(平成30年3月14日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、固定資産課税台帳に価格の登録がない土地を買い受けることとした審査請求人(以下「請求人」という。)が、a市長が発行した当該土地に係る土地評価証明書の備考欄に記載された近傍宅地1平方メートル当たりの価格に基づき計算した登録免許税を納付して当該土地の所有権移転登記を受けた後、納付税額が過大であったとして行った還付の通知をすべき旨の請求について、原処分庁が、過誤納の事実は認められないとして還付の通知をすべき理由がない旨の通知処分を行ったのに対し、請求人が、同処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令等

  • イ 国税通則法関係
     国税通則法(以下「通則法」という。)第15条《納税義務の成立及びその納付すべき税額の確定》第2項第12号及び同条第3項第5号は、登録免許税は、登記、登録、特許、免許、許可、認可、認定、指定又は技能証明(以下「登記等」という。)の時に納税義務が成立し、納税義務の成立と同時に特別の手続を要しないで納付すべき税額が確定する旨規定している。
  • ロ 登録免許税法関係
    • (イ) 登録免許税法第10条《不動産等の価額》第1項は、同法別表第1第1号等に掲げる不動産等の登記等の場合における課税標準たる不動産等の価額は、当該登記等の時における不動産等の価額による旨規定している。
    • (ロ) 登録免許税法第31条《過誤納金の還付等》第1項第3号は、登記機関は、登記等を受けた者が過大に登録免許税を納付して登記等を受けたときは、遅滞なく、当該過大に納付した登録免許税の額その他政令で定める事項を登記等を受けた者の当該登録免許税に係る同法第8条《納税地》第2項の規定による納税地の所轄税務署長に通知しなければならない旨規定している。また、同法第31条第2項は、登記等を受けた者は、当該登記等の申請書(当該登記等が官庁又は公署の嘱託による場合にあっては当該登記等の嘱託書とする。)に記載した登録免許税の課税標準又は税額の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったことにより、登録免許税の過誤納があるときは、当該登記等を受けた日から5年を経過する日までに、政令で定めるところにより、その旨を登記機関に申し出て、同条第1項の通知をすべき旨の請求をすることができる旨規定している。
    • (ハ) 登録免許税法附則第7条《不動産登記に係る不動産価額の特例》は、同法別表第1の第1号に掲げる不動産の登記の場合における同法第10条第1項の課税標準たる不動産の価額は、当分の間、当該登記の申請の日の属する年の前年12月31日現在又は当該申請の日の属する年の1月1日現在において地方税法第341条《固定資産税に関する用語の意義》第9号に掲げる固定資産課税台帳に登録された当該不動産の価格(以下「台帳登録価格」という。)を基礎として政令で定める価額によることができる旨規定している。
    • (ニ) 登録免許税法施行令附則(以下「施行令附則」という。)第3項は、登録免許税法附則第7条に規定する政令で定める価額は、台帳登録価格のある不動産については、次の各号に掲げる当該不動産の登記の申請の日の属する日の区分に応じ当該各号に掲げる金額に相当する価額とし、台帳登録価格のない不動産については、当該不動産の登記の申請の日において当該不動産に類似する不動産(以下「類似の不動産」という。)で台帳登録価格のあるものの次の各号に掲げる当該申請の日の区分に応じ当該各号に掲げる金額を基礎として当該登記に係る登記機関が認定した価額とする旨規定している。
      • A 同項第1号 登記の申請の日がその年の1月1日から3月31日までの期間内であるものは、その年の前年12月31日現在における当該不動産の台帳登録価格に100分の100を乗じて計算した金額
      • B 同項第2号 登記の申請の日がその年の4月1日から12月31日までの期間内であるものは、その年の1月1日現在における当該不動産の台帳登録価格に100分の100を乗じて計算した金額
    • (ホ) 「不動産登記の登録免許税課税標準価額の認定基準について(依命通達)」(昭和60年2月28日1不登4第151号F法務局民事行政部長依命通達)は、課税標準たる不動産の価格は、登録免許税法第10条、同法附則第7条、同法施行令附則第3項及び第4項の規定によるほか、この通達の定めるところによるものとするとして、土地については、台帳登録価格のあるものについては、その価格に相当する額とする旨、台帳登録価格のないものについては、近傍類似の土地の台帳登録価格を参考として定める額とする旨定めている。

(3) 基礎事実

当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

  • イ 請求人は、平成26年12月31日において台帳登録価格のないa市d町○−○に所在する土地(以下「本件1土地」という。)及び本件1土地の北側に隣接する○−○に所在する土地(以下「本件2土地」といい、本件1土地と併せて「本件各土地」という。)を○○から買い受けることとし、平成27年○月○日、本件各土地の売買を原因とする所有権の移転登記(以下「本件登記」という。)に係る登録免許税(以下「本件登録免許税」という。)の額として○○○○円を納付した上(以下、当該納付額を「本件納付税額」という。)、同年○月○日、○○と本件各土地に係る○○売買契約を締結した。
     なお、請求人は、本件納付税額の算出に当たり、a市長が発行した本件各土地に係る平成26年度土地評価証明書(以下「本件評価証明書」という。)の備考欄に記載された「近傍宅地1平方メートル当りの価格¥○○」(以下「本件近傍宅地の価格」という。)に本件各土地の地積を乗じた額(本件1土地が○○○○円、本件2土地が○○○○円)に基づき、課税標準の額を○○○○円(本件各土地の価額の合計額の千円未満を切り捨てた後のもの。)と計算した。
  • ロ ○○は、平成27年○月○日、本件登記について、F法務局○○出張所に嘱託した(以下、この嘱託を「本件登記嘱託」という。)。
     なお、本件登記嘱託に係る「登記嘱託書」及び「登記原因証明情報」と題する各書面には、それぞれ本件納付税額に係る領収証書及び本件評価証明書が添付されており、当該登記嘱託書には、本件各土地の課税価格(課税標準の額)は○○○○円、本件登録免許税の額は○○○○円である旨記載されていた。
  • ハ 原処分庁は、本件登記嘱託を受け、本件各土地が、施行令附則第3項第1号所定の基準日である本件登記嘱託の日の前年12月31日である平成26年12月31日現在において、台帳登録価格のない土地であったことから、本件近傍宅地の価格に本件各土地の地積を乗じた額の合計額○○○○円を本件各土地の価額と認定した上(以下、当該価額を「本件登記官認定額」という。)、本件登記官認定額を基礎として、課税標準の額を○○○○円、登録免許税の額を○○○○円と計算し、この計算結果が上記ロの登記嘱託書に記載されていた課税標準の額及び登録免許税の額の各金額と合致し、かつ、当該登録免許税の額に相当する金額の納付事実が上記ロの領収証書により認められたことから、平成27年○月○日付で本件登記を受け付けた。

(4) 審査請求に至る経緯

  • イ 請求人は、平成28年1月1日を基準日として決定された本件各土地の平成28年度固定資産課税台帳に登録された価格(以下「平成28年度台帳登録価格」という。)である○○○○円(以下「請求人主張額」という。)が本件登記の時点における本件各土地の正当な価額であり、これを本件登記に係る登録免許税の課税標準の額として計算した○○○○円が正当な登録免許税の額であるから、これと既に納付した本件納付税額○○○○円との差額である○○○○円は過誤納であり還付されるべきであるとして、平成28年5月27日、原処分庁に対し、登録免許税法第31条第2項の規定に基づき、請求人の納税地の所轄税務署長に還付通知をすべき旨の請求(以下「本件還付通知請求」という。)をした。
  • ロ 原処分庁は、本件還付通知請求に対し、平成28年6月14日付で、還付通知をすべき理由がない旨の通知処分(以下「本件通知処分」という。)をした。
  • ハ 請求人は、平成28年8月3日、本件通知処分を不服とし、審査請求をした。

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2 争点

本件登記官認定額は、台帳登録価格のない本件各土地に係る登録免許税の課税標準たる価額として過大であるか否か。

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3 争点についての主張

請求人 原処分庁
本件各土地の本件登記の時の価額は、次のとおり、本件各土地の平成28年度台帳登録価格である○○○○円と認定すべきであり、これを上回る本件登記官認定額は過大である。 本件各土地の本件登記の時の価額は、次のとおり、本件近傍宅地の価格に本件各土地の地積を乗じた○○○○円であり、これと同額である本件登記官認定額は過大ではない。
(1) 本件各土地の広大さや用途制限を鑑みると、一般的な近傍宅地が本件各土地と類似しないことは明らかであることから、本件においては、登録免許税法附則第7条による課税方法を採用できず、同法第10条第1項の原則に基づき、本件登記の時における不動産等の価額(適正な時価)によって課税すべきである。 (1) 本件登記は、権利に関する登記であるところ、原処分庁は、本件登記に係る嘱託人から提供された申請情報等について、不動産登記法に基づき適正に審査し、かつ、課税標準たる不動産の価額の認定に係る近傍類似の土地の価格については、申請情報に添付された本件評価証明書に基づいて認定したものである。
(2) 類似の不動産が存在しない本件各土地の本件登記の時における価額については、以下のイないしヘに掲げる理由から、本件各土地の平成28年度台帳登録価格である○○○○円を基礎として算出することが合理的である。
  • イ 本件各土地の平成28年度台帳登録価格は、a市が固定資産評価基準に基づいて算出した価額であること、その評価基準日である平成28年1月1日は本件登記の日から1年を経過していないこと。
  • ロ 平成27年○月○日時点における本件各土地の価額を○○○○円と評価した不動産鑑定評価の結果が存在すること、当該鑑定評価額は本件各土地の平成28年度台帳登録価格と著しく乖離していないこと。
  • ハ 不動産取得税が課された際の本件各土地の評価額が○○○○円と決定されたこと、不動産取得税の課税標準は、当該不動産を取得した時における価額とされ、台帳登録価格がない場合には固定資産評価基準によって都道府県知事が決定した価額によるとされているところ、本件各土地に係る登録免許税と不動産取得税とでそれぞれの課税時点がおおむね同時期であるにもかかわらず、課税標準額が異なることは理論的にあり得ないこと。
  • ニ 本件各土地の売買価格は○○○○円であること、当該価格は○○により決定された価額であり、自然需給により形成された客観的交換価値としては最高値であると考えられること。
  • ホ 裁決事例において、台帳登録価格がなく、かつ、類似の不動産がない場合に、固定資産評価基準に基づいて対象地の価額を算定するのが相当であるとした事例が存在すること(平成22年7月6日裁決、平成16年5月20日裁決)。
  • へ 本件各土地の近隣にあるa市e町○−○の公示価格は、平成26年度から平成28年度にかけて順次上昇し、その他a駅周辺の公示価格も同様に上昇しているところ、本件登記の日(平成27年○月○日)からその平成28年度固定資産税の評価基準日(平成28年1月1日)までの間、本件各土地に個別の状況変化はない。そうすると、本件各土地の本件登記の時における価額が本件各土地の平成28年度台帳登録価格よりも高額となることは考え難く、この点においても、原処分庁が採用した認定方法は合理性を欠くものであること。
(2) 本件登録免許税の額は、登録免許税法第9条《課税標準及び税率》の規定に基づき正当に税額計算がされており、本件登記嘱託に不動産登記法第25条《申請の却下》各号に規定する却下事由はなく、請求人はその嘱託のとおりに本件登記を受けている。したがって、本件登録免許税の額の計算に誤りがないまま、請求人が一たび適法に本件登記を受けた以上、その後、平成28年度台帳登録価格が本件登記の時の課税標準たる不動産の価額に比し著しく低い価格であったとしても、登録免許税の額は登記の時点をとらえ、登記をしたという行為に画一的に課されるものであることからすれば、本件登録免許税に過大納付があったということはできない。
(3) (原処分庁の右記(3)の主張に対する反論)
 本件各土地は、a市の○○地区計画所定のM−2地区及びM−3地区に該当し、当該各地区においては住宅、倉庫等の建築が制限されるほか、M−3地区においては劇場、展示場、美術館等所定の建築物以外の建築が制限されている。
  原処分庁が主張する本件各土地の近隣である道路を隔てて北側の商業施設が所在する土地は、M−4地区に該当し、本件各土地を構成する北側M−3地区は、劇場等の上記所定の建築物の設置義務がかけられているため明らかに類似性がなく、比較する合理性がない。また、原処分庁が主張する南側の商業地区については、土地の用途制限が付されていないのに対して、本件各土地は住宅に類するものの建築制限が課されており、かつ上記のような制約もある点で明らかに類似性がなく、比較する合理性がない。
(3) 本件各土地の近隣である道路を隔てて南側に隣接する商業施設及び北側の商業施設の各土地の課税標準額に基づく1平方メートル当たりの価格は、本件登録免許税の課税標準額に基づく1平方メートル当たりの価格とおおむね差異はないことからも、本件登録免許税に過大納付があったということはできない。

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4 当審判所の判断

(1) 法令解釈

  • イ 不動産の所有権の移転の登記に係る登録免許税の課税標準たる不動産の価額は、登録免許税法第10条第1項で、当該登記の時における不動産の価額による旨規定され、当該登記の時における不動産の価額とは、当該登記の時における当該不動産の客観的交換価値、すなわち時価であると解されるところ、同項の不動産の価額について、同法附則第7条は、当該課税標準たる不動産の価額は、当分の間、当該不動産の台帳登録価格を基礎として政令で定める価額によることができる旨規定しており、これを受けた施行令附則第3項は、台帳登録価格のある不動産の場合は、台帳登録価格に100分の100を乗じて計算した金額に相当する価額とし、他方、台帳登録価格のない不動産の場合は、当該不動産の登記の申請の日における類似の不動産の台帳登録価格を基礎として当該登記に係る登記機関が認定した価額とする(以下、当該価額を「登記機関認定価額」という。)旨規定している。
  • ロ これは、登録免許税が登記等の時に特別の手続を要せずに納付すべき税額が確定するいわゆる自動確定の租税であることに鑑み、不動産の登記に係る登録免許税の課税標準の額も、登記の時における当該不動産の価額に基づいて算出することとしたものであるが、他方で、登記の時における不動産の客観的な価額を算出することは容易でなく、登記の都度、登記官において個々の不動産の価額を評価することは実際的でないばかりか、不動産の価額に関する評価が関係者によって多岐に分かれるおそれがあることから、施行令附則第3項は、課税の公平・納税者の便宜等を考慮して、台帳登録価格のある不動産の場合には、当該不動産の台帳登録価格を基礎として政令で定める価額によって不動産の価額とすることができることとし、専らその台帳登録価格によって登録免許税の課税標準の額を算出することも許されることとしたものである。
  • ハ また、施行令附則第3項が、台帳登録価格のない不動産について、当該不動産に類似する不動産で固定資産課税台帳に登録された価格のあるものの台帳登録価格に100分の100を乗じて計算した金額を基礎として当該不動産の価額を算出することとしたのは、台帳登録価格のない不動産についても、飽くまで台帳登録価格に依拠してその価額を求めることにより、台帳登録価格のある場合とない場合とで価額の均衡を図ることにある。そして、このような同項の趣旨に照らすと、同項所定の「当該不動産に類似する不動産」とは、当該不動産と価額の均衡が図られる近傍類似の不動産を意味するものというべきであり、当該類似性の存否は、価額の均衡が図られる場合の諸事情である、不動産の形状、地積、間口、奥行き、利用状況及び接道状況、土地利用に係る行政上の規制等の内容や固定資産評価に適用される路線価等を比較して判断すべきであると解される。

(2) 認定事実

請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。

  • イ 本件各土地は、f線a駅の北方約○○メートルの位置に所在し、東側間口約○○メートル、奥行き約○○メートル、地積○○○○平方メートルの画地である本件1土地及び東側間口約○○メートル、奥行き約○○メートル、地積○○○○平方メートルの画地である本件2土地からなる、ほぼ長方形の形状の画地(更地)である。
     本件各土地の位置関係及び形状等については、別図1のとおりである。
     なお、本件各土地に沿接する街路に付設された平成26年度の固定資産税路線価(固定資産評価基準第1章第3節二(一)1(2)所定の路線価をいう。以下、単に「路線価」という。)は、別図2のとおりである。
  • ロ 本件各土地は、a市の○○地区計画(以下「本件地区計画」という。)に定めるM地区内に所在する。
     M地区は、更にM−1地区ないしM−4地区に区分されており、本件1土地はM−2地区に、本件2土地はM−3地区にそれぞれ該当する。
     なお、本件各土地及びその周辺地域における本件地区計画所定の地区区分は別図1のとおりである。
  • ハ 本件地区計画では、M地区においては、倉庫、住宅(店舗等併用住宅、共同住宅を含む。)、有料老人ホーム、性風俗店、パチンコ店や勝馬投票券発売所及びその他これらに類する施設を建築してはならないとされている。
     なお、M−3地区内においては、主たる用途として1劇場、演芸場又は観覧場、2展示場その他これらに類するもの及び3美術館、博物館その他これらに類するもの以外の建築物は建築してはならないとされているが、M−2地区及びM−3地区の地区全体を一敷地とする場合で、上記1ないし3の用途を含み、市長が認めたものについては、建築することができるとされている。
  • ニ M−1地区ないしM−4地区は、用途地域を商業地域として指定された区域に所在し、M−1地区ないしM−3地区は、容積率(都市計画法により指定されたもの。以下同じ。)は500パーセント、建ぺい率(都市計画法により指定されたもの。以下同じ。)は80パーセントと同一であるが、M−4地区の容積率は400パーセント、建ぺい率は80パーセントである。
     なお、上記ロのとおり、本件各土地は、M−2地区及びM−3地区に該当するから、本件各土地の容積率は500パーセント、建ぺい率は80パーセントである。
  • ホ 本件各土地と同様の用途地域内(商業地域)にあり、かつ、本件地区計画所定のM地区内に所在する土地のうち、平成26年12月31日現在において台帳登録価格のある土地は、M−1地区に所在する別表1の順号1及び順号2の各土地並びにM−4地区に所在する別表1の順号3及び順号4の各土地であり、当該各土地の所在地、形状、地積及び接道状況等については、別表1に記載のとおりである。
     なお、別表1の順号1の土地は隣接する6筆の宅地であるが、本件登記嘱託の日において、当該土地上には建物が建築されておらず、固定資産評価額を算出する際には、その形状や利用状況(更地)からみて一体をなす一画地(地積○○○○平方メートル)として評価されており、固定資産評価額1平方メートル当たりの価格(○○円)は各筆とも同一となっている。
  • ヘ 別図1のとおり、別表1の順号1及び順号2の各土地は、f線a駅の北方約○○メートルの位置に所在し、当該駅からの距離が本件各土地と同等である。順号3及び順号4の各土地は、f線a駅の北方約○○メートル以上の位置に所在する。
  • ト 別表1のとおり、別表1の順号1、順号3及び順号4の各土地は、本件各土地と同様に、間口が約○○メートル、奥行きが約○○メートル、地積が約○○○○平方メートルを超える広大な土地である。一方、順号2の土地は、間口が約○○メートル、奥行きが約○○メートル、地積が約○○○○平方メートルの土地(○○)であり、本件各土地とは利用状況及び地積規模が異なる。
  • チ 別図1及び別図2のとおり、別表1の順号1、順号3及び順号4の各土地は、本件各土地と同じく○○に沿接しており、順号1の路線価は、○○円で本件各土地の路線価と同一であるが、順号3及び順号4の路線価は、○○円で本件各土地の路線価と大きく異なる。また、順号2の土地は、○○に沿接していない。
  • リ a市では、従来から、台帳登録価格のない土地に係る土地評価証明書を発行する場合、発行申請者からの希望により、当該証明書の使用目的が登記用であるか否かにかかわらず、参考として、当該証明書の備考欄に「近傍宅地の価格」を記載することとしている。本件近傍宅地の価格○○円は、本件各土地の西側に沿接する道路に付設された平成26年度の路線価○○円(別図2参照。なお、当該路線価は基準年度である平成24年度から平成26年度まで同一である。)に所要の時点修正(修正率○○)を行い算出された価額である。
     なお、本件近傍宅地の価格とは、本件各土地が属する周辺地域の主要な街路に沿接する宅地のうち、奥行、間口、形状等の状況が標準的な画地の価格を示すものであり、本件各土地が属する周辺地域の標準的な画地の価格とは、地積が150平方メートル程度の整形の画地で、かつ何の用途制限等も付されていない場合の価格である。
  • ヌ a市長は、本件各土地に係る平成28年度台帳登録価格を○○○○円と決定した。

(3) 検討

  • イ 本件登記官認定額について
    • (イ) 原処分庁は、上記1の(3)のハのとおり、本件近傍宅地の価格を本件各土地に類似する不動産の台帳登録価格(又は台帳登録価格に基づく価格)と認め、これに本件各土地の地積を乗ずることにより本件登記官認定額を計算し、さらに本件登記官認定額を基礎として登録免許税に係る課税標準の額を○○○○円、登録免許税の額を○○○○円と計算したものと認められる。
    • (ロ) しかしながら、上記(2)のリのとおり、本件近傍宅地の価格とは、本件各土地が属する周辺地域の標準的な画地の価格を示すものであり、本件各土地が属する周辺地域の標準的な画地の価格とは、地積が150平方メートル程度の整形の画地で、かつ何の用途制限等も付されていない場合の価格であるところ、本件各土地は、地積が○○○○平方メートル(本件1土地)及び○○○○平方メートル(本件2土地)と広大であり、上記(2)のハ及びニのとおり、種々の行政上の用途制限も付されているため、地積が150平方メートル程度の整形の画地で、かつ何の用途制限等も付されていない上記の標準的な画地とは、形状、地積、間口、奥行き、行政上の規制等の内容といった点で大きな差異があり、本件近傍宅地の価格は本件各土地に類似する不動産の台帳登録価格ということはできない。
    • (ハ) そうすると、本件近傍宅地の価格を基礎として計算した本件登記官認定額は、本件各土地に類似する不動産の台帳登録価格を基礎とした価額とは認められないから、本件登記官認定額に基づく本件登録免許税の課税標準及び税額の計算は、登録免許税法第10条第1項、同法附則第7条及び施行令附則第3項の各規定に基づき計算されたものと認めることはできない。
  • ロ 本件各土地の価額(当審判所が認定する本件各土地の価額)について
     そこで、上記1の(3)の基礎事実及び上記(2)の認定事実を基に本件各土地の価額を算定するために、まず、本件各土地に類似する不動産について検討する。
    • (イ) 別表1の順号1の土地は、本件各土地と同様の用途地域内(商業地域)にあり、本件地区計画所定のM−1地区内に所在する宅地で、平成26年12月31日現在において台帳登録価格のある土地であり、本件各土地と同じく○○に沿接し、路線価(○○円)が同一で、f線a駅からの距離(北方約○○メートル)も同等であり、その形状や利用状況からみて一体をなす一画地の土地(地積が○○○○平方メートル)と認められ、間口(約○○メートル)、奥行き(約○○メートル)、行政上の規制の内容(容積率500パーセント、建ぺい率80パーセント)が本件各土地と同等である。
    • (ロ) 別表1の順号2の土地は、M−1地区内に所在し、平成26年12月31日現在において台帳登録価格のある土地であり、行政上の規制の内容(容積率500パーセント、建ぺい率80パーセント)及びf線a駅からの距離が本件各土地と同等であるが、本件各土地と沿接する○○に沿接しておらず、その間口(約○○メートル)、奥行き(約○○メートル)、地積(約○○○○平方メートル)及び利用状況(○○)が本件各土地と異なる。
    • (ハ) 別表1の順号3及び順号4の各土地は、M−4地区内に所在し、平成26年12月31日において台帳登録価格のある土地であり、本件各土地と同じく○○に沿接し、その形状(整形地)、間口(約○○メートル)、奥行き(約○○メートル)及び地積(約○○○○平方メートル)は同等であるが、その路線価(○○円)及び行政上の規制の内容(容積率400パーセント)が本件各土地と異なり、f線a駅からの距離も異なる。
    • (ニ) 以上を総合すると、本件登記嘱託の日において、M−1地区内に所在する別表1の順号1の土地は、本件各土地の周辺で、本件各土地と不動産の形状、地積、間口、奥行き、利用状況及び接道状況、土地利用に係る行政上の規制等の内容や固定資産評価に適用される路線価等が類似しており、本件各土地に類似する不動産であると認めるのが相当である(以下、別表1の順号1の土地を「本件類似土地」という。)。
    • (ホ) したがって、本件登記に係る登録免許税の課税標準たる本件各土地の価額は、別表2のとおり、本件類似土地の台帳登録価格の1平方メートル当たりの価格○○円を基礎として、登録免許税法第10条第1項、同法附則第7条及び施行令附則第3項の各規定に基づき計算すると、本件1土地の価額は○○○○円、本件2土地の価額は、○○○○円となるから、その合計である○○○○円とするのが相当である。

(4) 原処分庁の主張について

  • イ 原処分庁は、上記3の原処分庁の主張欄のとおり、近傍類似の土地の価格については、嘱託人から提供された申請情報に添付された本件評価証明書に基づいて認定したものである旨主張する。しかしながら、上記(3)のイの(ロ)のとおり、本件近傍宅地の価格は、本件各土地に類似する不動産の台帳登録価格ということはできない。
  • ロ また、原処分庁は、上記3の原処分庁の主張欄のとおり、本件登録免許税について、本件各土地に近隣する、道路を隔てて南側に隣接する商業施設の宅地(以下「南側商業地」という。)と、道路を隔てて北側に隣接する商業施設の宅地(別表1の順号3の土地。以下「北側商業地」という。)のそれぞれの「平成26年度土地評価証明書」に基づき、南側商業地及び北側商業地の各土地の評価額による1平方メートル当たりの価格をそれぞれ単純計算すると、南側商業地が○○円、北側商業地が○○円となり、その単純平均額は○○円であり、これが、本件評価証明書の備考欄に記載された本件近傍宅地の価格(○○円)と差異がないことから、過大納付があったということはできない旨主張する。
     しかしながら、北側商業地は、上記(3)のロの(ハ)のとおり、本件各土地に類似する不動産とは認められず、南側商業地は本件地区計画とは別の地区計画に定める地区内に所在し、本件各土地とは行政上の用途制限等に違いがあり、住居を兼用する建物が現存しているなど、本件各土地とは類似性が認められない。
  • ハ したがって、原処分庁の上記主張はいずれも採用できない。

(5) 請求人の主張について

請求人は、上記3の請求人の主張欄のとおり、本件各土地の用途制限及び地積に照らし、本件各土地に類似する不動産は本件各土地の近隣には存在しないとした上で、本件各土地の平成28年度台帳登録価格を基礎として算定した請求人主張額が本件各土地の正当な価額である旨主張する。
 しかしながら、上記(3)のロの(ニ)のとおり、本件類似土地は、本件各土地に「類似する不動産」であると認められる。また、登録免許税法附則第7条及び施行令附則第3項第1号の各規定に基づき、本件登記に係る登記機関認定価額を、台帳登録価格を基礎として算定する場合においては、その算定の基準日は、本件登記嘱託の日の属する年の前年12月31日である平成26年12月31日となるから、これと異なり、算定の基準日を平成28年1月1日とする平成28年度台帳登録価格を算定の基礎とする請求人主張額は、本件登記に係る登記機関認定価額として適正なものとはいえない。したがって、請求人の主張は採用できない。

(6) 本件通知処分について

別表2のとおり、本件登記に係る登録免許税の課税標準たる本件各土地の価額の合計は○○○○円となり、登録免許税の額は○○○○円となるから、これと本件納付税額である○○○○円との差額である○○○○円については過大に納付されたこととなる。
 したがって、請求人の納税地を管轄するL税務署長に対し、還付の通知をすべき理由がないとした本件通知処分は、その限りにおいて違法であるから、その一部を取り消すべきである。

(7) 結論

原処分のその他の部分については、当審判所に提出された証拠資料等によっても不相当とする理由は認められない。

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