(平成26年10月28日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、原処分庁所属の調査担当職員による調査において、事業年度及び課税期間の末日付で費用として経理処理した金額の一部については、当該事業年度の損金の額及び当該課税期間の課税仕入れの支払対価の額に算入できないとの指摘を受け、法人税並びに消費税及び地方消費税の修正申告をしたところ、原処分庁が、当該経理処理をしたことにつき仮装の事実があるとして法人税並びに消費税及び地方消費税に係る重加算税の各賦課決定処分を行ったのに対し、請求人が、仮装の事実はないなどとして、その全部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

 請求人は、平成23年2月1日から平成24年1月31日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)の法人税に係る重加算税の賦課決定処分(以下「本件法人税賦課決定処分」という。)並びに平成23年2月1日から平成24年1月31日までの課税期間(以下「本件課税期間」という。)の消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)に係る重加算税の賦課決定処分(以下「本件消費税等賦課決定処分」という。)について、平成25年11月7日に審査請求をした。
 この審査請求に至る経緯は、別表1−1及び別表1−2記載のとおりである。

(3) 関係法令等の要旨

 別紙2のとおりである。

(4) 基礎事実

 以下の事実は、請求人と原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 請求人は、平成○年○月○日に発生した○○による被害の復旧のため、別表2及び別表3の「相手方」欄記載の各業者(以下「本件各業者」という。)との間で、「合計金額」欄及び「取引内容」欄記載のとおり、修繕工事等の請負契約又は備品等の売買契約を締結した(以下、別表2記載の各契約に係る費用を「本件修繕工事等費用」、別表3記載の各契約に係る費用を「本件備品等購入費用」といい、これらを併せて「本件各費用」という。)。
ロ 請求人の職員であるM及びNは、本件各業者に対し、本件各費用の請求書を平成24年1月31日以前の日付で発行するよう依頼した。
ハ 請求人は、上記ロの依頼に応じて本件各業者が発行した請求書を基に、本件各費用の額をいずれも平成24年1月31日付で費用として経理処理した上で、法人税及び消費税等の確定申告をした。
ニ 原処分庁所属の調査担当職員(以下「本件調査担当職員」という。)は、平成24年11月から平成25年4月にかけて、請求人の法人税及び消費税等の調査(以下「本件調査」という。)を行った。
ホ 本件調査担当職員は、本件調査において上記ロ及びハの事実を把握し、本件修繕工事等費用については、○○の繰入額として損金の額に算入できるが、本件備品等購入費用は本件事業年度の損金の額に、本件各費用の額は本件課税期間の課税仕入れに係る支払対価の額に算入できない旨、請求人に指摘した。
ヘ 請求人は、上記ホの指摘を受け、平成25年4月19日、法人税及び消費税等の各修正申告をした。
ト 原処分庁は、別表2及び別表3記載の各契約に係る修繕工事等の役務の提供又は備品等の引渡し(以下「役務の提供等」という。)が本件事業年度及び本件課税期間の末日までに完了していないにもかかわらず、請求人が、本件各業者に対し、本件各費用の請求書を平成24年1月31日以前の日付で発行するよう依頼し、当該依頼に応じて本件各業者が発行した請求書を基に、本件各費用を本件事業年度の損金の額及び本件課税期間の課税仕入れに係る支払対価の額に算入した行為は、事実の仮装に当たるとして、原処分を行った。

(5) 争点

イ 本件調査の手続に、原処分を取り消すべき違法があったか否か。
ロ 請求人の行為は、通則法第68条第1項に規定する事実を「仮装した」ものと認められるか否か。

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2 主張

(1) 争点イについて

イ 請求人
 国税当局の内部規範では、職員が調査を行った場合、その調査の終了の際、調査結果の内容を納税者又は当該納税者の同意がある場合には税務代理人に説明しなければならないとされている。しかしながら、請求人の同意により、調査結果の内容の説明を受けることとなった請求人の関与税理士(以下「本件関与税理士」という。)は、本件調査担当職員から、調査結果の内容の説明を受けなかった。
 このように、原処分は内部規範に違反した違法な手続に基づいてなされたものであり、本件調査の手続に、原処分を取り消すべき違法があった。
ロ 原処分庁
 本件調査担当職員は、本件関与税理士に対し、平成24年11月9日、同年11月28日及び平成25年4月2日に、請求人が本件各費用を本件事業年度の損金の額及び本件課税期間の課税仕入れに係る支払対価の額に算入した行為は重加算税の賦課対象である旨の説明を行い、また、平成25年4月15日においても、それまでの説明内容を踏まえた修正申告書の下書を示した上で、再度、調査結果の説明を行った。
 したがって、本件調査の手続に、原処分を取り消すべき違法はなかった。

(2) 争点ロについて

イ 原処分庁
 請求人は、別表2及び別表3記載の各契約に係る役務の提供等が本件事業年度及び本件課税期間の末日までに完了していないにもかかわらず、本件各業者と通謀の上、本来であれば役務の提供等が完了した日以後の日付を記載すべき本件各費用に係る請求書を、本件各業者をして、平成24年1月31日以前の日付を記載させてこれを受領し、費用として経理処理していた。
 請求人のこれらの行為は、本件各費用につき、法人税については債務の確定の日を、また消費税等については課税仕入れを行った日を仮装したものといえ、通則法第68条第1項に規定する「仮装した」事実があった。
ロ 請求人
 請求人は、以下のとおり、請求書の日付を遡らせることで、債務の確定の日及び課税仕入れを行った日を本件事業年度及び本件課税期間の末日以前の日に仮装したわけではないから、通則法第68条第1項に規定する「仮装した」事実はなかった。
(イ) 請求書を役務の提供等の完了よりも先に受領し、代金を支払うことは広く一般に行われていることであり、何らかの事実を仮装するような行為ではなく、請求人においても同様に、請求書を役務の提供等の完了より先に受領した行為は、何らかの事実、例えば債務の確定の日や課税仕入れを行った日を仮装したものではない。
(ロ) また、請求人が本件各費用を本件事業年度の損金の額及び本件課税期間の課税仕入れに係る支払対価の額に算入したことは、単なる経理処理の誤りにすぎない。
(ハ) なお、別表2の順号8、14、15、16、22、23、25、32、34及び35の各契約に係る役務の提供等は、平成24年1月31日までに完了しており、債務の確定の日及び課税仕入れを行った日も平成24年1月31日以前なのであるから、請求人が同日以前の日付で請求書を受領するのは当然である。
(ニ) さらに、請求人は、別表2の順号2及び13の各契約に係る請求書については平成24年1月31日よりも後の日付で、また、同表の順号7の契約については日付が空欄となっている請求書をそれぞれ受領している。
(ホ) 加えて、本件各費用が翌事業年度に支払われたことや、請求書を受領した経緯などからすると、請求人の行為は、重加算税取扱事務運営指針の第1の3に該当するから、帳簿書類の虚偽記載等には当たらない。

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3 判断

(1) 争点イについて

イ 経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律(平成23年法律第114号)附則第39条第3項は、通則法第74条の11の規定は、平成25年1月1日以後に納税義務者に対して行う質問検査等(平成25年1月1日前から引き続き行われている調査等に係るものを除く。)について適用する旨規定している。
ロ これを本件についてみると、上記1(4)ニのとおり、本件調査は平成24年11月から開始されており、当時、調査を行った職員が調査結果の内容を説明する旨の法令の規定は適用されておらず、また、請求人の主張する内部規範は法律ではない以上、仮に本件調査担当職員が本件関与税理士に対し調査結果の内容を説明していなかったとしても、本件調査の手続に、原処分を取り消すべき違法があったということはできない。

(2) 争点ロについて

イ 法令解釈
 通則法第68条第1項は、同法第65条第1項の規定に該当する場合において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、過少申告加算税に代え、重加算税を課する旨規定している。
 そして、事実を「仮装した」とは、所得、財産あるいは取引上の名義等に関し、あたかも、それが真実であるかのように装うなど、故意に事実をわい曲したことをいうと解するのが相当である。
ロ 認定事実
 請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の各事実が認められる。
(イ) 請求人における修繕工事等や備品等の購入の際の手続は、通常、以下のとおりである。
A 担当部署では、業者が作成した見積書を添付した「稟議書」を作成し、○○まで決裁を受ける。
B 担当部署では、決裁が下りたことを受け、業者と修繕工事等や備品等の購入に関する各種調整をして手続を進め、修繕工事等や備品等の引渡しの完了後、業者から請求書を受け取り、事務センターに送付する。
C 事務センターでは、業者から受け取った請求書の原本を添付した「支出伺」を作成し、経営企画室長及び事務センター長等の決裁を受けた後、業者に対する支払を行い、費用として損金の額に算入する。
(ロ) 請求人は、平成23年11月頃までに、○○の被害に関する保険金を総額で約2億6千万円受領した。
(ハ) 別表2及び別表3記載の各契約に係る「支出伺」は、全てM及びNによって作成された。
(ニ) 上記(ハ)の「支出伺」の決裁は、経営企画室長及び事務センター長等によってなされており、決裁日は全て平成24年1月31日であった。
(ホ) 別表2及び別表3記載の各契約に係る役務の提供等の完了日等の状況は、別表2及び別表3の「役務の提供等の完了日等」欄記載のとおりである。
ハ 関係者の申述及び答述
(イ) Pの申述
 本件事業年度において経営企画室長であったP(以下「本件室長」という。)は、平成25年8月6日、本件の異議調査を担当した職員に対し、要旨次のとおり申述した。
A 本件事業年度当時、請求人の経理業務の責任者として、常勤理事会の承認を得た修繕工事等や備品等の購入に係る「稟議書」の決裁を行った。
B ○○の被害に関する保険金の入金がなければ、本件事業年度中に修繕工事等や備品等の購入を終わらせる必要はなかった。
C 本件各費用については役務の提供等の完了前であったが、本件各業者に対し請求書の発行を依頼するようM及びNに指示した。
D 常勤理事会等において本件各費用を本件事業年度の損金に計上する旨、報告していた。
(ロ) Qの答述
 本件事業年度において事務センター長であったQ(以下「本件センター長」という。)は、平成26年2月13日及び同年4月8日、当審判所に対し、要旨次のとおり答述した。
A 本件各費用については、M及びNが持ってきた「支出伺」を決裁した後、事務センターにおいて、未払金勘定への計上を行った。
B 事務センターでは、通常、決算時に代金の支払は済んでいないが、既に「稟議書」及び請求書の二つが提出されている費用は、役務の提供等が完了しているか否かを確認することなく、未払金勘定に計上していた。
C そもそも、前払合意もなく、役務の提供等の完了前に業者から請求書をもらうことはあり得ないと考えていた。
D 未払金勘定とは、決算時に代金の支払は済んでいないが、役務の提供等は完了している契約に係る費用を計上するものと思っていた。
E 上記Cの認識があるにもかかわらず、本件事業年度の末日時点において、本件各費用の中に、役務の提供等が終わっていない契約に係るものがあることを知っていた。
F 本件各費用を未払金勘定に計上した理由は、平成23年11月の理事会等で、○○関連の費用は翌期には持ち越さず、本件事業年度の損金にする旨の話があり、当時の常勤役員や本件室長からも同様の指示があったからである。
G 理事会等で本件各費用を本件事業年度の損金にする旨の話があった理由には、請求人が平成23年11月頃に○○の被害に関する保険金を受領したことから、本件事業年度で本件各費用を損金に計上しないと、請求人の収入のみが増え、税金が高くなってしまうということもあったと思う。
H MやNが、本件各業者に対し、本件事業年度の末日までに請求書を発行するよう依頼していたことを知っていた。
(ハ) Mの答述
 Mは、平成26年2月21日及び同年3月26日、当審判所に対し、要旨次のとおり答述した。
A 平成23年11月頃、○○及び本件センター長から、○○の被害に関する修繕工事等に係る費用を今期の未払金として計上するため、これらの費用の請求書を提出させるよう指示を受けた。
B 上記Aの指示を受け、修繕工事等に係る費用の額について、本件事業年度の末日までに確定させようと、平成23年12月から平成24年1月にかけて、別表2記載の各業者から見積りを取り、平成24年1月31日までの日付で請求書を発行するよう依頼した。
C 上記Bの依頼により別表2記載の各業者が発行した請求書を基に、「支出伺」を作成した。
(ニ) Nの答述
 Nは、平成26年3月3日及び同月26日、当審判所に対し、要旨次のとおり答述した。
A 平成23年12月頃、本件室長又は本件センター長のいずれかから、備品等の購入に係る費用の額を未払金として計上するため、「稟議書」の決裁はもらっているが、引渡しが完了していない契約について、金額を確定させるよう指示された。
B 上記Aの指示を受け、備品等の購入に係る費用の額を請求人の通常の手続の流れに従って確定させるためには、業者から請求書をもらわなければならないと考え、別表3記載の各業者に対し、平成24年1月31日までの日付で請求書を発行するよう依頼した。
C 上記Bの依頼により別表3記載の各業者が発行した請求書を基に、「支出伺」を作成した。
D 業者に対して備品等の引渡しが完了する前に請求書の発行を依頼したことは、本件事業年度よりも前にはなかった。
E 上層部や事務センターの職員は、備品等の購入に関する「稟議書」の決裁日が平成24年1月31日であったことからすれば、当該備品等の引渡しが同日までに完了することはないと分かっていたと思う。
(ホ) 関係者の申述及び答述の信用性
 本件室長の申述並びに本件センター長、M及びNの答述は、上記(イ)ないし(ニ)のとおり、上記1(4)ロの事実と合致する内容であること、具体的で一貫していること、相互に符合していることからすると、いずれも信用できるものと認められる。
ニ 結論
(イ) 本件各費用について
 当審判所の調査の結果によれば、次のとおりと認められる。
A 別表2及び別表3記載の各契約の中で、平成24年1月31日以前に役務の提供等が完了したものがあったか否かについて
 別表2の順号8、12、14、15、22、32及び35の7件の各契約は、上記ロ(ホ)のとおり、平成24年1月31日までに役務の提供等が完了していたと認められ、また、同表の順号10、11及び16の3件の各契約は、当審判所の調査の結果によっても、同日までに役務の提供等が完了していないことを裏付ける証拠はない(以下、これら10契約に係る費用を「本件役務提供完了等費用」という。)。
 一方で、上記10契約以外の各契約は、上記ロ(ホ)のとおり、平成24年1月31日までに役務の提供等が完了していないことが認められる(以下、これらの各契約に係る費用を「本件役務提供未了費用」という。)。
B これに対し、請求人は、別表2の順号23、25及び34の各契約についても、役務の提供等が平成24年1月31日までに完了していた旨主張する。
 しかしながら、これらの各契約に係る役務の提供等が平成24年1月31日までに完了していないことは上記Aのとおりである。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
(ロ) 請求人の行為は、通則法第68条第1項に規定する事実を「仮装した」ものと認められるか否かについて
A 本件役務提供完了等費用について
 本件役務提供完了等費用は、上記(イ)Aのとおり、平成24年1月31日までに役務の提供等が完了した又は完了していなかったとはいえない各契約に係る費用であることからすれば、請求人が本件役務提供完了等費用を本件事業年度の損金の額及び本件課税期間の支払対価の額に算入した行為は、故意に事実をわい曲したものとはいえないから、通則法第68条第1項に規定する事実を「仮装した」ものと認めることはできない。
B 本件役務提供未了費用について
 本件役務提供未了費用は、上記(イ)Aのとおり、役務の提供等の完了の日がいずれも平成24年1月31日よりも後であるところ、本件室長の申述並びに本件センター長、M及びNの各答述によれば、請求人が多額の保険金を受領した平成23年11月以後、請求人において、○○関連の費用は翌期には持ち越さず、本件事業年度の損金にする旨の指示が上層部から出されていた事実、当該指示を受けたMやNが、本件役務提供未了費用について「支出伺」を作成した事実、本件室長及び本件センター長が、本件役務提供未了費用について「支出伺」の決裁をし、事務センターにおいて未払金に計上した事実を認めることができる。
 また、これらの事実に加えて、上記ロ(イ)Bのとおり、請求人の通常の手続では修繕工事等や備品等の引渡しの完了後に請求書を受領すべきところ、本件では先に請求書の発行を受けるという、通常の手続と異なる処理がされた事実を考え併せると、請求人は、本件役務提供未了費用について、本件事業年度の損金の額及び本件課税期間の課税仕入れに係る支払対価の額に算入できないものであることを知りつつ、平成23年11月に○○の被害に関する多額の保険金収入があったことを受け、本件役務提供未了費用を意図的に本件事業年度の損金の額及び本件課税期間の課税仕入れに係る支払対価の額に算入したものと認めることができる。
 そうすると、請求人は、本件役務提供未了費用について、本件事業年度の損金の額及び本件課税期間の課税仕入れに係る支払対価の額を算出するに当たり、その計算の基礎となるべき事実を、故意にわい曲したものと認めることができるから、請求人の行為は、通則法第68条第1項に規定する事実を「仮装した」ものと認められる。
C これに対し、請求人は、請求書を役務の提供等の完了よりも先に受領し、代金を支払うことは広く一般に行われていることであり、また、本件各費用を本件事業年度の損金の額及び本件課税期間の課税仕入れに係る支払対価の額に算入したことは、単なる経理処理の誤りにすぎず、何らかの事実を仮装する行為ではない旨主張する。
 しかしながら、上記Bのとおり、請求人の行為が故意に事実をわい曲したものと認められる以上、単なる経理処理の誤りということはできない。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
D なお、請求人は、別表2記載の各契約のうち、請求書の日付が平成24年2月1日以後の順号2及び13の各契約並びに請求書の日付が空欄の順号7の契約について、事実を「仮装した」ものではなかった旨主張するが、これらの各契約は、上記ロ(ホ)のとおり、いずれも平成24年1月31日以前には役務の提供等が完了していなかったことが認められる以上、たとえ発行された請求書の日付が平成24年1月31日以前となっていないとしても、請求人は、役務の提供等が完了していない取引について、通常の経理処理と異なる処理を行っていたものであり、故意に事実をわい曲し「仮装した」ものと認めるのが相当である。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
E また、請求人は、本件各費用が翌事業年度に支払われたことや、請求書を受領した経緯などから、請求人の行為は、重加算税取扱事務運営指針の第1の3に該当し、帳簿書類の虚偽記載等には該当しないから、事実を「仮装した」ものではなかった旨主張する。
 しかしながら、上記イの通則法第68条第1項の解釈に照らせば、意図的にした経費の繰上計上は、実際には当期の経費ではないものを当期の経費として計上するのであるから、同項に規定する隠ぺい又は仮装の行為に当たることは明らかというべきである。
 重加算税取扱事務運営指針の第1の3は、相手方との通謀や証ひょう書類の改ざんなど、経費の繰上計上が意図的であることを示す事情を例示し、こうした事情のない経費の繰上計上を重加算税の賦課決定の対象としない旨を明らかにしたものと解するのが相当であり、例示された事情によらない経費の繰上計上を無条件に重加算税の賦課決定の対象としない取扱いを定めたものと解することはできず、上記Bのとおり、経費の繰上計上が意図的であることが内部資料その他のものによって明らかであると認められるような本件の場合には、事実を仮装したものとして重加算税を賦課するのが相当である。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。

(3) 本件法人税賦課決定処分について

 以上審理したところによれば、上記(2)ニ(ロ)Bのとおり、請求人が本件備品等購入費用を損金の額に算入した行為については、事実を「仮装した」ものと認められることから、通則法第68条第1項の規定に基づいて行われた本件法人税賦課決定処分は適法である。

(4) 本件消費税等賦課決定処分について

 以上審理したところによれば、上記(2)ニ(ロ)Aのとおり、請求人が本件各費用のうち本件役務提供完了等費用を課税仕入れに係る支払対価の額に算入した行為は、事実を「仮装した」ものと認められず、また、当該「仮装した」ものと認められない事実のうちに、修正申告前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由がある場合に該当せず、過少申告加算税の課税要件を満たしていることとなるから、本件消費税等賦課決定処分は、その一部を別紙1のとおり取り消すべきである。

(5) その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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