(平成30年5月14日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、代表権を有する法人から請求人の家族に支給された給与等、請求人の元妻名義の不動産の賃料及び請求人の元妻名義で契約された個人年金保険に係る個人年金を所得金額に含めずに所得税及び復興特別所得税の確定申告をしたところ、原処分庁が、上記給与等、賃料及び個人年金について、請求人に帰属するとして、所得税及び復興特別所得税の更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分を行ったのに対し、請求人が、上記給与等、賃料及び個人年金について、請求人に帰属しないなどとして、当該各処分の全部ないし一部の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令等

関係法令等は、別紙6のとおりである。なお、別紙6で定義した略語については、以下、本文でも使用する。

(3) 基礎事実

当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

  • イ 請求人について
     請求人は、昭和○年○月○日に設立された医療法人社団J会(以下「J会」という。)の唯一の代表権を有する理事長に設立当初から就任していた。
     請求人の元妻P2は、設立当初からJ会の理事であり、請求人とP2の長男P3は、平成20年4月頃にはJ会の理事に就任していたが、いずれも、平成26年5月に理事を解任された。また、P4(以下、P2及びP3と併せて「P2ら」という。)は、請求人とP2の二男である。
  • ロ J会による役員給与等の振込みについて
    • (イ) J会は、P2に対する役員給与として、平成21年4月から平成26年11月まで、各月754,200円から社会保険料及び所得税などを差し引いた金額を、P2名義のK銀行○○支店の普通預金口座(No.○○○○)(以下「本件P2第一口座」という。)及びL銀行○○支店の普通預金口座(No.○○○○)(以下「本件P2第二口座」といい、本件P2第一口座と併せて「本件P2各口座」という。)に振込送金することにより支払った(以下、上記期間においてP2に対する役員給与として支払われた金員を「本件P2給与」という。)。
    • (ロ) J会は、P3に対する給与手当として、平成21年4月から平成27年9月まで、各月250,000円から所得税などを差し引いた金額を、P3名義のN銀行の○○口座(No.○○○○)(以下「本件P3口座」という。)に振込送金することにより支払った(以下、上記期間においてP3に対する給与手当として支払われた金員を「本件P3給与」という。)。
    • (ハ) J会は、P4に対する委託料として、平成21年4月から平成26年9月まで、各月100,000円を、P4名義のN銀行の○○口座(No.○○○○)及びL銀行○○支店の普通預金口座(No.○○○○)(以下、N銀行の○○口座と併せて「本件P4各口座」といい、本件P2各口座及び本件P3口座とともに「本件P2ら各口座」という。)に振込送金することにより支払った(以下、上記期間においてP4に対する委託料として支払われた金員を「本件P4委託料」といい、本件P2給与及び本件P3給与と併せて「本件各金員」という。)。
  • ハ P2名義の建物の賃貸料について
    • (イ) d市e町○−○の土地について、平成元年5月12日付で、同月10日付売買を原因とするP2への所有権移転登記が経由された。同土地上に所在する建物(以下「本件d物件」という。)は、平成2年1月31日に新築されたものであり、同年3月7日付で、P2を名義人とする所有権保存登記が経由された。
    • (ロ) 平成元年5月10日及び平成2年3月7日付で、Q銀行との間で、それぞれ26,000,000円及び25,000,000円を住宅取得資金として借り入れる旨の消費貸借契約がP2名義で締結され、平成26年11月27日までにそれらの全額が弁済された。
    • (ハ) P2及びR社の記名押印のある平成2年1月20日付の建物賃貸借契約書には、P2が、R社に対し、本件d物件を賃料月額220,000円で賃貸する旨が記載されている(以下、当該契約書に基づく建物賃貸借契約を「本件賃貸借契約」という。)。
       R社は、本件d物件の賃料として、平成21年1月から平成26年8月まで、各月220,000円を、同年9月から平成27年12月まで、各月316,500円をそれぞれ本件P2第一口座に振込送金することにより支払った(以下、上記各期間において支払われた本件d物件の賃料を「本件賃貸料」という。)。
  • ニ P2名義の年金について
     平成3年10月1日、S生命との間で、P2が○歳になる平成19年から10年間にわたって、P2(受取人)に個人年金が支払われる旨の年金生命保険契約(以下「本件年金保険契約」という。)が、P2名義で締結された。
     なお、本件年金保険契約において、これに基づき支払われる個人年金について、その受給を5年間繰り延べる手続がされたことから、S生命は、平成24年ないし平成27年の各年10月1日、それぞれ8,422,472円から源泉所得税を差し引いた金額を、平成24年及び平成25年は本件P2第二口座に、平成26年及び平成27年は本件P2第一口座に振込送金することにより支払った(以下、上記期間において支払われた個人年金を「本件年金」という。)。
  • ホ P2との離婚について
     P2は、平成26年8月○日、請求人を被告として、離婚等を請求する訴訟(以下「本件離婚訴訟」という。)をT家庭裁判所○○支部に提起したが、本件離婚訴訟は、平成28年2月○日訴訟上の和解(以下「本件和解」という。)により終了した。請求人とP2は、本件和解において、同日離婚すること及び本件和解に係る調書の財産目録記載の各財産(本件P2ら各口座に係る預貯金、本件d物件及び本件年金保険契約に係る年金を含む。)について、その名義の如何を問わず、いずれも各取得時から請求人が権利を有することを相互に確認した。
  •   その後、本件d物件及びその敷地について、平成28年6月7日付で、真正な登記名義の回復を原因とする請求人への所有権移転登記がそれぞれ経由された。

(4) 審査請求に至る経緯

  • イ 請求人は、平成21年分、平成22年分及び平成24年分の所得税並びに平成25年分ないし平成27年分(以下、平成21年分、平成22年分、平成24年分ないし平成27年分を併せて「本件各年分」という。)の所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」という。)について、確定申告書に別表1の「確定申告」欄のとおり記載して、いずれも法定申告期限までに原処分庁に提出した。その際、請求人は、本件各金員、本件賃貸料及び本件年金について、それぞれ、給与所得の収入金額、不動産所得の総収入金額及び雑所得の総収入金額に算入しなかった。
  • ロ 請求人は、平成26年8月15日、平成25年分の所得税等について、雑所得の一部が申告漏れとなっていたとして、別表1の「修正申告」欄記載のとおり、所得税等の修正申告書を原処分庁に提出した。
  • ハ 原処分庁は、平成29年3月14日付で、本件各金員、本件賃貸料及び本件年金がいずれも請求人に帰属し、請求人が、本件賃貸料及び本件年金について、P2に帰属するかのように仮装したなどとして、別表1の「更正処分等」欄のとおり、本件各年分の所得税又は所得税等の各更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分をした。
     なお、平成22年分の所得税の更正処分は、P2名義での外国為替証拠金取引(以下「本件P2名義FX取引」という。)による所得○○○○円が請求人に帰属することも理由とするものであり、平成22年分の所得税に係る重加算税の賦課決定処分は、請求人が、本件P2名義FX取引による上記所得について、P2に帰属するかのように仮装したことも理由とするものである。
  • ニ 請求人は、原処分に不服があるとして、原処分の一部の取消しを求めて、平成29年6月14日に審査請求をした。
     その後、請求人は、平成30年1月18日付で、平成22年分の所得税に係る重加算税の賦課決定処分の取消しを求める部分について、当該処分の全部から、本件P2名義FX取引による所得に係る重加算税相当額○○○○円を超える部分に変更した。

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2 争点

  • (1) 争点1 本件各金員、本件賃貸料及び本件年金が請求人に帰属するか。
  • (2) 争点2 請求人は、本件賃貸料及び本件年金が請求人に帰属する事実を仮装したか。
  • (3) 争点3 請求人は、偽りその他不正の行為により平成21年分及び平成22年分の所得税の税額を免れたか。

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3 争点についての主張

(1) 争点1(本件各金員、本件賃貸料及び本件年金の請求人への帰属)について

原処分庁 請求人
本件各金員、本件賃貸料及び本件年金は、以下のとおり、請求人に帰属する。 本件各金員、本件賃貸料及び本件年金は、以下のとおり、P2らに帰属するものであり、請求人に帰属するものではない。
イ 本件P2ら各口座について
 請求人は、本件P2ら各口座の存在自体をP2らに伝えずに、当該各口座の通帳を管理していたこと、請求人は、本件和解において、本件P2ら各口座に係る権利を、それらの開設時から有するとされたことからすると、本件P2ら各口座は請求人に帰属していたと認められる。
イ 本件P2ら各口座について
 金融機関が本人確認を行うことからすると、預貯金通帳及び印鑑を所持しているだけでは、本件P2ら各口座から預貯金を引き出すことはできない。また、本件離婚訴訟中の平成26年3月22日にP2が作成した財産目録に本件P2ら各口座が記載されていることからすると、P2らは、同日には、本件P2ら各口座の存在を知っていた。以上によれば、請求人が本件P2ら各口座を所有していたとは認められない。
 なお、原処分庁は、本件和解をもって、本件P3口座及び本件P4各口座も請求人に帰属する旨主張するが、本件和解の当事者であるP2には、P3及びP4の預貯金口座を処分する権利・権限がないことから、本件和解がされたことは、少なくとも本件P3口座及び本件P4各口座が請求人に帰属していたことを裏付ける事情とはならない。
ロ 本件各金員について
 P2及びP3は、J会から給与を一切受け取っていないなどと申述し、同人らの勤務に係る証拠もないことからすると、本件P2給与及び本件P3給与は、同人らの給与所得とは認められない。
 また、P4は、J会や請求人に医学的相談や文献の提供を行ったことがないなどと申述しており、そのような提供に係る証拠もないことからすると、本件P4委託料は、同人に対する委託料とは認められない。
 そして、上記イのとおり、請求人が、本件各金員の振り込まれた本件P2ら各口座を所有していたことも考慮すると、本件各金員はいずれも、請求人に帰属する。
ロ 本件各金員について
 P2及びP3は、J会の理事であったこと、本件P2ら各口座の存在を知っていたこと(上記イ)からすると、本件P2給与及び本件P3給与は、同人らに帰属する。
 また、P4は、年数回帰国して、整形に関して米国の実情など知識をJ会に提供していたこと、本件P2ら各口座の存在を知っていたこと(上記イ)からすると、本件P4委託料は、同人に帰属する。
ハ 本件賃貸料について
 請求人は、本件d物件に係る手続を全て自ら行った旨申述し、P2は、本件d物件の管理料、固定資産税や修繕について、請求人が管理していた旨申述していること、本件和解において、請求人は、本件d物件をその取得時から所有するとされ、本件d物件について、P2から請求人への真正な登記名義の回復を理由とする所有権移転登記が経由されたことからすると、本件d物件は、その取得当初から請求人が所有していたと認められる。
 加えて、本件d物件を賃貸しているという認識がない旨のP2の申述及び請求人が本件賃貸借契約を指示した旨のR社の代表取締役であるYの申述も考慮すると、本件賃貸借契約は、請求人とR社との間で締結されたものと認めるのが相当である。
 そして、上記イのとおり、請求人が、本件賃貸料の振り込まれた本件P2第一口座を所有していたことも考慮すると、本件賃貸料は、請求人に帰属する。
ハ 本件賃貸料について
 P2は、本件d物件に宿泊した際、その価値を関係者に尋ねていること、その取得資金の融資を受ける際、金融機関から本人確認を受けていること、当該融資は、P2名義の預金から返済されていたことからすると、本件d物件は、P2が所有していたものである。
 加えて、本件賃貸借契約の賃貸人はP2であること、P2は、本件賃貸料の振り込まれた本件P2第一口座の存在を知っていたこと(上記イ)から、本件賃貸料は、P2に帰属する。
ニ 本件年金について
 P2が本件年金保険契約に係る保険料を払い込むことは困難であったと認められること、請求人は、本件和解において、本件年金保険契約に係る権利をその取得時から有するとされたことからすると、本件年金は、請求人に帰属する。
ニ 本件年金について
 本件年金保険契約の保険者であるS生命は、P2の本人確認を行った上で本件年金保険契約を締結し、P2が指定する口座に本件年金を振り込んだことから、本件年金は、P2に帰属する。

(2) 争点2(本件賃貸料及び本件年金が請求人に帰属する事実の仮装の有無)について

原処分庁 請求人
以下のとおり、請求人は、本件賃貸料及び本件年金が請求人に帰属する事実を仮装した。
  • イ 本件賃貸料について
     請求人は、本件賃貸料が、請求人に帰属すべきものであるにもかかわらず、P2名義で、本件d物件の取得手続を行い、本件賃貸借契約を締結したこと、本件賃貸料を請求人が管理する本件P2第一口座に入金させたことにより、本件賃貸料がP2に帰属するように仮装していたものと認められる。
  • ロ 本件年金について
     請求人は、本件年金が請求人に帰属すべきものであるにもかかわらず、本件年金保険契約をP2名義で締結し、請求人が管理する本件P2各口座に入金させたことにより、本件年金がP2に帰属するように仮装していたものと認められる。
請求人は、本件賃貸料及び本件年金がいずれもP2に帰属すると認識していたから、それらが請求人に帰属する事実を仮装していない。

(3) 争点3(請求人は、偽りその他不正の行為により税額を免れたか。)について

原処分庁 請求人
「偽りその他不正の行為」(通則法第70条第4項第1号)は「隠ぺい又は仮装」(同法第68条第1項)を包摂するものである。
 そして、請求人は、本件賃貸料及び本件年金が請求人に帰属する事実を仮装していたと認められる(上記(2)の原処分庁の主張)。
 よって、請求人は、偽りその他不正の行為により平成21年分及び平成22年分の所得税の税額を免れたと認められる。
上記(2)の請求人の主張のとおり、請求人は、本件賃貸料及び本件年金が請求人に帰属する事実を仮装しておらず、本件賃貸料及び本件年金に関し、偽りその他不正の行為により税額を免れていない。

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4 当審判所の判断

(1) 争点1(本件各金員、本件賃貸料及び本件年金の請求人への帰属)について

  • イ 法令解釈
     所得税法第12条は、資産又は事業から生ずる収益が誰に帰属するかは、法律上の真実の権利者が実質的にも収益の帰属者であるとの考え方に立ち、法律上の形式がその法的実質と異なる場合にはその実質に即して収益の帰属を判定すべきであるとの趣旨を定めるものと解するのが相当であり、また、同条にいう「収益を享受する者」とは、単にその収益を消費している者をいうのではなく、その収益を受けるべき正当な権利を有する者をいうと解するのが相当である。
     そして、所得税基本通達12−1は、資産から生ずる収益を享受する者が誰であるかは、その収益の基因となる資産の真実の権利者が誰であるかにより判定すべきであるが、それが明らかでない場合には、その資産の名義者が真実の権利者であるものと推定する旨定めているところ、当該通達規定は、所得税法第12条の上記趣旨に沿うものであるから、当審判所も、これを相当と認める。
  • ロ 本件各金員について
    • (イ) 認定事実
       請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
      • A 請求人は、その設立当初から、J会において唯一代表権を有する理事長であった。J会では、社員総会と理事会が同時に年1回開催されていたが、請求人以外の社員や理事が発言をすることはなく、また、請求人が、J会の資産の管理及び業務全般の総理を行うなど、J会において全面的な権限を有し、その運営に関し支配的地位にあった。
      • B P2は、年1回のJ会の社員総会兼理事会に出席していたが、発言したことがなかった。また、P2は、J会が経営するU病院の患者の車椅子を押したり、U病院やU病院に併設する○○のイベントを手伝ったり、○○することがあったが、それら以外にJ会に対して労務又は役務を提供したことはなかった。
         P3は、平成18年からX病院の常勤医師であり、年1回のJ会の社員総会兼理事会へも出席せず、欠席するに当たり社員総会に関する一切の権限を請求人に委任する旨の委任状を提出する程度で、J会の理事としての職務をしたことがなく、また、U病院の医師として勤務したこともなかった。
         J会には、理事に関する報酬規定はなく、理事は原則として無報酬であって、P2及びP3以外の理事に対する役員給与の支払はない。
      • C P4は、医師であり、平成19年からアメリカ合衆国で医学研究に従事しているが、請求人やJ会から医学的な相談を受けたことはなく、医学的な文献を提供したこともなかった。
      • D 本件各金員の額は請求人が決定したものである。
      • E 本件P2ら各口座は、いずれも請求人が開設したもので、各通帳、届出印鑑及びキャッシュカードは、それらの開設時から請求人が管理していた。
      • F 請求人は、L銀行○○支店の集金担当者が毎月J会を訪問する際、本件P2第二口座に係る通帳を預け、当該口座からの出金を依頼し、現金を受け取っていた。
         また、請求人は、P2が、L銀行○○支店に対して本件P2第二口座に係る通帳及び印鑑の紛失手続を平成26年5月14日に行ったため、同銀行から同月20日、請求人において依頼した出金ができない旨の連絡を受け、同月23日、前記銀行に対し、本件P2第二口座は「私が管理している口座であり、名義人の申出如何に関わらず口座に関わる銀行取引の停止を依頼します」と記載された「口座に関わる銀行取引の停止依頼及び念書」と題する書面(以下「本件念書」という。)を提出した。これにより、前記銀行は、真の預金者が特定できないとして、本件P2第二口座を凍結した。
      • G 請求人は、平成20年6月24日から平成27年9月29日にかけて、本件P3口座及び本件P4各口座から、合計9回、1,000,000円以上の入出金を行っている。そのうち、平成22年1月28日の本件P3口座からの7,000,000円及びP4名義のN銀行の○○口座(No.○○○○)からの8,000,000円の出金は、各々P3名義及びP4名義の○○に振り替えられた。その後、請求人は、同年11月24日に、J会の事務次長であったP5を代理人として、前記P3名義の○○に振り替えた7,000,000円を解約の上、うち2,000,000円をP3名義の○○に振り替え、残金5,000,000円については現金で出金した。
    • (ロ) 事実認定に関する補足説明
       上記(イ)のCのとおり、P4は、請求人やJ会から医学的な相談を受けたことはなく、医学に関する文献を提供したこともなかった。
       これに対し、請求人は、P4から整形外科の米国実情などの知識の開示を受けてきた旨主張する。また、当審判所の調査の結果によれば、J会は、原処分庁所属の調査担当職員の調査に基づき、平成28年4月28日付で、損金に算入していたP4に対する委託料が、事実を隠ぺい又は仮装して経理することによりJ会から請求人に対し支給された役員給与であることなどを理由として、法人税、地方法人税並びに消費税及び地方消費税の各更正処分等を受け、その後、当該各更正処分等に対し審査請求をしたところ、請求人は、上記調査担当職員の質問調査や、J会に係る審査請求における当審判所の質問調査に対し、P4から文献や医学情報の提供を受けていた旨申述等したことが認められる。
       しかしながら、請求人の具体的な申述等の内容をみると、請求人は、上記調査担当職員から当初実施された質問調査においては、P4に対する委託料は薬に関する相談や文献の送付などのノウハウ代であると述べていたにもかかわらず、その後に実施された質問調査においては、文献は世界中どこでも取れるから、P4に文献を依頼する必要はなく、依頼した文献もないが、整形外科の最先端の情報を聞いていたと申述内容を変えており、J会に係る審査請求における当審判所の質問調査においては、○○するなど交友関係の広いP4がいろいろなネットワークを駆使して収集した医療情報の提供を受けていたなどと答述しており(当審判所の調査の結果)、それらの申述等の内容は一貫性を欠く。また、請求人は、上記調査担当職員による質問調査において、P4に対する委託料について、P4がアメリカから帰国して仕事がなかったときに食いつなげるように金銭を用意してやっているなどと、P4の役務の提供の対価であることと矛盾するような申述もしている(当審判所の調査の結果)。そして、P4から提供されたとする文献や医学的情報について、請求人から、何らの具体的主張、立証もない。他方、P4は、上記調査担当職員からの照会に対する回答書において、請求人やJ会から医学的な相談を受けたことはなく、医学に関する文献を提供したこともなかった旨回答するところ(当審判所の調査の結果)、その回答内容は、P4が平成19年から渡米し、平成20年から平成27年10月31日までの間に、日本に帰国するのは年1回程度(ただし、平成25年は3回)にとどまること(当審判所の調査の結果)とも整合的である。なお、P2も、上記調査担当職員に上記P4の回答内容と同旨の申述をしている(当審判所の調査の結果)。これらの事情に照らせば、P4の役務の提供に関する請求人の上記申述等は信用することができず、他に請求人の主張を認めるに足りる証拠はなく、むしろ、P4の上記回答は信用性があるというべきであって、これによると、前示のとおり、P4は、請求人やJ会から医学的な相談を受けたことはなく、医学に関する文献を提供したこともなかったことが認められる。
    • (ハ) 判断
      • A 上記(イ)のBのとおり、P2は、J会又はその関連団体の運営する○○にボランティア程度の役務しか提供しておらず、P3は、J会に対して全く労務又は役務を提供しておらず、まして、両名ともJ会の経営に参画していなかった。これらの事情に加え、P2及びP3以外の理事に対する役員給与の支払がなかったこと(同B)や、P2及びP3がJ会の理事を解任された後も役員給与及び給与手当が支払われ続けていること(上記1の(3)のイ並びにロの(イ)及び(ロ))をも併せ考慮すると、本件P2給与及び本件P3給与は、P2又はP3の労務若しくは役務の提供又は理事としての地位に対する対価の性質がなく、P2又はP3に対する給与又は報酬とは認められない。
         次に、P4は、上記(イ)のCのとおり、J会に対し、医学情報の提供などをしておらず、その他、何らかの労務又は役務の提供をしていたことをうかがわせる証拠はないから、本件P4委託料は、P4に対する報酬とは認められない。
         そして、上記(イ)のA及びDのとおり、請求人は、J会において全面的な権限を有し、本件各金員について自ら支給額を決定していることも考慮すると、本件各金員は、P2らに対する給与又は報酬ではないにもかかわらず、請求人が、J会を代表して、一方的に本件P2ら各口座に振り込んだものであると認められる。
      • B 請求人は、本件P2ら各口座を自ら開設し、その開設時から各通帳、届出印鑑及びキャッシュカードを管理していたこと(上記(イ)のE)、本件P2第一口座を除く本件P2ら各口座のいずれからも預貯金を出金し、一部を○○に振り替えるなどの運用をしていること(同F及びG)からすると、本件P2ら各口座は、いずれも開設当初から請求人が自由に費消することが可能なものであったと認められる。
         加えて、請求人は、P2がL銀行○○支店に本件P2第二口座の通帳の再発行等を依頼したことを知って、同銀行に、同口座を自分が管理している旨の本件念書を提出していること(上記(イ)のF)をも併せ考慮すると、本件P2ら各口座は、いずれも開設当初から請求人が管理する口座であったと認められる。
      • C 上記A及びBによれば、本件各金員は、P2らに対する給与又は報酬とは認められず、J会が請求人の管理する口座に振り込んだものであるから、J会が請求人に対して支給した役員給与であると認められる。
         したがって、請求人は、本件各金員を受けるべき正当な権利を有する者ということができるから、本件各金員は、請求人に帰属する。
    • (ニ) 請求人の主張について
      • A 請求人は、本件P2給与及び本件P3給与は、P2及びP3の理事就任の委任契約に基づく支払であり、労働の対価ではなく、その職務ないし地位に対する報酬である旨主張する。
         しかしながら、本件P2給与又は本件P3給与と、P2又はP3の理事としての役務の提供又は理事の地位との間に対価性が認められないことは上記(ハ)のAのとおりであり、請求人の主張は採用することができない。
      • B 請求人は、本件P2ら各口座について、預貯金を出金することができるのは名義人だけであり、請求人は出金することができず、経済的利益を享受することができないことから、請求人には帰属しない旨主張する。
         しかしながら、請求人は、本件P2ら各口座の各通帳、届出印鑑及びキャッシュカードを管理しており(上記(イ)のE)、ATMなどを利用して出金することが事実上可能であり、現に、本件P2第一口座を除く本件P2ら各口座から預貯金を出金し、その一部を運用していたこと(同F及びG)からすると、請求人が本件P2ら各口座から出金することができなかったとはいえず、請求人の主張は採用することができない。
      • C 請求人は、P2らが本件P2ら各口座の存在を知っていたから、本件P2ら各口座がP2らに帰属し、請求人には帰属しない旨主張する。
         しかしながら、上記(ハ)のBの各事情、特に請求人が本件P2ら各口座の各通帳、届出印鑑及びキャッシュカードを管理していたことや、現に本件P2第一口座を除く本件P2ら各口座のいずれからも出金などしていることからすると、請求人が本件P2ら各口座を管理していたと認められる。この認定は、P2らが本件P2ら各口座の存在を知っていたか否かに左右されるものではないから、請求人の主張は採用することができない。
  • ハ 本件賃貸料について
    • (イ) 本件賃貸料のように資産から生ずる収益については、所得税基本通達12−1によれば、当該資産の真実の権利者に帰属するが、それが明らかでない場合には、当該資産の名義者が真実の権利者であると推定されるところ、上記1の(3)のハの(イ)及び(ハ)のとおり、本件賃貸借契約に係る賃貸物件である本件d物件には、本件賃貸借契約の締結直後から平成28年6月7日まで、P2を名義人とする所有権保存登記が経由されており、本件各年分における本件d物件の名義者は、P2であった。
       このことに加え、本件賃貸借契約の賃貸名義者はP2であること(上記1の(3)のハの(ハ))や、本件d物件の取得資金は、P2が借り入れたものであること(同(ロ))も考慮すると、特段の事情のない限り、本件賃貸料を享受する者はP2であり、本件賃貸料はP2に帰属するものと推定されるというべきである。
    • (ロ) これに対し、原処分庁は、要するに、1請求人が本件d物件の取得や管理に係る手続を自ら行ったこと、2請求人が本件和解において、本件d物件をその取得時から所有するとされ、本件d物件について、P2から請求人への真正な登記名義の回復を理由とする所有権移転登記が経由されたことから、請求人が、本件d物件をその取得当初から所有していた旨主張する。
       しかしながら、原処分庁の主張するように、請求人が本件d物件をその取得当初から所有していたとすると、その保存登記を、真実の権利関係と異なり、P2名義のものとすることには、何らかの理由があるはずであるところ、原処分庁は、この点について何らの主張もしておらず、全証拠を検討しても、請求人において、真実の権利関係と異なる保存登記を行うべき理由があったとは認められない(むしろ、後記のとおり、P2に、その名義どおり、本件d物件を取得させる意思を有していた可能性も否定できない。)。
       このことを前提に上記1についてみるに、P2は、本件d物件を取得する際、請求人と共に現地を見に行き、取得後には、年に数回ずつ請求人一家で利用しており(原処分関係資料、当審判所の調査の結果)、本件d物件を自身で取得する理由がなかったとはいえないこと、請求人は、J会の理事長を務める一方、P2は、専業主婦であり、J会の理事については名目上のものであったこと(上記1の(3)のイ、4の(1)のロの(ハ)のA及び当審判所の調査の結果)からすると、請求人が、重要な経済活動の経験の少ないP2に代わって、事実上、本件d物件の取得や管理に係る手続を行ったという可能性も否定できないというべきである(上記のとおり、請求人とP2は、本件d物件を取得する際、一緒に現地を見に行っているのであり、その当時、夫婦仲が悪かったことをうかがわせる証拠もない本件においては、請求人としては、自らが本件d物件を取得するためではなく、P2にも相応の資産を保有させるべく、P2のために一連の手続を行った可能性も否定できない。)。
       次に、上記2についてみるに、請求人が本件d物件をその取得時から所有する旨の本件和解の条項(上記1の(3)のホ)は、本件離婚訴訟において、請求人とP2との間の離婚や財産分与の問題を一挙に解決するために本件和解が行われ、和解による解決策の一環として、和解条項中に盛り込まれたものであり(当審判所の調査の結果)、そのような経緯に照らし、上記条項が事実をどこまで正確に反映しているかには疑問もないではなく、上記条項やそれに伴う本件d物件に係る所有権移転登記(同ホ)をもって、請求人が、本件d物件の取得当時、P2の名義を借用して、自らがこれを取得する意思を有していたものであり、以後、これを所有していたことが直ちに裏付けられるものとまでは即断し難い。
       以上によれば、上記1及び2をもって、請求人が、本件d物件をその取得当初から所有していたとは認められず、その他、これを認めるに足りる証拠はない。
    • (ハ) また、原処分庁は、要するに、請求人が本件賃貸借契約の締結を主導し、P2がこれを知らなかったことからすると、本件賃貸借契約が、請求人とR社との間で締結されたものである旨主張する。
       しかしながら、本件d物件は、請求人がその取得当初から所有していたとは認められず(上記(ロ))、その保存登記どおり、P2がその取得当初から所有していた可能性があるところ、P2は、その取得資金について、本件d物件をR社などに貸した賃料から支払うという認識を有していたこと(当審判所の調査の結果)からすると、原処分庁の主張を考慮しても、請求人が、本件d物件の取得・管理と同様に、重要な経済活動の経験の少ないP2に代わって、本件賃貸借契約に係る手続を行った可能性も否定できないというべきである。
       したがって、原処分庁の主張をもって、本件賃貸借契約が、請求人とR社との間で締結されたものであるとは認められず、その他、これを認めるに足りる証拠はない。
    • (ニ) さらに、原処分庁は、本件賃貸料の振り込まれた本件P2第一口座が請求人に帰属していたことをもって、本件賃貸料が請求人に帰属する旨主張する。
       しかしながら、本件賃貸料は、平成26年11月まで、本件d物件の取得資金としてP2が借り入れた銀行融資の返済資金に充てられており、請求人が自らのために費消したものではないことからすると(上記1の(3)のハの(ロ)及び原処分関係資料)、本件P2第一口座の帰属をもって直ちに、本件賃貸料が請求人に帰属するとは認められない。
    • (ホ) 以上によれば、原処分庁の主張をもって、本件賃貸料がP2に帰属するものとの推定は覆されず、その他、当該推定を覆すに足りる証拠はない。
       したがって、本件賃貸料は、P2に帰属するものであって、請求人に帰属するとは認められない。
  • ニ 本件年金について
    • (イ) 判断
       上記1の(3)のニによれば、本件年金は、本件年金保険契約により、被保険者が所定の年齢に達したときに、受給権者がその受給権を取得し、当該受給権者の請求に基づいてその給付が開始されるものである。したがって、本件年金を受けるべき正当な権利を有する者は、本件年金保険契約上の受給権者(年金受取人)ということになる。
       この点、上記1の(3)のニによれば、本件年金保険契約の年金受取人の名義は、P2であるから、本件年金を受けるべき正当な権利を有する者は、P2であると推定される。
       そして、当該推定を覆すに足りる証拠はない。かえって、P2は、本件年金保険契約の締結の際、書類に署名し、また、支払開始時には、S生命の担当者と面接の上、年金開始請求書を記載しており(当審判所の調査の結果)、本件年金保険契約の詳細を知っていたかはともかく、自らの意思で当該契約等の手続を行ったといえる。さらに、平成3年の本件年金保険契約の締結当時、請求人とP2の夫婦仲が悪かったことをうかがわせる証拠はなく、請求人が、同契約の締結に当たり主導的役割を果たしたとしても、P2の名義を借用して、自ら同契約に基づく年金を取得しようとしたのではなく、妻であるP2自身のために、同人に代わってその締結に向けて積極的に動き、その保険料も負担していた可能性を否定できない。また、当審判所の質問調査において、平成15年から平成20年までJ会を担当し、P2とも面識のあるS生命の社員は、当時の請求人及びP2は円満な雰囲気であり、本件年金保険契約のことをP2も知っており、利率が良かったことを喜んでいた旨答述していること(上記担当者と請求人及びP2との間に何らかの利害関係や対立関係があることをうかがわせる証拠はなく、上記答述内容は、中立的な立場にある者の答述として、信用することができる。)に照らせば、P2にしても、本件年金保険契約の締結において請求人に名義を貸したとの意識はなく、自らが受取人として、年金を取得する意思を有していたことがうかがえる。
       そうすると、本件年金は、P2に帰属するものであって、請求人に帰属するとは認められない。
    • (ロ) 原処分庁の主張について
      • A 原処分庁は、P2が本件年金に係る保険料を払い込むことが困難であったことから、本件年金が請求人に帰属する旨主張する。
         しかしながら、本件年金がP2に帰属することは、上記(イ)のとおりであり、原処分庁が主張する事情がその判断を左右するものではない。
         したがって、原処分庁の主張は採用することができない。
      • B 原処分庁は、本件和解において、請求人が本件年金保険契約に係る権利をその取得時から所有するとされたことから、本件年金は、請求人に帰属する旨主張する。
         しかしながら、請求人が本件年金保険契約に係る権利をその取得時から所有する旨の本件和解の条項(上記1の(3)のホ)は、前記ハの(ロ)において本件d物件の帰属との関係で説示したとおり、その内容の正確性に疑問があるから、当該条項をもって、本件年金が請求人に帰属するとはいえない。
         したがって、原処分庁の主張は採用することができない。
  • ホ 小括
     以上のとおり、本件各金員は、請求人に帰属すると認められるが、本件賃貸料及び本件年金は、請求人に帰属するとは認められない。

(2) 争点2(本件賃貸料及び本件年金が請求人に帰属する事実の仮装の有無)について

上記(1)のホのとおり、本件賃貸料及び本件年金は、請求人に帰属するとは認められない以上、争点2について検討するまでもなく、本件賃貸料及び本件年金に基因する税額を基礎とする重加算税の賦課決定処分は違法である。
 なお、請求人が、請求人に帰属すべき本件P2名義FXによる所得について、P2に帰属するかのように仮装したことについては、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを認めることができる。

(3) 争点3(請求人は、偽りその他不正の行為により税額を免れたか。)について

  • イ 平成21年分の所得税について
     上記(1)のホのとおり、本件賃貸料は、請求人に帰属するとは認められないから、請求人が、本件賃貸料に係る部分について、税額を免れたという事実自体が存在しない。また、本件年金については、そもそも平成21年においてその支払がない上(上記1の(3)のニ)、上記(1)のホのとおり、請求人に帰属するとは認められないから、やはり、税額を免れたという事実自体が存在しない。
     その他、請求人が、平成21年分の所得税について、偽りその他不正の行為によりその税額を免れたと認めるに足りる証拠はない。
     したがって、請求人が、偽りその他不正の行為により、平成21年分の所得税の税額を免れたとは認められない。
  • ロ 平成22年分の所得税について
     上記(1)のホのとおり、本件賃貸料は、請求人に帰属するとは認められないから、請求人が、本件賃貸料に係る部分について、税額を免れたという事実自体が存在しない。また、本件年金については、そもそも平成22年においてその支払がない上(上記1の(3)のニ)、上記(1)のホのとおり、請求人に帰属するとは認められないから、やはり、税額を免れたという事実自体が存在しない。
     しかし、上記(2)のとおり、請求人は、請求人に帰属すべき本件P2名義FXによる所得について、P2に帰属するかのように仮装したと認められるところ、これは、「偽りその他不正の行為」(通則法第70条第4項第1号)に該当するから、請求人は、偽りその他不正の行為により、平成22年分の所得税の税額を免れたものと認められる。

5 原処分の適法性について

(1) 平成21年分の所得税の更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の賦課決定処分について

上記4の(3)のイのとおり、平成21年分の所得税については、請求人は、偽りその他不正の行為により税額を免れたものではない。そのため、平成21年分の所得税の更正処分における期間制限については、法定申告期限(平成22年3月15日)が平成23年12月2日より前なので、旧通則法第70条第1項第1号が適用され(平成23年法律第114号附則第37条第1項)、法定申告期限から3年となるところ、平成21年分の所得税の更正処分のあった平成29年3月14日時点では、上記法定申告期限から3年を経過しているため、平成21年分の所得税に対して更正処分をすることはできないことになり、これに伴い、同年分の過少申告加算税及び重加算税の賦課決定処分もできないこととなる。
 よって、平成21年分の所得税の更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分は、いずれもその全部の取消しを免れない。

(2) 平成22年分の所得税の更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分について

  • イ 更正処分について
     上記4の(3)のロのとおり、平成22年分の所得税については、請求人は、偽りその他不正の行為により税額を免れたものであると認められることから、法定申告期限(平成23年3月15日)から7年を経過する日まで更正処分をすることができる。
     また、上記4の(1)のホのとおり、本件各金員は、請求人に帰属するが、本件賃貸料は、請求人に帰属しない。
     以上を前提に、平成22年分の所得税の納付すべき税額を計算すると、別紙1の4の「裁決後の額」欄の「差引納付すべき税額又は減少(△印)する税額」欄のとおりとなり、原処分庁主張額を下回る。
     したがって、平成22年分の所得税の更正処分は、その一部を別紙1のとおり取り消すべきである。
  • ロ 重加算税の賦課決定処分について
     平成22年分の所得税に係る重加算税の賦課決定処分は、本件賃貸料及び本件P2名義FX取引に係る所得に基因する税額を基礎としたものであるところ(原処分関係資料)、上記イのとおり、平成22年分の所得税の更正処分は、本件賃貸料に基因する税額に係る部分が違法であり、その他の部分が適法であること、上記4の(2)のとおり、請求人は、請求人に帰属すべき本件P2名義FXによる所得について、P2に帰属するかのように仮装したものであり、当該所得については、重加算税の賦課要件を満たしていることが認められる。
     以上によれば、平成22年分の所得税に係る重加算税の賦課決定処分のうち、本件賃貸料に基因する税額に係る部分は違法であり、その他の部分は適法である。そして、これに基づき算定した上記重加算税の額は、別紙1の4の「裁決後の額」欄の「重加算税」欄の「加算税の額」欄のとおりとなり、原処分庁主張額を下回る。
     したがって、平成22年分の所得税に係る重加算税の賦課決定処分は、その一部を別紙1のとおり取り消すべきである。
  • ハ 過少申告加算税の賦課決定処分について
     平成22年分の所得税に係る過少申告加算税の賦課決定処分は、平成22年分の所得税の更正処分のうち取り消すべき部分(上記イ)以外の税額を基礎としたものであり、また、当該更正処分のうち取り消すべき部分以外の部分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が更正前の税額の計算の基礎となっていなかったことについて、通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められない。
     以上を前提に、平成22年分の所得税に係る過少申告加算税の額を計算すると、原処分庁主張額と同額である。
     したがって、平成22年分の所得税に係る過少申告加算税の賦課決定処分は、適法である。

(3) 平成24年分の所得税及び平成25年分ないし平成27年分の所得税等の各更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分について

  • イ 各更正処分について
     上記4の(1)のホのとおり、本件各金員は、請求人に帰属するが、本件賃貸料及び本件年金は、請求人に帰属しない。
     以上を前提に、平成24年分の所得税及び平成25年分ないし平成27年分の所得税等の納付すべき税額を計算すると、別紙2ないし別紙5の各4の「裁決後の額」欄の「差引納付すべき税額又は減少(△印)する税額」欄のとおりとなり、原処分庁主張額を下回る。
     したがって、平成24年分の所得税及び平成25年分ないし平成27年分の所得税等の各更正処分は、その一部を別紙2ないし別紙5のとおり取り消すべきである。
  • ロ 重加算税の各賦課決定処分について
     平成24年分の所得税及び平成25年分ないし平成27年分の所得税等に係る重加算税の各賦課決定処分はいずれも、本件賃貸料及び本件年金に基因する税額を基礎としたものであるところ(原処分関係資料)、上記イのとおり、平成24年分の所得税及び平成25年分ないし平成27年分の所得税等の各更正処分はいずれも、本件賃貸料及び本件年金に基因する税額に係る部分が違法であるから、上記重加算税の各賦課決定処分は、争点2(請求人は、本件賃貸料及び本件年金が請求人に帰属する事実を仮装したか。)について検討するまでもなく違法であり、それらの全てを取り消すべきである。
  • ハ 過少申告加算税の各賦課決定処分について
     平成24年分の所得税及び平成25年分ないし平成27年分の所得税等に係る過少申告加算税の各賦課決定処分は、平成24年分の所得税及び平成25年分ないし平成27年分の所得税等の各更正処分のうち取り消すべき部分以外の税額を基礎としたものであり(原処分関係資料)、また、当該各更正処分のうち取り消すべき部分以外の部分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が更正前の税額の計算の基礎となっていなかったことについて、通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められない。
     以上を前提に、平成24年分の所得税及び平成25年分ないし平成27年分の所得税等に係る過少申告加算税の額を計算すると、いずれも原処分庁主張額と同額である。
     したがって、平成24年分の所得税及び平成25年分ないし平成27年分の所得税等に係る過少申告加算税の賦課決定処分はいずれも、適法である。

6 結論

以上のとおり、平成21年分の所得税の更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分に対する審査請求は理由があるから、いずれもその全部を取り消すこととする。
 また、平成22年分の所得税の更正処分及び重加算税の賦課決定処分に対する審査請求も理由があるから、いずれもその一部を別紙1のとおり取り消すこととする。
 さらに、平成24年分の所得税及び平成25年分ないし平成27年分の所得税等の各更正処分及び重加算税の各賦課決定処分に対する審査請求も理由があるから、当該各更正処分については、いずれもその一部を別紙2ないし別紙5のとおり取り消し、当該重加算税の各賦課決定処分については、いずれもその全部を取り消すこととする。
 その他の審査請求は理由がないので、いずれも棄却することとする。

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