(平成29年4月25日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、法人税の所得金額の計算上損金の額に算入した代表取締役に対する役員給与の額について、原処分庁が、当該役員給与の額には不相当に高額な部分の金額があり、当該金額は損金の額に算入されないなどとして更正処分等をしたのに対し、請求人が、当該代表取締役の職責を考慮せずに行われた原処分は違法であるなどとして、原処分の一部の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令の要旨

  • イ 法人税法第34条《役員給与の損金不算入》第2項は、内国法人がその役員に対して支給する給与の額のうち不相当に高額な部分の金額として政令で定める金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない旨規定している。
  • ロ 法人税法施行令第70条《過大な役員給与の額》柱書は、法人税法第34条第2項に規定する政令で定める金額は、次に掲げる金額とする旨規定し、法人税法施行令第70条第1号は、1内国法人が各事業年度においてその役員に対して支給した給与の額が、当該役員の職務の内容、その内国法人の収益及びその使用人に対する給与の支給の状況、その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するもの(以下「同業類似法人」という。)の役員に対する給与の支給の状況等に照らし、当該役員の職務に対する対価として相当であると認められる金額(以下「役員給与相当額」という。)を超える場合におけるその超える部分の金額(同号イ)、2定款の規定又は株主総会、社員総会若しくはこれらに準ずるものの決議により役員に対する給与として支給することができる金銭の額の限度額を定めている内国法人が、各事業年度においてその役員(当該限度額が定められた給与の支給の対象となるものに限る。)に対して支給した給与の額が当該事業年度に係る当該限度額を超える場合におけるその超える部分の金額(同号ロ)のうちいずれか多い金額とする旨規定している。

(3) 基礎事実

当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

  • イ 請求人は、自動車販売業等を営む法人であり、主としてc国の自動車販売業者向けに中古自動車の輸出を行っている。
  • ロ M(以下「本件代表者」という。)は、平成22年8月1日から平成23年7月31日までの事業年度(以下「平成23年7月期」といい、他の事業年度についても同様に表記する。)、平成24年7月期、平成25年7月期、平成26年7月期及び平成27年7月期(以下、これらを併せて「本件各事業年度」という。)において、請求人の代表取締役を務めていた者である。
     なお、本件各事業年度において、本件代表者のほか、Kも請求人の代表取締役を務めていた。
  • ハ 請求人は、本件各事業年度において、本件代表者に対して役員給与を支給し(以下、本件代表者に対して支給した役員給与を「本件役員給与」という。)、本件各事業年度の法人税の所得金額の計算において、本件役員給与の額を損金の額に算入した。
     なお、本件役員給与の額は、別表1の「本件役員給与の額」欄記載のとおりであり、請求人の定時株主総会で決議された額と同額であった。

(4) 審査請求に至る経緯

  • イ 請求人は、本件各事業年度の法人税について、青色の確定申告書に別表2の「確定申告」欄のとおり記載して、いずれも法定申告期限までに申告した。
     また、請求人は、平成24年8月1日から平成25年7月31日までの課税事業年度(以下「平成25年7月課税事業年度」という。)及び平成25年8月1日から平成26年7月31日までの課税事業年度(以下「平成26年7月課税事業年度」といい、これらを併せて「本件各課税事業年度」という。)の復興特別法人税について、青色の申告書に別表3の「申告」欄のとおり記載して、いずれも法定申告期限までに申告した。
  • ロ 原処分庁は、これらに対し、平成27年12月11日付で、本件各事業年度の本件役員給与について、役員給与相当額を算定し(以下、原処分庁が算定した金額を「原処分庁算定額」という。)、本件役員給与の額のうち別表1の「原処分庁算定額」欄記載の各金額を超える金額(別表1の「損金不算入額」欄記載の各金額)については、法人税法第34条第2項に規定する不相当に高額な部分の金額に当たり、いずれも本件各事業年度の損金の額に算入されないなどとして、別表2及び別表3の「更正処分等」欄記載のとおり、本件各事業年度の法人税の各更正処分(以下「本件法人税各更正処分」という。)及び過少申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件法人税各賦課決定処分」という。)並びに本件各課税事業年度の復興特別法人税の各更正処分(以下「本件復興特別法人税各更正処分」という。)及び過少申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件復興特別法人税各賦課決定処分」といい、これらを併せて「本件各処分」という。)をした。
     なお、本件各処分の通知書は、平成27年12月15日に請求人に送達された。
  • ハ 請求人は、本件各処分を不服として、平成28年2月12日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年4月11日付で、いずれも棄却の異議決定をした。
     なお、異議決定書の謄本は、平成28年4月13日に請求人に送達された。
  • ニ 請求人は、異議決定を経た後の本件各処分に不服があるとして、平成28年5月12日に審査請求をした。

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2 争点

本件役員給与の額には、不相当に高額な部分の金額として損金の額に算入されない金額があるか否か。

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3 争点についての主張

(1) 原処分庁の主張

  • イ 本件代表者の職務の内容は、c国に在住しながら同国における新規開拓営業を行うことが主であると認められる。
  • ロ 請求人の本件各事業年度における収益の状況は、別表4記載のとおりであり、平成22年7月期を基準として、減少傾向にあると認められる。
  • ハ 請求人の使用人に対する給与の支給の状況は、別表5記載のとおりであり、本件役員給与の額の伸び率は、使用人に対する給与の平均支給額の伸び率よりも高くなっていると認められる。
  • ニ 役員給与相当額の算定に当たっては、同業類似法人の役員給与の支給事例における役員給与の平均額又は最高額を用いることが相当である。
     そこで、原処分庁は、次の基準をいずれも満たす同業類似法人(以下「本件同業類似法人」という。)を抽出したところ、本件同業類似法人は9社であった。そして、本件各事業年度における本件同業類似法人の代表取締役に対する役員給与の支給額は、別表6記載のとおりであった。
    • (イ) 日本標準産業分類の分類項目が「小分類542−自動車卸売業」に該当する法人であること。
    • (ロ) 原処分庁の管轄区域内並びにこれと隣接するN、P、Q、R、S及びTの各税務署の管轄区域内に納税地を有する法人であること。
    • (ハ) 請求人の本件各事業年度の売上金額を基準として、本件各事業年度の終了の日前後6か月以内(平成27年7月期については事業年度終了の日前6か月以内)に終了する各事業年度の売上金額が2分の1以上2倍以下の範囲に含まれる法人であること。
    • (ニ) 各事業年度の中途において、設立、解散、休業、業種目の変更又は決算期の変更をしていない法人であること。
    • (ホ) 更正又は決定処分がされている法人のうち、当該処分の不服申立期間若しくは出訴期間が経過していない法人又は訴訟が係属している法人ではないこと。
  • ホ そして、本件役員給与の額を、1上記イの本件代表者の職務の内容、2上記ロの請求人の本件各事業年度の収益の状況、3上記ハの請求人の使用人に対する給与の支給の状況、4上記ニの本件同業類似法人の代表取締役に対する役員給与の支給の状況等に照らして判断すると、本件同業類似法人における代表取締役に支給された役員給与の平均額はもちろんのこと、最高額と比較しても本件役員給与の額は極めて高額であり、明らかに不相当に高額な部分の金額があるというべきである。
  • ヘ そこで、原処分庁は、別表6記載のとおり、本件同業類似法人の代表取締役に対する役員給与の額の最高額が、平成23年7月期はD社のXX,XXX,XXX円、平成24年7月期はD社のXX,XXX,XXX円、平成25年7月期はD社のXX,XXX,XXX円、平成26年7月期及び平成27年7月期はいずれもH社のXX,XXX,XXX円であることから、これらをもって本件各事業年度における本件代表者に対する役員給与相当額であると判断して原処分を行ったものである。したがって、役員給与相当額を超える本件役員給与の額には、不相当に高額な部分の金額として損金の額に算入されない金額がある。
  • ト なお、請求人は、本件同業類似法人の抽出基準には合理性がない旨主張するが、次のとおり合理性がある。
    • (イ) 日本標準産業分類は、統計調査の結果を産業別に表示する場合の統計基準として、事業所において社会的な分業として行われる財及びサービスの生産又は提供に係る全ての経済活動を分類するものであり、その分類は社会通念に基づく客観的なものということができ、当該産業分類に掲げる分類を基礎として事業の範囲を判定することには合理性があると認められる。
    • (ロ) 本件各事業年度の請求人の法人税の確定申告書に添付された「売掛金(未収入金)の内訳書」によれば、売掛金の大半が自動車販売業者に対するものであることから、請求人の業種は卸売業であると認められる。また、当該業種は、日本標準産業分類の分類項目表における「大分類1−卸売業、小売業」「中分類54−機械器具卸売業」「小分類542−自動車卸売業」のうち「細分類5421−自動車卸売業(二輪自動車を含む)」に該当すると認められるが、同業類似法人の抽出は客観的に相当な給与の額を算定するためのものであり、本件同業類似法人の業種として「小分類542−自動車卸売業」を採用したとしても、その資料の意義は失われるものではなく、十分合理性があると認められる。
    • (ハ) 一般的に、同業類似法人の抽出に当たり、当該法人の所在地と近接した経済事情が類似する地域に存する法人を対象とすることが最も適当であると解されており、原処分庁の管轄区域内並びにこれと隣接するN、P、Q、R、S及びTの各税務署の管轄区域内に納税地を有する法人を対象としたことに合理性があると認められる。
    • (ニ) 請求人と事業規模が類似する法人を抽出するに当たり、請求人の本件各事業年度の売上金額の2分の1以上2倍以下の範囲に含まれる法人を抽出する基準、いわゆる倍半基準は、同業類似法人を抽出するための基準として優れた合理性を有するものとして一般に承認されているものであるといえる。

(2) 請求人の主張

  • イ 原処分庁は、本件同業類似法人の抽出に係る資料を国税通則法(平成26年法律第69号による改正前のものをいい、以下「通則法」という。)第96条《原処分庁からの物件の提出及び閲覧》第1項に基づいて担当審判官に提出をせず、同条第2項に基づく当該資料の閲覧をすることができないようにしているところ、当該資料を原処分庁の主張する事実の認定に用いていることは、同項が閲覧を認めた趣旨を没却するものであって許されない。そうすると、原処分庁の主張を認めるに足る証拠を欠くことになるのであるから、本件同業類似法人の代表取締役に対する役員給与の額を基礎とする原処分は取り消されるべきである。
  • ロ 本件代表者の職務の内容は、広告宣伝、クライアントとの関係の構築、オークションでの落札の指示、クライアントからの注文の取得、クライアントからのクレームへの対応、クライアントへの支払の催促など、請求人の事業全般にわたるものであり、一般に想定される範囲を超えるものであることは明らかであり、本件同業類似法人の代表取締役の職務の内容と比較して格別なものであるから、本件同業類似法人の代表取締役に対する役員給与の最高額をもって、役員給与相当額ということはできない。
  • ハ 原処分庁は、平成22年7月期を基準として、本件各事業年度における売上金額及び売上総利益の額を比較し、収益の状況が減少傾向にあると主張する。しかしながら、営利企業における役員給与の額の相当性を検討するに当たり、売上金額の増減を検討すること自体には意味がない。また、平成22年7月期の収益の状況の特殊性に鑑み、平成21年7月期と平成22年7月期の平均値を基準とするのが合理的である。そうすると、本件各事業年度における売上総利益の額はほぼ横ばい、改定営業利益の額(営業利益の額に本件役員給与の額を加算したものをいう。以下同じ。)はむしろ増加傾向にあることは明らかであり、原処分庁の主張は誤っている。
  • ニ また、原処分庁は、平成22年7月期を基準として、本件各事業年度における使用人に対する給与の総支給額及び平均支給額を比較し、使用人に対する給与の支給額が減少傾向にあると主張する。しかしながら、原処分庁の主張は、平成22年7月期末に在職していた従業員のうち、特に給与が高かった者が退職したことや、請求人が平成23年頃から業務の効率化とシステム化を進めた結果、必要な従業員の数自体が相当に減少したことなどを看過しており、合理的とはいえない。使用人に対する給与の支給の状況としては、在職を続けている従業員に対する給与の支給額は毎年のように増加していることを考慮すべきである。
  • ホ さらに、原処分庁が用いた本件同業類似法人の抽出基準は、次の点で、合理性を有するとはいえない。
    • (イ) 「同種の事業」とは、できるだけ対象となる法人と類似するものが望ましいものとされていることからすれば、請求人の同業類似法人の抽出に当たっては、中古自動車の輸出業を営む法人という基準とするか、少なくとも、日本標準産業分類の分類項目「細分類5421−自動車卸売業(二輪自動車を含む)」に該当する法人であることを条件とすべきである。
    • (ロ) インターネットオークションで落札した中古自動車をc国を中心とした海外に輸出するという請求人の事業においては、所在地が収益の状況に与える影響はないに等しいことからすれば、地域的な限定をすべきでない。
    • (ハ) 事業規模の類似性を判断するに当たっては、売上金額だけでなく総資産の額や改定営業利益の額、従業員数も考慮すべきである。
    • (ニ) 原処分庁が抽出した本件同業類似法人には大手企業の事業部門にすぎない子会社等が含まれていると推察されるところ、請求人が完全に独立した法人であることからすれば、請求人の同業類似法人の抽出に当たっては、独立した法人であることを条件とすべきである。
       なお、請求人が調べたところによれば、U社、V社及びX社の3社が本件同業類似法人に含まれているものと推察されるが、いずれも請求人の同業類似法人であると認めることはできず、このような法人が抽出されていることが、原処分庁の抽出基準の不合理性の証左である。
  • ヘ 上記イからホまでのとおり、原処分庁の判断は合理性を欠くものであり、本件役員給与の額には、不相当に高額な部分の金額として損金の額に算入されない金額はない。
  • ト 仮に、本件役員給与に係る原処分の全部が取り消されないとしても、平成21年7月期及び平成22年7月期の平均値と比較して、本件各事業年度の売上総利益の額がほぼ横ばいにあることや改定営業利益の額が増加傾向にあることから、役員給与相当額は平成21年7月期及び平成22年7月期の本件代表者に対する役員給与の平均額(128,000,000円)を下回るものではない。
  • チ また、仮に、平成23年7月期から平成25年7月期までの役員給与相当額が原処分庁算定額のとおりであったとしても、平成26年7月期及び平成27年7月期の本件代表者の職務の内容に変化がなく、売上総利益の額及び改定営業利益の額がほぼ横ばいであったことからすると、同期の役員給与相当額を大幅に減少させる合理的な理由は認められないから、平成26年7月期及び平成27年7月期における役員給与相当額は、平成23年7月期から平成25年7月期までにおける原処分庁算定額の平均額(87,900,000円)を下回るものではない。

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4 当審判所の判断

(1) 争点(本件役員給与の額には、不相当に高額な部分の金額として損金の額に算入されない金額があるか否か。)について

  • イ 法人税法第34条第2項の趣旨等について
    • (イ) 法人税法第34条第2項は、内国法人がその役員に対して支給する給与の額のうち不相当に高額な部分の金額として政令で定める金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない旨規定している。
       この規定の趣旨は、課税の公平性を確保する観点から、職務執行の対価としての相当性を確保し、役員給与の金額決定の背後にある恣意性の排除を図るという考え方によるものと解される。
       そして、法人税法施行令第70条第1号は、上記の規定を受けて、「不相当に高額な部分の金額」を、役員に対して支給した給与の額のうち、1当該役員の職務の内容、内国法人の収益及びその使用人に対する給与の支給の状況、同業類似法人の役員に対する給与の支給の状況等に照らし、役員給与相当額を超える部分の金額(同号イ)、2定款の規定又は株主総会等の決議により定められている役員給与の支給限度額を超える部分の金額(同号ロ)のいずれか多い金額である旨規定している。
    • (ロ) 本件においては、上記1(3)ハのとおり、本件役員給与の額は、請求人の定時株主総会において決議された額と同額であるから、本件役員給与の額は、上記(イ)2の限度額を超えるものではない。
       そこで、以下においては、本件役員給与の額が、上記(イ)1の基準による役員給与相当額を超えるものであるか否かについて検討することとするが、原処分庁が主張するとおり(上記3(1)ヘ)、原処分庁は、本件役員給与の額のうち、本件同業類似法人の代表取締役に対する役員給与の額の最高額を超える部分の金額が不相当に高額であるとして本件各処分をしたものであるから、この点を考慮し、本件役員給与の額のうち、上記最高額を超える部分の金額が不相当に高額な部分の金額であるか否かとの観点から、本件各処分の適法性を検討する。
  • ロ 認定事実
     原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
    • (イ) 請求人の事業内容
       請求人の事業内容は、c国に在住する本件代表者が、同国で事前にクライアントである自動車販売業者の意向を把握した上で、その意向に合った、いわゆる新古車のような程度の良い中古自動車を、古物商の資格により、日本国内の中古自動車のオークションにおいて落札し、その落札した中古自動車をc国の自動車販売業者に対して輸出販売する卸売が主である。
    • (ロ) 本件代表者の職務の内容
       本件代表者の職務の内容は、本件各事業年度において、中古自動車の主たる輸出先であるc国に在住して、同国において、1広告宣伝、2クライアントとの関係の構築、3クライアントの購入の意向の把握、4オークションでの落札の指示、5クライアントからの注文の取得、6クライアントからのクレームへの対応、7クライアントへの支払の催促などであった。
       なお、本件各事業年度において、本件代表者の職務の内容に特段の変化はなかった。
    • (ハ) 請求人の収益の状況並びに使用人に対する給与の支給及び本件役員給与の状況
      • A 平成22年7月期及び本件各事業年度における請求人の売上金額、売上総利益の額、営業利益の額及び改定営業利益の額の状況は、別表4記載のとおりであった。
      • B 平成22年7月期及び本件各事業年度における請求人の使用人に対する給与の支給の状況及び本件役員給与の状況は、別表5記載のとおりであった。
    • (ニ) 原処分庁による役員給与相当額の算定
      • A 原処分庁は、次の(A)から(E)までの抽出基準に基づき、別表6記載の9社を本件同業類似法人として抽出した。
        • (A) 日本標準産業分類の分類項目表における「小分類542−自動車卸売業」に該当する事業を営む法人であること。
        • (B) 原処分庁の管轄区域内並びにこれと隣接するN、P、Q、R、S及びTの各税務署の管轄区域内に納税地を有する法人であること。
        • (C) 本件各事業年度の終了の日前後6か月以内(平成27年7月期については事業年度終了の日前6か月以内)に終了する各事業年度の売上金額が、請求人の本件各事業年度の売上金額を基準として2分の1以上2倍以下の範囲に含まれる法人であること。
           なお、本件同業類似法人の売上金額の状況、売上総利益の額の状況及び営業利益の額の状況は、それぞれ別表7、別表8及び別表9のとおりである。
        • (D) 各事業年度の中途において、設立、解散、休業、業種目の変更又は決算期の変更をしていない法人であること。
        • (E) 更正又は決定処分がされている法人のうち、当該処分の不服申立期間若しくは出訴期間が経過していない法人又は訴訟が係属している法人ではないこと。
      • B 原処分庁は、上記Aのとおり抽出した本件同業類似法人の本件各事業年度における代表取締役に対する役員給与の額の最高額をもって、本件代表者の役員給与相当額を算定した。その結果、原処分庁算定額は、別表6の「原処分庁算定額」欄記載の各金額となった。
  • ハ 検討
    • (イ) 本件代表者の職務の内容
      • A 本件代表者の職務の内容は、上記ロ(ロ)のとおりであるところ、請求人は、上記ロ(イ)のとおり、中古自動車の卸売業を営む法人であり、かかる法人においては、クライアントの獲得、クライアントからの受注、中古自動車の落札及び販売を主な事業内容として事業を継続していることに照らすと、本件代表者の職務の内容は、当該事業内容に沿うものであって、中古自動車の卸売業を営む法人の代表取締役として一般的に想定される範囲内のものであるというべきである。
      • B この点について、請求人は、本件代表者の職務の内容は、請求人の事業全般にわたるものである旨主張するが、本件代表者は、株式会社の代表取締役であることから、業務を執行すべき職責上、その職務の内容が請求人の事業全般にわたることは一般的に想定される範囲内のものであるというほかなく、上記の中古自動車の卸売業における事業内容に照らしても、本件代表者の職務の内容が特別に高額な役員給与を支給すべきほどのものであるとまでは評価し難い。
         また、本件代表者が、主としてc国の自動車販売業者に対する売上げに貢献しているとしても、後述のとおり、役員給与相当額は、同業類似法人の代表取締役に対する役員給与の額の最高額をもって算出するのであるから、本件代表者の貢献の程度は、役員給与相当額に反映されているというべきである。
    • (ロ) 請求人の収益の状況並びに使用人に対する給与の支給及び本件役員給与の状況
      • A 請求人の収益の状況は、上記ロ(ハ)Aのとおりであるところ、本件各事業年度における売上総利益の額は、平成22年7月期と比較すると、いずれも減少しているものの、最高額である平成25年7月期の額が最低額である平成23年7月期の額の1.2倍程度という範囲内の増減幅であるから、おおむね一定であったといえる。
         また、使用人に対する給与の支給の状況及び本件役員給与の状況は、上記ロ(ハ)Bのとおりであるところ、本件各事業年度における請求人の使用人に対する給与の平均支給額の状況は、平成22年7月期と比較すると、多少の増減があるものの、最高額である平成24年7月期の額が最低額である平成25年7月期の額の1.4倍程度という範囲内の増減幅であるから、おおむね一定であったといえる。
         これに対し、本件役員給与の状況は、別表5の「本件役員給与の額」欄のとおり、平成22年7月期と比較すると、本件各事業年度においては、平成23年7月期が約2.3倍、平成24年7月期が約3.3倍、平成25年7月期が約3.9倍、平成26年7月期が4倍、平成27年7月期が約4.3倍と、いずれも高い伸び率となっている。
      • B なお、請求人は、改定営業利益の額及び在職を続けている従業員に対する給与の支給額が増加傾向にある旨主張するが、請求人の主張を前提にしても、請求人の収益の状況及び使用人に対する給与の支給の状況と比較して、本件役員給与の状況が高い伸び率であることに変わりはないというべきである。
    • (ハ) 同業類似法人における役員給与の支給の状況等
      • A 原処分庁における本件同業類似法人の抽出基準及びその結果は、上記ロ(ニ)のとおりである。これによれば、原処分庁は、請求人の所在する原処分庁の管轄区域内並びにこれと隣接するN、P、Q、R、S及びTの各税務署の管轄区域内に納税地を有する日本標準産業分類の分類項目表における「小分類542−自動車卸売業」に該当する法人で、本件各事業年度の終了の日前後6か月以内(平成27年7月期については事業年度終了の日前6か月以内)に終了する各事業年度の売上金額が、請求人の本件各事業年度の売上金額を基準として2分の1以上2倍以下の範囲に含まれる法人として、別表6記載の9社を抽出している。
         法人税法施行令第70条第1号は、不相当に高額な部分の金額の検討に当たり、同業類似法人の役員に対する給与の支給の状況を考慮要素として掲げているところ、一般的にみて同業種・類似規模で同地域にあれば、当該法人も同様の経済状況にあり、また、その役員の職務に対する給与として通常支給される額も類似するといえる。さらに、原処分庁が設けた上記ロ(ニ)A(D)及び(E)の抽出基準により特殊要因を有する法人が除外されていることに鑑みると、抽出に当たって採用した資料の正確性も担保されている。
         以上のことから、原処分庁が本件同業類似法人を抽出し、その代表取締役に対する役員給与の支給の状況を調査した方法は、本件役員給与との比較のための資料として用いることができるだけの類似性を有する法人を抽出するためのものとして合理的なものであるということができる。
      • B これに対し、請求人は、上記3(2)ホのとおり、原処分庁が用いた本件同業類似法人の抽出基準が合理性を有しない旨主張する。
         同業類似法人の抽出については、役員給与の額の比較のための資料である以上、業種、業態、規模(売上金額、期末資産合計額、従業員数)、収益の状況等ができるだけ当該法人と類似するものであることが望ましいものの、その役員給与の額は客観的に相当な金額を算定するための一資料として用いられるにすぎないものであることからすれば、その類似性は厳密なものでなくとも資料としての意義は失われないものと解されるので、これを前提に請求人の主張を検討する。
        • (A) 業種について
           請求人は、請求人の同業類似法人の抽出に当たっては、中古自動車の輸出業を営む法人とするか、少なくとも、日本標準産業分類の分類項目「細分類5421−自動車卸売業(二輪自動車を含む)」に該当する法人であることを条件とすべきである旨主張する。
           しかしながら、中古自動車の輸出業という業種は、日本標準産業分類に定められているものではなく、輸出割合が法人ごとに区々であることからすると、客観的な基準になり得るものとは評価し難い。これに対し、日本標準産業分類が広く社会に認められた客観的な分類基準であり、請求人が、主としてc国の自動車販売業者向けに中古自動車の輸出を行う自動車卸売業者であることからすれば、原処分庁が、日本標準産業分類の分類項目表に従って、「小分類542−自動車卸売業」に該当する法人から本件同業類似法人を抽出したことには合理性があると認められる。
           したがって、請求人の主張は採用できない。
        • (B) 地域について
           請求人は、インターネットオークションで落札した中古自動車をc国を中心とした海外に輸出するという請求人の事業においては、所在地が収益の状況に与える影響はないに等しいことからすれば、地域的な限定をすべきでない旨主張する。
           しかしながら、請求人における中古自動車の仕入方法や販売経路が請求人の主張のとおりであったとしても、請求人は、所在地であるA市において事業を営み、使用人に対する給与を支給するなどして経済活動を行っているのであるから、地域的要因の影響を受けているといえる。
           そうすると、原処分庁が、本件同業類似法人の抽出範囲を請求人の所在する原処分庁の管轄区域内並びにこれと隣接するN、P、Q、R、S及びTの各税務署の管轄区域内に限定したことにも合理性が認められる。
           したがって、請求人の主張は採用できない。
        • (C) 事業規模について
           請求人は、事業規模の類似性を判断するに当たっては、売上金額だけでなく総資産の額や改定営業利益の額、従業員数も考慮すべきである旨主張する。
           しかしながら、売上金額は、法人の事業規模を示す最も重要な指標の一つであるということができることに照らせば、売上金額が請求人の本件各事業年度の売上金額を基準として2分の1以上2倍以下の範囲に含まれる法人を抽出した基準には合理性があるというべきであり、請求人の主張は採用できない。
           また、請求人は、本件同業類似法人には大手企業の事業部門にすぎない子会社等が含まれていると推察されるところ、請求人が完全に独立した法人であることからすれば、請求人の同業類似法人の抽出に当たっては、独立した法人であることを条件とすべきである旨主張する。
           しかしながら、上記Aのとおり、原処分庁の抽出基準は、請求人と類似性を有する法人を抽出するためのものとして合理性を有するものであり、当該基準に基づいて抽出した結果であるから、本件同業類似法人に大手企業の子会社等が仮に含まれていたとしても、当該事由が抽出基準の合理性を左右するものではなく、請求人の主張は採用できない。
      • C 上記A及びBのとおり、原処分庁が設けた本件同業類似法人の抽出基準は合理的であると認めることができるところ、かかる方法により抽出された別表6記載の9社の本件同業類似法人の代表取締役に対して支給された役員給与の額の最高額についてみると、平成23年7月期、平成24年7月期及び平成25年7月期についてはD社の支給額が、平成26年7月期及び平成27年7月期についてはH社の支給額が最高額となっている。
         しかしながら、当審判所の調査及び審理の結果によれば、H社については、自動車の卸売を一部行うものの、主として自動車用品の小売業を営む法人であると認められ、請求人の業種と類似性を有するとは認められないから、H社を本件同業類似法人から除外することが相当である。
         そこで、当審判所においては、本件同業類似法人からH社を除外した後の同業類似法人(以下「審判所認定類似法人」という。)の役員給与の支給状況等について検討する。
      • D まず、平成23年7月期、平成24年7月期及び平成25年7月期における審判所認定類似法人の代表取締役の役員給与の額についてみると、D社の支給額がいずれも最高額となっている。そして、D社について請求人と比較すると、別表7から別表9までに記載のとおり、平成23年7月期、平成24年7月期及び平成25年7月期において、売上金額が請求人のそれぞれ約1.4倍、約1.8倍及び約1.9倍、売上総利益の額が請求人のそれぞれ約3.7倍、約3.2倍及び約3.6倍、営業利益の額が請求人のそれぞれ約6.6倍、約1.3倍及び約3.5倍と、いずれも上回っており、D社の経営状況は良好と評価することができる。
         他方で、平成26年7月期及び平成27年7月期における審判所認定類似法人の代表取締役の役員給与の額についてみると、B社の支給額XX,XXX,XXX円がいずれも最高額となっている。そして、B社について請求人と比較すると、別表7から別表9までに記載のとおり、平成26年7月期及び平成27年7月期において、売上金額が請求人のそれぞれ約0.7倍及び約0.6倍、売上総利益の額が請求人のそれぞれ約0.4倍及び約0.3倍、平成26年7月期の営業利益の額が請求人の約0.2倍、平成27年7月期は営業損失であり、B社の経営状況は良好と評価することができない。
    • (ニ) 本件役員給与の額に不相当に高額な部分の金額があるか否か
      • A 以上のとおり、本件代表者の職務の内容は、中古自動車の卸売業を営む法人の代表取締役として一般的に想定される範囲内のものであるということができ、特別に高額な役員給与を支給すべきほどの職務の内容であるとまでは評価し難い。
         また、本件役員給与の額のみが平成22年7月期と比較して高い伸び率となっているが、本件各事業年度において、本件代表者の職務の内容に大きな変化はなく、請求人の売上総利益の額が、平成22年7月期と比較していずれも減少しているものの、おおむね一定であり、請求人の使用人に対する給与の平均支給額の状況も、平成22年7月期と比較しておおむね一定であったことにも照らすと、本件役員給与の額は、審判所認定類似法人の役員給与の額を超えることになるものとは認め難い。
         にもかかわらず、本件役員給与の額は、平成23年7月期から平成25年7月期までにおいて、審判所認定類似法人の代表取締役に対して支給された役員給与の額の最高額となっているD社の支給額をも上回るものであり、しかも同社は、請求人との比較においても相当に経営状況が良好と評価することができる。
         これらの点に鑑みれば、本件役員給与の額には不相当に高額な部分の金額があるというべきである。
      • B 以上で検討したところを踏まえて、本件各事業年度における本件代表者の役員給与相当額について検討すると、平成23年7月期から平成25年7月期までにおいては、審判所認定類似法人の代表取締役に対して支給された役員給与の額の最高額となっているD社の支給額を超えるものとは認め難いというべきである。
         他方で、平成26年7月期及び平成27年7月期については、上記(ハ)Dのとおり、B社の支給額が審判所認定類似法人の代表取締役に対して支給された役員給与の額の最高額となっているが、その額は平成23年7月期から平成25年7月期までにおいて最高額となっているD社の支給額を大幅に下回ることとなる。
         しかしながら、既にみたとおり、本件各事業年度において、本件代表者の職務の内容に役員給与の額を減額するような変化があったとは認められず、かつ、請求人の収益の状況及び請求人の使用人に対する給与の支給の状況もおおむね一定であったという本件の事実関係に照らせば、平成26年7月期及び平成27年7月期の本件代表者の役員給与相当額が平成23年7月期から平成25年7月期までの役員給与相当額から大幅に下回るものとは考え難く、B社の支給額をもって直ちに本件代表者の役員給与相当額とみることはできない。
         そこで、当審判所において、本件の全証拠資料を踏まえて平成26年7月期及び平成27年7月期の本件代表者の役員給与相当額を検討すると、上記(ハ)Dのとおり、審判所認定類似法人の代表取締役に対して支給された役員給与の額については、平成23年7月期から平成25年7月期まではD社の支給額が最高額となっており、D社の代表取締役に対して支給された役員給与の額は、平成23年7月期から平成25年7月期までのうち、平成25年7月期における支給額が最高額(XX,XXX,XXX円)となっているところ、請求人の平成26年7月期及び平成27年7月期の売上金額、売上総利益の額及び改定営業利益の額が平成25年7月期と比較していずれも減少していることからすると、本件代表者の役員給与の額が平成25年7月期より減額されることはあっても増額される要因はないものと考えられるのに対し、D社の平成25年7月期の売上金額、売上総利益の額及び営業利益の額が平成23年7月期から平成25年7月期までのうちで最高額を計上していることを合わせ考慮すると、平成26年7月期及び平成27年7月期の本件代表者の役員給与相当額については、少なくとも平成25年7月期における審判所認定類似法人の代表取締役に対して支給された役員給与の額の最高額であるD社の支給額XX,XXX,XXX円を超えるものとは認め難いというべきである。
      • C したがって、本件各事業年度における本件役員給与の額については、別表10記載のとおり、「役員給与相当額」欄記載の金額を超える部分の金額は、不相当に高額であるというべきである。
  • ニ その他の請求人の主張について
     請求人は、原処分庁が本件同業類似法人の抽出に係る資料を通則法第96条第1項に基づいて担当審判官に提出をせず、同条第2項に基づく当該資料の閲覧をすることができないようにしているところ、当該資料を原処分庁の主張する事実の認定に用いていることは、同項が閲覧を認めた趣旨を没却するものであって許されず、そうすると、原処分庁の主張を認めるに足る証拠を欠くことになるのであるから、本件同業類似法人の代表取締役に対する役員給与の額を基礎とする原処分は取り消されるべきである旨主張する。
     しかしながら、請求人の主張は、審査請求後における原処分庁の証拠資料の提出に係る対応を非難し、それによって原処分庁の主張に対する反論とするものであって、原処分に係る手続上の不備など原処分を取り消す理由となる直接的な事由によるものではない。
     よって、請求人の主張は採用できない。

(2) 本件法人税各更正処分の適法性について

  • イ 役員給与の損金不算入額について
     以上審理したところによれば、上記(1)のとおり、本件役員給与の額のうち、当審判所が算定した役員給与相当額を超える額が法人税法第34条第2項に規定する不相当に高額な部分の金額となる。
  • ロ 事業税及び地方法人特別税の損金算入額について
     本件法人税各更正処分について、当審判所に提出された証拠資料等によれば、平成24年7月期から平成27年7月期までの事業税の損金算入額(地方法人特別税の損金算入額を含む。以下同じ。)の計算において、事業税の課税標準額並びに地方法人特別税の課税標準額及び税率に誤りが認められる。
     併せて、平成25年7月期から平成27年7月期までについて、各事業年度の前事業年度の所得金額の再計算に伴い、事業税の損金算入額を再計算する。
     その結果、平成24年7月期から平成27年7月期までの事業税の損金算入額は、別表11の「審判所認定額」欄記載のとおりとなる。
  • ハ 広告宣伝費の計上漏れについて
     請求人は、当審判所に対し、平成27年7月期において、c国で開催されたオートバイレースのイベントのスポンサー料や請求人が扱う中古自動車の特集が掲載された雑誌の広告費用を本件代表者が立替払いしており、請求人の所得金額の計算上損金とすべき広告宣伝費の計上漏れがある旨主張し、当該主張を裏付ける証拠として、当該費用のタックスインボイス、イベントの写真等を提出している。
     しかしながら、請求人における損金の額に算入すべき費用の存否及び額については、通常、当該費用に係る証拠資料を請求人が整理・保存しているものであるから、その性質上、請求人が、これを合理的に裏付ける程度の立証をしなければならないと解されるところ、請求人が提出した証拠資料からは、当該費用に係るイベントの開催日の一部及び広告の掲載された雑誌の発行日など実際に役務提供を受けた時期が明らかではなく、本件代表者が当該費用を支払った事実も明らかではない。また、当審判所から請求人に対して、これらの明らかでない点について証拠資料の提出を求めたが、請求人はこれを提出していない。
     したがって、当該費用については、その存否及び帰属する事業年度等の立証がなされないことから、平成27年7月期の所得金額の計算上、損金の額への算入を認めることはできない。
  • ニ 所得金額等について
     上記イ及びロを前提に、当審判所において、請求人の本件各事業年度の所得金額及び納付すべき法人税額を計算すると、別表12の「審判所認定額」欄記載のとおりとなる。
     その結果、平成23年7月期については、法人税の更正処分の金額と同額であり、平成24年7月期及び平成25年7月期については、法人税の各更正処分の金額を上回る。
     他方、平成26年7月期及び平成27年7月期については、法人税の各更正処分の金額を下回る。
     なお、本件法人税各更正処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、ほかに取り消すべき事由は見当たらない。
     したがって、本件法人税各更正処分のうち、平成26年7月期及び平成27年7月期の法人税の各更正処分は、それぞれその一部が違法であるが、平成23年7月期から平成25年7月期までの法人税の各更正処分は、いずれも適法である。

(3) 本件法人税各賦課決定処分の適法性について

本件法人税各更正処分のうち、平成26年7月期及び平成27年7月期の法人税の各更正処分は、上記(2)のとおり、それぞれその一部が違法であるが、それ以外の点は通則法第65条《過少申告加算税》第1項及び第2項の所定の要件を充足する。
 また、本件法人税各更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が本件法人税各更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、請求人に通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」があるとは認められない。
 そして、当審判所において、平成26年7月期及び平成27年7月期の過少申告加算税の額を計算すると、それぞれ平成26年7月期及び平成27年7月期の過少申告加算税の各賦課決定処分の金額に満たない。
 したがって、本件法人税各賦課決定処分のうち、平成26年7月期及び平成27年7月期の過少申告加算税の各賦課決定処分は、それぞれその一部が違法であるが、平成23年7月期から平成25年7月期までの過少申告加算税の各賦課決定処分は、いずれも適法である。

(4) 本件復興特別法人税各更正処分の適法性について

上記(2)のとおり、平成25年7月期及び平成26年7月期の納付すべき法人税額は、別表12の「審判所認定額」欄記載のとおりとなるところ、これに基づき本件各課税事業年度の復興特別法人税の納付すべき税額を計算すると、別表13の「審判所認定額」欄記載のとおりとなる。
 その結果、平成25年7月課税事業年度については、復興特別法人税の更正処分の金額を上回る。
 他方、平成26年7月課税事業年度については、復興特別法人税の更正処分の金額を下回る。
 なお、本件復興特別法人税各更正処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、ほかに取り消すべき事由は見当たらない。
 したがって、本件復興特別法人税各更正処分のうち、平成26年7月課税事業年度の復興特別法人税の更正処分は、その一部が違法であるが、平成25年7月課税事業年度の復興特別法人税の更正処分は、適法である。

(5) 本件復興特別法人税各賦課決定処分の適法性について

本件復興特別法人税各更正処分のうち、平成26年7月課税事業年度の復興特別法人税の更正処分は、上記(4)のとおり、その一部が違法であるが、それ以外の点は通則法第65条第1項及び第2項の所定の要件を充足する。
 また、本件復興特別法人税各更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が本件復興特別法人税各更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、請求人に通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」があるとは認められない。
 そして、当審判所において、平成26年7月課税事業年度の過少申告加算税の額を計算すると、平成26年7月課税事業年度の過少申告加算税の賦課決定処分の金額に満たない。
 したがって、本件復興特別法人税各賦課決定処分のうち、平成26年7月課税事業年度の過少申告加算税の賦課決定処分は、その一部が違法であるが、平成25年7月課税事業年度の過少申告加算税の賦課決定処分は、適法である。

(6) 結論

以上によれば、1平成26年7月期及び平成27年7月期の法人税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分は、いずれもその一部を別紙1及び別紙2の「取消額等計算書」のとおり、また、2平成26年7月課税事業年度の復興特別法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分は、いずれもその一部を別紙3の「取消額等計算書」のとおり、それぞれ取り消し、その他の原処分に対する審査請求には理由がないからいずれも棄却することとする。

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