(平成27年8月4日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、審査請求人P2(以下「請求人P2」という。)及び同P1(以下「請求人P1」といい、これら2名を併せて「請求人ら」という。)が、相続税の修正申告書を提出したところ、原処分庁が、その修正申告に基づき過少申告加算税の各賦課決定処分を行い、併せて、請求人らに対して、被相続人がアメリカ合衆国(以下「米国」という。)f州にジョイント・テナンシーの形態で所有していた不動産及び同州に所在する会社の被相続人名義の株式の各価額を相続税の課税価格に算入するとともに、被相続人の請求人P2からの借入金は債務として控除することはできないなどとして、相続税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分を行ったのに対し、請求人らが、1当該修正申告書の提出は、調査があったことにより更正があるべきことを予知してされたものでないこと、2原処分庁所属の調査担当者の調査手続には違法事由があること、3当該不動産及び当該株式については、それらの取得資金はいずれも請求人P2が負担したものであるから、それらの当該各価額は、相続税の課税価格に算入されるべきものではないこと、4当該借入金は、公正証書等によって証明されその存在が明らかであるから、債務として控除すべきであることを理由に、これらの各処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 請求人らは、平成21年12月○日(以下「本件相続開始日」という。)に死亡したP3(以下「本件被相続人」という。)の相続(以下「本件相続」という。)に係る相続税(以下「本件相続税」という。)について、別表1の「期限内申告」欄のとおり記載した相続税の申告書(以下「本件期限内申告書」という。)を法定申告期限までに共同でK税務署長(当時、請求人らは、本件被相続人の死亡の時における住所はg市h町○−○であるとしていた。)に提出して、相続税の期限内申告(以下「本件期限内申告」という。)をした。

ロ 請求人P1は、平成23年1月14日、本件期限内申告において、相続税法(平成27年法律第9号による改正前のもの。以下同じ。)第18条《相続税額の加算》第1項に規定する相続税額の加算を行っていなかったとして、別表1の「第1次修正申告」欄のとおり記載した相続税の修正申告書(以下「本件第1次修正申告書」という。)をK税務署長に提出して、相続税の修正申告をした。

ハ K税務署長は、同税務署長所属の調査担当者(以下「本件K署担当者」という。)の調査に基づき、平成24年6月6日付で、請求人らに対し、相続税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分をした。

ニ 請求人らは、平成24年8月6日、上記ハの各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分に不服があるとして、それぞれ異議申立てをした。

ホ K税務署長は、本件被相続人の死亡の時における住所はd市e町○−○であったことが判明したことに伴い、平成25年1月31日付で、上記ハの各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分について、いずれもその全部を取り消し、上記ニの異議申立てに係る異議審理庁は、同年2月22日付で、いずれも却下の異議決定をした。

ヘ 次いで、K税務署長は、本件相続税に係る納税地を所轄する税務署長は原処分庁であるとして、平成25年3月6日付で、原処分庁に対し、本件期限内申告書及び本件第1次修正申告書並びにこれらの添付書類一式を送付した。

ト 請求人らは、平成25年10月7日、別表1の「第2次修正申告」欄のとおり記載した相続税の修正申告書(以下「本件第2次修正申告書」という。)を共同で原処分庁に提出して、相続税の修正申告(以下「本件第2次修正申告」という。)をした。

チ 原処分庁は、平成25年10月9日付J資特第○号及び同第○号で、請求人らに対し、上記トの本件第2次修正申告による納付すべき税額を基礎として、別表1の「賦課決定処分」欄のとおり、過少申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件第2次修正申告に係る各賦課決定処分」という。)をした。

リ 原処分庁は、平成25年10月9日付J資特第○号及び同第○号で、請求人らに対し、別表1の「更正処分等」欄のとおり、相続税の各更正処分(以下「本件各更正処分」という。)及び過少申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」という。)をした。

ヌ 請求人らは、平成25年11月28日、別表1の「第1次異議申立て」欄のとおり、上記リの本件各更正処分及び本件各賦課決定処分に不服があるとして、それぞれ異議申立てをしたところ、異議審理庁は、平成26年2月27日付で、いずれも棄却の異議決定をした。
 また、請求人らは、平成25年12月9日、別表1の「第2次異議申立て」欄のとおり、上記チの本件第2次修正申告に係る各賦課決定処分に不服があるとして、それぞれ異議申立てをしたところ、異議審理庁は、平成26年2月27日付で、いずれも棄却の異議決定をした。

ル 原処分庁は、平成26年3月4日付で、請求人P1に対し、別表1の「変更決定処分」欄のとおり、上記リの本件各賦課決定処分のうち請求人P1に対する過少申告加算税につき、変更決定処分(以下「本件変更決定処分」という。)をした。

ヲ 請求人らは、平成26年3月26日、異議決定を経た後の本件各更正処分、本件各賦課決定処分及び本件第2次修正申告に係る各賦課決定処分にいずれも不服があるとして、審査請求をした。
 なお、請求人らは、平成26年5月2日、請求人P1を総代として選任し、その旨を届け出た。

ワ 請求人P1は、上記ルの本件変更決定処分に対し、国税通則法(平成26年法律第10号による改正前のものをいい、以下「通則法」という。)第77条《不服申立期間》第1項の規定による不服申立期間内に異議申立てをしなかった。
 そこで、請求人P1に対する本件変更決定処分について、あわせ審理する。

(3) 関係法令の要旨

関係法令の要旨は、別紙4のとおりである。

(4) 基礎事実

以下の事実は、請求人らと原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。

イ 本件相続に係る共同相続人について
 本件相続に係る共同相続人は、本件被相続人の長女である請求人P2、同長男であるP4、同養子である請求人P1(請求人P2の子)及び同養子であるP5(請求人P2の子)の4名である。

ロ 本件相続に係る遺産分割協議について
 本件相続に係る共同相続人は、平成22年10月13日、本件相続に係る遺産分割協議を成立させ、同日付で作成された遺産分割協議書(以下「本件遺産分割協議書」という。)には、要旨次のとおり記載されている。なお、下記ニの(イ)及び(ロ)で述べる米国f州に所在する不動産及び同州に所在する会社の株式については、いずれも本件遺産分割協議書に記載されていない。

(イ) 請求人P2からの借入金○○○○円及び同借入金○○○○円の各債務については、請求人P1が取得する。

(ロ) 本件遺産分割協議書に記載されていない資産及び債務が発見された場合は、その全てを請求人P1が相続する。

ハ 本件相続税に係る請求人らの申告内容等について

(イ) 債務控除について

A 請求人らは、本件期限内申告において、1198X年(昭和○年)9月○日付で米国f州で公証された、振出人を本件被相続人とし、受取人を請求人P2とするPROMISSORY NOTE(約束手形)15枚(別表2のとおり。以下「本件各約束手形」という。)に記載された元本の金額合計○○○○円(以下「本件各約束手形借入金」という。)及び2債権者を請求人P2とし、債務者を本件被相続人とする、昭和○年6月○日付でL公証人役場において作成された昭和○年第○号による債務弁済契約公正証書(以下「本件公正証書」という。)に記載された金額○○○○円(以下「本件公正証書借入金」といい、本件各約束手形借入金と併せて「本件各債務」という。)の合計金額○○○○円から、本件各債務に対する返済金の金額36,394,167円を差し引いた○○○○円(上記ロの(イ)の本件遺産分割協議書に記載された各借入金の合計金額と同額。)を、本件被相続人の請求人P2からの借入金であるとして本件相続税の課税価格から債務として控除した。

B 請求人らは、本件第2次修正申告において、本件各債務の金額○○○○円から、本件各債務に対する返済金の金額63,124,167円(36,394,167円(上記A)+26,730,000円)を差し引いた○○○○円を、本件被相続人の請求人P2からの借入金であるとして本件相続税の課税価格から債務として控除した(なお、本審査請求において、請求人らが本件各債務として控除すべきであるとして主張する金額は○○○○円である。)。

(ロ) 税務代理について

A 本件期限内申告書には、請求人らが、P6税理士(以下「本件税理士」という。)を代理人と定め、本件相続税について、税理士法(平成26年法律第10号による改正前のもの。以下同じ。)第2条《税理士の業務》第1項第1号に規定する税務代理を委任する旨記載された税理士法第30条《税務代理の権限の明示》に規定する書面(以下「税務代理権限証書」という。)がそれぞれ添付されている。

B 本件第1次修正申告書には、請求人P1が、本件税理士を代理人と定め、本件相続税について、税理士法第2条第1項第1号に規定する税務代理を委任する旨記載された税務代理権限証書が添付されている。本件第2次修正申告書には、請求人らが、本件税理士を代理人と定め、本件相続税について、税理士法第2条第1項第1号に規定する税務代理を委任する旨記載された税務代理権限証書がそれぞれ添付されている。

ニ 本件各更正処分の内容について
 原処分庁所属の調査担当者(以下「本件調査担当者」という。)は、本件相続税に係る調査(以下「本件調査」という。)を行い、その調査の結果に基づいて、原処分庁は、上記(2)のリのとおり、本件各更正処分をした。原処分庁が本件相続税の課税価格の計算に誤りがあると指摘した主な財産及び債務の内容は、次のとおりである。

(イ) 米国f州に所在する不動産について
 本件被相続人及び請求人P2がジョイント・テナンシーの形態で所有していた米国のf州i市○−○に所在する土地及び建物(以下「本件f不動産」という。)について、本件f不動産に係る鑑定評価書(P7(M社)により作成されたもの。)に記載された鑑定評価額(○○○○米国ドル)を円換算した評価額に、本件被相続人の持分に相当する割合2分の1を乗じて計算した価額○○○○円を本件相続税の請求人P2の課税価格に加算した。

(ロ) 米国f州に所在する会社の株式について
 N社(以下「本件会社」という。)は、1975年(昭和50年)に設立された米国f州に所在する会社であるところ、本件会社の株式(発行済株式総数50,000株)について、本件会社の株式を純資産価額方式により評価した1株当たりの価額○○○○円に、本件被相続人が有していた当該発行済株式総数の52%に相当する株数26,000株(以下「本件株式」という。)を乗じて計算した価額○○○○円を本件相続税の請求人P1の課税価格に加算した。

(ハ) 本件各債務について
 本件各債務の一部の金額○○○○円(上記ハの(イ)のBのとおり。)について、本件相続開始日においてその存在が明らかでなく、債務控除の対象となる債務であるとは認められないとして、同金額を本件相続税の請求人P1の課税価格に加算した。

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2 争点

(1) 争点1

本件調査に係る手続は、通則法第74条の9《納税義務者に対する調査の事前通知等》及び同法第74条の11《調査の終了の際の手続》の各規定に違反しているか否か。

(2) 争点2

本件被相続人がジョイント・テナンシーの形態で所有する本件f不動産は、本件相続税の課税価格に算入されるべきものか否か。

(3) 争点3

本件株式は、本件相続税の課税価格に算入されるべきものか否か。

(4) 争点4

本件各債務は、本件被相続人の債務として、本件相続税の課税価格に算入すべき財産の価額から控除することができるか否か。

(5) 争点5

本件第2次修正申告書の提出は、通則法第65条《過少申告加算税》第5項に規定する「調査があったことにより…更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当するか否か。

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3 争点1(本件調査に係る手続は、通則法第74条の9及び同法第74条の11の各規定に違反しているか否か。)について

(1) 主張

請求人ら 原処分庁
 以下のとおり、本件調査に係る手続は、通則法第74条の9及び同法第74条の11の各規定に違反している。  以下のとおり、本件調査に係る手続はいずれも適法である。
イ 通則法第74条の9の規定について
 本件調査担当者は、平成25年9月24日、本件税理士の事務所を訪れ、本件調査に及ぶ質問並びに発言をした。これらの行為は、国税職員による納税義務がある者等への接触・対面であり、通則法第74条の3《当該職員の相続税等に関する調査等に係る質問検査権》に規定する質問検査等を行ったのであるから、通則法第74条の9第1項に規定する事前通知が必要であるところ、原処分庁は、同項に規定する納税義務者への事前通知を行っていない。
 そして、原処分庁は、本件調査担当者が本件税理士の事務所を訪れ質問等をした行為は、実地の調査以外の調査であり、実地の調査以外の調査を行う場合には、通則法第74条の9第1項に規定する事前通知は不要である旨主張するが、1国税通則法第7章の2(国税の調査)関係通達の制定について(平成24年9月12日付課総5−9ほか国税庁長官通達。)3−4《「実地の調査」の意義》では、「実地の調査」とは、「場所」に「臨場」して「質問検査等」を行うものをいう旨、2同1−4《質問検査等の相手方となる者の範囲》では、質問検査等は、代理人にも及ぶ旨、3同1−6《「物件の提示又は提出」の意義》では、単に質問するだけでなく、物件の提示や提出も質問検査等に含まれる旨、それぞれ定めていることから、本件調査担当者が、本件税理士の事務所において本件税理士に対し、本件調査に及ぶ質問等をした行為は、質問検査等をして実地の調査を行ったこととなることは明らかであり、通則法第74条の9第1項に規定する事前通知が必要である。
 したがって、事前通知をしなかった本件調査に係る手続は、通則法第74条の9の規定に違反している。
イ 通則法第74条の9の規定について
 本件調査担当者は、本件税理士の事務所に出向き、1平成25年9月24日、机上での検討結果と申告内容との相違点について説明を行い、2同月30日、実地の調査以外の調査によるものである旨を宣言し、本件調査に係る調査結果の内容の説明を行い、3同年10月7日、本件第2次修正申告の内容と同年9月30日に説明した調査結果の内容と異なる点について、更正処分等を行う旨の説明を行っており、これらの税務署内における机上での検討や本件税理士の事務所への臨場は、いずれも更正処分等を目的とする行為であり、これらの全てが一連の調査に該当する。
 そして、通則法第74条の9第1項に規定する「実地の調査」は、当該職員が納税義務者に対して行うものをいい、その「納税義務者」には、税務代理人が含まれないことは文理解釈上明らかであるから、本件調査担当者が、請求人らの同席がない中、本件税理士といかなるやり取りを行ったとしても(仮に、本件調査担当者が本件税理士に対して行った行為が質問検査等を行ったものと評価され得るとしても)、本件調査担当者が平成25年9月24日、同月30日及び同年10月7日に本件税理士の事務所に出向いて行った行為は、いずれも通則法第74条の9第1項に規定する「納税義務者」に対する「実地の調査」には該当しない。
 したがって、通則法第74条の9第1項に規定する事前通知をする必要はなく、事前通知をしなかったことは適法である。
ロ 通則法第74条の11の規定について
 調査の終了の際には、通則法第74条の11に規定する手続を要するところ、本件調査においては、同条第2項に規定する調査結果の内容の説明は、本件税理士に対しては行われたが、納税義務者(請求人ら)本人には行われておらず、また、本件税理士は、納税義務者(請求人ら)から、納税義務者(請求人ら)本人に代わって調査結果の内容の説明を受けることに関する同意も受けていないから、請求人らは、通則法第74条の11第2項に規定する調査結果の内容の説明を受けていないことになる。
 また、原処分庁は、税務代理人がいる場合、実地の調査以外の調査に係る調査結果の内容の説明に関しては、通則法第74条の11第5項に準じて取り扱われるところ、本件調査は実地の調査以外の調査であるから、税務代理人である本件税理士に調査結果の内容を説明すれば手続は適法に処理された旨主張する。しかしながら、そもそも通則法第74条の11第5項には「納税義務者の同意がある場合には」と規定されているところ、請求人P2は、本件税理士への調査結果の内容の説明を同意していない上、請求人P1については、原処分庁の主張では平成25年9月30日頃に電話にて本件税理士への調査結果の内容の説明の同意を請求人P1から得たとしているが、請求人P1は、そのような電話を受けた覚えはない。
 よって、本件調査担当者は、請求人ら本人に対して、本件調査に係る調査結果の内容の説明をしていないことから、通則法第74条の11の規定に違反している。
ロ 通則法第74条の11の規定について
 通則法第74条の11第5項の規定は、主として「実地の調査」の場面を念頭に置いて、適切に調査終了時の手続を確保する一方で、納税義務者の事務負担にも配慮する観点から、納税義務者の同意がある場合には、納税義務者本人への説明等については、その税務代理人への説明等に代替えすることができるという趣旨によるものであり、このことを踏まえれば、「実地の調査以外の調査」において、これと異なる取扱いをすべき特段の理由もないことから、「実地の調査以外の調査」により質問検査等を行った納税義務者について税務代理人がある場合における通則法第74条の11第2項に規定する調査結果の内容の説明は、同条第5項に準じて取り扱うこととしても差し支えないと解される。
 そして、本件調査担当者は、本件調査に係る調査結果の内容の説明を本件税理士に行っているところ、当該調査結果の内容の説明を本件税理士に行うことについて請求人らからそれぞれ同意を得ているから、本件相続税に係る「実地の調査以外の調査」に基づく調査結果の内容の説明を本件税理士に行ったことは適法である。

(2) 判断

イ 法令解釈

(イ) 更正処分に係る調査について
 通則法第24条《更正》は、税務署長は、納税申告書に記載された課税標準等又は税額等がその調査したところと異なるときは、その調査により、当該申告書に係る課税標準等又は税額等を更正する旨規定しているところ、同条に規定する「調査」により課税処分をしたといえない場合、課税処分は取り消されることとなるが、調査手続の一部に重大な違法があったとしても、課税処分の基礎となる証拠資料の収集等の手続に重大な違法がないのであれば、調査による課税処分が行われているのであるから、当該課税処分は取り消されないと解されている。

(ロ) 通則法第74条の9に規定する事前通知について
 通則法第74条の9第1項は、税務署長は、税務署の当該職員(以下「当該職員」という。)に納税義務者に対し実地の調査において質問、財産に関する帳簿書類その他の物件の検査又は当該物件の提示若しくは提出の要求(以下「質問検査等」という。)を行わせる場合には、あらかじめ、当該納税義務者(当該納税義務者について税務代理人がある場合には、当該税務代理人を含む。)に対し、所定の事項を通知する旨、また、同条第3項は、相続税の場合、「納税義務者」とは、通則法第74条の3第1項第1号イに掲げる納税義務がある者等であり、「税務代理人」とは、税理士法第30条の書面を提出している税理士等である旨、それぞれ規定している。
 そして、通則法第74条の9第1項の規定において、事前に通知する相手方となる「納税義務者」については、同項の括弧書で税務代理人がある場合には当該税務代理人を含む旨規定しているのに対し、事前に通知することが必要となる質問検査等の対象となる「納税義務者」については、当該括弧書がされていないことから、「税務代理人」が当該「納税義務者」に含まれないことは文理上明らかである。
 このように事前に通知することが必要となる質問検査等の対象となる者は、納税義務者本人に限られているので、納税義務者の申告内容について、納税義務者本人に質問検査等を行わない場合には、通則法第74条の9第1項に規定する事前通知をする必要はないこととなる。

(ハ) 通則法第74条の11に規定する調査結果の内容の説明について
 通則法第74条の11第2項は、調査の結果、更正決定等をすべきと認める場合には、当該職員は、納税義務者に対し、その調査結果の内容を説明するものとする旨規定し、同条第5項は、実地の調査により質問検査等を行った納税義務者について税務代理人がある場合において、当該納税義務者の同意がある場合には、当該納税義務者への調査結果の内容の説明に代えて、当該税務代理人への調査結果の内容の説明を行うことができる旨規定している。
 この点、同条第2項は、課税庁の説明責任を強化する観点から規定されたものであるが、同条第5項の規定は、特に実地の調査においては、納税義務者が調査結果の内容の説明を直接受ける必要がないという特段の意思表示をした場合にのみ、課税庁が当該納税義務者に代えて当該納税義務者の税務代理人に対し調査結果の内容の説明を行えば、当該納税義務者に対する課税庁の説明責任は解除されることとしたものであると解されている。そして、これらの規定の趣旨を踏まえれば、実地の調査以外の調査が行われた場合は、実地の調査が行われた場合と比較して、課税庁が説明責任を果たす必要性も相対的に低いのであるから、納税義務者の同意があれば、税務代理人に対し調査結果の内容の説明を行えば足りるものと解される。

ロ 認定事実
 請求人ら提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。

(イ) 請求人P2は、平成25年7月24日、米国に住所を移転させたほか、その前後において、米国に関する出帰国の記録があった。また、本件調査担当者は、本件調査において、請求人P2の連絡先を確認できていなかった。

(ロ) 本件調査担当者は、平成25年9月24日、本件税理士の事務所に赴き、本件税理士に対して、同日までの本件調査に係る状況について説明をした。この際、本件税理士は、本件調査担当者に対して、修正申告書を提出したい旨、また、当該修正申告書の提出を自主扱いにしてほしい旨申し立てた。

(ハ) 本件調査担当者は、平成25年9月30日、本件税理士の事務所に赴き、本件税理士に対して、本件調査の結果に基づき、請求人らの本件相続税の申告内容についての誤りを指摘した上で、修正申告が必要である旨説明をした。

(ニ) 本件調査担当者は、平成25年9月30日、請求人P1に対し、本件調査に係る調査結果の内容を説明するために電話連絡したところ、請求人P1は、本件相続税については全て本件税理士に一任しているので、本件税理士に説明すればよい旨回答した。また、本件調査担当者は、請求人P1に対し、請求人P2にも同様の連絡を取りたいので、翌日、J税務署に電話をしてほしい旨を請求人P2に伝えるよう依頼した。

(ホ) 本件税理士は、平成25年10月1日、本件調査担当者に電話し、請求人P2からファクシミリを受信し、その記載内容は、上記(ニ)の請求人P1からの電話連絡に対し、請求人P2に代わって本件税理士からJ税務署に電話するよう依頼するものであった旨を申し出た。

(ヘ) 本件税理士は、平成25年10月3日、本件調査担当者に電話し、上記(ホ)のファクシミリの内容を踏まえ、請求人P2から全権の委任を受けたとの認識を持っている旨伝えたところ、本件調査担当者は、本件税理士に対して、本件調査に係る調査結果に基づく請求人らそれぞれの本件相続税の課税価格、納付税額及び加算税額等の説明をした。

ハ 検討

(イ) 通則法第74条の9に規定する事前通知について
 上記イの(ロ)のとおり、税務署長が当該職員に行わせる実地の調査において、事前に通知することが必要となる質問検査等の対象となる者は納税義務者本人に限られている。
 本件においては、上記ロの(ロ)及び(ハ)のとおり、本件調査担当者は、数回、本件税理士の事務所において、本件税理士に対して、本件調査に係る状況や調査結果の内容を説明するなどしているものの、請求人ら本人に対し質問検査等を行った事実は認められない。
 そうすると、納税義務者(請求人ら)に対して質問検査等を行っていないのであるから、本件調査に係る事前通知は不要であり、本件調査における事前通知に係る手続は、通則法第74条の9の規定に違反していないというべきである。

(ロ) 通則法第74条の11に規定する調査結果の内容の説明について
 上記(1)の「請求人ら」欄のとおり、請求人らが主張する内容は、本件調査担当者が、調査結果の内容の説明を納税義務者(請求人ら)に対し行わなかった、また、調査結果の内容の説明を税務代理人(本件税理士)が受けることに関し納税義務者(請求人ら)から同意を受けていなかったという、課税処分の基礎となる調査とは別の調査手続の一部の違反について主張するものであり、上記イの(イ)の課税処分が取り消されることとなり得る事情を主張するものではない。
 よって、請求人らの主張する事実関係について判断するまでもなく、本件各更正処分を取り消すべき理由はないというべきである。
 なお、念のため、調査結果の内容の説明に係る手続が履行されているか検討すると、上記ロの(ニ)のとおり、本件調査担当者は、請求人P1から、納税義務者(請求人P1)の代わりに税務代理人(本件税理士)に対し調査結果の内容の説明をすることについて同意を得ていたことが認められる。また、本件調査担当者は、請求人P2からは、納税義務者(請求人P2)の代わりに税務代理人(本件税理士)に対し調査結果の内容の説明をすることについて同意を得ていたとは認められないが、上記ロの(イ)のとおり、請求人P2は米国に出帰国していたなどの事情があり、本件調査担当者が直接連絡をすることができなかったことから、上記ロの(ニ)及び(ホ)のとおり、請求人P1を通じて請求人P2から本件調査担当者に連絡をするよう求めたにもかかわらず、請求人P2はこれを知りながら連絡をしなかったのであって、本件調査担当者が、請求人P2に直接調査結果の内容の説明をすることも、調査結果の内容の説明を税務代理人(本件税理士)に対してすることの意思確認をすることも不可能であったと認められる。以上の事実関係の下で、上記ロの(ヘ)のとおり、本件調査担当者は税務代理人(本件税理士)に対して調査結果の内容の説明をしているのであるから、納税義務者(請求人ら)に対する課税庁の説明責任は果たされており、本件調査における調査結果の内容の説明に係る手続が通則法第74条の11の規定に違反しているとは認められない。

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4 争点2(本件被相続人がジョイント・テナンシーの形態で所有する本件f不動産は、本件相続税の課税価格に算入されるべきものか否か。)について

(1) 主張

原処分庁 請求人ら
 以下のとおり、本件被相続人がジョイント・テナンシーの形態で所有する本件f不動産は、本件相続税の課税価格に算入されるべきものである。  以下のとおり、本件被相続人がジョイント・テナンシーの形態で所有する本件f不動産は、本件相続税の課税価格に算入されるべきものではない。
イ ジョイント・テナンシーは、日本に存在しない財産の所有形態であるところ、このような財産の課税関係については、日本の私法上の法律関係との等価性・同質性の有無の観点からその法的性質を評価し、等価性・同質性を有するものであれば、それに対する日本の課税上の取扱いと同様に課税がなされるべきである。
 そして、ジョイント・テナンシーの形態による不動産の取得は、自己の死亡を原因として、生存合有者に合有不動産の権利を無償で移転するという契約であり、これは、実質的には民法第554条《死因贈与》に規定する贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与(死因贈与)による契約であると認められるから、ジョイント・テナンシーの合有者の死亡に基づき他の生存合有者が受ける権利は、相続税法第1条の3《相続税の納税義務者》第1号に規定する遺贈(死因贈与)により取得した財産に該当するものと解するのが相当である。
 そうすると、本件f不動産は、昭和○年7月に本件被相続人と請求人P2とがジョイント・テナンシーの形態で取得したものであり、本件相続開始日の時点において、本件f不動産の2分の1に相当する部分は、本件被相続人に帰属する財産であると認められ、当該財産は、請求人P2が本件被相続人から遺贈(死因贈与)により取得したものと認められるから、本件相続税の課税価格に算入されるべきものである。
イ ジョイント・テナンシーは、欧米での財産所有権の一形態で、日本には存在しない概念であり、また、ジョイント・テナンシーは、合有財産であって、共有財産ではない。
 原処分庁は、ジョイント・テナンシーにより本件被相続人が本件f不動産について2分の1の持分を有し、請求人P2は死因贈与により本件被相続人の本件f不動産に係る持分を取得したとしているが、税法上、このような財産が相続税の課税価格に算入されるとする根拠はない。
ロ なお、請求人らが主張する請求人P2の秘書の手帳のメモは、本件f不動産の購入代金を請求人P2が全額支払っていることを証明するものとは認められず、また、修繕費等の請求は、当該修繕等に係る契約者に対して行われるものであって、必ずしも所有者に対して行われるものとはいえないことから、請求人らの主張には理由がない。 ロ また、本件f不動産は、請求人P2が購入したものであり、請求人P2がその代金の全てを支払ったことは、請求人P2の秘書の手帳のメモから確認できることに加え、当該不動産に係る修繕費等が請求人P2宛に請求されていることからすれば、当該不動産は請求人P2の財産であり、本件被相続人の財産ではない。

(2) 判断

イ 法令解釈
 相続税及び贈与税の課税財産は、相続、遺贈又は贈与により取得した財産であるが、相続税法は、このほかに、法律的には相続、遺贈又は贈与により取得した財産でなくても、その取得した事実によって実質的にこれらと同様の経済的効果が生ずる場合には、税負担の公平の見地から、その取得した財産を相続、遺贈又は贈与により取得したものとみなして、相続税又は贈与税の課税財産とする旨規定している。
 このみなす取得財産については、相続税法において個別的に規定されているが、相続税法第9条は、これらの個別的に規定する場合を除くほか、対価を支払わないで利益を受けた場合においては、当該利益を受けた時において、当該利益を受けた者が、当該利益を受けた時における当該利益の価額に相当する金額を当該利益を受けさせた者から贈与により取得したものとみなす旨規定している。
 そして、相続税法第9条に規定する「利益を受けた場合」とは、利益を受けた者の財産(積極財産)の増加又は債務(消極財産)の減少があった場合等をいうと解されている。

ロ 認定事実
 請求人ら提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。

(イ) ジョイント・テナンシーの概要
 ジョイント・テナンシーとは、二人以上の者が同一の譲受け又は譲与により、同一の不動産につき取得する財産権をいい、この所有形態による不動産所有者(合有者)のことをジョイント・テナンツという。
 ジョイント・テナンシーが成立するためには、その創設の際に、1全てのジョイント・テナンツが同時に所有権を取得すること、2全てのジョイント・テナンツが同一の証書によって所有権を取得すること、3各自の持分内容が均等であること、及び4各自が財産権全体を占有していることの条件を充足していなければならないこととされており、加えて、ジョイント・テナンシーを創設するには、書面でその旨を明確に定めることが必要であるとされている。
 また、ジョイント・テナンシーは、ジョイント・テナンツの一人が死亡した場合には、相続されることはなく、その権利は生存者への権利の帰属(以下「サバイバー・シップ」という。)の原則に基づいて、残りのジョイント・テナンツの権利に吸収されることとなる。

(ロ) 本件におけるDEED(譲渡証書)の概要
 198X年(昭和○年)7月○日に登録されたDEED(以下「本件譲渡証書」という。)には、Grantor(譲渡人)をP8、P9、P10、P11 and P12, P13とし、Grantee(譲受人)を本件被相続人及び請求人P2として、要旨次のとおり記載されている。
 なお、本件譲渡証書の右上に「○ JUL ○ A8:01 ○○」と印字されていることから、本件譲渡証書は、198X年(昭和○年)7月○日午前8時1分、登録番号を○○として、米国f州の不動産譲渡証書事務所に登録されたものと認められる。

A 譲渡の対象となる資産は、「Lot ○○、File Plan ○○」の不動産25,918平方フィート(本件f不動産。上記1の(4)のニの(イ)参照。)である(本件譲渡証書の「1のD」及び本件譲渡証書に添付された「EXHIBIT"A"」の「FIRST」)。

B 譲受人は、ジョイント・テナンツとして資産の移転を受ける(本件譲渡証書の「3 TENANCY」)。

C 譲渡人と譲受人は、198X年(昭和○年)6月○日に合意している(本件譲渡証書の「10 ACCEPTANCE AND AGREEMENT」)。

(ハ) 本件におけるDEED TO TRUST(信託証書)の概要
 20XX年(平成○年)2月○日に登録された委託者を請求人P2とするDEED TO TRUST(以下「本件信託証書」という。)に添付された「Exhibit"A"」には、要旨次のとおり記載されている。

A 198X年(昭和○年)7月○日付のLimited Warranty Deedにより、本件被相続人及び請求人P2をジョイント・テナンツとして、不動産が譲渡されたことが、米国f州の不動産譲渡証書事務所の公文書○○の○ページに登録されている。

B 本件被相続人は、2009年(平成21年)12月○日、日本国kにおいて死亡した。

(ニ) 本件f不動産の本件相続開始日の直前における所有形態について
 ジョイント・テナンシーが成立するためには、上記(イ)の1ないし4の要件を充足している必要があるところ、上記(ロ)のとおり、本件被相続人と請求人P2は、本件f不動産を本件譲渡証書により同時に所有権を取得していると認められ、本件譲渡証書に本件被相続人と請求人P2が本件f不動産をジョイント・テナンツとして取得する旨が記載されていることから、本件f不動産は、本件被相続人と請求人P2とがジョイント・テナンシーの形態で取得したものと認められる。
 また、上記(ハ)のとおり、本件信託証書に記載されているLimited Warranty Deedの登録されているページ番号と本件譲渡証書に印字されている登録番号が一致していることから、本件信託証書でいうLimited Warranty Deedは、本件譲渡証書であると認められ、本件信託証書にジョイント・テナンツである本件被相続人が死亡していると記載されていることからとすると、本件相続開始日の直前において、本件f不動産は、本件被相続人と請求人P2がジョイント・テナンツとして、ジョイント・テナンシーの形態により所有していたものと認められる。

ハ 当てはめ
 上記ロの(ニ)のとおり、本件被相続人及び請求人P2がジョイント・テナンシーの形態で所有している本件f不動産について、ジョイント・テナンツの一人である本件被相続人が死亡したことにより、その権利は、相続されることなく、サバイバー・シップの原則に基づいて、残りのジョイント・テナンツである請求人P2の権利に吸収されたと認められる。
 そして、サバイバー・シップの原則による権利の増加について、請求人P2の権利が増加した時に対価の授受があった事実は認められない(そもそも制度的に対価の授受はない。)から、請求人P2(生存者)へのサバイバー・シップの原則による権利の増加は、「対価を支払わないで利益を受けた場合」に該当すると認められる。そして、上記イのとおり、相続税法第9条は、「対価を支払わないで利益を受けた場合」においては、当該利益を受けた者が当該利益を受けさせた者から贈与により取得したものとみなす旨規定しているから、請求人P2(生存者)へのサバイバー・シップの原則による権利の増加は、請求人P2が本件被相続人から贈与により取得したものとみなされることになる。
 また、相続税法第19条《相続開始前3年以内に贈与があった場合の相続税額》第1項は、相続又は遺贈により財産を取得した者が当該相続の開始前3年以内に当該相続に係る被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合においては、その者については、当該贈与により取得した財産の価額を相続税の課税価格に加算した価額を相続税の課税価格とみなす旨規定している。
 したがって、本件被相続人がジョイント・テナンシーの形態で所有する本件f不動産については、請求人P2が、本件被相続人が死亡したことにより、本件被相続人から贈与により取得したものとみなされるから、本件f不動産の価額の2分の1に相当する部分の金額については、本件相続税の請求人P2の課税価格に加算すべきものと認められる。
 そこで、当審判所において、本件f不動産の価額の2分の1に相当する部分の金額を算定したところ、上記1の(4)のニの(イ)の原処分庁算定の価額(○○○○円)と同額になる。

ニ 請求人らの主張について

(イ) 請求人らは、ジョイント・テナンシーの形態により本件被相続人が本件f不動産について有する持分を相続税の課税価格に算入する根拠がない旨主張する。
 しかしながら、上記ハのとおり、請求人P2(生存者)へのサバイバー・シップの原則による権利の増加は、相続税法第9条に規定する「対価を支払わないで利益を受けた場合」に該当し、同法第19条第1項の規定により相続税の課税価格に加算すべきものと認められるから、請求人らの主張には理由がない。

(ロ) 請求人らは、本件f不動産の購入代金は全て請求人P2が支払ったものであり、本件f不動産に係る修繕費等が請求人P2に請求されていたことから、本件f不動産は、請求人P2の財産であり、本件被相続人の財産ではない旨主張する。
 しかしながら、仮に、本件f不動産の購入代金等の全てを請求人P2が支払ったとしても、上記ロの(ニ)のとおり、本件相続開始日の直前において、本件f不動産は、本件被相続人と請求人P2がジョイント・テナンツとして、ジョイント・テナンシーの形態により所有していたものと認められ、請求人P2が単独で所有していたものとは認められないから、請求人らの主張には理由がない。

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5 争点3(本件株式は、本件相続税の課税価格に算入されるべきものか否か。)について

(1) 主張

原処分庁 請求人ら
 米国の内国歳入庁に提出された本件会社の所得申告書には、本件被相続人及び請求人P2の議決権株式の割合は、それぞれ52%及び48%である旨記載されていることから、本件被相続人に帰属する本件会社の株式は、同株式の52%に相当する部分である。
 したがって、本件会社の52%に相当する株式(本件株式)を、本件相続税の課税価格に算入すべきである。
 本件会社は、本件被相続人が米国のE−2ビザを取得して米国f州に長期間滞在できるよう、昭和50年に設立したものであり、本件会社の設立に当たって、本件会社の社長を本件被相続人にし、本件会社の株式の発行済株式総数の52%の名義を本件被相続人としたが、本件会社の株式の払込金の全額を請求人P2が負担しており、本件会社の株式全部の真の所有者は、請求人P2である。
 したがって、本件株式は、本件相続税の課税価格に算入されるべきものではない。

(2) 判断

イ 認定事実
 請求人ら提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。

(イ) 本件会社が米国の内国歳入庁に提出した「Form1120 U.S.Corporation Income Tax Return 2008」(2008年(平成20年)4月1日から2009年(平成21年)3月31日までの期間の所得申告書。以下「本件会社2009年申告書」という。)の「Schedule K Other Information(see instructions)」には、議決権株式の所有割合は、本件被相続人が52%で請求人P2が48%である旨記載されている。

(ロ) 本件会社が米国の内国歳入庁に提出した「Form1120 U.S.Corporation Income Tax Return 2009」(2009年(平成21年)4月1日から2010年(平成22年)3月31日までの期間の所得申告書。以下「本件会社2010年申告書」という。)の「Certain Individuals and Estates Owning the Corporation's Voting Stock.」には、議決権株式の所有割合は、本件被相続人が52%で請求人P2が48%である旨記載されている。

ロ 検討
 上記イの(イ)及び(ロ)のとおり、本件会社2009年申告書及び本件会社2010年申告書には、それぞれ本件被相続人の本件会社の議決権株式の所有割合は52%である旨記載されており、上記の各申告書は、本件会社が公的機関に提出した書面であることからすると、その性質上、一般的に信用性が高いといえるから、他の合理的な反証がない限り、本件株式は、本件被相続人に帰属するものと認められる。
 これに対し、請求人らは、本件会社の設立に当たり、本件会社の株式の払込金の全額を請求人P2が負担した旨主張する。この点、株式の帰属を認定するに当たっては、誰が株式購入の原資を出捐したかという点も一つの重要な要素であると解されるが、請求人らは、上記主張に沿う証拠を何ら提出せず、当審判所の調査の結果によっても、同様の証拠は見当たらない。そのほかに、本件会社の株式の全部が請求人P2に帰属すると認めるに足りる証拠はない。
 以上のとおりであるから、本件株式は、本件被相続人に帰属する財産であると認められる。そうすると、本件株式は、本件相続税の課税価格に算入されるべきものであり、具体的には、本件遺産分割協議書に未記載の資産(上記1の(4)のロの(ロ)参照。)として、請求人P1の課税価格に算入されることとなる。
 そこで、当審判所において、本件株式の価額を算定したところ、上記1の(4)のニの(ロ)の原処分庁算定の価額(○○○○円)と同額になる。

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6 争点4(本件各債務は、本件被相続人の債務として、本件相続税の課税価格に算入すべき財産の価額から控除することができるか否か。)について

(1) 主張

原処分庁 請求人ら
 以下のとおり、本件各債務は、本件相続税の課税価格に算入すべき財産の価額から控除することはできない。  以下のとおり、本件各債務は、本件各約束手形及び本件公正証書といった書面から明らかなように、本件被相続人の債務として現に存するものであるから、本件相続税の課税価格に算入すべき財産の価額から控除すべきである。
イ 請求人P2は、本件K署担当者に対し、本件各債務の金額は、本件各約束手形借入金及び本件公正証書借入金の合計額である旨申述したにもかかわらず、本件各約束手形借入金と本件公正証書借入金とは同一のものである旨申述し直し、さらに、本件税理士は、本件各約束手形借入金と本件公正証書借入金とは別々のものである旨申述しており、本件各債務の貸付金額及びそれらの貸付けに関する書面の作成状況についてこのような申述の変遷があること自体が不自然であるなど、請求人P2の本件各債務の貸付けの事実に係る申述は直ちに信用できるものではない。
 また、請求人P2は、本件期限内申告書とともに、本件各債務の返済に関する書面を提出したところ、その書面には、工事費用等の支払など、事実と異なる内容が記載されている。この点、請求人P2は、同書面に記載した内容は誤りであり、実際に返済した金額を記載したものではない旨申述し、返済に関する当該書面の内容が事実と異なるものであることを自認する一方で、本件各債務は、平成5年から本件被相続人の年金が入金されている預金口座から返済を受けることとした旨申述していながら、当該返済の開始時期に係る申述が変遷しているなど、請求人P2の本件各債務の返済の事実に関する申述も直ちに信用することはできない。
イ 本件各約束手形及び本件公正証書は、債権者を請求人P2、債務者を本件被相続人とする、債権債務関係を証する書面であること及び本件各債務の一部の返済が行われていることからすれば、本件各債務の存在は明らかであり、本件各債務の合計額から当該返済額を差し引いた○○○○円(本件第2次修正申告書に記載した金額と同額。)が本件相続開始日における本件各債務の残高であるから、当該金額が、本件相続開始日における本件被相続人の債務である。
ロ そして、請求人らがその主張の前提とする本件各債務に係る当初の債権債務を証明する書面及び返済の事実それ自体が不確かなものといわざるを得ない。 ロ そして、本件各約束手形借入金には、本件被相続人が米国f州で使用する費用として貸し付けたもののほか、本件被相続人が同州に渡る前に日本で本件被相続人に貸し付けたものも含まれている。
 本件各約束手形は、本件被相続人が米国f州で保管していた借用書に基づいて、同州において作成したものであり、本件公正証書は、本件被相続人が日本で保管していた借用書に基づいて、日本においてまとめて作成したものである。
ハ 加えて、本件公正証書については、同証書の第1条に「昭和○年6月○日現在、債務者は債権者より借り受けた金○○○○円也の債務を負担することを承認」との記載はあるが、「金○○○○円也の債務」が、元々どのような金銭の授受なのか、返還の合意及び弁済期の合意がなされた債務であるのかについて、原処分庁の調査によっても明らかではなく、「承認」の基となる債務に関し貸付けの事実が認められない。 ハ 原処分庁は、平成24年9月14日に請求人P2が、本件K署担当者に対して、本件各約束手形借入金と本件公正証書借入金とは同一のものである旨申述したとしているが、請求人P2は、本件各債務に関する説明をした後に、同担当者が、米国において作成した本件各約束手形借入金と日本において作成した本件公正証書借入金とは同じものであると受け取ったように思ったので、その日のうちに、同担当者に対して、それら二つの債務は別のものである旨を念押ししたのである。
 請求人P2は、終始一貫して本件各債務それぞれの存在を主張しており、請求人P2の申述には変遷があり信用できないとする原処分庁の主張は誤りである。
ニ また、本件各約束手形については、本件各約束手形のうち、長いものでは、元本借入の日とされる日から7年10か月も経った昭和○年9月○日に、○○○○円を超える借入れの条件、利率等に関し合意をしたものであるところ、これに関する原始記録も不明であることからすると、本件各約束手形の存在をもって直ちにその記載内容による貸付けの事実があったものとは認められない。
ホ 以上によれば、本件各債務の成立自体が認められない。
ヘ 仮に、本件各債務の成立を認めることができたとしても、相続税法第14条の規定により、課税価格に算入すべき財産の価額から控除すべき債務は、確実と認められるものに限ることとされており、確実と認められる債務とは、債務の存在のみならず履行が確実と認められる債務を意味する(昭和57年9月30日広島高裁判決)ところ、本件各債務については、本件各債務の貸付け及び返済の各事実に係る請求人P2の各申述はいずれも直ちに信用できるものではないから、本件相続開始日の現況によって確実と認められる範囲の金額、すなわち「履行の確実」というべき債務の範囲が明らかでない。

(2) 判断

争点4の検討に当たっては、前提として、本件各債務の存否及びその内容が問題となるところ、当審判所は、本件各約束手形の作成時に本件各約束手形借入金が存在したことを認め、また、本件公正証書の記載に沿う債務の存在を認めるも、本件公正証書借入金には、本件各約束手形借入金が含まれていると認めるのが相当であると判断した。言い換えれば、本件公正証書作成時における本件各債務の内容は、本件公正証書借入金のみということになる。
 そして、これを踏まえ、本件相続開始日における本件各債務の金額(本件公正証書借入金の額から返済額を差し引いた額。)を、別表3の「債務控除額」欄6のとおり、○○○○円(○○○○円[同欄4]−26,730,000円[同欄5])であると認めた。その上で、当該債務の金額を本件相続税の課税価格に算入すべき財産の価額から控除することができると判断した。
 その理由は、以下のとおりである。

イ 認定事実
 請求人ら提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。

(イ) 本件各約束手形について

A 本件各約束手形は、上記1の(4)のハの(イ)のAの1のとおり、198X年(昭和○年)9月○日付で米国f州において公証されたものであるところ、本件各約束手形には、振出人(本件被相続人)が、受取人(請求人P2)の指図に対して支払うことを約するとともに、元本と利息の全額は、返済期日までに、kの受取人の住所地又は受取人あるいは権利者が書面にて指定したその他のこれに類する場所において支払う旨記載されており、借入日、元本の金額及び返済期日は、別表2のとおりである。
 また、本件各約束手形には、本件被相続人の署名押印及び請求人P2の署名があり、振出人及び受取人が公証人の面前にて、その書面に署名押印し、自らの自由な行動と意思に基づいてこれを行ったことを公証人が認証している。

B 本件被相続人が請求人P2宛に作成した、198X年(昭和○年)11月○日付の念書には、要旨次のとおり記載されている。

(A) 別紙(当該念書に係る別紙で、本件各約束手形の一覧表。)に基づく契約内容を一部変更する。

(B) 請求人P2の要望により、無利子とする。

(C) 元金は、返済期日にかかわらず、相続が発生した際、請求人P2の要望により日本国内の遺産をもって全額返済精算する。

(ロ) 本件公正証書について

A 本件公正証書は、上記1の(4)のハの(イ)のAの2のとおり、昭和○年6月○日付で作成されたものであるところ、本件公正証書は法定の方式で作成され、請求人P2及び本件被相続人の署名押印があり、債権者を請求人P2、債務者を本件被相続人として、要旨次のとおり記載されている。

(A) 昭和○年6月○日現在、債務者(本件被相続人)は、債権者(請求人P2)より借り受けた金○○○○円の債務を負担することを承認し、以下の条項に従い弁済することを約し、債権者はこれを承認した。

(B) 債務者は、次のaないしcの事項を履行することを約諾した。

a 元金は、昭和70年5月31日限り弁済すること。

b 元金を期限に弁済しないときは、損害を賠償すること。

c 上記bの場合には、期限の利益を失い、催告を要しないで直ちに元金を皆済すること。

B 本件被相続人が請求人P2宛に作成した、198X年(昭和○年)10月○日付の念書には、本件公正証書に基づく元金を、返済期日にかかわらず、相続が発生した際の遺産をもって全額返済精算する旨記載されている。

(ハ) 本件各債務に対する返済に関連する事項について

A 請求人P2が本件被相続人宛に作成した198X年(昭和○年)5月○日付の手紙には、本件被相続人の年金の入金口座であるQ銀行(現R銀行)○○支店の普通預金口座(以下「本件返済口座」という。)に係る預金通帳及び同口座の届出印鑑を受領し、翌年1月から本件返済口座より毎年1,000,000円の返済を受ける旨及び年が明けてから前年分の返済に係る領収証を発行する旨記載されている。

B 請求人P2が本件被相続人宛に作成した2通の各領収証の内容は、要旨次表のとおりであり、当該各領収証には、日米双方の公正証書に基づく貸金の返済金を本件返済口座より領収した旨記載されている。

順号 領収日付 金額(円) 摘要
1 1988年(昭和63年)9月8日 1,000,000 1987年分として
2 1994年(平成6年)1月23日 1,000,000 1993年分として

C 上記Bのほか、請求人P2が本件被相続人宛に作成した領収証の控15通には、領収日付が平成6年から平成20年までの各12月31日、金額が各1,000,000円と記されており、これらはいずれも領収証綴りに綴られている。なお、当該領収証の控のただし書には、日米双方の公正証書に基づく貸金の返済金である旨記載されている。

D 請求人P2が本件被相続人宛に作成した平成17年11月6日付の領収証の控には、領収金額が2,730,000円で、摘要として、S社に支払った立替分を日米公正証書に基づく貸金の返済金として領収する旨記載されている。

E 本件税理士は、本件K署担当者に対して、要旨次のとおり申述した。
 本件各債務に係る本件相続開始日までの返済額は、上記Aの昭和○年5月○日付で請求人P2が本件被相続人に宛てた手紙に翌年の1月から返済する旨記載されていることからすれば、昭和○年から平成○年までの24年間に毎年1,000,000円ずつ本件返済口座より返済した金額の合計額24,000,000円と請求人P2がS社へ支払うべき金額を本件被相続人が支払うことによって返済することとした2,730,000円(上記D)との合計額26,730,000円であった。

F 請求人らは、上記1の(4)のハの(イ)のAのとおり、本件期限内申告において、本件各債務の金額から、「P3からP2に返済金」と題する書面(以下「本件返済金書面」という。)に基づき本件各債務の返済に相当する金額36,394,167円を差し引いて、本件相続税の課税価格から控除する債務の金額を算定しているところ、本件返済金書面には、本件被相続人から請求人P2への返済に関し、平成17年8月26日から平成21年7月24日までの間における計20回の返済金の合計額が36,394,167円である旨記載されている。
 なお、請求人P2は、本件K署担当者に対して、本件返済金書面に記載した内容は誤りであり、実際に返済した金額を記載したものではない旨申述している。

G 本件返済金書面は、本件被相続人名義のT銀行○○支店の普通預金口座からの出金を参照して作成されたものと認められるところ、当該口座の平成17年9月7日の取引については、本件被相続人が所有していた土地の譲渡に係る仲介手数料(2,520,000円)及び測量費用(826,000円)として支払ったものであり、また、平成20年1月21日の取引については、本件被相続人が所有していた貸付事業用アパートの外装工事費用を支払ったものである。

(ニ) 本件各約束手形借入金の存否について
 本件各約束手形は、上記(イ)のAのとおり、本件被相続人の署名押印及び請求人P2の署名があり、公証人の認証を受けていることから、いずれも真正に成立したものと認められ、そうすると、特段の事情がない限り、本件各約束手形の記載内容に沿う手形貸付があったこと、すなわち、本件各約束手形の作成の時点で、本件各約束手形借入金が存在したことが認められる。そして、本件各約束手形の最後の借入日である昭和57年2月までの時点で、請求人らが相続税等の負担を免れるなどのための対策を講ずる必要に迫られる状況にあったことをうかがわせる事情はなく、そのほかに、本件被相続人及び請求人P2において、実際には本件被相続人において債務を負担しないにもかかわらず、あえて約束手形を作成するといった事情は見当たらないから、上記特段の事情は存しない。むしろ、上記(イ)のBのとおり、本件被相続人は、昭和○年11月○日付で、請求人P2に対し本件各約束手形の内容を一部変更する旨の念書を差し入れて、本件各約束手形の存在を再確認している。
 よって、本件各約束手形の作成の時点で、その記載内容に沿う本件各約束手形借入金が存在したと認められる。

(ホ) 本件公正証書借入金の存否について
 本件公正証書は、上記(ロ)のAのとおり、法定の方式で作成され、本件被相続人及び請求人P2の署名押印がなされているから、真正に成立したものと認められ、そうすると、特段の事情がない限り、本件公正証書に記載された内容に沿う債務の存在、具体的には、昭和○年6月○日現在、本件被相続人が請求人P2に対し○○○○円の債務を負担していたことが認められる。そして、本件公正証書が作成された昭和○年6月当時、本件被相続人及び請求人P2において、実際には債務が存在していないにもかかわらず、あえて公正証書を作成するといった事情は見当たらず、上記特段の事情が存しないことは、上記(ニ)と同様である。むしろ、上記(ロ)のBのとおり、本件被相続人は、昭和○年10月○日付で、請求人P2に対し本件公正証書の内容を一部変更する旨の念書を差し入れて、本件公正証書の存在を再確認している。
 よって、本件公正証書作成の時点で、その記載内容に沿う本件公正証書借入金が存在したと認められる。

(ヘ) 本件公正証書における債務の内容について
 もっとも、本件公正証書には、上記(ロ)のAのとおり、昭和○年6月○日現在の債務者(本件被相続人)は債権者(請求人P2)より借り受けた○○○○円の債務を負担することを承認する旨記載されているのみであり、一義的に債務の内容を確定することはできず、本件各約束手形借入金との関連性の有無も即断できないから、本件公正証書で承認された債務の内容について検討する。

A 本件公正証書には、上記(ロ)のAのとおり、抽象的に当時(昭和○年6月○日現在)の債務の数額のみが示されており、その額も○○○○円近くと低額とはいえないことをも併せれば、債務者(本件被相続人)と債権者(請求人P2)との間における当時の一切の債務に関する確認をしたものとみるのが文理解釈上自然である。

B また、本件各約束手形借入金(ただし、上記(イ)のBの念書があるため、元本部分のみ。)は、別表2のとおり、昭和49年11月から昭和57年2月までの間に合計○○○○円に積み上がり、本件公正証書に記載された○○○○円にかなり近い金額に達しており、加えて、本件公正証書に記載された「昭和○年6月○日現在」が本件各約束手形の作成時期と大きく離れているとまではいえないことからすると、本件公正証書において確認された金額には、本件各約束手形借入金を含むものとみるのが合理的であるといえる。

C 他方で、当審判所の調査の結果によっても、本件被相続人が別途金員を借り入れたことに見合う資産の増加や債務の減少は確認することができず、また、本件公正証書に記載された債務の発生原因等に係る請求人P2の答述及び申述についても、その内容は具体性に乏しく、借用書等の裏付けとなる証拠資料もなく、結局、本件各約束手形借入金以外には、本件公正証書が作成されるより前に具体的な債務等が成立ないし存在したことを裏付けるに足りる証拠は見当たらない。

D これらの点を併せると、本件公正証書において確認された債務の内容は、本件各約束手形借入金を含めたものと認めるのが相当である。

E なお、上記(ハ)のBないしDのとおり、請求人P2が本件被相続人宛に作成した各領収証等には、いずれも日米双方の公正証書に基づく貸金の返済金である旨記載されているところ、当該各領収証等に係る返済金が本件各約束手形借入金又は本件公正証書借入金のいずれに充当されたかは明らかでなく、当該文言以外に両者を区別していることをうかがわせる事情もない上、事実経過として米国での本件各約束手形の作成と日本での本件公正証書の作成があったこと、すなわち、本件被相続人が、本件各約束手形借入金を本件公正証書により確認したことを前提に「日米双方の公正証書」と記載したとみても不自然ではないから、この点は、上記Dの認定を妨げず、そのほかに、当該認定を覆すに足りる事情も見当たらない。

(ト) 本件各債務に対する返済額について

A 本件各債務に対する返済額について、上記1の(4)のハの(イ)のAのとおり、請求人らは、本件期限内申告において、本件返済金書面に記載された36,394,167円であるとしていた。しかし、上記(ハ)のFのとおり、請求人P2は、本件K署担当者に対して、本件返済金書面に記載した内容は誤りであり、実際に返済した金額を記載したものではない旨申述しているところ、現に、本件返済金書面の前提となったとみられる預金口座からの出金についてみると、その使途からして返済に充てられたとみるには疑問の残る部分がある上(上記(ハ)のG)、当審判所の調査の結果によっても、本件返済金書面に記載された金額については、その趣旨等を正確に把握できないから、本件各債務に対する返済金であるとは認められない。なお、請求人らは、本件第2次修正申告及び本審査請求において、本件各債務に対する返済金の金額を上記36,394,167円及び下記Bの26,730,000円の合計額であることを前提にしているが(上記1の(4)のハの(イ)のB参照。)、この点を踏まえても、上記判断は左右されない。

B 次に、上記(ハ)のEのとおり、本件税理士は、昭和○年から平成○年までの24年間に毎年1,000,000円ずつ本件返済口座から返済し、その合計額24,000,000円と請求人P2がS社に支払うべき金額を本件被相続人が支払うことによって返済することとした2,730,000円との合計額26,730,000円が本件各債務に対する返済金である旨申述するとともに、請求人らは、上記(ハ)のBのとおり、領収日付が昭和63年及び平成6年、また、同Cのとおり、領収日付が平成6年から平成20年までの間、年1,000,000円ずつ本件返済口座から返済した旨を証する各領収証等(上記(ハ)のB及びC)、並びにS社への立替払分を本件各債務の返済金として処理した際の領収証の控(上記(ハ)のD)を証拠として当審判所に提出している。そして、請求人らは、上記1の(4)のハの(イ)のBのとおり、本件第2次修正申告において、本件各債務から控除する返済額に、当該26,730,000円を加算したものであるとしている。
 本件税理士の上記(ハ)のEの申述は、上記の各領収証等からうかがえる事実関係と整合性があり、また、請求人らが本件第2次修正申告において本件各債務の金額から控除する返済額として加算した金額とも符合する上、これらを否定する証拠資料も認められないことから、本件各債務に対する返済額は26,730,000円が相当であると認められる。

(チ) 小括
 以上のとおり、本件被相続人の本件相続開始日における請求人P2に対する債務の金額は、本件公正証書に記載された金額○○○○円から、上記(ト)の本件各債務に対する返済額26,730,000円を差し引いた○○○○円であると認められる。
 そこで、引き続き、上記の債務が、本件相続税の課税価格に算入すべき財産の価額から控除することができるか否かにつき検討する。

ロ 検討
 相続税法第13条《債務控除》第1項第1号は、相続税の課税価格に算入すべき価額は、相続により取得した財産の価額から被相続人の債務で相続開始の際現に存するものの金額のうち、その者の負担に属する部分の金額を控除した金額である旨規定し、また、同法第14条第1項は、同法第13条の規定によりその金額を控除すべき債務は、確実と認められるものに限る旨規定しているところ、上記イの(ヘ)のとおり、本件各約束手形をも基礎として本件公正証書を作成したことにより、本件被相続人と請求人P2とは、本件公正証書借入金に係る本件被相続人の返済の意思を確認していると認められるから、債務者である本件被相続人は、本件公正証書借入金の履行が義務付けられているというべきであり、本件公正証書借入金は、債務の存在及び履行が確実な債務であるということができる。
 したがって、上記イの(チ)の本件被相続人の本件相続開始日における請求人P2に対する債務の金額○○○○円は、本件相続税の課税価格の計算上、請求人P1の債務として控除すべきである。

ハ 請求人らの主張について
 請求人らは、本件各債務は、本件各約束手形及び本件公正証書といった書面から明らかなように、いずれも本件被相続人の債務として現に存するものであるから、上記1の(4)のハの(イ)のBのとおりの○○○○円を、本件相続税の課税価格に算入すべき財産の価額から控除すべきである旨主張する。
 しかしながら、請求人P2は、本件各約束手形借入金と本件公正証書借入金が別個独立のものであることを前提に、その総体としての本件各債務が発生した原因等につき、様々な答述ないし申述をするものの、当審判所の調査によっても、当該答述ないし申述の裏付けとなる証拠資料は確認できず(なお、請求人P2は、当審判所に対し、本件各債務の原資記録となる借用書は破棄した旨答述している。)、結局、本件各約束手形借入金以外に、本件公正証書が作成されるより前に具体的な債務等が成立ないし存在したことを裏付けるに足りる証拠は見当たらない。
 そして、上記のような事情もあいまって、本件公正証書において確認された債務の内容は、本件各約束手形借入金を含めたものと認めるのが相当であることは、上記イの(ヘ)で説示したとおりである。
 よって、本件各約束手形借入金及び本件公正証書借入金のいずれもが、本件被相続人の債務として現に存していたとする旨の請求人らの主張は、上記イの認定ないし判断に反する限度で理由がない。

ニ 原処分庁の主張について
 原処分庁は、本件各約束手形及び本件公正証書が存在しているにもかかわらず、請求人P2が、本件各約束手形借入金と本件公正証書借入金とが同一のものであると申述した一方で、それらが別々のものである旨申述し、また、本件期限内申告の際に本件各債務を返済したことを証する資料として本件返済金書面を提出した一方で、実際に返済した金額を記載したものではない旨申述するなどの変遷がみられることなどからすると、本件各約束手形及び本件公正証書等の記載の事実自体が不確かなものであり、本件各約束手形借入金及び本件公正証書借入金の成立が認められない旨主張する。
 確かに、請求人P2の上記申述内容は一貫性を欠くもので、本件相続開始日の時点で、本件公正証書の作成から既に20年以上経過していることなどから、記憶が不正確である可能性や、その変遷ぶりからして自己に有利な判断を導くべく虚偽の申述をしている可能性も否定しがたく、信用性の程度に問題はあるものの、本件各約束手形及び本件公正証書の記載内容自体と矛盾するものとまではいえず、以上のような請求人P2の申述状況のみをもって、本件各約束手形及び本件公正証書の記載と別異に解すべきではなく、上記イの(ニ)及び(ホ)の認定を妨げない。また、原処分庁は、本件各債務の原因となった事情を明らかにする資料が存在しない点を挙げるが、これも消極的な事情にとどまるものである上、本件各約束手形や本件公正証書の作成時期がかなり古いことをも考慮すると、上記の点を併せてもなお、別異に解すべきとまではいえない。
 したがって、この点に関する原処分庁の主張には理由がない。

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7 争点5(本件第2次修正申告書の提出は、通則法第65条第5項に規定する「調査があったことにより…更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当するか否か。)について

(1) 主張

請求人ら 原処分庁
 以下のとおり、本件第2次修正申告書の提出は、通則法第65条第5項に規定する「調査があったことにより…更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当する。  以下のとおり、本件第2次修正申告書の提出は、通則法第65条第5項に規定する「調査があったことにより…更正があるべきことを予知してされたものでないとき」には該当しない。
イ 本件第2次修正申告書の提出は、原処分庁による調査に基づいてしたものではなく、行政指導に基づく自主修正申告である。
 すなわち、請求人らは、原処分庁から本件調査に係る事前通知を受けていないほか、質問検査等、事情聴取、修正申告の勧奨を受けた事実もなく、したがって、請求人らは、原処分庁による調査を受けていない。また、本件税理士は、本件第2次修正申告書を提出する以前の平成25年5月31日、本件調査担当者と修正申告について協議した際、本件調査担当者から本件第2次修正申告書の提出が行政指導に基づくものである旨の確認を取り、さらに、同年9月30日には、本件調査担当者に対し、当該修正申告書の提出が請求人らによる自主修正申告である旨を告げている。
イ 納税者が確定申告書の提出後、修正申告書を提出する以前に、課税庁による申告内容を検討した上での非違事項の指摘等により、調査があったことを納税者が認識できる程度の電話、文書等による連絡があった場合には、その後に納税者が自発的な意思に基づき修正申告書を提出したとしても、通則法第65条第5項でいう「更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に当たらないものと解されているところ、本件調査担当者は、本件第2次修正申告書を提出する以前の平成25年9月30日に、本件税理士に対し、請求人らの申告内容に誤りがある旨指摘し、その誤りの内容を具体的に説明していること、また、本件第2次修正申告の内容は、上記の指摘、説明の内容の一部が反映されたものとなっていることから、請求人らは、本件第2次修正申告書の提出以前において、本件調査があったことを認識できたものと認められる。
 なお、本件調査担当者は、平成25年9月30日、本件税理士に対し、「調査」であることを告げた上で本件調査に係る調査結果の内容の説明及び修正申告の勧奨をし、併せて「修正申告等について」と題する書面を交付して修正申告書を提出した際には過少申告加算税が賦課される旨を書面及び口頭で説明しているから、本件第2次修正申告書の提出が行政指導に基づく自主修正申告であるとはいえない。
ロ 本件税理士は、請求人らから税務申告及びこれに伴う税務調査における説明のみを受任したにすぎず、原処分庁が、一方的に代理人とみなして本件税理士への見直し要請の効果が請求人らに及ぶとしたことは誤りである。 ロ 請求人らは、本件期限内申告書及び本件第2次修正申告書とともに税務代理権限証書を提出し、本件税理士を代理人に定め、税理士法第2条第1項第1号に規定する税務代理を委任しているところ、同号に規定する税務代理とは、税務官公署の調査若しくは処分に対してする主張若しくは陳述につき代理し、又は代行することを含むのであるから、請求人らは、本件調査の代理・代行を含めた税務代理権限を付与していた上、本件調査担当者が本件税理士に対し本件調査に係る調査結果の内容の説明をすることに合意していたものと認められる。

(2) 判断

イ 法令解釈

(イ) 通則法第65条第1項に規定する過少申告加算税は、過少申告による納税義務違反の事実があれば、原則としてその違反者に対し課されるものであり、これによって、当初から適法に申告し納税した納税者との間の客観的不公平の実質的な是正を図るとともに、過少申告による納税義務違反の発生を防止し、適正な申告納税の実現を図り、もって納税の実を挙げようとする行政上の措置である。

(ロ) 一方、通則法第65条第5項は、「修正申告書の提出があった場合において、その提出が、その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないとき」は過少申告加算税を課さない旨規定するが、これは、自発的に修正申告を決意し、修正申告書を提出した者に対しては、例外的に過少申告加算税を賦課しないこととすることにより、納税者の自発的な修正申告を奨励することを目的とするものであると解されている。
 そして、ここにいう「調査」とは、課税標準等又は税額等を認定するに至る一連の判断過程の一切を意味し、課税庁の証拠書類の収集、証拠の評価あるいは経験則を通じての課税要件事実の認定、租税法その他の法令の解釈適用を含む税務調査全般を指すものと解され、また、「更正があるべきことを予知し」たとは、単に更正がされる主観的なあるいは一般的抽象的な可能性があるにとどまらず、更正がされることについて客観的に相当程度の確実性がある段階に達した後に、更正に至るべきことを認識したことをいうとするのが相当であるから、通則法第65条第5項にいう「更正があるべきことを予知してされたものでないとき」とは、当該職員が申告に係る国税についての調査に着手し、その申告が不適正であることを発見するに足るかあるいはその端緒となる資料を発見し、これによりその後の調査が進行し先の申告が不適正で申告漏れの存することが発覚し更正に至るであろうということが客観的に相当程度の確実性をもって認められる段階に達した後に、納税者がやがて更正に至るべきことを認識した上で修正申告を決意し修正申告書を提出したものでないことをいうものと解するのが相当である。

ロ 認定事実
 請求人ら提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。

(イ) 上記1の(2)のヘのとおり、K税務署長から本件相続税に係る書類一式の送付を受けた原処分庁は、本件調査担当者に本件調査を行わせ、本件調査担当者は、上記3の(2)のロの(ロ)のとおり、平成25年9月24日、本件税理士の事務所に赴き、本件税理士に対して、本件調査に係る状況について説明をした。

(ロ) 本件調査担当者は、上記3の(2)のロの(ハ)のとおり、平成25年9月30日、本件税理士の事務所に赴き、本件税理士に対して、本件調査の結果に基づき、要旨次の事項について、請求人らの本件相続税の申告内容に誤りがある旨を指摘した上で、修正申告が必要である旨説明した。

A 米国f州所在のコンドミニアムの評価額が過少であること。

B 本件f不動産が計上されていないこと。

C m市所在のフットサルコートに係る地上権として計上された権利の評価額が過大であること。

D m市n町○−○ほかに所在する各土地の評価額が過少であること。

E p市q町○−○ほかに所在する雑種地及び宅地の評価額が過少であること。

F 本件株式が計上されていないこと。

G U銀行の当座預金口座が計上されていないこと。

H 本件各債務については、債務控除が認められないこと。

(ハ) 請求人らは、上記1の(2)のトのとおり、平成25年10月7日、原処分庁に対して、本件第2次修正申告書を提出した。本件第2次修正申告書には、上記(ロ)の本件調査担当者が指摘した事項のうち、B、F及びH以外の事項が、その指摘のとおりに記載されている(なお、当該B、F及びHの事項について、請求人らは、本審査請求において争っている。)。

ハ 当てはめ
 請求人らは、上記1の(4)のハの(ロ)のとおり、本件期限内申告書、本件第1次修正申告書及び本件第2次修正申告書においてそれぞれ、本件税理士を本件相続税の代理人と定め、税務代理を委任する旨の税務代理権限証書を添付し、本件税理士に対して本件相続税について税務代理を委任している。
 そして、原処分庁は、K税務署長から本件相続税に係る書類一式の送付を受けた後、本件調査担当者は、本件調査を行い、上記の税務代理の委任を受けている本件税理士に対して、上記ロの(イ)のとおり、平成25年9月24日、本件調査に係る状況を説明し、上記ロの(ロ)のとおり、同月30日、本件調査の結果に基づき、本件相続税の申告内容に誤りがある旨を具体的に指摘したことが認められ、その上で、請求人らは、当該指摘事項のうち請求人らが納得する事項について、上記ロの(ハ)のとおり、同年10月7日、原処分庁に対して本件第2次修正申告書を提出したものと認められる。
 そうすると、本件調査担当者が、本件税理士に対して本件調査に係る調査結果の内容を説明した時点(遅くとも平成25年9月30日)において、既に、上記イの(ロ)の後段のとおり、当該職員が申告に係る国税についての調査に着手し、その申告が不適正であることを発見するに足るかあるいはその端緒となる資料を発見し、これによりその後の調査が進行し先の申告が不適正で申告漏れの存することが発覚し更正に至るであろうということが客観的に相当程度の確実性をもって認められる段階に達していたものと評価されるべきであるといえる。
 したがって、本件第2次修正申告書の提出は、通則法第65条第5項に規定する「調査があったことにより…更正があるべきことを予知してされたものでないとき」には該当しない。

ニ 請求人らの主張について

(イ) 請求人らは、本件第2次修正申告書の提出は行政指導に基づく自主修正申告であり、原処分庁から、本件調査に係る事前通知を受けていないほか、質問検査等を受けた事実もない旨主張する。
 しかしながら、通則法第65条第5項に規定する「調査」は、課税標準等又は税額等を認定するに至る一連の判断過程の一切を意味するものと解されていることから、本件調査担当者が、直接納税義務者に対して、質問検査等を行わなかったことや、事前通知が必要な実地の調査をしなかったことをもって直ちに同項に規定する「調査」がなかったということはできず、上記ロの(イ)及び(ロ)のとおり、本件調査担当者は、本件調査を行い、その調査の結果に基づいて、本件税理士に対して、本件相続税の申告内容の誤り事項を具体的に指摘しているのであるから、これらの行為を納税申告書の自発的な見直し要請とみる余地はなく、請求人らの主張には理由がない。

(ロ) 請求人らは、本件税理士は、請求人らから税務申告及びそれに伴う税務調査における説明のみを受任されたにすぎず、原処分庁が代理人とみなして本件税理士への見直し要請の効果が請求人らに及ぶとしたことは誤りである旨主張する。
 しかしながら、上記1の(4)のハの(ロ)のとおり、本件期限内申告書等に添付された税務代理権限証書によれば、請求人らは、委任事項を特段限定することなく本件税理士を本件相続税に関する代理人と定めており、また、上記ロの(ロ)のとおり、本件税理士は、請求人らの代理人として、本件調査担当者による調査結果の内容の説明や修正申告の勧奨を受けていたのであり、加えて、上記ロの(ハ)のとおり、請求人らは、その代理人たる本件税理士を介して原処分庁による調査状況を十分に認識して、更正があることを予知して本件第2次修正申告書の提出に至ったものとみるべきである。
 したがって、この点に関する請求人らの主張には理由がない。

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8 本件各更正処分について

(1) 本件相続税の課税価格について

請求人らの本件相続税の課税価格については、本件各更正処分において原処分庁が認定した相続財産の価額及び債務の金額のうち、1上記4の(2)のハのとおり、本件f不動産の価額の2分の1に相当する金額○○○○円については、請求人P2の本件相続により「取得した財産の価額」から減算するとともに、請求人P2が本件相続の開始前3年以内に贈与により取得した財産であるとして「純資産価額に加算される暦年課税分の贈与財産価額」に加算し、2上記6の(2)のロのとおり、本件各債務のうち本件公正証書借入金○○○○円については、同金額から本件被相続人が返済したと認められる26,730,000円を差し引いた残額○○○○円を請求人P1の債務として控除すべきであると認められる。
 したがって、請求人らの本件相続税の課税価格を計算すると、別表3の「課税価格」欄の各金額のとおりとなる。

(2) 本件相続税の納付すべき税額について

上記(1)で計算した本件相続税の課税価格を基に請求人らの納付すべき税額をそれぞれ計算すると、別紙2の3及び3の3の「課税標準等及び税額等の計算」の「納付すべき税額23」の「裁決後の額 B」欄のとおりの金額となる。
 そうすると、請求人らの本審査請求は、当該納付すべき税額を超える部分の取消しを求める範囲でそれぞれ理由があるので、本件各更正処分は、いずれもその一部を別紙2の1及び3の1の「取消額等計算書」の「本税の額」欄のとおりそれぞれ取り消すべきである。

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9 本件各賦課決定処分及び本件変更決定処分について

本件各更正処分は、上記8のとおり、いずれもその一部を取り消すべきであるから、請求人らの本件各更正処分に係る過少申告加算税の基礎となる税額は、それぞれ別紙2及び3の各付表の「加算税の基礎となる税額1」の「裁決後の額 B」欄のとおりの金額となる。
 また、本件各更正処分(上記8のとおり、いずれもその一部を取り消すべき部分を除く。)により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が本件各更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、それぞれ通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められない。
 そこで、請求人らの本件各更正処分に係る過少申告加算税の額を、通則法第65条第1項及び第2項の規定により計算すると、それぞれ別紙2及び3の各付表の「加算税の額5」の「裁決後の額 B」欄のとおりの金額となる。
 そうすると、請求人らの本審査請求は、当該過少申告加算税の額を超える部分の取消しを求める範囲でそれぞれ理由があるので、1請求人P2については、別紙2の1の「取消額等計算書」の「加算税の額」欄のとおり、本件各賦課決定処分のうち、請求人P2に対する賦課決定処分の一部を取り消すべきであり、また、2請求人P1については、本件変更決定処分の全部、及び別紙3の1の「取消額等計算書」の「加算税の額」欄のとおり、本件各賦課決定処分のうち、請求人P1に対する賦課決定処分の一部を、いずれも取り消すべきである。

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10 本件第2次修正申告に係る各賦課決定処分について

請求人らによる本件第2次修正申告書の提出は、上記7の(2)のハのとおり、「調査があったことにより…更正があるべきことを予知してされたものでないとき」には該当しない。
 そこで、請求人らの本件第2次修正申告に係る過少申告加算税の額を計算すると、いずれも別表1の「賦課決定処分」欄の各金額と同額となることから、通則法第65条第1項、第2項及び第4項の規定に基づいてされた本件第2次修正申告に係る各賦課決定処分はいずれも適法である。

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11 その他

原処分のその他の部分については、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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