(平成26年12月10日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、し尿及び浄化槽汚泥の収集運搬業を営む同族法人である審査請求人(以下「請求人」という。)の法人税等の申告について、原処分庁が、売上金額を隠ぺいしていたとして、一部を取引実績、一部を推計により算定して法人税等の更正処分等を行ったことに対し、請求人が、原処分庁の隠ぺいしたとする売上金額は代表者個人に帰属するものであるとして、更正処分等の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

 審査請求(平成25年12月11日請求)に至る経緯は、別表1及び別表2のとおりである。
 なお、以下、平成18年9月1日から平成19年8月31日までの事業年度以後の法人税の青色申告の承認の取消処分を「本件青色取消処分」といい、また、平成18年9月1日から平成19年8月31日まで、平成19年9月1日から平成20年8月31日まで、平成20年9月1日から平成21年8月31日まで、平成21年9月1日から平成22年8月31日まで、平成22年9月1日から平成23年8月31日まで及び平成23年9月1日から平成24年8月31日までの各事業年度を、順次「平成19年8月期」、「平成20年8月期」、「平成21年8月期」、「平成22年8月期」、「平成23年8月期」及び「平成24年8月期」といい、これらの各事業年度を併せて「本件各事業年度」という。
 また、以下、消費税及び地方消費税を「消費税等」といい、平成18年9月1日から平成19年8月31日まで、平成19年9月1日から平成20年8月31日まで、平成20年9月1日から平成21年8月31日まで、平成21年9月1日から平成22年8月31日まで、平成22年9月1日から平成23年8月31日まで及び平成23年9月1日から平成24年8月31日までの各課税期間を、順次「平成19年8月課税期間」、「平成20年8月課税期間」、「平成21年8月課税期間」、「平成22年8月課税期間」、「平成23年8月課税期間」及び「平成24年8月課税期間」といい、これらの各課税期間を併せて「本件各課税期間」という。

(3) 関係法令の要旨

イ 国税通則法(以下「通則法」という。)第68条《重加算税》第1項は、同法第65条《過少申告加算税》第1項の規定に該当する場合において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額に係る過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に100分の35の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する旨規定している。
ロ 通則法第70条《国税の更正、決定等の期間制限》第1項(平成23年法律第114号による改正前のもの。以下同じ。)第1号は、更正はその更正に係る国税の法定申告期限から3年を経過した日以後(法人税に係る更正については、法定申告期限から5年を経過した日以後)においては、することができない旨規定している。
 また、通則法第70条第4項(平成23年法律第114号による改正後のもの。以下同じ。)は、偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れ、若しくはその全部若しくは一部の税額の還付を受けた国税についての更正は、その更正に係る国税の法定申告期限(還付請求申告書に係る更正については、当該申告書を提出した日)から7年を経過する日まで、することができる旨規定している。
ハ 法人税法第11条《実質所得者課税の原則》は、資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であって、その収益を享受せず、その者以外の法人がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する法人に帰属するものとして、この法律の規定を適用する旨規定している。
ニ 法人税法第127条《青色申告の承認の取消し》第1項第1号は、青色申告の承認を受けた内国法人につき、その事業年度に係る帳簿書類の備付け、記録又は保存が同法第126条《青色申告法人の帳簿書類》第1項に規定する財務省令で定めるところに従って行われていない場合、同法第127条第1項第3号は、その事業年度に係る帳簿書類に取引の全部又は一部を隠ぺいし又は仮装して記載し又は記録し、その他その記載又は記録をした事項の全体についてその真実性を疑うに足りる相当の理由がある場合には、所轄税務署長は、当該事業年度まで遡って、その承認を取り消すことができる旨規定している。
ホ 法人税法第131条《推計による更正又は決定》は、税務署長は、内国法人に係る法人税につき更正又は決定をする場合には、内国法人の提出した青色申告書に係る法人税の課税標準又は欠損金額の更正をする場合を除き、その内国法人の財産若しくは債務の増減の状況、収入若しくは支出の状況又は生産量、販売量その他の取扱量、従業員数その他事業の規模によりその内国法人に係る法人税の課税標準(更正をする場合にあっては、課税標準又は欠損金額)を推計して、これをすることができる旨規定している。
ヘ 消費税法第13条《資産の譲渡等を行った者の実質判定》は、法律上資産の譲渡等を行ったとみられる者が単なる名義人であって、その資産の譲渡等に係る対価を享受せず、その者以外の者がその資産の譲渡等に係る対価を享受する場合には、当該資産の譲渡等は、当該対価を享受する者が行ったものとして、この法律の規定を適用する旨規定している。
ト 行政手続法第14条《不利益処分の理由の提示》第1項本文は、行政庁は、不利益処分をする場合には、その名宛人に対し、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならない旨規定し、同条第3項は、不利益処分を書面でするときは、同条第1項の理由は、書面により示さなければならない旨規定している。

(4) 基礎事実

 以下の事実は、請求人と原処分庁の間に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。

イ 請求人は、平成10年9月○日に一般廃棄物の収集・運搬業務、浄化槽の清掃及び保守管理業務並びにこれらに附帯関連する一切の業務を行うことを目的に、G社として設立された法人である。
 なお、請求人は、本件審査請求をした後の平成26年○月○日にM社へ商号を変更した。
ロ 本件各事業年度において、F社又はG社の名義で行われていた業務(以下「本件業務」という。)は、一般廃棄物(し尿)の収集・運搬業務、浄化槽の清掃業務及び浄化槽の保守点検業務であった。
 なお、浄化槽の清掃業務は、汚泥収集運搬業務と清掃技術業務とに区分されていた。
ハ K組合は、本件業務に係る一般廃棄物処理業及び浄化槽清掃業について、別表3の申請人を宛名とする許可証を発行していた。
ニ 本件業務に係る浄化槽保守点検業の登録内容等は、別表4のとおりであった。
ホ 請求人の代表取締役であるHは、所轄税務署長に平成18年分から平成24年分の所得税の確定申告書を提出していなかった。

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2 争点

争点1 本件業務に係る収益は請求人に帰属するか否か。
争点2 推計の方法に合理性は認められるか否か。
争点3 請求人に通則法第68条第1項に規定する「隠ぺいし、又は仮装した」事実があったか否か。
争点4 平成19年8月期及び平成19年8月課税期間から平成21年8月課税期間において、請求人に通則法第70条第4項に規定する「偽りその他不正の行為」があったか否か。

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3 主張及び判断

(1) 争点1(本件業務に係る収益は請求人に帰属するか否か。)について

イ 主張

原処分庁 請求人
 請求人は、次のことから本件業務を行っていると認められるため、本件業務に係る収益は請求人に帰属する。  請求人は、次のことから本件業務を行っていないため、本件業務に係る収益はH個人に帰属し請求人には帰属しない。
(イ) 請求人の定款には、一般廃棄物の収集・運搬業務、浄化槽の清掃及び保守管理業務並びに当該各業務に附帯関連する一切の業務を営むことを目的とする旨記載されている。 (イ) 平成○年○月○日以降の浄化槽の保守点検業務を除き、請求人には営業許可がないことから、本件業務を行うことができない。
(ロ) K組合における一般廃棄物処理業及び浄化槽清掃業の許可並びにd県及びm市における浄化槽保守点検業の登録については、平成○年○月○日以降、申請人G社とされており、名義と実質とが一致するようになった。 (ロ) F社及びF社を含む名称は、全てHが利用している。
(ハ) 請求人は、本件業務を行うに当たり、顧客に対してF社という屋号を表示したにすぎない。 (ハ) Hは、50年前からF社として仕事をしていることから、F社あってのG社であり、F社の名前でないと営業できない。
(ニ) 請求人の貸借対照表には、H名義の預金口座が、請求人の預金であるとして資産計上されている。 (ニ) 本件各事業年度において本件業務に係る売上の入金口座として利用していた預貯金口座(以下「本件口座」という。)は、請求人名義を除き全てH名義の口座である。
(ホ) 請求人は、浄化槽の清掃技術業務に係る収入(以下「清掃技術収入」という。)に対応する車両、人件費及び役員報酬に係る経費を含め、本件業務に係る収益を得るために要する費用を全て支出している。 (ホ) 清掃技術業務については、Hが料金を自由に決めることができ、経費も発生しないことから、請求人の業務ではない。

ロ 判断
(イ) 法令解釈
 法人税法第11条は、上記1の(3)のハのとおり規定するところ、当該規定は法律上の所得の帰属の形式とその実質が異なるときには、実質に従って租税関係が定められるべきであるという租税法上の当然の条理を確認的に定めたものと解される。
 したがって、事業収益の帰属者が誰であるかは、設立時の状況、業務の遂行状況、業務に係る費用の支払状況などの事実関係を総合して、業務の主体が誰であるかにより判断することとなる。
 また、消費税法第13条は、上記1の(3)のヘのとおり規定するところ、同規定は、上記法人税法第11条の実質所得者課税の原則と同趣旨であると解される。
(ロ) 認定事実
 原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
A 請求人の設立時の状況
(A) 本件業務は、請求人が設立されるまで、Hが個人事業として行っていた。
(B) 請求人の設立以降、H及びその妻が請求人の出資持分全部を有しており、Hが、請求人の代表取締役となっている。
(C) 請求人が平成10年11月4日に所轄税務署長に提出した給与支払事務所等の開設届出書には、給与支払事務所等の開設した年月日を「10年9月○日」、開設・廃止の内容は「法人成」と記載されていた。
(D) 請求人が平成12年7月4日に所轄税務署長に提出した消費税簡易課税制度選択届出書(以下「本件選択届出書」という。)には、設立日である平成10年9月○日から平成11年8月31日までの課税期間において、清掃業により○○○○円の課税売上高が存した旨記載されていた。
B 本件業務の遂行状況等
 H及び請求人の従業員は、請求人の貸借対照表に資産計上されている車輛運搬具を使用して、便槽の場合はし尿を収集運搬し、浄化槽の場合は汚泥を収集運搬するとともに、必要に応じて浄化槽の洗浄、清掃、水張り等の清掃作業も行っていた。
 また、請求人の従業員のうち浄化槽の保守点検業務を担当する者は、顧客を定期的に訪問して当該業務を行うとともに、浄化槽記録カードに点検日や点検内容等を記載していた。
C 本件業務に係る費用の支払状況
 H及び請求人の従業員は、収集したし尿及び浄化槽汚泥をK組合のし尿処理施設に搬入し、当該施設の使用料を請求人に帰属する現金で支払うとともに、請求人は、当該使用料を請求人の費用として会計処理をしていた。
 また、それ以外の本件業務に係る費用の支払いについても、全て請求人が負担し、これを請求人の費用として会計処理をしていた。
D K組合及びd県の対応状況
(A) K組合の担当者の答述によれば、K組合では、平成○年○月○日までの期間において請求人が一般廃棄物処理業及び浄化槽清掃業を行っていたとしても、Hに対して許可がなされている以上、法律上禁止される名義貸しには該当しないと認識しており、請求人に対し営業に支障が生じるような指導又は処分等を行っていなかった。
(B) d県の浄化槽保守点検業の登録に係る担当者の答述によれば、請求人が登録を経ずに保守点検業を行った場合であっても、登録制度は浄化槽の適正管理に適合した業者の登録審査を目的としていることから、条例違反であるなどとして変更登録するような指導をしていなかった。
(C) 上記K組合の担当者及びd県の浄化槽保守点検業の登録に係る担当者の当審判所に対する答述内容は、答述者が本件審査請求と利害関係のない第三者であり、また、答述者の職務内容からみて、信頼ができるものと認められる。
(ハ) 判断
A 1 上記(ロ)のAの(A)から(C)のとおり、請求人は、Hが個人事業として行っていた本件業務を引き継ぐ形で設立された有限会社であること、2上記(ロ)のAの(D)のとおり、設立の日の属する事業年度において、請求人は、本件業務と符合する清掃業による収益があったとする本件選択届出書を所轄税務署長に提出していること、3上記(ロ)のBのとおり、本件業務は、請求人が保有する資産を利用して、H及び請求人の従業員が行っていたこと、及び4上記(ロ)のCのとおり、請求人が、本件業務に係る費用を負担し、請求人の費用として会計処理をしていたことを踏まえれば、請求人が、本件業務を行っていたものと認められる。
 加えて、上記1の(4)のホのとおり、H本人は平成18年分から平成24年分の所得税の確定申告書を所轄税務署長に提出しておらず、また、他に同人が本件業務に係る収益を自身に帰属すると認識していたことを示す客観的な証拠も認められない。
 以上の事実関係等を総合して判断すると、本件各事業年度における本件業務の主体は請求人であったと認めるのが相当である。
B これに対し、上記イの「請求人」欄のとおり、請求人は、平成○年○月○日以降の浄化槽の保守点検業務を除き、請求人には営業許可がないことなどから、本件業務を行っていないため、本件業務に係る収益はHに帰属し請求人には帰属しない旨主張する。
 確かに、上記1の(4)のハ及びニのとおり、K組合の一般廃棄物処理業及び浄化槽清掃業の許可は、平成○年○月○日まではG社名義についてされたものではなく、また、浄化槽保守点検業に係る登録も、平成○年○月○日まではG社名義でされたものではないと認められる。
 しかしながら、上記(ロ)のDのとおり、K組合及びd県が請求人に対し本件業務の遂行を禁止することなどはなく、上記の許可又は登録の名義が請求人でなかったことにより請求人による本件業務の遂行が不可能となる事情が生じた事実も認められないから、たとえG社の名義により許可及び登録を受けていない時期があったとしても、そのことのみをもって請求人が本件業務の主体であったとする上記Aの判断が妨げられることはない。
C 以上のとおり、本件業務の主体は請求人であると認められることから、本件業務に係る収益は本件業務の主体である請求人に帰属する。

(2) 争点2(推計の方法に合理性は認められるか否か。)について

イ 主張

原処分庁 請求人
 原処分庁は、請求人の平成20年11月を除く平成○年○月から平成24年8月までの各月(以下「推計基準月」という。)の取引実績に基づき算定した処理施設搬入量(請求人がK組合のし尿処理施設に搬入したし尿及び浄化槽汚泥の量をいう。以下同じ。)1単位当たりの売上金額並びに平成18年9月から平成19年12月まで及び平成20年11月の各月(以下「推計対象月」という。)の処理施設搬入量を基礎として推計対象月の売上金額を算定した。
 なお、推計対象月のうち平成18年9月から平成19年12月までの各月の売上金額の推計の基礎となる処理施設搬入量1単位当たりの売上金額の計算に当たっては、平成○年○月からの収集料金(K組合の組合員が顧客から受けるし尿及び浄化槽汚泥の収集・運搬料金をいう。以下同じ。)の改定の影響を加味するため、所要の調整を行った。
 上記の推計の方法は、請求人の一定期間の実績から得られた比率によって所得金額を推計する方法であり、加えて、上記の収集料金の改定の影響も調整しているのであるから、一般的に見て合理的であり、また、請求人の真実の所得金額に近似した数値が算定される蓋然性が高い。
 したがって、原処分庁が行った推計の方法は、請求人の真実の所得金額に近似した数値を算定し得る合理的なものである。
 仮に、原処分庁が推計の方法により売上金額を算定したことは争わないとしても、原処分庁は、推計の計算の基礎とした処理施設搬入量1単位当たりの売上金額を1立方メートル当たり○○○○円(平成○年○月○日以降は○○○○円)としており、これは収集料金の単価1立方メートル当たり○○○○円(平成○年○月○日以降は○○○○円)や入札物件であるL団地の下水処理、農業集落施設の農業排水処理の入札単価に比べて高額であり、本件業務の実態を反映していない。
 したがって、推計の方法に合理性は認められない。

ロ 判断
(イ) 法令解釈
 法人税法第131条に規定する推計課税は、所得金額を実額で算定することができないときに、やむを得ず間接資料により所得金額を推計するものであるから、推計の方法は、真実の所得額に近似した数値を算出し得る合理的なものでなければならない。この場合において、推計というその方法の性質上、推計課税において求められる「推計の合理性」とは、推計方法が一般的にみて合理的であり、真実の所得金額と合致する蓋然性があると認められれば足りるものと解するのが相当である。
 また、消費税法も、消費税の課税資産の譲渡等の対価の額を上記のような推計の方法により認定することを当然に許容していると解される。
(ロ) 認定事実
 原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
A 本件業務に係る売上について
(A) 請求人は、請求人の従業員に、本件業務に係る作業を行った日ごとに、作業内容、顧客の名前、作業場所、し尿の収集石数、浄化槽汚泥の収集石数及びこれらの収集石数の合計、同日に当該作業につき顧客から現金で支払いを受けた売上金額及び現金で支払いを受けた本件業務に係る未収売上金額等を記載したメモ(以下「売上メモ」という。)を作成させていた。
(B) 請求人は、本件業務に係る未収売上の回収を、現金によるほか、本件口座への振込みによっても行っていた。
(C) 本件口座は、別表5に掲げる預貯金口座であり、当該各預貯金口座には、本件業務に係る未収売上金額等の振込入金が認められた。
 なお、上記各預貯金口座への振込入金は、顧客名は確認できるものの、当該振込入金を上記1の(4)のロの本件業務の各業務に係るものに分類することは困難と認められた。
B 帳簿等について
(A) 売上メモについては、上記Aの(A)のとおり、請求人の従業員が日常業務において収集石数等を詳細に記載しており、その記載の状況及び内容並びにHの当審判所に対する答述内容から、実際の取引状況を示すものとしての信ぴょう性があると認められるところ、平成20年1月から平成24年8月まで(平成20年11月分は除く。)の間に作成されたものは保存されているが、平成18年9月から平成19年12月までの間及び平成20年11月に作成されたものの保存は確認できない。
(B) 請求人は、平成23年8月期の総勘定元帳を作成しておらず、当該事業年度の法人税等の確定申告書を、平成19年8月期の決算書の計数を一部修正の上作成して、所轄税務署長に提出していた。
 また、平成22年8月期の総勘定元帳に記載された売上高科目のうち点検料と記載された月ごとの収入金額と、平成24年8月期の総勘定元帳に記載された浄化槽点検売上高科目の月ごとの収入金額は、それぞれ同額となっていた。
(C) 金銭出納帳の収入金額欄記載の金額と総勘定元帳の売上高科目欄記載の金額は、同額が計上されていた。
(D) 本件各事業年度の金銭出納帳の収入金額欄記載の金額は、Hが処理施設搬入量を基に独自に算定した概算の金額であって、金銭出納帳に記載された日々の同欄の金額と売上メモに記載された日々の現金収入金額とは一致していなかった。
(E) Hの答述からは、請求人の金銭出納帳及び総勘定元帳に上記(D)の概算の金額を売上金額として記載した理由は、清掃技術収入を請求人の売上金額に含めないためであったと認められる。
C 処理施設搬入量について
 原処分庁は、処理施設搬入量を、K組合が作成した許可業者別収集量一覧表から把握した。
 なお、当該許可業者別収集量一覧表には、K組合の許可業者がK組合のし尿処理施設に搬入した月ごとのし尿、浄化槽汚泥及びこれら全体の月ごとの量が当該許可業者ごとに記載されており、その搬入したし尿及び浄化槽汚泥の量に応じて当該施設の使用料が決定されていること、当該一覧表がK組合の内部において決裁されていることから、請求人の処理施設搬入量を裏付けるものとして信ぴょう性があると認められる。
D 原処分庁の本件業務に係る売上金額の算定について
 原処分庁は、本件業務に係る売上金額を次のように算定した。
(A) 平成20年11月分を除く平成20年1月から平成24年8月の各月の売上金額
 平成20年11月分を除く平成20年1月から平成24年8月の各月の売上メモに記載された現金収入金額と本件口座に入金された売上金額との合計額を当該各月の売上金額(以下「月別実額売上金額」という。)とした。
 これにより、原処分庁が算定した本件各事業年度の月別実額売上金額の合計額は、別表8の「原処分庁主張額」欄の「実額売上金額1」欄のとおりである。
(B) 平成18年9月から平成19年12月までの各月の売上金額
 次のaをbで除して得た処理施設搬入量1リットル当たりの売上金額(以下「推計売上単価」という。)に次のcの割合を乗じて算出した処理施設搬入量1リットル当たりの売上金額(以下「調整推計売上単価」という。)に、平成18年9月から平成19年12月の各月の処理施設搬入量(リットル)を乗じて算出した金額を当該各月の売上金額とした。
 これにより、原処分庁が算定した上記の各月の売上金額は、別表7の「原処分庁主張額」の項の当該各月の「売上金額」欄のとおりである。
a 推計基準月の月別実額売上金額の合計額(別表6の「原処分庁主張額」の項の「合計3」欄の合計)
b 推計基準月の処理施設搬入量(リットル)の合計量(別表6の「原処分庁主張額」欄の項の「処理施設搬入量4」欄の合計)
c 平成○年○月までの収集料金である1石(180リットル)当たり○○○○円を、平成○年○月からの収集料金である1石当たり○○○○円で除して算出した割合
(C) 平成20年11月の売上金額
 推計売上単価に平成20年11月の処理施設搬入量を乗じた金額を同月の売上金額とした。
 これにより、原処分庁が算定した平成20年11月の売上金額は、別表7の「原処分庁主張額」の項の「売上金額」欄の平成20年11月の欄のとおりである。
 以上により、原処分庁は、上記(A)から(C)により算定した各月の売上金額を事業年度ごとに集計し、別表8の「原処分庁主張額」欄の3欄のとおり、本件各事業年度の本件業務に係る売上金額を算定した。
(ハ) 判断
 本件青色取消処分については、後記(5)のとおり、当審判所においても適法と認められることから、以下において、推計の方法の合理性等について検討する。
A 推計の必要性について
 推計対象月の本件業務に係る売上については、上記(ロ)のBの(A)のとおり、その月の売上メモが保存されていない。
 また、上記(ロ)のBの(C)から(E)のとおり、保存されている売上メモに記載された現金収入金額と金銭出納帳の収入金額欄記載の金額は一致していない上、平成23年8月期を除く本件各事業年度の総勘定元帳には売上金額が過少に計上されていると推認される。
 さらに、上記(ロ)のBの(B)のとおり、平成23年8月期の総勘定元帳が作成されていないこと及び総勘定元帳の平成22年8月期の売上高科目のうち点検料と記載された月ごとの収入金額と平成24年8月期の浄化槽点検売上高科目の月ごとの収入金額が同額であることなど、売上メモ以外の請求人の帳簿書類は信ぴょう性に乏しく、他に請求人の推計対象月の売上金額を直接裏付ける資料がない。
 したがって、原処分庁は、推計対象月において、推計の方法により売上金額等を算定する必要性があったものと認められる。
B 推計の方法の合理性について
 原処分庁は、上記(ロ)のDのとおり、推計対象月の本件業務に係る売上金額を推計の方法で算定しているところ、その推計の方法の合理性については、以下のとおり判断される。
(A) 推計売上単価等を推計の基礎としたことについて
 一般に継続して事業が営まれている場合、特に経済事情の変化や営業規模の変化等推計すべき課税要件の算定に影響を与えるような事情の変化がない限り、推計すべき期間の売上単価や原価率、経費率等は実額が把握できる期間と同様であると推認して課税要件等を推計することができると解される。
 そして、本件においては、推計基準月と推計対象月の間において、経済事情に特段の変化はなく、また、請求人の営業規模、事業内容、従業員数、使用事業用資産等に特段の変化があったとも認められないことからすれば、推計売上単価を基礎として推計対象月の売上金額を推計することが不合理になると認められるほどの事情の変化があったとは認められない。
 したがって、原処分庁が、本件業務に係る推計売上単価及びこれに所要の調整を加えた調整推計売上単価を基礎として推計対象月の売上金額を推計する方法を採用したことには合理性がある。
(B) 推計売上単価等について
a 推計売上単価
 推計基準月における売上メモ及び処理施設搬入量については、上記(ロ)のBの(A)及びCのとおり、提出された各資料には信ぴょう性があると認められ、また、本件口座の取引状況は真正なものと認められるので、これらを推計売上単価の算定の基礎としたことは、合理的であると認められる。
 なお、推計売上単価については、本件業務の業務ごとに算定されていないが、上記(ロ)のAの(B)及び(C)とおり、本件口座への振込入金は本件業務の各業務に区分されたものではなく、混在して入金されており当該各業務ごとの入金額が判別できないこと、処理施設搬入量以外に推計対象月の売上金額の推計の基礎とするのに適当なものが見当たらないこと等の制約があり、また、上記(1)のロの(ロ)のBのとおり、本件業務のうち浄化槽汚泥の収集・運搬業務と浄化槽の清掃業務は一連の作業として行われていること、及び浄化槽の保守点検業務もこれらの業務に付随して行われていることからすれば、推計売上単価を上記のように算定したことは相当と認められる。
b 調整推計売上単価
 推計対象月のうち、平成18年9月から平成19年12月までの各月については、平成○年○月からの収集料金の改定に伴う調整を行うため、上記(ロ)のDの(B)のとおり、調整推計売上単価を用いて売上金額を算定しているところ、調整推計売上単価の算定に当たっては、上記aの制約がある中において、料金改定を踏まえた合理的な調整が行われていると認められる。
(C) 上記(A)及び(B)のとおり、原処分庁が行った請求人の推計対象月の売上金額の推計には、合理性があると認められる。
(D) これに対し、請求人は、上記イの「請求人」欄のとおり、処理施設搬入量1単位当たりの売上金額は、一般廃棄物の収集・運搬料金の単価や入札単価に比べて高額である旨主張するが、推計対象月の売上金額の算定においては、上記(ロ)のDのとおり、収集運搬業務以外の浄化槽の清掃技術業務及び保守点検業務も含む本件業務全ての売上金額を基に推計売上単価を算定していることから、推計売上単価が請求人主張の収集・運搬料金の単価を上回るのは当然のことであり、これをもって推計方法に合理性が認められないとはいえず、また、当該算定方法に合理性があることは上記(C)のとおりであるから、請求人の主張には理由がない。

(3) 争点3(請求人に通則法第68条第1項に規定する「隠ぺいし、又は仮装した」事実があったか否か。)について

イ 主張

原処分庁 請求人
 請求人は、売上メモの記載内容と本件口座の振込入金により、真実の売上金額を認識していたにもかかわらず、正しい金額なら税務署への税金が多くなるとの理由から、金銭出納帳に記載した真実と異なる金額に基づく売上金額をもって過少に総勘定元帳に計上することにより、法人税及び消費税等の確定申告において売上金額の一部を隠ぺいし、その隠ぺいした売上金額を益金の額及び課税標準額に算入せず、真実と異なる確定申告書を提出していたことが認められる。
 このことは、通則法第68条第1項に規定する隠ぺい行為に該当する。
 請求人は、そもそも本件業務を行っておらず、本件業務に係る収益は請求人に帰属しないため、請求人に隠ぺいの行為はない。

ロ 判断
(イ) 法令解釈
 通則法第68条第1項は、過少申告をした納税者が、その国税の課税標準又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対して重加算税を課する旨規定している。この重加算税の制度は、納税者が過少申告をするについて隠ぺい、仮装という不正手段を用いていた場合に、過少申告加算税よりも重い行政上の制裁を科することによって、悪質な納税義務違反の発生を防止し、もって申告納税制度による適正な徴税の実現を確保しようとするものである。
 したがって、重加算税を課し得るためには、納税者のした過少申告行為そのものが隠ぺい、仮装に当たるというだけでは足りず、過少申告行為そのものとは別に、隠ぺい、仮装と評価すべき行為が存在し、これに合わせた過少申告がされたことを要する。
(ロ) 認定事実
A Hは、原処分庁所属の調査担当職員に対して要旨次のとおり申述しており、これらの内容は他の証拠と矛盾する点はなく、事実と異なることをうかがわせる証拠はない。
(A) 従業員の作成する売上メモで現金による売上が確認でき、預貯金口座で振込みによる売上が確認できるので、それを合算することで売上金額が分かる。
(B) 古い年分の売上メモを破棄したのは、基本的に毎年同じ仕事をしており、2、3年前までの売上メモがあれば、それ以上必要ないからである。
(C) 請求人の売上に清掃料、技術料及び手間賃を計上していないのは、自分のこづかいだと思っているからである。
(D) 自分が作る金銭出納帳が正しいわけがない。正しい金額なら税務署に支払う税金が高くなるからである。
B Hは、当審判所に対して要旨次のとおり答述しており、これらの内容は他の証拠と矛盾する点はなく、事実と異なることをうかがわせる証拠はない。
(A) 請求人の売上に計上していない収入は、清掃技術収入である。
(B) 清掃技術収入は、浄化槽が単独槽の場合には、1件当たり○○○○円から○○○○円、浄化槽が合併槽の場合には1件当たり○○○○円から○○○○円で、得意先は、約○○件から○○件で、基本的に年1回の清掃である。
C 上記A及びBのHの申述及び答述の内容、その他の原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、Hは、売上メモに記載された現金収入金額と本件口座への振込入金額を合計した金額が本件業務に係る総売上金額であると知りながら、保存すべき売上メモを破棄し、全ての売上金額を記載すれば税金が高くなることや清掃技術収入はHのこづかいであることなどを理由として、実際の現金売上額である売上メモに基づいた金額ではなく、処理施設搬入量を基に概算で算出した虚偽の現金売上額を金銭出納帳に記載することによって、少なく見積もっても年間約3,000,000円の清掃技術収入を金銭出納帳及び総勘定元帳に計上していなかったものと推認される。
(ハ) 判断
A 上記(1)のロの(ハ)のとおり、清掃技術収入を含む本件業務に係る収益は請求人に帰属すると認められるところ、上記(ロ)のCのとおり、請求人は、清掃技術収入を請求人の売上から除外する意図をもって、処理施設搬入量を基に概算で算出した金額を売上金額とする虚偽の内容の金銭出納帳及び総勘定元帳を作成し、それに基づき所得金額を過少に申告していたと認められる。
 以上の請求人の行為は、故意に課税標準又は税額等の計算の基礎となるべき事実の一部を隠ぺいし、又は仮装するものであって、請求人は、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき過少申告をしたのであるから、請求人には、通則法第68条第1項に規定する「隠ぺいし、又は仮装した」事実があったと認めるのが相当である。
B これに対し、請求人は上記イの「請求人」欄のとおり、そもそも請求人は本件業務を行っておらず、本件業務に係る収益は請求人に帰属しないため、請求人に隠ぺいの行為はない旨主張する。
 しかしながら、上記(1)のロの(ハ)のとおり、本件業務に係る収益は請求人に帰属すると認められることに加え、上記1の(4)のホのとおり、Hは、所轄税務署長に平成18年分から平成24年分の所得税の確定申告書を提出しておらず、他にHが本件業務に係る収益を自らに帰属すると認識していたことを示す事実も見当たらないこと、上記(1)のロの(ロ)のBのとおり、請求人の従業員が、浄化槽の清掃技術業務を含む全ての本件業務に従事していたこと、上記(1)のロの(ロ)のCとおり、浄化槽の清掃業務を含む全ての本件業務に係る費用の全てを請求人が負担し、請求人の費用として会計処理をしていたことからすれば、請求人の代表取締役の立場にあるHとしても、本件業務に係る収益が請求人に帰属するものと認識していたと認めるのが相当である。
 以上のことから、請求人には、通則法第68条第1項でいう「事実を隠ぺいし、又は仮装した」事実があったというべきであるから、請求人の主張には理由がない。

(4) 争点4(平成19年8月期及び平成19年8月課税期間から平成21年8月課税期間において、請求人に通則法第70条第4項に規定する「偽りその他不正の行為」があったか否か。)について

イ 主張

原処分庁 請求人
 請求人は、法人税及び消費税等の確定申告において売上金額の一部を隠ぺいし、その隠ぺいした売上金額を益金の額及び課税標準額に算入せず、真実と異なる確定申告書を提出していたことが認められる。
 このことは、通則法第70条第4項に規定する偽りその他不正の行為に該当する。
 請求人は、そもそも本件業務を行っておらず、本件業務に係る収益は請求人に帰属しないため、請求人に偽りその他不正の行為はない。

ロ 判断
(イ) 法令解釈
 通則法第70条第4項は、上記1の(3)のロのとおり規定するところ、「偽りその他不正の行為」とは、税額を免れる意図の下に、税の賦課徴収を不能又は著しく困難ならしめる何らかの偽計その他の工作を伴う不正な行為を行っていることをいうものと解される。
(ロ) 判断
 上記(1)のロの(ハ)のとおり、清掃技術収入を含む本件業務に係る収益は請求人に帰属すると認められ、上記(3)のロの(ハ)のAのとおり、請求人は、清掃技術収入を請求人の売上から除外する意図をもって、処理施設搬入量を基に概算で算出した金額を売上金額とする虚偽の内容の金銭出納帳及び総勘定元帳を作成し、それに基づき所得金額を過少に申告していたと認められるのであるから、請求人の行為は、通則法第70条第4項に規定する偽りその他不正の行為に該当すると認められる。
 これに対し、請求人は、上記イの「請求人」欄のとおり、そもそも本件業務を行っておらず、本件業務に係る収益は請求人に帰属しないため、請求人に偽りその他不正の行為はない旨主張する。
 しかしながら、上記(1)のロの(ハ)のとおり、本件業務に係る収益は請求人に帰属するものであり、上記(3)のロの(ハ)のとおり、Hも本件業務に係る収益が請求人に帰属することを認識した上で、上記の行為を行ったと認められるのであるから、請求人には、通則法第70条第4項でいう「偽りその他不正の行為」があったというべきであり、請求人の主張には理由がない。

(5) 本件青色取消処分について

 原処分庁が、請求人には法人税法第127条第1項第1号及び3号に該当する事実があるとして行った本件青色取消処分について、請求人は当該処分について主張をしていない。
 そこで、当審判所において事実を確認したところ、請求人には、平成19年8月期において、上記(2)のロの(ロ)のBのとおり、帳簿書類の記録及び保存を適正に行っていない事実及び上記(3)のロの(ハ)のとおり、帳簿書類に取引の全部又は一部を隠ぺいし又は仮装して記載し又は記録した事実が認められるから、本件青色取消処分は適法である。

(6) 平成24年8月期の法人税の更正処分に係る理由の提示について

イ 法令解釈
 行政手続法第14条第1項本文が、不利益処分をする場合に同時にその理由を名宛人に示さなければならないとしているのは、名宛人に直接に義務を課し又はその権利を制限するという不利益処分の性質に鑑み、行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものと解されることから、更正処分をする際は、当該更正通知書自体に法の要求する程度にその理由を示す必要があるというべきである。
 なお、更正処分が複数の理由による場合において、一部の理由についての提示のみが不十分であり、それがいまだ当該更正処分全体の理由の提示を不備なものとする程度に至らないときは、当該更正処分は、その理由に係る部分についてのみ違法となるものと解される。
ロ 認定事実
 原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、請求人は、平成24年8月期の法人税の確定申告書の欠損金又は災害損失金等の当期控除額欄に○○○○円を記載していたところ、原処分庁は、本件青色取消処分に伴い、法人税法第57条《青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越し》第1項が適用されないとして、当該控除した金額を所得金額に加算したにもかかわらず、平成24年8月期の法人税の更正通知書には、これを加算した理由を示していなかったことが認められた。
ハ 判断
 上記ロのとおり、平成24年8月期の法人税の更正通知書には、平成24年8月期の法人税の確定申告において損金の額に算入された青色欠損金の当期控除額を所得金額に加算する旨の理由を示す必要があるにもかかわらず、これが示されておらず、更正通知書自体から青色欠損金の当期控除額を所得金額に加算する旨を特定し得る程度の理由を示していないことは明らかであるから、理由の提示不備の違法があると判断するのが相当である。
 これに対し、原処分庁は、青色欠損金の当期控除額の加算については法文の規定上明らかであり、本件青色取消処分に伴うもので、請求人においても容易に認識できたから、理由の提示不備の違法はないと主張する。
 しかしながら、仮に原処分庁主張どおりの事情が認められるとしても、上記イのとおり、更正処分をする際は当該更正通知書自体に処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与えるという法の要求にかなう程度に理由を示す必要があるというべきであるから、理由の提示に不備があったとの判断が妨げられることはない。
 もっとも、本件においては、青色欠損金の当期控除額の加算についての理由が示されていないものの、その提示のないことが更正処分全体の理由の提示を不備なものとする程度に至るとは認められず、また、他に更正処分に係る理由の提示に不備があるとも認められない。
 以上のことから、青色欠損金の当期控除額の加算の限りにおいて平成24年8月期の法人税の更正処分は取り消されるべきである。

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4 原処分の適法性について

(1) 本件業務に係る売上金額について

イ 月別実額売上金額について
 原処分庁は、本件各事業年度の月別実額売上金額について、上記3の(2)のロの(ロ)のDの(A)のとおり算定しているところ、当審判所においてもその方法自体は相当であると認められる。
 ただし、当審判所の調査の結果によれば、当該月別実額売上金額の集計の際の記載誤り及び集計誤りが認められたことから、これらを訂正して算定すると、本件各事業年度の月別実額売上金額の合計額は、別表8の「審判所認定額」欄の「実額売上金額1」欄のとおりとなる。
ロ 推計の方法による売上金額について
 原処分庁は、推計対象月の売上金額について、上記3の(2)のロの(ロ)のDの(B)及び(C)のとおり算定しているところ、当審判所においてもその算定方法自体は相当であると認められる。
 ただし、当審判所の調査の結果によれば、上記イのとおり、実額売上金額に計算誤り等があり、また、処理施設搬入量1リットル当たりの推計売上単価の計算に使用する処理施設搬入量の集計の際に記載誤りがあったことから、これらを訂正した別表6の「審判所認定額」の項の推計売上単価を基に推計対象月の処理施設搬入量を乗じて算定すると、別表7の「審判所認定額」の項の各月の「売上金額」欄のとおりとなる。
ハ 総売上金額
 本件各事業年度の総売上金額は、実額売上金額と推計売上金額の合計額となることから、上記イ及びロを基に算定すると、別表8の「審判所認定額」欄の3欄のとおりとなる。

(2) 平成19年8月期から平成22年8月期及び平成24年8月期の法人税の更正処分について

イ 所得金額
 当審判所の調査した結果によれば、上記(1)のとおり、原処分の売上金額の算定に誤りがあること、平成21年8月期の事業税について、前事業年度の所得金額が減少することから再計算をする必要があること、平成24年8月期の事業税及び地方特別法人税について計算誤りがあったこと、及び平成24年8月期において、上記3の(6)のとおり、更正処分の理由を示していないことが認められた。
 また、平成20年8月期から平成22年8月期及び平成24年8月期の各事業年度の所得金額の算定に当たり、当審判所の調査した結果によれば、原処分庁が算定した減算すべき洗車代等について集計漏れが認められた。
 したがって、平成19年8月期から平成22年8月期及び平成24年8月期の各事業年度の所得金額は、当該各事業年度の法人税の確定申告書に記載された所得金額(別表9の1欄の金額)に、別表9の当該各事業年度の「審判所認定額」欄の2から4欄の金額の合計額である5欄の金額を加算し、6から12欄の金額の合計額である13欄の金額を減算して算定すると、同表の当該各事業年度の「審判所認定額」欄の15欄のとおりとなる。
ロ 納付すべき税額
 平成19年8月期から平成22年8月期及び平成24年8月期の各事業年度の納付すべき税額は、上記イの所得金額を基に算定すると、別表10の当該各事業年度の「審判所認定額」欄の「納付すべき税額」欄のとおりとなる。
ハ 更正処分
 平成19年8月期から平成22年8月期及び平成24年8月期の各事業年度の法人税の所得金額及び納付すべき税額は、上記イ及びロのとおりとなり、平成19年8月期及び平成21年8月期の各事業年度の所得金額及び納付すべき税額は、更正処分の額をそれぞれ上回るから、当該各事業年度の更正処分はいずれも適法であるが、平成20年8月期、平成22年8月期及び平成24年8月期の各事業年度の所得金額及び納付すべき税額は、更正処分の額をそれぞれ下回るので、いずれもその一部を別紙1から別紙3の「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。

(3) 平成23年8月期の法人税の更正処分について

イ 所得金額
 請求人は、平成23年8月期の所得金額を推計の方法により算定することについて何ら主張をしないところ、当審判所の調査の結果によっても、請求人は、上記3の(2)のロの(ロ)のBの(B)のとおり、平成23年8月期の総勘定元帳を作成しておらず、当該事業年度における法人税の確定申告書は平成19年8月期の決算書の数字を一部修正の上、所轄税務署長に提出していることから、推計による課税の必要性があったものと認められる。
 そして、原処分庁は、平成23年8月期の売上原価及び一般経費の損金算入額について、平成23年8月期の売上金額に平成22年8月期及び平成24年8月期の各事業年度の売上原価及び一般経費の合計額が売上金額に占める割合の平均値を乗じた金額としているところ、請求人はその推計方法を争わず、当審判所においても原処分庁が採用した推計方法には合理性があると認められる。
 ただし、当審判所の調査した結果によれば、原処分庁が算定した減算すべき洗車代等について集計漏れが認められたほか、上記(1)のとおり、売上金額の算定に誤りがあること、事業税及び地方特別法人税ついて、前事業年度の所得金額が減少することから再計算をする必要があること、及び平成22年8月期及び平成24年8月期の各事業年度の売上金額に誤りがあるため売上原価及び一般経費の額の算定に修正が必要であることが認められた。
 そうすると、平成23年8月期の所得金額は、当該事業年度の法人税の確定申告書に記載された所得金額(別表9の1 欄の金額)に、別表9の当該事業年度の「審判所認定額」欄の2から4欄の金額の合計額である5欄の金額を加算し、6から12欄の金額の合計額である13欄の金額を減算して算定した金額であり、同表の「審判所認定額」欄の15欄のとおりとなる。
ロ 納付すべき税額
 平成23年8月期の納付すべき税額は、上記イの所得金額を基に算定すると、別表10の当該事業年度の「審判所認定額」欄の「納付すべき税額」欄のとおりとなる。
ハ 更正処分
 平成23年8月期の所得金額及び納付すべき税額は、上記イ及びロのとおりとなり、更正処分の額を上回るから、当該事業年度の更正処分は適法である。

(4) 本件各事業年度の法人税の重加算税の各賦課決定処分について

 本件各事業年度の法人税の重加算税の各賦課決定処分について、請求人は、上記3の(3)のロの(ハ)のとおり、売上の一部を隠ぺいし、その隠ぺいしたところに基づき、本件各事業年度の確定申告書を提出していたと認められ、通則法第68条第1項に規定する重加算税の賦課要件に該当する。
 そうすると、上記(2)及び(3)のとおり、平成19年8月期、平成21年8月期及び平成23年8月期の各更正処分は適法であるから、原処分庁が、通則法第68条第1項の規定を適用して上記各事業年度の法人税の重加算税の各賦課決定処分をしたことは適法である。
 なお、平成20年8月期、平成22年8月期及び平成24年8月期の各更正処分は、上記(2)のとおり、いずれもその一部を取り消すべきであるから、上記各事業年度の重加算税の額は、別表10の「審判所認定額」欄の当該各事業年度の「重加算税の額」欄に記載のとおりとなり、いずれもその一部を別紙1から別紙3の「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。

(5) 平成23年8月期の法人税の過少申告加算税の賦課決定処分について

 上記(3)のとおり、平成23年8月期の法人税に係る更正処分は適法であるところ、これらの処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実のうち、上記(4)の重加算税の賦課決定処分の基礎となった事実以外の事実が、更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項の規定に基づきされた平成23年8月期の法人税の過少申告加算税の賦課決定処分は適法である。

(6) 本件各課税期間の消費税等の更正処分について

イ 課税標準額
 本件各課税期間の課税売上高は、上記(1)のとおり、原処分庁がした本件業務に係る売上金額計上漏れの金額の算定に誤りが認められたことから、これを是正し税抜金額にしたところ、別表11の「審判所認定額」欄の3欄のとおりとなり、課税標準額は、同表の「審判所認定額」欄の5欄のとおりとなる。
ロ 課税標準額に対する消費税額
 課税標準額に対する消費税額は、上記イの課税標準額に消費税法第29条《税率》(平成24年法律第68号による改正前のもの)に規定する税率100分の4を乗じて算出した金額で、別表11の「審判所認定額」欄の6欄のとおりとなる。
ハ 控除対象仕入税額
 平成19年8月課税期間から平成22年8月課税期間及び平成24年8月課税期間の各課税期間については、請求人は本件選択届出書を提出しており、また、当該各課税期間の基準期間の課税売上高がいずれも50,000,000円以下であることから、消費税法第37条《中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例》の規定(当該規定を以下「簡易課税制度」という。)の適用があるため、控除対象仕入税額は、当該各課税期間の課税標準額に基づき計算すると、別表11の当該各課税期間の「審判所認定額」欄の7欄のとおりとなる。
 しかし、平成23年8月課税期間については、基準期間となる平成21年8月課税期間の課税売上高が別表11の「審判所認定額」欄の4欄のとおり50,000,000円を超えていることから、簡易課税制度の適用はないため、控除対象仕入税額の計算は、消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》の規定に基づき行うこととなるところ、請求人は上記3の(2)のロの(ロ)のBのとおり、総勘定元帳及び経費に係る補助簿を作成しておらず、消費税法第30条第7項に規定する「事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等を保存しない場合」に該当することから、仕入れに係る消費税額はなく、控除対象仕入税額は零円となる。
ニ 納付すべき消費税額
 本件各課税期間の納付すべき消費税額は、上記ロの課税標準額に対する消費税額から上記ハの控除対象仕入税額を控除し、さらに、その控除後の金額について通則法第119条《国税の確定金額の端数計算等》第1項の規定により100円未満の端数を切り捨てて算出した金額で、別表11の「審判所認定額」欄の8欄のとおりとなる。
ホ 地方消費税の課税標準額となる消費税額
 本件各課税期間の地方消費税の課税標準額となる消費税額は、上記ロの課税標準額に対する消費税額から上記ハの控除対象仕入税額を差し引いた後の金額について、地方税法第72条の82《地方消費税の課税標準額の端数計算の特例》の規定により100円未満の端数を切り捨てて算出した金額で、別表11の「審判所認定額」欄の9欄のとおりとなる。
ヘ 納付すべき地方消費税額
 本件各課税期間の納付すべき地方消費税額(譲渡割額)は、上記ホの地方消費税の課税標準額となる消費税額に地方税法第72条の83《地方消費税の税率》(平成24年法律第69号による改正前のもの)に規定する100分の25の税率を乗じて算出した金額で別表11の「審判所認定額」欄の10欄のとおりとなる。
ト 消費税等の納付すべき税額
 本件各課税期間の消費税等の納付すべき税額は、上記ニの納付すべき消費税額と上記ヘの納付すべき地方消費税の譲渡割額を合計した金額で、別表11の「審判所認定額」欄の11欄のとおりとなる。
チ 更正処分
 本件各課税期間の消費税等の納付すべき税額は、上記トのとおりとなるところ、平成19年8月課税期間、平成21年8月課税期間、平成23年8月課税期間及び平成24年8月課税期間の各課税期間の納付すべき税額は、各更正処分の額をそれぞれ上回るから、当該各課税期間の更正処分はいずれも適法である。
 また、平成20年8月課税期間及び平成22年8月課税期間の各課税期間の納付すべき税額は、当該各課税期間の更正処分の額をそれぞれ下回るので、いずれもその一部を別紙4及び別紙5の「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。

(7) 本件各課税期間の消費税等の重加算税の各賦課決定処分について

 本件各課税期間の消費税等の重加算税の各賦課決定処分について、請求人は、上記3の(3)のロの(ハ)のとおり、売上の一部を隠ぺいし、その隠ぺいしたところに基づき、本件各課税期間の確定申告書を提出していたと認められ通則法第68条第1項に規定する重加算税の賦課要件に該当するから、同項の規定並びに地方税法附則第9条の4《譲渡割の賦課徴収の特例等》及び第9条の9《譲渡割に係る延滞税等の計算の特例》第1項の規定に基づき計算し、算定された本件各課税期間の消費税等の重加算税の各賦課決定処分は適法である。

(8) 消費税等の過少申告加算税の賦課決定処分について

 上記(6)のとおり、平成23年8月課税期間の消費税等に係る更正処分は適法であるところ、これらの処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実のうち、上記(7)の重加算税の賦課決定処分の基礎となった事実以外の事実が、更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項及び第2項並びに地方税法附則第9条の4及び第9条の9第1項の規定に基づきされた平成23年8月課税期間の消費税等の過少申告加算税の賦課決定処分は適法である。

(9) その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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