(平成27年4月8日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事案の概要

本件は、原処分庁が、審査請求人(以下「請求人」という。)の滞納国税を徴収するため、請求人に帰属する株式(以下「本件株式」という。)について委託売却による売却通知処分(以下「本件委託売却通知処分」という。)をしたのに対し、請求人が、当該処分の取消しを求めて審査請求をした事案である。

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2 審査請求に至る経緯

(1) 原処分庁は、本件株式を換価するため、国税徴収法第109条《随意契約による売却》第4項が準用する同法第96条《公売の通知》第1項の規定に基づき、1売却実施期間を「平成27年1月○日〜平成27年1月○日」、2売却決定の日を「証券取引所において売却財産の売買が成立した日」等と記載した平成27年1月○日付の「委託売却による売却通知書」を請求人に送付して、同日付で本件委託売却通知処分をした。

(2) 請求人は、平成27年1月21日、本件委託売却通知処分に不服があるとして、国税通則法(平成26年法律第69号による改正前のもの。)第75条《国税に関する処分についての不服申立て》第1項第2号ロの規定に基づき審査請求をした。

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3 判断

当審判所の調査の結果によれば、1請求人が、売却実施期間前に本審査請求をしたことから(上記2の(2))、原処分庁は、委託先の振替機関等であるD証券に対し、売却実施の中止を連絡したこと、2その結果、本件株式は売却実施期間に売却されることなく、その期間が経過したことが認められる。
 行政処分の取消しを求めるには、その取消しを求める処分の効力が現に存在していることが必要であるところ、上記のとおり、本件委託売却通知処分に基づき本件株式が売却されることはなくなったので、本件委託売却通知処分はその効力を失ったということができる。
 したがって、請求人には本件委託売却通知処分の取消しを求める法律上の利益はないから、本審査請求は、不服申立ての利益を欠く不適法なものである。

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