(平成27年11月30日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

本件は、エステティックサロンを営む審査請求人(以下「請求人」という。)が、平成24年3月1日から平成25年2月28日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)において固定資産を除却したとして、当該固定資産の除却損の額を損金の額に算入して本件事業年度の法人税の申告をしたところ、原処分庁が、当該固定資産は本件事業年度前に売却されているため、当該除却損の額を損金の額に算入することはできないとして、本件事業年度の法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を行ったことから、これを不服とする請求人がその全部の取消しを求めた事案である。

(2)基礎事実

以下の事実は、請求人と原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査の結果によっても認められる。

イ 請求人について

請求人は、平成元年9月○日に、本店所在地をa市d町○−○とし、化粧品の販売、全身美容サロンの経営等を目的として設立され、同市d町○−○、○−○に所在する家屋番号○−○の建物(以下「本件建物」という。)において、エステティックサロンを営んでいた。
 なお、請求人の代表取締役には、設立以降、Bが就任しており、また、請求人は、平成○年○月○日に、本店所在地をa市b町○−○に移転した。

ロ 本件建物について

本件建物は、a市d町○−○、○−○所在の家屋番号がd町○−○の1の建物(以下「本件建物1」という。)と同所所在の家屋番号がd町○−○の2の建物(以下「本件建物2」という。)が合体した建物であり、本件建物1は、本件建物2の北側に位置した鉄筋コンクリート造3階建ての建物で、本件建物2は、鉄骨造2階建ての建物であって、本件建物1の2階部分と本件建物2の1階部分が連絡通路によって接続されている。なお、本件建物2の階下部分は駐車場となっている。

(イ)本件事業年度前における本件建物1の所有権の移転状況

本件建物1は、平成元年2月22日に新築され、E社(なお、当時の商号は、F社である。)が所有していたが、平成15年7月30日付の売主をE社、買主をG社とする不動産売買契約(以下「本件建物1売買契約」という。)により同月31日にG社に売却された。

(ロ)本件事業年度前における本件建物2の所有権の移転状況

本件建物2は、平成4年1月20日に新築され、請求人が所有していたが、平成15年1月31日付の売主を請求人、買主をG社とする不動産売買契約(以下「本件建物2売買契約」という。)により同日G社に売却された。

(ハ)本件事業年度における本件建物1及び本件建物2の所有権の移転

上記(イ)及び(ロ)のとおり、本件建物1は平成15年7月31日に、本件建物2は同年1月31日にいずれもG社に売却され、それ以降G社が所有していたところ、平成24年9月19日付の売主をG社、買主をH社とする不動産売買契約(以下「本件売買契約」という。)により同年10月29日にH社に売却された。

ハ 請求人による本件建物1及び本件建物2の賃借について

請求人は、本件建物1が新築された当初から本件建物1がG社に売却されるまでの間はE社から、本件建物1がG社に売却されてから本件建物がH社に売却されるまでの間は、G社から本件建物1を賃借していた。また、請求人は、本件建物2をG社に売却してから本件建物がH社に売却されるまでの間は、G社から本件建物2を賃借していた。

ニ 固定資産除却損等についての請求人の会計処理について

(イ)請求人の平成14年3月1日から平成15年2月28日までの事業年度(以下「平成15年2月期」という。)の「固定資産台帳及び減価償却明細表」には、2階改装費(以下「本件2階改装費」といい、本件2階改装費に係る工事を「本件2階改装工事」、本件2階改装工事により改装された部分を「本件2階改装部分」という。)として8,135,658円が計上されており、本件2階改装部分を事業の用に供した年月日が平成12年9月1日であって、耐用年数を47年として減価償却費を計上した旨記載されている。
 なお、上記「固定資産台帳及び減価償却明細表」には、平成9年10月1日に事業の用に供した「アロマテラピールーム工事」及び「サウナ室防水工事」(以下「本件アロマテラピールーム工事及びサウナ室防水工事」という。)により請求人が取得した固定資産について、耐用年数を56年とした上で、平成15年1月31日に売却した旨記載されている。

(ロ)請求人の本件事業年度の「固定資産台帳、減価償却費明細書」には、本件2階改装費について、除却年月が平成24年10月、期中減少額が期首帳簿価額の6,283,167円である旨が記載されており、また、総勘定元帳の固定資産除却損勘定には、本件2階改装部分を除却したとして6,283,167円を計上した旨(以下、計上した本件2階改装費の除却損を「本件除却損」という。)記載されている。

(3)審査請求に至る経緯

請求人は、本件事業年度の法人税の申告に当たり、本件除却損の額を損金の額に算入し、法定申告期限内に別表の「確定申告」欄記載のとおり申告した。
 これに対し、原処分庁は、本件2階改装部分は請求人が本件建物2をG社に売却した際に売却されているから、本件除却損の額を本件事業年度の損金の額に算入することはできないとして、別表の「更正処分等」欄記載のとおり、平成26年6月30日付で、本件事業年度の法人税の更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」という。)をした。
 請求人は、本件更正処分及び本件賦課決定処分を不服として、別表の「異議申立て」欄記載のとおり、平成26年8月29日に異議申立てをしたところ、異議審理庁が別表の「異議決定」欄記載のとおり同年11月28日付で棄却の異議決定をしたので、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、同年12月26日に審査請求をした。

(4)関係法令の要旨

法人税法第22条《各事業年度の所得の金額の計算》第3項は、内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、1当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額、1当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額及び1当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るものとする旨規定している。

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2 争点

本件除却損の額は、本件事業年度の損金の額に算入できるか否か。

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3 争点についての主張

争点についての当事者の主張は、以下のとおりである。

原処分庁請求人
本件除却損の額は、次のとおり、本件事業年度の損金の額に算入できない。 本件除却損の額は、次のとおり、本件事業年度の損金の額に算入できる。
(1)本件2階改装部分は、本件建物2の2階部分を改装したものであるところ、1本件建物2は、本件建物2売買契約において現状有姿でG社に引き渡すこととされており、本件2階改装部分を売買対象から除く旨の契約にはなっていないこと、1本件建物2売買契約による本件建物2の売買において、本件2階改装部分の引渡しをしないことにつき、買主のG社の代表取締役は承知していないこと、1本件建物2売買契約による本件建物2の売却後、請求人は、G社から本件2階改装部分を区別することなく本件建物2全体を賃借していること及び1本件建物2売買契約による本件建物2の売却後、本件建物2の固定資産税は所有者であるG社に全て課税されていることからすれば、本件2階改装部分を含む本件建物2全体は、本件建物2売買契約により売却されたのであるから、本件事業年度においては本件2階改装部分を除却した事実はない。 (1)本件2階改装部分は、本件建物1の2階部分を改装したものであるから、本件建物2売買契約による売主を請求人、買主をG社とする本件建物2の売買が行われたとしても、本件2階改装部分に係る請求人の所有権の移転はない。
 また、本件建物1売買契約は、請求人が引き続き本件建物1を使用することを前提としており、請求人は、本件2階改装部分をその後も使用すると考えていたためG社に売却しておらず、本件建物1をE社がG社に売却した後も、継続して使用していたのであるから、本件建物1売買契約により、本件建物1の所有権がE社からG社に移転しても、本件2階改装部分の請求人の所有権の移転はなかった。
 このため、請求人が、実際に本件2階改装部分を今後使用することができなくなった時とは、平成24年9月19日付の本件売買契約によりG社からH社に本件建物を売却した時になる。
(2)仮に、本件2階改装部分が本件建物1の2階部分を改装したものであったとしても、請求人の平成15年2月期の「固定資産台帳及び減価償却明細表」に「平成15・1・31売却」と記載されている本件アロマテラピールーム工事及びサウナ室防水工事等と同じく、本件建物1の2階部分を改装した本件2階改装部分のみを資産として残すことは合理性がないことから、少なくとも、本件建物1売買契約又は本件建物2売買契約による売買以降において、請求人は、本件2階改装部分の所有権を有しているとはいえない。 (2)本件アロマテラピールーム工事及びサウナ室防水工事は、本件建物1の2階部分を工事したものであるが、平成15年1月31日に売却されたとして平成15年2月期に損金の額に算入した処理については、なぜそのような処理をしたのか不明である。
 しかし、本件アロマテラピールーム工事及びサウナ室防水工事について売却の記載があるからといって、売却したと記載されていない本件2階改装部分を売却したことにはならない。
(3)本件建物1売買契約及び本件建物2売買契約のいずれの契約においても、建物を現状有姿で引き渡すものとし、所有権の行使を阻害する権利の負担があるときはこれを完全に抹消しなければならない旨の条項がそれぞれあるところ、G社が本件建物1及び本件建物2を所有するに当たり、その「所有権の行使を阻害する権利の負担」については、請求人又はE社が「これを抹消しなければならない」とされ、かつ、その他いずれの条項からも本件2階改装部分を売買の対象としないとは認められないから、少なくとも、本件建物1売買契約又は本件建物2売買契約による売買以降においては、請求人は、G社に対して本件2階改装部分の所有権を有しているとはいえない。 (3)契約とは契約当事者の合意の下なされるのであって、口頭による合意であっても本件建物1売買契約及び本件建物2売買契約のいずれにおいても、契約当事者が本件2階改装部分は売買の対象としておらず売却していないことは互いに納得しているのであるから有効であり、本件2階改装部分は売却されていない。

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4 当審判所の判断

(1)認定事実

イ 本件2階改装工事の内容等について

(イ)平成14年12月まで請求人の関与税理士であったJ税理士が保管している請求人の平成12年3月1日から平成13年2月28日までの事業年度(以下「平成13年2月期」という。)の「固定資産台帳、減価償却費明細書」の写しには、2階改装費が8,135,658円であり、当該2階改装費を支出して取得した財産を、事業の用に供した年月が平成12年9月であって、耐用年数を47年として減価償却した旨記載され、その額、事業の用に供した年月及び耐用年数が、本件2階改装費の額、本件2階改装部分を事業の用に供した年月及び耐用年数といずれも同じであることからすれば、J税理士が保管している請求人の平成13年2月期の「固定資産台帳、減価償却費明細書」の写しに記載されている2階改装費は、本件2階改装部分について記載したものと認められる。
 また、J税理士が保管している請求人の平成13年2月期の総勘定元帳の建物勘定の写しには、2階改装費の支出先及び金額が、K社6,063,700円、L社397,000円、M社957,600円及びN社717,358円である旨記載されている。

(ロ)工事名として「A社改修工事」と記載されているK社作成の平成12年8月28日付の請求人宛見積書及び工事費内訳明細書(以下「K社見積書」という。)には、工事の内訳として、仮設工事、木工事、タイル内装工事、ガラス鏡工事、解体雑工事及び給排水工事である旨記載されており、同社の代表取締役であるPが当審判所に対し、K社見積書に係る改装工事の内容は本件建物1の2階部分のシャワー室などの改装工事であり、L社と打合せを行った上で工事を行った旨答述していること、また、工事名として「A社改造工事」と記載されているQ社作成の平成12年8月28日付のK社宛見積書及び工事費内訳総括表(以下「Q社見積書」という。)には、工事の内訳として、仮設工事、木工事、タイル内装工事、ガラス鏡工事、解体雑工事及び給排水工事である旨記載されており、同社の代表取締役であるUが当審判所に対し、Q社見積書に係る改装工事は平成12年8月にK社が請求人から請け負った工事であってQ社はK社の下請として本件建物1の2階部分のシャワー室などの改装工事を行った旨答述していること、Q社が保管している平成12年8月27日付の「A社改装工事」と題する工程表には、工事の期間が同月31日から同年9月7日までであり、設計監理をN社が、施工管理・木工事等をK社が、家具工事をM社が、塗装工事をL社が行う旨記載されていること、さらに、L社の代表取締役であるRが当審判所に対し、平成12年8月に行った改装工事の元請はK社であって請求人が使用していた本件建物1の2階部分の美容室の工事を行った旨答述していることからすれば、本件2階改装工事は、請求人が行った本件建物1の2階部分のシャワー室や美容室などの改装工事であると認められる。

ロ 本件建物の使用状況について

平成14年9月に請求人から本件建物1の1階ロッカールーム等の設計依頼を受けてS社が当時作成した工事図面には、本件建物1の1階部分に美容室とエントランスホールがあり、新たにロッカールームを設ける旨、本件建物2の階下部分は車庫や駐車場となっている旨、本件建物1の2階部分には美容室、シャワー室、サウナ室等がある旨、本件建物2の1階部分に社長室、事務所、食堂、更衣室等がある旨記載されている。また、本件建物の売却に際し、G社の依頼により、平成24年7月10日付でQ社が作成した本件建物の建物図面には、本件建物1の1階部分にエントランスホール、ロッカールーム等がある旨、本件建物2の階下部分は車庫や駐車場となっている旨、本件建物1の2階部分に、美容室、シャワー室、サウナ室等がある旨、本件建物2の1階部分に社長室、事務所、食堂、更衣室等がある旨記載されている。そして、上記のS社作成の工事図面に記載されている本件建物の使用状況と上記のQ社作成の建物図面に記載されている本件建物の使用状況に変更がないことからすると、平成14年9月以降、本件建物1の2階部分は、エステティックサロンの美容室、シャワー室、サウナ室等として使用されていたと認められる。

ハ 本件2階改装部分の撤去等について

上記イの(ロ)のとおり、本件2階改装工事は、本件建物1の2階部分のシャワー室や美容室などの改装工事であり、上記ロのとおり、平成14年9月以降本件建物1の2階部分は、エステティックサロンの美容室、シャワー室、サウナ室等として使用されていたと認められるところ、本件2階改装工事が行われた後、平成14年9月までの間に、本件2階改装部分が除却された事実はうかがわれないから、本件2階改装部分は、本件建物がH社に売却されるまで本件建物1の2階部分に存在したと認められる。そして、本件建物がH社に売却された後は請求人が本件建物を使用することができなくなったため、本件建物のH社への売却の際に、請求人が本件2階改装部分の所有権を放棄した旨の請求人の代表取締役の当審判所に対する答述、本件建物はG社から現状有姿で引渡しを受け、本件建物1の2階にサウナ、シャワー、カーテン等の内装及び設備が残っていたが、H社の事業である○○業、○○業等に使用するものはなかったため、本件建物の取得直後に撤去した旨のH社の代表取締役であるTの当審判所に対する答述からすれば、本件2階改装部分は、本件建物1と一体となるものではなく、本件建物1とは別個の造作であると認められるから、その所有権は請求人が有していたと認められ、これを事業の用に供していたところ、本件建物がH社に売却された平成24年10月29日に、請求人がその所有権を放棄してH社にその後の処分を委ね、これを受けて、H社が本件建物を取得した直後に撤去したものと認められる。

(2)法令解釈

法人の各事業年度の損金の額に算入すべき金額について、法人税法第22条第3項は、1当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額、1当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額及び1当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るものとする旨規定している。
 したがって、上記1の原価の額は当該事業年度の収益に対応するものについて、上記1の費用の額は当該事業年度において債務が確定したものについて、上記1の損失の額は当該事業年度において発生したものについて、それぞれ当該事業年度の損金の額に算入すべきものと解される。

(3)当てはめ

上記(2)のとおり、資本等取引以外の取引に係る損失は、その損失が発生した事業年度の損金の額に算入すべきものであるから、固定資産の除却損については、当該固定資産を除却した日の属する事業年度の損金の額に算入すべきところ、上記(1)のハのとおり、本件2階改装部分は、本件建物1と別個の造作であって、本件建物がH社に売却された平成24年10月29日に、請求人がその所有権を放棄し、H社にその後の処分を委ねたものと認められるのであるから、その時に本件除却損が生じたことになり、したがって、本件除却損の額は、本件事業年度の損金の額に算入すべきこととなる。

(4)原処分庁の主張について

イ 原処分庁は、上記3の「原処分庁」欄の(1)のとおり、本件2階改装部分は、本件建物2の2階部分を改装したものであり、本件2階改装部分を含む本件建物2全体は、本件建物2売買契約により売却されたのであるから、本件事業年度において本件2階改装部分を除却した事実はない旨主張する。
 しかしながら、上記(1)のイの(ロ)のとおり、本件2階改装部分は本件建物1の2階部分を改装したものであるから、原処分庁の上記主張は、その前提を欠き理由がない。

ロ 原処分庁は、上記3の「原処分庁」欄の(2)のとおり、仮に、本件2階改装部分が本件建物1の2階部分を改装したものであったとしても、本件アロマテラピールーム工事及びサウナ室防水工事等と同じく、本件2階改装部分のみを資産として残すことは合理性がないから、少なくとも、本件建物1売買契約又は本件建物2売買契約による売買以降においては、請求人は、本件2階改装部分の所有権を有しているとはいえない旨主張する。
 しかしながら、上記1の(2)のニの(イ)のとおり、原処分庁の主張する本件アロマテラピールーム工事及びサウナ室防水工事により請求人が取得した固定資産は、事業の用に供した年月日が平成9年10月1日であって、耐用年数が56年とされているのであるから、本件2階改装部分とは別の固定資産であり、本件アロマテラピールーム工事及びサウナ室防水工事により請求人が取得した固定資産の売却とともに本件2階改装部分が売却される理由はない。そうすると、仮に、平成15年2月期の「固定資産台帳及び減価償却明細表」において、平成15年1月31日に売却した旨の記載があったとしても、その記載から、本件2階改装部分が本件アロマテラピールーム工事及びサウナ室防水工事により請求人が取得した固定資産とともに売却又は除却されたと推認することはできない。また、本件2階改装部分が本件アロマテラピールーム工事及びサウナ室防水工事により請求人が取得した固定資産とともに売却又は除却されたと認めるべき証拠もない。
 したがって、原処分庁の上記主張には理由がない。

ハ 原処分庁は、上記3の「原処分庁」欄の(3)のとおり、本件建物1売買契約において、E社は、G社に対し、本件建物1を現状有姿で引き渡すものとし、所有権の行使を阻害する権利の負担があるときはこれを完全に抹消しなければならない旨の条項があり、かつ、その他いずれの条項からも本件2階改装部分を売買の対象としないとは認められないから、本件建物1売買契約による売却以降においては、請求人は、G社に対して本件2階改装部分の所有権を有しているとはいえない旨主張する。
 しかしながら、上記(1)のイの(ロ)及びハのとおり、本件2階改装部分は、本件建物1を賃借していた請求人が発注した本件2階改装工事によって形成された造作であって、本件建物1と一体になるものではないから、本件建物1の所有権がE社からG社に移転したことに伴って当然にG社に移転するものではなく、本件建物1を現状有姿で引き渡すというのも、賃借人が所有する造作もそのままの状態で引き渡すということであり、そのような造作が新所有者の所有権の行使を阻害するものということはできないから、原処分庁の上記主張には理由がない。

(5)本件更正処分の適法性について

上記(3)のとおり、本件除却損の額は、本件事業年度の損金の額に算入すべきであるので、本件除却損の額を本件事業年度の損金の額に算入して本件事業年度の法人税の納付すべき税額を計算すると、別表の「確定申告」欄記載の税額と同額となるから、本件更正処分は違法であり、その全部を取り消すべきである。

(6)本件賦課決定処分の適法性について

上記(5)のとおり、本件更正処分は違法であり、その全部を取り消すべきであるから、本件賦課決定処分についてもその全部を取り消すべきである。

(7)結論

よって、審査請求には理由があるから、原処分の全部を取り消すこととする。

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