円(いずれの金額も、通則法第118条第1項の規定に基づき、1,000円未満の端数金額を切り捨てた後の金額である。)となる。

ロ 課税標準額に対する消費税額
 本件各課税期間の課税標準額に対する消費税額は、上記イの本件各課税期間の課税標準額にそれぞれ100分の4を乗じて算定した金額で、別表18のまる04欄の各金額のとおりとなる。

ハ 控除対象仕入税額
 上記(4)のロの(イ)のとおり、請求人は、消費税法第30条第7項に規定する「課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等を保存しない場合」に該当するから、同条第1項の規定の適用を受けることはできず、本件各課税期間の課税仕入れに係る消費税額の控除は認められない。

ニ 納付すべき消費税額及び地方消費税額

 上記イからハまでを前提に、本件各課税期間の納付すべき消費税額及び地方消費税額をそれぞれ算定すると、別表18のまる06欄及びまる07欄のとおり、平成20年課税期間が○○○○円及び○○○○円、平成21年課税期間が○○○○円及び○○○○円、平成22年課税期間が○○○○円及び○○○○円(いずれの金額も、通則法第119条第1項の規定を適用して100円未満の端数金額を切り捨てた後の金額である。)となり、これらの金額は、いずれも本件消費税等各更正処分のそれらと同額となるから、本件消費税等各更正処分はいずれも適法である。

(8) 本件消費税等各賦課決定処分

 上記(7)のニのとおり、本件消費税等各更正処分はいずれも適法であり、また、本件消費税等各更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が、本件消費税等各更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、通則法第66条第1項ただし書に規定する正当な理由があると認められる場合に該当しないから、同項及び地方税法附則第9条の9《譲渡割に係る延滞税等の計算の特例》第1項の規定に基づいてされた本件消費税等各賦課決定処分はいずれも適法である。

(9) その他

原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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