別紙5

原処分庁が提示した更正の理由の要旨

 審査請求人(以下、この別紙及び別紙6内において「請求人」という。)が事業所得として申告した執筆等に係る報酬(以下、この別紙及び別紙6内において、当該執筆等に係る業務を「本件業務」といい、本件業務に係る報酬金額を「本件報酬金額」という。なお、平成21年分、平成22年分及び平成23年分の所得税の各更正処分に係る各更正通知書においては、本件業務について「本件執筆業」と表記されている。)について所得区分に誤りがあると認められたので、下記のとおり、本件報酬金額を雑所得として所得金額を算定し、更正した。
1 本件業務の所得区分について
 ある経済活動が所得税法上の事業所得を生ずべき事業に該当するかどうかは、その経済活動が、自己の危険と計算において、独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ、反復継続して営まれる業務であって、社会通念上事業と認められるかどうかにより判断すべきものとされている。
(1) 営利性・有償性の有無
 請求人は、平成20年から平成23年まで連続して赤字であることから、本件業務は、有償性は認められるものの、営利性は認められない。
(2) 継続性・反復性の有無
 請求人は、単発・連載の別はあるものの、専門誌等に論文等を発表し、また、セミナー等の講師を行っていたと認められるから、本件業務には継続性・反復性が認められる。
(3) 自己の危険と計算における事業遂行性の有無
 請求人は、○○法、○○法、○○法を研究分野とし、M大学において同分野の講義を担当しており、本件業務における著述等も同分野の研究業績を発表したものと認められる。しかし、本件報酬金額を同大学からの給与収入の金額と比較すると、本件報酬金額は、同大学からの給与収入との関係では副次的な収入であると認められる。したがって、本件業務は、事業遂行上の企画性は乏しく、また、危険負担も少ないものと認められる。
(4) 精神的・肉体的労力の程度
 請求人のM大学での講義日は、おおむね、火、水、木曜日の3日間であり、その前後日が移動日であると申し述べているから、週の大半は、同大学での講義あるいはその準備に費やされていると認められる。したがって、請求人の精神的・肉体的な労力の大半は、同大学での講義等にかけられていると認められるから、本件業務における精神的・肉体的な労力の程度は低いものと認められる。
(5) 使用人の雇用及び物的設備の有無
 請求人は、本件業務のために使用人を雇ったことはなく、また、本件業務における著述等はパソコンで作成していると認められるが、これ以外に本件業務を遂行するために必要な物的設備を有していないと認められる。
(6) 職歴、社会的地位、生活状況
 請求人は、平成19年4月からM大学に勤務し、現在に至っている。請求人の同大学での地位は准教授であり、請求人の生活の糧は、専ら同大学からの給与収入により賄われていると認められる。
(7) 本件業務の所得区分
 以上のとおり、平成21年分、平成22年分及び平成23年分における本件業務については、有償性は認められるものの、営利性は認められない。また、本件報酬金額は、副次的な収入であると認められるから、事業遂行上の企画性は乏しく、危険負担も少ないものと認められる。さらに、本件業務に係る精神的・肉体的な労力の程度は、M大学での講義等と比較すると低いものと認められる。そして、著述等の作成に使用するパソコン以外に物的設備はない上、使用人も有していない。また、請求人の生活の糧は、同大学からの給与収入で賄われていると認められる。これらの諸点を総合して勘案すると、請求人の本件業務は、事業所得を生ずべき事業とは認められない。
 本件業務は、上記のとおり事業所得には該当しないと認められるので、上記各年分の本件報酬金額に係る事業所得の金額はいずれも○○○○円となる。また、本件業務は、利子所得、配当所得、不動産所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しないと認められるから雑所得に該当する。

2 雑所得の金額について
(1) 総収入金額
 請求人の各年分の総収入金額は、平成21年分が○○○○円、平成22年分が○○○○円及び平成23年分が○○○○円である。
(2) 必要経費
イ 旅費交通費
(イ) 平成21年分
 請求人は、本件業務に係る旅費交通費として1,858,942円を必要経費に算入しているが、当該旅費交通費は、その主たる部分が業務遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分することができる支出金額10,110円以外の金額は、明らかに区分することができないことから、所得税法第45条第1項第1号に規定する家事関連費等に該当する。したがって、当該旅費交通費のうち1,848,832円は、雑所得の金額の計算上必要経費に算入されない。
(ロ) 平成22年分
 請求人は、本件業務に係る旅費交通費として1,920,844円を必要経費に算入しているが、当該旅費交通費は、その主たる部分が業務遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分することができる支出金額9,930円以外の金額は、明らかに区分することができないことから、所得税法第45条第1項第1号に規定する家事関連費等に該当する。したがって、当該旅費交通費のうち1,910,914円は、雑所得の金額の計算上必要経費に算入されない。
(ハ) 平成23年分
 請求人は、本件業務に係る旅費交通費として2,398,900円を必要経費に算入しているが、当該旅費交通費は、業務の遂行上必要である部分を明らかに区分することができないことから、所得税法第45条第1項第1号に規定する家事関連費等に該当する。したがって、当該旅費交通費2,398,900円は、雑所得の金額の計算上必要経費に算入されない。
ロ 通信費(平成22年分及び平成23年分のみ)
 請求人は、本件業務に係る通信費を必要経費に算入しているが、当該通信費は、業務の遂行上必要である部分を明らかに区分することができないことから、所得税法第45条第1項第1号に規定する家事関連費等に該当する。したがって、当該通信費は、雑所得の金額の計算上必要経費に算入されない。
ハ 接待交際費(平成21年分ないし平成23年分)
 請求人は、本件業務に係る接待交際費を必要経費に算入しているが、当該接待交際費は、業務の遂行上必要である部分を明らかに区分することができないことから、所得税法第45条第1項第1号に規定する家事関連費等に該当する。したがって、当該接待交際費は、雑所得の金額の計算上必要経費に算入されない。
ニ 消耗品費(平成21年分ないし平成23年分)
 請求人は、本件業務に係る消耗品費を必要経費に算入しているが、当該消耗品費は、業務の遂行上必要である部分を明らかに区分することができないことから、所得税法第45条第1項第1号に規定する家事関連費等に該当する。したがって、当該消耗品費は、雑所得の金額の計算上必要経費に算入されない。
ホ 新聞図書費
(イ) 平成21年分
 請求人は、本件業務に係る新聞図書費として1,510,840円を必要経費に算入しているが、当該新聞図書費は、業務の遂行上必要である部分を明らかに区分することができないことから、所得税法第45条第1項第1号に規定する家事関連費等に該当する。したがって、当該新聞図書費1,510,840円は、雑所得の金額の計算上必要経費に算入されない。
(ロ) 平成22年分
 請求人は、本件業務に係る新聞図書費として1,456,908円を必要経費に算入しているが、当該新聞図書費は、業務の遂行上必要である部分を明らかに区分することができないことから、所得税法第45条第1項第1号に規定する家事関連費等に該当する。したがって、当該新聞図書費1,456,908円は、雑所得の金額の計算上必要経費に算入されない。
(ハ) 平成23年分
 請求人は、本件業務に係る新聞図書費として1,790,818円を必要経費に算入しているが、当該新聞図書費は、その主たる部分が業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分することができる支出金額11,544円以外の金額は、明らかに区分することができないことから、所得税法第45条第1項第1号に規定する家事関連費等に該当する。したがって、当該新聞図書費のうち1,779,274円は、雑所得の金額の計算上必要経費に算入されない。
ヘ 雑費(平成21年分ないし平成23年分)
 請求人は、本件業務に係る雑費を必要経費に算入しているが、当該雑費は、業務の遂行上必要である部分を明らかに区分することができないことから、所得税法第45条第1項第1号に規定する家事関連費等に該当する。したがって、当該雑費は、雑所得の金額の計算上必要経費に算入されない。
ト 地代家賃(平成21年分ないし平成23年分)
 請求人は、本件業務に係る地代家賃を必要経費に算入しているが、当該地代家賃は、業務の遂行上必要である部分を明らかに区分することができないことから、所得税法第45条第1項第1号に規定する家事関連費等に該当する。したがって、当該地代家賃は、雑所得の金額の計算上必要経費に算入されない。
(3) 所得金額
イ 平成21年分
 以上のとおり、平成21年分の雑所得の金額は、上記(1)の総収入金額○○○○円から上記(2)のイの(イ)の旅費交通費10,110円を差し引いたXXX,XXX円となる。
ロ 平成22年分
 以上のとおり、平成22年分の雑所得の金額は、上記(1)の総収入金額○○○○円から上記(2)のイの(ロ)の旅費交通費9,930円を差し引いたXXX,XXX円となる。
ハ 平成23年分
 以上のとおり、平成23年分の雑所得の金額は、上記(1)の総収入金額○○○○円から上記(2)のホの(ハ)の新聞図書費11,544円を差し引いたXXX,XXX円となる。

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