ホーム >> 公表裁決事例集等の紹介 >> 公表裁決事例 >> 平成26年4月〜6月分 >> (平成26年6月4日裁決)>>別紙
別紙2
当事者双方の主張
1 争点1 本件各賦課決定処分に係る審査請求は適法であるか否か。
請求人ら | 原処分庁 |
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(1) 通則法第75条第5項に該当すること 本件各異議申立書において、異議申立ての対象とされている「過少申告加算税の賦課決定」は、平成25年4月25日に受領した同月24日付のものである旨記載されており、請求人らが平成25年4月25日に同月24日付で受けた過少申告加算税の賦課決定は本件各賦課決定処分しか存在しないのであるから、対象年分が記載されていなくとも、本件各賦課決定処分が異議申立ての対象となっていることは明らかである。 よって、本件各賦課決定処分に係る異議申立てについての決定がないまま、異議申立てから3月を経過したといえるから、通則法第75条第5項に該当し、本件各賦課決定処分に係る審査請求は適法である。 |
(1) 通則法第75条第5項に該当しないこと![]() ![]() ![]() したがって、通則法第75条第5項には該当せず、異議決定を経ずになされた本件各賦課決定処分に係る審査請求は不適法である。 |
(2) 通則法第75条第4項第3号の「正当な理由があるとき」に該当すること 通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」がなくとも本件各賦課決定処分は異議申立ての対象となるにもかかわらず、異議審理担当職員は、請求人Eに対して、「正当な理由」がないのであれば、本件各賦課決定処分は異議申立ての対象にはならない旨の誤った説明をした。そして、請求人Eは、かかる誤った説明に従って、異議審理担当職員に促されるまま、本件補正書を異議審理庁に提出した。 以上によれば、仮に、本件補正書の提出によって本件各賦課決定処分に対する異議申立てがされていないことになったとしても、通則法第75条第4項第3号に規定する「正当な理由があるとき」に該当する。 したがって、本件各賦課決定処分に係る審査請求は適法である。 |
(2) 通則法第75条第4項第3号の「正当な理由があるとき」に該当しないこと 異議審理担当職員は、請求人Eに対して、通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」がないのであれば、本件各賦課決定処分は異議申立ての対象にはならないとは説明していない。 そして、請求人Eが自らの意思に基づいて本件補正書を提出したことは明らかであるから、通則法第75条第4項第3号に規定する「正当な理由があるとき」に該当しない。 したがって、本件各賦課決定処分に係る審査請求は不適法である。 |
2 争点2 本件金員は本件土地の取得費又は譲渡費用に該当するか否か。
原処分庁 | 請求人ら |
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次のとおり、本件金員は、本件土地の取得費又は譲渡費用に該当しない。 (1) 取得費及び譲渡費用の意義 イ 取得費の意義 取得費となる「資産の取得に要した金額」とは、資産の客観的価格を構成すべき取得代金のほか、資産を取得するための付随費用の額が含まれ、また、付随費用とは、資産を取得するために通常要すると認められる費用であると解すべきである。 ロ 譲渡費用の意義 譲渡費用に当たるかどうかは、現実に行われた資産の譲渡を前提として、客観的にみてその譲渡を実現するために当該費用が必要であったかどうかによって判断すべきである。 |
次のとおり、本件金員は、本件土地の取得費又は譲渡費用に該当する。 |
(2) 本件金員に係る支払の合意 請求人らは、請求人E及びKとL社との間で、コンサルティング業務等に関する合意があった旨主張するが、これを示す契約書等の証拠はないのだから、業務内容を明確にした合意があったとは認められず、本件土地を譲渡できたことを条件として利益の半分をMに供与する旨の贈与契約を締結したものとみるのが相当である。 また、仮に本件金員が、Mによる説得及び助言等の対価として支払われたものであったとしても、次の(3)ないし(5)のとおり、本件金員は、本件土地の取得費又は譲渡費用のいずれにも該当しない。 |
(1) 本件金員に係る支払の合意 イ 請求人E及びKは、本件土地の取得の数日後、L社との間で、次のとおり口頭で合意(以下「本件合意」という。)した。 (イ) L社は、本件土地を譲渡するまでの間、 ![]() ![]() (ロ) 請求人E及びKは、L社が ![]() ![]() ![]() ロ そして、本件金員は、本件合意に基づき、L社による説得、本件各建物の改良行為及びコンサルティング業務等の対価として支払われたものであるところ、次の(2)ないし(4)のとおり、本件金員は、本件土地の取得費又は譲渡費用に該当する。 |
(3) 本件土地の取得の説得 Mが請求人E及びKに対して本件土地の取得を説得したことは、本件土地を取得するために通常要するものとは認められない。 したがって、上記説得に関する対価は、本件土地の取得費に該当しない。 |
(2) 本件土地の取得の説得 請求人E及びKは、L社から強く説得されたことによって、本件土地を取得したのであるから、かかる説得は本件土地の取得のために必要不可欠なことであった。 したがって、上記説得に関する対価は、本件土地の取得費に該当する。 |
(4) 本件各建物の維持管理 請求人らは、Mが本件各建物のペンキ塗り、排水管詰まりの除去、鍵の交換及び戸の修理等を行った旨主張するが、これらは、いずれも本件各建物の経年劣化等により行われる通常の維持管理に該当するものであって、改良行為ではない。 そして、資産の維持管理に要した費用は譲渡費用に該当しないから、Mの行為に関する対価は本件土地の譲渡費用に該当しない。 |
(3) 本件各建物の改良行為 L社は、請求人E及びKが本件土地を取得する前から本件各建物を取り壊すまでの間、本件各建物のペンキ塗り、排水管詰まりの除去、鍵の交換及び戸の修理等をしていたところ、これらは本件各建物の改良行為に当たり、L社の行為に関する対価は改良費に当たる。 そして、本件土地の譲渡のために本件各建物を取り壊したことにより、上記改良費を含めて本件各建物の価値が滅失したのだから、上記改良費に当たる対価は本件土地の譲渡費用に該当する。 |
(5) コンサルティング業務等 イ 賃借人が亡くなった際の助言 Mが本件各建物の賃借人が亡くなった際に請求人E及びKにその対応について助言していたとしても、その助言は本件各建物の維持管理のために行ったものといえる。 そして、資産の維持管理に要した費用は譲渡費用に該当しないから、上記助言に関する対価は本件土地の譲渡費用に該当しない。 |
(4) コンサルティング業務等 イ 賃借人が亡くなった際の助言 L社は、本件各建物の賃借人が本件各建物内で亡くなった際、請求人E及びKに対して、風評により本件土地の価値を低下させないために、本件各建物内で賃借人が亡くなったことを他人に話さないよう助言しており、この助言は、本件土地の譲渡価額を増加させるものである。 したがって、上記助言に関する対価は本件土地の譲渡費用に該当する。 |
ロ 賃借人の立退きに関する業務等 (イ) Pの立退きに関する行為 請求人らは、L社がPに対して金員を提供した旨主張するが、金員提供の事実を示す客観的証拠がないことなどから、かかる事実があったとは認められない。 また、Mは、Pと立退交渉をしておらず、同人を見守っていたにすぎず、Pは自ら本件各建物から立ち退いたのである。 以上によれば、MがPの立退きのために行った行為は、本件各建物の維持管理に当たるところ、資産の維持管理に要した費用は譲渡費用に該当しない。 したがって、Pの立退きに関する業務の対価は本件土地の譲渡費用に該当しない。 |
ロ 賃借人の立退きに関する業務等 (イ) Pの立退きに関する行為 Pは、本件各建物の一部が自分のものであると主張し、40,000,000円の立退料又は代替建物の提供を求めていたところ、L社は、本件合意に基づき、100回以上Pを訪ねるとともに、合計約12,000,000円を提供し、その結果、同人は、平成17年頃、本件各建物から立ち退いた。 そして、Pの立退きは、本件土地を譲渡するために必要なことであったといえるから、これに関する業務の対価は本件土地の譲渡費用に該当する。 |
(ロ) 賃借人の立退きに関する助言 Mが行ったP以外の賃借人の立退きに関する助言は、内容証明郵便の送付の提案にとどまる上、請求人Eは、本件土地以外の不動産の活用についても、Mに相談していたのであるから、当該助言は、親族関係に基づくものであって、日常的な会話にすぎないといえる。 以上によれば、賃借人の立退きに関する助言は、客観的にみて本件土地の譲渡を実現するために必要であったとはいえず、当該助言に関する対価は本件土地の譲渡費用に該当しない。 |
(ロ) 賃借人の立退きに関する助言 L社は、請求人Eに対して、立退交渉を容易にするためにP以外の賃借人に本件各建物が老朽化していると話しておくことや立退きを求める内容証明郵便を送付した方がよいことを助言した。そして、請求人Eは、当該助言に基づいて、賃借人に本件各建物が老朽化していることを伝えたり、請求人Jとともに、賃借人に対して立退きを求める内容証明郵便を送付するなどし、その結果、P以外の賃借人も全て平成23年1月までに本件各建物から立ち退いた。 以上によれば、当該助言は、本件土地を譲渡するために必要なものといえるから、これに関する対価は本件土地の譲渡費用に該当する。 |
ハ 譲渡先探しに関する助言 Mの本件土地の譲渡先探しに関する助言は、大手のハウスメーカーや住宅ディベロッパーを交渉相手とする方がよいなどの内容にとどまるものであり、上記ロの(ロ)と同様に親族関係に基づく助言とみるのが相当である上、M又はL社が、本件土地の特性を分析して具体的な提案をしたり、請求人らがQ社に本件土地を売却した過程において、その価格決定等に具体的に関与したりした事実は認められない。 以上によれば、本件土地の譲渡先探しに関する助言は、客観的にみて本件土地の譲渡を実現するために必要であったとはいえず、当該助言に関する対価は本件土地の譲渡費用に該当しない。 |
ハ 譲渡先探しに関する助言 L社は、平成23年までに、請求人E及びKに対して、本件土地の譲渡の交渉先を複数紹介するなどの助言をしており、当該助言は本件土地を譲渡するために必要であったといえる。 したがって、上記助言に関する対価は本件土地の譲渡費用に該当する。 |