平成29年6月22日裁決

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、原処分庁が、内装工事業を営む審査請求人(以下「請求人」という。)から帳簿書類等の提示がなかったとして、事業所得の金額を推計して所得税及び復興特別所得税の更正処分等を行うとともに、消費税の課税仕入れに係る消費税額の控除を適用することなく消費税及び地方消費税の決定処分等を行ったのに対して、請求人が、1調査担当職員の調査手続に違法がある、2事業所得の推計計算に必要性及び合理性がない、3原処分庁が請求人に対する実地の調査の日程調整に応じていれば、帳簿書類等を提示できたから、請求人には課税仕入れに係る消費税額の控除の適用がされるべきであるなどとして、原処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令等の要旨

  • イ 国税通則法(平成28年法律第15号による改正前のもの。以下「通則法」という。)第74条の2《当該職員の所得税等に関する調査に係る質問検査権》第1項は、税務署の当該職員は、所得税又は消費税に関する調査について必要があるときは、当該各税の納税義務がある者若しくは納税義務があると認められる者に質問し、その者の事業に関する帳簿書類その他の物件を検査し、又は当該物件の提示若しくは提出を求めることができる旨規定している。
  • ロ 通則法第74条の9《納税義務者に対する調査の事前通知等》第1項は、税務署長は、税務署の当該職員に納税義務者に対し実地の調査において質問検査等を行わせる場合には、あらかじめ、当該納税義務者に対し、その旨及び1質問検査等を行う実地の調査を開始する日時、2当該調査を行う場所、3当該調査の目的、4当該調査の対象となる税目、5当該調査の対象となる期間、6当該調査の対象となる帳簿書類その他の物件、7その他当該調査の適正かつ円滑な実施に必要なものとして政令で定める事項を通知するものとする旨規定している(以下、同項に規定する納税義務者に対する通知を「事前通知」という。)。
  • ハ 通則法第74条の10《事前通知を要しない場合》は、同法第74条の9第1項の規定にかかわらず、税務署長が調査の相手方である納税義務者の申告若しくは過去の調査結果の内容又はその営む事業内容に関する情報その他国税庁等が保有する情報に鑑み、違法又は不当な行為を容易にし、正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれその他国税に関する調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認める場合には、事前通知を要しない旨規定している。
  • ニ 通則法第74条の11《調査の終了の際の手続》第2項は、国税に関する調査の結果、更正決定等をすべきと認める場合には、当該職員は、当該納税義務者に対し、その調査結果の内容(更正決定等をすべきと認めた額及びその理由を含む。)を説明するものとする旨規定している(以下、同項に規定する納税義務者に対する説明を「法定調査結果説明」という。)。
  • ホ 所得税法第156条《推計による更正又は決定》は、税務署長は、居住者に係る所得税につき更正又は決定をする場合には、その者の財産若しくは債務の増減の状況、収入若しくは支出の状況又は生産量、販売量その他の取扱量、従業員数その他事業の規模によりその者の各年分の各種所得の金額又は損失の金額を推計して、これをすることができる旨規定している。
  • へ 消費税法(平成27年法律第9号による改正前のもの。以下同じ。)第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第1項(平成26年3月31日までの課税仕入れに係るものは平成24年法律第68号による改正前のもの。)は、事業者が、国内において行う課税仕入れについては、当該課税仕入れを行った日の属する課税期間の同法第45条《課税資産の譲渡等についての確定申告》第1項第2号に掲げる課税標準額に対する消費税額から、当該課税期間中に国内において行った課税仕入れに係る消費税額を控除(以下「仕入税額控除」という。)する旨規定している。
  • ト 消費税法第30条第7項本文は、同条第1項の規定は、事業者が当該課税期間の仕入税額控除に係る帳簿及び請求書等(以下「30条帳簿等」という。)を保存しない場合には、当該保存がない課税仕入れに係る消費税額については、適用しない旨規定し、同条第7項ただし書は、災害その他やむを得ない事情により、当該保存をすることができなかったことを当該事業者において証明した場合は、この限りでない旨規定している。

(3) 基礎事実及び審査請求に至る経緯

  • イ 請求人は、「Z」という屋号で内装工事業を営んでいる。
  • ロ 請求人は、別表1の「確定申告」欄の各欄のとおり記載した平成24年分の所得税の確定申告書並びに平成25年分及び平成26年分(以下、平成24年分ないし平成26年分を併せて「本件各年分」という。)の所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」という。)の各確定申告書を、いずれも法定申告期限までに原処分庁へ提出し、申告した。
     なお、請求人が原処分庁に提出した本件各年分の各確定申告書には、いずれも所得税法第120条《確定所得申告》第4項に規定する事業所得に係るその年中の総収入金額及び必要経費の内容を記載した書類(以下「収支内訳書(一般用)」という。)の添付がなかった。
  • ハ 請求人は、平成22年1月1日から平成22年12月31日まで、平成23年1月1日から平成23年12月31日まで、平成25年1月1日から平成25年12月31日まで及び平成26年1月1日から平成26年12月31日までの各課税期間(以下、これらの各課税期間を順次「平成22年課税期間」、「平成23年課税期間」、「平成25年課税期間」及び「平成26年課税期間」といい、これらを併せて「本件各課税期間」という。)の消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)について、いずれも申告していない。
  • ニ 原処分庁所属の調査担当職員(以下「本件調査担当職員」という。)は、原処分に係る調査(以下「本件調査」という。)を行ったが、請求人に対する実地の調査は行っていない。
  • ホ 原処分庁は、平成28年3月14日付で、別表1の「更正処分等」欄のとおり、本件各年分の所得税又は所得税等の各更正処分(以下、これらを併せて「本件所得税等各更正処分」という。)及び過少申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件所得税等各賦課決定処分」という。)をするとともに、別表2の「決定処分等」欄のとおり、本件各課税期間の消費税等の各決定処分(以下「本件消費税等各決定処分」という。)及び無申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件消費税等各賦課決定処分」という。)をした。
  • ヘ 請求人は、平成28年5月13日に原処分を不服として、異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年8月9日付で、いずれも棄却の異議決定をし、その決定書謄本は、同月12日に請求人に対し送達された。
     異議審理庁は、当該異議決定において、本件所得税等各更正処分における事業所得の推計による必要経費の額がいずれも過大である、所得税又は所得税等の納付すべき税額がいずれも過少であると認定した。
  • ト 請求人は、平成28年9月11日に異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、審査請求をした。

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2 争点

(1) 争点1 本件調査担当職員の調査手続に原処分の取消事由となる違法があるか否か。

(2) 争点2 本件各年分の事業所得の金額の計算上、推計の必要性があるか否か。

(3) 争点3 本件各年分の事業所得の金額の計算上、原処分の推計の方法に合理性があるか否か。

(4) 争点4 本件各課税期間において、仕入税額控除が適用されるか否か。

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3 争点についての主張

(1) 争点1(本件調査担当職員の調査手続に原処分の取消事由となる違法があるか否か。)について

請求人 原処分庁
次のとおり、本件調査担当職員の調査手続に原処分の取消事由となる違法がある。 次のとおり、本件調査担当職員の調査手続に原処分の取消事由となる違法はない。
イ 本件調査担当職員は、本件調査が事前通知を要しない場合に該当しないのに、請求人に対し、事前通知を行わずに本件調査を開始した。 イ 本件調査担当職員は、相応の努力をしたが、請求人が日程調整に応じなかったのであり、本件調査は事前通知を要しない場合に該当する。
ロ 本件調査担当職員は、仕事が忙しいという請求人の事情に配慮することもなく、日程調整の努力を怠り、請求人に対する実地の調査を一度も行わず、請求人に所得税法及び消費税法の規定により保存することとされている帳簿書類等(以下「法定帳簿書類等」という。)を提示する機会を与えなかった。 ロ 本件調査担当職員が請求人に対する実地の調査をすることができず、法定帳簿書類等を確認することができなかったのは、請求人に何度も協力を求めたにもかかわらず、請求人が応じなかったからである。
ハ 本件調査担当職員は、任意調査であるのに、請求人の承諾を得ることなく請求人の取引先等に対する調査を一方的に行った。 ハ 本件調査担当職員は、上記のとおり請求人が請求人に対する実地の調査に応じなかったことから、請求人の取引先等に対する調査を行ったものである。
ニ 本件調査担当職員は、請求人に対し、法定調査結果説明を電話によりしたが、請求人が内容を理解できるようなものではなかった。 ニ 本件調査担当職員は、請求人に対し、法定調査結果説明を適切に行っている。

(2) 争点2(本件各年分の事業所得の金額の計算上、推計の必要性があるか否か。)について

原処分庁 請求人
本件調査担当職員は、再三再四、請求人に事業所得の金額の計算に必要な帳簿書類等の提示を求めたにもかかわらず、請求人が本件調査を待ってほしい旨述べるばかりで本件調査に応じず、当該帳簿書類等を提示しなかったので、請求人の事業所得の金額を当該帳簿書類等に基づき計算することができなかった。
 したがって、本件各年分の事業所得の金額の計算上、推計の必要性がある。
請求人としては、仕事の日程調整をして本件調査を受け、保存している事業所得の金額の計算に必要な帳簿書類等を提示するつもりであったから、本件調査担当職員が請求人の仕事の都合に配慮し、日程調整をして本件調査を行えば、事業所得の金額を当該帳簿書類等に基づき計算することができたはずである。
 したがって、本件各年分の事業所得の金額の計算上、推計の必要性はない。

(3) 争点3(本件各年分の事業所得の金額の計算上、原処分の推計の方法に合理性があるか否か。)について

原処分庁 請求人
原処分庁の推計の方法は、請求人の取引先の調査により認定した本件各年分の総収入金額に、一定の合理的な基準に基づき選定した類似同業者の総収入金額に対する必要経費の金額の割合の平均値を乗じて本件各年分の必要経費の金額等を推計して、本件各年分の事業所得の金額を計算するというものである。
 したがって、本件各年分の事業所得の金額の計算上、原処分の推計の方法に合理性がある。
原処分庁の推計の方法では、請求人のように多額の経費や設備投資等の特別な支出がある者を対象とする場合には、事業所得の金額が過大に計算されてしまい、現に請求人が申告したとおりの真実の本件各年分の事業所得の金額を大きく上回っている。
 したがって、本件各年分の事業所得の金額の計算上、原処分の推計の方法に合理性がない。

(4) 争点4(本件各課税期間において、仕入税額控除が適用されるか否か。)について

原処分庁 請求人
本件調査担当職員は、再三再四、請求人の事業の仕入税額控除に係る30条帳簿等の提示を求め、それらの提示がなければ仕入税額控除が適用されないことを説明したが、請求人は、それらを提示しなかった。
 したがって、消費税法第30条第7項本文に規定する「帳簿及び請求書等を保存しない場合」に該当するから、本件各課税期間において仕入税額控除は適用されない。
請求人としては、仕事の日程調整をして本件調査を受け、保存している30条帳簿等を提示するつもりであったが、本件調査担当職員が請求人の都合に合わせなかったことから、これらを提示することができなかったにすぎない。
 したがって、消費税法第30条第7項本文に規定する「帳簿及び請求書等を保存しない場合」に該当しないから、本件各課税期間において仕入税額控除が適用される。

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4 当審判所の判断

(1) 争点1(本件調査担当職員の調査手続に原処分の取消事由となる違法があるか否か。)について

  • イ 法令解釈
     通則法は、第7章の2《国税の調査》において、国税の調査の際に必要とされる手続を規定しているが、同章の規定に反する手続が課税処分の取消事由となる旨を定めた規定はなく、また、調査手続に瑕疵があるというだけで納税者が本来支払うべき国税の支払義務を免れることは、租税公平主義の観点からも問題があると考えられるから、調査手続に単なる違法があるだけでは課税処分の取消事由とはならないものと解され、調査手続が刑罰法規に触れ、公序良俗に反し又は社会通念上相当の限度を超えて濫用にわたるなど重大な違法を帯び、何らの調査なしに課税処分をしたに等しいとの評価を受ける場合に限り、その違法が処分の取消事由となり得るものと解するのが相当である。
  • ロ 認定事実
     原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、次の事実が認められる。
    • (イ) 本件調査担当職員は、平成27年9月11日、本件調査の事前通知を行うことを目的として請求人の携帯電話に連絡し、請求人に対して、調査を実施する旨、調査の目的、対象税目及び対象期間等を伝えた。
       その際、本件調査担当職員は、請求人に対する実地の調査を開始する日時及び調査を行う場所(以下、請求人に対する実地の調査を開始する日時と併せて「調査開始日時等」という。)の調整を請求人に依頼したが、請求人は、平成27年9月中は予定が立てられないため同年10月に入ったら連絡が欲しい旨を申し立てた。
    • (ロ) 本件調査担当職員は、平成27年10月2日及び同月9日、請求人の携帯電話に連絡し、請求人に対して、調査開始日時等を調整するよう依頼したが、請求人は、いずれの連絡に対しても、調査には協力するが同年10月中も仕事が忙しいため、請求人に対する実地の調査には応じられない旨及び同年11月に入ったら本件調査担当職員宛に連絡するのでそれまで待ってほしい旨を申し立てた。
    • (ハ) 本件調査担当職員は、平成27年11月4日、請求人の携帯電話に連絡し、請求人に対して、調査開始日時等を調整するよう依頼したが、請求人は、今は仕事が忙しく調査に応じられない旨を申し立てた。
    • (ニ) 本件調査担当職員は、平成27年11月5日、請求人の携帯電話に連絡し、請求人に対して、同月13日までに請求人に対する実地の調査を開始したいので、調査開始日時等を調整するよう依頼したが、請求人は、仕事が忙しく予定が立てられない旨を申し立てた。
       そこで、本件調査担当職員は、請求人に対し、平成27年11月20日までに請求人に対する実地の調査が開始できない場合には、請求人に対する実地の調査を待たずに本件調査を進める旨を伝えた上で、同月13日までに調査開始日時等を本件調査担当職員宛に連絡するよう依頼した。
    • (ホ) 本件調査担当職員は、平成27年11月13日、請求人の携帯電話に連絡し、請求人に対し、再度、同月20日までに請求人に対する実地の調査が開始できない場合には、請求人に対する実地の調査を待たずに本件調査を進める旨を伝えた上で、調査開始日時等を調整するよう依頼したところ、請求人は、調査には協力するが仕事が忙しいため、同日までの請求人に対する実地の調査には応じられない旨及び平成28年1月まで待ってほしい旨を申し立てたが、本件調査担当職員は、改めて平成27年11月16日に請求人に電話する旨伝えた。
    • (ヘ) 本件調査担当職員は、平成27年11月16日、請求人の携帯電話に6回にわたり連絡したが、請求人は、いずれも応答しなかった。
    • (ト) 原処分庁は、平成27年11月17日、上記(イ)ないし(ホ)のとおり、本件調査担当職員が6回にわたり請求人に調査開始日時等の調整を依頼したが、請求人がこれに応じないなど事前通知を行うことが困難であるとして、本件調査は通則法第74条の10に規定する事前通知を要しない場合に該当すると判断した。
    • (チ) 本件調査担当職員は、平成27年11月19日、請求人の携帯電話に連絡し、請求人に対する実地の調査を待たずに本件調査を進めること、本件各課税期間の消費税等についても本件調査の対象とすること及び30条帳簿等の保存がない場合は仕入税額控除の適用が認められないことを伝えた上で、法定帳簿書類等の提示を依頼した。
    • (リ) 本件調査担当職員は、平成27年11月19日から同年12月17日にかけて、請求人の取引先等に対して臨場又は文書照会の方法により本件調査を行った。
    • (ヌ) 本件調査担当職員は、平成27年11月20日、請求人の自宅に臨場したが、請求人は不在であり、請求人の妻が応対した。本件調査担当職員は、請求人の妻に対し、同日付「所得税(及び復興特別所得税)・消費税及び地方消費税等の調査について」と題する書面(以下「本件書面」という。)について説明したものの、そのような書面は受け取れない旨の返答があったため、本件書面を請求人の自宅の郵便受けに投かんした。
       なお、本件書面には、1本件調査を進めている旨、2本件調査への協力及び本件調査担当職員への連絡を求める旨、3法定帳簿書類等の提示を求める旨及び430条帳簿等の提示がない場合は、仕入税額控除が適用できない場合がある旨が記載されている。
    • (ル) 本件調査担当職員は、平成27年12月1日及び同月9日にも請求人の自宅に臨場したが、いずれも請求人が不在であったため、連絡期限が異なる以外は本件書面と同じ内容が記載された書面をそれぞれ請求人の自宅の郵便受けに投かんした。
    • (ヲ) 本件調査担当職員は、平成28年2月15日、請求人の携帯電話に連絡し、請求人に対する実地の調査を同年2月中に実施できるよう依頼したが、請求人は、同年2月も3月も仕事が忙しいことを理由としてこれに応じなかった。
    • (ワ) 本件調査担当職員は、平成28年3月3日、請求人の携帯電話に連絡し、請求人に対して、法定調査結果説明として、本件各年分の所得税及び所得税等並びに本件各課税期間の消費税等について、1更正決定等をすべきと認めた額及びその理由、2上記1に伴う過少申告加算税及び無申告加算税の額などを説明した。
  • ハ 当てはめ及び請求人の主張について
     請求人は、前記3の(1)の「請求人」欄のとおり、本件調査では、1事前通知が行われていないこと、2請求人に対する実地の調査を一度も行わず、請求人に法定帳簿書類等を提示する機会を与えなかったこと、3請求人の承諾を得ることなく請求人の取引先等の調査を一方的に行ったこと及び4本件調査担当職員は、法定調査結果説明を電話により実施したが、請求人はその内容を理解できるものではなかったことを理由に、本件調査に係る調査手続に違法がある旨を主張する。
     しかしながら、上記1については、上記ロの(イ)ないし(ホ)のとおり、本件調査担当職員が、請求人に対し、6回にわたり調査開始日時等の調整を依頼したが、請求人がこれに応じなかったという事情に照らせば、事前通知を要しない場合に該当するといえる。上記2については、上記ロの(イ)ないし(ホ)、(チ)、(ヌ)及び(ル)のとおり、本件調査担当職員は、再三再四、請求人に対し事前通知を行うため調査開始日時等の調整を依頼するとともに、法定帳簿書類等の提示を求めているにもかかわらず、請求人がこれに応じなかったというのであるから、請求人に対する実地の調査を一度も行わなかったことに違法性は認められないし、請求人に法定帳簿書類等を提示する機会を与えなかったともいえない。上記3については、上記ロの(イ)ないし(ヘ)でみた本件調査担当職員及び請求人の間のやりとりに照らせば、適正な租税負担の実現のため、請求人の承諾を得ることなく、請求人の取引先等の調査を行ったこともやむを得ない対応というべきであって、違法性は認められない。上記4については、上記ロの(ワ)の事実によれば、本件調査担当職員は、法定調査結果説明をしたと認められる。
     その他、当審判所の調査及び審理の結果を踏まえても、本件調査に係る調査手続が、刑罰法規に触れ、公序良俗に反し又は社会通念上相当の限度を超えて濫用にわたるなど重大な違法を帯び、何らの調査なしに処分をしたに等しいとの評価を受けるべき事情は認められない。
     したがって、本件調査担当職員の調査手続に原処分の取消事由となる違法は認められず、この点についての請求人の主張は理由がない。

(2) 争点2(本件各年分の事業所得の金額の計算上、推計の必要性があるか否か。)について

  • イ 法令解釈
     所得税法第156条は、所得税につき更正をする場合において、所得金額を推計して課税することができる旨規定しているが、飽くまで課税処分における課税標準の認定は直接資料に基づく実額計算の方法によるのが原則であり、推計による課税が認められるのは、やむを得ず推計によらざるを得ない場合、すなわち、1納税義務者が収入及び支出を明らかにし得る帳簿書類を備え付けていないこと、2帳簿書類の備付けがあってもその記載内容が不正確であること、又は3納税義務者が資料の提供を拒否するなど税務調査に非協力であることなどにより、実額計算の方法による課税を行うことが不可能又は著しく困難な場合に限られると解される。
  • ロ 当てはめ
    • (イ) 推計の必要性について
       上記(1)のロの(イ)ないし(ホ)のとおり、本件調査担当職員は、請求人の申し出た内容も踏まえながら、6回にわたり、請求人に対し調査開始日時等の調整を依頼し、本件調査に協力するよう求めたが、請求人は、仕事が忙しいことを理由にこれに応じず、また、上記(1)のロの(チ)、(ヌ)及び(ル)のとおり、本件調査担当職員は、平成27年11月19日、同月20日、同年12月1日及び同月9日の4回にわたり、請求人に対し電話又は書面により事業所得の金額の計算に必要な帳簿書類等の提示を求めたが、請求人は、当該帳簿書類等を提示しなかった。
       このように、本件調査担当職員が再三再四、本件調査の協力要請を行い本件各年分の事業所得の金額の計算に必要な帳簿書類等の提示を求めたが、請求人は、本件調査に応じることなく当該帳簿書類等を一切提示していないことに照らせば、納税義務者が資料の提供を拒否するなど税務調査に非協力であることなどにより、実額計算の方法による課税を行うことが不可能又は著しく困難な場合に該当し、原処分庁が本件各年分の事業所得の金額を計算する上で、推計による必要性があったと認められる。
    • (ロ) 請求人の主張等について
      • A 請求人は、前記3の(2)の「請求人」欄のとおり、本件調査に協力し事業所得の金額の計算に必要な帳簿書類等を提示する意思があったのであるから、本件調査担当職員が、請求人の仕事の都合に配慮し、日程調整をして本件調査を行えば、当該帳簿書類等に基づき所得金額を計算することが可能であり、推計の方法による所得金額の計算は必要なかった旨主張する。
         しかしながら、上記(イ)のとおり、本件調査担当職員が、請求人の申し出た内容も踏まえた上で、再三再四、本件各年分の事業所得の金額の計算に必要な帳簿書類等の提示を求めたにもかかわらず、請求人が当該帳簿書類等を提示しなかったことからすれば、本件調査に協力し事業所得の金額の計算に必要な帳簿書類等を提示する意思があったとの請求人の主張は採用することができないし、原処分庁としても、やむを得ず推計の方法により計算したものと認められる。
         したがって、原処分時において推計の方法による事業所得の金額の計算は必要なかったとする請求人の主張は理由がない。
      • B なお、請求人は、平成29年2月14日、当審判所に対して、本件各年分の収支内訳書(一般用)、各勘定科目を月別に集計した表及び支出に係る領収書等(以下、本件各年分の収支内訳書(一般用)及び各勘定科目を月別に集計した表と併せて「本件請求人提出資料」という。)を提出した。
         しかしながら、当審判所で本件請求人提出資料を調査したところ、請求人の本件各年分の総収入金額については、請求人の取引先に対する収入金額の一部の計上漏れが確認され、その他、請求書控えなど証拠となる資料の提出がされていない。また、必要経費については、提出された領収書等は全ての支出を網羅するものではなく、さらに該当する支出がどの勘定科目に区分・集計されているか明らかではない。そのため、本件請求人提出資料によっても、請求人の本件各年分の事業所得の金額を実額計算の方法で認定することはできない。
         したがって、当審判所においても、推計の方法により請求人の事業所得の金額を計算する必要性が認められる。

(3) 争点3(本件各年分の事業所得の金額の計算上、原処分の推計の方法に合理性があるか否か。)について

  • イ 認定事実
     原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、次の事実が認められる。
    • (イ) 原処分庁は、別表3-1の「総収入金額」欄の「原処分庁主張額」欄の各欄のとおり、請求人の取引先等に対する調査により本件各年分の総収入金額を把握した。
    • (ロ) 原処分庁は、上記(イ)で把握した総収入金額から、請求人と業種・業態に類似性があり、事業規模が同規模程度であると判断した同業者(以下「本件類似同業者」という。)の総収入金額に対する必要経費(ただし、青色申告に対してのみ認められる青色事業専従者給与等の特典による控除を除く。)の割合の平均値(以下、総収入金額に対する必要経費の割合の平均値を「平均必要経費率」という。)を上記総収入金額に乗じて算出した必要経費の額及び請求人の事業専従者控除額を控除して、本件各年分の事業所得の金額を計算した。
    • (ハ) 原処分庁は、本件類似同業者の抽出条件として、1請求人の事業と業種・業態が類似する個人事業者であること、2本件各年分においてY税務署及びその近隣税務署管内に事業所を有すること、3青色申告書により所得税の確定申告書を提出していること、4暦年を通じて事業を営んでいること、5本件各年分の事業所得に係る総収入金額が請求人の総収入金額の0.5倍以上2倍以下の範囲にあること、6本件各年分について不服申立て又は訴訟が継続中でないことの全ての条件に該当する者と設定した。
  • ロ 検討
    • (イ) 本件各年分の総収入金額の正確性について
       原処分庁は、上記イの(イ)のとおり、請求人の取引先等に対する調査で本件各年分の総収入金額を把握しているところ、当審判所の調査の結果においても、請求人の本件各年分の総収入金額は、それぞれ別表3-1の本件各年分の「総収入金額」欄の「審判所認定額」欄のとおり、平成24年分が○○○○円、平成25年分が○○○○円及び平成26年分が○○○○円となり、原処分庁が把握した額といずれも同額となるから、原処分庁が把握した本件各年分の総収入金額は適正に算定されていると認められる。
    • (ロ) 推計方法の選択の合理性について
       原処分庁は、上記イの(ロ)のとおり、本件各年分の総収入金額に本件類似同業者の平均必要経費率を用いて、請求人の本件各年分の事業所得の金額を計算している。
       一般に、業種・業態が類似する同業者にあっては、特段の事情がない限り、経験則上、同程度の総収入金額に対し同程度の所得が得られると考えられ、このことは請求人の営む事業の場合であっても例外でなく、かつ、請求人に特段の事情があるとは認められない。
       また、同業者間に通常存する程度の営業条件の差異は、同業者の比率から平均値を算出する過程において捨象されることからすれば、上記イの(ハ)の基準により抽出された本件類似同業者の平均必要経費率をもって所得金額を推計する方法は、合理性があると認められる(なお、本件類似同業者の抽出方法に合理性があるかについては、後記(ハ)のとおりである。)。
    • (ハ) 本件類似同業者の抽出について
       原処分庁は、本件類似同業者を抽出するに当たり、上記イの(ハ)のとおり、請求人の事業との類似性を判断する基準として、1業種・業態の類似性、2個人、法人の別、3事業所の所在地の近接性、4資料の正確性及び5事業規模についての類似性に係る各基準を設けて、これら全てに該当する者を抽出していることから、原処分庁が採用した抽出基準及び抽出方法自体には合理性があると認められる。
    • (ニ) 推計の方法の合理性について
       以上のとおりであり、原処分庁の用いた推計の方法には合理性があると認められる。
       ただ、当審判所において、上記のとおり合理性が認められる上記イの(ハ)の1ないし6の抽出条件により選定されるべき類似同業者を検討したところ、本件類似同業者(平成24年分が6件、平成25年分が9件、平成26年分が16件)以外に類似同業者として適当な者が、平成24年分が2件、平成25年分が1件及び平成26年分が1件認められ、また、本件類似同業者のうち類似同業者として不適当な者が、平成26年分に1件認められた。このため、当審判所においては、類似同業者として、平成24年分が8件、平成25年分が10件、平成26年分が16件の類似同業者を選定した。
  • ハ 請求人の主張について
     請求人は、前記3の(3)の「請求人」欄のとおり、原処分庁の推計の方法では、請求人のように多額の経費や設備投資等の特別な支出がある者を対象とする場合には、事業所得の金額が過大に計算されてしまい、真実の事業所得の金額を大きく上回る旨主張する。
     しかしながら、請求人が特殊事情として主張する諸事情は、いずれも適切な抽出基準及び抽出方法により選定された類似同業者の平均必要経費率を採用することにより、その平均値に吸収され捨象されるべき事情に当たるというべきであり、当審判所の調査の結果によっても、当審判所が選定した類似同業者の平均必要経費率を請求人に適用することの合理性を否定すべき特段の事情は認められない(なお、具体的な平均必要経費率は、後記ニの(イ)のとおりである。)。
     したがって、この点についての請求人の主張は理由がない。
  • ニ 事業所得の金額について
    • (イ) 本件各年分の平均必要経費率
       当審判所が選定した類似同業者について本件各年分の平均必要経費率を算定すると、それぞれ別表3-2の本件各年分の「平均必要経費率」欄のとおり、平成24年分が69.63%、平成25年分が66.90%及び平成26年分が69.57%となる。
    • (ロ) 本件各年分の必要経費の額
       請求人の本件各年分の必要経費の額は、上記ロの(イ)の本件各年分の総収入金額に上記(イ)の平均必要経費率を乗じて算定すると、それぞれ別表3-3の本件各年分の「必要経費の額」欄の「審判所認定額」欄のとおり、平成24年分が○○○○円、平成25年分が○○○○円及び平成26年分が○○○○円となる。
    • (ハ) 本件各年分の事業所得の金額
       請求人の本件各年分の事業所得の金額は、上記ロの(イ)の総収入金額から上記(ロ)の必要経費の額及び事業専従者控除額860,000円を控除して計算すると、それぞれ別表3-3の本件各年分の「事業所得の金額」欄の「審判所認定額」欄のとおり、平成24年分が○○○○円、平成25年分が○○○○円及び平成26年分が○○○○円となる。

(4) 争点4(本件各課税期間において、仕入税額控除が適用されるか否か。)について

  • イ 法令解釈
     消費税等に係る申告が適正になされることを確保するため、消費税法第58条《帳簿の備付け等》が事業者に帳簿の保存を義務付け、通則法第74条の2が税務職員に帳簿書類その他の物件を検査することを認めている。
     消費税法第30条第7項は、このように帳簿書類その他の物件が税務職員による検査の対象となり得ることを前提として、事業者が30条帳簿等を保存している場合において、税務職員が30条帳簿等を検査することにより課税仕入れの事実を調査することが可能であるときに限り、仕入税額控除の適用ができることを明らかにしたものと解される。
     以上によれば、消費税法第30条第7項にいう「事業者が・・・帳簿及び請求書等を保存しない場合」とは、事業者が30条帳簿等を物理的にその状態のままで保管していなかった場合のみならず、30条帳簿等を整理し、これらを所定の期間及び場所において、通則法第74条の2に基づく税務職員による検査に当たって適時にこれを提示することが可能なように態勢を整えて保存していなかった場合をも含むものと解するのが相当である。
  • ロ 当てはめ
     請求人は、本件調査担当職員より本件調査の事前通知を行うため連絡を受けた平成27年9月11日から、法定調査結果説明を受けた平成28年3月3日までの間に、原処分庁に対して法定帳簿書類等を一切提示しなかった(上記(1)のロ)。また、その間、本件調査担当職員は、平成27年11月19日、同月20日、同年12月1日及び同月9日の4回にわたり、請求人に対し、電話又は書面により、30条帳簿等の保存、提示がない場合には仕入税額控除の適用が受けられない場合がある旨を説明した上で、30条帳簿等の提示を要請していた(上記(1)のロの(チ)、(ヌ)及び(ル))。
     これらの事実に照らせば、請求人は、本件調査担当職員から、再三再四、30条帳簿等の提示がない場合には仕入税額控除の適用が受けられない場合がある旨の説明を受けた上で30条帳簿等の提示要請を受けたにもかかわらず、30条帳簿等を提示しなかったといえるから、通則法第74条の2に基づく税務職員の検査に当たり、適時に30条帳簿等を提示することが可能なように態勢を整えて保存していたとはいえない。
     したがって、本件各課税期間において仕入税額控除は適用されない。
  • ハ 請求人の主張について
     請求人は、前記3の(4)の「請求人」欄のとおり、保存している30条帳簿等を提示するつもりであったが、本件調査担当職員が請求人の都合に合わせなかったことから、これらを提示することができなかったにすぎず、このことは、消費税法第30条第7項に規定する「帳簿及び請求書等を保存しない場合」に該当しないから、仕入税額控除が適用されるべきである旨主張する。
     しかしながら、上記(1)のロで認定した本件調査の経過等によれば、請求人には30条帳簿等を提示する機会があったというべきであるところ、上記ロのとおり、請求人は、30条帳簿等の提示要請を受けたにもかかわらず、30条帳簿等を提示しなかったのであって、通則法第72条の2に基づく税務職員による検査に当たって適時にこれを提示することが可能なように態勢を整えて保存していなかったのであるから、本件各課税期間の仕入税額控除の適用は認められない。
     なお、本件請求人提出資料は、平成28年3月3日に通則法第74条の11に規定する調査終了の際の手続としての法定調査結果説明がなされた後に提出されたものであるから、その内容にかかわらず、当審判所の判断に影響を及ぼさない。
     したがって、この点についての請求人の主張は理由がない。

(5) 本件所得税等各更正処分の適法性について

当審判所で認定した本件各年分の事業所得の金額は、それぞれ別表3-3の本件各年分の「事業所得の金額」欄の「審判所認定額」欄のとおりとなり(上記(3)のニの(ハ))、これが本件各年分の総所得金額でもあるから、これに基づき請求人の本件各年分の所得税又は所得税等の納付すべき税額を算出すると、それぞれ別表3-4の本件各年分の「納付すべき税額」欄の「審判所認定額」欄のとおりとなり、本件所得税等各更正処分の額をいずれも上回ることが認められる。
 なお、本件所得税等各更正処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
 したがって、本件所得税等各更正処分はいずれも適法である。

(6) 本件所得税等各賦課決定処分の適法性について

上記(5)のとおり、本件所得税等各更正処分はいずれも適法であり、本件所得税等各更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が、当該更正処分前の税額の基礎とされなかったことについて、通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する「正当な理由」があるとは認められず、他に計算の基礎となる金額及び計算方法につき請求人は争っていないから、同条第1項及び第2項の規定に基づきされた本件各年分の本件所得税等各賦課決定処分はいずれも適法である。

(7) 本件消費税等各決定処分の適法性について

  • イ 本件各課税期間における基準期間の課税売上高
     請求人の本件各課税期間に係る基準期間における課税売上高は、いずれも千万円を超えており、請求人は、本件各課税期間において、消費税法第9条《小規模事業者に係る納税義務の免除》第1項の規定の適用を受けない。
  • ロ 課税売上高及び課税標準額
    • (イ) 平成22年課税期間、平成23年課税期間及び平成25年課税期間
       平成22年課税期間、平成23年課税期間及び平成25年課税期間の課税売上高及び課税標準額は、それぞれ別表4-1の(1)の「課税売上高」欄及び「課税標準額」欄のとおりとなる。
    • (ロ) 平成26年課税期間
       平成26年課税期間については、平成26年3月31日以前の課税資産の譲渡等については4%の消費税率(以下「旧税率」という。)が、同年4月1日以降の課税資産の譲渡等については6.3%の消費税率(以下「新税率」という。)が適用されることから、上記税率ごとに課税売上高及び課税標準額を算出すべきところ、原処分庁は、課税売上高及び課税標準額について、旧税率適用分の一部を、新税率適用分として、それぞれ別表4-1の(2)の「決定処分額」欄の「旧税率適用分」欄及び「新税率適用分」欄の「課税売上高」欄及び「課税標準額」欄のとおり算出していた。
       そこで、当審判所において、上記税率ごとに課税売上高及び課税標準額を算出すると、それぞれ別表4-1の(2)の「審判所認定額」欄の「旧税率適用分」欄及び「新税率適用分」欄の「課税売上高」欄及び「課税標準額」欄のとおりとなる。
  • ハ 消費税額
     本件各課税期間の課税標準額に旧税率又は新税率を乗じて消費税額を計算すると、それぞれ別表4-2の「消費税額」欄の「審判所認定額」欄のとおりとなる。
  • ニ 仕入税額控除の額
     上記(4)のロのとおり、本件各課税期間において、仕入税額控除は適用されないから、本件各課税期間における仕入税額控除の額は、それぞれ別表4-2の「仕入税額控除の額」欄の「審判所認定額」欄のとおり、いずれも零円となる。
  • ホ 納付すべき消費税額及び地方消費税の額
     本件各課税期間の納付すべき消費税額及び地方消費税額を算定すると、それぞれ別表4-2の「納付すべき消費税額」欄及び「納付すべき地方消費税額」欄の「審判所認定額」欄のとおりとなる。
  • ヘ 小括
    • (イ) 当審判所が認定した請求人の平成22年課税期間、平成23年課税期間及び平成25年課税期間の納付すべき消費税額及び納付すべき地方消費税額は、原処分庁が行った消費税等の各決定処分の額といずれも同額であると認められる。
       なお、平成22年課税期間、平成23年課税期間及び平成25年課税期間の消費税等の各決定処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
       したがって、平成22年課税期間、平成23年課税期間及び平成25年課税期間の消費税等の各決定処分はいずれも適法である。
    • (ロ) 他方、当審判所が認定した請求人の平成26年課税期間の納付すべき消費税額及び納付すべき地方消費税額は、原処分庁が行った平成26年課税期間の消費税等の決定処分の額を下回るので、平成26年課税期間の消費税等の決定処分は、その一部を別紙「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。
       なお、平成26年課税期間の消費税等の決定処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

(8) 本件消費税等各賦課決定処分の適法性について

  • イ 上記(7)のヘの(イ)のとおり、平成22年課税期間、平成23年課税期間及び平成25年課税期間の消費税等の各決定処分はいずれも適法であり、当該各課税期間に係る期限内申告書の提出がなかったことについて、いずれも通則法第66条《無申告加算税》第1項ただし書に規定する「正当な理由」があるとは認められない。そして、同条第1項及び第2項並びに地方税法附則第9条の4《譲渡割の賦課徴収の特例等》及び第9条の9《譲渡割に係る延滞税等の計算の特例》第1項の規定に基づいて無申告加算税の額を計算すると、それぞれ平成22年課税期間、平成23年課税期間及び平成25年課税期間の各賦課決定処分の額と同額となることから、当該各課税期間の消費税等に係る無申告加算税の各賦課決定処分はいずれも適法である。
  • ロ 他方、上記(7)のヘの(ロ)のとおり、平成26年課税期間の消費税等の決定処分は、その一部を取り消すべきであり、それに伴って、無申告加算税の計算の基礎となる金額は、○○○○円となるところ、当該課税期間に係る期限内申告書の提出がなかったことについて、通則法第66条第1項ただし書に規定する「正当な理由」があるとは認められないから、同条第1項及び第2項並びに地方税法附則第9条の4及び第9条の9第1項の規定に基づいて無申告加算税の額を計算すると、別表4-2の「平成26年課税期間」欄の「無申告加算税の額」欄の「審判所認定額」欄のとおり、○○○○円となる。
     そうすると、平成26年課税期間の消費税等に係る無申告加算税の額は、当該課税期間の賦課決定処分の額を下回るので、平成26年課税期間の消費税等に係る無申告加算税の賦課決定処分は、その一部を別紙「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。

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