(平成27年3月31日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、原処分庁が、風俗店の事業に係る所得の帰属先は審査請求人(以下「請求人」という。)であるとして、請求人に対して所得税等の更正処分等を行ったのに対し、請求人が、原処分庁の認定に誤りがあるとして、同処分等の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 平成18年分、平成19年分、平成20年分、平成21年分、平成22年分、平成23年分及び平成24年分(以下、これらを併せて「本件各年分」という。)の所得税について、審査請求(平成26年4月11日請求)に至る経緯及び内容は、別表1のとおりである。
 以下、平成25年12月19日付でされた平成18年分、平成19年分、平成20年分及び平成21年分の所得税の各決定処分並びに平成22年分、平成23年分及び平成24年分の所得税の各更正処分を併せて「本件所得税各更正決定処分」といい、本件各年分の所得税に係る重加算税の各賦課決定処分を「本件所得税各賦課決定処分」という。

ロ 平成20年1月1日から同年12月31日まで、平成21年1月1日から同年12月31日まで、平成22年1月1日から同年12月31日まで、平成23年1月1日から同年12月31日まで及び平成24年1月1日から同年12月31日までの各課税期間(以下、順次「平成20年課税期間」、「平成21年課税期間」、「平成22年課税期間」、「平成23年課税期間」及び「平成24年課税期間」といい、これらを併せて「本件各課税期間」という。)の消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)について、審査請求(平成26年4月11日請求)に至る経緯及び内容は、別表2のとおりである。
 以下、平成25年12月19日付でされた本件各課税期間の消費税等の各決定処分及び重加算税の各賦課決定処分を、それぞれ「本件消費税等各決定処分」及び「本件消費税等各賦課決定処分」という。

ハ 平成22年12月から平成24年12月までの各月分の源泉徴収に係る所得税(以下「源泉所得税」という。)、平成25年1月分の源泉所得税及び源泉徴収に係る復興特別所得税(以下、源泉所得税と併せて「源泉所得税等」という。)並びに平成25年2月から同年6月までの期間分(以下、平成22年12月から平成25年1月までの各月分及び同年2月から同年6月までの期間分を併せて「本件各月分等」という。)の源泉所得税等について、審査請求(平成26年4月11日請求)に至る経緯及び内容は、別表3のとおりである。
 以下、平成25年12月19日付でされた、平成22年12月から平成24年12月までの各月分の源泉所得税並びに平成25年1月分及び同年2月から同年6月までの期間分の源泉所得税等の各納税告知処分を併せて「本件各納税告知処分」といい、同年2月から同年6月までの期間分の源泉所得税等に係る不納付加算税の賦課決定処分を「本件不納付加算税賦課決定処分」という。

(3) 関係法令

イ 国税通則法(以下「通則法」という。)第68条《重加算税》第1項は、通則法第65条《過少申告加算税》第1項の規定に該当する場合において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額に係る過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に100分の35の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する旨規定している。

ロ 通則法第68条第2項は、通則法第66条《無申告加算税》第1項の規定に該当する場合において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき法定申告期限までに納税申告書を提出しなかったときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、無申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額に係る無申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に100分の40の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する旨規定している。

ハ 国税通則法第70条《国税の更正、決定等の期間制限》第3項(平成23年法律第114号による改正前のものをいい、当該改正前の国税通則法を、以下「改正前通則法」という。)は、通則法第25条《決定》の規定による決定は、その決定に係る国税の法定申告期限から5年を経過した日以後においては、することができない旨規定し、改正前通則法第70条第4項第2号は、課税標準申告書の提出を要しない賦課課税方式による国税に係る賦課決定は、その納税義務の成立の日から5年を経過した日以後においては、することができない旨規定している。
 また、通則法第70条第4項は、偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れた国税(当該国税に係る加算税を含む。)についての更正決定等は、上記の規定にかかわらず、更正又は決定はその更正又は決定に係る国税の法定申告期限から、課税標準申告書の提出を要しない賦課課税方式による国税に係る賦課決定はその納税義務の成立の日から、それぞれ7年を経過する日まで、することができる旨規定している。

ニ 所得税法第183条《源泉徴収義務》第1項は、居住者に対し国内において同法第28条《給与所得》第1項に規定する給与等(以下「給与等」という。)の支払をする者は、その支払の際、その給与等について所得税を徴収し、これを国に納付しなければならない旨規定している。

ホ 所得税法第185条《賞与以外の給与等に係る徴収税額》第1項第1号は、居住者に対して支払うべき賞与以外の給与等について徴収すべき所得税の額は、同法第194条《給与所得者の扶養控除等申告書》に規定する申告書(以下「給与所得者の扶養控除等申告書」という。)を提出した居住者に対し、その提出の際に経由した給与等の支払者が支払う給与等について、給与等の支給期が毎月と定められている場合は、その給与等の金額等に応じ、同法別表第二の甲欄に掲げる税額とする旨規定し、同法第185条第1項第2号は、同項第1号及び同項第3号に掲げる給与等以外の給与等について、給与等の支給期が毎月と定められている場合は、その給与等の金額等に応じ、同法別表第二の乙欄に掲げる税額とする旨規定している。

ヘ 東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法(以下「復興財源確保法」という。)第28条《源泉徴収義務等》第1項は、所得税法等の規定により所得税を徴収して納付すべき者は、その徴収(平成25年1月1日から平成49年12月31日までの間に行うべきものに限る。)の際、復興特別所得税を併せて徴収し、当該復興特別所得税を当該所得税に併せて国に納付しなければならない旨規定している。

ト 復興財源確保法第29条《居住者の給与等に係る源泉徴収税額及び源泉徴収特別税額の特例》第1項第1号は、居住者に対して支払うべき賞与以外の給与等について徴収すべき上記ホの所得税の額及び上記ヘの復興特別所得税の額は、所得税法別表第二に定める金額及び復興財源確保法に定める復興特別所得税の額の計算を勘案して財務大臣が定める表による金額とすることができる旨規定している。

(4) 基礎事実

次の事実は、請求人と原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。

イ 各店舗の概要等

平成18年、平成19年、平成20年、平成21年、平成22年、平成23年及び平成24年(以下、これらを併せて「本件各年」という。)において、請求人が関与していた各店舗の概要及び関与の状況は、次のとおりである。

(イ) 各店舗に係る法律行為の名義等の状況
A 屋号を「J」及び「K」とする店舗
(A) 平成18年7月下旬、f市g町○-○(f市の住居表示については、○○施行後の表示である。以下同じ。)所在の「hビル」において、店長をP2として、屋号を「J」とする店舗(風俗店)が営業を開始した。
 上記店舗の店長及び屋号につき、平成21年11月頃、店長はP3、屋号は「K」に変更され、その後、同店の店長は、平成22年3月頃にP2、同年11月頃にP4にそれぞれ変更され、その状況で原処分に係る調査(以下「本件調査」という。)の開始日である平成25年11月6日に至るまで営業が継続された。
 以下、上記屋号の変更の前後を通じ、上記店舗を「K店」という。
(B) K店における営業について、平成21年10月○日付で、i県公安委員会による風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下「風営法」という。)第3条《営業の許可》に基づく営業の許可(以下「風俗営業許可」という。)が、営業者をP3とする申請に対して与えられた。
 その後、風営法第10条《許可証の返納等》に基づくP3名義による許可証の返納手続を経て、平成22年3月○日付で、営業者をP2とする申請に対して風俗営業許可が与えられ、また、上記と同様のP2名義による許可証の返納手続を経て、同年11月○日付で、営業者をP4とする申請に対して風俗営業許可が与えられた。
(C) K店における営業に係るクレジットカード加盟店契約は、代表者をP2として、平成18年5月頃にL社との間で、平成18年11月頃にM社との間で、それぞれ締結された。
 上記各クレジットカード加盟店契約におけるクレジットカードの利用による売上げ(以下「クレジットカード売上げ」という。)に係る立替金の指定振込口座は、いずれもP2名義のx1銀行○○支店の普通預金口座(番号○○○○。以下「P2x1銀行口座」という。)とされ、P2x1銀行口座の預金通帳とキャッシュカードは、いずれも請求人が所持していた。
(D) K店に係る賃貸借契約は、平成18年8月1日付で、賃貸人をN社、賃借人を請求人、契約期間を同日から平成20年7月31日までとして締結された。
 その契約期間中の平成19年1月5日、P5がhビルの所有者となったが、上記賃貸借契約は賃貸人に関する事項を除いて内容自体に変更はなくP5との間において継続し、また、当該契約は平成20年7月31日に更新された。
 請求人は、上記賃貸借契約に係る賃料を、請求人名義で、平成19年1月31日支払分まではN社に、平成21年5月25日支払分まではP5に支払った。
 その後、K店に係る賃貸借契約は、風俗営業許可上の営業者が平成22年3月○日付でP2に変更された機会(同人名義の風俗営業許可に係る申請日は同年1月20日)に、同月○日付で、賃貸人をP5、賃借人をP2、連帯保証人を請求人、契約期間を同年2月1日から平成24年1月31日までとして締結され、先行する契約は終了し、また、風俗営業許可上の営業者が平成22年11月○日付でP4に変更された機会(同人名義の風俗営業許可に係る申請日は同年10月7日)に、同年9月18日付で、賃貸人をP5、賃借人をP4、連帯保証人を請求人、契約期間を同年10月1日から平成24年9月30日までとして締結され、先行する契約は終了した。
(E) 請求人は、上記(A)の各人が店長に就任することを決定し、また、風俗営業許可の申請及び許可証の返納の各名義並びにクレジットカード加盟店契約(代表者をP2とする契約のみ)及び賃貸借契約(請求人が賃借人となっている賃貸借契約を除く。)の各契約名義についても、各店長の就任時期に合わせて各店長名義を用いることを決定した。
B 屋号を「Q」とする店舗
(A) 平成19年12月頃、f市g町○-○所在の「jビル」の○階西側において、店長をP6として、屋号を「Q」とする店舗(風俗店)が営業を開始し、平成21年11月頃、営業を終了した。
 その当時、jビルの△階東側では、後記Cの(A)のとおり、店長をP7として、屋号を「R」とする店舗(風俗店)が営業していたが、平成21年11月頃、店長を同人としたまま、屋号が「Q」に変更され、その後、同店の店長は、平成22年1月頃にP8、同年10月頃にP3にそれぞれ変更され、その状況で本件調査の開始日である平成25年11月6日に至るまで営業が継続された。
 以下、jビルの○階西側で屋号を「Q」として営業していた店舗を「旧Q店」といい、jビルの△階東側で屋号を「Q」として営業を開始した店舗を「新Q店」という。
(B) 新Q店における営業について、平成22年1月○日付で、i県公安委員会による風俗営業許可が、営業者をP8とする申請に対して与えられ、その後、上記Aの(B)と同様の同人名義による許可証の返納手続を経て、同年10月○日付で、営業者をP3とする申請に対して与えられた。
(C) 新Q店における営業に係るクレジットカード加盟店契約は、代表者をP3として、平成23年4月頃にS社との間で、平成24年4月頃にT社との間で、同年7月頃にU社との間で、同年8月頃にM社との間で、それぞれ締結された。
 上記各クレジットカード加盟店契約におけるクレジットカード売上げに係る立替金の指定振込口座は、いずれも請求人名義のx2銀行○○支店の普通預金口座(番号○○○○。以下「請求人○○支店口座」という。)とされた。
(D) 旧Q店に係るjビルの○階西側の賃貸借契約は、平成19年9月19日付で、賃貸人をV社、賃借人をP6、連帯保証人を請求人、契約期間を同日から平成21年9月18日までとして締結された。
 新Q店に係るjビルの△階東側の賃貸借契約は、平成21年11月24日付で、賃貸人をV社、賃借人をP8、連帯保証人を請求人、契約期間を同年12月1日から平成23年11月30日までとして締結され、その後、風俗営業許可上の営業者が平成22年10月○日付でP3に変更された機会(同人名義の風俗営業許可に係る申請日は同年9月28日)に、同月21日付で、賃貸人をV社、賃借人をP3、連帯保証人を請求人、契約期間を同年10月1日から平成24年9月30日までとして締結され、先行する契約は終了した。
(E) 請求人は、上記(A)の各人が旧Q店又は新Q店の店長に就任することを決定し、また、風俗営業許可の申請及び許可証の返納の各名義並びにクレジットカード加盟店契約(代表者をP3とする契約のみ)及び賃貸借契約の各契約名義についても、各店長の就任時期に合わせて各店長名義を用いることを決定した。
C 屋号を「R」とする店舗
(A) 平成20年4月頃、jビルのX階において、店長をP7として、屋号を「R」とする店舗(風俗店)が営業を開始し、平成21年1月頃、jビルの△階東側に移転した。
 そして、上記屋号を「R」とする店舗は、平成21年11月頃に上記Bの(A)のとおり屋号を「Q」に変更して新Q店となった。
 以下、屋号を「R」とする店舗を「R店」といい、K店、旧Q店及び新Q店と併せて「本件各店舗」という。
(B) R店に係るjビルのX階の賃貸借契約は、平成20年2月頃、賃貸人をV社、賃借人をP7、連帯保証人を請求人、契約期間を同年3月1日から平成22年2月28日までとして締結され、また、R店に係るjビルの△階東側の賃貸借契約は、平成20年12月頃、賃貸人、賃借人及び連帯保証人を上記と同様、契約期間を平成21年1月1日から平成23年12月31日までとして締結され、上記jビルのX階の賃貸借契約は終了した。
(C) 請求人は、P7がR店の店長に就任することを決定し、また、賃貸借契約の契約名義について、同人の店長就任時期に合わせて同人名義を用いることを決定した。
D 本件各店舗の事務所
 請求人は、平成18年7月下旬にK店が営業を開始した頃、hビルの4階に事務所を設け、平成20年1月頃、jビルのX階に事務所を移転し、同年11月頃、jビルのX階の請求人の自宅に隣接する区画に事務所を移転した。
 以下、hビルの4階に設けられていた事務所を「本件hビル事務所」といい、jビルのX階に設けられていた事務所を移転の前後を通じて「本件jビル事務所」といい、当該各事務所を併せて「本件各事務所」という。

(ロ) 本件各店舗の従業員の雇用、監督の状況
 本件各年における本件各店舗の従業員の雇用、監督の状況は、次のとおりである。
A 請求人は、本件各店舗の各店長を責任者として、ホステスや男性従業員を監督させ、また、後記(ハ)のDの(A)のとおり、店長等に指示して、日々の営業に関する日報等の作成に係る業務をさせていた。
B 請求人は、本件各店舗のうちの一部の店舗のホステスの雇用の採否を当該店舗の店長に任せていたのを除き、全てのホステスの雇用の採否を決定していた。
 また、請求人は、本件各店舗のホステスに対する報酬の支払方法について、ホステスの希望等を考慮した上で自ら決定していた。
C 請求人は、本件各店舗の全ての男性従業員の雇用の採否を決定し、また、タイムカードを使用するなどして男性従業員の従事時間を管理し、それを基にして男性従業員の給料を自ら計算していた。

(ハ) 本件各店舗の収支の管理状況
 本件各年における本件各店舗の収支の管理状況は、次のとおりである。
A 現金売上げ
 請求人は、本件各店舗の営業時間終了後、店長等に指示して、現金残額(当日の売上げに係る現金から経費を支払った後の金銭をいう。以下同じ。)を後記Dの(A)の日報等と一緒に本件各事務所に持参させていた。
 そして、請求人は、本件hビル事務所に持参された現金を請求人の自宅に持ち帰って保管し、また、本件jビル事務所に持参された現金を本件jビル事務所に置いてある金庫に保管して、日々における現金残額を保管していた。
 請求人は、上記のとおり保管していた現金を、随時、請求人の妹であるP9名義のx2銀行○○支店の普通預金口座(番号○○○○。以下「P9○○支店口座」という。)、請求人名義のx2銀行△△支店の普通預金口座(番号○○○○。平成22年3月23日にx2銀行××支店の番号○○○○の普通預金口座に移管された。)、請求人○○支店口座、請求人名義のx3銀行○○支店の普通預金口座(番号○○○○。以下「請求人x3銀行口座」という。)、請求人名義のx4銀行○○支店の普通預金口座(番号○○○○。以下「請求人x4銀行口座」という。)及び請求人の同居人であるP10名義のx3銀行○○支店の普通預金口座(番号○○○○。以下「P10x3銀行口座」という。)へ預け入れていた。
 以下、請求人名義のx2銀行△△支店の上記普通預金口座(以下「請求人△△支店口座」という。)及び同行××支店の上記普通預金口座(以下「請求人××支店口座」といい、請求人△△支店口座及び請求人○○支店口座と併せて「請求人x2銀行各口座」という。)を含む上記7つの普通預金口座とP2x1銀行口座を併せて「本件各口座」という。
B クレジットカード売上げ
 上記(イ)のAの(C)のとおり、K店のクレジットカード売上げに係る立替金の指定振込口座はP2x1銀行口座が使用されていたところ、請求人は、P2x1銀行口座の預金通帳及びキャッシュカードを所持してK店のクレジットカード売上げに係る振込額を確認し、また、上記(イ)のBの(C)のとおり、請求人は、新Q店のクレジットカード売上げに係る立替金の指定振込口座を請求人○○支店口座とすることにより、新Q店のクレジットカード売上げに係る振込額を確認していた。
C 経費の支出
 請求人は、本件各店舗で現金により支払う経費の一部について各店長に支払を任せていたのを除き、全ての本件各店舗に係る経費について、その支出を決定していた。
 そして、請求人は、上記Aのとおり保管していた現金を基に、自ら支出を決定した本件各店舗に係る月払の経費等を現金又はP9○○支店口座、請求人x2銀行各口座、請求人x4銀行口座及びP10x3銀行口座から振込み等の方法により支払った。
D 各月の利益の把握等
(A) 請求人は、店長等に指示して、日々、各店舗の従業員が記入したリスト表(ホステスごとの当日の客の入退店時間や売上げ等が記載されたもの)等を基に日報(当日の現金売上げ及びクレジットカード売上げの金額、ホステスの日払報酬等の店舗で支払った経費の額、現金残高等が記載されたもの)を作成させ、本件各店舗の営業時間終了後、上記Aの現金残額と一緒に、日報、リスト表及び支払った経費の領収証を本件各事務所に持参させていた。
(B) 請求人は、翌日の営業開始前に、自ら又は特定の店長に指示して、上記(A)の本件各店舗の日報等を基に本件各事務所のパーソナルコンピュータ(以下「パソコン」という。)で入力して、「月間売上表」又は「月間売上表.2」と題するファイル(日々の売上金額(各店舗別)、経費の額、現金残高等が入力されたもの。以下「本件月間売上げ等ファイル」という。)を作成していた。
 また、請求人は、上記Cのとおり自らが現金又は振込み等により支払った本件各店舗に係る月払の経費等について、支払の都度、請求書や領収証等を基に本件各事務所のパソコンで入力して、「支払」と題するファイル(支払った項目ごとの金額が各店舗別に入力されたもの。以下「本件月間支払ファイル」という。)を作成していた。
(C) 請求人は、本件月間売上げ等ファイル及び本件月間支払ファイルを基に、入力漏れの経費等を加えて本件各事務所のパソコンで入力して、「試算表」と題するファイル(月間の売上金額、項目別の経費の金額及びその合計額並びに利益の金額が各店舗別に入力されたもの。以下「本件月間試算ファイル」という。)を翌月の5日頃までに作成していた。
(D) 請求人は、平成19年頃から、上記(A)の日報に記載された各ホステスの日々の新規の客数を基に、月々の各店舗別の売上金額がそれぞれ約XXX万円になるように客数を調整して本件各事務所のパソコンで入力して、「源泉徴収表」と題するファイル(各ホステス別の日々の客数、日々の売上金額、当月の売上金額が各店舗別に入力されたもの。以下「本件源泉徴収表ファイル」という。)を作成していた。
(E) 請求人は、本件源泉徴収表ファイルを基に、年間の各店舗別の所得金額がXXX,000円からXXX,000円までの間になるように経費の額を調整して本件各事務所のパソコンで入力して、「K試算表」、「Q試算表」などと店舗名を付した試算表と題するファイル(以下「本件各店舗別試算ファイル」という。)を作成していた。

ロ 確定申告等の状況

本件各店舗に係る事業所得に係る所得税及び課税資産の譲渡等の対価に係る消費税等についての各確定申告書の提出状況は、次の(イ)のAからDまで及び(ロ)のAのとおりである。
 これらの各確定申告書は、請求人が、本件各店舗別試算ファイル等に基づいて各店長の名義で作成して提出したものである。

(イ) 所得税
A K店に係る事業所得
(A) 平成18年分から平成22年分までのK店に係る事業所得について、当該各年分の法定申告期限までにP2名義の確定申告書がそれぞれ提出されており、当該各確定申告書に記載された事業所得の総収入金額及び所得金額又は損失の金額は、次のとおりである。
a 平成18年分の総収入金額は○○○○円、損失の金額が○○○○円である。
b 平成19年分の総収入金額は○○○○円、所得金額は○○○○円である。
c 平成20年分の総収入金額は○○○○円、所得金額は○○○○円である。
d 平成21年分の総収入金額は○○○○円、損失の金額が○○○○円である。
e 平成22年分の総収入金額は○○○○円、損失の金額が○○○○円である。
(B) 平成23年分及び平成24年分のK店に係る事業所得について、当該各年分の法定申告期限までにP4名義の確定申告書がそれぞれ提出されており、当該各確定申告書に記載された事業所得の総収入金額及び所得金額は、次のとおりである。
a 平成23年分の総収入金額は○○○○円、所得金額は○○○○円である。
b 平成24年分の総収入金額は○○○○円、所得金額は○○○○円である。
B 旧Q店に係る事業所得
 平成19年分から平成21年分までの旧Q店に係る事業所得について、確定申告書は提出されていない。
C 新Q店に係る事業所得
(A) 平成22年分及び平成24年分の新Q店に係る事業所得について、当該各年分の法定申告期限までに、平成22年分はP8名義で、平成24年分はP3名義で確定申告書がそれぞれ提出されており、当該各確定申告書に記載された事業所得の総収入金額及び所得金額は、次のとおりである。
a 平成22年分の総収入金額は○○○○円、所得金額は○○○○円である。
b 平成24年分の総収入金額は○○○○円、所得金額は○○○○円である。
(B) 平成21年分及び平成23年分の新Q店に係る事業所得について、確定申告書は提出されていない。
D R店に係る事業所得
 平成20年分及び平成21年分のR店に係る事業所得について、確定申告書は提出されていない。
E 請求人の確定申告
 請求人は、平成18年分から平成21年分までの各年分について確定申告書を提出せず、また、平成22年分から平成24年分までの各確定申告書の「職業」欄にいずれも「コンサルタント」、また、平成24年分の確定申告書のみ「屋号・雅号」欄に「X社」と記載し、当該各年分の事業所得について、平成22年分は所得金額を○○○○円、平成23年分は損失の金額を○○○○円、平成24年分は所得金額を○○○○円と記載した各確定申告書を、当該各年分の法定申告期限までにそれぞれ提出した。

(ロ) 消費税等
A 平成20年課税期間から平成22年課税期間までの各課税期間のK店に係る課税資産の譲渡等の対価について、課税売上高を○○○○円、○○○○円、○○○○円と記載された付表を添付した各確定申告書がそれぞれ法定申告期限までにP2名義で提出されたが、本件各課税期間のうち当該各課税期間以外の課税期間の確定申告書は提出されていない。
 また、本件各課税期間の旧Q店、新Q店及びR店に係る課税資産の譲渡等の対価について、確定申告書は提出されていない。
B 本件各課税期間において、請求人は、確定申告書を提出していない。
(ハ) 源泉所得税等
 請求人は、平成25年1月29日、所得税法第216条《源泉徴収に係る所得税の納期の特例》に規定する納期の特例の承認を受けるため、同法第217条《納期の特例に関する承認の申請等》第1項に規定する申請書を原処分庁に提出し、同条第5項により同年2月末日においてその承認があったものとみなされた。
ハ 本件調査の状況
(イ) 原処分庁は、平成25年11月6日、jビルのX階にある請求人の自宅及び本件jビル事務所において、本件調査を開始した。
(ロ) 請求人は、平成25年11月6日、本件調査の担当者(以下「本件調査担当者」という。)に対し、同年9月1日から同年11月5日までの日報及び同年10月1日から同年11月5日までのリスト表、本件jビル事務所のパソコンに保存された本件月間支払ファイル、本件源泉徴収表ファイル、本件各店舗別試算ファイルを提示するとともに、情報記録媒体1個(媒体はUSBメモリ。本件月間売上げ等ファイルが保存されたもの。以下「本件Aメモリ」という。)を提示した。
 また、請求人は、平成25年11月8日、本件調査担当者に対し、情報記録媒体1個(媒体はUSBメモリ。本件月間売上げ等ファイル及び本件月間試算ファイルが保存されたもの。以下「本件Bメモリ」という。)を提示した。
 以下、上記各メモリ又は上記パソコンに保存されていた本件月間売上げ等ファイル、本件月間支払ファイル及び本件月間試算ファイルを併せて「本件各ファイル」という。
 本件各ファイルは、平成18年7月下旬にK店が開店して以降、本件各店舗について作成されていたものであるが、本件調査時に把握された本件各ファイルに入力された収支計算の期間は、別表4のとおりである。

(ハ) 請求人は、上記(ロ)の両日において、本件調査担当者に対し、平成22年12月分から平成25年10月分までの給料支払明細書(K店及び新Q店に係るもの。以下「本件給料支払明細書」という。)を提示した。
 以下、本件給料支払明細書に記載された、平成22年12月から平成25年6月までの各月におけるK店の店長のP4及び新Q店の店長のP3に対する各給与を「本件各給与」という。

(5) 争点

争点1 本件各店舗の事業に係る所得の帰属先は請求人か否か。
争点2 平成18年分及び平成19年分の所得税に係る請求人の行為は、通則法第70条第4項に規定する偽りその他不正の行為に該当するか否か。
争点3 本件各年分の所得税及び本件各課税期間の消費税等に係る請求人の行為は、通則法第68条第1項又は同条第2項に規定する事実の隠ぺい又は仮装に該当するか否か。
争点4 請求人は、本件各給与について、所得税法第183条第1項及び復興財源確保法第28条第1項に規定する源泉徴収義務があるか否か。

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2 主張

(1) 争点1(本件各店舗の事業に係る所得の帰属先は請求人か否か。)

原処分庁 請求人
次のとおり、本件各年における本件各店舗の経営者は請求人であるから、本件各店舗の事業に係る所得の帰属先は請求人である。 次のとおり、本件各年における本件各店舗の経営者はP11であるから、本件各店舗の事業に係る所得の帰属先は請求人ではない。
イ 平成18年7月頃、P11がK店を6,000,000円で買い取り、請求人がP11の下でK店の経営を任されていたという事実はないし、その後の本件各年における各店舗の開業等に際し、P11が資金を支出したという事実もない。
 後記ロ及びハの状況からすると、本件各店舗の開業等に際して出資したのは請求人であると認められる。
イ 平成18年7月頃、請求人が従業員として働いていたK店をP11が6,000,000円で買い取り、請求人はP11の下でK店の経営を任されることとなったものであり、その後の本件各年における各店舗の開業等に際し、資金を支出したのもP11である。
ロ 本件各店舗に関して、1風俗営業許可及びクレジットカード加盟店契約は、請求人が各店長の名前を借りて、許可を得た又は締結したものであり、各賃貸借契約は、請求人が賃借人又は賃借人と同等の責任を負う立場にある連帯保証人となっていること、2請求人は、一部の店舗のホステスの雇用の採否を除いて各店長を含む男性従業員やホステスの雇用の採否を決定し、日々の営業に係る指示を行うなど、従業員の雇用、指揮監督を行っていたこと、3請求人は、現金売上げ及びクレジットカード売上げに係る資金を管理し、経費の支払義務を負っていた上、本件各事務所のパソコンで本件各ファイルを作成して収支の管理を行っていたこと、加えて、4請求人が、個人的に多額の貸付けや資産運用をし、高額な美術品及び装飾品を購入していることなどの事情が存在した。
 これらを総合すると、本件各店舗の経営者は請求人であると認められる。
ロ 本件各店舗に関して、1風俗営業許可、クレジットカード加盟店契約、賃貸借契約等の法律行為の名義人について、請求人が各店長又は請求人とすることを決めたこと、2請求人が、一部の店舗のホステスの雇用の採否を除いて本件各店舗の全ての従業員の雇用の採否を決定し、日々の日報の作成等の業務に関する指示等を行っていたこと、3請求人が、本件各店舗の売上金の管理や支出の決定を行った上、本件各事務所のパソコンで本件各ファイルを作成して収支の管理をしていたこと、4請求人が、本件各店舗から生じる所得等の申告名義を各店長名義とすることを決めたことなど、請求人は本件各店舗の経営に関与していたが、これは実質経営者であるP11から本件各店舗の経営を任されていたからにすぎない。
ハ 請求人がP11から毎月給料を受け取っていたという事実はないし、毎月の現金保管額から給料を差し引いた額をP11に渡し、P11が利益を得ていたという事実もない。 ハ 請求人は、本件各店舗の収支を管理し、毎月、月末締めの本件各店舗に係る現金保管額及び売上げの合計額をP11に電話で報告し、また、P11との事前の取決めにより、平成21年3月頃までは、月初めに、本件各店舗に係る前月分の利益から請求人の給料○○○○円を受け取り、これを差し引いた残額の全額をP11に渡しており、同月頃以降は、前月末の現金残額から、請求人の給料○○○○円のほかに事務所の経費の支払用資金として別途500,000円を受け取り、これらを差し引いた後の現金保管額(当該金額が200,000円を下回った場合は200,000円)をP11に全て渡していた。
 このように、請求人は、本件各店舗の実質経営者であるP11に雇われて給料を受け取っていたにすぎず、本件各年における本件各店舗に係る利益を得ていたのはP11である。

(2) 争点2(平成18年分及び平成19年分の所得税に係る請求人の行為は、通則法第70条第4項に規定する偽りその他不正の行為に該当するか否か。)

原処分庁 請求人
上記(1)の「原処分庁」欄のとおり、K店及び旧Q店の事業に係る所得の帰属先は請求人であるにもかかわらず、請求人は、平成18年分について、K店の事業に係る所得についてP2名義の確定申告書を提出して同人が経営者であるかのように装い、また、平成19年分について、K店については平成18年分と同様にP2が経営者であるかのように装った上、旧Q店については風俗営業許可を店長のP6名義で取得して請求人が旧Q店の経営者であることを秘匿して、所得の帰属先を仮装したことが認められる。
 平成18年分及び平成19年分の所得税に係る請求人の上記行為は、税額を免れる意図の下に税の賦課徴収を不能又は著しく困難にするような偽計その他の工作を伴う不正な行為といえるから、通則法第70条第4項に規定する偽りその他不正の行為に該当する。
請求人は、K店及び旧Q店の法律行為の名義人を各店長としていたものがあることに加え、K店に係る平成18年分及び平成19年分の所得税の確定申告書をいずれもP2名義で提出したが、上記(1)の「請求人」欄のとおり、請求人は、P11に雇われて本件各店舗の経営を任されていただけであり、K店及び旧Q店の事業に係る所得の帰属先は請求人ではないから、平成18年分及び平成19年分の所得税に係る請求人の上記行為が、通則法第70条第4項に規定する偽りその他不正の行為に該当することはない。

(3) 争点3(本件各年分の所得税及び本件各課税期間の消費税等に係る請求人の行為は、通則法第68条第1項又は同条第2項に規定する事実の隠ぺい又は仮装に該当するか否か。)

原処分庁 請求人
次の理由により、本件各年分の所得税及び本件各課税期間の消費税等に係る請求人の行為は、通則法第68条第1項又は同条第2項に規定する事実の隠ぺい又は仮装に該当する。
イ 所得税について
上記(1)の「原処分庁」欄のとおり、本件各店舗の事業に係る所得の帰属先は請求人であるにもかかわらず、請求人が次のとおり本件各店舗の事業に係る所得の帰属先を仮装したことは、事実の隠ぺい又は仮装に該当する。
(イ) 平成18年分について、請求人は、K店の事業に係る所得についてP2名義の確定申告書を提出して同人が経営者であるかのように装って、K店の所得の帰属先を仮装した。
(ロ) 平成19年分について、請求人は、K店については平成18年分と同様にP2が経営者であるかのように装った上、旧Q店については風俗営業許可を店長のP6名義で取得して請求人が経営者であることを秘匿して、当該各店舗の所得の帰属先を仮装した。
(ハ) 平成20年分について、請求人は、K店及び旧Q店について平成19年分と同様に当該各店舗の所得の帰属先を仮装し、また、R店については風俗営業許可を店長のP7名義で取得して請求人が経営者であることを秘匿して、R店の所得の帰属先を仮装した。
(ニ) 平成21年分について、請求人は、K店、旧Q店及びR店について平成20年分と同様に当該各店舗の所得の帰属先を仮装し、また、R店から屋号が変更された新Q店については風俗営業許可につきP7名義を使用して請求人が経営者であることを秘匿して、新Q店の所得の帰属先を仮装した。
(ホ) 平成22年分から平成24年分までについて、請求人は、K店の風俗営業許可をP2名義、P4名義で取得して請求人が経営者であることを秘匿した上、平成22年分についてP2名義、平成23年分及び平成24年分についていずれもP4名義の各確定申告書を提出して両者が経営者であるかのように装って、K店の所得の帰属先を仮装し、また、新Q店の風俗営業許可をP8名義、P3名義で取得して請求人が経営者であることを秘匿した上、平成22年分及び平成24年分についてそれぞれP8名義、P3名義の各確定申告書を提出して両者が経営者であるかのように装って、新Q店の所得の帰属先を仮装した。
ロ 消費税等について
上記(1)の「原処分庁」欄のとおり、本件各店舗の事業に係る所得の帰属先は請求人であるから、売上げに対応する課税資産の譲渡等の対価も請求人に帰属するところ、請求人が次のとおり本件各店舗の事業に係る課税資産の譲渡等の対価の帰属先を仮装したことは、事実の隠ぺい又は仮装に該当する。
(イ) 平成20年課税期間について、請求人は、K店についてはP2名義の確定申告書を提出して同人が経営者であるかのように装い、また、旧Q店及びR店については上記イの(ハ)の方法により風俗営業許可を取得して請求人が経営者であることを秘匿して、当該各店舗の課税資産の譲渡等の対価の帰属先を仮装した。
(ロ) 平成21年課税期間について、請求人は、K店についてはP2名義の確定申告書を提出して同人が経営者であるかのように装い、また、旧Q店、新Q店及びR店については、上記イの(ニ)の方法により風俗営業許可を取得して請求人が経営者であることを秘匿して、当該各店舗の課税資産の譲渡等の対価の帰属先を仮装した。
(ハ) 平成22年課税期間について、請求人は、K店の風俗営業許可をP2名義、P4名義で取得して請求人が経営者であることを秘匿した上、P2名義の確定申告書を提出して同人が経営者であるかのように装い、また、新Q店の風俗営業許可をP8名義、P3名義で取得して請求人が経営者であることを秘匿して、当該各店舗の課税資産の譲渡等の対価の帰属先を仮装した。
(ニ) 平成23年課税期間について、請求人は、K店の風俗営業許可をP4名義で、また、新Q店の風俗営業許可をP3名義でそれぞれ取得して請求人が経営者であることを秘匿して、当該各店舗の課税資産の譲渡等の対価の帰属先を仮装した。
(ホ) 平成24年課税期間について、請求人は、上記(ニ)の方法により請求人が経営者であることを秘匿して、K店及び新Q店の課税資産の譲渡等の対価の帰属先を仮装した。
請求人は、本件各店舗の法律行為の名義人を各店長としていたものがあることに加え、所得税について、K店に係る平成18年分から平成22年分までの各確定申告書をいずれもP2名義で、平成23年分及び平成24年分の各確定申告書をいずれもP4名義で提出し、新Q店に係る平成22年分及び平成24年分の各確定申告書をそれぞれP8名義、P3名義で提出し、また、消費税等について、K店に係る平成20年課税期間から平成22年課税期間までの各確定申告書をいずれもP2名義で提出したが、上記(1)の「請求人」欄のとおり、請求人は、P11に雇われて本件各店舗の経営を任されていただけであり、本件各店舗の事業に係る所得及び課税資産の譲渡等の対価の帰属先は請求人ではないから、本件各年分の所得税及び本件各課税期間の消費税等に係る請求人の上記行為が、通則法第68条第1項又は同条第2項に規定する事実の隠ぺい又は仮装に該当することはない。

(4) 争点4(請求人は、本件各給与について、所得税法第183条第1項及び復興財源確保法第28条第1項に規定する源泉徴収義務があるか否か。)

原処分庁 請求人
上記(1)の「原処分庁」欄のとおり、本件各店舗の事業に係る所得の帰属先は請求人であり、請求人は本件各店舗の経営者であると認められ、本件各給与の支払者は請求人であるから、請求人は、本件各給与について、所得税法第183条第1項及び復興財源確保法第28条第1項に規定する源泉徴収義務がある。 上記(1)の「請求人」欄のとおり、請求人は、P11に雇われて本件各店舗の経営を任されていただけであり、本件各店舗の経営者は請求人ではなく、請求人は本件各給与の支払者でないから、請求人は、本件各給与について、所得税法第183条第1項及び復興財源確保法第28条第1項に規定する源泉徴収義務はない。

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3 判断

(1) 争点1(本件各店舗の事業に係る所得の帰属先は請求人か否か。)

イ  認定事実

原処分関係資料、請求人提出資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。

(イ) 法律行為等の名義人について
 請求人の本件調査担当者に対する申述によれば、請求人が本件各店舗別試算ファイル等に基づいて作成して提出した本件各年分のK店並びに平成22年分及び平成24年分の新Q店の事業所得に係る所得税、平成20年課税期間、平成21年課税期間及び平成22年課税期間のK店の課税資産の譲渡等の対価に係る消費税等の各確定申告書(上記1の(4)のロの(イ)のA及びC並びに(ロ)のA)は、各店舗の風俗営業許可を店長名義で得ているため、それに合わせて各店舗の店長がそれぞれの店舗の経営者であるかのように装って提出したものであること、申告していない年があることを請求人が認識していたこと、請求人が実際の納税も行っていたこと、また、各店長は上記各確定申告書がどのように計算して作成されたものか知らず、納税にも関与しなかったことが認められる。

(ロ) 収支の管理について
 請求人は、上記1の(4)のイの(ハ)のAのとおり、各店長に現金残額と日報等を持参させ、請求人がその現金を請求人の自宅又は本件jビル事務所の金庫において保管していたことから、請求人は、日々、本件各店舗における現金売上げ及び本件各店舗で現金により支払う経費を確認していたと推認される。

(ハ) 店舗等の開店、移転等の費用の支出について
A 本件月間試算ファイルによれば、1平成20年4月頃のR店の営業開始(上記1の(4)のイの(イ)のCの(A))、2同年11月頃の本件jビル事務所の移転(上記1の(4)のイの(イ)のD)、3平成21年1月頃のR店の移転(上記1の(4)のイの(イ)のCの(A))、4同年11月頃の「J」店から「K」店への屋号変更(上記1の(4)のイの(イ)のAの(A))、5同年11月頃のR店から新Q店への屋号変更(上記1の(4)のイの(イ)のBの(A))に際して、次の支出がされていることが認められる。
(A) 上記1について
 平成20年4月に「電気工事及び看板」代として87,200円、「名刺(スタッフ、R)」代として102,900円の合計190,100円
(B) 上記2について
 平成20年9月に「新事務所改装費」として1,690,000円、「新事務所敷金」として180,000円、「新事務所仲介料」として90,000円、同年12月に「事務所改装費(トイレ)」として170,000円の合計2,130,000円
(C) 上記3について
 平成20年9月に「R敷金」として420,000円、「R仲介料」として210,000円、同年11月に「照明器具」代として209,000円、「パネル製作費、看板」代として188,400円、同年12月に「R改装費(電気工事)」として784,350円、「R改装費(照明工事他)」として270,000円、平成21年2月に「改装費」として1,150,000円の合計3,231,750円
(D) 上記4について
 平成21年10月に「制服」代として67,646円、「看板」代として190,050円、同年11月に「制服代」として13,808円の合計271,504円
(E) 上記5について
 平成21年10月に「制服」代として65,733円、同年11月に「看板代」として計155,000円の合計220,733円
B 本件月間試算ファイルは、上記1の(4)のイの(ハ)のDの(C)のとおり本件月間支払ファイルを基に作成され、本件月間支払ファイルは、上記1の(4)のイの(ハ)のDの(B)のとおり請求人が請求人の自宅又は本件jビル事務所の金庫に保管されていた現金で自ら支出を決定した経費等を支払い、当該支払に係る請求書等に基づいて作成していたものであるから、上記Aの各支出も請求人の自宅又は本件jビル事務所の金庫に保管されていた現金での支払であり、また、後記(ホ)のAのとおり請求人が請求人の自宅又は本件jビル事務所の金庫に保管していた現金は本件各店舗の売上げを原資とするものであったことから、上記Aの各支払の原資も同様に本件各店舗の売上げであることが推認される。

(ニ) 売上金が入金された口座について
A P9○○支店口座
 P9○○支店口座及び請求人△△支店口座に係る各普通預金取引明細表、P2x1銀行口座に係る普通預金異動明細表、請求人の当審判所に対する答述及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(A) P9○○支店口座は、請求人の依頼により平成18年12月12日にP9が開設した口座であり、口座開設後、キャッシュカードは請求人が所持していた。
 請求人は、請求人の自宅に保管していたK店及び旧Q店の売上げを原資とする現金、K店のクレジットカード売上げに係る立替金が振り込まれるP2x1銀行口座から出金した現金をP9○○支店口座に入金していた。
(B) 請求人は、平成19年1月5日から平成20年1月23日までの間、P9○○支店口座へ平成19年中に合計66,955,671円、平成20年中に合計3,591,133円を現金で入金し、P9○○支店口座から平成19年中に合計56,087,759円、平成20年中に合計4,673,583円を現金で出金し、出金した現金を請求人の自宅に保管していた。
 請求人は、P9○○支店口座から、K店の家賃、酒代、おしぼり代等の経費を振込みの方法により支払い、また、P9○○支店口座の預金を振込みの方法で請求人△△支店口座に送金していた。
(C) P9が上記(B)の期間においてP9○○支店口座を個人的に使用した形跡は見当たらないこと、そして、P9○○支店口座の開設、キャッシュカードの保管及び預金の入出金に係る上記(A)及び(B)の状況からすると、P9○○支店口座は、K店及び旧Q店に係る事業用の借名口座であり、請求人がこれを管理していたことが認められる。
B 請求人x2銀行各口座
 請求人x2銀行各口座に係る各普通預金取引明細表、請求人の子であるP12名義のx2銀行○○支店の普通預金口座(番号○○○○。以下「P12○○支店口座」という。)及び同行××支店の普通預金口座(番号○○○○。平成22年3月23日にx2銀行△△支店の番号○○○○の普通預金口座から移管された。以下「P12××支店口座」という。)に係る各普通預金取引明細表、P2x1銀行口座に係る普通預金異動明細表、S社、T社、U社及びM社から原処分庁宛の各回答書(取引金額等の照会に対するもの)、i県民共済生活協同組合、○○i県本部、k社及びf市財政局料金課長から当審判所宛の各回答書(取引内容又は納付状況の照会に対するもの)、請求人の当審判所に対する答述及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(A) 請求人△△支店口座は、平成18年7月下旬にK店が営業を開始する前から請求人が使用していた口座で、平成22年3月23日に請求人××支店口座に移管されたものであり、また、請求人○○支店口座は、同年2月18日に請求人が開設した口座であり、当該各口座はいずれも請求人が管理していた。
(B) 請求人は、請求人の自宅又は本件jビル事務所の金庫に保管していた本件各店舗の売上げを原資とする現金について、平成19年1月以降平成22年3月頃までは請求人△△支店口座に、同月以降は請求人○○支店口座にそれぞれ入金していた。
 また、上記1の(4)のイの(イ)のBの(C)のとおり、請求人○○支店口座は、新Q店のクレジットカード売上げに係る立替金の指定振込口座とされており、新Q店のクレジットカード売上げに係る立替金が振り込まれていたところ、請求人は、随時、キャッシュカードでこれを出金し、その出金した現金を請求人の自宅又は本件jビル事務所の金庫に保管していた。
 さらに、請求人は、上記Aの(B)のとおりP9○○支店口座の預金を振込みの方法で請求人△△支店口座へ送金し、また、K店のクレジットカード売上げに係る立替金が振り込まれるP2x1銀行口座から出金した現金を請求人○○支店口座へ入金していた。
(C) 請求人は、平成19年1月以降、請求人x2銀行各口座から、本件各店舗に係る経費である店舗及び従業員の寮の家賃を振込みの方法により支払っていた。
(D) 請求人は、請求人x2銀行各口座から、平成19年2月15日以降平成24年12月17日までの間、契約者を請求人とするi県民共済生活協同組合の生命共済に係る掛金を、 平成19年2月28日以降平成24年12月28日までの間、契約者を請求人とするm共済に係る掛金を、平成22年4月27日以降平成24年12月27日までの間、契約者を請求人とするk社の生命保険に係る保険料を、平成19年8月31日以降平成24年7月2日までの間、請求人の国民健康保険料を、それぞれ引落しの方法で支払っていた。
 また、請求人は、請求人x2銀行各口座から、平成18年11月30日以降平成23年5月25日までの間、P12に対する仕送りとして合計2,470,000円をP12○○支店口座へ、平成19年1月31日以降平成23年5月25日までの間、P13(請求人の元妻)からの借入金の返済金として合計2,580,000円をP12××支店口座へそれぞれ送金していた。
(E) 請求人は、後記Dの(E)のとおり、平成25年12月12日及び同月13日に請求人x4銀行口座から請求人○○支店口座にそれぞれ3,000,000円、4,500,000円を送金し、同日、請求人○○支店口座から10,000,000円を現金で出金しているところ、当該10,000,000円が本件各店舗の事業用の資金として使用された形跡は見当たらない。
(F) 上記(A)から(D)までのとおり、請求人が、平成19年1月以降、本件各店舗の売上げを原資とする現金を請求人x2銀行各口座に入金し、その入金後の預金を本件各店舗の家賃等の経費の支払に充てた以外に、生命保険等に係る保険料等及び国民健康保険料の支払、子に対する仕送り並びに元妻への借入金の返済に充てていたことから、請求人は、本件各店舗の売上げに係る資金を個人的な費消に充てていたものである。
C 請求人x3銀行口座
 請求人x3銀行口座に係る普通預金取引明細表、請求人の当審判所に対する答述及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(A) 請求人x3銀行口座は、平成19年6月12日に請求人が開設した口座である。
(B) 請求人は、平成19年6月12日以降平成24年12月25日までの間、請求人の自宅又は本件jビル事務所の金庫に保管していた本件各店舗の売上げを原資とする現金について、請求人x3銀行口座へ平成19年中に合計310,000円、平成23年中に合計2,100,000円、平成24年中に合計4,120,000円をそれぞれ入金し、また、請求人x3銀行口座から平成19年中に300,000円、平成23年中に合計1,500,000円、平成24年中に合計1,100,000円を現金でそれぞれ出金し、その出金した現金を請求人の自宅又は本件jビル事務所の金庫に保管していた。
D 請求人x4銀行口座
 請求人x4銀行口座に係る取引履歴明細証明書、請求人○○支店口座に係る普通預金取引明細表、n証券の請求人名義の取引に係る精算履歴(請求人の顧客コードを○○○○とするもの)、p証券の請求人名義の取引に係る顧客勘定元帳(番号○○○○)、請求人の当審判所に対する答述及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(A) 請求人x4銀行口座は、平成20年5月23日に請求人が開設した口座である。
(B) 請求人は、平成20年5月31日以降平成24年12月25日までの間、本件jビル事務所の金庫に保管していた本件各店舗の売上げを原資とする現金について、請求人x4銀行口座へ平成20年中に合計8,448,000円、平成21年中に合計4,318,000円、平成22年中に合計2,170,000円、平成23年中に合計2,110,000円、平成24年中に合計5,969,000円をそれぞれ入金し、また、請求人x4銀行口座から平成21年中に合計1,490,000円、平成22年中に合計1,900,000円を現金でそれぞれ出金し、その出金した現金を本件jビル事務所の金庫に保管していた。
(C) 請求人は、請求人x4銀行口座から、本件各店舗に係る経費である店舗及び従業員の寮の家賃を振込みの方法により支払っていた。
(D) 請求人は、平成24年6月29日以降同年12月21日までの間、請求人x4銀行口座から、9回にわたり合計5,500,000円を振込みの方法によりn証券に送金した上、n証券に開設した請求人名義の口座で「q社」の株式40,000株を取得価額5,351,518円で取得し、また、請求人は、平成25年2月25日以降同年10月末までの間、n証券の上記口座で上記のとおり取得した「q社」の株式40,000株のうち30,000株を売却価額○○○○円で売却し、その売却代金を基に「t社」の株式35,000株を取得価額11,519,675円で取得し、3,000,000円を請求人x4銀行口座からp証券の請求人名義の口座へ送金した。
(E) 請求人は、平成25年4月8日以降同年6月26日までの間、請求人x4銀行口座から、4回にわたり合計6,000,000円を振込みの方法によりp証券に送金し(このうち3,000,000円はn証券における株式売却代金を上記(D)のとおり送金したもの)、p証券の請求人名義の口座で「q社」の株式13,000株を取得価額5,226,266円で取得した。
 また、請求人は、平成25年12月12日、上記口座で上記の「q社」の株式13,000株を売却価額○○○○円で売却し、同日、その売却代金と上記口座の残額774,299円の合計額○○○○円を上記口座から請求人x4銀行口座に送金した後、請求人x4銀行口座から同日及び同月13日にそれぞれ3,000,000円、4,500,000円を請求人○○支店口座に送金した。
(F) 上記(A)から(E)までのとおり、請求人が、平成20年5月31日以降、本件各店舗の売上げを原資とする現金を請求人x4銀行口座に入金し、その入金後の預金を基にn証券及びp証券の請求人名義の各口座で株式を取得したことは、請求人が本件各店舗の売上げに係る資金を請求人個人の資産運用に充てていたものである。
E P2x1銀行口座
 P2x1銀行口座に係る普通預金異動明細表、P9○○支店口座及び請求人○○支店口座に係る各普通預金取引明細表、L社及びM社から原処分庁宛の各回答書、請求人の当審判所に対する答述及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
 P2x1銀行口座は、上記1の(4)のイの(イ)のAの(C)のとおり、K店のクレジットカード売上げに係る立替金の指定振込口座とされており、平成18年8月以降平成25年1月までの間、K店のクレジットカード売上げに係る立替金が振り込まれていたところ、請求人は、本件各年において、月1回程度、P2x1銀行口座からキャッシュカードで現金を出金し、その出金した現金について、平成19年中に合計1,710,000円(7回)をP9○○支店口座へ、平成23年中に合計650,000円(2回)、平成24年中に350,000円(1回)を請求人○○支店口座へそれぞれ入金し、また、請求人の自宅又は本件jビル事務所の金庫に保管していた。
 P2が本件各年においてP2x1銀行口座を個人的に使用した形跡は見当たらないこと及びP2x1銀行口座の上記状況から、P2x1銀行口座は、K店に係る事業用の借名口座であり、請求人がこれを管理していたことが推認される。
F P10x3銀行口座
 P10x3銀行口座に係る普通預金取引明細表、請求人x4銀行口座に係る取引履歴明細証明書、請求人の当審判所に対する答述及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(A) P10x3銀行口座は、本件各店舗のホステスの送迎をする際にETCカードを利用した場合の利用代金の引落しのために、請求人の依頼により平成21年3月17日にP10が開設した口座であり、キャッシュカードは請求人が所持し、請求人は、本件jビル事務所の金庫に保管していた本件各店舗の売上げを原資とする現金をP10x3銀行口座へ入金していた。
(B) 請求人は、平成21年4月3日以降平成24年12月25日までの間、P10x3銀行口座へ平成21年中に合計1,000,000円、平成22年中に合計2,700,000円、平成23年中に合計3,800,000円、平成24年中に合計5,500,000円を現金で入金し、また、P10x3銀行口座から平成22年中に合計1,500,000円、平成23年中に合計800,000円、平成24年中に合計4,500,000円を現金で出金し、その出金した現金を本件jビル事務所の金庫に保管していた。
 P10x3銀行口座からは、口座開設日以降平成24年末までの間、ETCカードの利用による代金が引き落とされ、また、請求人は、P10x3銀行口座の預金を請求人x4銀行口座へ送金していた。
(C) P10が上記(B)の期間においてP10x3銀行口座を個人的に使用した形跡は見当たらないこと、そして、P10x3銀行口座の開設、キャッシュカードの保管及び預金の入出金に係る上記(A)及び(B)の状況からすると、P10x3銀行口座は、本件各店舗に係る事業用の借名口座であり、請求人がこれを管理していたことが認められる。

(ホ) 売上げに係る資金の保管又は保有状況及び使途について
A 上記1の(4)のイの(ハ)及び上記(ニ)の状況から、請求人x4銀行口座以外の本件各口座については、本件各店舗の売上げを原資とする現金以外の源泉によるものとみるべき入金は見当たらず、また、請求人x4銀行口座についても、上記(ニ)のDの(D)及び(E)のとおり請求人が本件各店舗の売上げを原資とする資金により行った個人的な投資に係るn証券及びp証券の請求人名義の各口座からの入金のほかに本件各店舗の売上げを原資とする現金以外の源泉によるものとみるべき入金はないこと、上記1の(4)のイの(ハ)のCのとおり現金による経費支払については請求人が請求人の自宅又は本件jビル事務所の金庫に保管していた現金から支払っていたこと、上記(ニ)のBの(D)のとおり請求人は請求人x2銀行各口座からi県民共済生活協同組合の生命共済に係る掛金を引落しの方法で支払うなどしていたことから、請求人は、平成19年1月5日以降平成24年12月31日までの期間、本件各店舗の売上げを原資とする資金を請求人の自宅又は本件jビル事務所の金庫で一旦保管し、当該資金を随時P2x1銀行口座以外の本件各口座に入金した後、その入金した資金について、これを使って個人的な費消及び資産運用を行い、それらの必要に応じて他の口座に預け替え、また、経費の支払を行い、必要に応じて再度出金して上記場所で保管していたものと推認される。
B 原処分関係資料によれば、平成25年11月6日、請求人が、本件調査担当者に対し、本件jビル事務所の金庫に保管されていた別表5記載の40件の金銭借用証書(以下「本件各金銭借用証書」という。)を提示した。
 これらの40件のうち26件の金銭借用証書の名宛人欄には何も記載されていないが、14件の金銭借用証書については、名宛人欄に、「P1(請求人)」と記載されたものが7件、「○○(請求人の姓)」と記載されたものが4件、請求人が使用している屋号「X社」(上記1の(4)のロの(イ)のEのとおり請求人の所得税の確定申告書に屋号として記載されている。)を示す記載がされているものが3件あり、他方、P11等請求人以外の者を名宛人として記載したものはなかった。
 本件各金銭借用証書の上記保管状況及び記載状況から、本件各金銭借用証書に係る金銭消費貸借の貸主はいずれも請求人であったことが推認される。
 そして、請求人の当審判所に対する本件各金銭借用証書に係る金銭消費貸借の借主に関する答述によれば、1別表5の順号16、21から26まで、28、33、35及び38から40までの合計13件の各金銭借用証書に係る金銭消費貸借の借主は本件各店舗の従業員であり、2別表5の順号1から15まで、17から20まで、27、29から32まで、34、36及び37の合計27件の各金銭借用証書に係る金銭消費貸借の借主は請求人の親族や知人であると認められ、そうすると、前者は本件各店舗の事業遂行上の金銭消費貸借であり、後者は本件各店舗の事業とは関係のない金銭消費貸借であるところ、後者の金銭消費貸借についてその返済金が本件各店舗の事業の用に供された形跡は見当たらない。
 また、上記Aのとおり、請求人が本件各店舗の売上げを原資とする資金を個人的な費消及び資産運用にも充てていたことから、本件各金銭借用証書に係る金銭消費貸借の原資も、本件各店舗の売上げを原資とする資金であったことが推認される。

(ヘ) 出資について
 上記1の(4)のイの(イ)のAの(D)のとおり請求人が平成18年7月下旬に営業を開始した当時のK店に係る賃貸借契約上の賃借人であることに、上記(ホ)のAのとおりK店開店以降請求人が本件各店舗の売上げを原資とする資金を管理して個人的な費消及び資産運用に用いていた事後的状況を併せ考慮し、また、請求人以外の者による出資又は利益享受が存在するとみるべき事情は具体的には見当たらないことからすると、平成18年7月下旬に営業を開始した当時のK店に係る出資は請求人によってなされていたことが推認される。

ロ 判断

(イ) 争点について
A 本件各店舗に係る経営上の行為について
(A) 法律行為等の名義人
 法律行為等の名義人に請求人名義以外のものがあるが、次のとおり、これらは、本件各店舗の事業のために、請求人が本件各店舗の店長及び請求人の親族又は同居人の名義を借用したものである。
a 上記1の(4)のイの(イ)のAからCまで及び(ハ)のA並びにロの(イ)のA、Cの(A)及び(ロ)のAのとおり、本件各店舗の事業に係る法律行為等の名義人には、請求人のほか、本件各店舗のその時々の店長名義及び請求人の親族又は同居人の名義が用いられ、他方、請求人が真の経営者であるとするP11の名義は全く見当たらない。
b 店舗の賃貸借契約は、賃貸人と賃借人が継続的な契約関係を形成するものであり、賃借人の支払能力を含む信用や目的物件の具体的使用形態が重視されるのが通常であるから、特段の事情のない限り、当該店舗を実際に使用する者、すなわちそこにおいて行われる事業の経営者が賃借人と一致すると考えられるものであるところ、上記1の(4)のイの(イ)のAの(D)のとおりK店に係る平成18年8月1日付の賃貸借契約は請求人を賃借人としてなされている。
c それ以外の法律行為等の名義人についてみれば、上記1の(4)のイの(イ)のAからCまで並びにロの(イ)のA、Cの(A)及び(ロ)のAのとおり、店舗の賃貸借契約には本件各店舗の店長名義が用いられているが、それらに伴い、請求人が連帯保証人となり賃借人と同等の責任を負う立場にもあり、また、1その他の風俗営業許可上の営業者及びクレジットカード加盟店契約、2本件各年分のK店並びに平成22年分及び平成24年分の新Q店の事業所得に係る所得税の各確定申告書、3平成20年課税期間、平成21年課税期間及び平成22年課税期間のK店の課税資産の譲渡等の対価に係る消費税等の各確定申告書については、いずれも本件各店舗の店長の名義が用いられているが、これらの各店長名義を用いた風俗営業許可上の営業者、クレジットカード加盟店契約及び賃貸借契約は、請求人が各店長の就任時期に合わせてその店長の名義を用いることにしたものである。
 そして、上記2及び3の各確定申告書についても、上記イの(イ)のとおり、各店長は上記各確定申告書がどのように計算して作成されたものか知らず、納税にも関与しない一方で、請求人が、各店舗の風俗営業許可を店長名義で得たことに合わせて各店舗の店長がそれぞれの店舗の経営者であるかのように装って上記各確定申告書を作成して提出し、納税も済ませたものである。
d さらに、請求人が上記1の(4)のイの(ハ)のAのとおり日々における現金残額を随時預け入れていた本件各口座の名義についてみれば、請求人は、上記イの(ニ)のB、C及びDのとおり請求人名義の請求人x2銀行各口座、請求人x3銀行口座及び請求人x4銀行口座を本件各店舗に係る事業用の口座とし、また、上記イの(ニ)のA及びFのとおり請求人がP9○○支店口座及びP10x3銀行口座を本件各店舗に係る事業用の借名口座として用いたものである。
 他方、上記イの(ニ)のEのとおり、P2x1銀行口座も、K店のクレジットカード売上げに係る立替金の指定振込口座として平成18年8月以降平成25年1月までの間、K店のクレジットカード売上げに係る立替金が振り込まれていたK店に係る事業用の借名口座であるが、請求人は、これからは月1回程度、現金を出金して一部を請求人の自宅又は本件jビル事務所の金庫に保管し、また、その資金をP9○○支店口座や請求人○○支店口座へ入金していたものである。
 そうすると、本件各店舗の売上げに係る資金の終局的な流入先の口座の名義人は、請求人、請求人が用いた借名である請求人の親族又は同居人であったとみるべきものである。
(B) 従業員の雇用、監督の状況
 上記1の(4)のイの(イ)のAの(E)、Bの(E)及びCの(C)並びに(ロ)のとおり、請求人が本件各店舗の各店長の就任を決定した上、原則として全てのホステス及び男性従業員の雇用の採否を決定し、各店長を責任者としてホステス及び男性従業員を監督させ、また、ホステスの報酬の支払方法及び男性従業員の給料の額もそれぞれ決定していたものであることから、請求人が本件各店舗の各店長の上位者として本件各店舗の従業員の雇用及び監督を行っていたものとみるべきである。
 また、P11等請求人以外の者が請求人の上記雇用及び監督に関与していたとみるべき事情は見当たらない。
(C) 収支の管理状況
 請求人は、上記イの(ロ)のとおり、日々、本件各店舗に係る現金売上げについて確認し、また、上記1の(4)のイの(ハ)のBのとおり、請求人○○支店口座及びP2x1銀行口座(上記1の(4)のイの(イ)のAの(C)及び(E)並びに上記イの(ニ)のEのとおり、請求人が用いることを決定した借名口座である。)をクレジットカード売上げに係る立替金の指定振込口座としてクレジットカード売上げに係る振込額を確認していた。
 また、売上げに係る資金についても、上記イの(ホ)のAのとおり、請求人が、平成19年1月5日以降平成24年12月31日までの期間、本件各店舗の売上げを原資とする資金を請求人の自宅又は本件jビル事務所の金庫で一旦保管し、当該資金を随時P2x1銀行口座以外の本件各口座に入金した後、その入金した資金を必要に応じて他の口座に預け替え、また、再度出金して上記場所で保管していた。
 他方、支出についても、上記1の(4)のイの(ハ)のCのとおり、請求人が、原則として自ら、また、一部については各店長に支払を任せて経費の支出を決定しており、これらを現金又は振込みの方法で支払っていた。
 こうした状況において、請求人は、上記1の(4)のイの(ハ)のDの(A)から(C)までのとおり、各店長に指示して作成させた日報等に基づいて本件各ファイルを作成して本件各店舗別の各月の利益を把握していたのであるから、請求人が収支を管理していたものというべきである。
 そして、P11等請求人以外の者が請求人の収支の管理に関与していたとみるべき事情は見当たらない。
B 本件各店舗から生じた利益の処分について
 上記イの(ホ)のとおり、請求人が本件各店舗の売上げに係る資金を個人的な費消及び資産運用に充て、知人らに対して金銭の貸付けをしていたことから、請求人が本件各店舗の売上げを原資とする資金から利益を享受していたというべきである。
 他方、請求人以外に利益を享受した者は、具体的には見当たらない。
 以上の状況に、上記Aの(C)のとおり請求人が本件各店舗の売上げに係る現金及び預金を管理していたことを併せてみれば、請求人がこれらの資金を自由に処分することができる立場にあったとみるべきである。
C 本件各店舗に係る出資について
 上記イの(ヘ)のとおり、K店の開店における出資が請求人によってなされたものであること、上記イの(ハ)のとおり、その後の店舗等の開店、移転等の費用の支出について、請求人が本件各店舗の売上げを原資とする資金及びそれを用いた請求人の個人的な資産運用に係る資金を基に支払っていること、他に出資をした者は具体的には見当たらないことから、出資に係る資金の負担者は請求人であったとみるべきである。
D 請求人の申述及び答述等について
(A) 請求人の本件調査担当者及び異議審理庁に対する各申述並びに当審判所に対する答述のうち、本件各年における本件各店舗の経営者の特定に関する部分以外の経営状況に関する部分については、上記1の(4)の各事実及び上記イにおいて認定した各事実並びに客観的事実及び証拠との間に矛盾がなく、また、本件調査の開始当初からその申述及び答述趣旨は一貫しており、信用することができる。
(B) 他方、請求人の本件調査担当者及び異議審理庁に対する各申述並びに当審判所に対する答述のうち、本件各年における本件各店舗の経営者の特定に関する部分については、請求人は、本件調査当初の自己が本件各年における本件各店舗の経営者である旨の自認を、本件調査中の平成25年12月4日以降翻して、別の者が、更にP11が経営者である旨述べた上、P11が本件各年における本件各店舗の経営者であることを証する資料として、平成26年1月15日に、異議審理庁に対し、同月6日付の営業権利譲渡契約書の写し(以下「本件営業譲渡契約書」という。)を、同年7月2日に、当審判所に対し、同年1月6日付の領収証の写し(以下「本件領収証」という。)をそれぞれ提出した。
 また、請求人から本件各店舗の経営者であると名指しされたP11も、異議審理庁に対する申述及び当審判所に対する答述において、自己が本件各年における本件各店舗の経営者である旨述べた上、そのことを証する資料として、平成26年2月12日、異議審理庁に対し、平成18年8月28日付の念書の写し(以下「本件念書」という。)及び本件営業譲渡契約書を提出した。
 以下、本件営業譲渡契約書、本件領収証及び本件念書を併せて「本件各書類」という。
 しかしながら、請求人が経営者である旨の自認を翻した請求人の申述及び答述並びに本件各書類については、次に述べるとおり信用性がなく、上記AからCまでの状況から請求人が本件各年における本件各店舗の経営者であることを推認することを妨げるものではない。
a P11の経営への関与等の状況について
 上記Aで認定した本件各年における本件各店舗に係る経営上の行為に関する状況(法律行為等の名義人に係る状況、従業員の雇用、監督の状況、収支の管理状況)には、本件各年における本件各店舗の経営者がP11であったことを示すものは見当たらず、また、上記Bのとおり、請求人が、本件各年において本件各店舗から生じる利益をもって個人的な費消に充て、個人としての資産運用を図り、知人らに対して金銭の貸付けをしていたことからすると、本件各店舗の経営者がP11であったとみることは不自然、不合理である。
b 請求人の申述及び答述の変遷について
(a) 請求人は、本件調査の開始当初は、本件調査担当者に対し、本件各店舗は請求人の指揮、命令、監督の下で営業を行っていた旨、本件各店舗の日々の営業の終了後、日報等及び当日の現金残額が請求人の下に集められ、請求人が現金を保管し、日報等を基に本件各ファイルを作成していた旨、本件各店舗の店長が飽くまで各店舗の経営者であるかのように装って風俗営業許可を取得して、申告も請求人の判断により店長名義で行っていた旨、本件各店舗から生じる利益で株式への投資や個人的な貸付けを行っている旨申述するとともに、自己が本件各年における本件各店舗の経営者である旨申述していたところ、平成25年11月13日、本件調査担当者が、請求人及び請求人の関与税理士であるP14税理士に対し、所得税に係る調査の対象年分は平成18年分以降である旨を改めて説明すると、P14税理士は、本件調査担当者に対し、「税務署側である程度の数字を出してもらってから話をしていきたい。」旨申述した。
 そして、平成25年12月4日、本件調査担当者が、請求人に対し、その時点で推計の方法により算定した本件各年分のおおよその事業所得の金額の合計額は約XXX,XXX,XXX円となり、これにより納付すべきこととなる所得税の合計額はXX,XXX,XXX円からXX,XXX,XXX円程度の金額になる旨を示したところ、請求人は、「平成21年2月までは、K店及び旧Q店の経営者は、請求人とは別の者であったことを忘れていた。その者が当該各店舗を手放したので、それ以降、当該各店舗が請求人の店舗となった。裏付け資料はない。」という趣旨の申述をした。
 さらに、異議申立て及び本件審査請求において、請求人は、「上記の別の者とはP11という者であり、本件各年における本件各店舗の実質経営者はP11であった。」旨、更に申述及び答述を変遷させた。
(b) 上記の申述及び答述の変遷の理由について、請求人は、当審判所に対し、「当初はオーナーの名前を出せず税金を被るつもりでいたが、調査担当者から聞いた大まかな追徴税額がばくだいなものだと思っていたところ、平成21年2月頃にP11と請求人との間で収益の授受の方法が変更されたことを思い出し、平成18年から平成21年2月までの間だけでも別の者が経営者であったことを認めてもらえば、追徴税額は半分位で済むだろうと考え、思いつきで言った。」旨答述し、また、「税務署からの更正決定処分により約XX,XXX,XXX円を納付すべきこととなったため、P11に対して助けを求めたところ、P11が『私の名前を出しなさい。それと、店はもういらない。』と言ったので、P11が実質経営者であると言えるようになった。」旨答述する。
 しかしながら、これらは要するに、前者に関しては本件調査担当者が示した所得税の納付税額がXX,XXX,XXX円を超える見込みであり、後者に関しては原処分による所得税及び消費税等の納付税額が約XX,XXX,XXX円であるという、いずれも高額な税の負担を提示されたので翻意したというにすぎず、上記の申述及び答述の変遷について、合理的な理由があるとはいえない。
c 本件各書類並びにP11の申述及び答述について
(a) 請求人は、平成25年12月4日、本件調査担当者に対し、本件各店舗の経営者についての説明を、平成21年2月まではK店及び旧Q店の経営者が請求人とは別の者で、その者が当該各店舗を手放したので、それ以降、当該各店舗が請求人の店舗となった旨、また、裏付け資料はない旨申し述べたが、異議審理庁に対しては、上記別の者とはP11であるとした上で、平成26年1月15日、本件各年における本件各店舗の経営者がP11であることを証する資料として、本件営業譲渡契約書を提出した。
 本件営業譲渡契約書には、請求人及びP11の署名及び押印があり、平成26年1月1日をもって当該各店舗の営業の権利をP11が請求人に譲渡する旨記載されているが、譲渡価額については記載されていなかった。
(b) 請求人から本件各店舗の経営者と名指しされたP11は、平成26年2月5日、異議審理庁に対し、同年1月までは自己が本件各店舗のオーナーであった旨申述したが、金をどこで受け取っていたのかという質問に対して「言えん。」と申述するなど経営に関する具体的な説明はなく、店舗の権利を請求人に譲渡した際の金銭の授受についても「ない。」と申述し、否定していた。
 また、P11は、平成26年2月12日、異議審理庁に対し、「J」店について、請求人の署名及び押印があり、P11の許可なしに営業の権利を譲渡することを禁止すること及び請求人は責任者として現金を管理し毎月10日までに現金出納帳を作成して利益を全てオーナーであるP11に支払うことを請求人がP11に約束する旨記載された本件念書及び本件営業譲渡契約書を提示したが、P11は、本件営業譲渡契約書の作成時期及び作成場所に関する質問に対して「どこでもええが。」と申述し、平成25年12月分の利益の受取状況に関する質問の途中で、「そんなのはええが。」と申述し、本件念書について説明をしないまま退室し、この際も経営に関する具体的な説明はなかった。
(c) 請求人は、平成26年7月2日、当審判所に対し、本件営業譲渡契約書におけるK店及び新Q店の営業の権利の譲渡価額を証する資料として、宛名を請求人、金額を10,000,000円、ただし書に「営業権利売」と記載された本件領収証を提出した。
(d) P11は、当審判所に対し、「(最初の店舗の開業資金はいくらかという質問に対して)請求人の言うとおりにして。」、「(各店舗の営業上の指示を請求人にしていたかという質問に対して)ない。請求人がどう言っているか分からないが。」、「(店舗の収支報告に関する質問に対して)本人から月1回電話で報告を受けていた。5年くらい前からだったと思うが分からん。それまでは書類を持ってきていたが、どこで会ったか場所は忘れた。請求人がどう言っているか分からんけど。」、「(各店舗の利益の受領方法に関する質問に対して)開業した当時から月に200,000円もらっていた。多くもらったこともあったかもしれないが、自分からもっとよこせということはなく、請求人が持ってきた分だけである。請求人がどう言っているか分からんけど。受け取った場所は駅の周辺で、代理人から受け取っていた。」などと答述した。
(e) 上記(a)から(c)までの請求人及びP11からの本件各書類の一連の提出経緯及び状況は、真実P11が本件各年における本件各店舗の経営者であり請求人に対してK店及び新Q店を譲渡したとみるには不自然である。
 すなわち、本件営業譲渡契約書の記載内容自体、譲渡価額の記載がないという不自然な点を有することに加え、これに係るK店及び新Q店の譲渡に関して請求人が本件領収証を提出したものの、P11はこれらの譲渡に際しての金銭の授受を否定しており、請求人の説明及び本件領収証の記載は、譲渡の当事者で本件領収証を発行した者であるはずのP11の説明と本質的な点で矛盾している。
 このように、本件営業譲渡契約書及び本件領収証の提出経緯並びに本件営業譲渡契約書の記載内容及びそれと本件領収証との相互関係が不自然であり、また、これらの作成ないし譲渡の両当事者である請求人とP11の説明が矛盾していることからは、本件営業譲渡契約書及び本件領収証が真実の法律関係に即して作成されたものであるとみることはできず、信用することはできない。
 また、このように、本件営業譲渡契約書及び本件領収証は信用することができないものであることに加えて、P11が、上記(b)のとおり経営状況及びこれらの書類のいずれについても作成経緯等に関し具体的な説明をしてもおらず、退室により回答を回避する態度もみられること、上記(d)のとおり請求人の説明内容を慮る態度がみられることからは、本件念書が請求人とP11の関係の実態に即して作成されたものと認める根拠がなく、信用することはできない。
 さらに、自己が経営者である旨のP11の上記申述及び答述も、具体的な内容を伴うものではなく、信用できるものではない。
(C) 以上のとおり、請求人の申述及び答述のうち、別の者又はP11が経営者である旨述べる部分並びに本件各書類は信用できない。
 また、請求人が別の者又はP11が経営者であるとの前提で上記1の(4)の各事実及び上記イにおいて認定した各事実並びに上記AからCまでと矛盾する申述及び答述をする部分も信用することができない。
E 結論
 上記AからCまでのとおり、請求人が本件各年における本件各店舗の法律行為等について自らの名義又は自ら決定した借名を用いて行い、従業員を雇用、監督し、収支を管理し、本件各店舗から生じた利益を享受していたこと、また、本件各店舗に係る開店及び移転の各費用並びに出資に係る資金の負担者が請求人であったことから、本件各年における本件各店舗の経営者は請求人であったと認められる。
 したがって、本件各店舗の事業に係る所得(事業所得)の帰属先は請求人であると認められる。

(ロ) 請求人の主張について
 上記2の(1)の「請求人」欄のとおり、請求人は、本件各年における本件各店舗の経営者はP11であるから、本件各店舗の事業に係る所得の帰属先は請求人ではない旨主張する。
 しかしながら、上記(イ)のEのとおり、本件各年における本件各店舗の経営上の行為の状況、利益の享受状況及び出資の状況から、本件各店舗の経営者は請求人であったと認められるから、本件各店舗の事業所得の帰属先は請求人であると認められ、実質経営者はP11である旨の請求人の申述及び答述、本件各書類並びにP11の申述及び答述が信用することができないことは、上記(イ)のDの(C)のとおりである。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。

(2) 争点2(平成18年分及び平成19年分の所得税に係る請求人の行為は、通則法第70条第4項に規定する偽りその他不正の行為に該当するか否か。)

イ 法令解釈

通則法第70条第4項は、納税者が「偽りその他不正の行為」により国税を免れた場合の更正決定等の除斥期間を7年と規定し、それ以外の場合よりも長い除斥期間を規定している。
 これは、納税者が「偽りその他不正の行為」によって国税の全部又は一部を免れた場合、納税者間の公平を確保する必要があることなどを考慮し、適正な課税を行うことができるように、通常の場合よりも長期間その国税の賦課を可能として、適正、公平な課税の実現を図ることとしたものである。
 このような通則法第70条第4項の趣旨からすれば、同項が規定する「偽りその他不正の行為」とは、税の賦課徴収を不能又は困難にするような何らかの偽計その他の工作を行うことをいうものと解することが相当である。

ロ 判断

(イ) 争点について
A 上記(1)のロの(イ)のEのとおり、平成18年分及び平成19年分のK店及び旧Q店に係る事業所得は請求人に帰属するところ、請求人が、既に締結されていた他人名義のクレジットカード加盟店契約を利用し又は新たに借名でクレジットカード加盟店契約を締結してこれを利用した上、クレジットカード売上げに係る立替金の入金も借名口座に受け、また、借名で店舗に係る賃貸借契約を締結し自らは借主の連帯保証人の形式をとってこれを利用し、さらに、本件各店舗に係る事業所得について他人名義の確定申告書を提出したことは、請求人の売上げ、売上げに係る資金又は事業所得が他人に帰属するかのような外形を作出するものであって、税の賦課徴収を困難にするような偽計その他の工作となるものであり、当該各年分につき次の事実がある。
(A) 平成18年分
 K店について、請求人は、上記1の(4)のイの(イ)のAの(C)及び(E)のとおり、平成18年5月頃にL社と締結されていたP2名義のクレジットカード加盟店契約を同年7月下旬の営業開始以降利用し、また、新たに同年11月頃にP2名義でM社とクレジットカード加盟店契約を締結してこれも利用した上、これらのクレジットカード売上げに係る立替金の入金を借名口座であるP2x1銀行口座に受け、さらに、上記1の(4)のロの(イ)のAの(A)のとおり、事業所得についてP2名義の確定申告書を提出した。
(B) 平成19年分
 K店について、請求人は、上記(A)のとおり平成18年5月頃及び同年11月頃に締結されたP2名義の各クレジットカード加盟店契約を利用した上、これらのクレジットカード売上げに係る立替金の入金を借名口座であるP2x1銀行口座に受け、さらに、上記1の(4)のロの(イ)のAの(A)のとおり、事業所得についてP2名義で確定申告書を提出した。
 また、旧Q店について、請求人は、上記1の(4)のイの(イ)のBの(D)及び(E)のとおり、平成19年9月19日付でP6名義の賃貸借契約を締結し自らは借主の連帯保証人の形式をとってこれを利用した。
B 平成18年分及び平成19年分の所得税に係る上記Aの(A)及び(B)の請求人の行為は、税の賦課徴収を困難にするような偽計その他の工作であり、通則法第70条第4項に規定する偽りその他不正の行為に該当する。

(ロ) 請求人の主張について
 上記2の(2)の「請求人」欄のとおり、請求人は、P11に雇われて本件各店舗の経営を任されていただけであり、K店及び旧Q店の事業に係る所得の帰属先は請求人ではないから、請求人の行為が、通則法第70条第4項に規定する偽りその他不正の行為に該当することはない旨主張する。
 しかしながら、上記(1)のロの(イ)のEのとおり、本件各店舗の事業所得の帰属先は請求人であるから、請求人の主張は前提となる事実関係を誤っている。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。

(3) 争点3(本件各年分の所得税及び本件各課税期間の消費税等に係る請求人の行為は、通則法第68条第1項又は同条第2項に規定する事実の隠ぺい又は仮装に該当するか否か。)

イ 法令解釈

通則法第68条第1項及び同条第2項に規定する「事実を隠ぺいする」とは、課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実について、これを隠ぺいしあるいは故意に脱漏することをいい、また、「事実を仮装する」とは、所得、財産あるいは取引上の名義等に関し、あたかも、それが真実であるかのように装うなど、故意に事実をわい曲することをいうと解するのが相当である。

ロ 認定事実

本件各ファイル、請求人が本件調査において本件調査担当者に提示した日報(上記1の(4)のハの(ロ))、P2x1銀行口座に係る普通預金異動明細表、請求人x2銀行各口座に係る各普通預金取引明細表及び請求人の当審判所に対する答述によれば、本件各年における本件各店舗の売上げは、現金売上げ及びクレジットカード売上げのみであったと認められ、これらはホステスの接客を伴うサービスの提供の対価であり、消費税法第2条《定義》第1項第8号に規定する「資産の譲渡等」に該当し、同法第6条《非課税》に規定する消費税を課さないものとされる資産の譲渡等には該当しないから、本件各店舗の売上げは、全て同法第28条《課税標準》第1項に規定する「課税資産の譲渡等の対価」に該当する。
 そして、上記(1)のロの(イ)のEのとおり、本件各年分の本件各店舗に係る事業所得の帰属先は請求人であるから、本件各店舗に係る課税資産の譲渡等の対価も全て請求人に帰属するところ、上記1の(4)のイの(ハ)のDの(D)及び(E)のとおり、請求人は、平成19年頃からは本件各店舗の日報の客数を調整して売上金額を入力した本件源泉徴収表ファイル及びこれを基に経費の額を調整して本件各店舗別試算ファイルを作成し、請求人は、これらの本件各店舗別試算ファイル等に基づいて、上記1の(4)のロの(イ)のAの(A)のa及びbのとおり、平成18年1月1日から同年12月31日まで及び平成19年1月1日から同年12月31日までの各課税期間に対応する平成18年分及び平成19年分のK店に係る事業所得の総収入金額をそれぞれ○○○○円、○○○○円と記載したP2名義の各確定申告書を提出し、また、上記1の(4)のロの(ロ)のAのとおり、平成20年課税期間から平成22年課税期間までのK店に係る課税売上高をそれぞれ○○○○円、○○○○円、○○○○円とするP2名義の各確定申告書を提出していること及び上記各調整は、客数を圧縮して売上金額を過少にするものであったことから、本件各課税期間に係る各基準期間の課税売上高は、いずれも10,000,000円を超えていることは明白である。
 したがって、請求人は、本件各課税期間において、消費税法第5条《納税義務者》第1項に規定する消費税の納税義務者に該当する。

ハ 判断

(イ) 争点について
A 上記(1)のロの(イ)のEのとおり、本件各年分の本件各店舗に係る事業所得は請求人に帰属し、また、上記ロのとおり、本件各課税期間の本件各店舗に係る課税資産の譲渡等の対価は請求人に帰属する上、請求人は本件各課税期間において消費税の納税義務者に該当するところ、請求人が、既に得ていた他人名義の風俗営業許可を利用し又は新たに借名で申請して風俗営業許可を得てこれを利用し、既に締結されていたクレジットカード加盟店契約を利用し又は新たに借名でクレジットカード加盟店契約を締結してこれを利用した上、クレジットカード売上げに係る立替金の入金も借名口座に受け、また、既に借名で締結し自らが借主の連帯保証人となる形式にあった賃貸借契約を利用し又は新たに借名で各店舗に係る賃貸借契約を締結し自らは借主の連帯保証人の形式をとってこれを利用し、さらに、本件各店舗に係る事業所得及び消費税等について他人名義の各確定申告書を提出したことは、請求人の売上げ、売上げに係る資金又は事業所得若しくは課税資産の譲渡等の対価が他人に帰属するかのような外形を作出するものであって、隠ぺいであるとともに、本件各店舗に係る事業所得及び課税資産の譲渡等の対価が他人に帰属するかのように装うものであり、本件各年分及び本件各課税期間につき次の事実がある。
(A) 平成18年分
 K店について、請求人は、上記1の(4)のイの(イ)のAの(C)及び(E)のとおり、平成18年5月頃にL社と締結されていたP2名義のクレジットカード加盟店契約を同年7月下旬の営業開始以降利用し、また、新たに同年11月頃にP2名義でM社とクレジットカード加盟店契約を締結してこれも利用した上、これらのクレジットカード売上げに係る立替金の入金を借名口座であるP2x1銀行口座に受け、さらに、上記1の(4)のロの(イ)のAの(A)のとおり、事業所得についてP2名義で確定申告書を提出した。
(B) 平成19年分
 K店について、請求人は、上記(A)のとおり平成18年5月頃及び同年11月頃に締結されたP2名義の各クレジットカード加盟店契約を利用した上、これらのクレジットカード売上げに係る立替金の入金を借名口座であるP2x1銀行口座に受け、さらに、上記1の(4)のロの(イ)のAの(A)のとおり、事業所得についてP2名義の確定申告書を提出した。
 また、旧Q店について、請求人は、上記1の(4)のイの(イ)のBの(D)及び(E)のとおり、平成19年9月19日付でP6名義の賃貸借契約を締結し自らは借主の連帯保証人の形式をとってこれを利用した。
(C) 平成20年分及び平成20年課税期間
 K店について、請求人は、上記(A)のとおり平成18年5月頃及び同年11月頃に締結されたP2名義の各クレジットカード加盟店契約を利用した上、これらのクレジットカード売上げに係る立替金の入金を借名口座であるP2x1銀行口座に受け、さらに、上記1の(4)のロの(イ)のAの(A)及び(ロ)のAのとおり、事業所得及び消費税等についていずれもP2名義で各確定申告書を提出した。
 また、旧Q店について、請求人は、上記(B)のとおり平成19年9月19日付で締結したP6名義の賃貸借契約及び自己が借主の連帯保証人となっていることを利用した。
 さらに、R店について、請求人は、上記1の(4)のイの(イ)のCの(B)及び(C)のとおり、平成20年2月頃及び同年12月頃にいずれもP7名義で賃貸借契約を締結し自らはそれぞれ借主の連帯保証人の形式をとってこれを利用した。
(D) 平成21年分及び平成21年課税期間
 K店について、請求人は、上記1の(4)のイの(イ)のAの(B)及び(E)のとおり、平成21年10月○日付でP3名義の風俗営業許可を得てこれを利用し、上記(A)のとおり平成18年5月頃及び同年11月頃に締結されたP2名義の各クレジットカード加盟店契約を利用した上、これらのクレジットカード売上げに係る立替金の入金を借名口座であるP2x1銀行口座に受け、さらに、上記1の(4)のロの(イ)のAの(A)及び(ロ)のAのとおり、事業所得及び消費税等についていずれもP2名義で各確定申告書を提出した。
 また、旧Q店について、請求人は、上記(B)のとおり平成19年9月19日付で締結したP6名義の賃貸借契約及び自己が借主の連帯保証人となっていることを利用した。
 さらに、新Q店について、請求人は、上記1の(4)のイの(イ)のBの(D)及び(E)のとおり、平成21年11月24日付でP8名義の賃貸借契約を締結し自らは借主の連帯保証人の形式をとってこれを利用した。
 そして、R店について、請求人は、上記(C)のとおり平成20年12月頃に締結したP7名義の賃貸借契約及び自己が借主の連帯保証人となっていることを利用した。
(E) 平成22年分及び平成22年課税期間
 K店について、請求人は、上記(D)のとおり平成21年10月○日付で得たP3名義の風俗営業許可を利用し、また、上記1の(4)のイの(イ)のAの(B)及び(E)のとおり、平成22年3月○日付及び同年11月○日付でP2、P4の各名義の風俗営業許可をそれぞれ得てこれも利用し、上記(A)のとおり平成18年5月頃及び同年11月頃に締結されたP2名義の各クレジットカード加盟店契約を利用した上、これらのクレジットカード売上げに係る立替金の入金を借名口座であるP2x1銀行口座に受け、上記1の(4)のイの(イ)のAの(D)及び(E)のとおり、平成22年1月8日付及び同年9月18日付でP2、P4の各名義の賃貸借契約をそれぞれ締結し自らはそれぞれ借主の連帯保証人の形式をとってこれを利用し、さらに、上記1の(4)のロの(イ)のAの(A)及び(ロ)のAのとおり、事業所得及び消費税等についていずれもP2名義で各確定申告書を提出した。
 また、新Q店について、請求人は、上記1の(4)のイの(イ)のBの(B)及び(E)のとおり、平成22年1月○日付及び同年10月○日付でP8、P3の各名義の風俗営業許可をそれぞれ得てこれを利用し、上記(D)のとおり平成21年11月24日付で締結したP8名義の賃貸借契約及び自己が借主の連帯保証人となっていることを利用し、また、上記1の(4)のイの(イ)のBの(D)及び(E)のとおり、平成22年9月21日付でP3名義の賃貸借契約を締結し自らは借主の連帯保証人の形式をとってこれも利用し、さらに、上記1の(4)のロの(イ)のCの(A)のとおり、事業所得についてP8名義で確定申告書を提出した。
(F) 平成23年分及び平成23年課税期間
 K店について、請求人は、上記(E)のとおり平成22年11月○日付で得たP4名義の風俗営業許可を利用し、上記(A)のとおり平成18年5月頃及び同年11月頃に締結されたP2名義の各クレジットカード加盟店契約を利用した上、これらのクレジットカード売上げに係る立替金の入金を借名口座であるP2x1銀行口座に受け、上記(E)のとおり平成22年9月18日付で締結したP4名義の賃貸借契約及び自己が借主の連帯保証人となっていることを利用し、さらに、上記1の(4)のロの(イ)のAの(B)のとおり、事業所得についてP4名義で確定申告書を提出した。
 また、新Q店について、請求人は、上記(E)のとおり平成22年10月○日付で得たP3名義の風俗営業許可を利用し、上記1の(4)のイの(イ)のBの(C)及び(E)のとおり、平成23年4月頃にP3名義でS社とクレジットカード加盟店契約を締結してこれを利用し、上記(E)のとおり平成22年9月21日付で締結したP3名義の賃貸借契約及び自己が借主の連帯保証人となっていることを利用した。
(G) 平成24年分及び平成24年課税期間
 K店について、請求人は、上記(E)のとおり平成22年11月○日付で得たP4名義の風俗営業許可を利用し、上記(A)のとおり平成18年5月頃及び同年11月頃に締結されたP2名義の各クレジットカード加盟店契約を利用した上、これらのクレジットカード売上げに係る立替金の入金を借名口座であるP2x1銀行口座に受け、上記(E)のとおり平成22年9月18日付で締結したP4名義の賃貸借契約及び自己が借主の連帯保証人となっていることを利用し、さらに、上記1の(4)のロの(イ)のAの(B)のとおり、事業所得についてP4名義の確定申告書を提出した。
 また、新Q店について、請求人は、上記(E)のとおり平成22年10月○日付で得たP3名義の風俗営業許可を利用し、上記(F)のとおり平成23年4月頃に締結したP3名義のクレジットカード加盟店契約を利用し、また、上記1の(4)のイの(イ)のBの(C)及び(E)のとおり、平成24年4月頃、同年7月頃及び同年8月頃にいずれもP3名義でT社、U社及びM社とクレジットカード加盟店契約をそれぞれ締結してこれらも利用し、上記(E)のとおり平成22年9月21日付で締結したP3名義の賃貸借契約及び自己が借主の連帯保証人となっていることを利用し、さらに、上記1の(4)のロの(イ)のCの(A)のとおり、事業所得についてP3名義の確定申告書を提出した。
B 本件各年分の所得税及び本件各課税期間の消費税等に係る上記Aの(A)から(G)までの請求人の行為は、本件各店舗に係る事業所得及び課税資産の譲渡等の対価の帰属名義を仮装したといえるから、通則法第68条第1項又は同条第2項に規定する事実の隠ぺい又は仮装に該当する。

(ロ) 請求人の主張について
 上記2の(3)の「請求人」欄のとおり、請求人は、P11に雇われて本件各店舗の経営を任されていただけであり、本件各店舗の事業に係る所得及び課税資産の譲渡等の対価の帰属先は請求人ではないから、本件各年分の所得税及び本件各課税期間の消費税等に係る請求人の行為が、通則法第68条第1項又は同条第2項に規定する事実の隠ぺい又は仮装に該当することはない旨主張する。
 しかしながら、上記(1)のロの(イ)のE及び上記ロのとおり、本件各店舗の事業所得及び課税資産の譲渡等の対価の帰属先は請求人であるから、請求人の主張は前提となる事実関係を誤っている。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。

(4) 争点4(請求人は、本件各給与について、所得税法第183条第1項及び復興財源確保法第28条第1項に規定する源泉徴収義務があるか否か。)

イ 争点について

本件給料支払明細書によれば、K店の店長P4及び新Q店の店長P3は、平成22年12月から平成25年6月までの間、別表6のとおり本件各給与の支払を受けたことが認められる。
 所得税法第183条第1項及び復興財源確保法第28条第1項は、給与等の支払者が源泉徴収義務を負う旨規定しているところ、請求人は、上記(1)のロの(イ)のEのとおり本件各年における本件各店舗の経営者であり、雇用者として本件各店舗の従業員に対して給与の支払義務を負っていたことから、本件各給与の支払者は請求人であるというべきである。
 したがって、請求人は、本件各給与について、所得税法第183条第1項及び復興財源確保法第28条第1項に規定する源泉徴収義務がある。

ロ 請求人の主張について

上記2の(4)の「請求人」欄のとおり、請求人は、P11に雇われて本件各店舗の経営を任されていただけであり、本件各店舗の経営者は請求人ではなく、請求人は本件各給与の支払者ではないから、請求人は本件各給与について所得税法第183条第1項及び復興財源確保法第28条第1項に規定する源泉徴収義務はない旨主張する。
 しかしながら、上記(1)のロの(イ)のEのとおり、本件各店舗の経営者は請求人であるから、請求人の主張は前提となる事実関係を誤っている。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。

(5) 本件所得税各更正決定処分

イ 事業所得の金額の算定方法

(イ) 本件月間試算ファイルに基づく事業所得の金額の算定
 上記1の(4)のイの(ハ)のDの(A)から(C)までのとおり請求人が作成していた本件月間試算ファイル(本件各店舗の日報等の原始記録に基づく本件月間売上げ等ファイル、請求書や領収証等の原始記録に基づく本件月間支払ファイルの両ファイルに基づき、入力漏れの経費等を加えたもの)につき、当審判所が、項目及び金額について検討した結果、請求人が提示した日報に対応する期間の売上げに係るデータ(本件月間売上げ等ファイルに売上金額として保存されているデータも同一金額である。)は日報に記載された金額と一致し、また、実際の支払金額を確認することが可能な家賃、水道料金等の経費の支払に係るデータ(おしぼりの仕入金額についてはデータ上の金額と実際の支払金額が相違している。)は、実際の支払金額と一致している。
 したがって、本件月間試算ファイルに売上金額及び経費等の支払として記録され保存されているデータは、おしぼりの仕入金額を除いて信用することができ、おしぼりの仕入金額も後記ロの(ハ)のBのとおり実額が確認できるから、本件月間試算ファイルが保存されている年又は月については、その年又は月の本件各店舗の事業所得の金額を実額で算定することができる。

(ロ) 推計の方法による事業所得の金額の算定
A 別表4のとおり、本件月間試算ファイルには本件各年の全てのデータが保存されていないから、本件月間試算ファイルに収入金額及び必要経費に係るデータが保存されていない年、月等に係る事業所得の金額は、推計の方法により算定することが相当と認められる。
 この場合、請求人の営むような風俗店の経営に係る事業においては、同程度のおしぼりの仕入本数に対し同程度の収入を得、同程度の収入に対し同程度の所得を得ることが通例であるから、おしぼりの仕入本数を基礎として事業所得の金額を推計することは、基準となる期間(実額による計算が可能な期間)と推計する期間(実額による計算が不可能な期間)においておしぼりの仕入本数に変更を来たすような特別の事情がない限り、相当であると認められ、当審判所の調査の結果、本件各年において、本件各店舗のおしぼりの仕入本数に変更を来たすような特別の事情は存しない。
B そこで、本件月間試算ファイルにおいてデータが欠落している場合の事業所得の金額の推計方法を検討すると、次の方法によるのが相当である。
(A) 本件月間試算ファイルにおいて、その年のデータの欠落が部分的である場合(一部の月又は店舗のデータが欠落している場合)は、データの欠落がない月又は店舗について実額により計算したおしぼり1本当たりの収入金額を算出し、当該収入金額にデータが欠落している月又は店舗のおしぼりの仕入本数を乗じてデータが欠落している月又は店舗の収入金額を算定した上で、当該収入金額にデータの欠落がない月又は店舗について算出した所得率(収入金額に対する所得金額の割合をいう。以下同じ。)を乗じる方法で、データが欠落している月又は店舗の所得金額を算定する。
 この場合において、本件月間試算ファイルの収入金額のデータは欠落しているが、本件月間売上げ等ファイルの収入金額のデータが存する場合には、当該収入金額に所得率を乗じる方法で、データが欠落している月又は店舗の所得金額を算定する。
(B) 本件月間試算ファイルにおいて、その年のデータが全て欠落している場合には、実額による計算が全く不可能であるから、収入金額の算定上及び所得率の適用上の基準となる期間を設定し、その基準となる期間のおしぼり1本当たりの収入金額を算出し、当該収入金額にデータが全て欠落している年のおしぼりの仕入本数を乗じてデータが全て欠落している年の収入金額を算定した上で、当該収入金額に基準となる期間の所得率を乗じる方法で、データが全て欠落している年の所得金額を算定する。

ロ 本件各年分の事業所得の金額

(イ) 本件月間試算ファイル及び本件月間売上げ等ファイルにおけるデータの欠落の状況
 上記1の(4)のイの(イ)のAの(A)、Bの(A)及びCの(A)のとおり、本件各年のうち、K店の営業期間は平成18年7月下旬から平成24年12月まで、旧Q店の営業期間は平成19年12月頃から平成21年11月頃まで、新Q店の営業期間は同月頃から平成24年12月まで、R店の営業期間は平成20年4月頃から平成21年11月頃までであったところ、本件各店舗の上記各営業期間と別表4記載の本件月間試算ファイル及び本件月間売上げ等ファイルにおける本件各店舗ごとの収支計算の期間とを対比して、本件各年におけるデータの欠落の状況を検討した結果、1平成18年及び平成19年については、K店及び旧Q店の収入金額及び必要経費に係るデータが全て欠落していること、2平成20年については、K店、旧Q店及びR店の10月の収入金額及び必要経費に係るデータがいずれも欠落していること、3平成21年については、K店、旧Q店及びR店の9月の必要経費に係るデータ、R店の11月の収入金額及び必要経費に係るデータがいずれも欠落していること、4平成22年については、K店の1月の必要経費に係るデータ、K店及び新Q店の4月の収入金額及び必要経費に係るデータがいずれも欠落していること、5平成24年については、K店及び新Q店の4月から12月までの期間の必要経費に係るデータが欠落していることが認められる。

(ロ) 実額による計算が可能な期間の収入金額
 上記(イ)の状況から、本件各年分において実額による計算が可能な期間は、平成20年分におけるK店、旧Q店及びR店の10月を除く期間(R店については4月以降の期間)、平成21年分におけるK店及び旧Q店の9月を除く期間(旧Q店については11月までの期間)並びに11月まで営業していたR店の9月及び11月を除く期間、平成22年分におけるK店の1月並びにK店及び新Q店の4月を除く期間、平成23年分におけるK店及び新Q店の1月から12月までの全ての期間、平成24年分におけるK店及び新Q店の1月から3月までの期間となる。
 そして、本件月間試算ファイルに基づいて、実額による計算が可能な上記各期間に対応する平成20年分から平成24年分までの各年分の収入金額の合計額を算定すると、別表7の1欄のとおり、平成20年分が○○○○円、平成21年分が○○○○円、平成22年分が○○○○円、平成23年分が○○○○円、平成24年分が○○○○円となる。

(ハ) 実額による計算が可能な期間の必要経費
A 原処分関係資料によれば、本件月間試算ファイルにおける各支出項目のうちには、本件調査において請求人が私的な使用を認めた支出や敷金等の明らかに経費性が認められない支出が含まれているが、このような支出を必要経費と認めることはできない。
B 原処分関係資料によれば、原処分庁は、本件月間試算ファイル及び本件月間支払ファイルに「おしぼり」又は「おしぼり代」として入力された各データを抽出して、平成20年から平成24年までの各年のおしぼりの仕入金額を別表8-1及び別表8-2の「原処分庁主張額」欄の各金額と認定しているが、本件各店舗におしぼりを納入していたr社が原処分庁に提出した「おしぼり取引数量一覧表」と題する書面(本件各年における本件各店舗ごとのおしぼりの取引金額及び取引数量が月別に記載されたもの。以下「おしぼり取引数量等一覧表」という。)によれば(おしぼり取引数量等一覧表は、本件において請求人の税額負担に利害関係がないr社が備付けの請求一覧表及び請求書の控えに基づいて作成したものであるから、信用性が認められる。)、当該各年において、実額による計算が可能な上記(ロ)の各期間に対応する各月のおしぼりの仕入金額は、別表8-1及び別表8-2の「審判所認定額」欄の各金額であったと認められるから、必要経費に算入すべき金額は当該各金額となる。
 また、原処分関係資料よれば、r社は、請求人との取引の締め日を毎月25日としていたこと、そして、これに基づいておしぼり取引数量等一覧表を作成していたことが認められるので、当審判所において、r社の請求書控えに基づいて締め日以降の月末及び月初のおしぼりの取引数量を調整して、本件各年における各月のおしぼりの仕入本数を算定すると、別表9-1及び別表9-2の本件各年の「合計」欄の「合計」欄のとおり、平成18年が15,520本、平成19年が38,950本、平成20年が36,850本、平成21年が22,550本、平成22年が19,450本、平成23年が16,050本、平成24年が18,450本となる。
C 本件月間試算ファイル及び請求人の本件調査担当者に対する申述によれば、請求人は、本件各年において、別表10-1から別表10-3までの「取得年月」欄の年月に、減価償却資産を取得(資本的支出と認められる支出を含む。)し又は繰延資産に該当する費用(開業費)を支出したことが認められるところ、所得税法第49条《減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法》及び同法第50条《繰延資産の償却費の計算及びその償却の方法》に基づいて、平成20年分から平成24年分までの各年分における各減価償却資産に係る減価償却費及び開業費に係る繰延資産の償却費を算定した上で、実額による計算が可能な上記(ロ)の各期間に対応する減価償却費及び繰延資産の償却費を算定すると、別表10-1から別表10-3までのとおりとなる。
D 以上を前提として、本件月間試算ファイルにおける各支出項目を別表7の2欄から13欄までの各項目に区分(おしぼりの仕入金額は9欄の内書に記載している。)し、実額による計算が可能な上記(ロ)の各期間に対応する平成20年分から平成24年分までの各年分の必要経費の合計額を算定すると、別表7の14欄のとおり、平成20年分が○○○○円、平成21年分が○○○○円、平成22年分が○○○○円、平成23年分が○○○○円、平成24年分が○○○○円となる。

(ニ) 平成23年分の事業所得の金額
 上記(ロ)のとおり、平成23年分については実額による計算が可能であるところ、事業所得の金額は、上記(ロ)の収入金額○○○○円(別表7の1欄の金額)から上記(ハ)のDの必要経費○○○○円(別表7の14欄の金額)を控除した金額○○○○円(別表7の15欄の金額)となる。

(ホ) 平成20年分から平成22年分まで及び平成24年分の事業所得の金額
A 平成20年分
 実額による計算が可能な上記(ロ)の期間の所得金額を算定すると、上記(ロ)の収入金額○○○○円(別表7の1欄の金額)から上記(ハ)のDの必要経費○○○○円(別表7の14欄の金額)を控除した金額○○○○円(別表7の15欄の金額)となり、当該金額に基づいて所得率を計算すると19.6%(別表7の16欄の割合)となる。
 また、上記(イ)の状況から収入金額及び必要経費に係る各データがいずれも欠落しているため実額による計算が不可能となるK店、旧Q店及びR店の10月分の所得金額は、上記イの(ロ)のBの(A)の方法で算定することになるところ、同月分の収入金額は、別表7の「平成20年分」欄の「収入金額」欄の金額○○○○円をこれに対応するおしぼりの仕入本数34,400本(別表9-1の「平成20年」欄の「合計」欄の「合計」欄の36,850本から「10月」欄の「合計」欄の2,450本を差し引いた本数)で除して計算したおしぼり1本当たりの収入金額○○○○円(1円未満の端数を切り捨てた後のもの)に同月の上記仕入本数2,450本を乗じて計算した金額○○○○円となるから、同月分の所得金額は、当該金額に上記のとおり計算した平成20年分の所得率19.6%を乗じて算定した金額○○○○円(1円未満の端数を切り捨てた後のもの)となる。
 そうすると、平成20年分の事業所得の金額は、実額による計算が可能な期間の所得金額○○○○円と実額による計算が不可能な期間の所得金額○○○○円とを合計した金額○○○○円となる。
B 平成21年分
 実額による計算が可能な上記(ロ)の期間の所得金額を算定すると、上記(ロ)の収入金額○○○○円(別表7の1欄の金額)から上記(ハ)のDの必要経費○○○○円(別表7の14欄の金額)を控除した金額○○○○円(別表7の15欄の金額)となり、当該金額に基づいて所得率を計算すると4.6%(別表7の16欄の割合)となる。
 また、上記(イ)の状況から必要経費に係るデータがいずれも欠落しているため実額による計算が不可能となるK店、旧Q店及びR店の9月分の所得金額は、上記イの(ロ)のBの(A)の方法で算定することになるところ、別表4の順号1のとおり同月分の当該各店舗の収入金額は本件月間売上げ等ファイルにより実額で計算することが可能であり、当審判所がその金額を算定したところ○○○○円となるから、同月分の所得金額は、当該金額に上記のとおり計算した平成21年分の所得率4.6%を乗じて算定した金額○○○○円となる。
 さらに、上記(イ)の状況から収入金額及び必要経費に係る各データがいずれも欠落しているため実額による計算が不可能となるR店の11月分の所得金額は、上記イの(ロ)のBの(A)の方法で算定することになるところ、別表9-1の「平成21年」欄の「R店」欄の「11月」欄のとおり同月のおしぼりの仕入本数は○本であるから、R店に係る同月分の収入金額及び所得金額は○○○○円となる。
 そうすると、平成21年分の事業所得の金額は、実額による計算が可能な期間の所得金額○○○○円と実額による計算が不可能な期間の所得金額○○○○円とを合計した金額○○○○円となる。
C 平成22年分
 実額による計算が可能な上記(ロ)の期間の所得金額を算定すると、上記(ロ)の収入金額○○○○円(別表7の1欄の金額)から上記(ハ)のDの必要経費○○○○円(別表7の14欄の金額)を控除した金額○○○○円(別表7の15欄の金額)となり、当該金額に基づいて所得率を計算すると9.6%(別表7の16欄の割合)となる。
 また、上記(イ)の状況から必要経費に係るデータが欠落しているため実額による計算が不可能となるK店の1月分の所得金額は、上記イの(ロ)のBの(A)の方法で算定することになるところ、別表4の順号1のとおり同月分のK店の収入金額は本件月間売上げ等ファイルにより実額で計算することが可能であり、当審判所がその金額を算定したところ○○○○円となるから、同月分の所得金額は、当該金額に上記のとおり計算した平成22年分の所得率9.6%を乗じて算定した金額○○○○円となる。
 さらに、上記(イ)の状況から収入金額及び必要経費に係る各データがいずれも欠落しているため実額による計算が不可能となるK店及び新Q店の4月分の所得金額は、上記イの(ロ)のBの(A)の方法で算定することになるところ、同月分の収入金額は、別表7の「平成22年分」欄の「収入金額」欄の金額○○○○円をこれに対応するおしぼりの仕入本数17,550本(別表9-2の「平成22年」欄の「合計」欄の「合計」欄の19,450本から「1月」欄の「K店」欄の650本と「4月」欄の「合計」欄の1,250本との合計本数1,900本を差し引いた本数)で除して計算したおしぼり1本当たりの収入金額○○○○円(1円未満の端数を切り捨てた後のもの)に同月の上記仕入本数1,250本を乗じて計算した金額○○○○円となるから、同月分の所得金額は、当該金額に上記のとおり計算した平成22年分の所得率9.6%を乗じて算定した金額○○○○円となる。
 そうすると、平成22年分の事業所得の金額は、実額による計算が可能な期間の所得金額○○○○円と実額による計算が不可能な期間の上記各所得金額○○○○円及び○○○○円とを合計した金額○○○○円となる。
D 平成24年分
 実額による計算が可能な上記(ロ)の期間の所得金額を算定すると、上記(ロ)の収入金額○○○○円(別表7の1欄の金額)から上記(ハ)のDの必要経費○○○○円(別表7の14欄の金額)を控除した金額○○○○円(別表7の15欄の金額)となり、当該金額に基づいて所得率を計算すると14.2%(別表7の16欄の割合)となる。
 また、上記(イ)の状況から必要経費に係るデータがいずれも欠落しているため実額による計算が不可能となるK店及び新Q店の4月から同年12月までの所得金額は、上記イの(ロ)のBの(A)の方法で算定することになるところ、別表4の順号1のとおり当該期間の当該各店舗の収入金額は本件月間売上げ等ファイルにより実額で計算することが可能であり、当審判所がその金額を算定したところ○○○○円となるから、当該期間の所得金額は、当該金額に上記のとおり計算した平成24年分の所得率14.2%を乗じて算定した金額○○○○円となる。
 そうすると、平成24年分の事業所得の金額は、実額による計算が可能な期間の所得金額○○○○円と実額による計算が不可能な期間の所得金額○○○○円とを合計した金額○○○○円となる。

(ヘ) 平成18年分及び平成19年分の事業所得の金額
 上記(イ)のとおり、平成18年分及び平成19年分については、K店及び旧Q店の収入金額及び必要経費に係る各データは全て欠落しているから、上記イの(ロ)のBの(B)の方法で所得金額を算定することになり、この場合、当該各年分の収入金額の算定上及び所得率の適用上の基準となる期間を設定することが必要となるところ、当該各年分の直近の平成20年分は、上記(ロ)のとおり10月を除く11か月については実額による計算が可能であるから、平成18年分及び平成19年分の所得金額を推計するに当たっては、平成20年分の11か月分の基礎数値を用いるのが相当である。
A 平成18年分
 平成18年分の収入金額は、上記(ホ)のAで計算した平成20年分のおしぼり1本当たりの収入金額○○○○円に平成18年のおしぼりの仕入本数15,520本(別表9-1の「平成18年」欄の「合計」欄の「合計」欄の本数)を乗じて計算した金額○○○○円となるから、平成18年分の事業所得の金額は、当該金額に上記(ホ)のAで計算した平成20年分の所得率19.6%を乗じて算定した金額○○○○円(1円未満の端数を切り捨てた後のもの)となる。
B 平成19年分
 平成19年分の収入金額は、上記Aと同様に平成20年分のおしぼり1本当たりの収入金額○○○○円に平成19年のおしぼりの仕入本数38,950本(別表9-1の「平成19年」欄の「合計」欄の「合計」欄の本数)を乗じて計算した金額○○○○円となるから、平成19年分の事業所得の金額は、当該金額に上記Aと同様に平成20年分の所得率19.6%を乗じて算定した金額○○○○円(1円未満の端数を切り捨てた後のもの)となる。

(ト) 本件各年分の事業所得の金額
 本件各年分の請求人の事業所得は、上記(ニ)から(ヘ)までで認定した本件各店舗から生じる事業所得のみであり、その金額は、平成18年分が○○○○円、平成19年分が○○○○円、平成20年分が○○○○円、平成21年分が○○○○円、平成22年分が○○○○円、平成23年分が○○○○円、平成24年分が○○○○円となる。

ハ 本件各年分の総所得金額

本件各年分において、請求人は上記ロの(ト)で認定した事業所得以外の所得を有していないから、本件各年分の総所得金額は、上記ロの(ト)の事業所得の各金額と同額となる。

ニ 所得控除の額

原処分庁は、本件各年分の所得控除の額を別表11-1及び別表11-2のそれぞれ2から4までの各欄の金額と同額であると認定しているところ、これについて請求人は争わず、当審判所の調査の結果によっても相当と認められる。
 そうすると、本件各年分の所得控除の合計額は、別表11-1及び別表11-2の各5欄のとおり、平成18年分が○○○○円、平成19年分が○○○○円、平成20年分が○○○○円、平成21年分が○○○○円、平成22年分が○○○○円、平成23年分が○○○○円、平成24年分が○○○○円となる。

ホ 納付すべき税額

本件各年分の納付すべき税額は、次のとおりとなる。

(イ) 課税総所得金額及びこれに対する税額
 本件各年分の課税総所得金額は、上記ハの本件各年分の総所得金額から上記ニの本件各年分の所得控除の合計額を控除した金額について、通則法第118条《国税の課税標準の端数計算等》第1項の規定に基づいて1,000円未満の端数を切り捨てた後の金額であり、別表11-1及び別表11-2の各6欄のとおり、平成18年分が○○○○円、平成19年分が○○○○円、平成20年分が○○○○円、平成21年分が○○○○円、平成22年分が○○○○円、平成23年分が○○○○円、平成24年分が○○○○円となる。
 そして、本件各年分の課税総所得金額に対する税額は、上記各金額に所得税法第89条《税率》(平成18年分については、平成18年法律第10号による改正前のもの)の規定を適用して計算した金額で、別表11-1及び別表11-2の各7欄のとおり、平成18年分が○○○○円、平成19年分が○○○○円、平成20年分が○○○○円、平成21年分が○○○○円、平成22年分が○○○○円、平成23年分が○○○○円、平成24年分が○○○○円となる。

(ロ) 定率による税額控除の額
 平成18年分については、経済社会の変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税の負担軽減措置に関する法律(平成18年法律第10号により廃止される前のもの)第6条《定率による税額控除の特例》の規定が適用されるので、同条に基づいて定率による税額控除の額を算定すると、別表11-1の8欄のとおり○○○○円となる。

(ハ) 納付すべき税額
 本件各年分の納付すべき税額は、上記(イ)の各金額(平成18年分については上記(イ)の金額から上記(ロ)の金額を控除した金額)について、通則法第119条《国税の確定金額の端数計算等》第1項の規定に基づいて100円未満の端数を切り捨てた後の金額であり、別表11-1の9欄及び別表11-2の8欄のとおり、平成18年分が○○○○円、平成19年分が○○○○円、平成20年分が○○○○円、平成21年分が○○○○円、平成22年分が○○○○円、平成23年分が○○○○円、平成24年分が○○○○円となる。

ヘ まとめ

(イ) 上記1の(2)のイのとおり、平成18年分及び平成19年分の所得税の各決定処分は、いずれも平成25年12月19日付で行われているところ、改正前通則法第70条第3項及び通則法70条第4項の各規定から、原処分庁は、平成18年分及び平成19年分の所得税については、請求人が偽りその他不正の行為により全部又は一部の所得税を免れていない限り、同日において決定処分をすることはできない。
 そこで、この点について検討するに、上記(2)のロの(イ)のBのとおり平成18年分及び平成19年分の所得税に係る請求人の行為は通則法第70条第4項に規定する偽りその他不正の行為に該当すること、上記ホの(ハ)のとおり平成18年分及び平成19年分の納付すべき所得税額はそれぞれ○○○○円、○○○○円であるのに対し、請求人は当該各年分の所得税の確定申告書を提出していないことからすると、請求人は、平成18年分及び平成19年分の所得税について、偽りその他不正の行為により全部の税額を免れていたということができる。
 したがって、原処分庁は、本件所得税各更正決定処分が行われた平成25年12月19日の時点で、平成18年分及び平成19年分の所得税の各決定処分を行うことができる。

(ロ) そして、上記ホの(ハ)で算定した平成18年分、平成19年分、平成20年分及び平成21年分の各納付すべき税額は、いずれも当該各年分の各決定処分のそれを上回るから、当該各年分の各決定処分はいずれも適法であるが、平成22年分、平成23年分及び平成24年分の各納付すべき税額は、いずれも当該各年分の各更正処分のそれを下回るから、当該各年分の各更正処分は、いずれもその一部を別紙1から別紙3までの「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。

(6) 本件所得税各賦課決定処分

上記(5)のヘの(イ)のとおり、請求人は、平成18年分及び平成19年分の所得税について、偽りその他不正の行為により全部の税額を免れていたということができるから、原処分庁は、通則法第70条第4項の規定に基づき、本件所得税各賦課決定処分が行われた平成25年12月19日の時点で、平成18年分及び平成19年分の所得税に係る各賦課決定処分を行うことができる。
 上記(3)のハの(イ)のBのとおり、本件各年分の所得税に係る請求人の行為は、通則法第68条第1項又は同条第2項に規定する事実の隠ぺい又は仮装に該当し、請求人は、その隠ぺいし又は仮装したところに基づいて、上記1の(4)のロの(イ)のEのとおり、平成18年分から平成21年分までの所得税の各法定申告期限までに確定申告書を提出せず、平成22年分から平成24年分までの所得税の各法定申告期限までに確定申告書を提出したものであるから、重加算税の賦課要件を満たす。
 そして、上記(5)のヘの(ロ)のとおり、平成18年分から平成21年分までの各決定処分はいずれも適法であるから、当該各年分の重加算税の各賦課決定処分はいずれも適法である。
 しかしながら、上記(5)のヘの(ロ)のとおり、平成22年分から平成24年分までの各更正処分の一部が取り消されることに伴い、当該各年分の重加算税の計算の基礎となる税額は、平成22年分が○○○○円、平成23年分が○○○○円、平成24年分が○○○○円となるから、当該基礎となる各税額に基づき当該各年分の重加算税の額を計算すると、平成22年分が○○○○円、平成23年分が○○○○円、平成24年分が○○○○円となり、これらの各金額は、いずれも当該各年分の重加算税の各賦課決定処分のそれを下回るから、当該各年分の重加算税の各賦課決定処分は、いずれもその一部を別紙1から別紙3までの「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。

(7) 本件消費税等各決定処分

イ 本件各課税期間の課税標準額

上記(3)のロのとおり、本件各年における本件各店舗の売上げは、全て消費税法第28条第1項に規定する「課税資産の譲渡等の対価」に該当し、請求人は、本件各課税期間において消費税法第5条第1項に規定する消費税の納税義務者であったところ、これを前提として本件各課税期間の消費税の課税標準額を算定すると、次のとおりである。

(イ) 平成20年分から平成24年分までの各年分の事業所得の総収入金額
 平成20年分から平成22年分まで及び平成24年分の各年分の総収入金額は、別表7の当該各年分の1欄の各金額に、平成20年分については上記(5)のロの(ホ)のAの平成20年10月分の収入金額○○○○円、平成21年分については上記(5)のロの(ホ)のBの平成21年9月分の収入金額○○○○円、平成22年分については上記(5)のロの(ホ)のCの平成22年1月分及び同年4月分の各収入金額○○○○円、○○○○円、平成24年分については上記(5)のロの(ホ)のDの平成24年4月分から同年12月分までの期間の収入金額○○○○円をそれぞれ加算した金額であり、また、平成23年分の総収入金額は、別表7の「平成23年分」欄の1欄の金額であるから、平成20年分から平成24年分までの各年分の事業所得の総収入金額は、別表12の1欄のとおり、平成20年分が○○○○円、平成21年分が○○○○円、平成22年分が○○○○円、平成23年分が○○○○円、平成24年分が○○○○円となる。

(ロ) 本件各課税期間の課税標準額
 本件各課税期間の課税標準額は、上記(イ)の平成20年分から平成24年分までの各年分の事業所得の総収入金額にそれぞれ105分の100を乗じて算定した金額について、通則法第118条第1項の規定に基づいて1,000円未満の端数を切り捨てた後の金額であり、別表12の2欄のとおり、平成20年課税期間が○○○○円、平成21年課税期間が○○○○円、平成22年課税期間が○○○○円、平成23年課税期間が○○○○円、平成24年課税期間が○○○○円となる。

ロ 課税標準額に対する消費税額

本件各課税期間の課税標準額に対する消費税額は、上記イの(ロ)の本件各課税期間の課税標準額に消費税法(平成24年法律第68号による改正前のもの。以下同じ。)第29条《税率》の規定を適用して算定した金額であり、別表12の3欄のとおり、平成20年課税期間が○○○○円、平成21年課税期間が○○○○円、平成22年課税期間が○○○○円、平成23年課税期間が○○○○円、平成24年課税期間が○○○○円となる。

ハ 控除対象仕入税額

原処分関係資料によれば、原処分庁は、本件各ファイルに入力された支払のうちには課税仕入れに係る支払の対価と認められるものがあるとして、消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第1項の規定を適用して、別表2の「決定処分等」欄の本件各課税期間の「控除対象仕入税額」欄のとおり控除対象仕入税額を算定しているところ、当審判所の調査の結果、本件各ファイルは、いずれも同条第8項の要件を満たした帳簿とは認められず、請求人は、本件各課税期間において同条第7項に規定する「課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等を保存していない場合」に該当するから、同条第1項の規定の適用を受けることはできない。
 したがって、本件各課税期間において、課税仕入れに係る消費税額の控除をすることはできない。

ニ 納付すべき消費税額及び地方消費税額

 上記ロ及びハに基づき、通則法第119条第1項並びに地方税法第72条の82《地方消費税の課税標準額の端数計算の特例》、地方税法(平成24年法律第69号による改正前のもの。)第72条の83《地方消費税の税率》及び地方税法第20条の4の2《課税標準額、税額等の端数計算》第3項の規定を適用して本件各課税期間の納付すべき消費税額及び地方消費税額を算定すると、別表12の5欄及び6欄のとおり、平成20年課税期間が○○○○円及び○○○○円、平成21年課税期間が○○○○円及び○○○○円、平成22年課税期間が○○○○円及び○○○○円、平成23年課税期間が○○○○円及び○○○○円、平成24年課税期間が○○○○円及び○○○○円となり、これらの各金額は、いずれも本件消費税等各決定処分のそれらを上回るから、本件消費税等各決定処分はいずれも適法である。

(8) 本件消費税等各賦課決定処分

上記(7)のニのとおり、本件消費税等各決定処分はいずれも適法であり、上記(3)のハの(イ)のBのとおり、本件各課税期間の消費税等に係る請求人の行為は、通則法第68条第2項に規定する事実の隠ぺい又は仮装に該当し、請求人は、その隠ぺいし又は仮装したところに基づいて、上記1の(4)のロの(ロ)のBのとおり、本件各課税期間の消費税等の法定申告期限までに確定申告書を提出しなかったものであるから、重加算税の賦課要件を満たしている。
 したがって、本件消費税等各賦課決定処分はいずれも適法である。

(9) 本件各納税告知処分

上記(4)のイのとおり、請求人は、本件各給与について、所得税法第183条第1項及び復興財源確保法第28条第1項に規定する源泉徴収義務がある。
 ところで、原処分関係資料によれば、原処分庁は、本件各給与の支払者は請求人であり、請求人が所得税法第183条第1項及び復興財源確保法第28条第1項に規定する源泉徴収義務者であるとして、請求人に対し、平成22年12月から平成24年12月までの源泉所得税については、所得税法第185条第1項第1号の規定に基づいて同法別表第二の甲欄を適用、また、平成25年1月以降の源泉所得税等については、復興財源確保法第29条第1項の規定に基づき、平成24年3月31日財務省告示第115号別表第一の甲欄を適用するなどして、本件各給与に係る本件各月分等の源泉所得税及び源泉所得税等の各税額を算定して、本件各納税告知処分を行ったことが認められる。
 しかしながら、上記各別表の甲欄を適用するためには、所得税法第194条第1項の規定に基づいて、給与等の支払を受ける居住者が、給与所得者の扶養控除等申告書を当該給与等の支払者を経由してその給与等に係る源泉所得税の納税地の所轄税務署長に対して提出する必要があるところ、当審判所の調査の結果によれば、本件各給与の支払者である請求人は、本件各給与の支払を受けたP4及びP3から、いずれも本件各給与に係る平成22年分から平成25年分までの給与所得者の扶養控除等申告書を受理していないから、本件各給与に係る源泉所得税及び源泉所得税等の各税額の算定に当たっては、いずれも源泉所得税及び源泉所得税等に係る上記各別表の乙欄が適用されることになる。
 そして、当審判所が、本件各給与について、上記各別表の乙欄を適用して本件各給与に係る本件各月分等の源泉所得税又は源泉所得税等の各税額を算定すると、別表13の各「源泉所得税又は源泉所得税等の額」欄のとおりとなり、別表13の「合計額」欄の各金額は、いずれも本件各納税告知処分のそれらを上回るから、本件各納税告知処分はいずれも適法である。

(10) 本件不納付加算税賦課決定処分

上記(9)のとおり、本件各納税告知処分は適法であり、請求人が、平成25年2月から同年6月までの期間分の源泉所得税等の納税告知処分に係る税額を法定納期限までに納付しなかったことについて、通則法第67条《不納付加算税》第1項ただし書に規定する正当な理由があると認められる場合に該当しないから、本件不納付加算税賦課決定処分は適法である。

(11) その他

原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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