(平成27年6月1日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、競売により土地とともに一括取得した建物等について、落札金額を路線価及び類似建物の価額などであん分して算出した取得価額を基に法人税の減価償却費の額及び消費税の課税仕入れに係る支払対価の額を計算して申告したところ、原処分庁が、建物等の取得価額は、固定資産税評価額による土地と建物等の評価額の比率に基づき算出すべきであるとして、法人税並びに消費税及び地方消費税の各更正処分等を行ったのに対し、請求人が、当初の申告に用いたあん分比が認められないとしても、不動産鑑定士の鑑定評価による土地と建物等の評価額の比率によるべきであるなどとして、これらの処分の一部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 請求人は、平成22年12月1日から平成23年11月30日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)の法人税について、青色の確定申告書に別表1の「確定申告」欄のとおり記載して、また、平成22年12月1日から平成23年11月30日までの課税期間(以下「本件課税期間」という。)の消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)について、確定申告書に別表2の「確定申告」欄のとおり記載して、それぞれ法定申告期限までに申告した(以下、当該申告された法人税の確定申告を「本件法人税確定申告」という。)。

ロ 原処分庁は、これに対し、平成25年12月24日付で、法人税について、別表1の「更正処分等」欄のとおりの更正処分(以下「本件法人税更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件法人税賦課決定処分」という。)をし、消費税等について、別表2の「更正処分等」欄のとおりの更正処分(以下「本件消費税等更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件消費税等賦課決定処分」という。)をした。

ハ 請求人は、上記ロの各処分を不服として、平成26年2月21日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年5月20日付で棄却の異議決定をした。

ニ 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成26年6月12日に審査請求をした。

(3) 関係法令の要旨

イ 法人税法(平成23年法律第114号による改正前のもの。以下同じ。)第31条《減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法》第1項は、内国法人の各事業年度終了の時において有する減価償却資産につきその償却費として同法第22条《各事業年度の所得の金額の計算》第3項の規定により当該事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入する金額は、その内国法人が当該事業年度においてその償却費として損金経理をした金額のうち、その取得をした日及びその種類の区分に応じ政令で定める償却の方法の中からその内国法人が当該資産について選定した償却の方法に基づき政令で定めるところにより計算した金額(以下「償却限度額」という。)に達するまでの金額とする旨規定している。

ロ 法人税法施行令(平成23年政令第379号による改正前のもの。以下同じ。)第13条《減価償却資産の範囲》第1号は、減価償却資産の一つとして、建物及びその附属設備(建物附属設備)を掲げ、建物附属設備とは、暖冷房設備、照明設備、通風設備、昇降機その他建物に附属する設備をいう旨規定している。

ハ 法人税法施行令第48条の2《減価償却資産の償却の方法》第1項は、平成19年4月1日以後に取得をされた減価償却資産の償却限度額の計算上選定をすることができる法人税法第31条第1項に規定する資産の種類に応じた政令で定める償却の方法は、法人税法施行令第48条の2第1項各号に掲げる資産の区分に応じ当該各号に定める方法とする旨規定し、同項第1号は、建物の償却方法については、定額法とする旨、同項第2号は、法人税法施行令第13条第1号に掲げる建物の附属設備及び同条第2号から第7号までに掲げる減価償却資産の償却の方法については、定額法又は定率法とする旨規定している。

ニ 法人税法施行令第54条《減価償却資産の取得価額》第1項は、法人税法施行令第48条《減価償却資産の償却の方法》から第50条《特別な償却率による償却の方法》までに規定する取得価額は、法人税法施行令第54条第1項各号に掲げる資産の区分に応じ当該各号に定める金額とする旨規定し、同項第1号は、購入した減価償却資産の取得価額については、当該資産の購入の代価(引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税その他当該資産の購入のために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)及び当該資産を事業の用に供するために直接要した費用の額の合計額とする旨規定している。

ホ 減価償却資産の耐用年数等に関する省令(以下「耐用年数省令」という。)第1条《一般の減価償却資産の耐用年数》第1項は、一般の減価償却資産の耐用年数は、同項各号に掲げる資産の区分に応じ当該各号に定める表に定めるところによる旨規定し、同項第1号は、法人税法施行令第13条第1号に掲げる資産の耐用年数については、耐用年数省令別表第一(機械及び装置以外の有形減価償却資産の耐用年数表)に定めるところによる旨規定している。そして、耐用年数省令別表第一は、建物附属設備については、その構造又は用途として、1電気設備(照明設備を含む。)、2給排水又は衛生設備及びガス設備、3冷房、暖房、通風又はボイラー設備、4昇降機設備、5消火、排煙又は災害報知設備及び格納式避難設備、6エヤーカーテン又はドアー自動開閉設備、7アーケード又は日よけ設備、8店用簡易装備、9可動間仕切り並びに10前掲のもの以外のもの及び前掲の区分によらないものを掲げ、そのうち上記13479及び10の各資産については、それぞれの細目に区分した上で、その用途等の区分に応じた耐用年数を定めている。

ヘ 消費税法(平成24年法律第68号による改正前のもの。以下同じ。)第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第1項は、事業者が、国内において行う課税仕入れについては、当該課税仕入れを行った日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額から、当該課税期間中に国内において行った課税仕入れに係る消費税額(当該課税仕入れに係る支払対価の額に105分の4を乗じて算出した金額をいう。以下「控除対象仕入税額」という。)を控除する旨規定している。

ト 民法第370条《抵当権の効力の及ぶ範囲》は、抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ旨、ただし、設定行為に別段の定めがある場合及び同法第424条《詐害行為取消権》の規定により債権者が債務者の行為を取り消すことができる場合は、この限りでない旨規定している。

(4) 基礎事実

以下の事実は、請求人と原処分庁との間に争いはなく、当審判所の調査の結果によっても、その事実が認められる。

イ 請求人は、飲食店の経営等を目的として、昭和51年12月○日に設立された法人である。

ロ 請求人は、H地方裁判所が行った次の土地及び建物等についての事件番号「平成○年(○)第○号」に基づく期間入札に係る競売(以下「本件競売」という。)に参加し、○○○○円の額で買受けの申出をし、平成○年○月○日付で同裁判所から売却許可決定を受けた(以下、請求人が売却許可決定を受けた申出の額○○○○円を「本件落札金額」という。)。

(イ) 本件競売に係る物件目録によると、本件競売の対象は、e市f町○に所在する地番○番○ないし○の地目宅地である土地と当該土地の上に所在する家屋番号○番○の○の鉄筋コンクリート造陸屋根地下○階付地上○階建の建物であった(以下、本件競売の対象となった土地を「本件土地」、本件競売の対象となった建物を「本件競売建物」といい、これらを併せて「本件不動産」という。)。

(ロ) 本件競売建物は、J社が平成○年○月に新築したものであり、商業用として賃貸されていた。

(ハ) 本件競売建物には、上記(3)のホの1ないし4に該当する建物附属設備(以下「本件建物附属設備」という。)のほかに、次の各資産が設置等されていた。

A 本件競売建物の正面の壁面の○階から○階上にかけて設置されたアクリル製の化粧壁(全体面積は約320平方メートルであり、○階及び○階部分の約56平方メートルが透明となっているもの。以下「本件アクリル壁」という。)

B 本件競売建物の正面の壁面の○階及び○階部分の本件アクリル壁と建物本体の壁面との間の約40センチメートルの隙間を使って設置された○○相当のLEDディスプレイ及びその制御装置(以下「本件ディスプレイ設備」という。)

C 本件競売建物の○階部分に施設された内部造作(以下「本件内部造作」という。)

D その他の動産類(請求人が別表3の「看板・その他動産類」として区分していた資産のうち、本件アクリル壁以外のものをいう。以下同じ。)

ハ 請求人は、本件落札金額として、平成23年○月○日に○○○○円を、同年○月○日に○○○○円を、それぞれH地裁執行センター名義の当座預金口座に振り込み、本件土地及び本件競売建物は、平成23年○月○日担保不動産競売による売却を原因として、同月○日に所有権移転登記がされた。

ニ 請求人の経理処理並びに法人税及び消費税等の確定申告の状況は、次のとおりであった。

(イ) 請求人は、別表3の「資産」の各欄に掲げた資産ごとに、それぞれ本件落札金額を区分し、同表の「本件法人税確定申告」の「取得価額」欄のとおりに各取得価額を計算し、平成23年11月30日付で、総勘定元帳の土地勘定に○○○○円、建物勘定に○○○○円、建物付属設備勘定に○○○○円を計上するとともに、計上した各資産(本件土地を除く。)について、同表の「本件法人税確定申告」の「減価償却費計上額」欄のとおりに減価償却費を計算し、総勘定元帳の減価償却費勘定に165,882,000円を計上した。
 なお、請求人は、上記の建物勘定及び建物付属設備勘定に計上した各資産について、耐用年数省令第3条《中古資産の耐用年数等》第1項第2号ロの規定に基づき算出した耐用年数(以下「簡便法による中古耐用年数」という。)によってそれぞれ減価償却費を計算した。

(ロ) 請求人は、上記(イ)の減価償却費勘定に計上した165,882,000円を損金の額に算入して本件法人税確定申告をした。

(ハ) また、請求人は、上記(イ)の建物勘定及び建物付属設備勘定に計上した各資産の取得価額の合計金額○○○○円を課税仕入れに係る支払対価の額に含めて控除対象仕入税額を計算し、本件課税期間の消費税等の確定申告をした。

(ニ) 請求人は、消費税等が課される取引に係る経理処理について、いわゆる税込経理処理(消費税等の額と当該消費税等に係る取引の対価とを区分しないで経理する方法をいう。)を採用していた。

ホ 原処分庁は、本件不動産について、本件土地及び本件競売建物に係る各固定資産税評価額の比率により本件土地及び本件競売建物の取得価額を区分することが合理的であるなどとして、別表3の「本件法人税更正処分」の「取得価額」欄のとおりに請求人が区分した資産ごとの各取得価額を算出し、当該各取得価額に基づいて、本件競売建物について、同表の「本件法人税更正処分」の「償却限度額」欄及び「償却限度超過額」欄のとおりに償却限度額及び償却限度超過額を計算して本件法人税更正処分及び本件法人税賦課決定処分を行い、併せて、本件競売建物の各取得価額相当額に基づいて控除対象仕入税額を計算して本件消費税等更正処分及び本件消費税等賦課決定処分を行った。

ヘ 請求人が、当審判所に提出した平成26年9月24日付のK不動産鑑定事務所のK不動産鑑定士が作成した本件不動産に関する不動産鑑定評価書(以下「本件K評価書」という。)には、要旨次の内容の記載がある。

(イ) 本件不動産の平成23年○月○日時点の評価額(正常価格)は3,660,000,000円であり、当該評価額を建物の部分鑑定評価額とこれを控除した残余の土地価格とで配分した内訳は、土地が2,440,000,000円(1平方メートル当たり○○○○円)で、建物が1,220,000,000円(1平方メートル当たり○○○○円。売買の際に課税される消費税額を含まない。)である。
 なお、当該土地の評価額は、土地の比準価格及び収益価格と関連付けて求めた価格との均衡も得ていることから、部分鑑定評価の観点からも妥当と判断した。

(ロ) 上記(イ)の本件不動産の評価額(正常価格)3,660,000,000円は、原価法による積算価格3,444,000,000円と直接還元法による収益価格3,880,000,000円との加重平均額によって決定した。
 また、上記(イ)の建物の部分鑑定評価額(正常価格)1,220,000,000円は、原価法による建物積算価格1,004,000,000円と建物残余法による建物収益価格1,430,000,000円との加重平均額によって決定した。

(ハ) ○階部分の本件内部造作は、当該評価に含める。なお、現況、当該階はテナントが入居していることから、確認は取得当時の写真及び図面で行った。

(ニ) 本件ディスプレイ設備は、不動産の範ちゅうに入らない機械設備と判断し、当該評価では考慮外とする。

(ホ) 本件不動産の評価に当たっての同一需給圏については、d県e市内の商業地域を中心としつつ、周辺隣接市内の商業地域をも含む圏域と判定し、その特性として、平成23年3月11日に東日本大震災が発生し、当該震災により○○も被災したことから、その影響が懸念されたが、この地震による県内店舗ビル、事務所ビル、マンション市場等への影響は限定的であった。

(ヘ) 本件K評価書の別表2−(1)である「公示価格を規準とした価格等」には、「公示地・○5−2」の時点修正変動率は、平成21年1月1日から同年12月31日は「月率△0.XX%」、平成22年1月1日から同年12月31日は「月率△0.XX%」、平成23年1月1日から同年○月○日は「月率△0.XX%」である旨示されている。

(ト) 本件K評価書の別表4−(1)ないし4−(6)である「原価法(建物)」には、建物再調達原価及び建物積算価格の算定過程が示されており、その内容は、要旨以下のとおりである。

A 純工事費(単価)は、対象建物と構造・用途・仕様等の類似する建物の実際建設費(見積実例資料)に基づき査定しているところ、当該査定の事例としたのは、財団法人建設物価調査会が発行する「建物実例データ集 改訂版 建物の鑑定評価必携」に掲載された用途及び構造が類似する2件の建設事例であった。

B 上記Aの2件の建設事例による純工事費に時点修正及び格差修正を行い求めた2つの価格を関連付けて「対象建物の純工事費(単価)」と題する表に対象建物の純工事費「353,971円/平方メートル」が記載されている。当該表には、本件内部造作も同時に取得していることから、便宜上、その他設備の部分で考慮した旨、及び本件内部造作の経済的耐用年数を設備と同じ15年と判断するからであるとの理由を付して、本件内部造作部分を「その他設備工事」とし、その単価を「37,500円/平方メートル」として純工事費の計算に加えている。

C 建物再調達原価は「492,000円/平方メートル」と、建物積算価格は「379,000円/平方メートル」と算定されている。

(5) 争点

争点は、請求人が本件競売によって一括取得した本件土地及び本件競売建物の取得価額の算出はどのような方法により行い、また、当該取得価額はそれぞれ幾らであるかである。

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2 主張

(1) 原処分庁

イ 土地及び建物が一括して購入された場合において、その代金総額のうち、建物の取得価額が幾らであるかを算出するに当たっては、一般に何らかの方法により算出した土地及び建物の価額比に基づき、その代金総額を土地の取得価額と建物の取得価額とにあん分することによって算出するという方法があるが、その方法は、売主が土地の仕入価額及び建物の新築工事原価の合計額に利益を上乗せした価額で販売する場合に、土地及び建物の双方に利益が反映されることになり、土地及び建物を一体として販売する取引の実態に合致し、合理的であると考えられる。

ロ そして、代金総額を土地及び建物の価額比であん分する場合において、価額比の基礎となる土地及び建物の価額については、1土地及び建物の販売価額が区分されている類似物件の売買実例価額、2鑑定評価による価額、3土地及び建物の相続税評価額、4土地及び建物の固定資産税評価額などを用いることが考えられるところ、1及び2による方法は、その算出に多大な費用を要するものであり、納税者間の公平、納税者の便宜及び徴税費用の節減の観点から合理的とはいえず、また、3による方法は、相続税評価額が、土地は国税局が算出した路線価を、建物は地方公共団体が算出した固定資産税評価額をそれぞれ基礎としており、土地と建物とで算出機関及び算出時期が異なるため、土地及び建物の適切な価額比を導き出すのに必ずしも適当ではない。

ハ 一方、上記ロの4による方法は、特に中古物件の場合は、簡易、迅速に土地及び建物の価額を把握してあん分することができること、固定資産税評価額は、土地の場合は地価公示価額や売買実例等を基に評価し、建物の場合は再建築価額に基づいて評価されているから、土地及び建物ともに時価を反映していると考えられること、土地及び建物の算出機関及び算出時期が同一であるから、いずれも同一時期の時価を反映しているものと考えられることに照らして、同ロの1ないし3による方法に比べ、より実態に近い合理的な算出方法であると認められる。

ニ また、本件では、競売時に評価人により作成された不動産評価書が存在しており、当該評価書では、本件不動産に係る評価額は、本件土地及び本件競売建物の積算価格の構成比を基に算定されているところ、同積算価格が土地及び建物の価格に敷地利用権等価格を加減算して、それぞれの価格が算出されていることからすると、本件土地及び本件競売建物が別々の者に譲渡されることを前提に算出されているものと認められ、本件土地と本件競売建物とを一括取得した請求人とは前提が異なることから、この点からも上記ロの2による方法は、土地及び建物の適切な価額比を導き出すのに適当とは認められない。

ホ なお、請求人が主張する本件K評価書における鑑定評価額を基に算出する方法は、上記ロのとおり、その算出に多大な費用を要するものであり、納税者間の公平、納税者の便宜及び徴税費用の節減の観点から合理的とはいえず、上記ハのとおり、固定資産税評価額を用いる方が鑑定評価による価額を用いる方法に比べ合理的な算出方法であると認められる。

(2) 請求人

イ 一括取得した土地及び建物の価額が区分されていない場合は、第三者である不動産鑑定士の鑑定評価による土地及び建物の評価額の比率により区分を行うことが客観的であり、かつ、合理的である。したがって、本件K評価書に記載された本件土地及び本件競売建物の評価額の比率によりあん分すべきである。
 法人税法上、一括取得した土地及び建物の価額が区分されていない場合の区分方法について、明文の規定が設けられておらず、請求人は、より合理的な価額の区分となるように、多大な費用を負担してまで鑑定評価による価額を用いる方法を主張するものであるが、この方法が合理的でないとする原処分庁の主張については、請求人は不利益な課税処分を受けることになる上に、本件K評価書が合理的でないと否定するものであるから、受け入れられない。
 なお、本件K評価書において評価の対象とされていない本件ディスプレイ設備については、本件落札金額から先取りして取得価額を算出すべきである。

ロ 固定資産税評価額は、3年ごとに見直しが行われる上、本件競売建物に係る家屋の固定資産税評価額には本件内部造作の価額が含まれないから、鑑定評価による価額に比べて合理的ではない。さらに、本件不動産の取得時期は平成23年3月11日に発生した東日本大震災直後の平成23年○月であり、土地の価格は下落を重ねていた時期であるから、東日本大震災の前に評価が行われている固定資産税評価額を安易に用いるべきではない。
 また、固定資産税評価額の算出機関において「評価額の修正」等が発生し、正確性に欠けるとの報道も行われていることからみても、固定資産税評価額を用いる方法が、鑑定評価による価額を用いる方法に比べてより合理的な算出方法であるとは認められない。

ハ なお、上記イの請求人の主張に基づく本件土地と本件競売建物の取得価額は別表4の「取得価額」欄のとおりであり、本件課税期間の課税仕入れに係る支払対価の額は、同表の「本件競売建物」の「取得価額」欄に記載された○○○○円であり、また、本件事業年度の本件競売建物に係る償却限度額は同表の「償却限度額」欄のとおりである。

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3 判断

(1) 認定事実

請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。

イ 本件土地は、平成○年10月28日売買を原因として、同日にJ社への所有権移転登記がされ、また、本件競売建物は、平成○年○月○日新築を原因として、同年○月○日にJ社を所有者として所有権保存登記がされた。

ロ 本件競売建物には、平成○年○月○日設定を原因として、同日にL社を根抵当権者、J社を債務者として、極度額50億円とする根抵当権設定登記がされた(以下、当該根抵当権を「本件根抵当権」という。)。また、本件根抵当権の設定登記において、民法第370条ただし書に規定する別段の定めの登記はされていない。
 また、本件根抵当権に係る債権者が民法第424条の詐害行為取消権を適用したとの事実は認められない。

ハ 本件競売に係る期間入札の公告によると、売却基準価額は○○○○円、買受可能価額は○○○○円と設定されていた。

ニ 本件競売において、一般の閲覧に供された評価人Mの作成による本件不動産に係る評価書(以下「本件競売評価書」という。)によると、上記ハの売却基準価額の○○○○円の算定根拠は、要旨以下のとおりである。

(イ) 評価日は平成22年12月29日である。

(ロ) 本件不動産の積算価格を○○○○円、収益価格を○○○○円と求め、これらの価格を同等に評価して調整後の合計価格を○○○○円と算出した上、競売市場修正等を行って評価額○○○○円を決定した。

(ハ) 上記(ロ)の積算価格の基礎となる価格の内訳は、本件土地が○○○○円及び本件競売建物が○○○○円であり、本件競売建物の価格の算出に当たっては、建物の再調達原価を基礎として、経過年数約○年等を加味して算出されている。
 なお、積算価格の基礎となる本件土地の価格の算出に当たって、平成22年7月1日から評価日までの時点修正を行うため、推定変動率として98%を基準地価格に乗じて計算している。

ホ J社が本件競売建物の建築に際してN社(旧社名:P社)と締結した平成○年3月25日付の工事請負契約書及びその添付書類である同月付の見積書並びに同年9月29日付の工事請負契約書(以下、これらの書面を併せて「本件工事請負契約書等」という。)に記載された新築請負代金の合計額は、630,000,000円(消費税等相当額を含む。)である。

ヘ 本件ディスプレイ設備について、以下の事実が認められる。

(イ) 本件工事請負契約書等に添付された設計図面によると、本件競売建物の○階及び○階部分の本件アクリル壁の透明部分には本件ディスプレイ設備のLEDディスプレイ本体を固定するために必要となるパンチング穴があらかじめ4,836か所開けられることとされていた。

(ロ) J社とQ社との間で取り交わした平成○年4月11日付の「変更合意書」と題する書面によると、同年2月16日付の注文書及び同年3月29日付の見積書による本件ディスプレイ設備及びその取付工事について、工事内容の変更とともに、工事代金の支払を、同年4月28日までに32,865,000円(税込み工事代金額の半額相当)、同年竣工月末日までに32,865,000円(税込み工事代金額の半額相当)の合計65,730,000円とすることに合意した。

ト 本件競売建物の○階部分には本件競売前からJ社所有の本件内部造作が施設されているところ、J社が本件内部造作を取得するに至った経緯等は、次のとおりである。

(イ) ○階部分は、平成18年5月からR社が賃借し、同社の関係会社がクラブの営業を行っていたが、営業不振により、平成22年1月下旬に営業を停止し、今後の営業を継続するか検討を行っていた。当時、R社は、仮に○階部分の賃貸借契約を終了した場合に、J社から敷金の返還が受けられるかを同社に確認したところ、敷金を返還する資金はないとの回答を受けた。

(ロ) R社は、平成22年10月28日、本件不動産の収益執行管理人に対し本件競売建物の○階部分からの退去に関する確約書を提出し、○階部分から退去した。当該確約書には、「e市f町○−○所在のSビル○階部分の賃借人であるR社は、平成22年10月28日までに室内の什器備品類を搬出し、○階部分を明け渡しいたします。なお、残置動産類については、いかように処分されても異議はありません。所有権を放棄いたします。」との記載がある。

チ 請求人は、平成23年10月17日に、Tとの間で、本件競売建物の○階部分を平成23年10月17日から平成25年12月31日まで貸し付ける内装設備付店舗賃貸借契約書を取り交わし、当該○階部分を本件内部造作が施設されたままで賃貸した。当該内装設備付店舗賃貸借契約書によると、賃貸借契約の終了に際して、当該賃貸借開始時の本件内部造作が施設された状態への原状回復義務が賃借人に付されていた。

リ 本件不動産の収益執行管理人は、平成23年2月15日付「Sビル地下○階の使用について(通知)」と題する書面により、J社に対し、本件競売建物の地下○階駐車場部分に残置された机、ロッカー、衣類その他の動産類を早急に搬出するよう督促を行った。なお、当該収益執行管理人が当該動産類を処分又は移動した事実は認められない。

ヌ 本件K評価書が上記1の(4)のヘの(ト)のAで採用した2件の建設事例のうちの1件については、鉄骨造の建物の建設事例を採用しているため、純工事費の単価の算出において、鉄骨工事に係る44,622円/平方メートルが含まれている。

ル 本件不動産の固定資産(土地)評価証明書における平成23年度価格は、○○○○円であり、固定資産(家屋)評価証明書における平成23年度価格は、○○○○円である。
 なお、本件土地の平成23年度価格は、通常であれば平成20年1月1日を評価日とした平成21基準年度の価格となるところ、本件土地に関しては、地価が下落していると認められる地域に該当していたことから、平成22年7月1日を評価日とした評価換えが行われており、平成21基準年度の価格に0.XXXの修正率が乗じられた後の価格となっている。また、本件競売建物の平成23年度価格は、平成21年1月1日を評価日とした評価が行われており、建物に関しては、特別に大きな増築があったり、滅失があったときのみ評価換えが行われることとされている。

ヲ J社の元取締役等の答述について

(イ) 平成19年5月31日から平成20年12月9日までの間のJ社の取締役であり、同日から平成25年5月31日までの間の同社の監査役であったUは、平成26年9月8日に、当審判所に対し、要旨次のとおり答述した。

A 本件競売建物の用途はスケルトン貸し(その階の全部又は適宜に区分された区画について内部造作や間仕切り等をしないで行う賃貸借をいう。)である。

B ○階部分の賃借人は、本件競売が行われる前に退去していた。退去したのは、本件不動産の収益執行管理人が本件競売建物の賃貸管理を行っている期間中であった。J社の資金繰りが悪く、敷金を返せない状況であったため、当該賃借人が本件不動産の収益執行管理人に相談し、本件内部造作の権利を放棄して賃貸借契約に基づくスケルトンへの原状回復工事を行わない代わりに敷金の返還も受けないということで合意し、その内容をJ社が追認したのだと思う。覚書のような書類が作成されていた。したがって、本件競売時には本件内部造作が残されたままであったが、賃借人がその所有権を放棄していたので、本件競売建物の一部になっていた。

C 内装は、ビル所有者にとっては何の価値もないもので、入るテナントによって決まるのであって、どんなに良い資材を使用していても、入るテナントにとって使えるものでなければ何の価値もない。一般的に内装が残されたままテナントが退去した場合には、通常であれば、J社が解体工事をしてスケルトンに戻してから新たなテナントを探すことになる。

(ロ) J社の従業員のVは、平成26年9月8日に、当審判所に対し、要旨次のとおり答述した。
 本件競売建物に固着しているものは本件競売建物の一部であると認識している。本件ディスプレイ設備は、本件競売建物の一部で看板と一緒の感覚であり、本件アクリル壁も、そういうデザインのビルなので、当然本件競売建物の一部だと認識していた。モップ等の動産があったとすれば、それは管理会社のものであり、駐車場にあった動産類はJ社で撤去したはずである。

(ハ) 上記(イ)及び(ロ)の答述を行ったいずれの者についても、現在、請求人との間に利害関係はなく、また、いずれも自己の経験に基づいた具体的な答述をしていることに加え、これらの答述の一部は、上記トの(ロ)の確約書や上記リの書面の記載内容と整合していることからすれば、信用性が高いものと認められる。
 したがって、上記(イ)及び(ロ)の答述のとおりの事実を認めることができる。

(2) 法令解釈

イ 法人税法施行令第54条第1項第1号は、購入した減価償却資産の取得価額は、当該資産の購入の代価(引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税その他当該資産の購入のために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)及び当該資産を事業の用に供するために直接要した費用の額の合計額とする旨規定しているところ、土地と建物等を一括して購入した場合の取得価額については、売買契約書等によりそれらの購入代価等が明らかな場合には、通常、その購入代価等が取得価額となるが、それが明らかでない場合には、租税負担の公平ないし実質主義の観点から、租税法の基本原則に合致する合理的な方法によって土地と建物等の取得価額を区分する必要があるものと解される。

ロ 税法上、建物について明確に定義した規定は存在しないが、一般的な概念として、建物とは、土地に定着して建設された建造物で、四囲を柱によって構成され、隔壁、屋根により雨露をしのぐ構造を持ち、人を収容し又は物を蔵置する等の機能を有するものをいうと解される。
 また、建物は、建物の基礎、柱、壁、梁、階段、窓及び床等のいわゆる建物本体に加えて、その建物にふさわしい従物を施設され一体として使用されるものであり、一般的な概念として、建物には、その従物である畳、襖、戸及び障子等その他建物本体と一体不可分の内部造作が含まれるものと解される。
 そして、上記1の(3)のロのとおり、法人税法施行令第13条第1号が建物附属設備について、暖冷房設備、照明設備、通風設備、昇降機その他建物に附属する設備である旨規定していることからすると、建物附属設備とは、建物に固着された設備のうち、建物本体と一体不可分の内部造作に該当しないもので、その建物の効用増加又は維持管理等において特定の独立した機能を有するものをいうと解される。

ハ 民法第370条は、抵当権は、抵当地の上に存する建物並びに設定行為に別段の定めがある場合及び同法第424条の規定により債権者が債務者の行為を取り消すことができる場合を除き、抵当不動産に付加して一体となっている物(以下「付加一体物」という。)に及ぶ旨規定している。すなわち、付加一体物は、抵当権が実行された場合において、原則的に、競売の対象となった抵当不動産とともに落札者に譲渡されることになる。この場合の付加一体物は、抵当権の設定当事者にあっては、取引上、合理的と認められるような予期に沿うような範囲に及ぶと解することが相当であり、また、第三者にあっては、登記で公示されていなくても抵当権の効力を及ぼすべく企図したものであることが予想されるものである必要があると解される。

(3) 検討

請求人が、本件競売によって取得した本件競売建物には、上記1の(4)のロの(ハ)のとおり、本件建物附属設備のほかに、本件アクリル壁、本件ディスプレイ設備、本件内部造作及びその他の動産類が設置等されていたことから、本件落札金額である○○○○円によってどのような資産を取得したかとともに、当該取得した資産の対価である本件落札金額についての各資産の取得価額に区分すべき金額を、以下において検討する。

イ 請求人が本件競売に伴って取得した各資産について

本件建物附属設備、本件アクリル壁、本件ディスプレイ設備、本件内部造作及びその他の動産類が本件競売によって取得したものであるか否かについては、これらの資産が本件根抵当権の実行としての本件競売に伴って取得したものであることも考慮しなければならないところ、上記(1)のロのとおり、本件根抵当権の登記には、民法第370条ただし書に規定する第三者に対抗できる別段の定めは登記されておらず、また、同法第424条の詐害行為取消権が適用された事実も認められないことから、本件根抵当権の実行は、上記(2)のハのとおり、本件根抵当権の対象となっている本件競売建物の付加一体物に及ぶものであり、この点も踏まえれば、請求人が本件落札金額によって取得した資産は次のとおりとなる。

(イ) 本件建物附属設備
 本件建物附属設備については、本件競売建物に固着した設備であり、本件競売建物の付加一体物であるといえることから、本件競売によって、請求人が取得したものと認められる。

(ロ) 本件アクリル壁
 本件アクリル壁については、本件競売建物の壁面に固着して、本件競売建物の壁面を保護しているものと認められ、本件競売建物の付加一体物といえることから、本件競売によって、請求人が取得したものと認められる。

(ハ) 本件ディスプレイ設備
 本件ディスプレイ設備については、本件競売建物に固着されているものの、その機能は、LEDディスプレイに画像等を表示させ、広告、宣伝等に使用するものであって、建物自体の機能とは異なり、建物に固着させた看板や広告塔などと同様に本件競売建物本体とは別個の資産というべきものであることから、抵当不動産である本件競売建物の付加一体物であるといえる場合において、本件競売によって、本件競売建物とともに落札者である請求人が取得したものということができるものである。
 そうすると、本件ディスプレイ設備が本件競売建物の付加一体物であったというためには、上記(2)のハのとおり、本件根抵当権の設定当事者にあっては、本件ディスプレイ設備が競売の対象となる付加一体物とされることについて、予期に沿うような範囲のものであるか、また、請求人のような競売の入札者にあっては、登記で公示されていなくても本件ディスプレイ設備に抵当権の効力を及ぼすべく企図したものであることが予想されるものであることを要するものである。そして、本件ディスプレイ設備については、上記(1)のヘの(イ)のとおり、本件競売建物の新築工事の設計段階から上記(ロ)の本件アクリル壁の透明部分に本件ディスプレイ設備の設置が予定されていたこと、上記(1)のイのとおり、本件競売建物は平成○年○月○日に新築されているが、同(1)のロのとおり、本件根抵当権はその翌月である同年○月○日に設定され、本件ディスプレイ設備を本件根抵当権の設定対象から除外する旨の特段の登記はされていないこと、同(1)のヲの(ロ)のとおり、本件根抵当権の設定当事者であるJ社の従業員のVが本件ディスプレイ設備は本件競売建物の一部である旨答述していることに加え、本件ディスプレイ設備は本件競売建物の正面の外壁に取り付けられており第三者にもその存在が認識されやすく、実際、落札者である請求人も本件ディスプレイ設備を資産として会計処理していたことからすると、本件根抵当権の設定当事者、請求人及びその他の入札者が本件競売に当たり、本件ディスプレイ設備に本件根抵当権の効力が及ぶことを認識ないし予期していたことが認められる。
 したがって、本件ディスプレイ設備については、本件競売建物の付加一体物として抵当権の効力が及んでいたものというべきであり、本件競売によって、請求人が取得したものと認めるのが相当である。

(ニ) 本件内部造作
 本件内部造作は、本件競売建物の○階部分の内部に施設されたものであり、建物の付加一体物といえることから、本件競売によって、請求人が取得したものと認められる。

(ホ) その他の動産類
 その他の動産類については、本件K評価書及び本件競売評価書において採り上げているものはなく、本件競売の対象として本件根抵当権の効力が及ぶ付加一体物と認めるに足りる証拠等もないことから、本件競売に伴って取得はしているものの、本件競売によって、請求人が取得しているとは認められない。

(ヘ) 小括
 以上のことからすると、請求人は、本件競売によって本件競売の対象物件である本件土地及び本件競売建物とともに、本件競売建物の付加一体物として本件建物附属設備、本件アクリル壁、本件ディスプレイ設備及び本件内部造作をそれぞれ取得したものと認められる。

ロ 本件落札金額の区分方法について

一括して購入した土地及び建物等の取得価額については、上記(2)のイのとおり、売買契約書等によりそれらの購入代価等が明らかな場合には、通常、その購入代価等が取得価額となるが、それが明らかでない場合には、合理的な方法によってそれらの取得価額を区分する必要がある。本件不動産については、本件競売によって一括取得したものであり、各資産の購入代価が明らかではないことから、合理的な方法によってそれらの取得価額を区分する必要がある。
 そして、土地と建物等の取得価額を区分する方法として、売買の場合を例に取ると、1それぞれの資産の売買価額を直接算出する方法、2一方の資産の売買価額を算出して売買総額からその一方の資産の売買価額を差し引いた残額を他方の資産の売買価額として算出する方法、3何らかの価額比により算出したそれぞれの資産の価額比で売買総額をあん分してそれぞれの資産の売買価額を算出する方法(以下「あん分法」という。)等の方法があると考えられるところ、競売によって各資産の譲渡価額が区分されることなく一括で譲渡される場合においては、その譲渡価額は競売という特別の事情によって定まり、競売における物件の落札に当たっては、対象となる物件に係る権利関係や物件に係る瑕疵などの確認が困難な点や落札が短期間に行われる点など特殊な事情があり、その価格は通常の第三者間の売買等における取引価格に比して低い価格となることが通例であることから、当該各資産の価額比によるあん分法は、競売によって一体として譲渡される取引の実態に合致し、最も合理的であると解される。したがって、本件落札金額の区分方法については、本件競売によって取得した各資産の価額比によるあん分法を用いることが合理的である。

ハ あん分法を採用する際に用いる価額比について

(イ) 請求人は、上記2の(2)のイのとおり、本件落札金額を不動産鑑定士の鑑定評価による土地と建物の評価額による比率により区分することが客観的であり、かつ、合理的であり、本件K評価書に記載された本件土地及び本件競売建物の評価額の比率によりあん分すべき旨主張するところ、確かに、鑑定評価による価額を用いたあん分法も土地と建物等の取得価額を区分する方法として、一応の合理性が認められる方法である。
 しかしながら、本件K評価書における評価額は、次のとおり、必ずしも合理性のある算出価額とはなっていないものと認められる。

A 上記1の(4)のヘの(ト)のAのとおり、純工事費(単価)の算定上、財団法人建設物価調査会が発行する「建物実例データ集 改訂版 建物の鑑定評価必携」に掲載された本件競売建物と構造・用途・仕様等の類似する建物の建設事例に係る実際建設費(見積実例資料)に基づく査定を行っているところ、上記(1)のヌのとおり、本件競売建物が鉄筋コンクリート造であるのに対して、これと異なる構造である鉄骨造の建物が選定されていること。

B 本件競売建物の建築に当たって、上記(1)のホのとおり、本件工事請負契約書等に記載された新築請負代金の合計額は630,000,000円であり、また、本件競売評価書にあっては、同(1)のニの(ハ)のとおり、本件競売建物の積算価格の基礎とされた価格が経過年数約○年等を加味された上で○○○○円とされているところ、本件K評価書の本件競売建物の評価額である1,220,000,000円は、本件競売建物の新築請負代金の合計額の約2倍、本件競売評価書の積算価格の基礎とされた価格の約X.X倍に相当する額の評価がされていること。

(ロ) 原処分庁は、上記2の(1)のハのとおり、土地と建物の固定資産税評価額の比率により区分することが合理的である旨主張するところ、固定資産税評価額は、総務大臣の告示による固定資産評価基準に基づき、土地の場合は路線価と同様に地価公示価格や売買実例等を基に評価され、家屋の場合は再建築価額に基づいて評価されているから、土地及び家屋の時価を反映していると考えられる上、土地と家屋の価額の算出機関及び算出時期が同一であるから、土地及び家屋の固定資産税評価額はいずれも同一時期の時価を反映しているものと考えられ、合理的であると認められる。

(ハ) これに対し、請求人は、上記2の(2)のロのとおり、固定資産税評価額を用いる方法が、鑑定評価による価額を用いる方法に比べてより合理的な算出方法であるとは認められない理由として、13年ごとに見直しが行われる、2本件内部造作が含まれない、3東日本大震災前の評価である、4算出機関の「評価額の修正」等が発生し、正確性に欠ける旨主張する。
 しかしながら、請求人のこれらの主張について検討すると、次のとおりである。

A 上記1の主張については、固定資産税評価額は3年ごとに見直しが行われるものであるとしても、本件のように時点修正が行われる限りにおいて、3年ごとに見直しが行われるという事実のみをもって、直ちに固定資産税評価額を用いる方法が鑑定評価による価額を用いる方法に比べ合理的な算出方法ではないということはできない。

B 上記2の主張については、内部造作を含めた家屋を対象として固定資産税評価額が評価されており、本件内部造作についても本件競売建物に係る家屋の固定資産税評価額に含まれていないといえないところ、仮に、本件内部造作が評価対象にされていなかったとしても、そのことのみをもって本件K評価書による価額が固定資産税評価額より客観的で合理的であるとまではいえず、土地と建物等の価額の客観的なバランスという観点からは、なお本件競売建物に係る家屋の固定資産税評価額が合理的であるというべきである。

C 上記3の主張については、固定資産税評価額に相当する額は、その評価の時点が東日本大震災前の時点ではあったとしても、いずれも同一時期の時価を反映し、均衡があり、合理的に算出されたものであり、これらの金額に基づき算出された比率に合理性があると認められるところ、仮に、東日本大震災により影響を受けるとしても、土地及び建物の双方に及ぶものといえる中、請求人からは、その後に発生した東日本大震災等により、本件土地及び本件競売建物の価額の比率が当該震災以前と大きく異なったというような特段の事情を客観的に認めるに足りる証拠の提出はなく、また、請求人が当審判所に提出した本件K評価書には、上記1の(4)のヘの(ホ)及び(ヘ)のとおり、この地震による県内店舗ビルへの影響は限定的であった旨が記載されているほか、震災前後の平成23年1月1日から同年○月○日の時点修正変動率は「月率△0.XX%」として過去2年の月率の変動率よりも下落割合が低くなっている記載があることからすれば、本件K評価書においても請求人が主張するような東日本大震災等の影響によって土地の価格が下落を重ねていたという事実は認められない。

D 上記4の主張については、請求人が当審判所に対して提出した平成24年8月28日付の総務省発表の「固定資産税及び都市計画税に係る税額修正の状況調査結果」と題する報道資料によると、税額修正のあった人数が納税義務者数に占める割合は、土地及び家屋のいずれも平均で0.2%である旨の記載があるところ、当該報道資料は本件土地及び本件競売建物に係る固定資産税評価額に修正があったことを示したものではなく、また、そのような事実があったことを認めるに足りる証拠等もないことから、当該報道資料をもって請求人が主張する鑑定評価による価額が固定資産税評価額より合理的であることを証することにはならない。

(ニ) 上記(イ)ないし(ハ)のとおり、請求人が主張する本件K評価書における土地及び建物の評価額による比率によって本件落札金額を区分する方法よりも、固定資産税評価額による土地及び家屋の評価額の比率によって区分する方法の方が合理性があると認められるから、本件においては、土地及び家屋の固定資産税評価額による評価額の比率によって本件落札金額を区分すべきである。また、本件K評価書における評価額は、必ずしも合理性のある算出価額とはなっていないものと認められることから、本件K評価書における土地と建物の評価額の比率によるべき旨の請求人の主張を採用することはできない。

(ホ) 上記(ニ)のとおり、本件においては、土地及び家屋の固定資産税評価額による評価額の比率によって本件落札金額を区分すべきであるが、本件競売建物の落札金額には、本件競売建物の本体(以下「本件建物」という。)と付加一体物として取得された本件建物附属設備、本件アクリル壁、本件ディスプレイ設備及び本件内部造作の対価が含まれており、これらを踏まえた具体的な価額比は、次のとおりである。

A 固定資産評価基準第2章第1節七《建築設備の評価》には、家屋の所有者が所有する電気設備、ガス設備、給水設備、排水設備、衛生設備、冷暖房設備、空調設備、防災設備、運搬設備、清掃設備等の建築設備で、家屋に取り付けられ、家屋と構造上一体となって、家屋の効用を高めるものについては、家屋に含めて評価するものとする旨規定されているところ、建物附属設備が、上記(2)のロのとおり、建物に固着された設備であり、その建物の効用増加又は維持管理等において特定の独立した機能を有するものであることから、その効用等や家屋と構造上一体となっている点からすると、建物附属設備は固定資産評価基準の家屋の評価に含まれていると解される。
 したがって、本件建物附属設備は、本件競売建物に係る家屋の固定資産税評価額に含めて評価されていると解するのが相当である。
 また、本件アクリル壁については、上記イの(ロ)のとおり、本件競売建物の壁面に固着して、本件競売建物の壁面を保護しているものであり、さらに、本件内部造作は、同イの(ニ)のとおり、本件競売建物の○階部分の内部に施設されたものであることから、本件建物の一部を構成するものと認められ、家屋の評価に含まれているものと解される(以下、本件建物、本件建物附属設備、本件アクリル壁及び本件内部造作を併せて「本件家屋対象資産」という。)。

B そして、本件ディスプレイ設備については、家屋の所有者が所有する電気設備、ガス設備、給水設備、排水設備、衛生設備、冷暖房設備、空調設備、防災設備、運搬設備、清掃設備等の建築設備に該当するものとはいえず、本件競売建物に係る家屋の固定資産税評価額に含まれていないと認められるところ、上記(1)のヘの(ロ)のとおり、J社における工事代金が判明していることから固定資産評価基準に基づき比較的容易に固定資産税評価額に相当する額を求めることができる。

C したがって、本件落札金額の区分にあん分法を用いるに当たって、本件競売によって取得した各資産の価額比は、本件土地及び本件家屋対象資産の各固定資産税評価額並びに本件ディスプレイ設備の固定資産税評価額に相当する額によることが相当であると認められる。

ニ 本件競売によって取得した各資産の取得価額について

(イ) 上記(1)のルのとおり、本件土地の固定資産評価に係る平成23年度価格は、○○○○円であるが、当該価格の評価日が平成22年7月1日であることから平成23年1月1日までの時点修正を行う必要があるところ、同(1)のニの(ハ)のとおり、本件競売評価書では、平成22年7月1日から平成22年12月29日の評価日までの時点修正を行うための推定変動率を98%として計算しており、当該数値が特に不適当であると認めるに足りる証拠等はなく、時点修正の期間も近似していることから、当該数値に基づき時点修正を行ったところ、本件土地の平成23年1月1日時点における時点修正後の固定資産税評価額に相当する額は、○○○○円となる。

(ロ) また、上記(1)のルのとおり、本件家屋対象資産の固定資産評価に係る平成23年度価格は、○○○○円であるところ、本件家屋対象資産については、平成23年度価格の評価日である平成21年1月1日以降増築や滅失の事実がなく、当該評価日時点の評価額がそのまま平成23年1月1日時点の固定資産税評価額となることから、本件家屋対象資産の平成23年1月1日時点の固定資産税評価額に相当する額は○○○○円となる。

(ハ) そして、上記(1)のヘの(ロ)のとおり、本件ディスプレイ設備の工事代金が65,730,000円であり、その取得時期が平成○年の本件建物の新築時であることから、本件ディスプレイ設備についても、上記(イ)及び(ロ)の本件土地及び本件家屋対象資産の固定資産税評価額の評価時点である平成23年1月1日時点に合わせて固定資産税評価額に相当する額を算出すると、以下のとおりとなる。

A 本件ディスプレイ設備は、その用途及び構造等から耐用年数省令別表第一の「器具及び備品」の「5 看板及び広告器具」の「その他のもの」の「主として金属製のもの」に該当し、耐用年数は「10年」が適用されるものと認められる。

B 平成○年中に取得した耐用年数10年の固定資産について、固定資産評価基準第3章第1節一《償却資産の評価の基本》ないし三《前年前に取得された償却資産の評価》に準じて平成23年1月1日現在の固定資産税評価額に相当する額を算出すると○○○○円となる。

(ニ) したがって、本件土地、本件家屋対象資産及び本件ディスプレイ設備の時点修正後の平成23年度固定資産税評価額に相当する額は、それぞれ○○○○円、○○○○円及び○○○○円となり、そのうち本件家屋対象資産について消費税等相当額を考慮すると、本件家屋対象資産が○○○○円となる。そして、それぞれの評価額に相当する額がこれらの合計額1,724,804,409円に占める割合に基づいて本件落札金額をあん分すると、本件落札金額は、別表5の「本件落札金額のあん分後の各取得価額」欄のとおり、本件土地が○○○○円、本件家屋対象資産が○○○○円、本件ディスプレイ設備が○○○○円と区分され、それぞれの金額が各資産の取得価額となる。

(ホ) 固定資産税評価額を用いたあん分法によって本件落札金額を区分すると各資産の取得価額は、上記(ニ)のとおりとなるところ、当該区分した資産のうち本件家屋対象資産は、本件建物、本件建物附属設備、本件アクリル壁及び本件内部造作から構成されており、本件アクリル壁及び本件内部造作は本件建物の一部を構成するものであることから、本件建物に含めて計算することが相当であるため、本件家屋対象資産の取得価額を以下の方法によって本件建物(本件アクリル壁及び本件内部造作を含む。以下同じ。)と本件建物附属設備に区分する。

A 本件競売においては、当審判所の調査の結果によっても、H地方裁判所における閲覧可能な書類に本件家屋対象資産を本件建物と本件建物附属設備とに合理的に区分するための参考となるような内訳等に関する証拠等はなく、その内訳等は明らかとはならなかった。

B しかしながら、本件においては、上記(1)のホのとおり、本件建物の建築主であるJ社及び施工業者であるN社が締結した本件工事請負契約書等から本件建物及び本件建物附属設備のそれぞれの工事費の割合が算出でき、当該工事費の割合は本件建物及び本件建物附属設備の実際の工事費の割合であることからすれば、本件工事請負契約書等を用いて本件家屋対象資産を区分することが他の方法に比して最も合理的であると認められる。
 なお、当該工事費の割合は、新築時におけるものであるから、新築時の平成○年○月から請求人が取得した日の前日が属する平成23年○月までの減耗損を見込んでその割合を補正することによって合理性を確保することとした。

(ヘ) 本件工事請負契約書等に基づく各工事の工事費(各工事について共通経費等配賦後のものであり、外構工事費及び解体工事費を除く。)については、別表5の「本件建物に係る新築工事時の工事費の内訳」欄の各欄のとおりであるところ、竣工時から時の経過によりその価値が減少していると認められることから、その建物及び建物附属設備として、これらの金額に基づき本件建物の新築時から請求人が本件建物を取得した時まで法人税法施行令第48条第1項第1号イ(1)に掲げる旧定額法により償却を行ったものとした場合に計算される未償却残高の額を算出すると、同表の「左欄の工事費の未償却残高相当額」欄の各欄のとおりとなる。そして、本件家屋対象資産に対応する落札金額である○○○○円(消費税等相当額を含む。)を当該未償却残高相当額の比率によりあん分すると、本件建物及び本件建物附属設備の各設備の取得価額は、同表の「本件競売によって取得した各資産の取得価額」欄の各欄のとおりとなる。
 なお、原処分庁は、本件法人税更正処分において、本件ディスプレイ設備に係る固定資産税評価額に相当する額を考慮せずにあん分計算をしているが、上記ハの(ホ)のBのとおり、本件ディスプレイ設備については、本件家屋対象資産の固定資産税評価額に含まれていないと認められることから、原処分庁の計算は誤りである。

ホ その他の請求人の主張について

請求人は、上記2の(2)のイのとおり、各資産の取得価額を計算するに当たり、本件K評価書において評価の対象とされていない本件ディスプレイ設備の取得価額を本件落札金額から先取りして計算すべき旨主張する。
 しかしながら、競売における物件の落札という特殊な事情においては、その価格は通常の第三者間の売買等における取引価格に比して低い価格となることが通例であり、そのような事情の影響を受けた取引価格を個別に算定することが困難であると認められるところ、本件ディスプレイ設備の価格を本件落札金額から先に差し引いて各取得価額を計算することとした場合には、競売による価格への影響の全てが本件ディスプレイ設備以外の取得資産に反映されることとなり、合理的な価格の区分とはならないことから、請求人の主張を採用することはできない。

(4) 審判所認定額について

当審判所の調査の結果によると、請求人が本件競売によって一括取得した本件土地、本件建物、本件建物附属設備及び本件ディスプレイ設備の取得価額は、上記(3)のニの(ニ)及び(ヘ)のとおりであるところ、減価償却資産である本件建物、本件建物附属設備及び本件ディスプレイ設備について、それらの各取得価額に基づき本件事業年度の償却限度額を以下のとおり算出した。

イ 適用する耐用年数について

(イ) 本件建物について
 請求人及び原処分庁は、本件建物の法定耐用年数を「39年」としているが、本件建物は、上記1の(4)のロの(イ)のとおり、鉄筋コンクリート造の建物であり、上記(1)のヲの(イ)のAのとおり、スケルトン貸しによってテナントに対し賃貸し、そのテナントは、原則として元のスケルトンの状態に復して退去することとなっていることから、耐用年数省令別表第一の「建物」の「鉄筋鉄骨コンクリート造又は鉄筋コンクリート造のもの」の「事務所用又は美術館用のもの及び左記以外のもの」の左記以外のものに該当し、その法定耐用年数は「50年」となる。

(ロ) 本件建物附属設備について
 本件建物附属設備は、別表5のとおりに区分されるところ、これらの資産は、耐用年数省令別表第一の「建物附属設備」では、1「電気設備工事」が「電気設備(照明設備を含む。)」の「その他のもの」に、2「給排水設備工事」が「給排水又は衛生設備及びガス設備」に、3「空調設備工事」が「冷房、暖房、通風又はボイラー設備」の「その他のもの」にそれぞれ該当し、いずれの法定耐用年数も「15年」となり、4「エレベーター工事」が「昇降機設備」の「エレベーター」に該当し、その法定耐用年数は「17年」となる。

(ハ) 本件ディスプレイ設備について
 本件ディスプレイ設備は、上記(3)のニの(ハ)のAとおり、耐用年数省令別表第一の「器具及び備品」の「5 看板及び広告器具」の「その他のもの」の「主として金属製のもの」に該当し、その法定耐用年数は「10年」となる。

(ニ) 請求人は、請求人が算出した本件建物、本件建物附属設備及び本件ディスプレイ設備の耐用年数について、簡便法による中古耐用年数を適用しているところ、当審判所においてもこれらの資産の耐用年数省令第3条第1項第1号に規定する使用可能期間の年数を見積もることが困難であると認められることから、これらの資産について簡便法による中古耐用年数を適用して計算した。
 なお、本件建物、本件建物附属設備及び本件ディスプレイ設備について、本件建物が新築された平成○年○月○日から本件競売によって請求人が取得した平成23年○月○日までの期間である○か月に基づいて経過年数を○年2か月とし、簡便法による中古耐用年数を計算すると次表のとおりとなる。

法定耐用年数 簡便法による中古耐用年数
10年 10年−○年2月+(○年2月×20%)≒○年
15年 15年−○年2月+(○年2月×20%)≒○年
17年 17年−○年2月+(○年2月×20%)≒○年
50年 50年−○年2月+(○年2月×20%)≒○年

ロ 償却限度額等の算定について

本件建物、本件建物附属設備及び本件ディスプレイ設備について、当審判所が認定した上記イの(ニ)の耐用年数に基づき請求人が選択している定額法又は定率法により本件事業年度の償却限度額を計算すると、別表6の「償却限度額」欄のとおりの各金額となり、その合計額は○○○○円となる。請求人は、本件事業年度において別表3の「本件法人税確定申告」の「減価償却費計上額」欄のとおり165,882,000円を損金経理し、損金の額に算入したと認められるから、当該金額のうち上記の償却限度額○○○○円を超える○○○○円が減価償却超過額となる。

(5) 本件法人税更正処分について

上記(4)のロのとおり、本件事業年度の減価償却超過額は○○○○円であり、これに基づき本件事業年度の法人税の所得金額及び納付すべき法人税額を計算すると、本件事業年度の法人税の所得金額は○○○○円、納付すべき法人税額は○○○○円となり、これらの金額は本件法人税更正処分の金額をいずれも上回るから、本件法人税更正処分は適法である。

(6) 本件消費税等更正処分について

消費税法上、土地及び建物等の各金額を区分せず一括して譲り受け、課税仕入れに係る支払対価の額が明らかでない本件のような場合は、合理的な方法により課税仕入れに係る支払対価の額を算出することが必要となり、その基準は、法人税と消費税との間で異なるものではないと解するのが相当であり、本件建物、本件建物附属設備及び本件ディスプレイ設備に区分された各取得価額を構成する各金額は、上記(3)のニの(ニ)及び(ヘ)のとおりであり、これらの取得価額は、課税仕入れに係る支払対価の額に該当することとなることから、これに基づき、納付すべき消費税等の額を計算すると別表7の「審判所認定額」欄のとおりとなり、本件消費税等更正処分の額を下回ることとなるから、本件消費税等更正処分はその一部を別紙の「取消額等計算書」のとおり取り消すことが相当である。

(7) 過少申告加算税の各賦課決定処分について

イ 本件法人税更正処分は上記(5)のとおり適法であり、また、同処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が同処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項及び第2項の規定によりされた本件法人税賦課決定処分は適法である。

ロ 本件消費税等更正処分は、上記(6)のとおり、その一部を取り消すべきであるが、同処分のうち取り消す部分以外の部分について、同処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が同処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められない。
 したがって、本件消費税等賦課決定処分の一部を別紙の「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。

(8) その他

原処分のその他の部分については、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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