(平成29年1月17日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、審査請求人A(以下「請求人A」という。)、同D(以下「請求人D」という。)及び同F(以下「請求人F」といい、これら3名を併せて「請求人ら」という。)が相続税の申告を行ったところ、原処分庁が、請求人Aが所有する土地上に被相続人が借地権を有しており、当該借地権の価額が相続税の計算の基礎となる課税価格に算入されていないとして相続税の各更正処分等を行ったのに対し、請求人らが、被相続人は当該土地を使用貸借に基づき使用収益していたのであって、当該土地上に借地権を有していないなどと主張して、原処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令等の要旨

  • イ 借地借家法第2条《定義》は、この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによると規定し、その第1号は、借地権とは、建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいう旨規定している。
  • ロ 民法第601条《賃貸借》は、賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって、その効力を生ずると規定している。
  • ハ 使用貸借に係る土地についての相続税及び贈与税の取扱いについて(昭和48年11月1日付直資2−189ほか国税庁長官通達。以下「使用貸借通達」という。)の1《使用貸借による土地の借受けがあった場合》は、建物又は構築物(以下「建物等」という。)の所有を目的として使用貸借による土地の借受けがあった場合においては、借地権(建物等の所有を目的とする地上権又は賃借権をいう。)の設定に際し、その設定の対価として通常権利金その他の一時金を支払う取引上の慣行がある地域においても、当該土地の使用貸借に係る使用権の価額は、零として取り扱う旨定め、この場合において、使用貸借とは、民法第593条《使用貸借》に規定する契約をいい、土地の借受者と所有者との間に当該借受けに係る土地の公租公課に相当する金額以下の金額の授受があるにすぎないものはこれに該当する旨例示している。

(3) 基礎事実

当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

  • イ 請求人らは、G(以下「本件被相続人」という。)の子であり、本件被相続人の共同相続人である。
     なお、本件被相続人の共同相続人には、請求人らのほか、本件被相続人の配偶者であり請求人らの母であるE(以下「母E」という。)がいる。
  • ロ 本件被相続人は、昭和56年9月30日、本件被相続人の父(請求人らの祖父)であるHが所有していたa市d町○−○の土地(以下「本件土地」という。)上に建物を新築した(以下、この建物を「本件建物」という。)。
  • ハ 請求人A(昭和○年○月○日生)は、昭和○年○月○日にHと養子縁組をし、同人の養子となった。
  • ニ 請求人Aは、昭和63年3月26日、本件被相続人から本件建物の持分(4分の1)の贈与を受けた。
  • ホ Hは、平成2年7月○日に死亡し、請求人Aは、相続により本件土地を取得した。
  • ヘ 本件被相続人は、平成6年4月から平成24年9月までの間、「土地代」の名目で毎月449,178円を、J農業協同組合(現、K農業協同組合)○○支店の請求人A名義の貯金口座に入金していた。
  • ト 本件被相続人及び請求人Aは、L社(以下「本件会社」という。)に対し本件建物を賃貸していたところ、平成23年3月26日に当該賃貸借契約は更新された。
  • チ 請求人Aに係る平成23年分及び平成24年分の所得税の各確定申告書に添付された所得税青色申告決算書(不動産所得用)には、本件建物に係る本件会社からの賃料として月額○○○○円、本件土地に係る本件被相続人からの賃料として月額326,340円(以下「本件金員」という。)及び本件土地以外の土地に係る本件被相続人からの賃料として月額122,838円などがある旨の記載があった(当該各青色申告決算書の記載によれば、本件被相続人からの賃貸料収入の合計は449,178円であり、上記ヘの金額と同額となる。)。
  • リ 本件被相続人は、平成24年10月○日に死亡し、請求人ら及び母Eが本件被相続人の権利義務を相続した(以下「本件相続」という。)。
     なお、本件被相続人の本件建物の持分(4分の3)は、母Eが相続した。
  • ヌ 本件土地は、その東南側で幅員約18メートルの市道e号線(以下「本件市道」という。)及び北側で幅員約4メートルの市道f号線にそれぞれ接面する地積が2,175.61平方メートルの宅地である。
  • ル 本件土地に係る固定資産税相当額及び都市計画税相当額の合計額(以下、当該金額を「固定資産税等年税額」という。)は、平成24年度において○○○○円であった。

(4) 審査請求に至る経緯

  • イ 請求人ら及び母Eは、本件相続に係る相続税(以下「本件相続税」という。)について、申告書に別表1の「申告」欄のとおり記載して、法定申告期限までに申告した。
  • ロ 原処分庁は、本件土地上に本件被相続人の相続財産たる借地権が存しているとして、当該借地権の価額を財産評価基本通達(昭和39年4月25日付直資56ほか国税庁長官通達。以下「評価通達」という。)の定めに基づき評価し、請求人A及び請求人Dに対しては平成27年12月21日付で、また、請求人Fに対しては平成28年1月8日付で、それぞれ別表1の「更正処分等」欄記載のとおり、本件相続税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分をした。
  • ハ 原処分庁は、母Eが平成26年3月○日に死亡したため、国税通則法第5条《相続による国税の納付義務の承継》第1項の規定により、請求人らが母Eに係る本件相続税の納付義務を承継したとして、請求人A及び請求人Dに対しては平成27年12月21日付で、また、請求人Fに対しては平成28年1月8日付で、それぞれ別表2記載のとおり、母Eに係る本件相続税の各更正処分(以下、上記ロの各更正処分と併せて「本件各更正処分」という。)及び過少申告加算税の各賦課決定処分(以下、上記ロの各賦課決定処分と併せて「本件各賦課決定処分」という。)をした。
  • ニ 請求人らは、本件各更正処分及び本件各賦課決定処分を不服として平成28年2月18日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年4月6日付でいずれも棄却の異議決定をし、その決定書謄本を同月9日に請求人らに送達した。
  • ホ 請求人らは、異議決定を経た後の本件各更正処分及び本件各賦課決定処分に不服があるとして、平成28年5月9日に審査請求をした。
     なお、請求人らは、請求人Aを総代として選任し、その旨を同日に当審判所に届け出た。

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2 争点

(1) 本件被相続人は、本件土地上に借地権を有していたか否か(争点1)。

(2) 本件土地は、評価通達24−4《広大地の評価》に定める広大地に該当するか否か(争点2)。

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3 争点についての主張

(1) 争点1(本件被相続人は、本件土地上に借地権を有していたか否か。)について

  • イ 原処分庁の主張

    本件土地については、次のとおり、請求人Aと本件被相続人との間で、遅くとも平成6年4月18日までには賃貸借契約が成立し、本件相続に至ったことから、本件被相続人は本件土地上に借地権を有していた。

    • (イ) 本件被相続人は、平成6年4月18日以降、本件被相続人名義の貯金口座から請求人A名義の貯金口座に対し地代として本件金員を振り込んでいた。
    • (ロ) 請求人Aは、長年にわたり、本件金員を請求人Aの不動産所得に係る地代収入として所得税の確定申告をしていた。
    • (ハ) 請求人Aは、原処分庁所属の調査担当職員の調査において、本件土地を養父であるHから相続により取得したが、本件土地上には、請求人Aと本件被相続人が共有する本件建物があるため、本件被相続人から、それに係る地代を受け取っていた旨申述した。
    • (ニ) 本件土地に係る各年度の固定資産税等年税額は変動するにもかかわらず、本件土地に係る地代の年額は、平成6年4月18日以降改定されておらず、本件金員の額が一定であったことからすると、請求人Aと本件被相続人との間において、当初から固定資産税等年税額などの本件土地に係る通常の必要費を負担することを約していたとは認められない。
       また、本件金員の年額3,916,080円(326,340円×12か月)は、本件土地に係る平成24年度の固定資産税等年税額(○○○○円)に本件建物に係る本件被相続人の持分(4分の3)を乗じた金額○○○○円(以下「本件固定資産税等年税額」という。)を優に上回る(約○倍)から、使用貸借通達からも使用貸借とみる余地はない。
  • ロ 請求人らの主張

    本件土地については、次のとおり、請求人Aと本件被相続人との間で賃貸借契約は成立しておらず、使用貸借にすぎないから、本件被相続人は本件土地上に借地権を有していない。

    • (イ) 請求人Aの所得税の確定申告書は、全て本件被相続人が作成(署名押印を含む。)しており、請求人Aは、本件被相続人が死亡するまで当該確定申告書を見たこともない。
       また、請求人Aと本件被相続人は生計を一にする親族であったところ、本件被相続人は、税に関する知識が低かったため、所得税の確定申告において、生計を一にする親族からの賃料の額が不動産所得の金額の計算上ないものとみなされる(所得税法第56条《事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例》)ことを知らず、申告すべきでないものを誤って申告したにすぎず、当該確定申告の内容は、相続財産の評価額の算定に当たり評価すべき借地権の有無の判断には影響しない。
       そして、親子間のやり取りであることから考えて、本件土地の貸借関係は借地権が発生する賃貸借契約ではない。
    • (ロ) 請求人Aと本件被相続人は親子の関係にあり、一般的には使用貸借が行われる関係にあるところ、本件建物は最終的に請求人Aが相続により取得しており、請求人Aと本件被相続人との間において特に争いもなく、本件土地上に借地権を設定させなければならないような事情はなかった。
    • (ハ) 本件金員は、支払を開始した平成6年当時の本件土地の必要費である公租公課に相当する金額に近似している可能性があり、本件会社に対する本件建物の賃貸(上記1(3)ト)に基づく収入に大幅な変動がなかったことから、その後18年間見直しがされなかったにすぎない。
       また、使用貸借通達は、地代の水準が土地の公租公課に相当する金額を上回る場合に、直ちに賃貸借契約に該当することを定めたものではないところ、本件金員の年額は、本件固定資産税等年税額と比較しても○倍程度にすぎない。

(2) 争点2(本件土地は、評価通達24−4に定める広大地に該当するか否か。)について

  • イ 原処分庁の主張

    本件土地は、次のとおり、評価通達24−4に定める広大地に該当しない。

    • (イ) 本件土地に係る評価通達24−4に定める「その地域」については、東は本件市道と市道g号線との交差点から、西は本件市道と主要地方道○○線との交差点までの、本件市道に面した区画の土地が存する地域とするのが相当である。
       なお、当該地域の範囲の根拠については、1本件市道の幅員は約15メートルであり、本件市道に面した区画の土地は、建築基準法上の道路斜線制限等の公法上の規制の観点からみて有利であること、2当該地域における土地の利用状況は、後記(ロ)のとおり、店舗及び事業所の敷地又は駐車場用地が中心であるのに対して、当該地域の北側及び南側の背後地は、戸建住宅の敷地として主に利用されており、当該地域とその背後地とでは土地の利用形態が異なること、及び3当該地域の西側は主要地方道○○線によって、当該地域の東側は市道g号線によって、それぞれ土地の利用状況の連続性や地域の一体性が分断されていることを総合勘案すると、本件土地に係る評価通達24−4に定める「その地域」は、利用状況、環境等がおおむね同一と認められる当該地域とするのが相当である。
    • (ロ) 上記(イ)の地域における標準的な宅地の使用についてみると、当該地域には店舗、事業所、駐車場、低層の集合住宅等が混在しているものの、店舗及び事業所の敷地として使用されている画地が19区画(本件土地を除く。)であることから、店舗及び事業所の敷地が当該地域における標準的な宅地の使用とするのが相当であり、当該地域に所在する店舗及び事業所の敷地として使用されている当該19区画の宅地の平均地積は約1,017平方メートルとなることから、当該地域における標準的な宅地の地積は、約1,017平方メートルとなる。
    • (ハ) そうすると、本件土地(2,175.61平方メートル)は、上記(イ)の地域における標準的な宅地の地積(約1,017平方メートル)に比して著しく地積が広大な宅地であると認められる。
       しかしながら、本件土地は北側と南側で道路に面するおおむね整形な宅地であり、本件土地に開発行為を行うとした場合に、公共公益的施設用地の負担が必要であるとは認められない。
  • ロ 請求人らの主張

    仮に、本件被相続人が本件土地上に借地権を有していた場合、本件土地は、次のとおり、評価通達24−4に定める広大地に該当する。

    • (イ) 本件土地に係る評価通達24−4に定める「その地域」については、東は本件市道と市道i号線との交差点まで、西は本件市道の行き止まりまで、南は市道j号線まで、北は本件土地の最北端の地点から本件市道に平行に引いた境界線までの地域とするのが相当である。
    • (ロ) 上記(イ)の地域における標準的な宅地の使用は、戸建住宅の敷地であり、当該地域における標準的な宅地の地積は、110平方メートルから170平方メートルまでとなる。
       なお、標準的な宅地の使用は、相続開始時に多く使用されている区画数や地積のみで判断するのではなく、相続開始時前後の開発状況も加味することが重要である。
       また、本件土地の近隣に存する地価公示の標準地(a−○:a市d町○−○)の地積が○平方メートルであることからも、当該標準的な宅地の地積(110平方メートルから170平方メートルまで)は妥当である。
    • (ハ) そうすると、本件土地(2,175.61平方メートル)は、上記(イ)の地域における標準的な宅地の地積(110平方メートルから170平方メートルまで)に比して著しく地積が広大な宅地であり、本件土地に開発行為を行うとした場合に、通り抜けができる道路を開設しての開発行為が経済的に最も合理的であるから、公共公益的施設用地の負担が必要である。

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4 当審判所の判断

(1) 争点1(本件被相続人は、本件土地上に借地権を有していたか否か。)について

  • イ 物の使用収益に伴う金員の支払があったとしても、それが対象物の使用収益に対する対価の意味を持たない金員の支払である場合には、民法第601条に規定する賃貸借には該当せず、同法第593条に規定する使用貸借に該当するというべきである(最高裁昭和35年4月12日第三小法廷判決・民集14巻5号817頁、同昭和41年10月27日第一小法廷判決・民集20巻8号1649頁参照)。
  • ロ これを本件についてみると、上記1(3)の基礎事実(ロ、ニ、ホ、ヘ、チ及びル)によれば、本件相続の開始時においては、1請求人Aの所有する本件土地上に、本件被相続人が持分4分の3、請求人Aが持分4分の1を有する本件建物が存在すること、2本件被相続人が請求人Aに対し、毎月、本件金員を土地代として支払っていたこと、及び3本件金員の年額が本件固定資産税等年税額の約○倍であることが認められ、これらの事実に照らせば、本件被相続人が請求人Aに対して支払った本件金員が、本件土地の使用収益に対する対価であると見る余地もあるところである。
     しかしながら、本件土地の使用収益に係る経緯を検討するに、本件被相続人が、昭和56年9月30日に、同人の父であるHが所有する本件土地上に本件建物を新築したこと(上記1(3)ロ)からすると、遅くとも同日以降、本件被相続人が本件土地を使用収益していたと認められるところ、当審判所の調査及び審理の結果によれば、本件被相続人は、Hに対して、地代を支払っていなかったと認められるから、本件被相続人が本件土地の使用収益を開始した当時の当該使用収益は使用貸借契約に基づくものと認められる。そして、上記1(3)ホ及びヘのとおり、請求人Aが、平成2年7月○日に本件土地を相続により取得したこと、及び本件被相続人から請求人Aに対する本件金員の支払が開始されたのが平成6年4月であることからすれば、請求人Aは、平成2年7月○日に本件土地に係る使用貸借契約における貸主たる地位をHから承継したものということができ、本件被相続人による本件土地の使用収益は、本件金員の支払が開始する平成6年4月以前においては、使用貸借契約に基づくものであったと認めることができる。
     そこで、平成6年4月以降、本件相続の開始時までの間に、本件被相続人による本件土地の使用収益が賃貸借契約に基づくものに変更されたか否かを検討するに、上記のとおり、同月以降、本件被相続人から請求人Aに対して本件金員が支払われているものの、本件金員の支払を開始するに当たって、請求人Aと本件被相続人との間で契約書が作成されたとか、権利金の授受がされたなどの事情は見当たらず、本件で提出された全証拠資料を精査しても、本件金員の支払が開始された経緯や動機は不明であり、本件金員の算定根拠についても明らかではない。これらの点については、当審判所においても調査を行ったものの、いずれも明らかにすることはできず、また、平成6年当時における本件土地周辺の地代水準や固定資産税等年税額についても確認することができなかった。
     以上の事情に加え、上記1(3)イ及びハのとおり、本件被相続人と請求人Aは親子であり、本件金員の支払が開始された平成6年当時、請求人Aが未成年者であったことを併せ考慮すると、本件金員が本件土地の使用収益に対する対価であると認めるには足りないというべきであり、従前、親子間における使用貸借契約に基づくものであった本件土地の使用収益が、本件金員の支払が開始されたことをもって、賃貸借契約に基づくものに変更されたとみることはできない。
     そして、当審判所の調査の結果によれば、1本件市道に付された路線価は、平成6年分が270,000円であるのに対し、平成24年分が145,000円であること、及び2本件土地の付近に存する公示地(a−○)の公示価格は、平成6年が○○○○円であるのに対し、平成24年が○○○○円であることが認められるところ、このように本件土地の周辺の土地の価格に変動があったにもかかわらず、本件金員の支払が開始された平成6年4月から本件相続が開始されるまでの間、本件金員の額に変更はなく、そのほかに本件土地の使用収益が賃貸借契約に基づくものに変更されたことをうかがわせるような事情は見いだせない。
     以上の事実経過等を踏まえると、本件相続の開始時においては、本件金員の年額が本件固定資産税等年税額の約○倍であったものの、かかる事情のみでは、本件金員が本件土地の使用収益に対する対価であるとは認めるに足りないというべきである。
  • ハ 原処分庁は、本件相続の開始時における事実に着目して原処分を行ったものであるが、本件土地の使用収益が開始された当時の状況や、本件金員の支払がされるようになった経緯、事情等を十分に調査しておらず、また、上記の判断を覆すに足りる的確な証拠資料も提出していない。
     なお、原処分庁は、請求人Aが本件金員を不動産所得に係る地代収入として所得税の確定申告をしていたと主張するが、かかる事実が、本件金員が本件土地の使用収益に対する対価の意味を持つか否かについての上記の判断を左右するものとはいい難い。
     また、原処分庁は、本件金員の額が一定であったことからすると、請求人Aと本件被相続人との間において、当初から固定資産税等年税額などの本件土地に係る通常の必要費を負担することを約していたとは認められない旨主張するが、本件金員の額の見直しがされなかったからといって、このことが、本件金員が本件土地の使用収益に対する対価であることを裏付ける事実ともいえない(本件被相続人と請求人Aが親子であり、単に当初設定した本件金員の額を見直す必要がなく、そのままになっていたともみることができる。)。
     したがって、原処分庁の上記主張にはいずれも理由がない。
  • ニ 以上によれば、本件金員が本件土地の使用収益に対する対価であるとは認めるに足りないから、本件被相続人による本件土地の使用収益は使用貸借契約に基づくものであったと認めるのが相当である。
     したがって、本件被相続人が本件土地上に借地権を有していたとは認めることができない。

(2) 本件各更正処分の適法性について

上記(1)のとおり、本件被相続人が本件土地上に借地権を有していたとは認められず、これを前提に、請求人らの本件相続税に係る課税価格及び納付すべき税額を計算すると、別表1の「申告」欄記載の金額と同額であると認められる。そうすると、争点2について判断するまでもなく、本件各更正処分は、いずれも違法である。

(3) 本件各賦課決定処分の適法性について

上記(2)のとおり、請求人らの納付すべき税額は、本件相続税に係る申告における納付すべき税額と同額であるから、請求人らには過少申告による納税義務違反の事実は認められないことになる。

したがって、本件各賦課決定処分は、いずれも違法である。

(4) 結論

以上によれば、審査請求には理由があるから、原処分はいずれもその全部を取り消すこととする。

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