(平成28年3月10日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

本件は、キャバクラ、スナック及び居酒屋を営む審査請求人(以下「請求人」という。)の所得税並びに消費税及び地方消費税(以下、消費税と地方消費税を併せて「消費税等」という。)について、原処分庁が、請求人から提示された書類によっては、事業所得の金額及び消費税の課税標準額を実額により算定できないとして、当該金額を推計するなどして所得税及び消費税等の更正処分を行ったのに対し、請求人が、調査手続には違法があり、また、事業所得の金額は、請求人が提示した書類に基づき実額で計算が可能であり、さらに、消費税については、課税仕入れに係る消費税額の控除を認めるべきであるとして、原処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2)審査請求に至る経緯及び基礎事実

イ 請求人は、h市において、平成22年○月○日に「k」の屋号でキャバクラを、平成23年○月○日に「m」の屋号でスナックを、平成24年○月○日に「n」の屋号で居酒屋をそれぞれ開業し、3店舗の飲食店を営んでいる。

ロ 原処分庁所属の調査担当職員(以下「調査担当職員」という。)は、平成25年10月1日に、請求人に対して、平成22年分から平成24年分までの所得税に係る調査(以下「本件所得税調査」という。)を行う旨通知した。

ハ 調査担当職員は、平成25年12月3日に、請求人及び請求人の税務代理人であるp税理士に対して、平成24年1月1日から平成24年12月31日までの課税期間(以下「平成24年課税期間」という。)の消費税等に係る調査を行う旨通知した。

ニ 請求人は、平成23年分及び平成24年分(以下「本件各年分」という。)の所得税について、別表1の「確定申告」欄のとおり記載して、平成23年分は平成25年12月18日に、平成24年分は平成26年2月12日に、それぞれ確定申告書を原処分庁に提出した。
 なお、請求人は、○○等の事故に伴い、r社から平成24年中に請求人に対して支払われた賠償金を、平成24年分の事業所得の収入金額に加算して申告した。

ホ 請求人は、平成24年課税期間の消費税等について、別表2の「確定申告」欄のとおり記載して、平成26年6月23日に、確定申告書を原処分庁に提出した。
 なお、請求人は、平成24年11月21日に、適用開始課税期間を平成24年課税期間並びに当該課税期間の基準期間の総売上高及び課税売上高を○○○○円とする消費税課税事業者届出書を原処分庁に提出している。

ヘ 調査担当職員は、平成26年8月25日に、請求人及びp税理士に対し、本件各年分の所得税及び平成24年課税期間の消費税等の調査結果を説明した。

ト 原処分庁は、平成26年10月7日付で、本件各年分の所得税について、別表1の「更正処分等」欄のとおりとする各更正処分及び無申告加算税の各賦課決定処分をし、平成24年課税期間の消費税等について、別表2の「更正処分等」欄のとおりとする更正処分及び無申告加算税の賦課決定処分をした。
 以下、本件各年分の所得税の各更正処分を「本件所得税各更正処分」といい、平成24年課税期間の消費税等の更正処分を「本件消費税等更正処分」という。

チ 請求人は、上記トの各処分を不服として、平成26年12月8日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、平成27年3月5日付でいずれも棄却の異議決定をし、同月7日に当該異議決定書謄本を請求人に対して送達した。

リ 原処分庁は、平成27年2月19日付で、請求人に対し、平成22年分の所得税について、更正決定等をすべきと認められない旨を書面により通知した。

ヌ 請求人は、上記チの異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成27年4月7日に審査請求をした。

(3)関係法令等

関係法令等の要旨は、別紙3のとおりである。

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2 争点

争点1 本件所得税調査に係る調査手続に本件各年分の所得税の課税処分を取り消すべき違法事由があったか否か。

争点2 推計の方法による課税の必要性が認められるか否か。

争点3 平成24年課税期間において、消費税法第30条第1項の適用が認められるか否か。

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3 主張

(1)争点1 本件所得税調査に係る調査手続に本件各年分の所得税の課税処分を取り消すべき違法事由があったか否か。

請求人 原処分庁
本件所得税調査は、平成22年分から平成24年分までの3年間を対象として行われたにもかかわらず、調査担当職員は、平成26年8月25日の調査結果の説明の際に、本件各年分についての調査結果の説明はしたものの、平成22年分については調査対象から除外した旨の発言をしたのみであり、国税通則法(以下「通則法」という。)第74条の11に基づく調査結果の説明は行っていない。
 また、通則法第74条の11第1項に基づく平成22年分の所得税についての書面による通知は、平成27年2月19日付で行われているが、同項に基づく書面による通知は、調査結果の説明と同時期に行われるべきであるから、調査終了から6か月近くも経過してされた通知は正当な調査手続とはいえない。
 さらに、原処分庁が、通則法第74条の9に基づき事前に通知された調査対象期間を、税務調査後に、原処分庁の都合で一方的に変更することが認められるとすれば、調査手続の透明性及び納税者の予見可能性の確保が困難となり、通則法において調査手続を法定化した趣旨に反する。
 したがって、平成22年分の調査手続に違法があることは、本件各年分の所得税に係る調査手続にも承継されることになるから、本件各年分の所得税の課税処分には、取り消すべき違法事由がある。
本件所得税調査は、平成22年分から平成24年分までの3年間を対象として行われたところ、調査担当職員は、平成26年8月25日の調査結果の説明の際に、更正決定等をすべきと認められた本件各年分については、請求人及びp税理士に対して、通則法第74条の11第2項に基づく調査結果の説明を行っている。
 また、平成22年分の所得税については、調査対象期間から除外したのではなく、更正決定等をすべき事項は認められないと判断したにすぎず、通則法第74条の11第1項の規定に基づき平成27年2月19日付で書面により通知している。
 したがって、本件所得税調査の手続は、適法に行われており、本件各年分の所得税の課税処分を取り消すべき違法事由はない。

(2)争点2 推計の方法による課税の必要性が認められるか否か。

原処分庁 請求人
請求人は、平成23年分の売上金額に関する資料として、1月2日から12月30日までの日々の売上金額、客の組数及び支払金額を記載したノート並びに10月28日付黒地の売上伝票一日分のみを提示しているものの、当該ノートの10月28日の売上金額と当該伝票の合計金額は一致せず、また、当該ノートの同日の客の組数と客ごとに作成された当該伝票の枚数も相違する。
 また、請求人は、平成24年分の売上金額に関する資料として、「n」と表示された○月○日から12月30日までの日々の売上金額、客の組数及び人件費を記載したノートのほか、売上伝票として、14月1日から同月30日までの黒地の売上伝票、24月1日から同月30日までの売上伝票及び3r社に対し賠償金請求のために提出した4月1日から12月30日までの売上伝票を提示しているものの、k及びm(以下「k等」という。)の売上金額などを記載したノート並びに1月分から3月分の売上伝票の提示はなく、4月分は複数の売上伝票が存在していると認められる。
 さらに、請求人から提出された必要経費のうち人件費に関する資料は、平成23年分の人別・月別に人件費を記載したとするメモ及び請求人がp税理士に携帯メールで送信した平成24年分の人件費を記載したとする月別金額の一覧のみであり、また、平成24年分の当該金額は、申告額とも異なっている。
 加えて、人件費の支払状況を検証するために必要となる勤務者の出勤記録等の書類や勤務者の住所及び氏名の提示もされていない。
 なお、請求人は、ホームページに掲載された情報から勤務者の出勤履歴が確認できる旨主張するが、掲載されているのは、その日に出勤する予定の女性従業員のみで、実際の出勤状況や勤務時間について確認することはできない。
 以上のとおり、請求人から提示された資料からは、本件各年分の売上金額などの正確性を検証することができず、事業所得の金額を実額で算定することができないことから、推計の方法による課税の必要性が認められる。
売上金額については、日々の売上金額が適時、的確にノートに記載されており、売上伝票の保存がない又は不明確な部分があるとしても、売上金額を記載したノートを基に計算した売上金額を採用できないとする理由はない。
 さらに、仕入れ及びその他の経費については、請求人は領収書等を全て提示し、金額は明らかである。
 また、人件費については、月別及び個人別の明細を提示しているほか、ホームページに過去の出勤履歴も開示されており、申告額は適正な計算に基づく金額であることが確認できる。
 以上のとおり、事業所得の金額は、実額で計算できることから、推計の方法による課税の必要性は認められない。

(3)争点3 平成24年課税期間において、消費税法第30条第1項の適用が認められるか否か。

原処分庁 請求人
調査担当職員は、平成25年10月3日から平成26年6月23日までの間、5回にわたり、事業に関して作成、保存している帳簿、領収書及び請求書等(以下「帳簿書類等」という。)を提示するよう繰り返し要求しているところ、請求人から、消費税法第30条第1項に規定する課税仕入れに係る消費税額の控除(以下「仕入税額控除」という。)の適用が認められるための要件を満たした帳簿は提示されなかった。
 特に、調査担当職員は、平成25年12月3日に、請求人に対し、帳簿書類等の保存がない場合、仕入税額控除の適用が認められない旨を説明した上で帳簿書類等の提示要求をしたものの、その際、請求人からは、仕入税額控除の適用が認められる帳簿は税理士により作成されている旨の主張はなかった。
 帳簿は調査のどの時点であれ提示すればよいというものではなく、事業者が、当該帳簿の内容が記載された取引に係る課税期間の末日後、すなわち平成25年1月1日以降は継続して帳簿が提示できる状態になっていなければ、帳簿が保存されていたということはできないと解される。
 そうすると、調査担当職員から複数回にわたり帳簿書類等の提示要求があったにもかかわらず、請求人から帳簿の提示がなく、p税理士が帳簿の提示を申し出たのは、平成26年8月25日に調査担当職員が調査結果の説明をした後の同月28日であり、この時点で帳簿を保存していたとしても、平成25年1月1日以降継続して保存していたとは認められない。
 したがって、帳簿の保存はなかったものと認められることから、消費税法第30条第7項が適用され、仕入税額控除は認められない。
調査担当職員は、平成25年10月3日から平成26年6月23日までの間、5回にわたり、仕入税額控除に関する説明並びに消費税法第30条第8項に規定する帳簿及び同条第9項に規定する請求書等の提示要請を行ったが、請求人からの帳簿の提示はなかったとしている。
 しかしながら、請求人は、帳簿書類等の提示要請の際に調査担当職員から、消費税法第30条第8項に規定する帳簿及び同条第9項に規定する請求書等の提示が必要であるとの説明は一度も受けていない。
 また、請求人は、平成25年12月3日の調査において、調査担当職員から、帳簿の保存がなければ仕入税額控除は認められない旨の説明をされたものの、その際には、消費税法第30条第8項に規定する帳簿はp税理士が作成している旨の主張をしていることから、帳簿の保存について調査担当職員は了承しており、仕入税額控除は認められるものと認識していた。
 そして、請求人は、平成26年8月25日の調査結果の説明において、仕入税額控除が否認されたことを知ったことから、同月28日に調査担当職員に対し、仕入税額控除の適用要件を満たす帳簿を保存してあるので提示したい旨申し出たが、調査担当職員は、今更提示されても認められないとして、帳簿の確認を拒否した。
 そうすると、消費税法第30条第8項に規定する帳簿の保存はあり、その提示も申し出ていることから、平成24年課税期間において、仕入税額控除は認められるべきである。

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4 判断

(1)争点1(本件所得税調査に係る調査手続に本件各年分の所得税の課税処分を取り消すべき違法事由があったか否か。)

イ 法令解釈

国税通則法第7章の2(国税の調査)関係通達の制定について(法令解釈通達)は、通則法第7章の2《国税の調査》において、調査手続に関する運用上の取扱いが明確に規定されたことに伴い定められたものであるところ、当該通達3−1の(1)において、調査は、税目と課税期間によって特定される納税義務に係る調査を一の調査として、同法第74条の9から同法第74条の11までの各条の規定が適用される旨定めている。この定めは、調査における事前通知や終了の際の手続について、一の調査の単位を明確にするものであり、その取扱いは、当審判所においても相当と認められる。

ロ 認定事実

原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、調査担当職員は、平成26年8月25日に、本件各年分の所得税の調査結果の説明において、請求人及びp税理士に対し、提示された領収書等から計算した仕入金額を基として推計の方法により事業所得の金額を算定したことを説明し、併せて、「修正申告について」と題する書面を交付して修正申告を勧奨したことが認められる。

ハ 当てはめ

(イ)本件所得税調査の終了の際の手続

調査担当職員は、上記ロのとおり、本件各年分の所得税について、請求人及びp税理士に対し、通則法第74条の11第2項及び第3項の規定に沿った調査結果の説明及び修正申告の勧奨を行っており、また、原処分庁は、上記1の(2)のリのとおり、平成22年分の所得税の調査結果について、同条第1項の規定に基づき更正決定等をすべきと認められない旨を書面により通知していることから、本件所得税調査の終了の際の手続に違法とすべき点はない。

(ロ)請求人の主張

A 請求人は、調査結果の説明において、調査担当職員から、平成22年分の所得税の調査結果の説明がなく、また、通則法第74条の11第1項の規定に基づく書面による通知は、調査結果の説明時から6か月近くも経過しており、正当な調査手続とはいえず、平成22年分の調査手続の違法は、本件各年分の所得税に係る調査手続にも承継されることになるから、本件各年分の所得税の課税処分には取り消すべき違法事由がある旨主張する。
 確かに、平成22年分の所得税の調査結果に係る書面による通知は、本件各年分の調査結果の説明時から6か月近く経過してからなされているものの、請求人に対しての通則法第74条の11第1項に規定する書面による通知は行われており、調査終了の際の手続には、違法があったとまでは認められない。
 また、上記イのとおり、通則法第74条の11の規定は、税目と課税期間によって特定される納税義務に係る調査を一の調査として適用されるのであり、本件所得税調査は、年分ごと独立した調査となるのであるから、平成22年分の調査手続は、本件各年分の所得税に係る調査手続には影響しない。
 したがって、この点に関する請求人の主張は採用できない。

B さらに、請求人は、事前に通知された調査対象期間を、税務調査後に、原処分庁の都合で一方的に変更することは認められない旨主張する。
 しかしながら、上記1の(2)のロのとおり、調査担当職員は、請求人に対して本件所得税調査を行う旨通知し、その後、上記1の(2)のト及びリのとおり、本件所得税各更正処分及び本件各年分の無申告加算税の各賦課決定処分並びに平成22年分の所得税の調査結果を書面により通知していることから、原処分庁が調査対象期間を変更したものとは認められない。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。

(2)争点2(推計の方法による課税の必要性が認められるか否か。)

イ 推計の必要性

(イ)認定事実

請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。

A 請求人が提示した帳簿書類等

請求人が原処分庁又は当審判所に提示した帳簿書類等の概要とその提示状況は、次のとおりである。

(A)平成23年分

帳簿書類等の概要 提示状況
原処分庁 審判所
日々の売上金額、客の組数及び支払金額を記載したノート あり あり
10月28日付黒地の売上伝票 あり なし
1月分から12月分までの仕入れ等に係る領収書等 あり あり
従業員ごとに月別の人件費を記載したメモ あり あり
従業員の源氏名、本名及び住所等が記載された表 あり なし
女性従業員の源氏名、7月分の人件費の支払日及び支払金額が記載された表 なし あり
k等のイベント及び出勤予定の女性従業員の源氏名などが掲載された7月分のホームページを印刷したもの なし あり
日々の売上金額、客の組数及び支払金額を記載したノートなどを基にp税理士が作成した総勘定元帳 なし あり

(B)平成24年分

帳簿書類等の概要 提示状況
原処分庁 審判所
nの日々の売上金額、客の組数及び人件費を記載したノート あり あり
4月1日から同月30日までの黒地の売上伝票 あり なし
4月1日から同月30日までの市販の売上伝票 あり なし
請求人が、○○等の事故に伴う賠償金を請求するためにr社に対し提出した4月1日から12月30日までの売上伝票(以下「r社提出売上伝票」という。) あり あり
1月分から8月分まで並びに10月分及び11月分の仕入れ等に係る領収書等 あり あり
p税理士が請求人からメールで受信した人件費の月別金額を表示した画面 あり なし
従業員の源氏名、本名及び住所等が記載された表 あり なし
1月2日から12月30日までの日々の人件費が記載された表 なし あり
k等のイベント及び出勤予定の女性従業員の源氏名などが掲載された一年間分のホームページを印刷したもの なし あり
nの日々の売上金額、客の組数及び人件費を記載したノートなどを基にp税理士が作成した総勘定元帳 なし あり

(C)その他
 年分を特定することができない市販の売上伝票が、原処分庁のみに提示された。

B 帳簿書類等の調査結果

(A)平成23年分

a 日々の売上金額、客の組数及び支払金額を記載したノートの売上げの合計金額○○○○円は、総勘定元帳の年間の売上げの合計金額及び確定申告書に添付された収支内訳書の売上(収入)金額と同額であった。

b 10月28日付黒地の売上伝票には、上部にmを意味する「○○」が印字されており、日付、入店時間、接客した女性従業員の源氏名、客の注文内容及び売上げの金額などが記載されており、客の組数(会計)ごとに作成されたと認められる当該伝票6枚の売上げの合計金額は、114,700円であった。

c 10月28日付黒地の売上伝票は上記bのとおりであるところ、日々の売上金額、客の組数及び支払金額を記載したノートには、10月28日の売上金額が32,000円及び客が2組と記載されていた。

(B)平成24年分

a kとnの売上高は、総勘定元帳では区分されており、その合計金額○○○○円は、確定申告書に添付された収支内訳書の売上(収入)金額と同額であった。

b nの日々の売上金額、客の組数及び人件費を記載したノートの売上げの合計金額○○○○円は、総勘定元帳のnの年間の売上げの合計金額と同額であった。
 なお、k等の売上金額などを記載したノートは、原処分庁及び当審判所のいずれにも提示されなかった。

c 1月分から3月分までの売上伝票は、原処分庁及び当審判所のいずれにも提示されなかった。

d 4月1日から同月30日までの黒地の売上伝票には、上部にkを意味する「○○」が印字されており、日付、入店時間、接客した女性従業員の源氏名、客の注文内容及び売上げの金額などが記載されていた。

e r社提出売上伝票に記載された品名と単価は、上記dの4月1日から同月30日までの黒地の売上伝票の品名と単価が同じであることから、r社提出売上伝票は、kに係るものと認められた。

f r社提出売上伝票の4月分の合計金額764,200円は、総勘定元帳のkの4月分の売上高と同額であるが、上記dの4月1日から同月30日までの黒地の売上伝票の合計金額2,133,000円より少なかった。

g 総勘定元帳の仕入高には、12月31日付で9月分及び12月分の2か月分として600,000円が一括で計上されていた。
 なお、9月分及び12月分の仕入れに係る領収書等は、原処分庁及び当審判所のいずれにも提示されなかった。

(C)本件各年分共通

a 従業員の源氏名、本名及び住所等が記載された表には、本名及び住所の記載がない者が散見された。

b 平成23年7月分及び平成24年分のホームページは、顧客向けであり、女性従業員の過去の勤務実績等は確認できなかった。

c 従業員の人件費を算定する際の勤務実績を明らかにするものや人件費を支払った事実を証する帳簿書類等は、原処分庁及び当審判所のいずれにも提示されなかった。

(ロ)推計の方法による課税の必要性の判断

一般に、推計の方法による課税は、十分な直接の証拠資料がないため、収入又は支出金額の実額が捕捉できない場合に、蓋然的近似値を一応真実の収入又は支出金額と認定して課税する制度であるが、あくまで実額課税が原則である以上、納税義務者が帳簿書類を備え付け整備していないとき、帳簿書類の備え付けがあってもその内容に信ぴょう性が認められないとき、課税庁の調査に対して資料提供を拒否する等協力的態度を示さないとき等、収入支出金額の実額を捕捉することができず、推計によらざるを得ない必要性のある場合に限って許されるものと解される。
 本件において、原処分庁は、請求人の事業所得の金額を実額で算定することができず、推計の方法による課税の必要性があると主張していることから、以下、推計の方法による課税の必要性について検討する。

A 原処分時における推計の必要性

平成23年分については、上記(イ)のBの(A)のとおり、請求人は、日々の売上金額、客の組数及び支払金額を記載したノートを基に申告したと認められるところ、当該ノートの10月28日の売上金額は、記載内容が具体的であり客の組数(会計)ごとに作成されたと認められる10月28日付黒地の売上伝票の合計金額より少ないことから、申告した売上金額に計上漏れがあると推認されることに加え、原処分庁に提示されたのは、10月28日付黒地の売上伝票一日分及び上記(イ)のAの(C)の年分を特定することができない市販の売上伝票のみであり、原処分庁は、請求人が申告した売上金額を検証することができなかったものと認められる。
 また、平成24年分については、上記(イ)のBの(B)のd、e及びfのとおり、4月分のkに係る売上伝票は、少なくともr社提出売上伝票と4月1日から同月30日までの黒地の売上伝票の2種類あり、4月分のr社提出売上伝票の合計金額は、黒地の売上伝票の合計金額より少ないことに加え、上記(イ)のBの(B)のb及びcのとおり、k等に係る売上金額などを記載したノートの提示はなく、1月分から3月分までの売上伝票の提示もなかったことから、原処分庁は、請求人が申告した売上金額を検証することができなかったものと認められる。
 さらに、本件各年分において、上記(イ)のBの(C)のとおり、申告した人件費の計算根拠が明らかでなく、当該人件費の支払の事実を証するものもなかった。
 以上のとおり、請求人から提示された書類は、請求人の事業所得の金額を確認するための資料として十分なものではなく、かつ、信ぴょう性に欠けるものであることから、原処分庁が、請求人から提示された書類に基づき実額により事業所得の金額を算定することができないとしたことは相当である。
 したがって、推計の方法による課税の必要性を認めた原処分庁の判断に違法はない。

B 請求人の主張

請求人は、申告した売上金額は売上金額などを記載したノート、人件費はホームページに掲載された過去の出勤履歴等、また、必要経費は領収書等によりその金額を実額で計算することが可能であることから、推計の方法による課税の必要性が認められない旨主張する。
 しかしながら、上記(イ)のBのとおり、本件各年分において、売上伝票は一部しか提示されていないこと、また、申告した売上金額には計上漏れがあると推認されること、さらに、従業員の勤務実績及び人件費の支払を証する帳簿書類等の提示がないことなどから、原処分庁が事業所得の金額を実額で算定することができないことは明らかである。
 したがって、請求人の主張には理由がない。

C 裁決時における推計の必要性

請求人は、当審判所に対して、上記(イ)のAの(A)及び(B)の帳簿書類等を提示し、請求人の事業所得の金額を実額で計算すべきである旨主張する。
 しかしながら、納税者が、事業所得の金額を実額により算定することを主張して、課税庁の行った推計の方法による課税を争うためには、納税者は、売上金額及び必要経費の双方について主張立証する必要があるところ、請求人が当審判所に対し提示した帳簿書類等をもってしても、請求人が申告した売上金額及び必要経費の金額の正確性を立証できず、当審判所の調査の結果においても、請求人の事業所得の金額を実額で認定するに足りる証拠はないことから、請求人の本件各年分の事業所得の金額を推計の方法により算定せざるを得ない。
 したがって、請求人の主張には理由がない。

ロ 推計の合理性
 ところで、所得金額の算定において、推計の必要性が認められる場合、原処分庁が推計の方法による課税を行うに当たっては、その推計の方法が合理的であることが求められ、具体的には、1推計の基礎事実(数値)が正確に把握されていること、2推計の方法としてその事案にとって最適の方法が選択されていること、3推計の方法による課税自体が具体的に真実の所得にできるだけ近似した数値が算出され得るような客観的なものであることが求められると解される。
 本件において、請求人は、推計の方法による課税の必要性がない旨主張し、推計の合理性については何ら主張していないものの、推計の方法による課税を行うに当たっては、その方法が合理的であることが求められることから、以下、原処分庁が採用した推計の方法の合理性について検討する。

(イ)原処分庁の推計の方法

原処分庁は、1本件各年分の領収書等から計算した仕入金額と同額を請求人の売上原価の額とし、2当該売上原価の額を、請求人と業種、業態及び事業規模等において類似性のある同業者(以下「類似同業者」という。)の売上金額(雑収入を除く)に対する売上原価の額の割合の平均値(以下「平均売上原価率」という。)で除して請求人の売上金額を算定し、3当該売上金額に、類似同業者の売上金額に対する青色申告者に認められる青色事業専従者給与等の特典を除いて計算した所得金額の割合の平均値(以下「平均特前所得率」という。)を乗じて、請求人の所得金額を推計する方法を採用した(以下、原処分庁が採用した推計の方法を「同業者比率法」という。)。

A 売上原価の額の算定方法

原処分庁は、本件各年分の領収書等から仕入金額を計算し、期首及び期末の棚卸高を同額として、別表3及び別表4の「原処分庁主張額」欄の「売上原価の額」欄のとおり算定した。
 なお、原処分庁は、平成24年分について、請求人から提示された10か月分の領収書等により仕入金額を計算し、同額を売上原価の額とした。

B 本件各年分の類似同業者

原処分庁は、本件各年分の類似同業者として、次の1から5の全てに該当する者を機械的に抽出し、平成23年分は12名を、平成24年分は16名をそれぞれ選定した。

1 請求人の事業と同一の業種であるスナックを営む個人事業者であること

2 原処分庁及びs税務署長に青色申告書を提出している者で、かつ、j税務署及びs税務署管内に事業所を有していること

3 売上原価の額が原処分庁の算定した請求人の売上原価の額の0.5倍以上2.0倍以内の範囲であること

4 スナックを一年間継続して営んでいること

5 事業専従者がいないこと

(ロ)推計の合理性の判断

原処分庁は、上記(イ)のとおり、同業者比率法により本件各年分の事業所得の金額を算定しているところ、類似同業者にあっては、特段の事情のない限り、経験則上、同程度の売上原価からは同程度の収入が得られ、また、同程度の収入からは同程度の所得が得られるものであり、そして、同業者間に通常存する程度の営業条件の差異については、各同業者の比率からその平均値を算定する過程において捨象されるものと認められることから、原処分庁が採用した同業者比率法には、同業者に類似性が認められ、かつ、その基礎数値等が正確なものである限り合理性を有するものと認めるのが相当である。
 しかしながら、原処分庁は、上記(イ)のBの1のとおり、請求人の営む事業の業種を、酒類を提供し女性による接客を伴ういわゆるスナックとしているが、平成24年○月○日に開業したnは、k等とは異なり、酒類と料理を提供するいわゆる居酒屋と認められる。
 また、請求人は、平成24年中は12か月間営業しているところ、原処分庁は、上記(イ)のAのとおり、10か月分の仕入金額を売上原価の額として類似同業者を選定している。
 これらの点は、推計の基礎数値等の正確性を期す上で補正すべきものと認められることから、当審判所において、次のとおり検討した。

A 推計の基礎数値(売上原価の額)

売上原価の額を推計の基礎として同業者比率法により事業所得の金額を算定する場合、売上原価の額が合理的な根拠に基づいて算定される必要があるところ、原処分庁は、本件各年分の売上原価の額を、上記(イ)のAのとおり、請求人から提示された領収書等により仕入金額を計算し、売上原価の額を算定している。
 当審判所においても、その算定方法自体は相当であると認められるが、本件各年分の売上原価の額については、次の補正等を加えた後の金額とするのが相当である。

(A)平成23年分
 原処分庁が計算した仕入金額には、接待交際費及び家事費などが含まれていることから、306,735円過大と認められる。
 そうすると、別表3の「審判所認定額」欄の「仕入金額」欄のとおり、これを除いた○○○○円が仕入金額となり、また、棚卸金額を確認する帳簿書類等がないことから、期首及び期末の棚卸高を同額と認定して、仕入金額を売上原価の額とする。

(B)平成24年分

a 原処分庁が計算した仕入金額は、上記(A)と同様の理由により、201,426円過大と認められるため、別表4の審判所認定額の「総額」欄の「仕入金額」欄のとおり、これを除いた○○○○円が仕入金額となる。

b この仕入金額を仕入内容からスナックと居酒屋に分けると、別表4の審判所認定額の内訳の「k等」欄及び「n」欄の「仕入金額」欄のとおり、k等は○○○○円及びnは○○○○円と認められる。

c 原処分庁は、上記(イ)のAのとおり、10か月分の領収書等から仕入金額を計算しているが、k等は年間を通して、nは○月○日から年末まで営業していたと認められることから、仕入金額は、それぞれの営業月数(k等は12か月、nは○か月)に換算して算定するのが相当である。
 そうすると、上記bで算定した仕入金額をそれぞれの営業月数で換算すると、別表4の審判所認定額の内訳の「k等」欄及び「n」欄の「営業月数に換算した仕入金額」欄のとおり、k等は○○○○円及びnは○○○○円となり、期首及び期末の棚卸高を同額と認定して、売上原価の額とする。

B 類似同業者の選定並びに平均売上原価率及び平均特前所得率

(A)類似同業者の選定
 原処分庁は、上記(イ)のBの1から5のとおり、本件各年分の類似同業者について、求められる全ての要件を満たす者を抽出しており、当審判所においても類似同業者の選定方法は合理的なものと認められる。
 しかしながら、原処分庁は、平成24年分の類似同業者の業種をスナックとしているが、nに係る同業者としては、居酒屋を営む者から選定するのが相当である。
 加えて、○月に開業したnの類似同業者の抽出基準となる売上原価の額は、上記Aの(B)のcの売上原価の額(○か月分に換算した額)を更に1年間分の額に換算するのが相当であることから、別表4の審判所認定額の内訳の「n」欄の「類似同業者の抽出基準となる売上原価の額」欄のとおり、○○○○円となる。

(B)平均売上原価率及び平均特前所得率
 原処分庁は、別表5及び別表7のとおり、本件各年分の平均売上原価率及び平均特前所得率を算定しているところ、それぞれの率は、帳簿書類の備付け並びに記録及び保存が義務付けられ、決算額に信用性が担保された青色申告決算書に基づいて算定されたものであるから、その算定方法は合理的なものと認められる。
 ただし、請求人は税込経理であるところ、原処分庁が選定した類似同業者には、税抜経理でかつ簡易課税を選択している者が含まれており、同者の決算額を税込みに換算できないため類似同業者から除外し、また、原処分庁が結果として選定しなかった集計違算のある同業者は、決算書上で修正が可能であることから、金額を補正して類似同業者として追加するのが相当である。
 加えて、原処分庁が選定した類似同業者の減価償却費について、端数計算に誤りがある者については、これを補正するのが相当である。
 そうすると、当審判所において算定した本件各年分の平均売上原価率及び平均特前所得率は、それぞれ、別表6、別表8−1及び別表8−2の「平均値」欄のとおりとなる。

(ハ)本件各年分の事業所得の金額

以上のことから、同業者比率法を基に、当審判所が認定した事業所得の金額は、別表9の本件各年分の「審判所認定額」欄の「総所得金額(事業所得の金額)」欄のとおり、平成23年分は○○○○円及び平成24年分は○○○○円となる。

(3)争点3(平成24年課税期間において、消費税法第30条第1項の適用が認められるか否か。)

イ 法令解釈
 消費税等に係る申告が適正になされることを確保するため、消費税法第58条《帳簿の備付け等》が事業者に帳簿の保存を義務付け、通則法第74条の2が税務職員に帳簿書類その他の物件を検査することを認めている。
 このように帳簿書類その他の物件が税務職員による検査の対象となることを前提として、消費税法第30条第7項は、事業者が帳簿及び請求書等を保存している場合において、税務職員が帳簿及び請求書等を検査することができるときに限り、仕入税額控除の適用ができることを明らかにしたものと解される。
 このような趣旨からすれば、消費税法第30条第7項に規定する事業者が当該課税期間の課税仕入れの税額の控除に係る帳簿及び請求書等を保存しない場合には、事業者が帳簿及び請求書等を物理的にその状態のままで保管しているとはいえなかった場合のみならず、帳簿及び請求書等を整理し、これらを所定の期間及び場所において、通則法第74条の2に基づく税務職員による検査に当たって適時にこれを提示することが可能なように態勢を整えて保存していなかった場合をも含むものと解するのが相当である。

ロ 認定事実
 原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。

(イ)本件所得税調査を行う旨通知した平成25年10月1日以降、平成24年課税期間の消費税等に係る調査を行う旨通知した同年12月3日までに、請求人から提示された書類のうち、平成24年課税期間の仕入税額控除に係る帳簿及び請求書等と認められるのは、上記(2)のイの(イ)のAの(B)に記載した平成24年分の「1月分から8月分まで並びに10月分及び11月分の仕入れ等に係る領収書等」のみであり、帳簿は提示されていなかった。

(ロ)調査担当職員は、平成25年12月3日に、請求人及びp税理士に対し、帳簿書類等の提示を求めたが、請求人からは既に提示した書類以外に新たに提示された帳簿書類等がなかったことから、帳簿の作成がなく請求書等の保存も一部しかない場合は、平成24年課税期間の消費税の仕入税額控除は認められない旨説明した。

(ハ)調査担当職員は、平成26年2月14日に、請求人及びp税理士に対し、帳簿書類等の提示を求めたところ、請求人からは、新たにnの日々の売上金額、客の組数及び人件費を記載したノートの提示があった。

(ニ)調査担当職員は、平成26年4月25日に、請求人及びp税理士に対し、再度帳簿書類等の提示を求めたところ、請求人からは、新たにr社提出売上伝票の提示があった。

(ホ)調査担当職員は、平成26年6月23日に、請求人及びp税理士に対し、再度帳簿書類等の提示を求めたが、請求人からは、新たに帳簿書類等の提示はなかった。

(ヘ)p税理士は、平成26年8月28日に、調査担当職員に対し、p税理士が会計システムで作成した平成24年分の帳簿を提示したい旨を申し出た。

ハ 当てはめ
 調査担当職員は、上記ロの(ロ)のとおり、帳簿の作成がなく請求書等の保存も一部しかない場合は、消費税の仕入税額控除は認められない旨を説明し、その後、上記ロの(ハ)、(ニ)及び(ホ)のとおり、複数回にわたり帳簿書類等の提示を求めたにもかかわらず、請求人は、調査担当職員が消費税等の調査結果を説明した平成26年8月25日までに、平成24年課税期間の仕入税額控除に係る帳簿を提示しなかったと認められる。
 そうすると、請求人は、通則法第74条の2に基づく税務職員の検査に当たり、適時に帳簿及び請求書等を提示することが可能なように態勢を整えて保存していたということはできず、このことは、上記イのとおり、消費税法第30条第7項に規定する仕入税額控除に係る帳簿及び請求書等を保存しない場合に該当することから、同条第1項の適用は認められない。

ニ 請求人の主張について
 請求人は、平成26年8月25日の調査結果の説明まで、調査担当職員から、消費税法第30条第8項に規定する帳簿及び同条第9項に規定する請求書等の提示要請は行われておらず、p税理士は、同月28日に調査担当職員に対し、仕入税額控除の適用要件を満たす帳簿の提示を申し出たにもかかわらず、調査担当職員がこれを拒否したものであり、仕入税額控除の適用は認められるべきである旨主張する。
 しかしながら、上記ロのとおり、請求人は、調査担当職員からの複数回にわたる帳簿書類等の提示要請の際に、帳簿を提示しておらず、平成26年8月28日のp税理士からの帳簿を提示したい旨の申出は、調査担当職員が同月25日に通則法第74条の11に規定する調査終了の際の手続をした後になされたものと認められる。
 そうすると、請求人が調査終了の手続までに帳簿を提示しなかったことは、通則法第74条の2に基づく税務職員による検査に当たって適時にこれを提示することが可能なように態勢を整えて保存していなかった場合に該当することから、平成24年課税期間の仕入税額控除の適用は認められない。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。

(4)本件所得税各更正処分

本件各年分の事業所得の金額は、上記(2)のロの(ハ)のとおりとなることから、本件各年分の納付すべき税額は、別表9の「審判所認定額」欄の「納付すべき税額」欄のとおりとなり、いずれも本件所得税各更正処分の額を下回るから、本件所得税各更正処分は、いずれもその一部を別紙1及び別紙2の「取消額等計算書」のとおり、取り消すべきである。

(5)本件各年分の所得税の無申告加算税の各賦課決定処分

上記(4)のとおり、本件所得税各更正処分は、いずれもその一部が取り消されることに伴い、無申告加算税の基礎となる税額は、平成23年分が○○○○円及び平成24年分が○○○○円となる。
 また、本件各年分の税額の計算の基礎となった事実のうちに、本件所得税各更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、通則法第66条第4項において準用する同法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められない。
 したがって、通則法第66条第1項及び第2項の規定に基づき無申告加算税の額を計算すると平成23年分は○○○○円及び平成24年分は○○○○円となり、いずれも本件各年分の所得税の無申告加算税の各賦課決定処分の額を下回るから、当該各賦課決定処分は、いずれもその一部を別紙1及び別紙2の「取消額等計算書」のとおり、取り消すべきである。

(6)本件消費税等更正処分

請求人は、上記1の(2)のホのとおり、平成24年課税期間において消費税を納める義務のある者であり、また、k等及びnにおける酒類、料理及びサービスの提供の対価は、全て課税資産の譲渡等に係る対価に該当するところ、請求人から提示された書類によっては消費税の課税標準額を実額で把握することができず、推計の方法により課税標準額を算定せざるを得ないことから、当審判所において算定した消費税の課税標準額は、別表10の「審判所認定額」欄の「課税標準額」欄のとおり、○○○○円(別表9の平成24年分の「審判所認定額」欄の「売上金額の合計」欄の金額に105分の100を乗じた金額)となり、また、上記(3)のハのとおり、消費税法第30条第1項の適用は認められないことから、仕入税額控除の額は、零円となる。
 そうすると、請求人の納付すべき消費税等の税額は、別表10の「審判所認定額」欄の「納付すべき消費税等の税額」欄のとおりとなり、本件消費税等更正処分の額を上回ることから、本件消費税等更正処分は適法である。

(7)平成24年課税期間の消費税等の無申告加算税の賦課決定処分

上記(6)のとおり、本件消費税等更正処分は適法であり、本件消費税等更正処分により納付すべき税額の基礎となった事実のうちに、本件消費税等更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、通則法第66条第4項において準用する同法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同法第66条第1項及び第2項並びに地方税法附則第9条の4《譲渡割の賦課徴収の特例等》及び第9条の9《譲渡割に係る延滞税等の計算の特例》第1項の規定に基づきされた消費税等の無申告加算税の賦課決定処分は適法である。

(8)その他

原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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