(平成26年5月9日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、審査請求人(昭和○年○月○日生まれ。以下「請求人」という。)が、請求人の母であるG(大正○年○月○日生まれ。以下「母G」という。)から同人所有の土地を贈与により取得し、その贈与に係る贈与税の申告に当たり、当該土地の評価について、財産評価基本通達(昭和39年4月25日付直資56ほか国税庁長官通達をいい、以下「評価基本通達」という。)によらず、不動産鑑定士による評価額に基づき評価して贈与税の申告をしたところ、原処分庁が、当該土地は評価基本通達に基づき評価することが相当であるなどとして、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を行ったことに対し、請求人がその全部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 請求人は、平成21年8月21日に母Gからの贈与により土地を取得したとして、平成21年分贈与税の申告書に課税価格の合計額を○○○○円及び納付すべき税額を○○○○円と記載し、相続税法第21条の9《相続時精算課税の選択》第1項の規定の適用を受けるものとして法定申告期限までに申告した。
ロ 原処分庁は、これに対し、原処分庁所属の調査担当職員の調査に基づき、平成24年11月20日付で、課税価格の合計額を○○○○円及び納付すべき税額を○○○○円とする更正処分(以下「本件更正処分」という。)並びに過少申告加算税の額を○○○○円とする賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」という。)をした。
ハ 請求人は、本件更正処分及び本件賦課決定処分を不服として、平成25年1月17日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、原処分の見直しを行い、その結果、課税価格の合計額及び納付すべき税額が本件更正処分を上回ったため、同年4月15日付でいずれも棄却の異議決定をした。
ニ 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成25年5月14日に審査請求をした。

(3) 関係法令等の要旨

イ 相続税法第22条《評価の原則》は、相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、特別の定めがある場合を除き、当該財産の取得の時における時価による旨規定している。
ロ 評価基本通達20−2《無道路地の評価》は、その注書において、無道路地とは、道路に接しない宅地をいう旨定めている。
ハ 評価基本通達25《貸宅地の評価》(1)は、借地権の目的となっている宅地の価額は、自用地としての価額から評価基本通達27《借地権の評価》の定めにより評価したその借地権の価額を控除した金額によって評価する旨定めている。
ニ 民法第601条《賃貸借》は、賃貸借とは、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約すことによって、その効力を生ずる旨規定している。
ホ 借地法(大正10年法律第49号、平成4年8月1日廃止前のもの。以下「借地法」という。)第1条《借地権の定義》は、借地権とは建物の所有を目的とする地上権及び賃借権をいう旨規定している。
ヘ 借地法第2条《借地権の存続期間》第1項は、借地権の存続期間は、石造、土造、煉瓦造又はこれに類する堅固の建物の所有を目的とするものについては60年、その他の建物の所有を目的とするものについては30年とし、ただし、建物がその期間満了前に朽廃したときは、借地権はこれにより消滅する旨規定している。また、同条第2項においては、契約によりこれと異なる存続期間を定めることもできる旨規定している。
ト 借地法第5条《更新の場合の借地権の存続期間》第1項は、当事者が契約を更新する場合においては、借地権の存続期間は更新の時より起算し堅固の建物については30年、その他の建物については20年とし、この場合においては、同法第2条第1項のただし書の規定を準用する旨規定している。
チ 借地法第6条《法定更新》第1項は、借地権者の借地権が消滅した後、土地の使用を継続する場合において、土地所有者が遅滞なく異議を述べないときは、前契約と同一の条件をもって、更に借地権を設定したものとみなすとし、この場合においては、前条第1項の規定を準用する旨規定している。
リ 借地借家法は平成4年8月1日に施行され、同日をもって借地法は廃止された(借地借家法附則第2条《建物保護に関する法律等の廃止》)が、同附則第4条《経過措置の原則》ないし第6条《借地契約の更新に関する経過措置》は、廃止前の借地法の規定により生じた効力を妨げないこと、借地借家法施行前に設定された借地権について、その借地権の目的である土地の上の建物の朽廃による消滅に関すること及び借地権に係る契約の更新に関しては、なお従前の例による旨規定している。

(4) 基礎事実

 以下の事実は、請求人と原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 請求人は、平成21年8月21日、母Gからf市d町○−○、同○−○、同○−○及び同○−○所在の各土地(合計面積275.63平方メートル。以下、これらの土地を併せて「本件土地」という。)の贈与(以下「本件贈与」という。)を受けた。また、母Gは、本件土地を、故H(請求人の父であり、平成11年6月○日死亡。以下「亡父」という。)から相続により取得した。
 なお、本件土地は道路に接していない土地である。
ロ J社は、昭和34年8月○日に設立され、設立時の代表者は亡父であり、現代表者は平成14年7月10日に就任した請求人であるところ、本件贈与時の出資者は請求人、請求人の妻及び請求人の子である。
ハ 本件土地とe線の間にはf市d町○−○所在の土地(面積780.43平方メートル。昭和34年11月4日、亡父がKから売買により取得し、平成11年6月○日、母Gが亡父から相続により取得した土地。以下「本件前面土地」という。)及びf市d町○−○所在の土地(面積172平方メートル。f市が所有していた公有地で、平成21年1月7日にJ社がf市から売買により取得した土地。以下「本件旧公有地」という。)が存在する(当該各土地の位置関係については別紙3のとおり。)。
 なお、本件土地と本件前面土地は、平成21年1月7日にJ社が本件旧公有地を取得したことにより、公有地ではなくJ社が所有する本件旧公有地により分断されることになった。
ニ J社は、昭和52年8月18日、本件土地、本件前面土地及び本件旧公有地上に建物(家屋番号○番、鉄骨造陸屋根平屋建、延床面積1,783.33平方メートルの駐車場。以下「本件建物」という。)を建築した。
 本件建物の内部には、1基当たり34台の自動車が収納可能な吊上式自動車駐車場設備(以下「本件駐車場設備」という。)が計3基設置されていたが、本件駐車場設備内の事故の発生により本件駐車場設備が撤去されたのを機に、平成10年7月に本件建物は取り壊された。
ホ 本件旧公有地は、公有地であったが、亡父又はJ社は、J社が本件旧公有地を取得する前の期間において使用料等を支払わずに使用していた。
ヘ J社と亡父又は母Gとの間において、本件土地及び本件前面土地に係る賃貸借契約書はいずれも作成されていないが、J社は本件土地及び本件前面土地の地代について、遅くとも昭和63年から本件贈与時まで、亡父死亡前は亡父に、亡父死亡後は母Gに対し支払っていた。
ト J社は、本件土地、本件前面土地及び本件旧公有地上に昭和59年6月25日に鉄骨鉄筋コンクリート造陸屋根6階建、延床面積598.61平方メートルの共同住宅(未登記。以下「本件共同住宅」という。)を、また、平成5年8月22日に家屋番号○−○、鉄骨鉄筋コンクリート造陸屋根10階建、延床面積2,879.76平方メートルのホテル兼店舗(以下「本件ホテル」という。)をそれぞれ建築した。
チ 本件共同住宅及び本件ホテル(以下、併せて「J社ビル等」という。)は、その大部分が本件前面土地及び本件旧公有地上に位置するが、それぞれ本件土地のうちf市d町○−○所在の土地の一部(面積0.006平方メートル。以下「本件a土地」という。)及びf市d町○−○所在の土地の一部(面積1.18平方メートル。以下「本件b土地」という。)に入り込んでいる(本件建物及びJ社ビル等の位置関係については別紙3のとおり。)。
リ 平成10年7月に本件建物が取り壊された後の跡地は、アスファルトが敷かれ、J社等の駐車場及び一般向けの時間貸駐車場として現在まで継続して使用されている。
ヌ 請求人は、平成22年2月2日、f市との間において、次表の各土地(これらのうち所有者をf市とする各土地を、以下「本件交換土地」という。)について土地交換契約及び土地売買契約をそれぞれ締結した(以下、これら各契約を併せて「本件売買契約等」という。)。

所有者 所在地 面積(合計) 取引形態
f市 f市d町○−○、同○−○、同○−○ 41.93平方メートル 交換
請求人 f市d町○−○ 40.24平方メートル 交換
請求人 f市d町○−○、同○−○、同○−○ 27.97平方メートル 売買

ル f市は、本件売買契約等に当たり、本件土地の一部であるf市d町○−○及び同○−○所在の土地上に地積160平方メートルの整形地(以下「f市標準地」という。)を想定し、これについて、L社に対し、平成21年7月1日時点の鑑定評価を依頼したところ、L社は、f市標準地について1平方メートル当たり○○○○円(以下「f市鑑定評価額」という。)とする鑑定評価を行った。
ヲ 請求人は、平成21年9月24日、L社に対し本件土地及びこれに隣接する請求人の所有するf市d町○−○所在の土地(地積11.93平方メートル。以下「贈与外土地」という。)の評価を依頼した(合計地積287.56平方メートル。以下、本件土地と贈与外土地を併せて「本件評価対象土地」という。)。
 なお、評価の条件としては、使用収益を制約する所有権以外の権利が付着していない「更地」とした。
ワ L社は、本件評価対象土地の評価に当たり、規準する公示地をf市d町○−○ほか「d町○−○」(地積4××平方メートル)とし、近隣地域の標準画地の規模を350平方メートルから2,000平方メートル程度とした。
 また、本件土地の一部であるf市d町○−○及び同○−○所在の土地上に、地積160平方メートルの無道路の整形の標準画地を想定した上で、当該標準画地の評価額をf市鑑定評価額と同じ1平方メートル当たり○○○○円とし、当該標準画地と本件評価対象土地との個別格差の補正を行い、平成21年7月1日時点の本件評価対象土地の評価額を1平方メートル当たり○○○○円(以下「L評価額」という。)と算定した。そして、L評価額について、平成22年2月26日付評価報告書(以下「本件鑑定書」という。)により請求人に報告した。
 なお、本件鑑定書の要旨は別紙2のとおりである。
カ 請求人は、L評価額(1平方メートル当たり○○○○円)を基に、本件鑑定書の価格時点である平成21年7月1日と本件贈与の日である平成21年8月21日との時点修正(101.6/100)を行った上で本件土地の地積(275.63平方メートル)を乗じた価額を求め、更に、当該価額を基に、本件土地には借地権があるとして、借地権相当額(更地価額の60%)を控除して、本件土地の価額(○○○○円/平方メートル×101.6/100×275.63平方メートル×(1−0.6)=○○○○円)を評価し、上記(2)のイのとおり相続時精算課税を適用した平成21年分の贈与税の申告を行った。
ヨ 評価基本通達に基づきP国税局長が定めた平成21年分の財産評価基準(以下、評価基本通達と併せて「評価通達等」という。)によれば、本件土地は、路線価方式により評価する地域内の土地であり、本件前面土地に接する路線に付された路線価は○○○○円であり、同路線の借地権割合は60%である。
タ 原処分庁は、本件更正処分において、本件土地について、同土地に適用される路線価○○○○円を基に所要の補正を行って、借地権に相当する価額の控除をしないまま、別表の1の「算定根拠」欄の5のとおり、相続税評価額を○○○○円と算定した。
レ 異議審理庁は、上記(2)のハの異議決定において、上記チのとおり、本件a土地及び本件b土地はそれぞれJ社ビル等の敷地であったと認められたことから、本件a土地及び本件b土地には借地権が存在すると認定し、本件土地からこれらの土地を除くとともに、評価基本通達20《不整形地の評価》の付表5「不整形地補正率表」の適用に当たって、「繁華街地区」の不整形地補正率を適用し、別表の2の(1)の「算定根拠」欄の5のとおり、本件土地(本件a土地及び本件b土地を除く。)の相続税評価額を○○○○円と算定した。また、本件a土地は、別表の2の(2)の「算定根拠」欄の5のとおり、本件b土地は、別表の2の(3)の「算定根拠」欄の5のとおり、不整形地補正及び無道路地補正を行って、いずれの土地についても借地権が存在するとして、それぞれの相続税評価額を○○○○円、○○○○円と算定した。

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2 争点

争点1 本件土地の評価は、評価通達等により評価すべきか否か。
争点2 本件土地の価額は、借地権の価額を控除して評価すべきか否か。

3 主張

(1) 争点1(本件土地の評価は、評価通達等により評価すべきか否か。)について

原処分庁 請求人
 評価通達等の定めによる評価は、客観的交換価値を反映した適正な時価を求める合理的な評価方法であることから、本件土地は、次のとおり、評価通達等に基づき評価すべきである。  時価が容易に入手できる場合は、当該時価は相続税法第22条にいう時価であり、評価通達等により評価するまでもなく、本件土地は、次の理由から評価通達等に基づき評価すべきではない。
イ 相続税法第22条の時価について
 相続税法第22条の時価とは、財産の取得の時における不特定多数の当事者間で自由な取引が行われた場合に通常成立する価額と解されている。
 そして、課税実務上は、納税者間の公平、納税者の便宜、徴税費用の節減という見地から見て合理的である評価通達等に定められた画一的な評価方式によって財産を評価することとされている。
 原処分庁が、原処分における課税価格ないし税額の算定を、評価通達等の定めに即して主張・立証した場合には、客観的交換価値を適正に評価したものと事実上推認することができ、このような場合には、請求人において、評価通達等に基づく贈与財産の価額の計算過程自体に不合理な点があることを具体的に指摘して、上記推認を妨げ、あるいは、合理性を有する証拠資料に基づいて評価通達等の定めに従った評価が当該事案の具体的な事情の下における当該贈与財産の「時価」を適切に反映したものではなく、客観的交換価値を上回るものであることを主張立証するなどして上記推認を履さない限り、原処分は適法である。
イ 相続税法第22条の時価について
 本件土地に隣接する土地について、平成22年2月2日に請求人とf市との間で本件売買契約等が締結された際、f市が選任・依頼したL社によりf市標準地は1平方メートル当たり○○○○円(f市鑑定評価額)とする鑑定評価が行われた。f市鑑定評価額に基づき本件売買契約等が成立している事実があることから、本件土地の評価はf市鑑定評価額に準ずることが合理的であり実態に即し時価を表していると判断し、L社にf市鑑定評価額の算定プロセスの詳細な説明を明示してもらい、本件土地の評価計算を行った。
 また、評価通達等による更地価額(○○○○円)はL評価額に基づき評価した更地価額(○○○○円)の1.6倍であり、評価通達等による更地価額はL評価額に基づき評価した更地価額を著しく上回っている。
 なお、f市から取得した本件旧公有地の取得価額(1平方メートル当たり○○○○円)とL評価額(1平方メートル当たり○○○○円)はバランスがとれている。
ロ L評価額について
 L評価額は、次のとおり合理性が認められない。
ロ L評価額について
 L評価額は、不動産鑑定評価基準に基づいて算定された理論的で合理的なものであり、また、L評価額の基礎となったf市鑑定評価額に基づいて行われた取引事例があるので経済実態にも即している。
(イ) 贈与外土地を含めた鑑定評価額であり、本件土地の価額ではない。 (イ) 本件評価対象土地の面積に占める贈与外土地の面積は小さいことからするとL評価額への影響は少ない。
(ロ) 平成21年7月1日時点の価額であるから、平成21年8月21日の本件贈与時点の価額ではない。 (ロ) 本件贈与時点と本件鑑定書の評価時点の差異は、許容範囲である。
 なお、評価通達等による評価において路線価は時点修正することなく使われている。
(ハ) 別紙2の6の(1)の標準画地の鑑定評価における有効宅地部分及び路地状部分の土地の価格の算定において、普通商業地域の個別的要因比準表に基づき補正すべきところ、標準住宅地域の個別要因比準表に基づき補正している。
(ニ) 別紙2の6の(1)の標準画地の鑑定評価における路地状部分の土地の減価率0.35及び取得価格の2割増しは、L社の経験則に基づくものであり、具体的かつ客観的根拠がない。
 また、路地状部分の土地の奥行距離について、具体的かつ合理的な説明をしていない。
 

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(2) 争点 2(本件土地の価額は、借地権の価額を控除して評価すべきか否か。)について

原処分庁 請求人
 本件土地の価額は、次のとおり、借地権の価額を控除して評価すべきではない。  本件土地の価額は、次のとおり、借地権の価額を控除して評価すべきである。
イ 借地法上の借地権について
 本件建物は、借地法第2条第1項に規定する非堅固な建物で借地権の存続期間は30年であることからすれば、本件贈与時は建築から32年経過しており、借地権は消滅している。
 また、上記によらないとしても本件建物の滅失後、本件贈与時まで、建物は建築されず、再築ないし改築の具体的計画も一切確認できないこと及び本件土地の前所有者が母Gで請求人がJ社の代表者であることを踏まえると、借地権の設定において、請求人の意のままに母Gを通じて本件土地の賃貸借契約の内容を容易に変更することができたことから、本件贈与時に本件土地には、借地法第1条に規定する建物の所有を目的とする利用権はない。
イ 借地法上の借地権について
 借地法第2条第1項は、建物が朽廃した場合を除き、借地上の建物が取壊しなどにより滅失しても借地権は消滅しないと解されている。
 J社が、亡父から賃借した本件土地、本件前面土地及び本件旧公有地を敷地として昭和52年8月18日に建築した本件建物は、借地法第2条第1項に規定する堅固な建物に該当し、同項によると借地権の存続期間は60年となり、本件建物が取壊しにより滅失した以降においても、借地権の終了及び合意による契約解除の事実はないことからすれば、本件贈与時に本件土地には、借地権はある。
 なお、J社は、建物の再築を断念しておらず、高度利用な建物の建設を目指し、模索中である。
ロ 使用状況等について
 次のとおり、本件贈与時の本件土地(本件a土地及び本件b土地を除く。)の使用状況等からしても、本件贈与時に本件土地には、借地権は存しない。
 また、請求人の右記の各主張は、誤った事実関係及び法令解釈等に基づくものである。
ロ 使用状況等について
 借地権の及ぶ範囲は、建築面積(庇を含む。)のみに限定されるものではなく、契約内容、土地の使用制限等の事実関係に基づき判定されることから、仮に上記イの主張が認められないとしても、本件土地、本件前面土地及び本件旧公有地などの使用状況等が次のとおりであることから、本件贈与時に本件土地には、借地権は存する。
(イ) 本件土地は、本件建物の取壊し後、アスファルトが敷かれJ社及びJ社ビル等の関係者の駐車場並びに一般向けの時間貸駐車場として使用され、本件前面土地は、北側部分は本件共同住宅の敷地として、南側部分は本件ホテル建築前は平面駐車場、建築後は本件ホテルの敷地として使用されており、本件贈与時の本件土地と本件前面土地とでは、土地上の設置物(構築物か建物か)及び用途(駐車場か商業用ビルか)の点で使用状況が異なる。 (イ) J社は、本件前面土地及び本件旧公有地の上に、J社ビル等を建築した。
 J社ビル等は、それぞれ本件旧公有地を越え、本件土地に入り込んで建てられており、本件土地は、J社ビル等の敷地又はJ社及びJ社ビル等の関係者の駐車場並びに一般向けの時間貸駐車場としてJ社が管理・使用していた。
(ロ) J社ビル等の敷地である本件前面土地と本件旧公有地の合計面積は、J社ビル等の容積率に必要な面積を上回る。 (ロ) 本件土地は、平成14年の本件ホテルの増設工事建築確認申請上、J社ビル等の容積率の計算に入っていること、また、本件贈与時のJ社ビル等の容積率の計算に必要な土地の面積は、本件前面土地の面積を超えていることから、本件土地はJ社ビル等の容積率の計算上、必要な土地である。
(ハ) J社ビル等のための一定規模の駐車施設をJ社ビル等の敷地内に附置する必要があることを前提とした請求人の主張は、f市における○○に関する条例(昭和○年○月○日条例第○号。以下「駐車施設条例」という。)第8条《○○》第1項の理解を誤ったものである。 (ハ) f市の駐車施設条例第8条第1項に基づくJ社ビル等の敷地内駐車施設の規模について、本件土地の近場に所在しJ社が所有・経営する別ホテル(Mホテル)に必要な駐車施設も併せて考慮すると、本件土地は、f市の条例上もJ社ビル等及び駐車施設の敷地として必要である。
(ニ) 平成11年6月○日に死亡した亡父を被相続人とする相続税申告関係書類は、既に行政文書の保存期間を徒過しており確認できないが、仮に原処分庁が当該相続税申告の内容を是正しなかったとしても本件土地の評価を認めたことにはならない。 (ニ) 平成11年6月○日に死亡した亡父を被相続人とする原処分庁に対して行った相続税申告において、本件土地の評価は借地権相当額を控除した価額で、J社の出資金の純資産価額は借地権評価額を計上した価額で計算したが、税務調査でも是正されなかった。

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4 判断

(1) 争点1(本件土地の評価は、評価通達等により評価すべきか否か。)について

イ 法令解釈等
 相続税法第22条は、相続により取得した財産の価額は、特別の定めがあるものを除き、当該財産の取得の時における時価による旨規定しているところ、同条にいう時価とは、相続開始時における当該財産の客観的交換価値を示す価額をいうものと解するのが相当である。
 しかしながら、全ての財産の客観的交換価値は必ずしも一義的に確定されるものではないから、課税実務上は評価基本通達によって財産評価の一般的基準が定められ、そこに定められた画一的な評価方法によって財産を評価することとされている。このような取扱いは、まる1財産の客観的な交換価値を適切に把握することは必ずしも容易ではないこと、他方、まる2財産を個別に評価する方法を採ると、その評価方式、基礎資料の選択の仕方等により異なった評価額が生じることが避け難く、課税の公平の観点からみて好ましいとはいえないばかりか、回帰的かつ大量に発生する課税事務の事務負担が重くなり、課税事務の迅速な処理が困難となるおそれがあること等からして、納税者間の公平、納税者の便宜、徴税費用の節減という見地からみて合理的な取扱いであると解される。
 そうすると、例えば、評価基本通達により算定される価額が時価を上回るなど、評価基本通達に定められた評価方法を画一的に適用するという形式的な平等を貫くことによって、かえって実質的な租税負担の平等を著しく害することが明らかであるといった特別の事情がある場合を除き、財産の評価は、評価基本通達に定められた評価方法に基づいて行うのが相当であると解される。
ロ 認定事実
 原処分関係資料、請求人提出資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ) 本件ホテル建築の際の建築主事による平成4年9月14日付の確認通知書には、敷地面積が1,297平方メートルである旨記載されており、本件土地、本件前面土地及び本件旧公有地が当該敷地面積の敷地に含まれている。
(ロ) 本件土地、本件前面土地及び本件旧公有地は、塀、柵等で仕切られておらず、J社により、J社ビル等の敷地及びJ社等が使用する駐車場として一体として使用されている。
ハ 当てはめ
(イ) 本件評価対象土地に係る本件鑑定書の合理性の有無について
A 標準画地の設定について
(A) 本件鑑定書では、別紙2の6の(1)のとおり、本件評価対象土地が無道路地であることの補正は、まる1無道路地である標準画地(地積160平方メートル)を本件土地上に設定し、まる2当該標準画地について、道路に至る通路の開設が実現した価額を計算した上で、当該価額から路地状(通路)部分の取得価額と通路の開設に係る道路工事費用を控除する計算方法により当該標準画地の価額を求めることにより行っている(当該価額の1平方メートル当たりの価額を個別要因の格差補正前の本件評価対象土地の1平方メートル当たりの価額とする。)が、当該計算方法によると、当該標準画地の地積を本件評価対象土地の地積287.56平方メートルより小さい160平方メートルと設定する方が低額な価額(単価)となるものであるところ、なぜ、本件評価対象土地の地積287.56平方メートルより小さい160平方メートルを当該標準画地の地積としたのか合理的な理由が見当たらない上、本件鑑定書では、上記1の(4)のワのとおり、規準する公示地の地積が4××平方メートルであること及び近隣地域の標準画地の規模について、350平方メートルから2,000平方メートル程度としていたことからしても、160平方メートルを当該標準画地の規模としたことに合理性は認められない。
(B) 更に、地積287.56平方メートルの本件評価対象土地の価額を求めるに当たり、本件評価対象土地と規模が異なる160平方メートルの土地を標準画地とした以上、当該標準画地と本件評価対象土地の地積が異なることによる個別要因の格差補正を行う必要があるが、別紙2の6の(2)のとおり、形状による補正(95/100)以外の個別要因の格差補正が行われていない点においても合理性を欠くものである。
(C) また、別紙2の6の(1)のとおり、本件評価対象土地が無道路地であることの補正を行うに当たり、まる1無道路地である標準画地(地積160平方メートル)を設定して当該標準画地の価額(単価)を求めた後、まる2当該標準画地の価額(単価)を基に、本件評価対象土地の価額を計算しているが、一旦、当該標準画地の価額(単価)を計算する根拠が不明である上、そもそも、評価対象地は本件評価対象土地なのであるから、直接本件評価対象土地を対象として、無道路地の補正(別紙2の6の(1)の計算)を行うことが相当であり、当該標準画地を設定する必要性は認められない。
B 道路工事費用について
 無道路地は、宅地として有効に使用するために、その無道路地から道路に至る通路を開設する必要があるが、まる1当該通路は、無道路地と同様に宅地の一部分として使用するものであり、不特定多数の者の通行の用に供する道路等を築造するものではないこと、まる2本件評価対象土地から道路に至る通路とする部分は、J社ビル等の敷地として使用されている宅地であることからすると、本件鑑定書が想定する1平方メートル当たり3万円を超える工事費用については合理性が認められない。
C 無道路地としての補正について
 本件土地は直接道路に接しない土地であるから評価基本通達20−2に定める無道路地に該当することになるとしても、上記イのとおり、画一的に実施することが求められる評価基本通達に基づく評価とは異なり、不動産鑑定士等が行う不動産の鑑定評価については、不動産鑑定評価基準において、「不動産の価格は、その不動産の効用が最高度に発揮される可能性に最も富む使用(以下「最有効使用」という。)を前提として把握される価格を標準として形成される。この場合の最有効使用は、現実の社会経済情勢の下で客観的にみて、良識と通常の使用能力を持つ人による合理的かつ合法的な最高最善の使用方法に基づくものである。」と定められていることからすると、本件土地及び本件前面土地は、それぞれ請求人、母Gが所有する土地であり、また、本件旧公有地は、上記1の(4)のロのとおり、請求人、請求人の妻及び請求人の子がその全てを出資しているJ社が所有する土地であるから、本件土地、本件前面土地及び本件旧公有地をどのような形で使用するかについては、請求人、母G、請求人の妻及び請求人の子の意思によって決定できるものであるところ、上記ロの(ロ)のとおり、従前、一体で使用していた本件土地、本件前面土地及び本件旧公有地を個々に切り離して使用する(無道路地となる部分を生じさせる)など、その経済価値をいたずらに低下させるような不自然な土地使用は通常考えられないから、本件鑑定書において考慮している無道路地であることによる制約は、鑑定評価上考慮すべき事情には当たらず、この点を重視して大幅な補正をした本件鑑定書には合理性に欠ける点がある。
 なお、J社は、本件土地、本件前面土地及び本件旧公有地を一体として使用していること及び本件土地、本件前面土地及び本件旧公有地は、上記ロの(イ)のとおり、本件ホテルの建築に当たり、建ぺい率、容積率の計算の基礎とされた土地であることからすると、今後も、本件土地、本件前面土地及び本件旧公有地は、一体として使用される蓋然性が極めて高い土地であると認められる。
D 小括
 以上のとおり、本件鑑定書は、合理性を欠く点が多く認められる。したがって、本件鑑定書によるL評価額は本件土地の時価(請求人は上記1の(4)のカのとおり、L評価額の1平方メートル当たり○○○○円を基に時点修正を行った上で、本件土地の地積を乗じ、更に借地権相当額を控除した価額を本件土地の時価としている。)を適切に示しているものとは認められない。
(ロ) 請求人の主張について
A 請求人は、時価が容易に入手できる場合は、当該時価は相続税法第22条にいう時価であり、評価通達等により評価するまでもなく、本件土地は、L評価額に基づき評価すべきである旨主張する。
 しかしながら、相続税法第22条に規定する時価については、上記イのとおりと解すべきであるから、請求人の主張は採用できない。
B また、請求人は、本件売買契約等はf市鑑定評価額を基に成立していること、そして、評価通達等による更地価額は、L評価額に基づき評価した更地価額の1.6倍であり、評価通達等による更地価額はL評価額に基づき評価した更地価額を著しく上回っていることから、L評価額に基づき評価すべきである旨主張する。
 しかしながら、本件鑑定書が合理性を欠くものであることは、上記(イ)のとおりであるから、請求人の主張は採用できない。
ニ 結論
 上記イのとおり、評価基本通達により算定される価額が時価を上回るなど、評価基本通達の定めによらないことが正当と認められる特別の事情がある場合を除き、財産の評価は、評価基本通達に定められた評価方法に基づいて行うのが相当と解されるところ、上記ハの(イ)のDのとおり、本件鑑定書によるL評価額は本件土地の時価(請求人は上記1の(4)のカのとおり、L評価額の1平方メートル当たり○○○○円を基に時点修正を行った上で、本件土地の地積を乗じ、更に借地権相当額を控除した価額を本件土地の時価としている。)を適切に示しているものとは認められず、評価基本通達の定めによらないことが正当と認められる特別の事情は認められない。
 したがって、本件土地の価額は、評価通達等(評価基本通達及び評価基本通達に基づきP国税局長が定めた平成21年分の財産評価基準)により評価した価額によることが相当である。

(2) 争点2(本件土地の価額は、借地権の価額を控除して評価すべきか否か。)について

イ 法令解釈等
(イ) 借地権とは、上記1の(3)のホのとおり、建物の所有を目的とした地上権又は賃借権をいい、賃貸借とは同ニのとおり、賃貸人と賃借人との意思の合致により成立する。
(ロ) 上記1の(3)のリのとおり、借地借家法施行後もその効力を有することになる借地法第2条は、借地権存続期間満了前に借地権が消滅するのは、建物が朽廃したときだけで、この場合の朽廃というのは、建物が自然に腐蝕して、建物としての使用に耐えなくなった状態になることで、朽廃したかどうかは、建物の全体を観察して決めなければならず、建物を構成する各部分の材料が腐っても、建物として使用できる状態であれば、まだ朽廃したとはいえないとされている。そして、朽廃と滅失とは区分され、建物が滅失しても借地権は消滅せず、この場合の滅失というのは、人工的滅失(建物取壊し)、自然的滅失を問わず、滅失して建物としての存在がなくなることをさしていると解されている。
 また、建物が滅失した後、借地権者が行う新建物の再築は借地権が存続している間になされればよく、滅失から再築までの時間的間隔に制限はないとされている。
ロ 認定事実
 原処分関係資料、請求人提出資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ) J社は、上記1の(4)のニのとおり、昭和52年8月18日、本件土地、本件前面土地及び本件旧公有地を敷地として本件建物を建築していることからすると、同時期には、亡父とJ社の間において、建物所有を目的として本件土地を貸借することについての合意が存在していた。
 そして、J社と亡父又は母Gとの間において借地法第2条第2項による借地権の存続期間に関する約定があったとは認められない。
(ロ) 請求人が当審判所に提出した平成25年7月8日付の母G作成の書面によると、本件土地の相続時(平成11年6月○日)から本件贈与時(平成21年8月21日)までの間において、J社が本件土地の使用を継続することについて、当時の本件土地の所有者であった母GはJ社に対して、何ら異議を述べておらず、一方、借主であるJ社は、その間、地代を支払った上で本件土地を継続して使用していた。したがって、本件土地の相続時から本件贈与時までの間、J社による本件土地に係る建物所有を目的とする貸借権は存続していた。
(ハ) 本件土地に係る建物再築計画は、本件建物滅失後、J社が依頼したN社よりJ社へ複数案が提示され、現在の案は遅くとも平成21年3月13日までには策定・提示されている。
ハ 当てはめ
(イ) 本件建物は、上記1の(4)のニのとおり、昭和52年8月18日に本件土地上に建築されたものの、その当時の本件土地に係る地代支払の事実が確認できないため、本件土地の貸借関係が賃貸借であったのかあるいは使用貸借であったのかは不明であるが、本件土地に借地権が発生したのは、早ければ昭和52年8月18日である。そして、上記ロの(イ)のとおり、昭和52年8月18日には、亡父とJ社の間では本件土地に係る本件建物の所有を目的として貸借する旨の合意が存在していたことが認められ、上記1の(4)のヘのとおり、J社は、本件土地の地代を遅くとも昭和63年から本件贈与時まで、亡父又は母Gに支払っていたことを併せて考慮すると、J社と亡父との間には、遅くとも地代の支払が認められる昭和63年までに、本件土地に係る本件建物の所有を目的とする賃貸借契約が成立していたと認められる。したがって、昭和63年以降、J社は当該契約に基づく本件土地に係る借地権(以下「本件借地権」という。)を有していたと認められる。
(ロ) 上記イの(ロ)のとおり、建物が借地権存続期間満了前に朽廃したときは、借地権はこれにより消滅するが、 建物が滅失しても借地権は消滅しないとされているところ、上記1の(4)のニのとおり、本件建物は、本件駐車場設備内の事故を原因として取り壊されたものであり朽廃を原因として滅失したものではないから、平成10年7月に本件建物が滅失したことは、その時点での本件借地権の存続には影響しない。
(ハ) 上記1の(4)のリのとおり、J社は本件建物が滅失した後も、本件土地の使用を継続していること、同ヘのとおり継続して地代を支払っていること及び上記ロの(ハ)のとおり、J社は建物を再築すべくN社に本件土地の利用計画の策定を依頼していることからすれば、J社としては、本件建物の滅失後も本件借地権を返還することなく、本件土地を引き続き使用及び収益することを予定していたと認められる。
(ニ) ところで、上記1の(3)のヘのとおり、建物が堅固か非堅固かにより借地権の存続期間は異なるところ、本件建物が既に滅失していることから、それがいずれであったのかは、不明というほかない。そこで、本件建物が堅固な建物に該当していた場合又は非堅固な建物に該当していた場合のそれぞれについて、本件借地権についての存続期間に関する当事者の約定がないこと(上記ロの(イ))を前提に、借地法第2条第1項及び第6条第1項に基づいて以下検討する。
A 本件建物が堅固な建物に該当していた場合は、本件借地権の存続期間は60年となることから、本件建物が建築された昭和52年8月18日に本件借地権が発生したとしても、本件贈与時である平成21年8月21日は本件借地権の存続期間満了前であること、上記(ハ)のとおりJ社は本件借地権を返還していないことから、本件贈与時に本件借地権は消滅していない。
B 本件建物が非堅固な建物に該当していた場合は、本件借地権の存続期間は30年となるから、仮に、昭和63年に本件借地権が発生したとすれば、同時点から本件贈与時までの期間は30年に満たないこと、上記(ハ)のとおりJ社は本件借地権を返還していないことから、本件贈与時に本件借地権は消滅していない。しかしながら、仮に、昭和52年8月18日に本件借地権が発生していたとすれば、同日から30年を経過した平成19年8月18日には本件借地権は、一旦消滅していたことになるが、上記(ハ)のとおりJ社は本件借地権を返還していないこと、上記1の(4)のリのとおり、J社は本件建物が取り壊された後も現在に至るまで継続して使用しており、また、上記ロの(ロ)のとおり、本件建物が非堅固の建物であった場合の借地権の存続期間の満了日である平成19年8月18日当時、本件土地の所有者であった母Gが借主であるJ社に対して、何ら異議を述べていないことが認められることからすれば、仮に、平成19年8月18日(本件贈与時前)に本件借地権が一旦消滅したとしても、その時点において、J社と母Gにおいて借地法第6条に規定する法定更新がなされ、前契約と同一の条件で更に借地権を設定したと認められる。
C そして、本件借地権が、その発生時から本件贈与時までの間に消滅したとするその他の事由も認められないことからすれば、本件建物が堅固な建物か否か、また、その発生の日が昭和52年8月18日であったのか、あるいは昭和63年であったのかにかかわらず、本件贈与時には本件借地権が存在した。
(ホ) 以上のとおり、本件贈与時に本件土地上には、J社の借地権が存在することは明らかであるから、評価基本通達25の定めに従い、本件土地の価額は自用地としての価額から借地権の価額を控除して評価するのが相当である。
ニ 原処分庁の主張について
 原処分庁は、上記3の(2)の「原処分庁」欄のとおり、本件土地に対する借地権は本件贈与時には消滅していること及び本件土地は課税時期には更地であったことなどを理由として、本件土地にはJ社の借地権がないものとして評価すべきである旨主張するが、上記ハのとおり、早ければ昭和52年8月18日、遅くとも昭和63年に発生した本件借地権が、本件贈与時まで存続しており、また、賃貸人である亡父又は母Gと賃借人であるJ社の間で、本件土地に係る賃貸借契約の内容が変更された事実も認められないから、本件贈与時に本件土地上にJ社の借地権が存在することは明らかである。したがって、原処分庁の主張には理由がない。

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5 本件更正処分等について

(1) 本件土地の価額について

 上記4の(1)のニのとおり、本件においては、本件土地の価額を評価通達等に基づき評価するのが相当であるところ、原処分庁は、本件土地のうち本件a土地及び本件b土地についてのみ借地権があることを前提として、別表の2の(1)ないし(3)のとおり、本件土地を3画地に区分して評価しているが、上記4の(2)のハの(ホ)のとおり、本件土地の全体に借地権が存在するから、本件土地の価額は、1画地として評価するのが相当である。
 そうすると、評価通達等に基づく本件土地の価額は別表の3のとおりとなる。

(2) 本件更正処分について

イ 請求人は、本件贈与に係る贈与税の申告について、相続税法第21条の9第1項を適用しているところ、請求人は母Gの実子であって推定相続人であり、本件贈与当時、母Gは65歳以上であり、請求人は本件贈与時の属する年の1月1日において、20歳以上である(上記1の(1))から、同項の要件を満たしており、本件贈与に係る贈与税については、相続税法第21条の10《相続時精算課税に係る贈与税の課税価格》ないし第21条の12《相続時精算課税に係る贈与税の特別控除》の適用があるものとして課税価格の合計額の計算を行うこととなる。
ロ 以上の結果、請求人の課税価格の合計額及び申告期限までに納付すべき税額を算出すると、それぞれ別紙1の3課税標準等及び税額等の計算の「裁決後の額B」欄の「まる10課税価格の合計額」及び「まる13申告期限までに納付すべき税額」欄のとおりとなるから、本件更正処分は、課税価格の合計額については、○○○○円を超える部分を、申告期限までに納付すべき税額については、その全部を取り消すべきである。

(3) 本件賦課決定処分について

 上記(2)のとおり、本件更正処分は申告期限までに納付すべき税額について全部を取り消すべきであるから、本件賦課決定処分はその全部を取り消すべきである。

(4) その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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