(平成26年7月28日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、Uの販売業等を営む審査請求人(以下「請求人」という。)が、販売手数料として支出した金員について、原処分庁が、当該金員は、販売手数料として支払われたものではなく、その支払先や支払の目的が明らかではないので、損金の額及び課税仕入れに係る支払対価の額とすることはできないとして、法人税並びに消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしたことに対し、請求人が、当該各支払は取引先に対して売上げの一部を割り戻したものであって、その支払先及び支払目的は明らかであり、業務に関連したものであるから、損金の額及び課税仕入れに係る支払対価の額にすることができるとして、原処分の全部の取消しを求めた事案であり、争点は、当該各支払に係る金員について、損金の額に算入すること及び課税仕入れに係る支払対価の額として計算することができるか否かである。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 請求人は、平成18年10月1日から平成19年9月30日まで、平成19年10月1日から平成20年9月30日まで、平成20年10月1日から平成21年9月30日まで、平成21年10月1日から平成22年9月30日まで及び平成22年10月1日から平成23年9月30日までの各事業年度(以下、順次、「平成19年9月期」、「平成20年9月期」、「平成21年9月期」、「平成22年9月期」及び「平成23年9月期」といい、これらを併せて「本件各事業年度」という。)の法人税の青色の確定申告書を、また、平成18年10月1日から平成19年9月30日まで、平成19年10月1日から平成20年9月30日まで、平成20年10月1日から平成21年9月30日まで、平成21年10月1日から平成22年9月30日まで及び平成22年10月1日から平成23年9月30日までの各課税期間(以下、順次、「平成19年9月課税期間」、「平成20年9月課税期間」、「平成21年9月課税期間」、「平成22年9月課税期間」及び「平成23年9月課税期間」といい、これらを併せて「本件各課税期間」という。)の消費税等の確定申告書を、それぞれ別表1及び2の各「確定申告」欄のとおり記載して、いずれも法定申告期限までにe税務署長に提出した。
ロ e税務署長は、原処分庁所属の職員の調査に基づき、別表1及び2の各「更正処分等」欄のとおり、本件各事業年度の法人税に係る各更正処分(以下「本件法人税各更正処分」という。)及び本件各課税期間の消費税等に係る各更正処分(以下「本件消費税等各更正処分」という。)を、また、本件各事業年度の法人税に係る過少申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件法人税各賦課決定処分」という。)及び本件各課税期間の消費税等に係る過少申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件消費税等各賦課決定処分」という。)をした。
ハ 請求人は、これらの処分を不服として、平成24年11月21日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、平成25年2月20日付で棄却の異議決定をした。
ニ 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成25年3月19日に審査請求をし、取引先に対し売上げの一部を割り戻した詳細を示すものとして、別表3の「売上割戻一覧表」を提出した。

(3) 関係法令の要旨

 別紙記載のとおりである。

(4) 基礎事実

 次の事実については、請求人と原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 請求人について
 請求人は、平成16年3月○日に、土木工事業等を目的として、商号をf社、本店所在地をx市y町○−○、取締役をgとして設立された法人である。gは、平成19年11月1日に代表取締役に就任し、同日、商号がa社に変更され、併せて、本店所在地を現在の所在地に移転して、Uの販売業等を営んでいる。
 なお、平成25年9月20日、gは代表取締役を辞任し、同日、新たにbが代表取締役に就任した。
ロ hについて
 hは、請求人の代表者であったgの夫であり、請求人の実質的な経営者である。hは、本件の審査請求における請求人の代理人の一人である。
ハ 本件の各支払について
 請求人は、別表4の「支払金額」欄記載の金額(以下「本件各支払」という。)をそれぞれ支払った上で、本件各支払が「i社」ことiに対する販売手数料であったとして、その旨を関係帳簿に記載した上、上記(2)のイの各確定申告を行う際に、本件各事業年度の所得の金額の計算上、本件各支払の消費税等額抜きの金額(税抜き額)に相当する別表4の「損金算入額」欄記載の金額を損金の額に算入するとともに、本件各課税期間の消費税等の計算において、本件各支払に係る金額を課税仕入れに係る支払対価の額として計算した。

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2 主張

原処分庁 請求人
 本件各支払は、以下のとおり、その費途が不明であり、支払に関する業務関連性も明らかではないので、本件各事業年度の損金の額に算入すること及び本件各課税期間の課税仕入れに係る支払対価の額として計算することはできない。  本件各支払は、以下のとおり、j社宛の支払であり、支払に関する業務関連性も明らかなので、請求人にとって売上割戻し、すなわち販売手数料に係る経費に当たり、本件各事業年度の損金の額に算入すること及び本件各課税期間の課税仕入れに係る支払対価の額として計算することができる。
1 本件各支払の支払先
  本件各支払の支払先がj社であることを裏付ける証拠資料の提出がないことから、本件各支払がj社に対する支払であるとは認められない。 請求人は、小切手と引換えにi社名義の請求書及び領収証を受領し、更には、本件各支払に係る金員について、iへの販売手数料として本件各事業年度において損金の額に算入していることから、本件各支払がj社への支払であるとする請求人の主張と矛盾する。
 また、割戻しについてj社の代表者mの指示があったとする請求人の主張を確認することができない。
1 本件各支払の支払先
 本件各支払は、j社において作成されたi社名義の請求書及び領収証を、mの指示を受けた同社の常務取締役nが持参して、小切手と交換する方法でされてきた。
 本件各支払については、nが受領し、その上で自己関連の口座で現金化までされていることから、j社に対する支払があったといえる。
2 本件各支払の支払事由
請求人の実質的経営者であるhが本件各支払に係るiからの役務提供がないことを認めていることなどから、本件各支払の費途が不明であり、支払に関する業務関連性も明らかでない。
なお、上記1のとおり、本件各支払がj社に対する支払とは認められないことから、本件各支払の支払先がj社であることを前提とした主張は行わない。
2 本件各支払の支払事由
請求人は、長期的かつ継続的に、j社から各月の売上金回収後、締めの都度直ちに当該売上額に見合う本件各支払を買主たるj社に対して直接バックしている。
本件各支払は、j社という重要な取引先の依頼に応じて支払ったものであり、利益を生み出すためのいわゆる営業外費用に当たる。
3 消費税等の課税仕入れ
 本件各支払は、iからの役務の提供及びiへの対価の支払の事実が確認できないので、課税仕入れに係る支払対価であるとは認められない。
3 消費税等の課税仕入れ
 j社に対する帳簿上の売上げは、本件各支払分を上乗せした金額であるから、帳簿の記載等の形式的要件が整っている限り、本件各支払は、課税仕入れに係る対価として認められてしかるべきである。
 本件で提出した資料において、真実と異なる部分は、j社に対する支払という取引相手の名称のみであり、取引年月日、数量、返還金額等は全て真実であるから、単に形式的に間違いがあるというだけで仕入税額控除を認めないということは、公平かつ適正な課税という観点から到底認められない。

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3 判断

(1) 法令解釈等

イ 法人税法第22条第1項は、内国法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする旨、また、同条第3項は、内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、当該事業年度の収益に係る売上原価等の原価の額(1号)、販売費、一般管理費その他の費用の額(2号)及び損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの(3号)とする旨、そして、同条第4項は、上記各号に掲げる額は、公正処理基準に従って計算されるものとする旨、それぞれ規定している。
 そして、公正処理基準によれば、販売費、一般管理費その他の費用とは、収益と個別的に対応させることの困難ないわば期間費用であって、事業活動と直接関連性を有し、事業遂行上必要な費用をいうものと解されるから、内国法人の所得の金額の計算上、損金の額に算入することができる販売費、一般管理費その他の費用とは、当該法人の業務の遂行上必要と認められるものでなければならないというべきものであり、支出のうち、業務との関連性がないものは、損金の額に算入することができないというべきである。
 また、法人が支出した費用を税務上損金とするためには、その支出内容、支出の相手方、支出の時期等が明確でなければならない。
 すなわち、法人が費用として支出した金額のうち、その費途を確認することができないいわゆる費途不明金について、これをそのまま税務上損金として認めると、業務との関連性の有無等、課税所得計算の正当性や客観性等を検証することができなくなり、課税の公平が保たれないこととなる。このため、費途不明金はおよそ損金の額への算入を認めるべきではない。法人税基本通達9−7−20が、法人が交際費、機密費、接待費等の名義をもって支出した金銭でその費途が明らかでないものは、損金の額に算入しないと定めているのは、かかる趣旨を明らかにしたものであり、当審判所においても相当と認める。
 なお、費途不明の交際費等については、判定時期が限定されていないため、審査請求等において、支払内容、支出の相手方、支出の時期等及び業務との関連性など、その費途が明らかになった交際費等については、費途不明金とはいえないと解する。
ロ また、所得を構成する損金の額については、本来、原処分庁が立証責任を負うものではあるが、納税者が業務に関連して費用を支出したとして損金の額に算入し、原処分庁が、同支出について損金の額に算入すべきでないと主張する場合、原処分庁は、損金の存否に関連する事実に直接関与していないのに対し、費用等を支出したとする者は、原処分庁よりも、より証拠に近い立場にあること及び一般に、不存在の立証は困難であることなどに鑑みると、更正処分時に存在し、又は提出された資料等を基に判断して、当該支出を損金の額に算入することができないことが事実上推認できる場合には、費用等の支出を主張する側において、上記推認を破る程度の具体的な反証、すなわち、当該支出と業務の関連性を合理的に推認させるに足りる具体的な立証を行わない限り、当該支出の損金の額への算入は否定されると解される。
ハ 消費税法は第30条第1項において、仕入れに係る消費税額の控除について定めているが、これは、国内において事業者が行った資産の譲渡等に対して、広く消費税を課税する(同法第4条《課税の対象》第1項)結果、取引の各段階で課税されて税負担が累積することを防止するため、前段階の取引に係る消費税を控除することとしたものである。そして、同法第30条第7項は、同条第1項による仕入税額控除の適用要件として、当該課税期間の課税仕入れに係る帳簿及び請求書等を保存することを要求しているところ、これは、同法第58条《帳簿の備付け等》に基づく一般的な記帳義務とは別に、課税仕入れに係る消費税額の調査、確認を行うための資料として、換言すれば真に課税仕入れが存在するかどうかを確認するために、帳簿及び請求書等の保存を義務付け、当該保存がない課税仕入れに係る税額については、同法第30条第1項の仕入税額控除の規定を適用しないこととしたものと解される。
 また、消費税法第30条第8項は、この帳簿には課税仕入れの相手方の氏名又は名称等を記載するものとし、同条第9項は、当該請求書等について、事業者に対し課税資産の譲渡等を行う他の事業者が、当該課税資産の譲渡等につき当該事業者に交付する請求書等で書類の作成者の氏名又は名称等を記載するものと規定しているのであるが、上記の同法の趣旨からして、この帳簿等への課税仕入れの相手方及び請求書等の作成者の氏名又は名称等の記載は真実の記載であることを当然に要求しているというべきである。
 したがって、消費税法は、仕入税額控除の要件として保存すべき帳簿には、課税仕入れの年月日、課税仕入れに係る資産の譲渡又は役務の提供の内容及び支払対価の額とともに、真実の仕入先の氏名又は名称等を記載することを要求し、また、仕入税額控除の要件として保存すべき請求書等とは、当該事業者に対し仕入税額控除の対象となるべき課税資産の譲渡等を行う他の事業者が、当該課税資産の譲渡等につき当該事業者に交付する請求書等であって、課税資産の譲渡等を行った年月日、課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の提供の内容及び譲渡等の対価の額とともに、真実の作成者の氏名又は名称を記載することを要求していると解するのが相当である。

(2) 認定事実

 原処分関係資料、請求人提出資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
イ 本件各支払の支払状況等について
(イ) 請求書及び領収証
 請求人は、上記1の(4)のハの本件各支払に係る証拠書類として、「i社」名義で作成された請求書及び領収証等を保存している。当該請求書では、別表4の「計上年月日」欄記載の各支払月の2か月前の20日を発行日として、「品名」をVとし、「数量」を別表3の「売上」欄中の「数量」欄のt数とし、「単価」を同表の「割戻金」欄中の「割戻単価」に当たる金額(平成○年○月までは○○○○円、同年○月からは○○○○円。なお、同表の第26列は、単価○○○○円の○○○○t分と、単価○○○○円の○○○○t分との平均単価が「割戻単価」○○○○円に当たるものとして記載されている。)とし、「金額」欄を「数量」欄のt数に「単価」欄の金額を乗じた金額とする記載があり、同金額が消費税等相当額を含むものとされ、i社名義の記名、押印がされている。また、当該領収証では、領収金額及び領収日(請求書発行月の翌々月の上旬)等が記載されており、i社名義の記名、押印がされている。
(ロ) 小切手の取立て
A 請求人がiに対する販売手数料として振り出した小切手(以下「本件各小切手」という。)は、別表4の「計上年月日」欄記載の日に、同表記載の小切手番号で計上されている。
B 本件各小切手は、j社の常務取締役であるnが受領し、n名義や、「p会代表 n」名義、nの妻である「q」名義、j社の代表取締役である「m」名義の複数の預貯金口座(以下「本件各口座」という。)で取り立てられている。
C 本件各小切手の取立日とおおむね同日又はそれに近い日(長くて1か月程度後)に、本件各口座から当該小切手の取立額かそれに近い金額が現金で出金されているほか、本件各小切手の取立てに先立って、額面金額に相当する金額が現金で出金されている場合も認められる。
ロ iについて
 iは、少なくとも原処分に係る調査が行われた際から、その所在が確認されておらず、当審判所において調査したところによっても、平成25年6月時点で、上記イの(イ)の請求書及び領収証に記載された事務所所在地には、iの事務所は見当たらない。
ハ 請求人の提出資料について
(イ) 請求人は、審査請求の際に、上記1の(4)のハの本件各支払が、請求人のj社に対するVの売上数量に、割戻単価を乗じた金額である割戻金額になることを示す一覧表として、別表3「売上割戻一覧表」を提出し、その根拠となる数量を示すものとして、以下の資料を提出する。
A f社(請求人の前商号)がVにつきj社に宛てた平成18年10月から平成19年10月までの各20日締切分の請求書、平成19年8月及び同年10月の各31日締切分の請求書並びに請求人がVにつきj社に宛てた平成19年11月20日締切分の請求書の各写し。
B 請求人がVにつきj社に宛てた平成19年12月から平成23年7月までの各月の20日締切分及び平成22年8月31日締切分の請求明細書の各写し(納品先ごとの数量、単価及び金額が記載されている。)。1t当たりの単価は平成○年○月○日までが○○○○円、同年○月○日からが○○○○円、平成○年○月○日から一部が○○○○円とされ、数量は別表3の「売上」欄の「数量」と同数とされている。
C j社が請求人に対して振り出した平成19年から平成23年までの小切手又は裏書した手形の写し(当該小切手及び手形の合計額面金額は、上記A及びBの各請求書及び請求明細書記載の金額の合計とおおむね一致する。)。
D 平成18年10月ないし平成19年11月締切分について、上記Aの請求書記載のj社に対する売上げについて、納品先ごとの数量、単価及び金額を記載した「実績表」。いずれも1t当たりの単価は○○○○円とされ、数量は別表3の「売上」欄の「数量」と同数とされている。
E 上記Bの請求明細書又は上記Dの実績表記載の販売数量に、割戻単価を乗じて計算した「計算書」。j社に対する売上げの1t当たりの単価が○○○○円の場合に割戻単価は○○○○円とされ、j社に対する売上げの1t当たりの単価が○○○○円又は○○○○円の場合に割戻単価は○○○○円とされている。
F 請求人がVにつきj社に宛てた平成24年9月20日及び同年10月20日締切分の売上げに係る請求明細書の写し。1t当たりの単価は○○○○円又は○○○○円である。
(ロ) 請求人は、異議申立ての際には、以下の資料を提出していた。
A 平成16年3月20日付の請求書写し
 f社が、平成16年3月20日付でj社に宛てた「当月お買上額」と消費税相当額との合計9,161,361円を請求する旨の請求書写し。
 左肩空白部分には、「m社長より当社のX単価に○○○○円上乗せするのでi社で返却して下さいとの事で指示有でm氏より今後これでよろしくとの事たのまれる h」との手書きのメモ書きがある。
B 平成20年11月20日締切分の請求明細書写し
 請求人がj社に宛てた「平成20年11月20日締切分の請求明細書」の写し。「今回御請求額」は「今回御買上額」と「消費税」及び「繰越金額」を含め37,270,797円となっており、担当者であるb、rの押印がある。
 右肩空白部分には、「m社長より前の金額(上乗せ分)に○○○○を上乗せし計○○○○を今後返却する様に指示有で(m氏よりi社でとよろしくとの事 h)」との手書きのメモ書きがある。
ニ 関係者の申述等について
(イ) hの平成24年5月28日付申述要旨
A 私は、請求人の実質的経営者であり、請求人の関係法人であるs社の代表取締役である。
B 本件各支払に係るiとの取引は、平成17年3月頃から開始した。j社の元従業員であったiがU販売店のi社として独立した後に、j社の代表者であるmから、「j社とのX取引を行うに当たり、いくらかiの方へ頼むわ」と言われて支払をしたのが始まりである。
C 本件各支払は、j社に対する売上げに係る正規の請求単価金額に、iへの支払分として単価を上乗せして請求し、その上乗せした額を販売手数料として計上し、支払っていた。
D 支払に係る決済は、j社の従業員のnが、i社名義の請求書と領収証を持参して来たときに、請求人の本社事務所で、小切手を手渡していた。
E 正確な時期は不明であるが、平成19年か20年の初め頃、iの行方が分からなくなった。その後も、役務提供がないにもかかわらず、販売手数料として引き続き計上し、支払い続けていた。
F iが行方知れずとなった後、mと話し合い、本件各支払の支払単価を○○○○円と決め、その後、単価を○○○○円に変更し、更に単価を○○○○円に増加させている。なお、単価の変更はnと相談して決めた。
G 平成16年4月から平成17年2月までの間、販売手数料勘定で計上している「n社」への支払は、iに対する支払と同じ内容のものであり、nに小切手で支払っていた。
(ロ) hの平成25年1月27日付申述要旨
A 私は、請求人の実質的経営者である。
B 請求人がiに対して販売手数料を支払う取引は、平成16年頃、j社の代表取締役であるmより、従来の仕入単価に1t当たり○○○○円を上乗せした請求書を作成するよう指示され、上乗せ代金をj社の従業員であったiに支払い、i社名義の請求書と領収書を受領していた。
C 当初は販売手数料を現金で支払っていたが、○○された経緯があったため、小切手で支払うようにしたが、小切手で支払うと取立銀行で誰が現金化したか分かるためである。
 Yの仕入単価が約○○○○円高くなったときに、iに対する販売手数料の単価も上がっており、トータル○○○○円程売上単価に乗せている。
D iがj社を辞め行方不明になった後は、mから販売手数料をnに支払うように言われたので、nに支払っている。その際には、以前と同じくi社の請求書と領収書を受領している。平成24年3月のZの調査があった後、iに対する支払は停止し、今までの1t当たりの仕入単価からiに対する販売手数料を減算した新単価を請求している。mから平成24年4月から6月までの販売手数料分を裏で渡して欲しいと言われたが、Zの調査が終わるまで支払を留保している。
E iに対する支払債務を、請求人のグループ法人であるu社がiに有している売掛金債権と相殺しないのは、当該販売手数料は、iへの支払ではなく、実質的にはj社に対する支払だからである。
(ハ) hの答述要旨
A 私は、請求人の実質的経営者である。日々の会社運営は社長が行っているが、私は、会社経営の相談に乗るなど顧問的な役割を担っている。
B 本件各支払は、平成18年の1、2年前頃からであり、mから、当初の金額に上増しして返して欲しいとお願いされたのが始まりである。
C つまり、仮にj社との間で○○○○円の取引があった場合に、○○○○円を上増しして請求人から請求し、その上増し分○○○○円を後に販売手数料としてj社に支払っていた。j社は請求人にとって重要な取引先であり、j社側からの強い要求を退けることができなかった。  当初はn社名義の請求書等をもらっていたが、iに変わり、現在に至っている。単価も、最初は○○○○円であったものが○○○○円になり、最終的には○○○○円に変わったが、全てmからの要求に基づくものであった。
D 本件各支払は、通常取引分とは無関係の支払であり、合計して決済するとややこしくなるし、何か後で主張したいとも思い、通常の商取引分とは別枠で、明確に区分して支払っていた。
E 請求人とj社との取引におけるj社側の担当者はnであり、決済に関しては、nが毎月の集金時に、n社名義やi社名義の請求書や領収証を持参し、通常取引分と一緒に持ち帰っていた。
(ニ) mの申述要旨
A iは10年前にj社の社員として採用したが、4、5年前○○として以来会っていない。退職後、独り立ちさせ面倒をみるという話はなく、hに面倒をみるように依頼することもあり得ない。
B j社は、請求人からXを仕入れており、Uを製造した後、hの会社に販売している。
C 請求人との値段交渉担当は、nである。
(ホ) mの答述要旨
A 請求人とは、平成13年頃請求人のグループの一社であるu社からUを受注して以後取引を始めた。
B 請求人との取引の開始時期は覚えていないが、請求人からj社がUの原料であるXを仕入れ、それに○○等を混合していわゆるUを製造し、それを請求人に販売するようになった。
C iは、平成14年頃から平成17年頃まで当社にいた従業員であり、退職する際には、iからi社という屋号でUの手配を行うと聞いた。iが独立した後、請求人とも取引を始めたと聞き、その後どこかでhに会った際に、「うちにいた従業員なので、よく面倒をみてやって欲しい。」という趣旨のことは言ったと思うが、それは飽くまで元従業員だったからであり、私の方からj社と請求人との間にiを仲介者として入れることを頼んだ訳ではなく、また、hからもそのような依頼はなかった。
D j社と請求人との取引の間にiが関与していたということはないが、iが退社して以降、平成18年中の1年間くらいは、j社はiと取引を行っていた。なお、iが大規模な現場への取引の話を持ってきたことがあったが、資金的にも経験的にもそこまで信用していなかったのでその話は断ったものの、その案件は請求人が受注することになり、j社のUを納入したことがあった。iは、この案件で請求人から手数料的な金銭を受け取っていたはずである。
E 私名義の口座やj社の親睦会であるp会やnの個人口座などで、請求人が振り出した小切手が取り立てられていることは、平成24年3月頃にj社が税務調査を受けた際、調査担当者からその旨の指摘を受け、また、nからその旨の報告を受けて初めて知った。
F 私名義の口座は、私が個人的に使用している口座であり、普段はj社の経理を担当している私の妻に通帳を預けていた。また、nにも、この通帳からの出金を頼んだことがあったので、通帳と印鑑を預けていたこともあったと思う。いずれにせよ、請求人の小切手を、これらの口座で現金化したり出金したりしていたのはnである。
G nからは、「iから頼まれて、請求人から預かった小切手をm名義の口座やp会名義の口座などで取り立てて現金化し、その現金をiに手渡していた。」旨の報告を受けている。これらの現金は、iのものであると思っており、私は1円たりともその現金を受け取っていない。
H いくらiから頼まれたとはいえ、iに何か事情があって小切手を現金化することができないのであれば、nは、iに現金を手渡す際、ちゃんと渡したという証明のために、せめてiから領収書を取っておくべきであったのに、何もしていなかったため、iに現金を手渡したことが客観的に分かる領収書などの資料はない。
I j社が請求人から仕入れるXの単価については、最終的には私がhと単価交渉をして決めていた。
J 平成16年3月頃及び平成20年11月頃に、私からj社の仕入単価を上げるよう、hに申し入れたことはない。
K j社と請求人との取引において、請求人がiに支払ったという金額を、請求人がj社への売上金額にそのまま上乗せするようなことは道理が通らないし、また、その話をhから聞いたこともなく、私が了解したこともなかったため、以後その部分の単価を下げるよう、hに申し入れた結果、平成24年の秋頃から、金額的な記憶はないが、j社が請求人からXを仕入れる単価が下がったと記憶している。
L 私名義の口座等で取り立てられている請求人が振り出した小切手の現金化は、nがiから頼まれてした行為であり、私やj社が受け取る筋合いのものではないので、j社で修正申告を行う必要はないが、いくらiから頼まれたとはいえ、nが私に報告しないまま、このような通常では考えられないことを行っていたことと、nがiに口座から出金した現金を手渡していたという客観的な領収書等の証拠をもらってなかったということもあり、代表者としての責任を感じ、私名義の口座取立分についてj社で修正申告に応じた。
(ヘ) nの申述要旨
A iは友人であり、j社への○○後も会っている。
B iから両替(現金化)して欲しいと頼まれて、iから請求書と領収証を預かり、請求人の本社に持参して本件各小切手を受け取っていた。
C 小切手は、私及び私の家族名義、若しくはp会名義の口座で取り立て、その後、現場でi又はその使いの者に現金を手渡していた。
(ト) nの答述要旨
A 私は、平成4年か5年頃j社に入社し、現在は同社の常務取締役を務めており主に営業を担当している。
B 私が入社した後の平成6年か7年頃にj社と請求人との取引が開始した。請求人との取引は、請求人からXを仕入れてj社でUを製造し、請求人に販売するという形態である。
C 私は、取引開始当初から請求人の担当で、毎月5日に集金のために同社を訪問していた。請求人の支払は15日締めの翌月5日払で、手形と小切手を半額ずつの支払条件であった。このような半金半手の支払条件は、取引開始当初から現在に至るまで変わっていない。請求人に対しては、事前に請求書を送付し、集金当日に、請求金額に見合った手形と小切手を、j社の領収書と引換えに受け取っていた。
D i社名義の請求書や領収書は、私が請求人に持って行ったものだと思う。
 i社は、j社の元従業員であったiが用いていた屋号である。iは、平成9年か10年頃にj社の従業員になり、その後、平成16年頃に退職したが、特に○○があったという記憶はない。
E iとは、プライベートでの付き合いはほとんどなかった。最後にiと会ったのはZの調査があった平成24年3月の少し前だったと思う。音信不通状態になる1年くらい前から、iが電話番号を変えたり、非通知設定で電話をかけてくるようになったので、その頃には私から連絡を取ることはできない状況であった。このような状況の中、平成24年3月頃からiから電話がかかってこなくなったという経緯である。現在のiの居所や連絡先は全く分からない。
F iがj社を退職して暫く後の平成17年頃、1年に満たないくらいの期間、j社とiは取引していた。iは、自ら設備等を持っておらず、Uの販売会社のような仕事をしていたので、j社がiに対してUを販売する取引だったと思う。iと請求人との間で取引があったかどうかは知らないが、iから頼まれて請求書や領収書と請求人の小切手を引き換えていたので、何らかの取引があったのだろうとは思っていた。
G 私は、i社名義の請求書や領収書は作成しておらず、iが作成したものと思う。請求書や領収書は、iから、いつも封筒に入れた状態で渡されていた。中を見たことはあるが、詳しい内容は覚えていない。
H 詳しい日時は覚えていないが、請求人にi社の請求書等を持参するようになったのは、iから電話があり、「請求人の所に行っているならついでに請求人宛の請求書等を持って行って欲しい。」と頼まれ、知らない仲でもないので頼みを聞くことにした。内容は小切手を両替して欲しいという話だったと思うが、私としては、余り口出しすべきではないと思い、どのような取引か確認はしていない。請求人からの依頼はなかった。
I iの依頼を受けるか否かについては、誰にも相談していない。請求人への集金のついでぐらいに軽く考えていたので、余り深く考えずに依頼を受けた。iから謝礼等の申出はなく、私から要求したこともない。
J 平成24年に至るまで長期間にわたり、私が今回の取引に関与していたことになるが、iや請求人に対して「もう止めにしてくれ」と言ったことはなかった。業務の一環として行っていたことで負担感はなかったし、iも私に都合を合わせてくれていたので、止めたいと思ったこともなかった。
K 私が請求人から持ち帰った小切手を、私が管理していたm名義など複数の口座に入金した上で現金化し、その現金をiに渡していたことは間違いないが、特に意識して口座を使い分けしていたわけではない。qは私の妻で、p会は会社の互助会的な組織であり、m名義の口座は、もともと社長から入金や出金を頼まれることがあったので、私が通帳や印鑑を管理するようになった口座である。各口座からの現金の引出しは、私が、銀行の窓口やATMで引き出していた。
L iに会う前には、1円単位まで正確に引き出していたわけではないものの、入金した小切手の額に近い額を引き出すようにしていた。iに会う場所や日時は、私が仕事で行く現場の近くなど、こちらの都合に合わせて会うようにしていた。
M iには、封筒に入った状態のお金を渡すだけで、iがその場で金額を確認したことはなかったが、金額についてもめたことは一度もなかった。iに対して、金銭の受領について一筆書いて欲しいと依頼したことはなく、今回の取引は私とiの間のことなので、後で何か言われても、「渡した」と言えば済むと思っていた。
N n社は、私が○○を所有して、平成14年頃に、約1年間ぐらい活動していた際に使っていた屋号であるが、取引相手はj社だけであり、請求人と取引を行ったことはない。
 平成16年頃に、請求人との取引がn社名義で行われ、請求人振出しの小切手の一部がn社名義の口座に入金されているのは、請求人とiとの取引に関係があると思うが、理由は分からない。私が、n社名義の請求書や領収書を請求人宛に作成したことはないが、iから、n社の名義を使わせて欲しいと依頼されたことがあったかもしれない。
O iが請求人に請求する金額の算出根拠に、請求人とj社との取引数量が用いられていたかどうかや、請求人とj社との間の取引にiが関与したことがあるかどうかは分からない。私は、請求人とj社との取引の状況をiに教えたことはなく、iが請求人と連絡を取っていたのであれば、iが請求人とj社との取引数量を請求人から聞き出すことはあり得ると思う。また、請求人とiとの間での支払条件の取決めによっては、決められた金額から逆算することも可能かもしれない。
P j社における請求人との仕入単価の交渉はmが行っており、私が交渉していたのは、請求人に対する売上単価であるが、請求人との間で、仕入単価の上乗せについて何らかの話をしたことがあったとは認識していない。
Q iと連絡が取れなくなった後、初めて請求人を訪問した際には、電話がかかってこないという話をしたと思うが、小切手をどうするかということについて話をした記憶はない。その翌月か翌々月ぐらいまでは、やっぱり連絡がないという話をしたが、その後は特に話をしていない。
R 私が今回の取引に関わっていたことについて、j社からの処分を受けたことはないが、mから何でそんな取引に関わったのかと何度か叱られた。
S 私が請求人との関係に配慮して、今回の取引(小切手の現金化)を止められなかったということはない。
(チ) v税理士の答述要旨
A 私は、j社の顧問税理士であるので、j社が請求人からXを仕入れて製造したUを請求人に売り上げている関係にあることは分かっていた。
B 私がmの子供の結婚式に出席した際にhに会ったことがあるが、私からhにj社との取引について会話をしたり、hから連絡を受けたりしたことは一度もない。
C 平成24年6月からj社が受けた税務調査に顧問税理士として立ち会った。j社が修正申告した正確な科目や金額は記憶していないが、修正申告した内容には、請求人が振り出した小切手をmの個人口座で取り立てたことによる雑収入除外が含まれていたと記憶している。
D 調査の際に指摘を受けたのは、「mが○○に開設している個人口座で請求人が振り出した小切手を取り立てていることを確認しているが、これは雑収入の除外に当たる。」というものであったので、mに事実かどうか確認したところ、mは、その事実を知らなかった。
E その後のnの話では、以前、j社の従業員であったiに頼まれて、請求人がiに対して振り出した小切手を、mやj社の親睦会であるp会名義の預金口座で取り立て、それらの口座から現金を出金してiに手渡していたということであった。
F j社は、請求人が振り出した小切手のうち、m名義の口座で取り立てた分について、修正申告したが、mは、調査を受けた当初から一貫して、請求人が振り出した小切手はj社には帰属しない旨主張していたので、私としてもこれらの小切手はj社には帰属しないと思っている。
G j社が修正申告に応じたのは、「m名義の口座等で取り立てられた小切手は、その使途が客観的に分かる資料もなく、iの所在も不明で確認することができない。」旨の○○の指摘と、「請求人が振り出した小切手はmやj社が受け取ったものではなく、iの依頼を受けたnがmの口座などで現金化しただけである。」という旨のmの言い分が平行線をたどり、調査が相当長期間に及んだため、調査の長期化を避けるための一種の妥協である。したがって、j社が修正申告した金額の中に、請求人が振り出した小切手でm名義の口座での取立分が含まれているのは事実であるが、決して雑収入除外を認めたというものではなかった。

(3) 判断

 本件の争点は、本件各支払に係る金員について本件各事業年度の損金の額に算入すること及び本件各課税期間の課税仕入れに係る支払対価の額として計算することができるか否かである。
 上記(1)のイないしハのとおり、法人が支出した費用のうち、その費途が明らかでないものや業務との関連性がないものは、損金の額に算入することはできず、また、真実の課税仕入れの相手方等の名称等を記載した帳簿等の保存のないものは、課税仕入れに係る支払対価の額として計算することはできない。
イ 本件各支払に係る小切手の支払先について
(イ) 本件各支払がiに対するものではないこと
 請求人は、上記1の(4)のハのとおり、本件各事業年度に係る確定申告をした際には、本件各支払はiに対して支払った販売手数料であるとしている。そして、請求人の経営に関与していたhは、上記(2)のニの(イ)のとおり、原処分庁に対してこれに沿う申述をしている。また、iの元勤務先のj社の関係者であるmやnも、上記(2)のニの(ニ)ないし(ト)のとおり、これに沿う申述及び答述をしている。加えて、請求人は、上記(2)のイの(イ)のとおり、本件各支払に係る証拠書類として、「i社」名義で作成された請求書及び領収証も保存している。
 しかしながら、上記(2)のニの(ロ)のとおり、hは原処分庁に対する申述を翻し、本件各支払は、i社の名義を利用してj社に支払ったものである旨申述している。 
 そして、上記(2)のロのとおり、iは少なくとも原処分に係る調査が行われた際からその所在は確認できず、平成25年6月時点で、上記(2)のイの(イ)の請求書及び領収証に記載された事務所所在地には、iの事務所は見当たらない。
 また、上記(2)のニの(ニ)ないし(ト)のとおり、m及びnの申述や答述は、本件各支払に係る小切手がj社関係者等の名義である本件各口座で取り立てられていることについて、nが、iに代わって同人宛の各小切手を受け取り、本件各口座で両替(現金化)したと説明するものであるところ、j社の役員であるnが、j社への○○されていたとされる元従業員であるiに対して便宜を図る理由や、iへの支払が、そのように迂遠な方法で行われる理由について十分に説明するものではないし、上記(2)のニの(イ)及び(ト)のとおり、「i」名義による取引以前には、請求人がj社の取締役nの屋号であった「n社」名義で同様の取引を行っていたことの理由についても明らかではなく、直ちには採用し難い。
 そうすると、上記「i社」名義の領収証等が存し、これにiの押印があることなどを踏まえても、本件各支払は請求人からiに宛てて支払われたものではないと認められる。
(ロ) 本件各支払がj社にされたものであること
 ところで、請求人は、当審判所に対し、本件各支払がj社にされたものであると主張し、請求人の経営に関与していたhも、上記(2)のニの(ロ)のとおり、原処分庁に対してこれに沿う申述をしていることは、上記(イ)のとおりである。
 そして、実際、上記(2)のイの(ロ)のとおり、本件各支払は小切手により支払われているところ、各小切手は、その全てが、j社の取締役であるnが受領し、同人名義や、「p会代表 n」、「q」及びj社の代表取締役である「m」といった、j社関係者等の名義の各口座である本件各口座で取り立てられている。なお、当審判所の調査によれば、「q」はnの妻であり、「p会」はj社従業員の任意団体の名称である。また、上記(2)のニの(ホ)及び(ト)のとおり、これらの各口座は全てnが管理していたものと認められる。
 さらに、上記(2)のイの(イ)及び同ハの(イ)によれば、i社名義の請求書や領収証に記載された数量は、別表3のとおり、請求人が主張する請求人のj社に対するVの販売数量と一致し、本件各支払の支払金額は、請求人のj社に対するVの販売数量に応じて割戻単価を乗じて算定されているものと認められる。
そして、上記(2)のニの(イ)及び(ト)のとおり、「i」名義による取引以前には、請求人はj社の取締役nの屋号であった「n社」名義で同様の取引を行っていたと考えられる。
 加えて、上記(2)のニの(ホ)及び(チ)のとおり、j社が、その法人税等に関し、本件各小切手のうち「m」名義の口座で取り立てた小切手について法人の雑収入とする内容の修正申告書を提出しており、原処分庁側もこれを是認しているといった事情もうかがえる。
 j社の役員であるm及びnは、共に本件各支払を受けたことを否定する答述等をするが、その内容は、本件各支払はiに対してされたものであるというものであって、採用できないことは上記(イ)で述べたとおりである。
 これらの事情を総合的に勘案すると、本件各支払は、請求人が主張するとおり、j社に対して支払われたものと認めるのが相当である。
(ハ) 原処分庁の主張について
 原処分庁は、更正の理由書に、請求人が販売手数料として計上したiに対する金額は、請求人の売上先であるj社のnに小切手で支払われており、nが管理する銀行口座で取り立てられた後、直ちに引き出されており、その後の金員の支払先が不明であるとしている。
 なるほど、上記(2)のイの(ロ)のとおり、本件各小切手は、本件各口座において取り立てられた後、取立日の当日かそれに近い日に、いずれも本件各口座から各小切手の取立額かそれに近い金員が現金で出金されており、当審判所の調査によっても、本件各口座から出金された後の各金員の動き等は不明である。
 しかしながら、本件各小切手がj社に支払われたものであることは、上記(イ)及び(ロ)で認定説示したとおりである。本件各口座から出金された各金員のその後の動きは、j社における当該金員の使途等の問題であって、これが不明であったとしても、直ちに上記の判断を左右するものではない。そもそも、当該金員が本件各口座から出金されたというだけでは、当該各金員がj社において留保され、又はj社の業務に関連して費消されるなどした可能性も十分にあるというべきであるし、当該金員が単に本件各口座を通過するのみでそのまま第三者に渡っていたなどの事情をうかがわせる証拠もない。
 したがって、原処分庁の更正の理由によっては、本件各支払がj社に対してされたとの上記(ロ)の認定は左右されない。
ロ 本件各支払と請求人の業務との関連性について
(イ) 本件各支払の目的について
 本件各支払に関し、hは、j社の代表者であるmからの依頼により、同人との合意に基づいて、j社にVを販売する際に本来の販売単価にあらかじめ上増分を加算した上で請求して受領し、当該上増分を後に販売手数料としてj社に支払ったものであり、j社に対する「売上割戻し」である旨申述等する。
 そこで、このような合意の存在が認められるかについて検討する。
 本件各支払がj社に対してされたものであることは、上記イで認定説示したとおりである。請求人又は請求人グループと、本件各支払の支払先であるj社には、従前から取引関係があり、請求人はj社に対しVを継続的に販売していたが、上記イの(ロ)のとおり、請求人が提出した別表3「売上割戻一覧表」記載のように、請求人のj社に対するVの販売数量が、i社名義の請求書や領収証に本件各支払の算定根拠として記載された数量と一致しており、本件各支払の金額は、請求人のj社に対する販売数量に応じて算定されたものと認められる。
 また、上記(2)のハの(イ)のB及びF記載の各請求明細書の写しによれば、平成24年9月20日締切分以降の請求人のj社に対するVの1t当たり単価は○○○○円減額されているところ、同ニの(ロ)及び同(ホ)のとおり、その減額が請求人又はj社のいずれの側から要請されたものであるのかなどについてはhの申述とmの答述は一致しないものの、本件の税務調査を受けて請求人とj社との間の売上単価が一定額減額されたことについては両者の申述及び答述は一致している。そして、これらの取引が両社の間で長期間にわたって行われていることなどの事実に鑑みれば、本件各支払は、請求人とj社の合意に基づいて行われたものであると認められる。
 なお、請求人は、mからの依頼があったことを証する資料として、上記(2)のハの(ロ)のとおり、左肩空白部分に、「m社長より当社のX単価に○○○○円上乗せするのでi社で返却して下さいとの事で指示有でm氏より今後これでよろしくとの事たのまれる h」という手書きのメモ書きがある平成16年3月20日付の請求書写しと、右肩空白部分に「m社長より前の金額(上乗せ分)に○○○○を上乗せし計○○○○を今後返却する様に指示有で(m氏よりi社でとよろしくとの事 h)」という手書きのメモ書きがある平成20年11月20日締切分の請求明細書写しを提出している(なお、請求人は審査請求時にも同日締切分の請求明細書を提出しているが、これには、このような書き込みはないほか、担当者印もないものである。)。
 確かに、上記メモ書きは、その記載内容等から、j社の関係者等ではなく、hが記載したと推測されるものであり、メモ書きが書き込まれた時期や経緯等も明らかでない。
 しかし、平成20年11月20日締切分の請求明細書写しのメモ書きによれば、上増金額は、それまでの上増金額○○○○円に、更に○○○○円上増しされて○○○○円に増額されたと読め、実際の割戻単価の動きに一致しており、「m社長」の指示によることの一応の裏付けとなるといえよう。
 そうすると、本件各支払は、請求人とj社との合意に基づき、請求人のj社に対する売上単価を上増しした金員の一部をj社に支払うために支払われたものと認めるのが相当である。
(ロ) 本件各支払に関する業務関連性
 上記(イ)のとおり、本件各支払は、請求人とj社との合意に基づき、請求人のj社に対するVの売上単価をあらかじめ上増ししておき、後に売上げの一定割合をj社に戻したものであって、一般に言われるところの販売促進のための値引きとしての「売上割戻し」とはその性質を異にしているようにみえるが、請求人は、売上単価の「上増し」分と主張する分についても、j社に対する売上げとして計上しているのであり、その後「割戻し」た分については、請求人が、得意先であるj社に対して、請求人のj社に対する販売数量に基づいて算定された金額を、両社間の合意に基づいて販売手数料又はそれに類似する費用として支払ったものであるとみることができるから、本件各支払と請求人の業務との間には、関連性があると認めるのが相当である。
ハ 法人税における損金の額への算入について
 上記1の(4)のハのとおり、本件各支払については、請求人において、当該金額の消費税等抜きの金額が、iに対する販売手数料であるとして本件各事業年度の損金の額に算入され、また、本件各課税期間の課税仕入れに係る支払対価の額として計算されているが、上記イ及びロのとおり、本件各支払は、j社に対する売上割戻し又はそれに類似する費用として支払われたものであるものと認められ、請求人の業務との関連性を有するものであると認められるから、本件販売手数料を費途不明金ということはできず、本件各事業年度の法人税の所得の金額の計算上、損金の額に算入することができる。
ニ 消費税等における課税仕入れに係る支払対価の額の計算について
 請求人は、本件各支払について、真実の氏名等に基づかないi社名義により関係帳簿に計上しており、j社名義でなくi社名義の請求書及び領収証を保存していたにすぎないことが明らかであることから、本件各支払に係る金員は、消費税法上、本件各課税期間の課税仕入れに係る支払対価の額として計算することはできない。
 請求人は、消費税等に関し、j社に対する帳簿上の売上げは、本件各支払分を上乗せした金額であるから、帳簿の記載等の形式的要件が整っている限り、本件各支払は課税仕入れに係る対価として認められてしかるべきである旨、本件で提出した資料において真実と異なる部分は、j社に対する支払という取引相手の名称のみであり、取引年月日、数量、返還金額等は全て真実であるから、単に形式的に間違いがあるというだけで仕入税額控除を認めないということは、公平かつ適正な課税という観点から到底認められない旨主張する。
 しかしながら、消費税法の趣旨からして、帳簿等への課税仕入れの相手方及び請求書等の作成者の氏名又は名称等の記載は真実の記載であることが当然に要求されており、当該内容を記載した帳簿及び請求書等の保存がない課税仕入れに係る税額については、消費税法第30条第1項の仕入税額控除の規定を適用しないこととしたものというべきであることは、上記(1)のハのとおりである。
 しかるに、上記イ及びロのとおり、請求人は、本件各支払がj社に対するものであることを承知した上で、真実とは異なるi社名義の請求書及び領収証等を保存し、本件各支払に係る金員を本件各課税期間の課税仕入れに係る対価の額として計算していたことは明らかである。
 したがって、請求人の主張は、採用することができない。

(4) 原処分について

イ 本件の各更正処分について
(イ) 上記(3)のとおり、本件各支払は、j社に対し販売手数料又はそれに類似する費用として支払われたものであるものと認められ、請求人の業務との関連性を有するものであると認められるから、本件各事業年度の法人税の所得の金額の計算上、損金の額に算入することができ、損金算入後の本件各事業年度の納付すべき税額は、別表1の「確定申告」の「納付すべき税額」の各欄の金額と同額となるから、本件法人税各更正処分は、いずれもその全部を取り消すべきである。
(ロ) 一方で、消費税等については、請求人は、本件各支払がiに対する販売手数料でないことを認識した上で、その旨関係帳簿に記載し、i社名義の請求書及び領収証等を保存しており、これらに基づいて、本件各支払に係る金員を本件各課税期間の課税仕入れに係る対価の額として課税仕入れに係る消費税額を計算し、本件各課税期間の確定申告書を提出したことが認められる。請求人のこれらの行為は、通則法第70条第5項に規定する「偽りその他不正の行為」により消費税等の税額を免れ、また、上記(3)のとおり、真実の氏名等に基づかないi社名義の請求書及び領収証を保存していたと認められるから、消費税法上、本件各支払に係る金員は本件各課税期間の課税仕入れに係る支払対価の額として計算することはできない。
 したがって、本件消費税等各更正処分は、いずれも適法である。
ロ 本件の各賦課決定処分について
(イ) 上記イの(イ)のとおり、本件法人税各更正処分の全部が取り消されることに伴い、本件法人税各賦課決定処分は、いずれもその全部を取り消すべきである。
(ロ) 上記イの(ロ)のとおり、本件消費税等各更正処分は適法であり、本件の各更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が更正処分前の税額計算の基礎とされていなかったことについて、通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項及び第2項並びに地方税法附則第9条の4《譲渡割の賦課徴収の特例等》及び第9条の9《譲渡割に係る延滞税等の計算の特例》第1項の規定によりされた本件消費税等各賦課決定処分は適法である。

(5) その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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